空調制御装置および方法
【課題】空調空間内に存在するユーザの配置状況のばらつきにかかわらず、その空調空間において適切な空調制御を実行する。
【解決手段】分布系熱流動解析手法を用いて空調空間内の状態分布を推定し、空調空間の状態測定値に相当する仮想状態測定値を、空調空間内に存在する人の人数および位置といった空調空間内の人の配置状況と推定された状態分布とに基づいて導出し、空調空間における状態目標値と導出された仮想状態測定値との差分に基づいた空調制御を実行する空調制御装置10を提供する。
【解決手段】分布系熱流動解析手法を用いて空調空間内の状態分布を推定し、空調空間の状態測定値に相当する仮想状態測定値を、空調空間内に存在する人の人数および位置といった空調空間内の人の配置状況と推定された状態分布とに基づいて導出し、空調空間における状態目標値と導出された仮想状態測定値との差分に基づいた空調制御を実行する空調制御装置10を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御装置および方法に関し、特に分布系熱流動解析手法を用いて空間内の目的場所における空調環境を制御するための空調制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間内を所望の空調環境に維持する場合、空気調和すべき空調空間に空調機器を設けるとともに、空調空間の各エリアを代表する位置に温度センサを配置し、温度センサの出力に応じて空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を決定するものとなっている。
【0003】
一方、オフィスなどの大空間では、空調空間内に設置した複数の事務機器や電話機それぞれに温度センサを設け、事務機器や電話機に設けられた温度センサの出力と、これら事務機器や電話機に関連付けられたユーザの在席情報とに基づいて、空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を決定する技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
具体的には、特許文献1に開示される技術は、空調空間内に設置された事務機器や電話機に搭載された温度センサによって取得された温度信号に対して、事務機器や電話機に関連付けられているユーザの在席情報に応じた重み付けを行うことによって空調空間の代表温度を算出するとともに、空調空間における空調機器の設定温度に対してユーザの在席情報に応じた重み付けを行うことにより設定代表温度を算出する。これら算出した代表温度と設定代表温度との差分を算出し、この差分に応じて空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−14219号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】加藤信介・小林光・村上周三、「不完全混合室内における換気効率・温熱環境形成効率評価指標に関する研究 第2報-CFDに基づく局所領域の温熱環境形成寄与率評価指標の開発」、東大生研:空気調和・衛生工学論文集No.69、pp.39-47、1998.4
【非特許文献2】安部恒平、桃瀬一成、木本日出夫、「随伴数値解析を利用した自然対流場の最適化」、日本機械学会論文集(B編)、70巻691号、pp.729-736、2004.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、ユーザの在席情報から、ユーザの配置状況に対して重みを持たせて算出した代表温度と設定代表温度との差分に応じた空調制御を実行する技術であることから、空調空間内のユーザが密集して在席している領域と散在して在席している領域とが存在している場合、ユーザの在席状態が疎である領域では、密である領域に比較して重み付けが軽いために、在席状態が疎である領域に在席しているユーザに対して不快感を与える場合があるといった問題があった。
【0008】
すなわち、特許文献1に開示されている技術は、空調空間内におけるユーザの配置状況にばらつきがある場合、空調空間全体として適切な空調制御が実行されないといった問題があった。
そこで、本発明は上述の問題を解決するために、空調空間内に存在するユーザの配置状況のばらつきにかかわらず、その空調空間において適切な空調制御を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明にかかる空調制御装置は、空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、空調機器での操作量を指示することにより、空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置であって、空調空間の構成および空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、目的空調環境下における空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、当該空調環境の状態分布を推定する分布系流動解析部と、空調空間内に存在する人の人数および位置を検知して空調空間内の人の配置状況を示す配置情報を生成する配置情報生成部と、分布系流動解析部によって推定された状態分布に基づいて空調空間内の任意の位置における空調環境の状態を仮想状態測定値として導出する仮想状態測定値導出部と、空調空間における空調環境の目標となる状態目標値と空調空間の仮想状態測定値との差分に基づいて空調システムを制御する制御部とを備えている。
【0010】
この際、仮想状態測定値導出部に、配置情報から、人の密集の度合いに応じて当該空調空間を複数の領域に分割する分割部と、分布系流動解析部によって推定された当該空調空間内の状態分布から、分割部によって分割された領域の任意の位置の状態値を領域毎に推定して各領域の代表状態値とする代表状態値導出部と、この代表状態値導出部によって導出された領域毎の代表状態値に基づいて仮想状態測定値を算出する算出部とを備えるようにしてもよい。
【0011】
また、算出部で、分割部によって分割された領域のうち、少なくとも1人の人が存在する領域を選択し、この選択された領域の代表状態値の平均値を仮想状態測定値として算出するようにしてもよい。
【0012】
また、算出部に、分割部によって分割された領域のうち、近接する領域を新たな1つの領域へ統合するとともに近接する2以上領域の代表状態値の平均値を算出する平均算出部と、分割部によって分割された領域が1の領域となるまで平均算出部による平均値の算出動作を繰り返し実行させ、分割された領域が1の領域となった際の平均値を仮想状態測定値とする仮想状態値算出部とを備えるようにしてもよい。
【0013】
また、仮想状態測定値導出部に、配置情報から、人の密集の度合いが高くなればより小さくなる重み係数を、当該空調空間内の人が存在している位置に関連付けて導出する重み導出部と、分布系流動解析部によって推定された当該空調空間内の状態分布と、重み導出部によって導出された重み係数と、当該空調空間内の人が存在している位置とに基づいて仮想状態測定値を算出する算出部とを備えるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明にかかる空調制御方法は、空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、空調機器での操作量を指示することにより、空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置で用いる空調制御方法であって、分布系流動解析部が、空調空間の構成および空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、目的空調環境下における空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、当該空調環境の状態分布を推定する分布系流動解析ステップと、配置情報生成部が、空調空間内に存在する人の人数および位置を検知して空調空間内の人の配置状況を示す配置情報を生成する配置情報生成ステップと、仮想状態測定値導出部が、分布系流動解析ステップによって推定された状態分布に基づいて空調空間内の任意の位置における空調環境の状態を仮想状態測定値として導出する仮想状態測定値導出ステップと、制御部が、空調空間における空調環境の目標となる状態目標値と空調空間の仮想状態測定値との差分に基づいて空調システムを制御する制御部ステップとを備えている。
【0015】
この際、仮想状態測定値導出ステップに、配置情報から、人の密集の度合いに応じて当該空調空間を複数の領域に分割するステップと、分布系流動解析ステップによって推定された当該空調空間内の状態分布から、分割ステップによって分割された領域の任意の位置の状態値を領域毎に推定して各領域の代表状態値とする代表状態値導出ステップと、この代表状態値導出ステップによって導出された領域毎の代表状態値に基づいて仮想状態測定値を算出する算出ステップとを備えてもよい。
【0016】
また、算出ステップに、分割ステップによって分割された領域のうち、少なくとも1人の人が存在する領域を選択し、この選択された領域の代表状態値の平均値を仮想状態測定値として算出するステップを備えてもよい。
【0017】
また、算出ステップに、分割ステップによって分割された領域のうち、近接する領域を新たな1つの領域へ統合するとともに近接する2以上領域の代表状態値の平均値を算出する平均算出ステップと、分割ステップによって分割された領域が1の領域となるまで平均算出ステップによる平均値の算出動作を繰り返し実行させ、分割された領域が1の領域となった際の平均値を仮想状態測定値とする仮想状態値算出ステップとを備えてもよい。
【0018】
仮想状態測定値導出ステップに、配置情報から、人の密集の度合いが高くなればより小さくなる重み係数を、当該空調空間内の人が存在している位置に関連付けて導出する重み導出ステップと、分布系流動解析ステップによって推定された当該空調空間内の状態分布と、重み導出ステップによって導出された重み係数と、当該空調空間内の人が存在している位置とに基づいて仮想状態測定値を算出する算出ステップとを備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分布系熱流動解析手法で得られた空調空間内の状態分布と空調空間内の人の配置状況とに基づいて、空調空間内に存在している人の人数や位置といった配置状況を考慮した空調空間の仮想状態測定値を導出し、この仮想状態測定値と空調空間の状態目標値との差分に基づくフィードバック制御動作により空調空間内の空調環境を調整する。
したがって、空調空間内の居住者の配置状況のばらつきにかかわらず、その空調空間において適切な空調制御を実行することができ、空調空間内の居住者が抱く不快感を緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる空調制御装置による空調制御動作が実行される空調空間の構成例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態にかかる空調制御装置の各機能について説明する図である。
【図4】第1の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。
【図5】第1の実施の形態にかかる空調制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】第2の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。
【図8】第2の実施の形態にかかる空調制御装置の仮想室温測定値の算出動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第3の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。
【図11】第3の実施の形態にかかる空調制御装置の仮想室温測定値の算出動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態にかかる空調制御装置について、図1および図2を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、本実施の形態にかかる空調制御装置による空調制御動作が実行される空調空間の構成例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態にかかる空調制御装置10は、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、空調システム40を制御することにより、空調空間50の目的場所における空調環境を制御する。
また、空調システム40は、主な構成として、空調処理装置41、空調機器42、および存在確認システム43から構成されている。
【0023】
空調処理装置41は、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、通信回線Lを介して空調制御装置10から指示された操作量に基づいて、空調機器42により各吹出口から空調空間50へ吹き出す調和空気を制御する。
空調機器42は、空調処理装置41から指示される操作量で調和空気を各吹き出し口から空調空間50へ吹き出す。
このように、上記の空調処理装置41および空調機器42によって空調空間50全体の空調環境が制御される。
【0024】
さらに、空調システム40は、存在確認システム43により空調空間50内に在圏する人の人数や位置を検知し、通信回線Lを介して空調制御装置10へ通知する機能を有している。なお、存在確認システム43としては、RFIDなどを用いて人の位置を正確に検知できる一般的な位置検知システムのほか、既存の入退室管理システムなど、ある領域に存在している人の人数と位置とを管理する機能を持つ他のシステムを存在確認システム43として用いても良い。
【0025】
図2の例では、空調空間50がゾーンZ1〜Z4の4つのゾーンに区分されている。これらゾーンZ1〜Z4には、空調機器42としてVAV1〜VAV4がそれぞれのゾーンZ1〜Z4の天井に設けた吹出口F1〜F4にそれぞれ設置されており、VAV1〜VAV4は、空調処理装置41を介して空調制御装置10から指示された、吹出風量Vm1〜Vm4などの操作量に基づいて、空調機(図示せず)から供給された調和空気を調整し、各吹出口F1〜F4からそれぞれに対応するゾーンZ1〜Z4へ吹き出す機能を有している。
