空調熱量消費評価装置および方法
【課題】建物属性などの定性情報を使わずに、熱量消費の無駄を検知し、エネルギー多消費の要因を特定する。
【解決手段】空調熱量消費評価装置は、空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測部1と、外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測部2と、外気エンタルピを一方の軸にとり空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出部4と、近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出部7と、熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する、熱量多消費要因データベース8と、熱量多消費要因データベース8に記憶されている情報を基に熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定部9とを備える。
【解決手段】空調熱量消費評価装置は、空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測部1と、外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測部2と、外気エンタルピを一方の軸にとり空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出部4と、近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出部7と、熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する、熱量多消費要因データベース8と、熱量多消費要因データベース8に記憶されている情報を基に熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定部9とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調の熱量消費の無駄を検知する空調熱量消費評価装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エネルギーの使用状況を把握し、省エネルギーを実現する手段としてエネルギー監視システムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示されたエネルギー監視システムは、ビル又は工場で使用される電力、ガス及び燃料油のエネルギー使用量を監視し、対象機器の稼動スケジュール、負荷率及びビル又は工場内の設定温度の運転条件を任意に設定して擬似的にエネルギー使用量のデータをシミュレーションし、シミュレーション結果とエネルギー使用量の実データとを比較することで、省エネルギーの余地とエネルギー使用の改善方法とを把握しようとするものである。
【0003】
また、省エネルギーを実現する別の手段として、複数の建物のエネルギー消費量を集中的に管理し解析する建物省エネルギー評価監視装置が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に開示された建物省エネルギー評価監視装置は、外気温、室温、及び建物に設置された設備のエネルギー消費量のデータを元に、過去のデータから基準エネルギー消費量を演算し、基準エネルギー消費量に対するエネルギー消費量の実測値の割合が所定レベル以上である場合にシステム異常と判断し、さらにシステム異常を検知した場合に、各プロセス値(計測データ)が過去の平均値から大きく外れた値をとっているものを異常データ項目として抽出するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−259508号公報
【特許文献2】特許第4334176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたエネルギー監視システムでは、熱量消費の無駄を検知することができ、エネルギー多消費の要因を特定することができるが、建物属性などの定性情報を必要とし、膨大な入力データや設定情報が必要なため、適用対象が限定されるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に開示された建物省エネルギー評価監視装置では、建物属性などの定性情報を使わずに熱量消費の無駄を検知することができるが、無駄の検知が過去からの増加分に限定され、またエネルギー多消費の要因を特定することができないという問題点があった。つまり、特許文献2における基準エネルギー消費量は埋想的なエネルギー消費量であるとは限らないため、この基準エネルギー消費量を用いた判定では、大幅なエネルギー削減余地の抽出が難しい。また、特許文献2における異常データ項目は過去の平均値から乖離していることを示しているだけであり、エネルギー多消費の問題の要因を特定できるとは限らない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、建物属性などの定性情報を使わずに、熱量消費の無駄を検知することができ、かつエネルギー多消費の要因を特定することができる空調熱量消費評価装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調熱量消費評価装置は、空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測手段と、外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測手段と、前記空調消費熱量計測手段が計測または算出した空調消費熱量と前記外気エンタルピ計測手段が計測又は算出した外気エンタルピとを対応付けて記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶されたデータに関して、外気エンタルピを一方の軸にとり、空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出手段と、この近似直線算出手段が算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出手段と、熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する第2の記憶手段と、この第2の記憶手段に記憶されている情報を基に熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の空調熱量消費評価装置の1構成例において、前記近似直線算出手段は、前記近似曲線の変曲点を探索する変曲点探索手段と、前記近似曲線を求める近似曲線導出手段とを有し、前記変曲点探索手段は、外気エンタルピが所定値α以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第1の変曲点を探索し、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第2の変曲点を探索し、前記第1、第2の変曲点が存在しない場合には、冷水に関する空調消費熱量の全データを対象として第3の変曲点を探索し、前記近似曲線導出手段は、外気エンタルピが所定値β以下の領域における温水に関する空調消費熱量のデータ対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが第1の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在し、前記第2の変曲点が存在しない場合、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以上前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在せず、前記第3の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の空調熱量消費評価方法は、空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測ステップと、外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測ステップと、前記空調消費熱量計測ステップで計測または算出した空調消費熱量と前記外気エンタルピ計測ステップで計測又は算出した外気エンタルピとを対応付けて第1の記憶手段に格納する記憶ステップと、前記第1の記憶手段に記憶されたデータに関して、外気エンタルピを一方の軸にとり、空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出ステップと、この近似直線算出ステップで算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出ステップと、熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する第2の記憶手段の情報に基づいて、熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空調消費熱量計測手段と、外気エンタルピ計測手段と、第1、第2の記憶手段と、近似直線算出手段と、熱量多消費抽出手段と、熱量多消費要因特定手段とを設けることにより、建物属性などの定性情報を使わずに、熱量消費の無駄を検知することができ、エネルギー多消費の要因を特定することができる。