説明

空調制御システム、空調制御装置、および空調制御方法

【課題】快適性を保ちつつ、無駄なエネルギー消費を防ぐ空調制御を行うことが可能な空調制御システム、空調制御装置、および空調制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、空調制御装置は、計測値取得部と設定値算出部とON/OFF信号出力部とを備える。計測値取得部は、制御対象の建物の環境に関する計測値を取得する。設定値算出部は、取得された計測値に基づいて、空調機で導入すべき外気量を算出する。ON/OFF信号出力部は、算出された導入すべき外気量が、予め設定された閾値を超えている場合には外気導入制御ON信号を出力し、閾値を超えていない場合には外気導入制御OFF信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空調制御システム、空調制御装置、および空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル内の環境の監視制御を行うビル監視制御装置では、在室者の呼気等により増加する室内のCO2(二酸化炭素)量を計測し、この室内のCO2量が所定値を超えないように外気を導入して換気を行うための制御を行っている。
【0003】
一方、このビル監視制御装置とは別個に、ビル内を快適性の高い状態に保持するための制御を行う最適空調制御装置が導入されることがある。
【0004】
この最適空調制御装置では、外気温度、外気湿度、室内顕熱負荷等を入力値とし、使用するエネルギー量を最小にしつつ、かつ在室者の快適性が保たれるように、室内温度設定値、室内湿度設定値、および空調機の給気温度設定値を算出する。またこのとき省エネ効果を向上させるため、必要に応じて外気を導入しながらビル内の空調を制御するように、外気導入量も算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−71489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したようなビル監視制御装置が既に導入されているビルに、最適空調制御装置を新たに導入すると、それぞれの装置で独立して外気導入量が算出されることになり、これら双方の外気導入量にずれが生じることがある。
【0007】
例えば最適空調制御装置では外気導入が必要ないと判断されていても、実際にはビル監視制御装置においてCO2量が高くなったことによりある程度の量の外気が必要と判断され外気が導入されていることがある。
【0008】
この場合、最適空調制御装置では、ビル監視制御装置の制御で外気導入中であることが考慮されずに外気状態等に基づいて室内湿度設定値が算出され、本来は不要な加湿制御が行われてしまうことがあり、室内の快適性が損なわれるとともに無駄なエネルギーを消費することがあるという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、室内のCO2量に基づいて外気導入量を制御するビル監視制御装置と、空調制御対象の建物の環境状態に基づいて室内の空調を制御する空調制御装置とを連携させて、快適性を保ちつつ、無駄なエネルギー消費を防ぐ空調制御を行うことが可能な空調制御システム、空調制御装置、および空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための実施形態によれば、空調制御装置は、計測値取得部と設定値算出部とON/OFF信号出力部とを備える。計測値取得部は、制御対象の建物の環境に関する計測値を取得する。設定値算出部は、取得された計測値に基づいて、空調機で導入すべき外気量を算出する。ON/OFF信号出力部は、算出された導入すべき外気量が、予め設定された閾値を超えている場合には外気導入制御ON信号を出力し、閾値を超えていない場合には外気導入制御OFF信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態による空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】一実施形態による空調制御システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態による空調制御システムにおいては、既存のビル監視制御装置が設置されている空調制御対象のビル内に、新たに最適空調制御装置が追加して設置されたものとする。
【0013】
〈一実施形態による空調制御システムの構成〉
本実施形態による空調制御システムの構成について、図1を参照して説明する。
【0014】
本実施形態による空調制御システム1はビル内の空調を制御するものであり、ビル監視制御装置10と、このビル監視制御装置10に接続された最適空調制御装置20と、制御対象の室内に設置され、ビル監視制御装置10により制御される空調機30とを備える。図1においてはビル監視制御装置10に1台の空調機30が接続されている場合を示しているが、建物内のゾーンごとに設置された複数の空調機30が接続されていてもよい。
【0015】
ビル監視制御装置10は、CO2濃度値取得部11と、外気導入量算出部12と、機器制御部13と、外気導入制御スイッチ14とを有する。
【0016】
CO2濃度値取得部11は、制御対象のビルの室内に設置されたCO2センサから、計測されたCO2濃度値を取得する。
【0017】
外気導入量算出部12は、CO2濃度値取得部11で取得されたCO2濃度値に基づいて、CO2濃度値を所定値以下にするための制御対象の室内への外気導入量を算出する。
【0018】
