空調制御装置及び空調制御装置の人検知グループ管理方法
【課題】簡単な構成によって室内の人の有無を正確に検出することができる空調制御装置を提供する。
【解決手段】制御部は、室内の空間を列状に分割した各領域;エレメントE1〜E8の温度を検出するように配置されている複数の赤外線センサにより検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し(S1)、各赤外線センサについて前回測定された温度データTn-1と今回測定された温度データTnとの差ΔTを求め、その差ΔTの絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出する(S2)。そして、有意温度差データの符号が正である赤外線センサの位置に人検知グループを登録し(S7)、有意温度差データの符号が負である赤外線センサについては、当該赤外線センサの位置に登録されている人検知グループを削除する(S8)。
【解決手段】制御部は、室内の空間を列状に分割した各領域;エレメントE1〜E8の温度を検出するように配置されている複数の赤外線センサにより検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し(S1)、各赤外線センサについて前回測定された温度データTn-1と今回測定された温度データTnとの差ΔTを求め、その差ΔTの絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出する(S2)。そして、有意温度差データの符号が正である赤外線センサの位置に人検知グループを登録し(S7)、有意温度差データの符号が負である赤外線センサについては、当該赤外線センサの位置に登録されている人検知グループを削除する(S8)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に配置された複数の温度センサによって検出される温度に応じて人の位置を検出し、その人の位置に基づいて空調機器の制御を行う空調制御装置及び空調制御装置の人検知グループ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調機器の制御においては、より高い快適性を付与することが要求されており、室内で人がいる位置をセンサによって検出し、その人がいる位置に向けて温風や冷風を送付することが行われている。斯様な制御を行うためには、室内の人の位置を高精度に検出する必要がある。例えば特許文献1には、ステッピングモータにより赤外線センサを往復移動させて、赤外線検出領域を走査させることで人体が放射する赤外線量の変化を検出し、複数の走査期間に亘る赤外線センサの出力状態;電圧信号の変化に基づいて人の位置を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−271645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、赤外線センサを往復移動させて温度情報を取得すると、前回の取得タイミングと今回の取得タイミングとの間が走査周期分だけ空くことになり、正確さに欠ける。加えて、赤外線検出領域の温度変化の傾きだけでは、人を原因とする温度変化なのか、例えば部屋の窓を介して差し込む太陽光等の外乱によるものかの区別が明瞭ではなく、人の有無を正確に検出することは困難であると思われる。
【0005】
また、1つのビル内にある複数の部屋について、一括して空調制御を行ういわゆる全館空調の場合、従来は各部屋に温風や冷風を送風して暖房・冷房を行うだけで、各部屋毎に風向きまで制御することはなく、よって固定式の赤外線センサで各部屋の温度を検出している。しかしながら、このような全館空調においても、人が不在の部屋については快適な温度からはやや外れた温度に設定して、無駄なエネルギー消費を抑制することが要請されている。そのためには、やはり各部屋について人の有無を検出する必要があり、人検知センサ等のセンサを追加することなく、従来使用している温度センサを利用して人の有無が検知できれば望ましい。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成によって室内の人の有無を正確に検出することができる空調制御装置,及び空調制御装置の人検知グループ管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の空調制御装置によれば、有意温度差検出手段は、室内の空間を列状に分割した各領域の温度を検出するように配置されている複数の温度センサにより検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて前回測定された温度データと今回測定された温度データとの差を求め、その差の絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出する。そして、人検知グループ管理手段は、有意温度差データの符号が正である温度センサの位置に人検知グループ(人が一人以上存在すると想定されるグループ)を登録し、有意温度差データの符号が負である温度センサについては、当該温度センサの位置に登録されている人検知グループを削除する。
【0008】
すなわち、有意温度差検出手段は、周期的に測定される温度の間に発生する温度差が有意なレベルとなったことを検出し、人検知グループ管理手段は、その有意温度差データの符号の正負に応じて人検知グループの登録,削除を行う。したがって、従来より温度制御のために用いている温度センサを利用して、人の有無を各温度センサの位置毎に検出することができる。そして、例えば部屋の向きにより窓から太陽光が差し込むような場合に、その太陽光により部屋の一部の温度が上昇しても、そのような温度上昇による温度差を有意温度差検出手段は有意なレベルとして捉えないので、人の存在によるものと誤検出することが無く、人の有無を正確に把握することができる。
【0009】
請求項2記載の空調制御装置によれば、検出対象選択手段は、複数の温度センサの内で、何れか4つ以上の温度センサの検出温度がそれぞれの定常温度から誤差範囲を超えて上昇したことを検出すると、それらの温度センサをピーク検出対象センサ群として選択する。そして、傾き計算手段が、ピーク検出対象センサ群の配列上で、当該配列の両端に位置する温度センサとそれぞれの1つ内側に位置する温度センサとの2組について、それぞれの検出温度が2つの温度センサの間隔に対して示す傾きを計算すると、人位置検出手段は、計算された2つの温度変化の傾きに従う温度変化直線を延長して、それらの直線が前記配列上で交差した位置を人の位置として検出する。
【0010】
例えば、人が入室したことで3つの温度センサの検出温度がそれぞれの定常温度から誤差範囲を超えて上昇すると、検出温度のピークは中央に位置する温度センサとなるので、その温度センサの位置を人の位置として検出できる。しかし、配置する温度センサの数が限られている場合は、それらの温度センサがある程度の間隔を以って配置されることになり、人が2つの温度センサの間に位置していることもあるため、その状態も把握できることが望ましい。そして、人が入室したことで4つ以上の温度センサの検出温度が上昇した場合には、上述のように何れか2つの温度センサの間に人が位置していると推定される。そこで、検出対象選択手段により選択されたピーク検出対象センサ群について、当該センサ群の両端に位置する各2つの温度センサの検出温度から傾き計算手段が2つの温度変化直線の傾きを計算し、人位置検出手段が2つの直線を延長した交点を人の位置として検出する。これにより、使用する温度センサ数を増やしてそれらの配置間隔を狭めずとも、2つの温度センサの間を演算により補間して室内における人の位置を精度良く検出することが可能となり、コストの上昇を抑制できる。
【0011】
そして、有意温度差検出手段は、人位置検出手段により検出された人の位置に仮想温度センサが位置すると仮想し、温度変化直線の交点で与えられる温度の値を対応する仮想温度センサにより検出された温度と仮想して、その仮想温度センサについても有意温度差データを検出すると、人検知グループ管理手段は、仮想温度センサについても請求項1の温度センサと同様に扱い、人検知グループの登録及び削除を行う。したがって、実際の温度センサの数よりも高い分解能で、人が存在する位置を特定することが可能となる。よって、温度センサが部屋のサイズに対して少ない数で配置されている場合で、残留している人が室内のどこに存在していても、退出した人(有意温度差データの符号;負の発生に対応)と残留している人(有意温度差が検出されない状態に対応)とを混同することが無い。
【0012】
請求項3記載の空調制御装置によれば、傾き計算手段は、ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合は、それら2つの温度センサのそれぞれ1つ外側に位置する(つまり、ピーク検出対象センサ群に属さない)温度センサを選択し、それら2組について温度変化の傾きを計算する。すなわち、上記の場合もやはり2つの温度センサの間に人が位置していると推定されるので、このケースでは例外的に、ピーク検出対象センサ群の両端からそれぞれ1つ外側に位置する温度センサを選択して2つの温度変化直線の傾きを計算する。これにより、人位置検出手段は、請求項2と同様にして室内における人の位置を精度良く検出できる。
【0013】
請求項4記載の空調制御装置によれば、ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合で、且つそれら2つの温度センサの何れか一方に1つ外側に位置する温度センサが存在しない場合、傾き計算手段は温度変化の傾きを計算せず、人位置検出手段は、2つの温度センサのうち検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出する。すなわち、複数の温度センサが温度を監視している空間の両端側に人が位置していると、ピーク検出対象センサ群に属する2つの温度センサの何れか一方には、1つ外側に位置する温度センサが存在しない場合が発生し得る。そのようなケースについては、検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例であり、センサユニットが配置された室内の状態を示す図