建物属性などの定性情報を使わない利点としては、情報の入力等の手間を省くことができることと、適用対象現場を拡大できることがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る空調熱量消費評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る空調熱量消費評価装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における空調消費熱量の近似直線の算出方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態における空調消費熱量の近似直線の算出方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における空調消費熱量の近似直線の算出方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態における空調消費熱量の近似直線の算出方法を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点の探索方法を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点の探索方法を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点の探索方法を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点判断処理を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点判断処理を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態における空調消費熱量の理想直線の算出方法を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態における空調消費熱量の理想直線の算出方法を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態における熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【図15】本発明の実施の形態における熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態における熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【図17】本発明の実施の形態における熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の原理]
ビルオーナーが、自分の建物において熱量を削減する余地があるのか否かを知ることは、省エネルギー施策を推進する上で重要である。また、例えばビルオーナーが複数建物を所有している場合、熱量削減余地が残されている建物を優先的に対策することにより、ビルオーナーはコスト及び時間の効率化を図ることができる。したがって、熱量消費の無駄を検知できて、かつエネルギー多消費の要因を特定できる必要性があるが、さらに適用対象現場を拡大できることが望まれる。
【0014】
ここで、適用対象現場の拡大を妨げる要因が、建物属性などの定性情報を使うことにあるということに発明者は着眼し、鋭意研究の結果、建物の熱量消費と外気エンタルピの関係において、建物の埋想的な熱量消費には特性があることをつきとめた。そして、外気エンタルピと空調熱量の2つの指標の相関分析として、理想的な空調熱量特性と実際の空調熱量特性とを比較することにより、空調における熱量消費の無駄を検知することに想到した。
【0015】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る空調熱量消費評価装置の構成を示すブロック図である。
空調熱量消費評価装置は、空調消費熱量計測部1と、外気エンタルピ計測部2と、計測値データベース(計測値DB)3と、近似直線算出部4と、理想熱量消費特性データベース(理想熱量消費特性DB)5と、理想直線算出部6と、熱量多消費抽出部7と、熱量多消費要因データベース(熱量多消費要因DB)8と、熱量多消費要因特定部9と、表示部10とから構成される。
【0016】
以下、本実施の形態の空調熱量消費評価装置の動作を説明する。図2は空調熱量消費評価装置の動作を説明するフローチャートである。
空調消費熱量計測部1は、図示しない空調機に供給される熱媒(冷水、温水、蒸気)のうち少なくとも1つについて空調消費熱量Qを計測する(図2ステップS1)。あるいは、空調消費熱量計測部1は、熱源から空調機に供給される熱媒の往温度と空調機から熱源に戻る熱媒の還温度との差である往還温度差をΔT、熱媒の流量をF、熱媒の熱容量をC、熱媒の比熱をcとしたとき、空調消費熱量Qを次式のように算出してもよい。
Q=ΔT×F×C×c ・・・(1)
なお、熱源への投入エネルギー量をI、熱源の効率をKとしたとき、空調消費熱量Qを次式のように算出してもよい。
Q=I×K ・・・(2)
【0017】
外気エンタルピ計測部2は、外気エンタルピEを計測する(図2ステップS2)。あるいは、外気エンタルピ計測部2は、外気温度と外気湿度とから外気エンタルピEを算出してもよい。空調消費熱量計測部1が計測または算出した空調消費熱量Qと外気エンタルピ計測部2が計測又は算出した外気エンタルピEとは対応付けて計測値DB3に格納される(図2ステップS3)。このような空調消費熱量Qと外気エンタルピEの取得を一定時間毎に繰り返すことで、空調消費熱量Qと外気エンタルピEとの組からなるデータを多数取得することができる。
【0018】
次に、近似直線算出部4は、計測値DB3に記憶されたデータに関して、外気エンタルピEをX軸(横軸)にとり、空調消費熱量QをY軸(縦軸)にとったときのデータの近似直線を算出する(図2ステップS4)。近似直線算出部4は、変曲点探索手段(不図示)と、近似曲線導出手段(不図示)とを有している。
【0019】
図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)、図5は近似直線の算出方法を説明する図、図6は冷水に関する空調消費熱量Q(以下、冷熱量Qc)の近似直線の算出方法を説明するフローチャートである。図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)、図5における30は冷熱量Qcのデータ、31は温水に関する空調消費熱量Q(以下、温熱量Qh)のデータである。
【0020】
まず、近似直線算出部4は、外気エンタルピが所定値α[kJ/kg(DA)]以上の領域における冷熱量Qcのデータを対象として第1の変曲点P1を探索する(図6ステップS100)。ここで、αは所定値であり、温熱が消費されていないはずの外気エンタルピである。変曲点の探索方法については後述する。近似直線算出部4は、第1の変曲点P1が存在する場合、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線L1を算出する(図6ステップS101)。こうして、図3(A)に示すように第1の変曲点P1が探索され、近似直線L1が算出される。
【0021】
続いて、近似直線算出部4は、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータを対象として第2の変曲点P2を探索する(図6ステップS102)。このステップS102の処理により、図3(B)に示すように第2の変曲点P2が探索される。
【0022】
