説明

空調システム

【課題】冬期におけるコールドドラフト対策として有効で、コストを抑制することが可能な空調システムに関する。
【解決手段】本発明の空調システムは、ペリメーターゾーンの床面に設けられたスリット吸い込み口13と、床面下部の床下チャンバー11に吸い込み口41を有する第1ダクトD1と、インテリアゾーンの天井上部の天井チャンバー21に設けられた室内空調機に対する吹き出し口45を有する第2ダクトD2と、前記第1ダクトD1から前記第2ダクトD2に向けた送風を行うファン43と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓辺のペリメーターゾーンにおいてコールドドラフト対策が施された空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
気温が室内温度より低いときには、室内の暖かい空気が窓面に触れて温度が低下することにより、その温度の低下した空気が窓面に沿って下降する現象が発生する。このような空気(冷気)の流れはコールドドラフトと呼ばれ、窓付近の温度を低下させて室内の快適性を損なう原因として一般に知られている。
【0003】
そこで、窓辺のペリメーターゾーンにおいてはコールドドラフト対策が施された空調システムが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特公平7−21274号公報)には、室内における空調負荷を軽減して省エネルギー化等を図るために、二重窓構造式のエアフローウインドウが用いられることが開示されている。また、コールドドラフト対策として、プッシュプルウインドウなどを用いることも提案されている。
【特許文献1】特公平7−21274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のペリメーターゾーンのコールドドラフト対策としては、エアフローウインドウやプッシュプルウインドウなどが用いられているが、これらの技術は夏期の対策が主となっており、熱気の流れる方向に合わせ空気を下から上の方向に流している。冬期に関してはコールドドラフトの空気の流れは上から下になるので、逆の方向とはなるが、二重窓等があれば、コールドドラフト対策としては有効であった。
【0006】
しかしながら、従来の技術によってコールドドラフト対策をとる場合には、二重窓、プッシュファン、プルファン等といった設備を準備しなければならず、非常に大きなコストがかかる、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、ペリメーターゾーンの床面に設けられたスリット吸い込み口と、床面下部の床下チャンバーに吸い込み口を有する第1ダクトと、インテリアゾーンの天井上部の天井チャンバーに設けられた室内空調機に対する吹き出し口を有する第2ダクトと、前記第1ダクトから前記第2ダクトに向けた送風を行うファンと、からなることを特徴とする空調システムである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空調システムにおいて、前記スリット吸い込み口で吸い込まれる気流の温度を検出する温度センサーと、前記室内空調機で送風される気流の温度を設定するリモコンと、前記ファンの駆動を制御するファンコントローラーと、前記温度センサーで検出された温度と前記リモコンで設定された温度とに基づいて前記ファンコントローラーに対して制御指令を発するメインコントローラーと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る空調システムによれば、上から下に流れる冬期のコールドドラフトを、ペ
リメーターゾーンの床面に設けられたスリット吸い込み口から吸い込み利用する構成となっているので、冬期におけるコールドドラフト対策として有効であり、また、二重窓、プッシュファン、プルファン等といった設備が不要であるので、コストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る空調システムが適用された空間Rの概略を側面からみた図である。
【図2】本発明の実施形態に係る空調システムが適用された空間Rの概略の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る空調システムの簡略化されたブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る空調システムにおける制御例のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る空調システムが適用された空間Rの概略を側面からみた図であり、図2は本発明の実施形態に係る空調システムが適用された空間Rの概略の平面図である。