【図2】空調システムのブロック図
【図3】人検知グループ管理処理を示すフローチャート
【図4】人検知グループの管理を説明するイメージ図(その1)
【図5】図4相当図(その2)
【図6】図4相当図(その3)
【図7】第2実施例であり、人位置検出処理を示すフローチャート
【図8】人の位置に応じて各エレメントについて検出される温度変化パターンを示す図(その1)
【図9】図8相当図(その2)
【図10】図8相当図(その3)
【図11】図3に示す処理と、図7に示す処理とを統合して行うためのフローチャート
【図12】仮想エレメントを説明する図
【図13】仮想エレメントを含めて人の位置を決定する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施例)
以下、第1実施例について図1ないし図6を参照して説明する。図2は、空調システムのブロック図であり、図1は室内における温度センサの配置状態を示すものである。空調システム1において、制御部(空調制御装置,有意温度差検出手段,人検知グループ管理手段)2には、センサユニット3、空調機(エアコンディショナ)4、外気温センサ5が接続されている。制御部2は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、空調機4に内蔵されて空調機4の制御を行うものでも良いし、或いは空調機4の外部に存在して、後述する人検知処理を行った結果だけを空調機4に出力するものでも良い。
【0016】
センサユニット3は、図1に示すように、室内の一つの壁面において、水平方向に列状に並べて配置される8つの赤外線センサ(温度センサ)3(1)〜3(8)で構成されている。これらの赤外線センサ3(1)〜3(8)は、室内において人が存在する場合に、人体が発生する赤外線を検出するため、床面からの高さ数10cm程度の位置(例えば40cm)に等間隔で配置されている。すなわち、センサユニット3は、人の位置を検出するために配置されるものであるから、例えば床面からの高さが2mを超えるような位置に配置することは想定していない。そして、各赤外線センサ3(1)〜3(8)が検出したセンサ信号は、制御部2に与えられる。
【0017】
外気温センサ5は、外気の温度を検出し、制御部2にセンサ信号を与える。空調機4は、図示しない室外機との間で熱交換を行い、温風又は冷風を室内に送風したり、除湿を行うようにする。その場合、制御部2が人の位置を検出した結果出力する検出信号に応じて、送風方向を制御する。また、暖房/冷房の切り替えは、外気温センサ5が検出した外気温度に基づいて行う。
【0018】
次に、本実施例の作用について図3ないし図6を参照して説明する。図3は、制御部2が行う人検知グループ管理処理を示すフローチャートである。そして、図4ないし図6は、各赤外線センサ3(1)〜3(8)が検出する温度変化に応じて、人検知グループの登録,削除を行う様々なパターンを示している。
図4ないし図6に示すように、各赤外線センサ3(1)〜3(8)がそれぞれ検出対象とする空間領域を、夫々エレメントE(1)〜E(8)と称す。制御部2は、先ず各エレメントE(1)〜E(8)の温度をサンプリングすると(ステップS1)、各サンプリング結果について、今回サンプリングした温度Tnと、前回サンプリングした温度Tn-1との温度差ΔTを求める(ステップS2)。尚、温度のサンプリング間隔は例えば1秒程度とする。
【0019】
ここで、ステップS2で求めた温度差ΔTについては、その値が所定値以上となったものだけを、以降のステップS3〜S5の評価対象とする。すなわち、部屋内における人の有無を検出することが目的であるから、例えば全館空調の設定温度が27℃であり、人の体温を35℃と想定すれば、温度差ΔT>8[℃]となったもの(有意温度差データ)について、温度差ΔTの符号が正,負の何れになったかを評価する。
【0020】
そして、ステップS3では条件(1)として、隣り合う2つのエレメントについて、一方の符号が正で、他方の符号が負となったペアが存在するか否かを判断する。そのようなペアが存在する場合は(YES)図4に示すケースに対応する。図4では、エレメントE3の温度差ΔTの符号が正で、エレメントE4の温度差ΔTの符号が負になっている。この場合、符号が正のエレメントE3に、人が存在することが検知されたグループである人検知グループを、既に登録されているか否かに関わらず登録し、符号が負のエレメントE4から人検知グループを、既に登録されていれば削除する(ステップS6)。すなわち、この場合、元々エレメントE4の位置に存在した人がエレメントE3の位置に移動したことが推定される。
【0021】
ステップS3で「NO」と判断した場合,又はステップS6の実行後はステップS4に移行する。ここでは、上記の条件(1)が成立したものを除いて、温度差ΔTの符号が正になったエレメントが孤立的に存在するか否かを判断する。そのようなエレメントが存在する場合は(YES)図5(a)に示すケースに対応する。図5(a)では、エレメントE1の温度差ΔTの符号が正になったことで、エレメントE1に人検知グループを新規に登録する(ステップS7)。すなわちこの場合、エレメントE1の近傍にドアが位置しており、新たにエレメントE1の位置に人が進入したこと、つまり無人だった部屋に人が新たに入室したことが推定される。
但し、本実施例では、登録されている人検知グループの種類まで判別することまでは目的としていないので、ここでは、エレメントE1に既に人検知グループが登録されている場合であっても、部屋に人が新たに入室したことを以って人検知グループを新規に登録(更新)する。
【0022】
ステップS4で「NO」と判断した場合,又はステップS7の実行後はステップS5に移行する。ここでは、上記の条件(1)が成立したものを除いて、温度差ΔTの符号が負になったエレメントが孤立的に存在するか否かを判断する。そのようなエレメントが存在する場合は(YES)図5(b)に示すケースに対応する。図5(b)では、エレメントE1の温度差ΔTの符号が負になったことで、エレメントE1から人検知グループを削除する(ステップS8)。すなわちこの場合、エレメントE1の位置から人が移動したこと、つまり人が部屋から退出したことが推定される。
【0023】
また、図5(a)の状態から、図5(c)に示すように人が隣のエレメントE2に移動すれば、ステップS3で「YES」と判断され、ステップ6においてエレメントE1からの人検知グループの削除と、エレメントE2について人検知グループの登録とが行われ、図4と同様になる。更に、図6(a)に示すように、エレメントE7に人検知グループが登録されている状態から、図6(b)に示すように、エレメントE7の符号が負になると共に、その両隣のエレメントE6,E8の符号が何れも正になったとする。この場合もステップS3で「YES」と判断され、ステップ6においてエレメントE7からの人検知グループの削除と、エレメントE6,E8について人検知グループの登録とが行われる。
【0024】
図6のケースでは、当初はエレメントE7に人が例えば二人存在しており、そのうち一人がエレメントE6に移動し、他の一人がエレメントE8に移動したことが推定される。つまり、エレメントE7に存在した人の一群が、エレメントE6,E8に分裂して移動したことを意味する。
以上のようにして人検知グループの登録,削除が行われると、その情報が制御部2から空調機4に送信される。そして、空調機4は与えられた情報に基づいて、例えば人検知グループが全く登録されていない部屋については、設定温度を27℃よりも若干上昇させるように制御する。また、その状態から、上記の部屋に人検知グループが新たに登録されると、設定温度を再び27℃に戻す。
【0025】
以上のように本実施例によれば、制御部2は、室内の空間を列状に分割した各領域;エレメントE1〜E8の温度を検出するように配置されている複数の赤外線センサ3により検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各赤外線センサ3について前回測定された温度データTn-1と今回測定された温度データTnとの差ΔTを求め、その差ΔTの絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出する。そして、有意温度差データの符号が正である赤外線センサ3に対応する位置に人検知グループを登録し、有意温度差データの符号が負である赤外線センサ3については、当該赤外線センサ3に対応する位置に登録されている人検知グループを削除するようにした。
【0026】
したがって、従来より温度制御のために用いている赤外線センサ3を利用して、人の有無を各赤外線センサ3に対応する位置毎に検出することができる。そして、例えば部屋の向きにより窓から太陽光が差し込むような場合に、その太陽光により部屋の一部の温度が上昇しても、そのような温度上昇による温度差は有意なレベルとして捉えないので、人の存在によるものと誤検出することが無く、人の有無を正確に把握することができる。
【0027】
(第2実施例)
図7ないし図13は第2実施例であり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。室内に配置する赤外線センサ3の数が限られている場合は、それらがある程度の間隔を以って配置されることになり、人が2つの赤外線センサ3の間に位置していることも想定されるため、その状態も把握できることが望ましい。そこで、第2実施例では、制御部2が、赤外線センサ3(1)〜3(8)が配置されている間隔の分解能を超えて、人の位置をより詳細に検出する処理を行う。図7は、その人位置検出処理を示すフローチャートである。そして、図8ないし図10は、各赤外線センサ3(1)〜3(8)が検出する温度変化に応じて、人の位置が検出される様々なパターンを示している。