近似直線算出部4は、第2の変曲点P2が存在する場合、図4(A)に示すように第2の変曲点P2のエンタルピと所定値αとを比較する(図6ステップS103)。近似直線算出部4は、第2の変曲点P2のエンタルピと所定値αとが一致するか、あるいは第2の変曲点P2のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にある場合、外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以上第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して、第1、第2の変曲点P1,P2を通る近似直線L2を算出し、さらに外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線L3を算出する(図6ステップS104)。こうして、図4(B)に示すように近似直線L2,L3が算出される。
【0023】
近似直線算出部4は、第2の変曲点P2のエンタルピと所定値αとが一致せず、かつ第2の変曲点P2のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にない場合、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する(図6ステップS105)。また、近似直線算出部4は、ステップS102において第2の変曲点P2が存在しない場合、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する(図6ステップS106)。
【0024】
また、近似直線算出部4は、ステップS100において第1の変曲点P1が存在しない場合、冷熱量Qcの全データを対象として第3の変曲点P3を探索する(図6ステップS107)。近似直線算出部4は、第3の変曲点P3が存在する場合、第3の変曲点P3のエンタルピと所定値αとを比較する(図6ステップS108)。近似直線算出部4は、第3の変曲点P3のエンタルピと所定値αとが一致するか、あるいは第3の変曲点P3のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にある場合、外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出し、さらに外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する(図6ステップS109)。
【0025】
近似直線算出部4は、第3の変曲点P3のエンタルピと所定値αとが一致せず、かつ第3の変曲点P3のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にない場合、冷熱量Qcの全データに対して近似直線を算出する(図6ステップS110)。また、近似直線算出部4は、ステップS107において第3の変曲点P3が存在しない場合、冷熱量Qcの全データに対して近似直線を算出する(図6ステップS111)。以上で、冷熱量Qcの近似直線の算出処理が終了する。
【0026】
次に、近似直線算出部4は、外気エンタルピが所定値β[kJ/kg(DA)]以下の領域における温熱量Qhのデータに対して近似直線L4を算出する。ここで、βは所定値であり、通常、温熱が消費されている外気エンタルピである。こうして、図5に示すように近似直線L4が算出される。
【0027】
次に、変曲点の探索方法について説明する。図7(A)、図7(B)、図8(A)、図8(B)は変曲点の探索方法を説明する図、図9は変曲点の探索方法を説明するフローチャートである。
【0028】
近似直線算出部4は、変曲点を探索する場合、図7(A)に示すように対象データ領域を5点の外気エンタルピE1,E2,E3,E4,E5で均等に分割する(図9ステップS200)。対象データ領域とは、ステップS100の探索処理の場合、外気エンタルピが所定値α以上の領域であり、ステップS102の探索処理の場合、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域であり、ステップS107の探索処理の場合、全データ領域である。近似直線算出部4は、ステップS200の分割処理の後、対象データ領域に対する変曲点判断処理によって変曲点の候補となる点を選定する(図9ステップS201)。変曲点判断処理については後述する。
【0029】
続いて、近似直線算出部4は、ステップS201で選定した変曲点の候補を含む分割領域(図7(A)の例ではE3からE4までの領域)とその隣の分割領域(図7(A)の例ではE2からE3までの領域)とを次の分割対象として、この分割対象を図7(B)に示すように5点の外気エンタルピE6,E7,E8,E9,E10で均等に分割する(図9ステップS202)。近似直線算出部4は、ステップS202の分割処理の後、対象データ領域に対する変曲点判断処理によって変曲点の候補となる点を選定する(図9ステップS203)。
【0030】
続いて、近似直線算出部4は、ステップS203で選定した変曲点の候補を含む分割領域(図7(B)の例ではE9からE10までの領域)とその隣の分割領域(図7(B)の例ではE8からE9までの領域)とを次の分割対象として、この分割対象を図8(A)に示すように5点の外気エンタルピE11,E12,E13,E14,E15で均等に分割する(図9ステップS204)。近似直線算出部4は、ステップS204の分割処理の後、対象データ領域に対する変曲点判断処理によって変曲点の候補となる点を選定する(図9ステップS205)。最後に、近似直線算出部4は、ステップS205で選定した点を変曲点Pとして確定する(図9ステップS206)。こうして、図8(B)に示すように変曲点Pを探索することができる。
【0031】
次に、変曲点判断処理について説明する。図10は変曲点判断処理を説明する図、図11は変曲点判断処理を説明するフローチャートである。
近似直線算出部4は、隣接する2つの分割領域の境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、この境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する(図11ステップS300)。図10の例では、外気エンタルピE20からE21までの分割領域と、外気エンタルピE21からE22までの分割領域とが設定されているときに、この隣接する2つの分割領域の境界点E21よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータ50に対して近似直線L10が算出され、境界点E21よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータ51に対して近似直線L11が算出されている。
【0032】
近似直線算出部4は、このような近似直線の算出を、対象データ領域に含まれる隣接する2つの分割領域の全てについて行う。例えばステップS203の変曲点判断処理では、外気エンタルピE2からE6までの分割領域と外気エンタルピE6からE7までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E6よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E6よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。また、外気エンタルピE6からE7までの分割領域と外気エンタルピE7からE8までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E7よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E7よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。また、外気エンタルピE7からE8までの分割領域と外気エンタルピE8からE9までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E8よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E8よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。また、外気エンタルピE8からE9までの分割領域と外気エンタルピE9からE10までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E9よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E9よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。さらに、外気エンタルピE9からE10までの分割領域と外気エンタルピE10からE4までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E10よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E10よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。