【0012】
空間Rは、窓12から数メートルの範囲内のペリメーターゾーンと、それ以外のインテリアゾーンの2つのゾーンに仮想的に分けることができる。空間Rの床面はOAフロア10で構成されており、このOAフロア10とスラブとの間には床下チャンバー11が形成されている。
【0013】
また、窓12近傍におけるペリメーターゾーンのOAフロア10には、図2に示すように、スリット吸い込み口13が窓12と並行するようにして設けられている。このスリット吸い込み口13によりコールドドラフトは、床下チャンバー11に導かれるようになっている。本発明に係る空調システムにおいては、スリット吸い込み口13に導かれたコールドドラフトは、インテリアゾーンに配されている室内空調機器32、室内空調機器33の冷房運転の補助となるように利用される。従って、窓12は北側(日本などの北半球にある場合)を向いている方が、より有効に本発明を利用することが可能となる。
【0014】
また、スリット吸い込み口13の下部には、スリット吸い込み口13に導かれたコールドドラフトの気流の温度を検出する温度センサー120が設けられている。なお、温度センサー120を設ける位置としては、スリット吸い込み口13の下部の位置に限定される必要はない。
【0015】
天井吸い込み口22、天井吸い込み口23、天井吸い込み口24が設けられている天井20の上部の天井チャンバー21には、室内空調機器31、室内空調機器32、室内空調機器33が配されている。これらの室内空調機器のうち、室内空調機器31、室内空調機器32についてはインテリアゾーンに対応する天井部に配されており、室内空調機器33はペリメーターゾーンに対応する天井部に配されている。なお、それぞれの室内空調機器には複数の配管が設けられているが、図示省略している。
【0016】
室内空調機器31で調整された空気は天井吹き出し口34から、また、室内空調機器32で調整された空気は天井吹き出し口35から、室内空調機器33で調整された空気は天井吹き出し口36から、それぞれ空間Rに対して吹き出されるようになっている。
【0017】
第1のダクトD1は、床下チャンバー11と天井チャンバー21との間に設けられているダクトである。この第1ダクトD1は、OAフロア10の下部の床下チャンバー11に
吸い込み口41が設けられている。スリット吸い込み口13に導かれたコールドドラフトの気流は床下チャンバー11を経て、第1のダクトD1の吸い込み口41からダクトへと吸い込まれることが想定されている。
【0018】
インテリアゾーンの天井上部においては、室内空調機器31に対する吹き出し口45を有する第2ダクトD2が設けられている。
【0019】
第1のダクトD1と第2のダクトD2の間にはファン43が設けられている。このファン43が駆動されると、第1ダクトD1から前記第2ダクトD2に向けた送風が行われ、第1のダクトD1の吸い込み口41から吸い込まれたコールドドラフトの気流を、吹き出し口45から室内空調機器31に対して吹き付けることができるようになっている。
【0020】
また、第2のダクトD2はその途中で、第3のダクトD3に分岐するようになっている。この第3のダクトD3は、インテリアゾーンに相当する天井チャンバー21に配されている室内空調機器32に対する吹き出し口47を有している。したがって、ファン43が駆動されると、第1のダクトD1の吸い込み口41から吸い込まれたコールドドラフトの気流は、吹き出し口47から室内空調機器32に対しても吹き付けられる。
【0021】
上記のようにインテリアゾーンに対応する位置にレイアウトされている室内空調機器31、及び室内空調機器32に対しては、ファン43の駆動により、コールドドラフトの気流を吹き付けることが可能な構成となっている。OA機器の発熱などがあるために、通常、インテリアゾーン相当位置に配されている室内空調機器31、及び室内空調機器32は冬期においても、冷房運転されるのが一般的であるが、上記のようにコールドドラフトを、冷房運転中の室内空調機器31、及び室内空調機器32に吹き付けることで、それぞれの機器の負荷を低下させることが可能となる。
【0022】
空間Rの壁面には、リモコン110が取り付けられており、このリモコン110が、室内空調機器31、室内空調機器32、室内空調機器33に対して、動作指令(運転、停止、運転モード、風量・風向設定、温度設定など)を与えるようになっている。
【0023】
本発明に係る空調システムによれば、上から下に流れる冬期のコールドドラフトを、ペリメーターゾーンの床面に設けられたスリット吸い込み口13から吸い込み利用する構成となっているので、冬期におけるコールドドラフト対策として有効であり、また、二重窓、プッシュファン、プルファン等といった設備が不要であるので、コストを抑制することが可能となる。