空調空間50のゾーンZ1〜Z4は、壁によって空間として明確に区分されている空間ではなく、それぞれのVAV1〜VAV4から吹き出された調和空気が互いに対流しうる状況にある。
【0026】
また、空調空間50のゾーンZ1〜Z4には、人感センサとしてHS1〜HS4がそのゾーンの天井など人の位置と人数とを検知できる場所にそれぞれ設置されている。HS1〜HS4によって検知されたゾーンZ1〜Z4内に在圏する人の位置と人数に関する検知結果は、人検知結果データとして存在確認システム43により通信回線Lを介して空調制御装置10へ送信される。
【0027】
[空調制御装置]
本実施の形態にかかる空調制御装置10の構成および機能について、図1および図3を参照して詳細に説明する。図3は、本実施の形態にかかる空調制御装置10の各機能について説明する図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる空調制御装置10は、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
【0028】
通信I/F部11は、専用のデータ通信回路からなり、通信回線Lを介して接続された空調システム40などの外部装置との間でデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、演算処理部15からの指示に応じて、操作メニューや入出力データなどの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0029】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15で用いる各種データやプログラム14Pを記憶する機能を有している。
プログラム14Pは、演算処理部15に読み出されて実行されるプログラムであり、予め外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して記憶部14へ格納される。
また、本実施の形態において、記憶部14は、空調空間50の形状と空調システム40によって生成される調和空気の吹出口に関する位置および形状とを示す空間条件データ14Aと、存在確認システム43から出力され通信I/F部11を介して受信した人検知結果データ14Gと、空調空間50の目標温度に関する情報を示す設定温度情報14Fを予め記憶している。
【0030】
演算処理部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14からプログラム14Pを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部15で実現される主な処理部として、データ入力部15A、分布系流動解析部15B、配置情報生成部15C、仮想状態測定値導出部15D、および空調制御指示部15Eがある。
【0031】
データ入力部15Aは、空調システム40などの外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して入力された、演算処理部15で用いる各種処理情報を、記憶部14へ予め格納する機能を有している。
本実施の形態においては、例えば、吹出口F1〜F4から吹き出す調和空気の吹出速度(風量および風向)と吹出温度とを示す境界条件データと、空調空間50に存在するパソコンや事務機器、照明器具といった発熱体に関する位置および発熱量を示す発熱体データとからなる空調状況データ14Bがデータ入力部15Aによって入力され、記憶部14へ格納される。
【0032】
分布系流動解析部15Bは、データ入力部15Aによって取得された空調状況データ14Bと、記憶部14に格納されている空間条件データ14Aとに基づきCFD順解析を行うことにより、空調空間50内の温度分布などの状態分布を推定する機能を有している。
【0033】
分布系流動解析手法とは、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)を基本として、境界条件から空間の温度や気流等の分布を数値計算によって求める技術である。一般的なCFDでは、対象空間を網目状の小空間に分割し、隣接する小空間間における熱流を解析する。
分布系流動解析部15BにおけるCFD順解析は、この分布系流動解析手法を用いて、空調空間50に関する空調状況データ14Bおよび空間条件データ14Aから、空調空間50内の温度分布や気流分布などの空調環境を算出する技術であり、具体的には非特許文献1などの公知技術を用いればよい。
【0034】
本実施の形態において、図3に示すように、分布系流動解析部15Bは、空間条件データ14Aと、データ入力部15Aにより入力された空調状況データ14Bとに基づいて、CFD順解析を実行して空調空間50内の温度分布(状態分布)を推定し、推定結果として推定温度分布データ14Cを生成する。分布系流動解析部15Bは、生成した推定温度分布データ14Cを後述する仮想状態測定値導出部15Dへ出力するとともに、記憶部14へ格納する。
【0035】
配置情報生成部15Cは、存在確認システム43から出力され記憶部14に格納されている空調空間50内における人検知結果データ14Gから、空調空間50内に存在している人の位置と人数とを関連付けた配置状況を示す配置情報14Dを生成する機能を有している。
本実施の形態において、配置情報生成部15Cは、空調空間50内の各ゾーンZ1〜Z4毎の人の配置状況を示す配置情報14Dを生成し、記憶部14へ格納する。
【0036】
仮想状態測定値導出部15Dは、分布系流動解析部15Bによって推定された空調空間50の温度分布を示す推定温度分布データ14Cと、配置情報生成部15Cによって生成された配置情報14Dとに基づいて、空調空間50の室温の計測値に相当する仮想室温測定値(仮想状態測定値)を導出する機能を有している。
本実施の形態において、仮想状態測定値導出部15Dは、重み導出部15D−1と算出部15D−2とを備えている。
【0037】
重み導出部15D−1は、配置位置情報14Dから、人の密集の度合い(以下、「密集度」という。)が高くなるほどより小さくなる重み係数を、空調空間50内の人が存在している位置に関連付けて導出する機能を有している。
算出部15D−2は、推定温度分布データ14Cと、重み導出部15D−1によって導出された重み係数とから、空調空間50の仮想室温測定値を算出する機能を有している。
【0038】
空調制御指示部15Eは、空調空間50の目標温度(状態目標値)と仮想状態測定値導出部15Dによって算出された仮想室温測定値との差分に基づいて、空調システム40を制御する機能を有している。
本実施の形態において、空調制御指示部15Eは、空調空間50の目標温度を示す設定温度情報14Fと、仮想状態測定値導出部15Dによって算出された空調空間50の仮想室温測定値を示す仮想室温情報14Eとに基づいて吹出口F1〜F4から吹き出す調和空気の操作量を決定し、通信回線Lを介して空調処理装置41へ決定された操作量を指示することにより、空調システム40を制御する。
【0039】
<仮想室温測定値について>
ここで、本発明における仮想状態測定値導出部15Dによって導出される、空調空間50の室温の計測値に相当する仮想室温測定値の技術的意義について、図4を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態において、空調空間50は各ゾーンZ1〜Z4毎に空調制御がなされる構成となっており、以下、空調空間50のゾーンZ1を空調制御の対象空間として説明する。
【0040】
本実施の形態において、分布系熱流動解析手法を用いて分布系流動解析部15Bによって推定される空調空間50の温度分布に基づいて、空調空間50の任意の位置における温度を「仮想室温測定値」として仮想状態測定値導出部15Dは導出する。
【0041】
図4は、空調空間50のゾーンZ1に存在している人の配置状況の一例を示す図である。図4に示すように、目標温度が26℃であるゾーンZ1には、分布系流動解析部15Bによって推定された温度(以下、「推定温度」という)が26℃である空間Z1−aと、推定温度が28℃である空間Z1−bとがある。また、人感センサHS1によってゾーンZ1に存在している人の位置と人数が検知され(図中の◆で示す点を人とする。)、空間Z1−aには、人が7人存在し、空間Z1−bには、人が1人存在している。
【0042】
一般的に、空調制御の対象である空調空間を目標温度となるよう空調制御する際には、その空調空間の室温の計測値と目標温度との差分に基づいたフィードバック制御による空調制御が実行される。
フィードバック制御による空調制御とは、空調空間の目標温度と、空調空間の室温に相当する計測値との偏差に対応する直前の操作量に対する差分(操作量差分)を求め、この操作量差分に基づいた調和空気を吹出口から吹き出すことにより、空調空間の室温を目標温度へ近づける制御である。
【0043】
本実施の形態においては、フィードバック制御による空調制御が実行される際、仮想状態測定値導出部15Dによって導出される「仮想室温測定値」を、空調空間の室温の計測値とする。すなわち、本実施の形態においては、空調空間の目標温度と、仮想状態測定値導出部15Dによって導出された仮想室温測定値との差分に基づいたフィードバック制御による空調制御が実行される。
【0044】
<本発明の原理>
フィードバック制御による空調制御では、対象となる空間を目標温度に導くための空調制御を開始してからしばらくの期間が経過すると、目標温度に対して適切な空調制御がなされている空間と不適切な空調制御がなされている空間とが混在する場合がある。
例えば、空調制御を開始してからしばらくの期間が経過した空調空間の状況が図4(a)に示す状況である場合、推定温度が26℃である空間Z1−aは、ゾーンZ1の目標温度(26℃)に対して適切な空調制御がなされている空間と言え、一方、推定温度が28℃である空間Z1−bは、目標温度に対して不適切な空調制御がなされている空間であると言える。
【0045】
従来のフィードバック制御による空調制御では、上記のように適切な空調制御がなされている空間と不適切な空調制御がなされている空間とが空調空間に混在している状況であっても、ゾーンZ1の温度分布の任意の点における推定温度の平均値を、ゾーンZ1の室温の計測値Tp1とすることが一般的である。
具体例として、室温の計測値Tp1は、ゾーンZ1に存在している人の位置における推定温度の平均値とすることができ、図4(a)の場合、
Tp1=(26×7+28×1)÷8=26.25℃
となる。また、ゾーンZ1に存在している人が集中している空間の推定温度を室温の計測値Tp1とすることもでき、図4(a)の場合、ゾーンZ1の室温の計測値Tp1は、空間Z1−aに人が集中していることから、
Tp1=26℃
となる。
【0046】
上述した従来技術では、空調空間の状況が図4(a)に示す状況である場合、ゾーンZ1の室温の計測値Tp1とゾーンZ1の目標温度とが近似した値となることから、ゾーンZ1における現時点の温度分布を維持するような操作量の調和空気を吹出口から吹き出すフィードバック制御による空調制御が実行される。すなわち、ゾーンZ1内の空間Z1−aおよびZ1−bの温度分布を維持するような空調制御が実行される。
しかしながら、空間Z1−bの推定温度は28℃であり、目標温度に対し不適切な空調制御がなされている空間であるにもかかわらず、この温度分布を維持するような空調制御が実行されることから、空間Z1−bにおいては、目標温度に対し不適切な空調制御が継続して実行されてしまう。
【0047】
本発明では、このようなフィードバック制御によって、目標温度に対して適切な空調制御がなされている空間と不適切な空調制御がなされている空間とを空調空間内に混在させた状態を継続してしまう場合があることに着目し、空調空間の室温の計測値を、空調空間に在圏している人の配置状況と空調空間の推定温度分布との関係を考慮して導出し、導出した空調空間の室温の計測値と目標温度との差分に基づいたフィードバック制御による空調制御を実行するものである。
例えば、本実施の形態にかかる空調制御装置10は、空調空間内における人の密集度と空調空間の推定温度分布との関係を考慮した空調空間の室温の計測値を導出し、空調空間の室温の計測値と目標温度との差分に基づいたフィードバック制御による空調制御を実行することにより、空調空間内の人の存在の疎密にかかわらず、目標温度に対して適切な空調制御が空調空間全体になされるようにしたものである。
【0048】
具体的には、空調空間の状況が図4(b)に示す場合、本実施の形態にかかる空調制御装置10の重み導出部15D−1は、配置情報14Dに基づいてゾーンZ1内に存在する人の密集度を示す重み係数を、その人の位置に応じて導出する。なお、導出される重み係数の値(M1〜M8)は、人が密集している空間Z1−a内に存在している人の位置に対応する値(M1〜M7)の方が、人が孤立している空間Z1−b内の人の位置に対応する値(M8)よりも小さくなり、また、導出される重み係数の値の総和が1になるといった特徴がある。
【0049】
ゾーンZ1内の各位置に対応する重み係数が導出されると、空調制御装置10の算出部15D−2は、推定温度分布データ14Cから重み係数に対応する位置の推定温度を抽出し、推定温度に対応する重み係数を乗じた値を全て加算することによってゾーンZ1の仮想室温測定値VTpを算出する。図4(b)に示すように、空間Z1−aの推定温度が26℃、空間Z1−bの推定温度が28℃である場合、仮想室温測定値VTpは、
VTp=(M1+M2+M3+M4+M5+M6+M7)×26+M8×28
によって算出できる。
このように算出されたゾーンZ1の仮想室温測定値VTpが27℃であったとすると、空調制御指示部15Eは、ゾーンZ1の目標温度Tp=26℃と、算出された仮想室温測定値VTp=27℃との差分に基づいた調和空気の操作量を決定して、空調システム40に対しその操作量で空調制御を実行するよう指示する。
【0050】
<重み係数の導出方法について>
ここで、重み導出部15D−1によって導出される重み係数の導出方法について、具体的に説明する。
重み導出部15D−1によって導出される重み係数は、上述したように、人が密な状態の空間内に存在する人の位置に対応する値が低く、一方、人が疎な状態の空間内に存在する人の位置に対応する値が高い、といった特徴がある。このような、対象の現象が空間的な相関を持ち、かつ、位置が近いものは近い値を有するデータの加重平均を求める手法として、平均値のクリギング推定が知られている。