【0028】
制御部2は、先ず各エレメントE(1)〜E(8)の温度をサンプリングすると(ステップS11)、各サンプリング結果について、今回サンプリングした温度と、定常温度との差が誤差範囲を超えたか否かを判断する(ステップS12)。そして、誤差範囲を超えていなければ(NO)ステップS11に戻り温度のサンプリングを継続する。
ステップS12における「定常温度」とは、制御部2が各エレメントE(1)〜E(8)のそれぞれについて、例えば過去の10分間に亘ってサンプリングした温度(例えば、今回のサンプリング温度がT(n)であるとすると、T(n−1)〜T(n−x)に亘る温度)の移動平均値として計算している温度である(図8(b)参照)。
【0029】
そして、ステップS12において、今回サンプリングした温度が、定常温度から誤差範囲として設定した温度(例えば0.1度)を超えて上昇したエレメントが1つ以上あれば「YES」と判断して、そのエレメントを「ピーク検出対象エレメント(2つ以上の場合はピーク検出対象センサ群に相当)」として確定する(ステップS13;検出対象選択手段)。すなわち、室内に人が入ると、赤外線センサ3により検出される温度が急上昇するため、ステップS12で「YES」と判断した場合は、人が入室したものと推定できる。また、図8ないし図10では、誤差範囲を超えて上昇したエレメント;赤外線センサ3の温度を「異常値」と称している。
【0030】
続くステップS14〜S16では、ピーク検出対象エレメントの点数を判断する。ピーク検出対象エレメントの点数が1点であれば(ステップS14:YES)、そのエレメントの位置を人の位置として決定する(ステップS23)。ここでのエレメントの位置は、エレメントの中心であり、当該エレメントに対応する赤外線センサ3の位置に相当する。そして、「人の位置」は、赤外線センサ3(1)〜3(8)の配列に沿う、図1に示す部屋正面の左右方向における直線上の位置である。また、ピーク検出対象エレメントの点数が2点であれば(ステップS15:YES)、更にその2点がエレメントE1,E2か、又はエレメントE7,E8か否かを判断する(ステップS24)。ここで、2点がこれらの組み合わせの何れかであれば(YES)、その組み合わせの2点のうち、検出温度が高い方のエレメントの位置を人の位置として決定する(ステップS21)。また、ピーク検出対象エレメントの点数が3点であれば(ステップS16:YES)、それら3点のうち、中央にあるエレメントの位置を人の位置として決定する(ステップS20)。
【0031】
ここで、図8乃至図10を参照する。図8(b)は、上述したように、各エレメントE1〜E8の温度が定常温度にある状態を示している。尚、図中左が北側,図中右が南側であることから、太陽光の影響によりエレメント(1)側の温度が若干低めに、エレメント(8)側の温度が若干高めになっている。
【0032】
図8(c)はピーク検出対象エレメントの点数が1点の場合(ステップS23)を示している。また、図9(a)はピーク検出対象エレメントがE1,E2の2点である場合,図9(b)はピーク検出対象エレメントがE7,E8の2点である場合(ステップS21)あり、人が室内の端の方に位置している状態に対応する。図10(a)はピーク検出対象エレメントの点数が3点の場合(ステップS20)に対応する。これらのように、人がエレメントE1〜E8のどの辺りに位置しているかによって、ピーク検出対象エレメントの点数が変化する。
そして、図8(c),図9(a)(b),図10(a)に示すように、ピーク検出対象エレメントが1点〜3点の場合について人の位置を決定する手法だけに限定すると、これらは従来より行われているものである。
【0033】
再び図7を参照する。ピーク検出対象エレメントの点数が4点以上となった場合は、ステップS16で「NO」と判断してステップS17に移行する。この場合にステップS17及びS18で行う処理を図10(b),(c)に示しており、(b)は4点の場合、(c)は5点の場合である。図10(b)に示すように、上記4点がエレメントE4〜E7であったとする。この時、これら4点のうち、両端にあるE4,E7と夫々の1つ内側にあるE5,E6との組について、ステップS11でサンプリングした温度の変化傾きA,Bを計算する(ステップS17;傾き計算手段)。すなわち、E4,E5間の温度変化傾きがAとなり、E7,E6間の温度変化傾きがBとなる。
【0034】
そして、夫々の傾きを有する直線(温度変化直線)LA,LBを延長した場合に、E5,E6間でそれらが交差する点Cを計算する(ステップS18)。そして、計算した交点Cを、エレメントE1〜E8,若しくは赤外線センサ3(1)〜3(8)が並ぶ軸上に下ろした位置を人の位置として決定する(ステップS19;人位置検出手段)。
【0035】
すなわち、図10(a)に示すピーク検出対象エレメントの点数が3点(E5,E6,E7)の場合は、それらの中央となるエレメントE6について赤外線センサ3が検出した温度が最も上昇するため、人の位置は容易に決定できるが、ピーク検出対象エレメントの点数が4点の場合は、中央よりの2つのエレメントE5,E6の間に検出温度のピークがあることが予想される。そこで、ステップS17〜S19のように、エレメントE4及びE5,E7及びE6の各組について温度変化の傾きを求め、温度変化直線LA,LBを延長した交点Cに基づき人の位置を決定すれば、エレメントE5,E6の間を補間して決定することができる。
【0036】
図10(c)に示す5点の場合も同様に決定できる。ピーク検出対象エレメントがE3〜E7であれば、両端にあるE3,E7と夫々の1つ内側にあるE4,E6との組について、ステップS1でサンプリングした温度の変化傾きA,Bを計算し、夫々の傾きを有する温度変化直線LA,LBを延長した場合に、E4,E6間でそれらが交差する点Cを軸上で計算し、その軸上の交点Cの位置を人の位置とする。
【0037】
また、図9(c)は、ピーク検出対象エレメントが2点であり、ステップS24で「NO」と判断するケースである。この場合、上記2点はE6,E7となっているが、夫々の1つ外側に位置するエレメントE5,E8を選択し、温度の変化傾きA,Bを計算する。すなわち、E5,E6間の温度変化傾きがAとなり、E8,E7間の温度変化傾きがBとなる。そして、夫々の温度変化直線LA,LBを延長した場合に、E6,E7間でそれらが交差する点Cを計算すると(ステップS25;傾き計算手段)、計算した交点Cを軸上に下ろした位置を人の位置として決定する(ステップS22;人位置検出手段)。
【0038】
次に図11は、第1実施例における人検知グループ管理処理と、図7に示す人位置検出処理とを統合して処理を行うためのフローチャートである。すなわち、ステップS31が図7に示す人位置検出処理(人位置決定フロー)であり、ステップS33が図1に示す人検知グループ管理処理(人有無検出フロー)である。そして、ステップS32が、双方の処理を繋げるためのインターフェイスとなる処理部分(人位置→エレメント変換フロー)であり、その処理内容を図12及び図13に示す。
【0039】
説明を簡単にするため、図12に示すように、2つのエレメントE1,E2の間の位置をn等分した場合に、それぞれ等分された位置に、仮想赤外線センサに対応する仮想エレメントE1−1,E1−2,…,E1−nが存在していると仮想する。そして、ステップS31で決定された人の座標位置hが、エレメントE1,E2の間であった場合を例として、図13の処理を説明する。先ず、ポインタe0にエレメントE1の(1次元)座標位置を代入し、ポインタe1にエレメントE1−1の座標位置を代入すると(ステップS41)、人の座標位置hがポインタe0,e1の座標位置の間にあるか否かを判断する(ステップS42)。上記座標位置の間にない場合は(NO)、ポインタe0にポインタe1の座標位置を代入し、ポインタe1に現在のe1の次のエレメント(E1−2)の座標位置を代入して(ステップS43)ステップS42に戻る。
【0040】
一方、ステップS42で、人の座標位置hがポインタe0,e1の座標位置の間にある場合は(YES)、人の座標位置hがポインタe0とe1とでは、ポインタe0の座標位置に近いか否かを判断する(ステップS44)。ここで、人の座標位置hがポインタe0の座標位置に近い場合は(YES)ポインタe0の座標位置を人が検出された仮想エレメントとし(ステップS45)、人の位置hがポインタe1の座標位置に近い場合は(NO)ポインタe1の座標位置を人が検出された仮想エレメントとする(ステップS46)。
図12では、人の座標位置hが仮想エレメントE1−2,E1−3の間にあり、仮想エレメントE1−2,E1−3の方に近いので、仮想エレメントE1−3の座標位置を人が検出された仮想エレメントとしている(A/D変換における量子化と同様のイメージである)。
【0041】
以上のようにして人が存在する座標位置としての仮想エレメントが決定すると、その位置についてステップS33で人検知グループ管理処理が行われる。またその場合、仮想エレメントにおいて検出される仮想温度は、例えば図10(b)に示すように、温度変化直線LA,LBを延長した場合にそれらが交差する点Cに相当する温度を用いる。その仮想温度を用いて、第1実施例と同様に人検知グループを管理する。
【0042】
以上のように第2実施例によれば、制御部2は、赤外線センサ3(1)〜3(8)の内で、何れか4つ以上の赤外線センサ3の検出温度がそれぞれの定常温度から誤差範囲を超えて上昇したことを検出すると、それらの赤外線センサ3をピーク検出対象センサ群として選択する。そして、ピーク検出対象センサ群の配列上で、当該配列の両端に位置する赤外線センサ3とそれぞれの1つ内側に位置する赤外線センサ3との2組について、それぞれの検出温度が2つの赤外線センサ3の間隔に対して示す傾きを計算すると、計算された2つの温度変化の傾きに従う温度変化直線を延長して、それらの直線が前記配列上で交差した位置を人の位置として検出する。
【0043】