【0033】
続いて、近似直線算出部4は、隣接する2つの分割領域の境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域について算出した近似直線と境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータとの誤差の2乗和を算出すると共に、境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域について算出した近似直線と境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータとの誤差の2乗和を算出し、これらの算出結果を加算することで、境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の誤差の2乗和と境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の誤差の2乗和との合計値eを算出する(図11ステップS301)。境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域における誤差の2乗和をe1、境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域における誤差の2乗和をe2とすれば、誤差の2乗和の合計値eは次式となる。
e=e1+e2 ・・・(3)
【0034】
近似直線算出部4は、このような誤差の2乗和の算出を、対象データ領域に含まれる隣接する2つの分割領域の全てについて行う。
次に、近似直線算出部4は、ステップS301で算出した誤差の2乗和の合計値eのうちの最小値を求める(図11ステップS302)。
【0035】
そして、近似直線算出部4は、誤差の2乗和の合計値eが最小となった隣接する2つの領域の各々について相関係数R2と近似直線の1次の係数γとを求める(図11ステップS303)。例えば図10に示した隣接する2つの分割領域の境界点E21よりも低エンタルピ側にある対象データ領域における誤差の2乗和と境界点E21よりも高エンタルピ側にある対象データ領域における誤差の2乗和との合計値eが最小値になったとすると、境界点E21よりも低エンタルピ側にある対象データ領域における近似直線L10の式はY=0.5076X+1.1968、相関係数R2は0.2746、近似直線L10の1次の係数γは0.5076である。また、境界点E21よりも高エンタルピ側にある対象データ領域における近似直線L11の式はY=1.4087X−27.952、相関係数R2は0.5268、近似直線L11の1次の係数γは1.4087である。
【0036】
次に、近似直線算出部4は、ステップS303で算出した2つの相関係数R2のうち少なくとも1つが所定のしきい値TH1以下である場合(図11ステップS304においてYES)、誤差の2乗和の合計値eが最小となった隣接する2つの分割領域の組み合わせを、最小値決定の対象から除外して(図11ステップS305)、ステップS302に戻る。ステップS304,S305の処理を行う理由は、データ数が少なく、誤差の2乗和が偶然小さくなっている場合を除外するためである。
【0037】
また、近似直線算出部4は、ステップS303で算出した2つの係数γの差が所定のしきい値TH2以下である場合(図11ステップS306においてYES)、誤差の2乗和の合計値eが最小となった隣接する2つの分割領域の組み合わせを、最小値決定の対象から除外して(図11ステップS305)、ステップS302に戻る。ステップS306,S305の処理を行う理由は、誤差の2乗和は小さい場合であるが、冷熱量Qcの特性が変化していない場合を除外するためである。
【0038】
最後に、近似直線算出部4は、2つの相関係数R2がしきい値TH1より大で、かつ2つの係数γの差がしきい値TH2より大である隣接する2つの分割領域を確定し(図11ステップS304,S306においてNO)、この隣接する2つの分割領域の境界点を、変曲点の候補の点として確定する(図11ステップS307)。例えば図10の例では、外気エンタルピE21が変曲点の候補の点となる。以上で、変曲点判断処理が終了する。なお、図11で説明した各ステップにおいて、誤差の2乗和の代わりに、誤差の絶対値の和を使用してもよい。
【0039】
次に、理想直線算出部6の動作について説明する。図12(A)、図12(B)、図13は理想直線の算出方法を説明する図である。図12(A)、図12(B)、図13における30は冷熱量Qcのデータ、31は温熱量Qhのデータである。
【0040】
理想熱量消費特性DB5には、埋想的な熱量消費特性が予め記憶されている。理想直線算出部6は、計測値DB3に記憶されたデータに関して、外気エンタルピEをX軸(横軸)にとり、空調消費熱量QをY軸(縦軸)にとったときのデータの理想直線を算出する(図2ステップS5)。
【0041】
まず、理想直線算出部6は、図12(A)に示すようにX軸上の所定の外気エンタルピa[kJ/kg(DA)]の点と冷熱量Qcのデータの第1の変曲点P1とを通る直線を算出し、この直線を外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの理想直線L20とする。外気エンタルピaは、理想熱量消費特性DB5に予め記憶されている値である。
【0042】
また、理想直線算出部6は、図12(B)に示すようにX軸上の所定の外気エンタルピb[kJ/kg(DA)]の点と冷熱量Qcのデータの第1の変曲点P1とを通る直線を算出し、この直線を外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの理想直線L21とする。外気エンタルピbは、理想熱量消費特性DB5に予め記憶されている値である。
【0043】
さらに、理想直線算出部6は、図13に示すようにX軸上の所定の外気エンタルピb[kJ/kg(DA)]の点を通る、Y軸と平行な直線L22に関して、理想直線L20と線対称な直線を算出する。そして、理想直線算出部6は、この算出した直線の傾きを有し、かつX軸上の外気エンタルピb[kJ/kg(DA)]の点を通る直線を温熱量Qhの理想直線L23とする。以上で、理想直線算出部6の処理が終了する。
【0044】
次に、熱量多消費抽出部7は、近似直線算出部4が算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量Qが多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する(図2ステップS6)。図14〜図17は熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【0045】
熱量多消費抽出部7は、例えば夏季の空調における熱量多消費の状態を抽出しようとする場合、図14に示すように外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の評価対象領域において温水が消費されているか否かを評価する。熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1のエンタルピが所定値ε[kJ/kg(DA)]近辺にある場合には、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域を評価対象領域とする。また、熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1が所定値ε[kJ/kg(DA)]近辺にない場合には、外気エンタルピが所定値ε[kJ/kg(DA)]以上の領域を評価対象領域とする。
【0046】
熱量多消費抽出部7は、評価対象領域において温水が消費されている場合(評価対象領域に温熱量Qhのデータが存在する場合)、夏季に温水が消費されており、熱量多消費の状態になっていると判断する。また、熱量多消費抽出部7は、評価対象領域において温水が消費されていない場合、問題がなく、熱量多消費の状態になっていないと判断する。こうして、夏季の空調における熱量多消費の状態を抽出することができる。
【0047】
また、熱量多消費抽出部7は、例えば夏季の空調における熱量多消費の状態を抽出しようとする場合、図15に示すように外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの近似直線L1のX軸との交点を求めることで、熱量多消費の状態になっているか否かを評価する。
【0048】
熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1が存在する場合には、図15に示すように外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの近似直線L1のX軸との交点nを求める。また、熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1が存在せず、第3の変曲点P3が存在し、外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcのデータを用いて近似直線が算出されている場合には、この近似曲線のX軸との交点を求める。また、熱量多消費抽出部7は、第3の変曲点P3が存在しない場合、あるいは第3の変曲点P3のエンタルピと所定値αとが一致せず、かつ第3の変曲点P3のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にない場合には、冷熱量Qcの全データを用いて算出された近似直線のX軸との交点を求める。
【0049】
熱量多消費抽出部7は、近似直線のX軸との交点のエンタルピが例えば所定値ζ[kJ/kg(DA)]以上の場合、熱量多消費の状態になっていると判断する。また、熱量多消費抽出部7は、交点のエンタルピが例えば所定値ζ[kJ/kg(DA)]未満の場合、問題がなく、熱量多消費の状態になっていないと判断する。こうして、夏季の空調における熱量多消費の状態を抽出することができる。
【0050】
また、熱量多消費抽出部7は、例えば夏季と冬季の中間期の空調における熱量多消費の状態を抽出しようとする場合、図16に示すように外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以上第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線L2のX軸との交点を求めることで、熱量多消費の状態になっているか否かを評価する。
【0051】
熱量多消費抽出部7は、第1、第2の変曲点P1,P2が存在する場合には、図16に示すように外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以上第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線L2のX軸との交点nを求める。また、熱量多消費抽出部7は、第2の変曲点P2が存在しない場合、あるいは第2の変曲点P2のエンタルピと所定値αとが一致せず、かつ第2の変曲点P2のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にない場合には、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点を求める。また、熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1が存在せず、第3の変曲点P3が存在し、外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータを用いて近似直線が算出されている場合には、この近似曲線のX軸との交点を求める。
【0052】
熱量多消費抽出部7は、近似直線のX軸との交点のエンタルピが例えば所定値η[kJ/kg(DA)]以下の場合、熱量多消費の状態になっていると判断する。また、熱量多消費抽出部7は、交点のエンタルピが例えば所定値η[kJ/kg(DA)]より大の場合、問題がなく、熱量多消費の状態になっていないと判断する。こうして、中間期の空調における熱量多消費の状態を抽出することができる。
【0053】
また、熱量多消費抽出部7は、例えば冬季の空調における熱量多消費の状態を抽出しようとする場合、図17に示すように温熱量Qhの近似直線L4のX軸との交点mを求め、この交点mのエンタルピを中心とする一定の範囲内に冷熱量Qcの変曲点が存在するか否かで、熱量多消費の状態になっているか否かを評価する。
【0054】
熱量多消費抽出部7は、交点mのエンタルピを中心とする一定の範囲内に冷熱量Qcの変曲点(図17の例では第2の変曲点P2)が存在する場合、熱量多消費の状態になっていると判断する。また、熱量多消費抽出部7は、交点mのエンタルピを中心とする一定の範囲内に冷熱量Qcの変曲点が存在しない場合、問題がなく、熱量多消費の状態になっていないと判断する。こうして、冬季の空調における熱量多消費の状態を抽出することができる。
【0055】
次に、熱量多消費要因特定部9は、熱量多消費抽出部7が抽出した熱量多消費の要因を特定する(図2ステップS7)。熱量多消費要因DB8には、熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報が予め記憶されている。熱量多消費要因特定部9は、この熱量多消費要因DB8に記憶されている情報を基に熱量多消費の要因を特定する。
【0056】
熱量多消費の要因は、外気エンタルピの範囲と多消費されている熱量の種類によって決まる。
熱量多消費要因特定部9は、夏季に温水が消費されており、熱量多消費の状態になっていると判断された場合、夏季の空調が熱量多消費の要因であると特定する。
【0057】
また、熱量多消費要因特定部9は、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点、あるいは第3の変曲点P3のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点を求めた結果、この交点のエンタルピが所定値ζ[kJ/kg(DA)]以上で、熱量多消費の状態になっていると判断された場合、夏季の空調が熱量多消費の要因であると特定する。
【0058】
また、熱量多消費要因特定部9は、外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以上第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点、あるいは外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点を求めた結果、この交点のエンタルピが所定値η[kJ/kg(DA)]以下で、熱量多消費の状態になっていると判断された場合、中間期の空調が熱量多消費の要因であると特定する。
【0059】
また、熱量多消費要因特定部9は、温熱量Qhの近似直線のX軸との交点を求め、この交点のエンタルピを中心とする一定の範囲内に冷熱量Qcの変曲点の存在が確認された結果、熱量多消費の状態になっていると判断された場合、冬季の空調が熱量多消費の要因であると特定する。
【0060】
表示部10は、熱量多消費抽出部7が抽出した熱量多消費を示す状態情報と、熱量多消費要因特定部9が特定した熱量多消費の要因を示す要因情報とを表示する(図2ステップS8)。空調熱量消費評価装置を使用するユーザは、熱量多消費の要因情報が表示された場合、適切な改善方法を検討することができる。
【0061】
以上のように、本実施の形態では、建物属性などの定性情報を使わずに、熱量消費の無駄を検知することができ、エネルギー多消費の要因を特定することができる。
【0062】
本実施の形態の空調熱量消費評価装置は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、空調の熱量消費の無駄を検知し、エネルギー多消費の要因を特定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…空調消費熱量計測部、2…外気エンタルピ計測部、3…計測値データベース、4…近似直線算出部、5…理想熱量消費特性データベース、6…理想直線算出部、7…熱量多消費抽出部、8…熱量多消費要因データベース、9…熱量多消費要因特定部、10…表示部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調の熱量消費の無駄を検知する空調熱量消費評価装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エネルギーの使用状況を把握し、省エネルギーを実現する手段としてエネルギー監視システムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示されたエネルギー監視システムは、ビル又は工場で使用される電力、ガス及び燃料油のエネルギー使用量を監視し、対象機器の稼動スケジュール、負荷率及びビル又は工場内の設定温度の運転条件を任意に設定して擬似的にエネルギー使用量のデータをシミュレーションし、シミュレーション結果とエネルギー使用量の実データとを比較することで、省エネルギーの余地とエネルギー使用の改善方法とを把握しようとするものである。
【0003】