平均値のクリギング推定は、任意のn点の位置でデータが測定された場合、加重平均を求めることで、そのデータの代表値を計算する手法であり、以下に示す(式1)により計算される。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、(式1)中のWαは重み係数、Zはデータの測定値、Xαは位置ベクトルを表す。また、以下に示す(式2)の線形連立方程式から算出される重み係数Wαを用いることで、(式1)によって計算される代表値の推定誤差分散をできる限り小さくすることができる。
【0053】
【数2】
【0054】
ここで、(式2)中のμは、ラグランジュ乗数を表す。また、関数Cは、共分散関数C(h)を表し、例えばガウス型の共分散関数として(式3)に示す関数として仮定する。
【0055】
【数3】
【0056】
上記の線形連立方程式(式2)を、行列形式で表した式を(式4)に、簡潔に表した式を(式5−1)に示す。この線形連立方程式を重み係数Wαおよびμを要素とするベクトルwについて解くことにより、任意のn点の位置における重み係数Wnを算出することができる。
具体的には、(式5−2)に示すように、n+1次の行列KMの逆行列を両辺にかけることによって、ベクトルwを求めることができる。
【0057】
【数4】
【数5】
【0058】
次に、図5を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作について説明する。図5は、本実施の形態にかかる空調制御装置10の空調制御処理を示すフローチャートである。
空調制御装置10の演算処理部15は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて、図5の空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、空間条件データ14A、空調状況データ14B、人検知結果データ14G、設定温度情報14Fが予め記憶部14に格納されているものとする。
【0059】
図5に示すように、分布系流動解析部15Bは、空調空間50に関する空間条件データ14Aとデータ入力部15Aで取得した空調状況データ14Bとを記憶部14から読み出し、CFD順解析することによって空調空間50全体の温度分布を推定し、推定温度分布データ14Cを出力する(ステップS101)。
【0060】
推定温度分布データ14Cが出力されると、配置情報生成部15Cは、存在確認システム43による空調空間50に存在している人の人数と位置との検出結果を表す人検知結果データ14Gを記憶部14から読み出して取得し(ステップS102)、取得した人検知結果データ14Gから、空調空間50内に存在している人の位置と人数とを関連付けて空調空間50における人の配置状況を示す配置情報14Dを生成し、出力する(ステップS103)。
【0061】
配置情報14Dが出力されると、仮想状態測定値導出部15Dは、分布系流動解析部15Bで推定した空調空間50における温度分布を示す推定温度分布データ14Cと、空調空間50内に存在している人の配置状況を示す配置情報14Dとから、空調空間50に存在している人の密集の度合いを考慮した空調空間50の室温の測定値(仮想室温測定値)を導出し、仮想室温情報14Eを出力する(ステップS104)。
【0062】
仮想室温情報14Eが出力されると、空調制御指示部15Eは、仮想状態測定値導出部15Dによって出力された仮想室温情報14Eと、記憶部14に記憶されている空調空間50の目標温度を示す設定温度情報14Fとに基づいて、仮想室温測定値と目標温度の値との間に差があるか否かを判定する(ステップS105)。
【0063】
仮想室温測定値と目標温度の値との間に差が存在しない場合(ステップS105で「NO」の場合)、空調制御装置10は、空調制御指示部15Eに現状の操作量を維持する指示を空調システム40へ出力させるとともに、改めて空調制御処理を開始する(ステップS101)。または、現状の操作量を維持させた後、空調制御処理を終了し、オペレータの操作に応じた空調制御処理の開始まで待機状態としても良い。
【0064】
一方、仮想室温測定値と目標温度の値との間に差が存在する場合(ステップS105で「YES」)、空調制御指示部15Eは、仮想室温測定値と目標温度の値との差分に応じた調和空気の操作量を決定し、空調処理装置41へ決定された操作量を指示することにより空調システム40を制御する(ステップS106)。
【0065】
このように、本実施の形態によれば、分布系熱流動解析手法で得られた空調空間内の温度分布(状態分布)と空調空間内の人の配置状況とに基づいて、空調空間内に存在している人の密集の度合いを考慮した空調空間の室温の測定値、すなわち仮想室温測定値(仮想状態測定値)を導出し、この仮想室温測定値と空調空間の目標温度(状態目標値)の値との差分に基づくフィードバック制御動作により空調空間内の空調環境を調整することができる。
したがって、空調空間内の居住者の配置状況のばらつきにかかわらず、その空調空間全体に対して適切な空調制御を実行することができ、空調空間内の居住者が抱く不快感を緩和させることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、空調制御装置10において、空調空間50の空調環境のうち温度分布を制御する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、風速、湿度、CO2など、空調空間50における温度以外の空調環境についても、温度センサに代えて、これら状態を検出するセンサを用いることにより、前述と同様に制御することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、図6〜8を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図6は、第2の実施の形態にかかる空調制御装置20の構成を示すブロック図である。図7は、第2の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。図8は、第2の実施の形態にかかる空調制御装置20の仮想室温測定値の算出動作を示すフローチャートである。
【0068】
第1の実施の形態では、仮想状態測定値導出部15Dが、空調空間に存在している人の密集の度合いを考慮した仮想室温測定値を導出する場合について説明した。本実施の形態においては、仮想室温測定値を導出する際に、空調空間を任意の領域に分割してそれぞれの領域の代表温度から空調空間の仮想室温測定値を導出する場合について説明する。
【0069】
本実施の形態にかかる空調制御装置20は、図6に示すように、主な機能部として、通信I/F部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部25が設けられており、演算処理部25は、データ入力部15Aと、分布系流動解析部15Bと、配置情報生成部15Cと、仮想状態測定値導出部25Dと、空調制御指示部15Eとを備えている。なお、第1の実施の形態において説明した空調制御装置10の構成要素と同一の構成および機能を有するものには、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0070】
本実施の形態にかかる空調制御装置20の仮想状態測定値導出部25Dは、分割部25D−1、代表状態値導出部25D−2、平均算出部25D−3、仮想状態値算出部25D−4とから構成されている。
【0071】
分割部25D−1は、空調制御の対象となる空調空間50を任意の複数の領域に分割する。
本実施の形態において、分割部25D−1は、配置情報生成部15Cによって出力される配置情報14Dに基づいて、空調空間50に存在している人の配置状況に応じて複数の領域に分割する。例えば、図7(A)に示すように、空調空間であるゾーンZ1内に存在している人の配置状況に応じて、ゾーンZ1を領域A1〜A3に分割する。
【0072】
代表状態値導出部25D−2は、分割部25D−1によって分割された領域の室温の測定値を、分布系流動解析部15Bによって出力された推定温度分布データ14Cに基づいて分割された領域毎に推定し、各領域の代表温度として出力する。
本実施の形態において、代表状態値導出部25D−2は、図7(A)に示すように、ゾーンZ1を分割した領域A1〜A3の代表温度を推定温度分布データ14Cから推定する。
【0073】
例えば、領域A1の中心位置における推定温度が26℃であると推定温度分布データ14Cから推定される場合、領域A1の代表温度を26℃とすることができる。同様に、領域A2の中心位置における推定温度が26℃と推定されるならば、領域A2の代表温度は26℃とし、領域A3の中心位置における推定温度が28℃と推定されるならば、領域A3の代表温度は28℃となる。
【0074】
平均算出部25D−3は、分割部25D−1によって分割された複数の領域のうち、近接する2つの領域を新たな1つの領域へ統合するとともに、統合した2つの領域の代表温度の平均値を算出する。
本実施の形態において、平均算出部25D−3は、図7(B)に示すように、近接する領域A1と領域A2とを1つの領域B1へ統合して、領域A1と領域A2の代表温度の平均値を算出し、算出した平均値(26℃)を領域B1の代表温度とする。
【0075】
仮想状態値算出部25D−4は、分割部25D−1によって分割された複数の領域が1の領域に統合された際に算出された代表温度の平均値を、空調空間50の仮想室温測定値として出力する。
本実施の形態において、仮想状態値算出部25D−4は、平均算出部25−Dによる代表温度の平均値の算出動作を、図7(C)に示すように、分割部25D−1によって分割された複数の領域が1の領域C1へ統合されるまで繰り返し実行させることにより、空調空間50の仮想室温測定値を算出する。具体的には、図7(A)〜(C)に示すように、ゾーンZ1内の複数の領域のうち、始めに、近接する領域A1と領域A2を領域B1へ統合して代表温度を算出し、次に、ゾーンZ1内の近接する領域B1とA3を領域C1へ統合して代表温度を算出することにより、ゾーンZ1の仮想室温測定値を算出する。
【0076】
本実施の形態における仮想状態測定値導出部25Dによる仮想室温測定値の導出方法について、空調空間50を任意の領域へ分割する際に、第1の実施の形態において説明した重み係数を用いることによって、空調空間50を複数の領域へ分割することができる。例えば、重み係数の値が近い値を示す領域、すなわち人の密集の度合いが類似している領域毎に空調空間50を分割するとしても良い。
【0077】
また、分割された領域の代表温度を用いた空調区間50の仮想室温測定値の算出方法としては、空調空間50を分割した各領域の代表温度の平均を導出するK−means(K平均法)アルゴリズムを利用することができる。
K−means(K平均法)は、複数のデータnをランダムに複数のクラスタKに割り振り、各クラスタの中心値を計算し、この中心値に最も近いデータをその中心値に対応するクラスタに割り当て直す処理を繰り返し実行することにより、データnの平均を求める手法である。
【0078】
次に、本実施の形態にかかる空調制御装置20の仮想室温測定値の算出動作について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
空調制御装置20の演算処理部25は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、空間条件データ14A、空調状況データ14B、人検知結果データ14G、設定温度情報14Fが予め記憶部14に格納されているものとする。
【0079】
図8に示すように、空調制御装置20による空調制御処理が開始されると、仮想状態測定値導出部25Dは、分布系流動解析部15Bによって推定された空調空間50の温度分布を表す推定温度分布データ14Cと、配置情報生成部15Cによって生成された空調空間50に存在している人の配置状況を表す配置情報14Dとを取得する(ステップS201)。
【0080】
推定温度分布データ14Cと配置情報14Dとを取得すると、仮想状態測定値導出部25Dは、取得した配置情報14Dに基づいて空調空間50を複数の領域へ分割する(ステップS202)。
空調空間50が複数の領域に分割されると、仮想状態測定値導出部25Dは、取得した推定温度分布データ14Cに基づいて分割された各領域の代表温度を導出する(ステップS203)。ここで導出される代表温度は、分割された領域の中心位置の推定温度とすることができる。
【0081】
分割された領域毎に代表温度が導出されると、仮想状態測定値導出部25Dは、空調空間50内の複数の領域のうち、近接する2つの領域の代表温度の平均値を算出してこれら領域を1つの領域へ統合し、算出した代表温度の平均値を統合後の領域の代表温度とする(ステップS204)。
【0082】
仮想状態測定値導出部25Dは、空調空間50を分割した領域が1つに統合されたか否かを判定する(ステップS205)。
空調空間50内に分割した領域が複数存在している場合(ステップS205で「NO」)、仮想状態測定値導出部25Dは、再び空調空間50内の近接する2つの領域を統合して代表温度を導出する(ステップS204)。
【0083】
一方、空調空間50を分割した領域が1つに統合されている場合(ステップS205で「YES」)、仮想状態測定値導出部25Dは、1つに統合された領域の代表温度を空調空間50の仮想室温測定値として導出する(ステップS206)。
【0084】
このように、本実施の形態によれば、分布系熱流動解析手法で得られた空調空間内の温度分布のデータに応じて空調空間を複数の任意の領域に分割して領域毎の代表温度の平均を仮想室温測定値として導出し、この仮想室温測定値と空調空間の目標温度の値との差分に基づくフィードバック制御動作により空調空間内の空調環境を調整することができる。
したがって、空調空間内の熱分布にばらつきがある場合においても、その空調空間に対する適切な空調制御が安定してなされるとともに、空調空間内の居住者が抱く不快感を緩和させることができる。
【0085】
[第3の実施の形態]
次に、図9〜図11を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図9は、第3の実施の形態にかかる空調制御装置30の構成を示すブロック図である。図10は、第3の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。図11は、第3の実施の形態にかかる空調制御装置30の仮想室温測定値の算出動作を示すフローチャートである。