すなわち、人が入室したことで4つ以上の赤外線センサ3の検出温度が上昇した場合は、何れか2つの赤外線センサ3の間に人が位置していると推定されるので、ピーク検出対象センサ群について、当該センサ群の両端に位置する各2つの赤外線センサ3の検出温度から2つの温度変化直線の傾きを計算し、2つの直線を延長した交点を人の位置として検出すれば、使用する赤外線センサ3の数を増やしてそれらの配置間隔を狭めずとも、2つの赤外線センサの間を補間して、室内における人の位置を精度良く検出することが可能となり、コストの上昇を抑制できる。
【0044】
そして、制御部2は、上記のようにして検出された人の位置に仮想赤外線センサが位置すると仮想し、温度変化直線の交点で与えられる温度の値を対応する仮想赤外線センサにより検出された温度と仮想して、その仮想赤外線センサについても有意温度差データを検出すると、仮想赤外線センサに対応する仮想エレメントついても第1実施例の赤外線センサ3と同様に扱い、人検知グループの登録及び削除を行うようにした。したがって、実際の赤外線センサ3の数よりも高い分解能で、人が存在する位置を特定することが可能となり、赤外線センサ3が部屋のサイズに対して少ない数で配置されている場合で、残留している人が室内のどこに存在していても、退出した人(温度差ΔTの符号;負の発生に対応)と残留している人(有意温度差が検出されない状態に対応)とを混同することが無い。
【0045】
また、制御部2は、ピーク検出対象センサ群に属する赤外線センサ3が2つである場合は、それら2つの赤外線センサ3のそれぞれ1つ外側に位置する(つまり、ピーク検出対象センサ群に属さない)赤外線センサ3を選択し、それら2組について温度変化の傾きを計算するので、このケースでは例外的に、ピーク検出対象センサ群の両端からそれぞれ1つ外側に位置する赤外線センサ3を選択して2つの温度変化直線の傾きを計算する。これにより、上記と同様にして室内における人の位置を精度良く検出できる。
【0046】
更に、制御部2は、ピーク検出対象センサ群に属する赤外線センサ3が2つである場合で、且つそれら2つの赤外線センサ3の何れか一方に1つ外側に位置する赤外線センサ3が存在しない場合は温度変化の傾きを計算せず、2つの赤外線センサ3のうち検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出する。すなわち、温度を監視している空間の両端側に人が位置していると、ピーク検出対象センサ群に属する2つの赤外線センサ3の何れか一方には、1つ外側に位置する赤外線センサ3が存在しない場合が発生し得るので、そのようなケースでは、検出温度が高い方の赤外線センサ3の位置を人の位置として検出すれば良い。
【0047】
尚、上記実施例では、例えば全館空調のように、館内における各室の温度が基本的に冷房時であれば28℃程度,暖房時であればより低い20℃程度といったように、人間の体温よりも十分に低い温度に維持されている状態を前提としている。したがって、例えば外気温度が40℃近くに上昇している場合でも、人が入室した場合の温度上昇を赤外線センサで検出できるようになっている。
【0048】
本発明は上記し、又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
温度センサの数は、7個以下,若しくは9個以上であっても良い。
また、温度センサは赤外線センサに限らない。
温度のサンプリング間隔は1秒に限らず、個別の設計に応じて適宜変更して良い。また、定常温度を求めるための移動平均期間についても同様である。
有意温度差についても、8℃に設定する必要はなく、適宜変更して良い。
部屋のドアは、必ずしも温度センサ配列の両端側ではなく中央側に位置することもあるので、例えばエレメントE5に対応する有意温度差ΔTの符号だけが孤立的に正を示す場合がある(図6(a)と同様のイメージ)。したがって、そのようなケースで人検知グループを新規に登録しても良い。
【0049】
「誤差範囲」とする温度についても、適宜変更して設定すれば良い。
【符号の説明】
【0050】
図面中、2は制御部(空調制御装置,有意温度差検出手段,人検知グループ管理手段,検出対象選択手段,傾き計算手段,人位置検出手段)、3(1)〜3(8)は赤外線センサ(温度センサ)、4は空調機(空調機器)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に配置された複数の温度センサによって検出される温度に応じて人の位置を検出し、その人の位置に基づいて空調機器の制御を行う空調制御装置及び空調制御装置の人検知グループ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調機器の制御においては、より高い快適性を付与することが要求されており、室内で人がいる位置をセンサによって検出し、その人がいる位置に向けて温風や冷風を送付することが行われている。斯様な制御を行うためには、室内の人の位置を高精度に検出する必要がある。例えば特許文献1には、ステッピングモータにより赤外線センサを往復移動させて、赤外線検出領域を走査させることで人体が放射する赤外線量の変化を検出し、複数の走査期間に亘る赤外線センサの出力状態;電圧信号の変化に基づいて人の位置を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−271645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、赤外線センサを往復移動させて温度情報を取得すると、前回の取得タイミングと今回の取得タイミングとの間が走査周期分だけ空くことになり、正確さに欠ける。加えて、赤外線検出領域の温度変化の傾きだけでは、人を原因とする温度変化なのか、例えば部屋の窓を介して差し込む太陽光等の外乱によるものかの区別が明瞭ではなく、人の有無を正確に検出することは困難であると思われる。
【0005】
また、1つのビル内にある複数の部屋について、一括して空調制御を行ういわゆる全館空調の場合、従来は各部屋に温風や冷風を送風して暖房・冷房を行うだけで、各部屋毎に風向きまで制御することはなく、よって固定式の赤外線センサで各部屋の温度を検出している。しかしながら、このような全館空調においても、人が不在の部屋については快適な温度からはやや外れた温度に設定して、無駄なエネルギー消費を抑制することが要請されている。そのためには、やはり各部屋について人の有無を検出する必要があり、人検知センサ等のセンサを追加することなく、従来使用している温度センサを利用して人の有無が検知できれば望ましい。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成によって室内の人の有無を正確に検出することができる空調制御装置,及び空調制御装置の人検知グループ管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の空調制御装置によれば、有意温度差検出手段は、室内の空間を列状に分割した各領域の温度を検出するように配置されている複数の温度センサにより検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて前回測定された温度データと今回測定された温度データとの差を求め、その差の絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出する。そして、人検知グループ管理手段は、有意温度差データの符号が正である温度センサの位置に人検知グループ(人が一人以上存在すると想定されるグループ)を登録し、有意温度差データの符号が負である温度センサについては、当該温度センサの位置に登録されている人検知グループを削除する。
【0008】
すなわち、有意温度差検出手段は、周期的に測定される温度の間に発生する温度差が有意なレベルとなったことを検出し、人検知グループ管理手段は、その有意温度差データの符号の正負に応じて人検知グループの登録,削除を行う。したがって、従来より温度制御のために用いている温度センサを利用して、人の有無を各温度センサの位置毎に検出することができる。そして、例えば部屋の向きにより窓から太陽光が差し込むような場合に、その太陽光により部屋の一部の温度が上昇しても、そのような温度上昇による温度差を有意温度差検出手段は有意なレベルとして捉えないので、人の存在によるものと誤検出することが無く、人の有無を正確に把握することができる。
【0009】
請求項2記載の空調制御装置によれば、検出対象選択手段は、複数の温度センサの内で、何れか4つ以上の温度センサの検出温度がそれぞれの定常温度から誤差範囲を超えて上昇したことを検出すると、それらの温度センサをピーク検出対象センサ群として選択する。そして、傾き計算手段が、ピーク検出対象センサ群の配列上で、当該配列の両端に位置する温度センサとそれぞれの1つ内側に位置する温度センサとの2組について、それぞれの検出温度が2つの温度センサの間隔に対して示す傾きを計算すると、人位置検出手段は、計算された2つの温度変化の傾きに従う温度変化直線を延長して、それらの直線が前記配列上で交差した位置を人の位置として検出する。
【0010】
例えば、人が入室したことで3つの温度センサの検出温度がそれぞれの定常温度から誤差範囲を超えて上昇すると、検出温度のピークは中央に位置する温度センサとなるので、その温度センサの位置を人の位置として検出できる。しかし、配置する温度センサの数が限られている場合は、それらの温度センサがある程度の間隔を以って配置されることになり、人が2つの温度センサの間に位置していることもあるため、その状態も把握できることが望ましい。そして、人が入室したことで4つ以上の温度センサの検出温度が上昇した場合には、上述のように何れか2つの温度センサの間に人が位置していると推定される。そこで、検出対象選択手段により選択されたピーク検出対象センサ群について、当該センサ群の両端に位置する各2つの温度センサの検出温度から傾き計算手段が2つの温度変化直線の傾きを計算し、人位置検出手段が2つの直線を延長した交点を人の位置として検出する。これにより、使用する温度センサ数を増やしてそれらの配置間隔を狭めずとも、2つの温度センサの間を演算により補間して室内における人の位置を精度良く検出することが可能となり、コストの上昇を抑制できる。