また、省エネルギーを実現する別の手段として、複数の建物のエネルギー消費量を集中的に管理し解析する建物省エネルギー評価監視装置が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に開示された建物省エネルギー評価監視装置は、外気温、室温、及び建物に設置された設備のエネルギー消費量のデータを元に、過去のデータから基準エネルギー消費量を演算し、基準エネルギー消費量に対するエネルギー消費量の実測値の割合が所定レベル以上である場合にシステム異常と判断し、さらにシステム異常を検知した場合に、各プロセス値(計測データ)が過去の平均値から大きく外れた値をとっているものを異常データ項目として抽出するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−259508号公報
【特許文献2】特許第4334176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたエネルギー監視システムでは、熱量消費の無駄を検知することができ、エネルギー多消費の要因を特定することができるが、建物属性などの定性情報を必要とし、膨大な入力データや設定情報が必要なため、適用対象が限定されるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に開示された建物省エネルギー評価監視装置では、建物属性などの定性情報を使わずに熱量消費の無駄を検知することができるが、無駄の検知が過去からの増加分に限定され、またエネルギー多消費の要因を特定することができないという問題点があった。つまり、特許文献2における基準エネルギー消費量は埋想的なエネルギー消費量であるとは限らないため、この基準エネルギー消費量を用いた判定では、大幅なエネルギー削減余地の抽出が難しい。また、特許文献2における異常データ項目は過去の平均値から乖離していることを示しているだけであり、エネルギー多消費の問題の要因を特定できるとは限らない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、建物属性などの定性情報を使わずに、熱量消費の無駄を検知することができ、かつエネルギー多消費の要因を特定することができる空調熱量消費評価装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調熱量消費評価装置は、空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測手段と、外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測手段と、前記空調消費熱量計測手段が計測または算出した空調消費熱量と前記外気エンタルピ計測手段が計測又は算出した外気エンタルピとを対応付けて記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶されたデータに関して、外気エンタルピを一方の軸にとり、空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出手段と、この近似直線算出手段が算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出手段と、熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する第2の記憶手段と、この第2の記憶手段に記憶されている情報を基に熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の空調熱量消費評価装置の1構成例において、前記近似直線算出手段は、前記近似曲線の変曲点を探索する変曲点探索手段と、前記近似曲線を求める近似曲線導出手段とを有し、前記変曲点探索手段は、外気エンタルピが所定値α以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第1の変曲点を探索し、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第2の変曲点を探索し、前記第1、第2の変曲点が存在しない場合には、冷水に関する空調消費熱量の全データを対象として第3の変曲点を探索し、前記近似曲線導出手段は、外気エンタルピが所定値β以下の領域における温水に関する空調消費熱量のデータ対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが第1の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在し、前記第2の変曲点が存在しない場合、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以上前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在せず、前記第3の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の空調熱量消費評価方法は、空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測ステップと、外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測ステップと、前記空調消費熱量計測ステップで計測または算出した空調消費熱量と前記外気エンタルピ計測ステップで計測又は算出した外気エンタルピとを対応付けて第1の記憶手段に格納する記憶ステップと、前記第1の記憶手段に記憶されたデータに関して、外気エンタルピを一方の軸にとり、空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出ステップと、この近似直線算出ステップで算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出ステップと、熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する第2の記憶手段の情報に基づいて、熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空調消費熱量計測手段と、外気エンタルピ計測手段と、第1、第2の記憶手段と、近似直線算出手段と、熱量多消費抽出手段と、熱量多消費要因特定手段とを設けることにより、建物属性などの定性情報を使わずに、熱量消費の無駄を検知することができ、エネルギー多消費の要因を特定することができる。建物属性などの定性情報を使わない利点としては、情報の入力等の手間を省くことができることと、適用対象現場を拡大できることがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る空調熱量消費評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る空調熱量消費評価装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における空調消費熱量の近似直線の算出方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態における空調消費熱量の近似直線の算出方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における空調消費熱量の近似直線の算出方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態における空調消費熱量の近似直線の算出方法を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点の探索方法を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点の探索方法を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点の探索方法を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点判断処理を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態における近似直線の変曲点判断処理を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態における空調消費熱量の理想直線の算出方法を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態における空調消費熱量の理想直線の算出方法を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態における熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【図15】本発明の実施の形態における熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態における熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【図17】本発明の実施の形態における熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の原理]