【0024】
次に、以上のように構成される空調システムにおける制御例について説明する。図3は本発明の実施形態に係る空調システムの簡略化されたブロック図である。図3において、メインコントローラー100は、演算部、記憶部を有する一般的なマイクロコンピューターから構成されるもので、空調システムの主制御を担うものである。
【0025】
また、温度センサー120は、スリット吸い込み口13に導かれたコールドドラフトの気流の温度を検出するものであり、温度センサー120によって検出された温度データはメインコントローラー100に入力されて、制御を行うときの参照値とされる。
【0026】
また、ファン43は、メインコントローラー100から入力される制御指令に応じて、駆動又は停止する。
【0027】
次に、以上のようなブロック構成を有する空調システムにおける制御アルゴリズム例について説明する。図4は本発明の実施形態に係る空調システムにおける制御例のフローチ
ャートを示す図である。
【0028】
図4に示すフローチャートは、ファン43の駆動をどのように行うかを決定するルーチンであり、例えば、空調システムの起動後、適正にファン43の制御を行うことが可能となる。
【0029】
図4において、ステップS100でフローが開始されると、続くステップS101では、温度センサー120によって検出された温度データTsが取得され、ステップS102では、設定されている温度Toが取得される。
【0030】
次のステップS103では、Ts<Toが成立するか否かが判定される。ステップS103における判定がYESであるときにはコールドドラフトの気流温度Tsが、設定温度Toより低い、ということになるので、ファン43を駆動して、コールドドラフトの気流を室内空調機器31、室内空調機器32に吹き付けることで、室内空調機器31、室内空調機器32の負荷を低減させるようにする。
【0031】
一方、ステップS103における判定がNOであるときにはコールドドラフトの気流温度Tsが、設定温度Toより高い、ということになるので、ファン43を駆動せず、コールドドラフトを利用することはしない。
【0032】
以上のような制御を行うことで、室内空調機器31、室内空調機器32の負荷を低減させことができるので、エネルギー効率を上昇させることが可能となる。
【0033】
以上、本発明に係る空調システムによれば、上から下に流れる冬期のコールドドラフトを、ペリメーターゾーンの床面に設けられたスリット吸い込み口から吸い込み利用する構成となっているので、冬期におけるコールドドラフト対策として有効であり、また、二重窓、プッシュファン、プルファン等といった設備が不要であるので、コストを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
10・・・OAフロア
11・・・床下チャンバー
12・・・窓
13・・・スリット吸い込み口
20・・・天井
21・・・天井チャンバー
22・・・天井吸い込み口
23・・・天井吸い込み口
24・・・天井吸い込み口
31・・・室内空調機器
32・・・室内空調機器
33・・・室内空調機器
34・・・天井吹き出し口
35・・・天井吹き出し口
36・・・天井吹き出し口
41・・・ダクト吸い込み口
43・・・ファン
45・・・ダクト吹き出し口
47・・・ダクト吹き出し口
50・・・外調機
51・・・可変風量制御装置
52・・・天井吹き出し口
54・・・ダクト吸い込み口
55・・・可変風量制御装置
100・・・メインコントローラー
110・・・リモコン
120・・・温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリメーターゾーンの床面に設けられたスリット吸い込み口と、
床面下部の床下チャンバーに吸い込み口を有する第1ダクトと、
インテリアゾーンの天井上部の天井チャンバーに設けられた室内空調機に対する吹き出し口を有する第2ダクトと、
前記第1ダクトから前記第2ダクトに向けた送風を行うファン、からなることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記スリット吸い込み口で吸い込まれる気流の温度を検出する温度センサーと、
前記室内空調機で送風される気流の温度を設定するリモコンと、
前記ファンの駆動を制御するファンコントローラーと、
前記温度センサーで検出された温度と前記リモコンで設定された温度とに基づいて前記ファンコントローラーに対して制御指令を発するメインコントローラーと、を有することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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