【0011】
そして、有意温度差検出手段は、人位置検出手段により検出された人の位置に仮想温度センサが位置すると仮想し、温度変化直線の交点で与えられる温度の値を対応する仮想温度センサにより検出された温度と仮想して、その仮想温度センサについても有意温度差データを検出すると、人検知グループ管理手段は、仮想温度センサについても請求項1の温度センサと同様に扱い、人検知グループの登録及び削除を行う。したがって、実際の温度センサの数よりも高い分解能で、人が存在する位置を特定することが可能となる。よって、温度センサが部屋のサイズに対して少ない数で配置されている場合で、残留している人が室内のどこに存在していても、退出した人(有意温度差データの符号;負の発生に対応)と残留している人(有意温度差が検出されない状態に対応)とを混同することが無い。
【0012】
請求項3記載の空調制御装置によれば、傾き計算手段は、ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合は、それら2つの温度センサのそれぞれ1つ外側に位置する(つまり、ピーク検出対象センサ群に属さない)温度センサを選択し、それら2組について温度変化の傾きを計算する。すなわち、上記の場合もやはり2つの温度センサの間に人が位置していると推定されるので、このケースでは例外的に、ピーク検出対象センサ群の両端からそれぞれ1つ外側に位置する温度センサを選択して2つの温度変化直線の傾きを計算する。これにより、人位置検出手段は、請求項2と同様にして室内における人の位置を精度良く検出できる。
【0013】
請求項4記載の空調制御装置によれば、ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合で、且つそれら2つの温度センサの何れか一方に1つ外側に位置する温度センサが存在しない場合、傾き計算手段は温度変化の傾きを計算せず、人位置検出手段は、2つの温度センサのうち検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出する。すなわち、複数の温度センサが温度を監視している空間の両端側に人が位置していると、ピーク検出対象センサ群に属する2つの温度センサの何れか一方には、1つ外側に位置する温度センサが存在しない場合が発生し得る。そのようなケースについては、検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例であり、センサユニットが配置された室内の状態を示す図
【図2】空調システムのブロック図
【図3】人検知グループ管理処理を示すフローチャート
【図4】人検知グループの管理を説明するイメージ図(その1)
【図5】図4相当図(その2)
【図6】図4相当図(その3)
【図7】第2実施例であり、人位置検出処理を示すフローチャート
【図8】人の位置に応じて各エレメントについて検出される温度変化パターンを示す図(その1)
【図9】図8相当図(その2)
【図10】図8相当図(その3)
【図11】図3に示す処理と、図7に示す処理とを統合して行うためのフローチャート
【図12】仮想エレメントを説明する図
【図13】仮想エレメントを含めて人の位置を決定する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施例)
以下、第1実施例について図1ないし図6を参照して説明する。図2は、空調システムのブロック図であり、図1は室内における温度センサの配置状態を示すものである。空調システム1において、制御部(空調制御装置,有意温度差検出手段,人検知グループ管理手段)2には、センサユニット3、空調機(エアコンディショナ)4、外気温センサ5が接続されている。制御部2は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、空調機4に内蔵されて空調機4の制御を行うものでも良いし、或いは空調機4の外部に存在して、後述する人検知処理を行った結果だけを空調機4に出力するものでも良い。
【0016】
センサユニット3は、図1に示すように、室内の一つの壁面において、水平方向に列状に並べて配置される8つの赤外線センサ(温度センサ)3(1)〜3(8)で構成されている。これらの赤外線センサ3(1)〜3(8)は、室内において人が存在する場合に、人体が発生する赤外線を検出するため、床面からの高さ数10cm程度の位置(例えば40cm)に等間隔で配置されている。すなわち、センサユニット3は、人の位置を検出するために配置されるものであるから、例えば床面からの高さが2mを超えるような位置に配置することは想定していない。そして、各赤外線センサ3(1)〜3(8)が検出したセンサ信号は、制御部2に与えられる。
【0017】
外気温センサ5は、外気の温度を検出し、制御部2にセンサ信号を与える。空調機4は、図示しない室外機との間で熱交換を行い、温風又は冷風を室内に送風したり、除湿を行うようにする。その場合、制御部2が人の位置を検出した結果出力する検出信号に応じて、送風方向を制御する。また、暖房/冷房の切り替えは、外気温センサ5が検出した外気温度に基づいて行う。
【0018】
次に、本実施例の作用について図3ないし図6を参照して説明する。図3は、制御部2が行う人検知グループ管理処理を示すフローチャートである。そして、図4ないし図6は、各赤外線センサ3(1)〜3(8)が検出する温度変化に応じて、人検知グループの登録,削除を行う様々なパターンを示している。
図4ないし図6に示すように、各赤外線センサ3(1)〜3(8)がそれぞれ検出対象とする空間領域を、夫々エレメントE(1)〜E(8)と称す。制御部2は、先ず各エレメントE(1)〜E(8)の温度をサンプリングすると(ステップS1)、各サンプリング結果について、今回サンプリングした温度Tnと、前回サンプリングした温度Tn-1との温度差ΔTを求める(ステップS2)。尚、温度のサンプリング間隔は例えば1秒程度とする。
【0019】
ここで、ステップS2で求めた温度差ΔTについては、その値が所定値以上となったものだけを、以降のステップS3〜S5の評価対象とする。すなわち、部屋内における人の有無を検出することが目的であるから、例えば全館空調の設定温度が27℃であり、人の体温を35℃と想定すれば、温度差ΔT>8[℃]となったもの(有意温度差データ)について、温度差ΔTの符号が正,負の何れになったかを評価する。
【0020】
そして、ステップS3では条件(1)として、隣り合う2つのエレメントについて、一方の符号が正で、他方の符号が負となったペアが存在するか否かを判断する。そのようなペアが存在する場合は(YES)図4に示すケースに対応する。図4では、エレメントE3の温度差ΔTの符号が正で、エレメントE4の温度差ΔTの符号が負になっている。この場合、符号が正のエレメントE3に、人が存在することが検知されたグループである人検知グループを、既に登録されているか否かに関わらず登録し、符号が負のエレメントE4から人検知グループを、既に登録されていれば削除する(ステップS6)。すなわち、この場合、元々エレメントE4の位置に存在した人がエレメントE3の位置に移動したことが推定される。
【0021】
ステップS3で「NO」と判断した場合,又はステップS6の実行後はステップS4に移行する。ここでは、上記の条件(1)が成立したものを除いて、温度差ΔTの符号が正になったエレメントが孤立的に存在するか否かを判断する。そのようなエレメントが存在する場合は(YES)図5(a)に示すケースに対応する。図5(a)では、エレメントE1の温度差ΔTの符号が正になったことで、エレメントE1に人検知グループを新規に登録する(ステップS7)。すなわちこの場合、エレメントE1の近傍にドアが位置しており、新たにエレメントE1の位置に人が進入したこと、つまり無人だった部屋に人が新たに入室したことが推定される。
但し、本実施例では、登録されている人検知グループの種類まで判別することまでは目的としていないので、ここでは、エレメントE1に既に人検知グループが登録されている場合であっても、部屋に人が新たに入室したことを以って人検知グループを新規に登録(更新)する。
【0022】
ステップS4で「NO」と判断した場合,又はステップS7の実行後はステップS5に移行する。ここでは、上記の条件(1)が成立したものを除いて、温度差ΔTの符号が負になったエレメントが孤立的に存在するか否かを判断する。そのようなエレメントが存在する場合は(YES)図5(b)に示すケースに対応する。図5(b)では、エレメントE1の温度差ΔTの符号が負になったことで、エレメントE1から人検知グループを削除する(ステップS8)。すなわちこの場合、エレメントE1の位置から人が移動したこと、つまり人が部屋から退出したことが推定される。
【0023】
また、図5(a)の状態から、図5(c)に示すように人が隣のエレメントE2に移動すれば、ステップS3で「YES」と判断され、ステップ6においてエレメントE1からの人検知グループの削除と、エレメントE2について人検知グループの登録とが行われ、図4と同様になる。更に、図6(a)に示すように、エレメントE7に人検知グループが登録されている状態から、図6(b)に示すように、エレメントE7の符号が負になると共に、その両隣のエレメントE6,E8の符号が何れも正になったとする。この場合もステップS3で「YES」と判断され、ステップ6においてエレメントE7からの人検知グループの削除と、エレメントE6,E8について人検知グループの登録とが行われる。
【0024】
図6のケースでは、当初はエレメントE7に人が例えば二人存在しており、そのうち一人がエレメントE6に移動し、他の一人がエレメントE8に移動したことが推定される。つまり、エレメントE7に存在した人の一群が、エレメントE6,E8に分裂して移動したことを意味する。