ビルオーナーが、自分の建物において熱量を削減する余地があるのか否かを知ることは、省エネルギー施策を推進する上で重要である。また、例えばビルオーナーが複数建物を所有している場合、熱量削減余地が残されている建物を優先的に対策することにより、ビルオーナーはコスト及び時間の効率化を図ることができる。したがって、熱量消費の無駄を検知できて、かつエネルギー多消費の要因を特定できる必要性があるが、さらに適用対象現場を拡大できることが望まれる。
【0014】
ここで、適用対象現場の拡大を妨げる要因が、建物属性などの定性情報を使うことにあるということに発明者は着眼し、鋭意研究の結果、建物の熱量消費と外気エンタルピの関係において、建物の埋想的な熱量消費には特性があることをつきとめた。そして、外気エンタルピと空調熱量の2つの指標の相関分析として、理想的な空調熱量特性と実際の空調熱量特性とを比較することにより、空調における熱量消費の無駄を検知することに想到した。
【0015】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る空調熱量消費評価装置の構成を示すブロック図である。
空調熱量消費評価装置は、空調消費熱量計測部1と、外気エンタルピ計測部2と、計測値データベース(計測値DB)3と、近似直線算出部4と、理想熱量消費特性データベース(理想熱量消費特性DB)5と、理想直線算出部6と、熱量多消費抽出部7と、熱量多消費要因データベース(熱量多消費要因DB)8と、熱量多消費要因特定部9と、表示部10とから構成される。
【0016】
以下、本実施の形態の空調熱量消費評価装置の動作を説明する。図2は空調熱量消費評価装置の動作を説明するフローチャートである。
空調消費熱量計測部1は、図示しない空調機に供給される熱媒(冷水、温水、蒸気)のうち少なくとも1つについて空調消費熱量Qを計測する(図2ステップS1)。あるいは、空調消費熱量計測部1は、熱源から空調機に供給される熱媒の往温度と空調機から熱源に戻る熱媒の還温度との差である往還温度差をΔT、熱媒の流量をF、熱媒の熱容量をC、熱媒の比熱をcとしたとき、空調消費熱量Qを次式のように算出してもよい。
Q=ΔT×F×C×c ・・・(1)
なお、熱源への投入エネルギー量をI、熱源の効率をKとしたとき、空調消費熱量Qを次式のように算出してもよい。
Q=I×K ・・・(2)
【0017】
外気エンタルピ計測部2は、外気エンタルピEを計測する(図2ステップS2)。あるいは、外気エンタルピ計測部2は、外気温度と外気湿度とから外気エンタルピEを算出してもよい。空調消費熱量計測部1が計測または算出した空調消費熱量Qと外気エンタルピ計測部2が計測又は算出した外気エンタルピEとは対応付けて計測値DB3に格納される(図2ステップS3)。このような空調消費熱量Qと外気エンタルピEの取得を一定時間毎に繰り返すことで、空調消費熱量Qと外気エンタルピEとの組からなるデータを多数取得することができる。
【0018】
次に、近似直線算出部4は、計測値DB3に記憶されたデータに関して、外気エンタルピEをX軸(横軸)にとり、空調消費熱量QをY軸(縦軸)にとったときのデータの近似直線を算出する(図2ステップS4)。近似直線算出部4は、変曲点探索手段(不図示)と、近似曲線導出手段(不図示)とを有している。
【0019】
図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)、図5は近似直線の算出方法を説明する図、図6は冷水に関する空調消費熱量Q(以下、冷熱量Qc)の近似直線の算出方法を説明するフローチャートである。図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)、図5における30は冷熱量Qcのデータ、31は温水に関する空調消費熱量Q(以下、温熱量Qh)のデータである。
【0020】
まず、近似直線算出部4は、外気エンタルピが所定値α[kJ/kg(DA)]以上の領域における冷熱量Qcのデータを対象として第1の変曲点P1を探索する(図6ステップS100)。ここで、αは所定値であり、温熱が消費されていないはずの外気エンタルピである。変曲点の探索方法については後述する。近似直線算出部4は、第1の変曲点P1が存在する場合、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線L1を算出する(図6ステップS101)。こうして、図3(A)に示すように第1の変曲点P1が探索され、近似直線L1が算出される。
【0021】
続いて、近似直線算出部4は、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータを対象として第2の変曲点P2を探索する(図6ステップS102)。このステップS102の処理により、図3(B)に示すように第2の変曲点P2が探索される。
【0022】
近似直線算出部4は、第2の変曲点P2が存在する場合、図4(A)に示すように第2の変曲点P2のエンタルピと所定値αとを比較する(図6ステップS103)。近似直線算出部4は、第2の変曲点P2のエンタルピと所定値αとが一致するか、あるいは第2の変曲点P2のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にある場合、外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以上第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して、第1、第2の変曲点P1,P2を通る近似直線L2を算出し、さらに外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線L3を算出する(図6ステップS104)。こうして、図4(B)に示すように近似直線L2,L3が算出される。
【0023】
近似直線算出部4は、第2の変曲点P2のエンタルピと所定値αとが一致せず、かつ第2の変曲点P2のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にない場合、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する(図6ステップS105)。また、近似直線算出部4は、ステップS102において第2の変曲点P2が存在しない場合、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する(図6ステップS106)。
【0024】
また、近似直線算出部4は、ステップS100において第1の変曲点P1が存在しない場合、冷熱量Qcの全データを対象として第3の変曲点P3を探索する(図6ステップS107)。近似直線算出部4は、第3の変曲点P3が存在する場合、第3の変曲点P3のエンタルピと所定値αとを比較する(図6ステップS108)。近似直線算出部4は、第3の変曲点P3のエンタルピと所定値αとが一致するか、あるいは第3の変曲点P3のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にある場合、外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出し、さらに外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する(図6ステップS109)。
【0025】
近似直線算出部4は、第3の変曲点P3のエンタルピと所定値αとが一致せず、かつ第3の変曲点P3のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にない場合、冷熱量Qcの全データに対して近似直線を算出する(図6ステップS110)。また、近似直線算出部4は、ステップS107において第3の変曲点P3が存在しない場合、冷熱量Qcの全データに対して近似直線を算出する(図6ステップS111)。以上で、冷熱量Qcの近似直線の算出処理が終了する。
【0026】
次に、近似直線算出部4は、外気エンタルピが所定値β[kJ/kg(DA)]以下の領域における温熱量Qhのデータに対して近似直線L4を算出する。ここで、βは所定値であり、通常、温熱が消費されている外気エンタルピである。こうして、図5に示すように近似直線L4が算出される。
【0027】
次に、変曲点の探索方法について説明する。図7(A)、図7(B)、図8(A)、図8(B)は変曲点の探索方法を説明する図、図9は変曲点の探索方法を説明するフローチャートである。
【0028】