機器制御部13は、外気導入量算出部12で算出された外気導入量に基づいて、空調機30による外気導入動作の制御を実行させるとともに、最適空調制御装置20から送信された各種設定値に基づいて、空調機30のコイルや加湿器(図示せず)等の動作を制御する。
【0019】
外気導入制御スイッチ14は、機器制御部13による空調機30の外気導入動作の制御を実行状態と停止状態とで切り替える。
【0020】
最適空調制御装置20は、計測値取得部21と、設定値算出部22と、ON/OFF信号出力部23とを備える。
【0021】
計測値取得部21は、制御対象のビルの環境に関する計測値として、外気温度を計測する外気温度センサ(図示せず)、外気湿度を計測する外気湿度センサ(図示せず)、および空調機30の給気温度を計測する給気温度センサ(図示せず)で計測された計測値をそれぞれ取得する。
【0022】
設定値算出部22は、計測値取得部21で取得された外気温度計測値、外気湿度計測値、および給気温度計測値から、空調機30の動作設定値としての室内温度設定値、室内湿度設定値、給気温度設定値、および導入すべき外気量を算出する。
【0023】
ON/OFF信号出力部23は、設定値算出部22で算出された導入すべき外気量が予め設定された閾値を超えているか否かを判断し、超えている場合には空調機30の外気導入動作をON状態にする外気導入動作の制御ON信号をビル監視制御装置10に出力し、超えていない場合には外気導入動作をOFF状態にする外気導入動作の制御OFF信号をビル監視制御装置10に出力する。
【0024】
〈一実施形態による空調制御システムの動作〉
次に、本実施形態による空調制御システム1の動作について図2のシーケンス図を参照して説明する。
【0025】
まずビル監視制御装置10では、CO2濃度値取得部11において、制御対象のビルの室内に設置されたCO2センサ(図示せず)から、計測されたCO2濃度値が取得される(S1)。
【0026】
そして外気導入量算出部12において、CO2濃度値取得部11で取得されたCO2濃度値に基づいて、CO2濃度値を所定値以下にするための制御対象の室内への外気導入量が算出される(S2)。
【0027】
一方最適空調制御装置20では、計測値取得部21において、制御対象のビルの環境に関する計測値として、外気温度を計測する外気温度センサ(図示せず)、外気湿度を計測する外気湿度センサ(図示せず)、および空調機30の給気温度を計測する給気温度センサ(図示せず)で計測された計測値がそれぞれ取得される(S3)。ここで計測値取得部21において、取得される計測値に欠落がないかが確認され、欠落があれば処理が中止される。
【0028】
計測値の欠落がないことが確認されると、設定値算出部22において、計測値取得部21で取得された外気温度計測値、外気湿度計測値、および給気温度計測値に基づいて冷房制御を行うか暖房制御を行うかが判断され、冷房制御を行うと判断された時には快適性を損なわずに省エネ効果を向上させる最適空調制御演算処理が開始される(S4)。
【0029】
最適空調制御演算処理が開始すると、設定値算出部22において、計測値取得部21で取得された外気温度計測値、外気湿度計測値、および給気温度計測値から、空調機30の動作設定値としての室内温度設定値、室内湿度設定値、給気温度設定値、および導入すべき外気量が算出される(S5)。
【0030】
設定値算出部22ではさらに、算出された室内温度設定値、室内湿度設定値、給気温度設定値、および導入すべき外気量が予め設定された正常な範囲内であるか否かが確認され、この範囲内であると判断されると、室内温度設定値、室内湿度設定値、および給気温度設定値がビル監視制御装置10による空調機30の制御に利用させるため、ビル監視制御装置10に送信される(S6)。
【0031】
ビル監視制御装置10では、最適空調制御装置20から送信された室内温度設定値、室内湿度設定値、および給気温度設定値が、機器制御部13で受信される(S7)。
【0032】
また、最適空調制御装置20のON/OFF信号出力部23において、設定値算出部22で算出された導入すべき外気量が予め設定された閾値を超えているか否かが判断され(S8)、超えている場合(S8の「YES」)には空調機30の外気導入動作をON状態にする外気導入動作の制御ON信号が生成され(S9)、超えていない場合(S8の「NO」)には空調機30の外気導入動作をOFF状態にする外気導入動作の制御OFF信号が生成される(S10)。
【0033】
この閾値は、制御対象のビルの大きさや空調機の処理能力によって異なるが、過去の経験に基づいて予測される、ビル監視制御装置10で算出される外気導入量に対応して設定される。つまり、最適空調制御装置20の設定値算出部22で算出される導入すべき外気量が、ビル監視制御装置10の外気導入量算出部12で算出される外気導入量より少なくなると予測されるときに、外気導入動作を停止させるために設定される値である。
【0034】
生成された制御ON信号または制御OFF信号は、ビル監視制御装置10に出力される(S11)。
【0035】
そしてビル監視制御装置10の機器制御部13において、最適空調制御装置20から送信された各種設定値に基づいて空調機30のコイルや加湿器の動作が制御されるとともに、最適空調制御装置20から外気導入動作の制御ON信号が取得されたときには外気導入量算出部12で算出された外気導入量に基づいて空調機30の外気導入動作の制御が実行され、外気導入動作の制御OFF信号が取得されたときには空調機30の外気導入動作の制御が停止状態にされる(S12)。以上の処理は、空調制御単位であるゾーン毎に実行される。
【0036】