以上のようにして人検知グループの登録,削除が行われると、その情報が制御部2から空調機4に送信される。そして、空調機4は与えられた情報に基づいて、例えば人検知グループが全く登録されていない部屋については、設定温度を27℃よりも若干上昇させるように制御する。また、その状態から、上記の部屋に人検知グループが新たに登録されると、設定温度を再び27℃に戻す。
【0025】
以上のように本実施例によれば、制御部2は、室内の空間を列状に分割した各領域;エレメントE1〜E8の温度を検出するように配置されている複数の赤外線センサ3により検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各赤外線センサ3について前回測定された温度データTn-1と今回測定された温度データTnとの差ΔTを求め、その差ΔTの絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出する。そして、有意温度差データの符号が正である赤外線センサ3に対応する位置に人検知グループを登録し、有意温度差データの符号が負である赤外線センサ3については、当該赤外線センサ3に対応する位置に登録されている人検知グループを削除するようにした。
【0026】
したがって、従来より温度制御のために用いている赤外線センサ3を利用して、人の有無を各赤外線センサ3に対応する位置毎に検出することができる。そして、例えば部屋の向きにより窓から太陽光が差し込むような場合に、その太陽光により部屋の一部の温度が上昇しても、そのような温度上昇による温度差は有意なレベルとして捉えないので、人の存在によるものと誤検出することが無く、人の有無を正確に把握することができる。
【0027】
(第2実施例)
図7ないし図13は第2実施例であり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。室内に配置する赤外線センサ3の数が限られている場合は、それらがある程度の間隔を以って配置されることになり、人が2つの赤外線センサ3の間に位置していることも想定されるため、その状態も把握できることが望ましい。そこで、第2実施例では、制御部2が、赤外線センサ3(1)〜3(8)が配置されている間隔の分解能を超えて、人の位置をより詳細に検出する処理を行う。図7は、その人位置検出処理を示すフローチャートである。そして、図8ないし図10は、各赤外線センサ3(1)〜3(8)が検出する温度変化に応じて、人の位置が検出される様々なパターンを示している。
【0028】
制御部2は、先ず各エレメントE(1)〜E(8)の温度をサンプリングすると(ステップS11)、各サンプリング結果について、今回サンプリングした温度と、定常温度との差が誤差範囲を超えたか否かを判断する(ステップS12)。そして、誤差範囲を超えていなければ(NO)ステップS11に戻り温度のサンプリングを継続する。
ステップS12における「定常温度」とは、制御部2が各エレメントE(1)〜E(8)のそれぞれについて、例えば過去の10分間に亘ってサンプリングした温度(例えば、今回のサンプリング温度がT(n)であるとすると、T(n−1)〜T(n−x)に亘る温度)の移動平均値として計算している温度である(図8(b)参照)。
【0029】
そして、ステップS12において、今回サンプリングした温度が、定常温度から誤差範囲として設定した温度(例えば0.1度)を超えて上昇したエレメントが1つ以上あれば「YES」と判断して、そのエレメントを「ピーク検出対象エレメント(2つ以上の場合はピーク検出対象センサ群に相当)」として確定する(ステップS13;検出対象選択手段)。すなわち、室内に人が入ると、赤外線センサ3により検出される温度が急上昇するため、ステップS12で「YES」と判断した場合は、人が入室したものと推定できる。また、図8ないし図10では、誤差範囲を超えて上昇したエレメント;赤外線センサ3の温度を「異常値」と称している。
【0030】
続くステップS14〜S16では、ピーク検出対象エレメントの点数を判断する。ピーク検出対象エレメントの点数が1点であれば(ステップS14:YES)、そのエレメントの位置を人の位置として決定する(ステップS23)。ここでのエレメントの位置は、エレメントの中心であり、当該エレメントに対応する赤外線センサ3の位置に相当する。そして、「人の位置」は、赤外線センサ3(1)〜3(8)の配列に沿う、図1に示す部屋正面の左右方向における直線上の位置である。また、ピーク検出対象エレメントの点数が2点であれば(ステップS15:YES)、更にその2点がエレメントE1,E2か、又はエレメントE7,E8か否かを判断する(ステップS24)。ここで、2点がこれらの組み合わせの何れかであれば(YES)、その組み合わせの2点のうち、検出温度が高い方のエレメントの位置を人の位置として決定する(ステップS21)。また、ピーク検出対象エレメントの点数が3点であれば(ステップS16:YES)、それら3点のうち、中央にあるエレメントの位置を人の位置として決定する(ステップS20)。
【0031】
ここで、図8乃至図10を参照する。図8(b)は、上述したように、各エレメントE1〜E8の温度が定常温度にある状態を示している。尚、図中左が北側,図中右が南側であることから、太陽光の影響によりエレメント(1)側の温度が若干低めに、エレメント(8)側の温度が若干高めになっている。
【0032】
図8(c)はピーク検出対象エレメントの点数が1点の場合(ステップS23)を示している。また、図9(a)はピーク検出対象エレメントがE1,E2の2点である場合,図9(b)はピーク検出対象エレメントがE7,E8の2点である場合(ステップS21)あり、人が室内の端の方に位置している状態に対応する。図10(a)はピーク検出対象エレメントの点数が3点の場合(ステップS20)に対応する。これらのように、人がエレメントE1〜E8のどの辺りに位置しているかによって、ピーク検出対象エレメントの点数が変化する。
そして、図8(c),図9(a)(b),図10(a)に示すように、ピーク検出対象エレメントが1点〜3点の場合について人の位置を決定する手法だけに限定すると、これらは従来より行われているものである。
【0033】
再び図7を参照する。ピーク検出対象エレメントの点数が4点以上となった場合は、ステップS16で「NO」と判断してステップS17に移行する。この場合にステップS17及びS18で行う処理を図10(b),(c)に示しており、(b)は4点の場合、(c)は5点の場合である。図10(b)に示すように、上記4点がエレメントE4〜E7であったとする。この時、これら4点のうち、両端にあるE4,E7と夫々の1つ内側にあるE5,E6との組について、ステップS11でサンプリングした温度の変化傾きA,Bを計算する(ステップS17;傾き計算手段)。すなわち、E4,E5間の温度変化傾きがAとなり、E7,E6間の温度変化傾きがBとなる。
【0034】
そして、夫々の傾きを有する直線(温度変化直線)LA,LBを延長した場合に、E5,E6間でそれらが交差する点Cを計算する(ステップS18)。そして、計算した交点Cを、エレメントE1〜E8,若しくは赤外線センサ3(1)〜3(8)が並ぶ軸上に下ろした位置を人の位置として決定する(ステップS19;人位置検出手段)。
【0035】
すなわち、図10(a)に示すピーク検出対象エレメントの点数が3点(E5,E6,E7)の場合は、それらの中央となるエレメントE6について赤外線センサ3が検出した温度が最も上昇するため、人の位置は容易に決定できるが、ピーク検出対象エレメントの点数が4点の場合は、中央よりの2つのエレメントE5,E6の間に検出温度のピークがあることが予想される。そこで、ステップS17〜S19のように、エレメントE4及びE5,E7及びE6の各組について温度変化の傾きを求め、温度変化直線LA,LBを延長した交点Cに基づき人の位置を決定すれば、エレメントE5,E6の間を補間して決定することができる。
【0036】
図10(c)に示す5点の場合も同様に決定できる。ピーク検出対象エレメントがE3〜E7であれば、両端にあるE3,E7と夫々の1つ内側にあるE4,E6との組について、ステップS1でサンプリングした温度の変化傾きA,Bを計算し、夫々の傾きを有する温度変化直線LA,LBを延長した場合に、E4,E6間でそれらが交差する点Cを軸上で計算し、その軸上の交点Cの位置を人の位置とする。
【0037】
また、図9(c)は、ピーク検出対象エレメントが2点であり、ステップS24で「NO」と判断するケースである。この場合、上記2点はE6,E7となっているが、夫々の1つ外側に位置するエレメントE5,E8を選択し、温度の変化傾きA,Bを計算する。すなわち、E5,E6間の温度変化傾きがAとなり、E8,E7間の温度変化傾きがBとなる。そして、夫々の温度変化直線LA,LBを延長した場合に、E6,E7間でそれらが交差する点Cを計算すると(ステップS25;傾き計算手段)、計算した交点Cを軸上に下ろした位置を人の位置として決定する(ステップS22;人位置検出手段)。
【0038】
次に図11は、第1実施例における人検知グループ管理処理と、図7に示す人位置検出処理とを統合して処理を行うためのフローチャートである。すなわち、ステップS31が図7に示す人位置検出処理(人位置決定フロー)であり、ステップS33が図1に示す人検知グループ管理処理(人有無検出フロー)である。そして、ステップS32が、双方の処理を繋げるためのインターフェイスとなる処理部分(人位置→エレメント変換フロー)であり、その処理内容を図12及び図13に示す。
【0039】
説明を簡単にするため、図12に示すように、2つのエレメントE1,E2の間の位置をn等分した場合に、それぞれ等分された位置に、仮想赤外線センサに対応する仮想エレメントE1−1,E1−2,…,E1−nが存在していると仮想する。そして、ステップS31で決定された人の座標位置hが、エレメントE1,E2の間であった場合を例として、図13の処理を説明する。先ず、ポインタe0にエレメントE1の(1次元)座標位置を代入し、ポインタe1にエレメントE1−1の座標位置を代入すると(ステップS41)、人の座標位置hがポインタe0,e1の座標位置の間にあるか否かを判断する(ステップS42)。上記座標位置の間にない場合は(NO)、ポインタe0にポインタe1の座標位置を代入し、ポインタe1に現在のe1の次のエレメント(E1−2)の座標位置を代入して(ステップS43)ステップS42に戻る。