【0086】
第2の実施の形態では、空調空間を任意の領域に分割し、それぞれの領域の代表温度から空調空間の仮想室温測定値を導出する場合について説明したが、本実施の形態においては、分割した領域について、少なくとも1人の人が存在する領域となるよう空調空間を分割することにより、空調空間の仮想室温測定値を導出する場合について説明する。
【0087】
本実施の形態にかかる空調制御装置30は、図9に示すように、主な機能部として、通信I/F部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部35が設けられており、演算処理部35は、データ入力部15Aと、分布系流動解析部15Bと、配置情報生成部15Cと、仮想状態測定値導出部35Dと、空調制御指示部15Eとを備えている。なお、第1および第2の実施の形態において説明した空調制御装置10,20の構成要素と同一の構成および機能を有するものには、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0088】
本実施の形態にかかる空調制御装置30の仮想状態測定値導出部35Dは、分割部35D−1、代表状態値導出部35D−2、平均算出部35D−3とから構成されている。
分割部35D−1は、空調制御の対象となる空調空間50を複数の領域に分割する。その際、空調空間50内に存在している人が複数の領域に渡って存在しないよう空調空間50を分割する。
【0089】
本実施の形態において、分割部35D−1は、配置情報生成部15Cによって出力される配置情報14Dに基づいて、空調空間50に存在している人の配置状況に応じて複数の領域に渡って1人の人が存在しないように空調空間50を複数の領域へ分割する。
例えば、図10(A)に示すように、人感センサHS1によって検出された空調空間50のゾーンZ1内に存在している人の配置状況を示す配置情報14Dに基づいて、1人の人が複数の領域に存在しないようにゾーンZ1を4つの領域に分割する。なお、1人の人が複数の領域に渡って存在しないような領域に分割可能であれば、領域の分割数は制限されない。
【0090】
代表状態値導出部35D−2は、分割部35D−1によって分割された領域の室温の測定値を、分布系流動解析部15Bによって出力された推定温度分布データ14Cに基づいて分割された領域毎に推定し、各領域の代表温度として出力する。
本実施の形態において、代表状態値導出部35D−2は、図10(A)に示すように、ゾーンZ1を分割した4つの領域の代表温度を推定温度分布データ14Cから推定する。推定される各領域の代表温度は、例えば、領域内の推定温度の平均とすることができる。また、分割された領域の中心位置の推定温度を代表温度としても良い。
【0091】
平均算出部35D−3は、分割部35D−1によって分割された領域のうち、少なくとも1人の人が存在している領域を選択し、選択した領域の代表温度の平均値を算出する。
本実施の形態において、平均算出部35D−3は、図10(B)に示すように、人が存在している領域(図10(A)から、左上と右下の領域)を選択して、選択した領域の代表温度の平均値を算出する。
仮想状態測定値導出部35Dは、図10(C)に示すように、平均算出部35D−3によって算出された代表温度の平均値を、ゾーンZ1の仮想室温測定値として出力する。
【0092】
次に、本実施の形態にかかる空調制御装置30の仮想室温測定値の算出動作について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
空調制御装置30の演算処理部35は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、空間条件データ14A、空調状況データ14B、人検知結果データ14G、設定温度情報14Fが予め記憶部14に格納されているものとする。
【0093】
図11に示すように、空調制御装置30による空調制御処理が開始されると、仮想状態測定値導出部35Dは、分布系流動解析部15Bによって推定された空調空間50の温度分布を表す推定温度分布データ14Cと、配置情報生成部15Cによって生成された空調空間50に存在している人の配置状況を表す配置情報14Dとを取得する(ステップS301)。
【0094】
推定温度分布データ14Cと配置情報14Dとを取得すると、仮想状態測定値導出部35Dは、取得した配置情報14Dに基づいて空調空間50を複数の領域へ分割する(ステップS302)。その際、空調空間50に存在している人の1人が、複数の領域に渡って存在しないよう空調空間50を分割する。
【0095】
空調空間50が複数の領域に分割されると、仮想状態測定値導出部35Dは、取得した推定温度分布データ14Cに基づいて分割された各領域の代表温度を導出する(ステップS303)。このステップにおいて導出される代表温度は、分割された領域内の推定温度の平均値としても良く、領域の中心位置の推定温度としても良い。
【0096】
分割された領域毎に代表温度が導出されると、仮想状態測定値導出部35Dは、空調空間50内の複数の領域のうち、少なくとも1人の人が存在している領域を抽出し(ステップS304)、抽出した領域の代表温度の平均値を算出する(ステップS305)。
仮想状態測定値導出部25Dは、算出された代表温度の平均値を空調空間50の仮想室温測定値として出力する(ステップS306)。
【0097】
このように、本実施の形態によれば、人の存在位置に応じて空調空間を複数の任意の領域に分割し、分布系熱流動解析手法で得られた空調空間内の温度分布のデータから領域毎の代表温度を導出し、人が存在している領域の代表温度の平均を仮想室温測定値として導出し、この仮想室温測定値と空調空間の目標温度の値との差分に基づくフィードバック制御動作により空調空間内の空調環境を調整することができる。
したがって、空調空間内の熱分布にばらつきがある場合においても、その空調空間に存在する人の存在位置によらず空調空間全体に対する適切な空調制御が安定してなされるとともに、空調空間内の居住者が抱く不快感を緩和させることができる。
【0098】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
10,20,30…空調制御装置、11…通信インターフェース部(通信I/F部)、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…空間条件データ、14B…空調状況データ、14C…推定温度分布データ、14D…配置情報、14E…仮想室温情報、14F…設定温度情報、14G…人検知結果データ、15,25,35…演算処理部、15A…データ入力部、15B…分布系流動解析部、15C…配置情報生成部、15D、25D,35D…仮想状態測定値導出部、15D−1…重み導出部、15D−2…算出部、25D−1,35D−1…分割部、25D−2,35D−2…代表状態値導出部、25D−3,35D−3…平均算出部、25D−4…仮想状態値算出部、15E…空調制御指示部、40…空調システム、41…空調処理装置、42,VAN1〜VAN4…空調機器、F1〜F4…吹出口、43…存在確認システム、HS1〜HS4…人感センサ、50…空調空間、Z1〜Z2…ゾーン(空調空間)、L…通信回線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御装置および方法に関し、特に分布系熱流動解析手法を用いて空間内の目的場所における空調環境を制御するための空調制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間内を所望の空調環境に維持する場合、空気調和すべき空調空間に空調機器を設けるとともに、空調空間の各エリアを代表する位置に温度センサを配置し、温度センサの出力に応じて空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を決定するものとなっている。
【0003】
一方、オフィスなどの大空間では、空調空間内に設置した複数の事務機器や電話機それぞれに温度センサを設け、事務機器や電話機に設けられた温度センサの出力と、これら事務機器や電話機に関連付けられたユーザの在席情報とに基づいて、空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を決定する技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
具体的には、特許文献1に開示される技術は、空調空間内に設置された事務機器や電話機に搭載された温度センサによって取得された温度信号に対して、事務機器や電話機に関連付けられているユーザの在席情報に応じた重み付けを行うことによって空調空間の代表温度を算出するとともに、空調空間における空調機器の設定温度に対してユーザの在席情報に応じた重み付けを行うことにより設定代表温度を算出する。これら算出した代表温度と設定代表温度との差分を算出し、この差分に応じて空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−14219号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】加藤信介・小林光・村上周三、「不完全混合室内における換気効率・温熱環境形成効率評価指標に関する研究 第2報-CFDに基づく局所領域の温熱環境形成寄与率評価指標の開発」、東大生研:空気調和・衛生工学論文集No.69、pp.39-47、1998.4
【非特許文献2】安部恒平、桃瀬一成、木本日出夫、「随伴数値解析を利用した自然対流場の最適化」、日本機械学会論文集(B編)、70巻691号、pp.729-736、2004.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、ユーザの在席情報から、ユーザの配置状況に対して重みを持たせて算出した代表温度と設定代表温度との差分に応じた空調制御を実行する技術であることから、空調空間内のユーザが密集して在席している領域と散在して在席している領域とが存在している場合、ユーザの在席状態が疎である領域では、密である領域に比較して重み付けが軽いために、在席状態が疎である領域に在席しているユーザに対して不快感を与える場合があるといった問題があった。
【0008】
すなわち、特許文献1に開示されている技術は、空調空間内におけるユーザの配置状況にばらつきがある場合、空調空間全体として適切な空調制御が実行されないといった問題があった。
そこで、本発明は上述の問題を解決するために、空調空間内に存在するユーザの配置状況のばらつきにかかわらず、その空調空間において適切な空調制御を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明にかかる空調制御装置は、空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、空調機器での操作量を指示することにより、空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置であって、空調空間の構成および空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、目的空調環境下における空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、当該空調環境の状態分布を推定する分布系流動解析部と、空調空間内に存在する人の人数および位置を検知して空調空間内の人の配置状況を示す配置情報を生成する配置情報生成部と、分布系流動解析部によって推定された状態分布に基づいて空調空間内の任意の位置における空調環境の状態を仮想状態測定値として導出する仮想状態測定値導出部と、空調空間における空調環境の目標となる状態目標値と空調空間の仮想状態測定値との差分に基づいて空調システムを制御する制御部とを備えている。
【0010】
この際、仮想状態測定値導出部に、配置情報から、人の密集の度合いに応じて当該空調空間を複数の領域に分割する分割部と、分布系流動解析部によって推定された当該空調空間内の状態分布から、分割部によって分割された領域の任意の位置の状態値を領域毎に推定して各領域の代表状態値とする代表状態値導出部と、この代表状態値導出部によって導出された領域毎の代表状態値に基づいて仮想状態測定値を算出する算出部とを備えるようにしてもよい。
【0011】
また、算出部で、分割部によって分割された領域のうち、少なくとも1人の人が存在する領域を選択し、この選択された領域の代表状態値の平均値を仮想状態測定値として算出するようにしてもよい。
【0012】
また、算出部に、分割部によって分割された領域のうち、近接する領域を新たな1つの領域へ統合するとともに近接する2以上領域の代表状態値の平均値を算出する平均算出部と、分割部によって分割された領域が1の領域となるまで平均算出部による平均値の算出動作を繰り返し実行させ、分割された領域が1の領域となった際の平均値を仮想状態測定値とする仮想状態値算出部とを備えるようにしてもよい。
【0013】
また、仮想状態測定値導出部に、配置情報から、人の密集の度合いが高くなればより小さくなる重み係数を、当該空調空間内の人が存在している位置に関連付けて導出する重み導出部と、分布系流動解析部によって推定された当該空調空間内の状態分布と、重み導出部によって導出された重み係数と、当該空調空間内の人が存在している位置とに基づいて仮想状態測定値を算出する算出部とを備えるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明にかかる空調制御方法は、空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、空調機器での操作量を指示することにより、空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置で用いる空調制御方法であって、分布系流動解析部が、空調空間の構成および空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、目的空調環境下における空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、当該空調環境の状態分布を推定する分布系流動解析ステップと、配置情報生成部が、空調空間内に存在する人の人数および位置を検知して空調空間内の人の配置状況を示す配置情報を生成する配置情報生成ステップと、仮想状態測定値導出部が、分布系流動解析ステップによって推定された状態分布に基づいて空調空間内の任意の位置における空調環境の状態を仮想状態測定値として導出する仮想状態測定値導出ステップと、制御部が、空調空間における空調環境の目標となる状態目標値と空調空間の仮想状態測定値との差分に基づいて空調システムを制御する制御部ステップとを備えている。