以上の本実施形態の空調制御システム1によれば、既存のビル監視制御装置10が設置されている空調制御対象のビル内に新たに最適空調制御装置20が追加して設置された場合に、ビル監視制御装置10において算出した量で外気を導入する際に、最適空調制御装置20で算出された導入すべき外気量も考慮して制御が行われるため、不要な加湿制御が行われる等で室内環境の快適性が損なわれることを防止することができ、在室者の快適性を保ちつつ省エネ効果を向上させることができる。
【0037】
上記実施形態においては冷房制御時に、最適空調制御装置内で外気導入量に基づいて外気導入動作の制御ON信号を出力するか制御OFF信号を出力するかを判断する最適空調制御の機能について説明したが、この機能に加え、最適空調制御装置内にエンタルピ差ベースで外気導入動作の制御を行う機能も搭載しておき、監視員の操作により最適空調制御とエンタルピ差ベースによる制御とを切り替え可能としてもよい。エンタルピ差ベースで外気導入動作の制御を行う場合は、室内と室外とのエンタルピ差を演算し、室内エンタルピが室外エンタルピ以上のときに外気導入動作の制御ON信号を出力し、室内エンタルピが室外エンタルピよりも小さいときに外気導入動作の制御OFF信号を出力する。
【0038】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…空調制御システム
10…ビル監視制御装置
11…CO2濃度値取得部
12…外気導入量算出部
13…機器制御部
14…外気導入制御スイッチ
20…最適空調制御装置
21…計測値取得部
22…設定値算出部
23…ON/OFF信号出力部
30…空調機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調制御装置と、ビル監視制御装置とが接続された空調制御システムにおいて、
前記空調制御装置は、
制御対象の建物の環境に関する計測値を取得する計測値取得部と、
前記計測値取得部で取得された計測値に基づいて、前記制御対象の建物内に設置された空調機で導入すべき外気量を算出する設定値算出部と、
前記設定値算出部で算出された導入すべき外気量が、予め設定された閾値を超えている場合には外気導入制御ON信号を出力し、前記閾値を超えていない場合には外気導入制御OFF信号を出力するON/OFF信号出力部と
を有し、
前記ビル監視制御装置は、
制御対象の建物内の二酸化炭素濃度値を取得する二酸化炭素濃度値取得部と、
前記二酸化炭素濃度値取得部で取得された二酸化炭素濃度値に基づいて、前記制御対象の建物内への外気導入量を算出する外気導入量算出部と、
前記外気導入量算出部で算出された外気導入量に基づいて、前記空調機による外気導入動作を制御する機器制御部と、
前記空調制御装置のON/OFF信号出力部から外気導入ON信号が出力されたときには前記機器制御部による外気導入動作の制御を実行状態にし、外気導入OFF信号が出力されたときには前記外気導入動作の制御を停止状態に切り替える外気導入制御スイッチと
を有することを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
前記ON/OFF信号出力部で利用される閾値は、前記空調制御装置の設定値算出部で算出される導入すべき外気量が、前記ビル監視制御装置の外気導入量算出部で算出される外気導入量より少なくなると予測されるときに、外気導入動作を停止させるために設定される値である
ことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
制御対象の建物内の二酸化炭素濃度値に基づいて、前記建物内に設置された空調機の外気導入動作を制御するビル監視制御装置に接続された空調制御装置において、
制御対象の建物の環境に関する計測値を取得する計測値取得部と、
前記計測値取得部で取得された計測値に基づいて、前記空調機で導入すべき外気量を算出する設定値算出部と、
前記設定値算出部で算出された導入すべき外気量が、予め設定された閾値を超えている場合には前記外気導入動作の制御を実行状態にするための外気導入制御ON信号を前記ビル監視制御装置に出力し、前記閾値を超えていない場合には前記外気導入動作の制御を停止状態にするための外気導入制御OFF信号を前記ビル監視制御装置に出力するON/OFF信号出力部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
制御対象の建物内の二酸化炭素濃度値に基づいて、前記建物内に設置された空調機の外気導入動作を制御するビル監視制御装置に接続された空調制御装置が、
制御対象の建物の環境に関する計測値を取得する計測値取得ステップと、
前記計測値取得ステップで取得された計測値に基づいて、前記空調機で導入すべき外気量を算出する設定値算出ステップと、
前記設定値算出ステップで算出された導入すべき外気量が、予め設定された閾値を超えている場合には前記外気導入動作の制御を実行状態にするための外気導入制御ON信号を前記ビル監視制御装置に出力し、前記閾値を超えていない場合には前記外気導入動作の制御を停止状態にするための外気導入制御OFF信号を前記ビル監視制御装置に出力するON/OFF信号出力ステップと
を有することを特徴とする空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−159244(P2012−159244A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19662(P2011−19662)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】