【0040】
一方、ステップS42で、人の座標位置hがポインタe0,e1の座標位置の間にある場合は(YES)、人の座標位置hがポインタe0とe1とでは、ポインタe0の座標位置に近いか否かを判断する(ステップS44)。ここで、人の座標位置hがポインタe0の座標位置に近い場合は(YES)ポインタe0の座標位置を人が検出された仮想エレメントとし(ステップS45)、人の位置hがポインタe1の座標位置に近い場合は(NO)ポインタe1の座標位置を人が検出された仮想エレメントとする(ステップS46)。
図12では、人の座標位置hが仮想エレメントE1−2,E1−3の間にあり、仮想エレメントE1−2,E1−3の方に近いので、仮想エレメントE1−3の座標位置を人が検出された仮想エレメントとしている(A/D変換における量子化と同様のイメージである)。
【0041】
以上のようにして人が存在する座標位置としての仮想エレメントが決定すると、その位置についてステップS33で人検知グループ管理処理が行われる。またその場合、仮想エレメントにおいて検出される仮想温度は、例えば図10(b)に示すように、温度変化直線LA,LBを延長した場合にそれらが交差する点Cに相当する温度を用いる。その仮想温度を用いて、第1実施例と同様に人検知グループを管理する。
【0042】
以上のように第2実施例によれば、制御部2は、赤外線センサ3(1)〜3(8)の内で、何れか4つ以上の赤外線センサ3の検出温度がそれぞれの定常温度から誤差範囲を超えて上昇したことを検出すると、それらの赤外線センサ3をピーク検出対象センサ群として選択する。そして、ピーク検出対象センサ群の配列上で、当該配列の両端に位置する赤外線センサ3とそれぞれの1つ内側に位置する赤外線センサ3との2組について、それぞれの検出温度が2つの赤外線センサ3の間隔に対して示す傾きを計算すると、計算された2つの温度変化の傾きに従う温度変化直線を延長して、それらの直線が前記配列上で交差した位置を人の位置として検出する。
【0043】
すなわち、人が入室したことで4つ以上の赤外線センサ3の検出温度が上昇した場合は、何れか2つの赤外線センサ3の間に人が位置していると推定されるので、ピーク検出対象センサ群について、当該センサ群の両端に位置する各2つの赤外線センサ3の検出温度から2つの温度変化直線の傾きを計算し、2つの直線を延長した交点を人の位置として検出すれば、使用する赤外線センサ3の数を増やしてそれらの配置間隔を狭めずとも、2つの赤外線センサの間を補間して、室内における人の位置を精度良く検出することが可能となり、コストの上昇を抑制できる。
【0044】
そして、制御部2は、上記のようにして検出された人の位置に仮想赤外線センサが位置すると仮想し、温度変化直線の交点で与えられる温度の値を対応する仮想赤外線センサにより検出された温度と仮想して、その仮想赤外線センサについても有意温度差データを検出すると、仮想赤外線センサに対応する仮想エレメントついても第1実施例の赤外線センサ3と同様に扱い、人検知グループの登録及び削除を行うようにした。したがって、実際の赤外線センサ3の数よりも高い分解能で、人が存在する位置を特定することが可能となり、赤外線センサ3が部屋のサイズに対して少ない数で配置されている場合で、残留している人が室内のどこに存在していても、退出した人(温度差ΔTの符号;負の発生に対応)と残留している人(有意温度差が検出されない状態に対応)とを混同することが無い。
【0045】
また、制御部2は、ピーク検出対象センサ群に属する赤外線センサ3が2つである場合は、それら2つの赤外線センサ3のそれぞれ1つ外側に位置する(つまり、ピーク検出対象センサ群に属さない)赤外線センサ3を選択し、それら2組について温度変化の傾きを計算するので、このケースでは例外的に、ピーク検出対象センサ群の両端からそれぞれ1つ外側に位置する赤外線センサ3を選択して2つの温度変化直線の傾きを計算する。これにより、上記と同様にして室内における人の位置を精度良く検出できる。
【0046】
更に、制御部2は、ピーク検出対象センサ群に属する赤外線センサ3が2つである場合で、且つそれら2つの赤外線センサ3の何れか一方に1つ外側に位置する赤外線センサ3が存在しない場合は温度変化の傾きを計算せず、2つの赤外線センサ3のうち検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出する。すなわち、温度を監視している空間の両端側に人が位置していると、ピーク検出対象センサ群に属する2つの赤外線センサ3の何れか一方には、1つ外側に位置する赤外線センサ3が存在しない場合が発生し得るので、そのようなケースでは、検出温度が高い方の赤外線センサ3の位置を人の位置として検出すれば良い。
【0047】
尚、上記実施例では、例えば全館空調のように、館内における各室の温度が基本的に冷房時であれば28℃程度,暖房時であればより低い20℃程度といったように、人間の体温よりも十分に低い温度に維持されている状態を前提としている。したがって、例えば外気温度が40℃近くに上昇している場合でも、人が入室した場合の温度上昇を赤外線センサで検出できるようになっている。
【0048】
本発明は上記し、又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
温度センサの数は、7個以下,若しくは9個以上であっても良い。
また、温度センサは赤外線センサに限らない。
温度のサンプリング間隔は1秒に限らず、個別の設計に応じて適宜変更して良い。また、定常温度を求めるための移動平均期間についても同様である。
有意温度差についても、8℃に設定する必要はなく、適宜変更して良い。
部屋のドアは、必ずしも温度センサ配列の両端側ではなく中央側に位置することもあるので、例えばエレメントE5に対応する有意温度差ΔTの符号だけが孤立的に正を示す場合がある(図6(a)と同様のイメージ)。したがって、そのようなケースで人検知グループを新規に登録しても良い。
【0049】
「誤差範囲」とする温度についても、適宜変更して設定すれば良い。
【符号の説明】
【0050】
図面中、2は制御部(空調制御装置,有意温度差検出手段,人検知グループ管理手段,検出対象選択手段,傾き計算手段,人位置検出手段)、3(1)〜3(8)は赤外線センサ(温度センサ)、4は空調機(空調機器)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に配置された複数の温度センサによって検出される温度に応じて前記室内における人の位置を検出し、前記人の位置に基づいて空調機器の制御を行う空調制御装置において、
前記複数の温度センサは、前記室内の空間を列状に分割した夫々の領域について温度を検出するように配置されており、
前記複数の温度センサによって検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて前回測定された温度データと今回測定された温度データとの差を求め、その差の絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出する有意温度差検出手段と、
前記有意温度差データの符号が正である温度センサの位置に人検知グループを登録し、前記有意温度差データの符号が負である温度センサについては、当該温度センサの位置に登録されている人検知グループを削除する人検知グループ管理手段とを備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
前記複数の温度センサによって検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて過去の所定時間に亘る範囲の平均として得られるそれぞれの定常温度から、何れか4つ以上の温度センサによる検出温度が誤差範囲を超えて上昇したことを検出すると、それら4つ以上の温度センサをピーク検出対象センサ群として選択する検出対象選択手段と、
前記ピーク検出対象センサ群の配列上で、当該配列の両端に位置する温度センサと、それぞれの1つ内側に位置する温度センサとの2組について、それぞれの検出温度が2つの温度センサの間隔に対して示す傾きを計算する傾き計算手段と、
この傾き計算手段により計算された2つの温度変化の傾きに従う温度変化直線を延長して、それらの直線が前記配列上で交差した位置を人の位置として検出する人位置検出手段とを備え、
前記有意温度差検出手段は、前記人位置検出手段により検出された人の位置に仮想温度センサが位置すると仮想し、また、前記温度変化直線の交点で与えられる温度の値を対応する仮想温度センサにより検出された温度と仮想することで前記仮想温度センサについても有意温度差データを検出し、
前記人検知グループ管理手段は、前記仮想温度センサについても前記温度センサと同様に扱い、前記人検知グループの登録及び削除を行うことを特徴とする請求項1記載の空調制御装置。
【請求項3】
前記傾き計算手段は、前記ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合は、前記2つの温度センサのそれぞれ1つ外側に位置する温度センサを選択し、それらの2組について前記温度変化の傾きを計算することを特徴とする請求項2記載の空調制御装置。
【請求項4】
前記ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合で、且つ前記2つの温度センサの何れか一方に1つ外側に位置する温度センサが存在しない場合、
前記傾き計算手段は、前記温度変化の傾きを計算せず、
前記人位置検出手段は、前記2つの温度センサのうち、検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出することを特徴とする請求項3記載の空調制御装置。