【0015】
この際、仮想状態測定値導出ステップに、配置情報から、人の密集の度合いに応じて当該空調空間を複数の領域に分割するステップと、分布系流動解析ステップによって推定された当該空調空間内の状態分布から、分割ステップによって分割された領域の任意の位置の状態値を領域毎に推定して各領域の代表状態値とする代表状態値導出ステップと、この代表状態値導出ステップによって導出された領域毎の代表状態値に基づいて仮想状態測定値を算出する算出ステップとを備えてもよい。
【0016】
また、算出ステップに、分割ステップによって分割された領域のうち、少なくとも1人の人が存在する領域を選択し、この選択された領域の代表状態値の平均値を仮想状態測定値として算出するステップを備えてもよい。
【0017】
また、算出ステップに、分割ステップによって分割された領域のうち、近接する領域を新たな1つの領域へ統合するとともに近接する2以上領域の代表状態値の平均値を算出する平均算出ステップと、分割ステップによって分割された領域が1の領域となるまで平均算出ステップによる平均値の算出動作を繰り返し実行させ、分割された領域が1の領域となった際の平均値を仮想状態測定値とする仮想状態値算出ステップとを備えてもよい。
【0018】
仮想状態測定値導出ステップに、配置情報から、人の密集の度合いが高くなればより小さくなる重み係数を、当該空調空間内の人が存在している位置に関連付けて導出する重み導出ステップと、分布系流動解析ステップによって推定された当該空調空間内の状態分布と、重み導出ステップによって導出された重み係数と、当該空調空間内の人が存在している位置とに基づいて仮想状態測定値を算出する算出ステップとを備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分布系熱流動解析手法で得られた空調空間内の状態分布と空調空間内の人の配置状況とに基づいて、空調空間内に存在している人の人数や位置といった配置状況を考慮した空調空間の仮想状態測定値を導出し、この仮想状態測定値と空調空間の状態目標値との差分に基づくフィードバック制御動作により空調空間内の空調環境を調整する。
したがって、空調空間内の居住者の配置状況のばらつきにかかわらず、その空調空間において適切な空調制御を実行することができ、空調空間内の居住者が抱く不快感を緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる空調制御装置による空調制御動作が実行される空調空間の構成例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態にかかる空調制御装置の各機能について説明する図である。
【図4】第1の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。
【図5】第1の実施の形態にかかる空調制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】第2の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。
【図8】第2の実施の形態にかかる空調制御装置の仮想室温測定値の算出動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第3の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。
【図11】第3の実施の形態にかかる空調制御装置の仮想室温測定値の算出動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態にかかる空調制御装置について、図1および図2を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、本実施の形態にかかる空調制御装置による空調制御動作が実行される空調空間の構成例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態にかかる空調制御装置10は、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、空調システム40を制御することにより、空調空間50の目的場所における空調環境を制御する。
また、空調システム40は、主な構成として、空調処理装置41、空調機器42、および存在確認システム43から構成されている。
【0023】
空調処理装置41は、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、通信回線Lを介して空調制御装置10から指示された操作量に基づいて、空調機器42により各吹出口から空調空間50へ吹き出す調和空気を制御する。
空調機器42は、空調処理装置41から指示される操作量で調和空気を各吹き出し口から空調空間50へ吹き出す。
このように、上記の空調処理装置41および空調機器42によって空調空間50全体の空調環境が制御される。
【0024】
さらに、空調システム40は、存在確認システム43により空調空間50内に在圏する人の人数や位置を検知し、通信回線Lを介して空調制御装置10へ通知する機能を有している。なお、存在確認システム43としては、RFIDなどを用いて人の位置を正確に検知できる一般的な位置検知システムのほか、既存の入退室管理システムなど、ある領域に存在している人の人数と位置とを管理する機能を持つ他のシステムを存在確認システム43として用いても良い。
【0025】
図2の例では、空調空間50がゾーンZ1〜Z4の4つのゾーンに区分されている。これらゾーンZ1〜Z4には、空調機器42としてVAV1〜VAV4がそれぞれのゾーンZ1〜Z4の天井に設けた吹出口F1〜F4にそれぞれ設置されており、VAV1〜VAV4は、空調処理装置41を介して空調制御装置10から指示された、吹出風量Vm1〜Vm4などの操作量に基づいて、空調機(図示せず)から供給された調和空気を調整し、各吹出口F1〜F4からそれぞれに対応するゾーンZ1〜Z4へ吹き出す機能を有している。
空調空間50のゾーンZ1〜Z4は、壁によって空間として明確に区分されている空間ではなく、それぞれのVAV1〜VAV4から吹き出された調和空気が互いに対流しうる状況にある。
【0026】
また、空調空間50のゾーンZ1〜Z4には、人感センサとしてHS1〜HS4がそのゾーンの天井など人の位置と人数とを検知できる場所にそれぞれ設置されている。HS1〜HS4によって検知されたゾーンZ1〜Z4内に在圏する人の位置と人数に関する検知結果は、人検知結果データとして存在確認システム43により通信回線Lを介して空調制御装置10へ送信される。
【0027】
[空調制御装置]
本実施の形態にかかる空調制御装置10の構成および機能について、図1および図3を参照して詳細に説明する。図3は、本実施の形態にかかる空調制御装置10の各機能について説明する図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる空調制御装置10は、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
【0028】
通信I/F部11は、専用のデータ通信回路からなり、通信回線Lを介して接続された空調システム40などの外部装置との間でデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、演算処理部15からの指示に応じて、操作メニューや入出力データなどの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0029】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15で用いる各種データやプログラム14Pを記憶する機能を有している。
プログラム14Pは、演算処理部15に読み出されて実行されるプログラムであり、予め外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して記憶部14へ格納される。
また、本実施の形態において、記憶部14は、空調空間50の形状と空調システム40によって生成される調和空気の吹出口に関する位置および形状とを示す空間条件データ14Aと、存在確認システム43から出力され通信I/F部11を介して受信した人検知結果データ14Gと、空調空間50の目標温度に関する情報を示す設定温度情報14Fを予め記憶している。
【0030】
演算処理部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14からプログラム14Pを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部15で実現される主な処理部として、データ入力部15A、分布系流動解析部15B、配置情報生成部15C、仮想状態測定値導出部15D、および空調制御指示部15Eがある。
【0031】
データ入力部15Aは、空調システム40などの外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して入力された、演算処理部15で用いる各種処理情報を、記憶部14へ予め格納する機能を有している。
本実施の形態においては、例えば、吹出口F1〜F4から吹き出す調和空気の吹出速度(風量および風向)と吹出温度とを示す境界条件データと、空調空間50に存在するパソコンや事務機器、照明器具といった発熱体に関する位置および発熱量を示す発熱体データとからなる空調状況データ14Bがデータ入力部15Aによって入力され、記憶部14へ格納される。
【0032】
分布系流動解析部15Bは、データ入力部15Aによって取得された空調状況データ14Bと、記憶部14に格納されている空間条件データ14Aとに基づきCFD順解析を行うことにより、空調空間50内の温度分布などの状態分布を推定する機能を有している。
【0033】
分布系流動解析手法とは、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)を基本として、境界条件から空間の温度や気流等の分布を数値計算によって求める技術である。一般的なCFDでは、対象空間を網目状の小空間に分割し、隣接する小空間間における熱流を解析する。
分布系流動解析部15BにおけるCFD順解析は、この分布系流動解析手法を用いて、空調空間50に関する空調状況データ14Bおよび空間条件データ14Aから、空調空間50内の温度分布や気流分布などの空調環境を算出する技術であり、具体的には非特許文献1などの公知技術を用いればよい。
【0034】
本実施の形態において、図3に示すように、分布系流動解析部15Bは、空間条件データ14Aと、データ入力部15Aにより入力された空調状況データ14Bとに基づいて、CFD順解析を実行して空調空間50内の温度分布(状態分布)を推定し、推定結果として推定温度分布データ14Cを生成する。分布系流動解析部15Bは、生成した推定温度分布データ14Cを後述する仮想状態測定値導出部15Dへ出力するとともに、記憶部14へ格納する。
【0035】
配置情報生成部15Cは、存在確認システム43から出力され記憶部14に格納されている空調空間50内における人検知結果データ14Gから、空調空間50内に存在している人の位置と人数とを関連付けた配置状況を示す配置情報14Dを生成する機能を有している。
本実施の形態において、配置情報生成部15Cは、空調空間50内の各ゾーンZ1〜Z4毎の人の配置状況を示す配置情報14Dを生成し、記憶部14へ格納する。
【0036】
仮想状態測定値導出部15Dは、分布系流動解析部15Bによって推定された空調空間50の温度分布を示す推定温度分布データ14Cと、配置情報生成部15Cによって生成された配置情報14Dとに基づいて、空調空間50の室温の計測値に相当する仮想室温測定値(仮想状態測定値)を導出する機能を有している。
本実施の形態において、仮想状態測定値導出部15Dは、重み導出部15D−1と算出部15D−2とを備えている。
【0037】
重み導出部15D−1は、配置位置情報14Dから、人の密集の度合い(以下、「密集度」という。)が高くなるほどより小さくなる重み係数を、空調空間50内の人が存在している位置に関連付けて導出する機能を有している。
算出部15D−2は、推定温度分布データ14Cと、重み導出部15D−1によって導出された重み係数とから、空調空間50の仮想室温測定値を算出する機能を有している。
【0038】
空調制御指示部15Eは、空調空間50の目標温度(状態目標値)と仮想状態測定値導出部15Dによって算出された仮想室温測定値との差分に基づいて、空調システム40を制御する機能を有している。
本実施の形態において、空調制御指示部15Eは、空調空間50の目標温度を示す設定温度情報14Fと、仮想状態測定値導出部15Dによって算出された空調空間50の仮想室温測定値を示す仮想室温情報14Eとに基づいて吹出口F1〜F4から吹き出す調和空気の操作量を決定し、通信回線Lを介して空調処理装置41へ決定された操作量を指示することにより、空調システム40を制御する。
【0039】
<仮想室温測定値について>
ここで、本発明における仮想状態測定値導出部15Dによって導出される、空調空間50の室温の計測値に相当する仮想室温測定値の技術的意義について、図4を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態において、空調空間50は各ゾーンZ1〜Z4毎に空調制御がなされる構成となっており、以下、空調空間50のゾーンZ1を空調制御の対象空間として説明する。
【0040】
本実施の形態において、分布系熱流動解析手法を用いて分布系流動解析部15Bによって推定される空調空間50の温度分布に基づいて、空調空間50の任意の位置における温度を「仮想室温測定値」として仮想状態測定値導出部15Dは導出する。
【0041】