【請求項5】
室内に配置された複数の温度センサによって検出される温度に応じて前記室内における人の位置を検出し、前記人の位置に基づいて空調機器の制御を行う空調制御装置が人検知グループを管理する方法において、
前記複数の温度センサは、前記室内の空間を列状に分割した夫々の領域について温度を検出するように配置されており、
前記複数の温度センサによって検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて前回測定された温度データと今回測定された温度データとの差を求め、その差の絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出し、
前記有意温度差データの符号が正である温度センサの位置に人検知グループを登録し、前記有意温度差データの符号が負である温度センサについては、当該温度センサの位置に登録されている人検知グループを削除することを特徴とする空調制御装置の人検知グループ管理方法。
【請求項6】
前記複数の温度センサによって検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて過去の所定時間に亘る範囲の平均として得られるそれぞれの定常温度から、何れか4つ以上の温度センサによる検出温度が誤差範囲を超えて上昇したことを検出すると、それら4つ以上の温度センサをピーク検出対象センサ群として選択し、
前記ピーク検出対象センサ群の配列上で、当該配列の両端に位置する温度センサと、それぞれの1つ内側に位置する温度センサとの2組について、それぞれの検出温度が2つの温度センサの間隔に対して示す傾きを計算し、
計算された2つの温度変化の傾きに従う温度変化直線を延長して、それらの直線が前記配列上で交差した位置を人の位置として検出すると、
検出された人の位置に仮想温度センサが位置すると仮想し、また、前記温度変化直線の交点で与えられる温度の値を対応する仮想温度センサにより検出された温度と仮想することで前記仮想温度センサについても有意温度差データを検出し、
前記仮想温度センサについても前記温度センサと同様に扱い、前記人検知グループの登録及び削除を行うことを特徴とする請求項5記載の空調制御装置の人検知グループ管理方法。
【請求項7】
前記ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合は、前記2つの温度センサのそれぞれ1つ外側に位置する温度センサを選択し、それらの2組について前記温度変化の傾きを計算することを特徴とする請求項6記載の空調制御装置の人検知グループ管理方法。
【請求項8】
前記ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合で、且つ前記2つの温度センサの何れか一方に1つ外側に位置する温度センサが存在しない場合は、前記温度変化の傾きを計算せず、
前記2つの温度センサのうち、検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出することを特徴とする請求項7記載の空調制御装置の人検知グループ管理方法。
【請求項1】
室内に配置された複数の温度センサによって検出される温度に応じて前記室内における人の位置を検出し、前記人の位置に基づいて空調機器の制御を行う空調制御装置において、
前記複数の温度センサは、前記室内の空間を列状に分割した夫々の領域について温度を検出するように配置されており、
前記複数の温度センサによって検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて前回測定された温度データと今回測定された温度データとの差を求め、その差の絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出する有意温度差検出手段と、
前記有意温度差データの符号が正である温度センサの位置に人検知グループを登録し、前記有意温度差データの符号が負である温度センサについては、当該温度センサの位置に登録されている人検知グループを削除する人検知グループ管理手段とを備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
前記複数の温度センサによって検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて過去の所定時間に亘る範囲の平均として得られるそれぞれの定常温度から、何れか4つ以上の温度センサによる検出温度が誤差範囲を超えて上昇したことを検出すると、それら4つ以上の温度センサをピーク検出対象センサ群として選択する検出対象選択手段と、
前記ピーク検出対象センサ群の配列上で、当該配列の両端に位置する温度センサと、それぞれの1つ内側に位置する温度センサとの2組について、それぞれの検出温度が2つの温度センサの間隔に対して示す傾きを計算する傾き計算手段と、
この傾き計算手段により計算された2つの温度変化の傾きに従う温度変化直線を延長して、それらの直線が前記配列上で交差した位置を人の位置として検出する人位置検出手段とを備え、
前記有意温度差検出手段は、前記人位置検出手段により検出された人の位置に仮想温度センサが位置すると仮想し、また、前記温度変化直線の交点で与えられる温度の値を対応する仮想温度センサにより検出された温度と仮想することで前記仮想温度センサについても有意温度差データを検出し、
前記人検知グループ管理手段は、前記仮想温度センサについても前記温度センサと同様に扱い、前記人検知グループの登録及び削除を行うことを特徴とする請求項1記載の空調制御装置。
【請求項3】
前記傾き計算手段は、前記ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合は、前記2つの温度センサのそれぞれ1つ外側に位置する温度センサを選択し、それらの2組について前記温度変化の傾きを計算することを特徴とする請求項2記載の空調制御装置。
【請求項4】
前記ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合で、且つ前記2つの温度センサの何れか一方に1つ外側に位置する温度センサが存在しない場合、
前記傾き計算手段は、前記温度変化の傾きを計算せず、
前記人位置検出手段は、前記2つの温度センサのうち、検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出することを特徴とする請求項3記載の空調制御装置。
【請求項5】
室内に配置された複数の温度センサによって検出される温度に応じて前記室内における人の位置を検出し、前記人の位置に基づいて空調機器の制御を行う空調制御装置が人検知グループを管理する方法において、
前記複数の温度センサは、前記室内の空間を列状に分割した夫々の領域について温度を検出するように配置されており、
前記複数の温度センサによって検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて前回測定された温度データと今回測定された温度データとの差を求め、その差の絶対値が所定値以上となったものを有意温度差データとして検出し、
前記有意温度差データの符号が正である温度センサの位置に人検知グループを登録し、前記有意温度差データの符号が負である温度センサについては、当該温度センサの位置に登録されている人検知グループを削除することを特徴とする空調制御装置の人検知グループ管理方法。
【請求項6】
前記複数の温度センサによって検出される温度データを所定の測定周期ごとに参照し、各温度センサについて過去の所定時間に亘る範囲の平均として得られるそれぞれの定常温度から、何れか4つ以上の温度センサによる検出温度が誤差範囲を超えて上昇したことを検出すると、それら4つ以上の温度センサをピーク検出対象センサ群として選択し、
前記ピーク検出対象センサ群の配列上で、当該配列の両端に位置する温度センサと、それぞれの1つ内側に位置する温度センサとの2組について、それぞれの検出温度が2つの温度センサの間隔に対して示す傾きを計算し、
計算された2つの温度変化の傾きに従う温度変化直線を延長して、それらの直線が前記配列上で交差した位置を人の位置として検出すると、
検出された人の位置に仮想温度センサが位置すると仮想し、また、前記温度変化直線の交点で与えられる温度の値を対応する仮想温度センサにより検出された温度と仮想することで前記仮想温度センサについても有意温度差データを検出し、
前記仮想温度センサについても前記温度センサと同様に扱い、前記人検知グループの登録及び削除を行うことを特徴とする請求項5記載の空調制御装置の人検知グループ管理方法。
【請求項7】
前記ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合は、前記2つの温度センサのそれぞれ1つ外側に位置する温度センサを選択し、それらの2組について前記温度変化の傾きを計算することを特徴とする請求項6記載の空調制御装置の人検知グループ管理方法。
【請求項8】
前記ピーク検出対象センサ群に属する温度センサが2つである場合で、且つ前記2つの温度センサの何れか一方に1つ外側に位置する温度センサが存在しない場合は、前記温度変化の傾きを計算せず、
前記2つの温度センサのうち、検出温度が高い方のセンサ位置を人の位置として検出することを特徴とする請求項7記載の空調制御装置の人検知グループ管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−57840(P2012−57840A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199816(P2010−199816)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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