図4は、空調空間50のゾーンZ1に存在している人の配置状況の一例を示す図である。図4に示すように、目標温度が26℃であるゾーンZ1には、分布系流動解析部15Bによって推定された温度(以下、「推定温度」という)が26℃である空間Z1−aと、推定温度が28℃である空間Z1−bとがある。また、人感センサHS1によってゾーンZ1に存在している人の位置と人数が検知され(図中の◆で示す点を人とする。)、空間Z1−aには、人が7人存在し、空間Z1−bには、人が1人存在している。
【0042】
一般的に、空調制御の対象である空調空間を目標温度となるよう空調制御する際には、その空調空間の室温の計測値と目標温度との差分に基づいたフィードバック制御による空調制御が実行される。
フィードバック制御による空調制御とは、空調空間の目標温度と、空調空間の室温に相当する計測値との偏差に対応する直前の操作量に対する差分(操作量差分)を求め、この操作量差分に基づいた調和空気を吹出口から吹き出すことにより、空調空間の室温を目標温度へ近づける制御である。
【0043】
本実施の形態においては、フィードバック制御による空調制御が実行される際、仮想状態測定値導出部15Dによって導出される「仮想室温測定値」を、空調空間の室温の計測値とする。すなわち、本実施の形態においては、空調空間の目標温度と、仮想状態測定値導出部15Dによって導出された仮想室温測定値との差分に基づいたフィードバック制御による空調制御が実行される。
【0044】
<本発明の原理>
フィードバック制御による空調制御では、対象となる空間を目標温度に導くための空調制御を開始してからしばらくの期間が経過すると、目標温度に対して適切な空調制御がなされている空間と不適切な空調制御がなされている空間とが混在する場合がある。
例えば、空調制御を開始してからしばらくの期間が経過した空調空間の状況が図4(a)に示す状況である場合、推定温度が26℃である空間Z1−aは、ゾーンZ1の目標温度(26℃)に対して適切な空調制御がなされている空間と言え、一方、推定温度が28℃である空間Z1−bは、目標温度に対して不適切な空調制御がなされている空間であると言える。
【0045】
従来のフィードバック制御による空調制御では、上記のように適切な空調制御がなされている空間と不適切な空調制御がなされている空間とが空調空間に混在している状況であっても、ゾーンZ1の温度分布の任意の点における推定温度の平均値を、ゾーンZ1の室温の計測値Tp1とすることが一般的である。
具体例として、室温の計測値Tp1は、ゾーンZ1に存在している人の位置における推定温度の平均値とすることができ、図4(a)の場合、
Tp1=(26×7+28×1)÷8=26.25℃
となる。また、ゾーンZ1に存在している人が集中している空間の推定温度を室温の計測値Tp1とすることもでき、図4(a)の場合、ゾーンZ1の室温の計測値Tp1は、空間Z1−aに人が集中していることから、
Tp1=26℃
となる。
【0046】
上述した従来技術では、空調空間の状況が図4(a)に示す状況である場合、ゾーンZ1の室温の計測値Tp1とゾーンZ1の目標温度とが近似した値となることから、ゾーンZ1における現時点の温度分布を維持するような操作量の調和空気を吹出口から吹き出すフィードバック制御による空調制御が実行される。すなわち、ゾーンZ1内の空間Z1−aおよびZ1−bの温度分布を維持するような空調制御が実行される。
しかしながら、空間Z1−bの推定温度は28℃であり、目標温度に対し不適切な空調制御がなされている空間であるにもかかわらず、この温度分布を維持するような空調制御が実行されることから、空間Z1−bにおいては、目標温度に対し不適切な空調制御が継続して実行されてしまう。
【0047】
本発明では、このようなフィードバック制御によって、目標温度に対して適切な空調制御がなされている空間と不適切な空調制御がなされている空間とを空調空間内に混在させた状態を継続してしまう場合があることに着目し、空調空間の室温の計測値を、空調空間に在圏している人の配置状況と空調空間の推定温度分布との関係を考慮して導出し、導出した空調空間の室温の計測値と目標温度との差分に基づいたフィードバック制御による空調制御を実行するものである。
例えば、本実施の形態にかかる空調制御装置10は、空調空間内における人の密集度と空調空間の推定温度分布との関係を考慮した空調空間の室温の計測値を導出し、空調空間の室温の計測値と目標温度との差分に基づいたフィードバック制御による空調制御を実行することにより、空調空間内の人の存在の疎密にかかわらず、目標温度に対して適切な空調制御が空調空間全体になされるようにしたものである。
【0048】
具体的には、空調空間の状況が図4(b)に示す場合、本実施の形態にかかる空調制御装置10の重み導出部15D−1は、配置情報14Dに基づいてゾーンZ1内に存在する人の密集度を示す重み係数を、その人の位置に応じて導出する。なお、導出される重み係数の値(M1〜M8)は、人が密集している空間Z1−a内に存在している人の位置に対応する値(M1〜M7)の方が、人が孤立している空間Z1−b内の人の位置に対応する値(M8)よりも小さくなり、また、導出される重み係数の値の総和が1になるといった特徴がある。
【0049】
ゾーンZ1内の各位置に対応する重み係数が導出されると、空調制御装置10の算出部15D−2は、推定温度分布データ14Cから重み係数に対応する位置の推定温度を抽出し、推定温度に対応する重み係数を乗じた値を全て加算することによってゾーンZ1の仮想室温測定値VTpを算出する。図4(b)に示すように、空間Z1−aの推定温度が26℃、空間Z1−bの推定温度が28℃である場合、仮想室温測定値VTpは、
VTp=(M1+M2+M3+M4+M5+M6+M7)×26+M8×28
によって算出できる。
このように算出されたゾーンZ1の仮想室温測定値VTpが27℃であったとすると、空調制御指示部15Eは、ゾーンZ1の目標温度Tp=26℃と、算出された仮想室温測定値VTp=27℃との差分に基づいた調和空気の操作量を決定して、空調システム40に対しその操作量で空調制御を実行するよう指示する。
【0050】
<重み係数の導出方法について>
ここで、重み導出部15D−1によって導出される重み係数の導出方法について、具体的に説明する。
重み導出部15D−1によって導出される重み係数は、上述したように、人が密な状態の空間内に存在する人の位置に対応する値が低く、一方、人が疎な状態の空間内に存在する人の位置に対応する値が高い、といった特徴がある。このような、対象の現象が空間的な相関を持ち、かつ、位置が近いものは近い値を有するデータの加重平均を求める手法として、平均値のクリギング推定が知られている。
平均値のクリギング推定は、任意のn点の位置でデータが測定された場合、加重平均を求めることで、そのデータの代表値を計算する手法であり、以下に示す(式1)により計算される。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、(式1)中のWαは重み係数、Zはデータの測定値、Xαは位置ベクトルを表す。また、以下に示す(式2)の線形連立方程式から算出される重み係数Wαを用いることで、(式1)によって計算される代表値の推定誤差分散をできる限り小さくすることができる。
【0053】
【数2】
【0054】
ここで、(式2)中のμは、ラグランジュ乗数を表す。また、関数Cは、共分散関数C(h)を表し、例えばガウス型の共分散関数として(式3)に示す関数として仮定する。
【0055】
【数3】
【0056】
上記の線形連立方程式(式2)を、行列形式で表した式を(式4)に、簡潔に表した式を(式5−1)に示す。この線形連立方程式を重み係数Wαおよびμを要素とするベクトルwについて解くことにより、任意のn点の位置における重み係数Wnを算出することができる。
具体的には、(式5−2)に示すように、n+1次の行列KMの逆行列を両辺にかけることによって、ベクトルwを求めることができる。
【0057】
【数4】
【数5】
【0058】
次に、図5を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作について説明する。図5は、本実施の形態にかかる空調制御装置10の空調制御処理を示すフローチャートである。
空調制御装置10の演算処理部15は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて、図5の空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、空間条件データ14A、空調状況データ14B、人検知結果データ14G、設定温度情報14Fが予め記憶部14に格納されているものとする。
【0059】
図5に示すように、分布系流動解析部15Bは、空調空間50に関する空間条件データ14Aとデータ入力部15Aで取得した空調状況データ14Bとを記憶部14から読み出し、CFD順解析することによって空調空間50全体の温度分布を推定し、推定温度分布データ14Cを出力する(ステップS101)。
【0060】
推定温度分布データ14Cが出力されると、配置情報生成部15Cは、存在確認システム43による空調空間50に存在している人の人数と位置との検出結果を表す人検知結果データ14Gを記憶部14から読み出して取得し(ステップS102)、取得した人検知結果データ14Gから、空調空間50内に存在している人の位置と人数とを関連付けて空調空間50における人の配置状況を示す配置情報14Dを生成し、出力する(ステップS103)。
【0061】
配置情報14Dが出力されると、仮想状態測定値導出部15Dは、分布系流動解析部15Bで推定した空調空間50における温度分布を示す推定温度分布データ14Cと、空調空間50内に存在している人の配置状況を示す配置情報14Dとから、空調空間50に存在している人の密集の度合いを考慮した空調空間50の室温の測定値(仮想室温測定値)を導出し、仮想室温情報14Eを出力する(ステップS104)。
【0062】
仮想室温情報14Eが出力されると、空調制御指示部15Eは、仮想状態測定値導出部15Dによって出力された仮想室温情報14Eと、記憶部14に記憶されている空調空間50の目標温度を示す設定温度情報14Fとに基づいて、仮想室温測定値と目標温度の値との間に差があるか否かを判定する(ステップS105)。
【0063】
仮想室温測定値と目標温度の値との間に差が存在しない場合(ステップS105で「NO」の場合)、空調制御装置10は、空調制御指示部15Eに現状の操作量を維持する指示を空調システム40へ出力させるとともに、改めて空調制御処理を開始する(ステップS101)。または、現状の操作量を維持させた後、空調制御処理を終了し、オペレータの操作に応じた空調制御処理の開始まで待機状態としても良い。
【0064】
一方、仮想室温測定値と目標温度の値との間に差が存在する場合(ステップS105で「YES」)、空調制御指示部15Eは、仮想室温測定値と目標温度の値との差分に応じた調和空気の操作量を決定し、空調処理装置41へ決定された操作量を指示することにより空調システム40を制御する(ステップS106)。
【0065】
このように、本実施の形態によれば、分布系熱流動解析手法で得られた空調空間内の温度分布(状態分布)と空調空間内の人の配置状況とに基づいて、空調空間内に存在している人の密集の度合いを考慮した空調空間の室温の測定値、すなわち仮想室温測定値(仮想状態測定値)を導出し、この仮想室温測定値と空調空間の目標温度(状態目標値)の値との差分に基づくフィードバック制御動作により空調空間内の空調環境を調整することができる。
したがって、空調空間内の居住者の配置状況のばらつきにかかわらず、その空調空間全体に対して適切な空調制御を実行することができ、空調空間内の居住者が抱く不快感を緩和させることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、空調制御装置10において、空調空間50の空調環境のうち温度分布を制御する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、風速、湿度、CO2など、空調空間50における温度以外の空調環境についても、温度センサに代えて、これら状態を検出するセンサを用いることにより、前述と同様に制御することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、図6〜8を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図6は、第2の実施の形態にかかる空調制御装置20の構成を示すブロック図である。図7は、第2の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。図8は、第2の実施の形態にかかる空調制御装置20の仮想室温測定値の算出動作を示すフローチャートである。
【0068】
第1の実施の形態では、仮想状態測定値導出部15Dが、空調空間に存在している人の密集の度合いを考慮した仮想室温測定値を導出する場合について説明した。本実施の形態においては、仮想室温測定値を導出する際に、空調空間を任意の領域に分割してそれぞれの領域の代表温度から空調空間の仮想室温測定値を導出する場合について説明する。
【0069】
本実施の形態にかかる空調制御装置20は、図6に示すように、主な機能部として、通信I/F部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部25が設けられており、演算処理部25は、データ入力部15Aと、分布系流動解析部15Bと、配置情報生成部15Cと、仮想状態測定値導出部25Dと、空調制御指示部15Eとを備えている。なお、第1の実施の形態において説明した空調制御装置10の構成要素と同一の構成および機能を有するものには、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0070】
本実施の形態にかかる空調制御装置20の仮想状態測定値導出部25Dは、分割部25D−1、代表状態値導出部25D−2、平均算出部25D−3、仮想状態値算出部25D−4とから構成されている。
【0071】
分割部25D−1は、空調制御の対象となる空調空間50を任意の複数の領域に分割する。
本実施の形態において、分割部25D−1は、配置情報生成部15Cによって出力される配置情報14Dに基づいて、空調空間50に存在している人の配置状況に応じて複数の領域に分割する。例えば、図7(A)に示すように、空調空間であるゾーンZ1内に存在している人の配置状況に応じて、ゾーンZ1を領域A1〜A3に分割する。
【0072】
代表状態値導出部25D−2は、分割部25D−1によって分割された領域の室温の測定値を、分布系流動解析部15Bによって出力された推定温度分布データ14Cに基づいて分割された領域毎に推定し、各領域の代表温度として出力する。
本実施の形態において、代表状態値導出部25D−2は、図7(A)に示すように、ゾーンZ1を分割した領域A1〜A3の代表温度を推定温度分布データ14Cから推定する。
【0073】
例えば、領域A1の中心位置における推定温度が26℃であると推定温度分布データ14Cから推定される場合、領域A1の代表温度を26℃とすることができる。同様に、領域A2の中心位置における推定温度が26℃と推定されるならば、領域A2の代表温度は26℃とし、領域A3の中心位置における推定温度が28℃と推定されるならば、領域A3の代表温度は28℃となる。
【0074】
平均算出部25D−3は、分割部25D−1によって分割された複数の領域のうち、近接する2つの領域を新たな1つの領域へ統合するとともに、統合した2つの領域の代表温度の平均値を算出する。
本実施の形態において、平均算出部25D−3は、図7(B)に示すように、近接する領域A1と領域A2とを1つの領域B1へ統合して、領域A1と領域A2の代表温度の平均値を算出し、算出した平均値(26℃)を領域B1の代表温度とする。
【0075】
仮想状態値算出部25D−4は、分割部25D−1によって分割された複数の領域が1の領域に統合された際に算出された代表温度の平均値を、空調空間50の仮想室温測定値として出力する。
本実施の形態において、仮想状態値算出部25D−4は、平均算出部25−Dによる代表温度の平均値の算出動作を、図7(C)に示すように、分割部25D−1によって分割された複数の領域が1の領域C1へ統合されるまで繰り返し実行させることにより、空調空間50の仮想室温測定値を算出する。具体的には、図7(A)〜(C)に示すように、ゾーンZ1内の複数の領域のうち、始めに、近接する領域A1と領域A2を領域B1へ統合して代表温度を算出し、次に、ゾーンZ1内の近接する領域B1とA3を領域C1へ統合して代表温度を算出することにより、ゾーンZ1の仮想室温測定値を算出する。
【0076】
本実施の形態における仮想状態測定値導出部25Dによる仮想室温測定値の導出方法について、空調空間50を任意の領域へ分割する際に、第1の実施の形態において説明した重み係数を用いることによって、空調空間50を複数の領域へ分割することができる。例えば、重み係数の値が近い値を示す領域、すなわち人の密集の度合いが類似している領域毎に空調空間50を分割するとしても良い。
【0077】
また、分割された領域の代表温度を用いた空調区間50の仮想室温測定値の算出方法としては、空調空間50を分割した各領域の代表温度の平均を導出するK−means(K平均法)アルゴリズムを利用することができる。
K−means(K平均法)は、複数のデータnをランダムに複数のクラスタKに割り振り、各クラスタの中心値を計算し、この中心値に最も近いデータをその中心値に対応するクラスタに割り当て直す処理を繰り返し実行することにより、データnの平均を求める手法である。
【0078】
次に、本実施の形態にかかる空調制御装置20の仮想室温測定値の算出動作について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
空調制御装置20の演算処理部25は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、空間条件データ14A、空調状況データ14B、人検知結果データ14G、設定温度情報14Fが予め記憶部14に格納されているものとする。
【0079】
図8に示すように、空調制御装置20による空調制御処理が開始されると、仮想状態測定値導出部25Dは、分布系流動解析部15Bによって推定された空調空間50の温度分布を表す推定温度分布データ14Cと、配置情報生成部15Cによって生成された空調空間50に存在している人の配置状況を表す配置情報14Dとを取得する(ステップS201)。
【0080】
推定温度分布データ14Cと配置情報14Dとを取得すると、仮想状態測定値導出部25Dは、取得した配置情報14Dに基づいて空調空間50を複数の領域へ分割する(ステップS202)。
空調空間50が複数の領域に分割されると、仮想状態測定値導出部25Dは、取得した推定温度分布データ14Cに基づいて分割された各領域の代表温度を導出する(ステップS203)。ここで導出される代表温度は、分割された領域の中心位置の推定温度とすることができる。
【0081】
分割された領域毎に代表温度が導出されると、仮想状態測定値導出部25Dは、空調空間50内の複数の領域のうち、近接する2つの領域の代表温度の平均値を算出してこれら領域を1つの領域へ統合し、算出した代表温度の平均値を統合後の領域の代表温度とする(ステップS204)。
【0082】
仮想状態測定値導出部25Dは、空調空間50を分割した領域が1つに統合されたか否かを判定する(ステップS205)。
空調空間50内に分割した領域が複数存在している場合(ステップS205で「NO」)、仮想状態測定値導出部25Dは、再び空調空間50内の近接する2つの領域を統合して代表温度を導出する(ステップS204)。
【0083】
一方、空調空間50を分割した領域が1つに統合されている場合(ステップS205で「YES」)、仮想状態測定値導出部25Dは、1つに統合された領域の代表温度を空調空間50の仮想室温測定値として導出する(ステップS206)。
【0084】
このように、本実施の形態によれば、分布系熱流動解析手法で得られた空調空間内の温度分布のデータに応じて空調空間を複数の任意の領域に分割して領域毎の代表温度の平均を仮想室温測定値として導出し、この仮想室温測定値と空調空間の目標温度の値との差分に基づくフィードバック制御動作により空調空間内の空調環境を調整することができる。
したがって、空調空間内の熱分布にばらつきがある場合においても、その空調空間に対する適切な空調制御が安定してなされるとともに、空調空間内の居住者が抱く不快感を緩和させることができる。
【0085】
[第3の実施の形態]
次に、図9〜図11を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図9は、第3の実施の形態にかかる空調制御装置30の構成を示すブロック図である。図10は、第3の実施の形態における仮想室温測定値の導出方法について概念的に説明する図である。図11は、第3の実施の形態にかかる空調制御装置30の仮想室温測定値の算出動作を示すフローチャートである。
【0086】
第2の実施の形態では、空調空間を任意の領域に分割し、それぞれの領域の代表温度から空調空間の仮想室温測定値を導出する場合について説明したが、本実施の形態においては、分割した領域について、少なくとも1人の人が存在する領域となるよう空調空間を分割することにより、空調空間の仮想室温測定値を導出する場合について説明する。
【0087】
本実施の形態にかかる空調制御装置30は、図9に示すように、主な機能部として、通信I/F部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部35が設けられており、演算処理部35は、データ入力部15Aと、分布系流動解析部15Bと、配置情報生成部15Cと、仮想状態測定値導出部35Dと、空調制御指示部15Eとを備えている。なお、第1および第2の実施の形態において説明した空調制御装置10,20の構成要素と同一の構成および機能を有するものには、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0088】
本実施の形態にかかる空調制御装置30の仮想状態測定値導出部35Dは、分割部35D−1、代表状態値導出部35D−2、平均算出部35D−3とから構成されている。
分割部35D−1は、空調制御の対象となる空調空間50を複数の領域に分割する。その際、空調空間50内に存在している人が複数の領域に渡って存在しないよう空調空間50を分割する。
【0089】
本実施の形態において、分割部35D−1は、配置情報生成部15Cによって出力される配置情報14Dに基づいて、空調空間50に存在している人の配置状況に応じて複数の領域に渡って1人の人が存在しないように空調空間50を複数の領域へ分割する。
例えば、図10(A)に示すように、人感センサHS1によって検出された空調空間50のゾーンZ1内に存在している人の配置状況を示す配置情報14Dに基づいて、1人の人が複数の領域に存在しないようにゾーンZ1を4つの領域に分割する。なお、1人の人が複数の領域に渡って存在しないような領域に分割可能であれば、領域の分割数は制限されない。
【0090】
代表状態値導出部35D−2は、分割部35D−1によって分割された領域の室温の測定値を、分布系流動解析部15Bによって出力された推定温度分布データ14Cに基づいて分割された領域毎に推定し、各領域の代表温度として出力する。
本実施の形態において、代表状態値導出部35D−2は、図10(A)に示すように、ゾーンZ1を分割した4つの領域の代表温度を推定温度分布データ14Cから推定する。推定される各領域の代表温度は、例えば、領域内の推定温度の平均とすることができる。また、分割された領域の中心位置の推定温度を代表温度としても良い。
【0091】
平均算出部35D−3は、分割部35D−1によって分割された領域のうち、少なくとも1人の人が存在している領域を選択し、選択した領域の代表温度の平均値を算出する。
本実施の形態において、平均算出部35D−3は、図10(B)に示すように、人が存在している領域(図10(A)から、左上と右下の領域)を選択して、選択した領域の代表温度の平均値を算出する。
仮想状態測定値導出部35Dは、図10(C)に示すように、平均算出部35D−3によって算出された代表温度の平均値を、ゾーンZ1の仮想室温測定値として出力する。
【0092】
次に、本実施の形態にかかる空調制御装置30の仮想室温測定値の算出動作について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
空調制御装置30の演算処理部35は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、空間条件データ14A、空調状況データ14B、人検知結果データ14G、設定温度情報14Fが予め記憶部14に格納されているものとする。
【0093】
図11に示すように、空調制御装置30による空調制御処理が開始されると、仮想状態測定値導出部35Dは、分布系流動解析部15Bによって推定された空調空間50の温度分布を表す推定温度分布データ14Cと、配置情報生成部15Cによって生成された空調空間50に存在している人の配置状況を表す配置情報14Dとを取得する(ステップS301)。
【0094】
推定温度分布データ14Cと配置情報14Dとを取得すると、仮想状態測定値導出部35Dは、取得した配置情報14Dに基づいて空調空間50を複数の領域へ分割する(ステップS302)。その際、空調空間50に存在している人の1人が、複数の領域に渡って存在しないよう空調空間50を分割する。
【0095】
空調空間50が複数の領域に分割されると、仮想状態測定値導出部35Dは、取得した推定温度分布データ14Cに基づいて分割された各領域の代表温度を導出する(ステップS303)。このステップにおいて導出される代表温度は、分割された領域内の推定温度の平均値としても良く、領域の中心位置の推定温度としても良い。
【0096】
分割された領域毎に代表温度が導出されると、仮想状態測定値導出部35Dは、空調空間50内の複数の領域のうち、少なくとも1人の人が存在している領域を抽出し(ステップS304)、抽出した領域の代表温度の平均値を算出する(ステップS305)。
仮想状態測定値導出部25Dは、算出された代表温度の平均値を空調空間50の仮想室温測定値として出力する(ステップS306)。
【0097】
このように、本実施の形態によれば、人の存在位置に応じて空調空間を複数の任意の領域に分割し、分布系熱流動解析手法で得られた空調空間内の温度分布のデータから領域毎の代表温度を導出し、人が存在している領域の代表温度の平均を仮想室温測定値として導出し、この仮想室温測定値と空調空間の目標温度の値との差分に基づくフィードバック制御動作により空調空間内の空調環境を調整することができる。
したがって、空調空間内の熱分布にばらつきがある場合においても、その空調空間に存在する人の存在位置によらず空調空間全体に対する適切な空調制御が安定してなされるとともに、空調空間内の居住者が抱く不快感を緩和させることができる。
【0098】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
10,20,30…空調制御装置、11…通信インターフェース部(通信I/F部)、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…空間条件データ、14B…空調状況データ、14C…推定温度分布データ、14D…配置情報、14E…仮想室温情報、14F…設定温度情報、14G…人検知結果データ、15,25,35…演算処理部、15A…データ入力部、15B…分布系流動解析部、15C…配置情報生成部、15D、25D,35D…仮想状態測定値導出部、15D−1…重み導出部、15D−2…算出部、25D−1,35D−1…分割部、25D−2,35D−2…代表状態値導出部、25D−3,35D−3…平均算出部、25D−4…仮想状態値算出部、15E…空調制御指示部、40…空調システム、41…空調処理装置、42,VAN1〜VAN4…空調機器、F1〜F4…吹出口、43…存在確認システム、HS1〜HS4…人感センサ、50…空調空間、Z1〜Z2…ゾーン(空調空間)、L…通信回線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、前記空調機器での操作量を指示することにより、前記空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置であって、
前記空調空間の構成および前記空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、前記目的空調環境下における前記空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、前記空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、当該空調環境の状態分布を推定する分布系流動解析部と、
前記空調空間内に存在する人の人数および位置を検知して前記空調空間内の人の配置状況を示す配置情報を生成する配置情報生成部と、
前記分布系流動解析部によって推定された前記状態分布に基づいて前記空調空間内の任意の位置における空調環境の状態を仮想状態測定値として導出する仮想状態測定値導出部と、
前記空調空間における空調環境の目標となる状態目標値と前記空調空間の前記仮想状態測定値との差分に基づいて前記空調システムを制御する制御部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された空調制御装置において、
前記仮想状態測定値導出部は、
前記配置情報から、人の密集の度合いに応じて当該空調空間を複数の領域に分割する分割部と、
前記分布系流動解析部によって推定された当該空調空間内の前記状態分布から、前記分割部によって分割された前記領域の任意の位置の状態値を前記領域毎に推定して各領域の代表状態値とする代表状態値導出部と、
この代表状態値導出部によって導出された前記領域毎の代表状態値に基づいて前記仮想状態測定値を算出する算出部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された空調制御装置において、
前記算出部は、前記分割部によって分割された前記領域のうち、少なくとも1人の人が存在する領域を選択し、この選択された領域の前記代表状態値の平均値を前記仮想状態測定値として算出することを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載された空調制御装置において、
前記算出部は、
前記分割部によって分割された前記領域のうち、近接する領域を新たな1つの領域へ統合するとともに前記近接する2以上領域の前記代表状態値の平均値を算出する平均算出部と、
前記分割部によって分割された領域が1の領域となるまで前記平均算出部による前記平均値の算出動作を繰り返し実行させ、分割された前記領域が1の領域となった際の前記平均値を前記仮想状態測定値とする仮想状態値算出部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載された空調制御装置において、
前記仮想状態測定値導出部は、
前記配置情報から、人の密集の度合いが高くなればより小さくなる重み係数を、当該空調空間内の人が存在している位置に関連付けて導出する重み導出部と、
前記分布系流動解析部によって推定された当該空調空間内の前記状態分布と、前記重み導出部によって導出された重み係数と、当該空調空間内の人が存在している位置とに基づいて前記仮想状態測定値を算出する算出部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項6】
空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、前記空調機器での操作量を指示することにより、前記空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置で用いる空調制御方法であって、
分布系流動解析部が、前記空調空間の構成および前記空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、前記目的空調環境下における前記空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、前記空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、当該空調環境の状態分布を推定する分布系流動解析ステップと、
配置情報生成部が、前記空調空間内に存在する人の人数および位置を検知して前記空調空間内の人の配置状況を示す配置情報を生成する配置情報生成ステップと、
仮想状態測定値導出部が、前記分布系流動解析ステップによって推定された前記状態分布に基づいて前記空調空間内の任意の位置における空調環境の状態を仮想状態測定値として導出する仮想状態測定値導出ステップと、
制御部が、前記空調空間における空調環境の目標となる状態目標値と前記空調空間の前記仮想状態測定値との差分に基づいて前記空調システムを制御する制御部ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載された空調制御方法において、
前記仮想状態測定値導出ステップは、
前記配置情報から、人の密集の度合いに応じて当該空調空間を複数の領域に分割するステップと、
前記分布系流動解析ステップによって推定された当該空調空間内の前記状態分布から、前記分割ステップによって分割された前記領域の任意の位置の状態値を前記領域毎に推定して各領域の代表状態値とする代表状態値導出ステップと、
この代表状態値導出ステップによって導出された前記領域毎の代表状態値に基づいて前記仮想状態測定値を算出する算出ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載された空調制御方法において、
前記算出ステップは、前記分割ステップによって分割された前記領域のうち、少なくとも1人の人が存在する領域を選択し、この選択された領域の前記代表状態値の平均値を前記仮想状態測定値として算出するステップを備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項9】
請求項7に記載された空調制御方法において、
前記算出ステップは、
前記分割ステップによって分割された前記領域のうち、近接する領域を新たな1つの領域へ統合するとともに前記近接する2以上領域の前記代表状態値の平均値を算出する平均算出ステップと、
前記分割ステップによって分割された領域が1の領域となるまで前記平均算出ステップによる前記平均値の算出動作を繰り返し実行させ、分割された前記領域が1の領域となった際の前記平均値を前記仮想状態測定値とする仮想状態値算出ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項10】
請求項6に記載された空調制御方法において、
前記仮想状態測定値導出ステップは、
前記配置情報から、人の密集の度合いが高くなればより小さくなる重み係数を、当該空調空間内の人が存在している位置に関連付けて導出する重み導出ステップと、
前記分布系流動解析ステップによって推定された当該空調空間内の前記状態分布と、前記重み導出ステップによって導出された前記重み係数と、当該空調空間内の人が存在している位置とに基づいて前記仮想状態測定値を算出する算出ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項1】
空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、前記空調機器での操作量を指示することにより、前記空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置であって、
前記空調空間の構成および前記空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、前記目的空調環境下における前記空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、前記空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、当該空調環境の状態分布を推定する分布系流動解析部と、
前記空調空間内に存在する人の人数および位置を検知して前記空調空間内の人の配置状況を示す配置情報を生成する配置情報生成部と、
前記分布系流動解析部によって推定された前記状態分布に基づいて前記空調空間内の任意の位置における空調環境の状態を仮想状態測定値として導出する仮想状態測定値導出部と、
前記空調空間における空調環境の目標となる状態目標値と前記空調空間の前記仮想状態測定値との差分に基づいて前記空調システムを制御する制御部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された空調制御装置において、
前記仮想状態測定値導出部は、
前記配置情報から、人の密集の度合いに応じて当該空調空間を複数の領域に分割する分割部と、
前記分布系流動解析部によって推定された当該空調空間内の前記状態分布から、前記分割部によって分割された前記領域の任意の位置の状態値を前記領域毎に推定して各領域の代表状態値とする代表状態値導出部と、
この代表状態値導出部によって導出された前記領域毎の代表状態値に基づいて前記仮想状態測定値を算出する算出部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された空調制御装置において、
前記算出部は、前記分割部によって分割された前記領域のうち、少なくとも1人の人が存在する領域を選択し、この選択された領域の前記代表状態値の平均値を前記仮想状態測定値として算出することを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載された空調制御装置において、
前記算出部は、
前記分割部によって分割された前記領域のうち、近接する領域を新たな1つの領域へ統合するとともに前記近接する2以上領域の前記代表状態値の平均値を算出する平均算出部と、
前記分割部によって分割された領域が1の領域となるまで前記平均算出部による前記平均値の算出動作を繰り返し実行させ、分割された前記領域が1の領域となった際の前記平均値を前記仮想状態測定値とする仮想状態値算出部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載された空調制御装置において、
前記仮想状態測定値導出部は、
前記配置情報から、人の密集の度合いが高くなればより小さくなる重み係数を、当該空調空間内の人が存在している位置に関連付けて導出する重み導出部と、
前記分布系流動解析部によって推定された当該空調空間内の前記状態分布と、前記重み導出部によって導出された重み係数と、当該空調空間内の人が存在している位置とに基づいて前記仮想状態測定値を算出する算出部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項6】
空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、前記空調機器での操作量を指示することにより、前記空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置で用いる空調制御方法であって、
分布系流動解析部が、前記空調空間の構成および前記空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、前記目的空調環境下における前記空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、前記空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、当該空調環境の状態分布を推定する分布系流動解析ステップと、
配置情報生成部が、前記空調空間内に存在する人の人数および位置を検知して前記空調空間内の人の配置状況を示す配置情報を生成する配置情報生成ステップと、
仮想状態測定値導出部が、前記分布系流動解析ステップによって推定された前記状態分布に基づいて前記空調空間内の任意の位置における空調環境の状態を仮想状態測定値として導出する仮想状態測定値導出ステップと、
制御部が、前記空調空間における空調環境の目標となる状態目標値と前記空調空間の前記仮想状態測定値との差分に基づいて前記空調システムを制御する制御部ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載された空調制御方法において、
前記仮想状態測定値導出ステップは、
前記配置情報から、人の密集の度合いに応じて当該空調空間を複数の領域に分割するステップと、
前記分布系流動解析ステップによって推定された当該空調空間内の前記状態分布から、前記分割ステップによって分割された前記領域の任意の位置の状態値を前記領域毎に推定して各領域の代表状態値とする代表状態値導出ステップと、
この代表状態値導出ステップによって導出された前記領域毎の代表状態値に基づいて前記仮想状態測定値を算出する算出ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載された空調制御方法において、
前記算出ステップは、前記分割ステップによって分割された前記領域のうち、少なくとも1人の人が存在する領域を選択し、この選択された領域の前記代表状態値の平均値を前記仮想状態測定値として算出するステップを備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項9】
請求項7に記載された空調制御方法において、
前記算出ステップは、
前記分割ステップによって分割された前記領域のうち、近接する領域を新たな1つの領域へ統合するとともに前記近接する2以上領域の前記代表状態値の平均値を算出する平均算出ステップと、
前記分割ステップによって分割された領域が1の領域となるまで前記平均算出ステップによる前記平均値の算出動作を繰り返し実行させ、分割された前記領域が1の領域となった際の前記平均値を前記仮想状態測定値とする仮想状態値算出ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項10】
請求項6に記載された空調制御方法において、
前記仮想状態測定値導出ステップは、
前記配置情報から、人の密集の度合いが高くなればより小さくなる重み係数を、当該空調空間内の人が存在している位置に関連付けて導出する重み導出ステップと、
前記分布系流動解析ステップによって推定された当該空調空間内の前記状態分布と、前記重み導出ステップによって導出された前記重み係数と、当該空調空間内の人が存在している位置とに基づいて前記仮想状態測定値を算出する算出ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−2672(P2013−2672A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131996(P2011−131996)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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