近似直線算出部4は、変曲点を探索する場合、図7(A)に示すように対象データ領域を5点の外気エンタルピE1,E2,E3,E4,E5で均等に分割する(図9ステップS200)。対象データ領域とは、ステップS100の探索処理の場合、外気エンタルピが所定値α以上の領域であり、ステップS102の探索処理の場合、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域であり、ステップS107の探索処理の場合、全データ領域である。近似直線算出部4は、ステップS200の分割処理の後、対象データ領域に対する変曲点判断処理によって変曲点の候補となる点を選定する(図9ステップS201)。変曲点判断処理については後述する。
【0029】
続いて、近似直線算出部4は、ステップS201で選定した変曲点の候補を含む分割領域(図7(A)の例ではE3からE4までの領域)とその隣の分割領域(図7(A)の例ではE2からE3までの領域)とを次の分割対象として、この分割対象を図7(B)に示すように5点の外気エンタルピE6,E7,E8,E9,E10で均等に分割する(図9ステップS202)。近似直線算出部4は、ステップS202の分割処理の後、対象データ領域に対する変曲点判断処理によって変曲点の候補となる点を選定する(図9ステップS203)。
【0030】
続いて、近似直線算出部4は、ステップS203で選定した変曲点の候補を含む分割領域(図7(B)の例ではE9からE10までの領域)とその隣の分割領域(図7(B)の例ではE8からE9までの領域)とを次の分割対象として、この分割対象を図8(A)に示すように5点の外気エンタルピE11,E12,E13,E14,E15で均等に分割する(図9ステップS204)。近似直線算出部4は、ステップS204の分割処理の後、対象データ領域に対する変曲点判断処理によって変曲点の候補となる点を選定する(図9ステップS205)。最後に、近似直線算出部4は、ステップS205で選定した点を変曲点Pとして確定する(図9ステップS206)。こうして、図8(B)に示すように変曲点Pを探索することができる。
【0031】
次に、変曲点判断処理について説明する。図10は変曲点判断処理を説明する図、図11は変曲点判断処理を説明するフローチャートである。
近似直線算出部4は、隣接する2つの分割領域の境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、この境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する(図11ステップS300)。図10の例では、外気エンタルピE20からE21までの分割領域と、外気エンタルピE21からE22までの分割領域とが設定されているときに、この隣接する2つの分割領域の境界点E21よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータ50に対して近似直線L10が算出され、境界点E21よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータ51に対して近似直線L11が算出されている。
【0032】
近似直線算出部4は、このような近似直線の算出を、対象データ領域に含まれる隣接する2つの分割領域の全てについて行う。例えばステップS203の変曲点判断処理では、外気エンタルピE2からE6までの分割領域と外気エンタルピE6からE7までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E6よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E6よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。また、外気エンタルピE6からE7までの分割領域と外気エンタルピE7からE8までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E7よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E7よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。また、外気エンタルピE7からE8までの分割領域と外気エンタルピE8からE9までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E8よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E8よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。また、外気エンタルピE8からE9までの分割領域と外気エンタルピE9からE10までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E9よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E9よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。さらに、外気エンタルピE9からE10までの分割領域と外気エンタルピE10からE4までの分割領域の2つの領域に関して、境界点E10よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出すると共に、境界点E10よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータに対して近似直線を算出する。
【0033】
続いて、近似直線算出部4は、隣接する2つの分割領域の境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域について算出した近似直線と境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータとの誤差の2乗和を算出すると共に、境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域について算出した近似直線と境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の冷熱量Qcのデータとの誤差の2乗和を算出し、これらの算出結果を加算することで、境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域の誤差の2乗和と境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域の誤差の2乗和との合計値eを算出する(図11ステップS301)。境界点よりも低エンタルピ側にある対象データ領域における誤差の2乗和をe1、境界点よりも高エンタルピ側にある対象データ領域における誤差の2乗和をe2とすれば、誤差の2乗和の合計値eは次式となる。
e=e1+e2 ・・・(3)
【0034】
近似直線算出部4は、このような誤差の2乗和の算出を、対象データ領域に含まれる隣接する2つの分割領域の全てについて行う。
次に、近似直線算出部4は、ステップS301で算出した誤差の2乗和の合計値eのうちの最小値を求める(図11ステップS302)。
【0035】
そして、近似直線算出部4は、誤差の2乗和の合計値eが最小となった隣接する2つの領域の各々について相関係数R2と近似直線の1次の係数γとを求める(図11ステップS303)。例えば図10に示した隣接する2つの分割領域の境界点E21よりも低エンタルピ側にある対象データ領域における誤差の2乗和と境界点E21よりも高エンタルピ側にある対象データ領域における誤差の2乗和との合計値eが最小値になったとすると、境界点E21よりも低エンタルピ側にある対象データ領域における近似直線L10の式はY=0.5076X+1.1968、相関係数R2は0.2746、近似直線L10の1次の係数γは0.5076である。また、境界点E21よりも高エンタルピ側にある対象データ領域における近似直線L11の式はY=1.4087X−27.952、相関係数R2は0.5268、近似直線L11の1次の係数γは1.4087である。
【0036】
次に、近似直線算出部4は、ステップS303で算出した2つの相関係数R2のうち少なくとも1つが所定のしきい値TH1以下である場合(図11ステップS304においてYES)、誤差の2乗和の合計値eが最小となった隣接する2つの分割領域の組み合わせを、最小値決定の対象から除外して(図11ステップS305)、ステップS302に戻る。ステップS304,S305の処理を行う理由は、データ数が少なく、誤差の2乗和が偶然小さくなっている場合を除外するためである。
【0037】
また、近似直線算出部4は、ステップS303で算出した2つの係数γの差が所定のしきい値TH2以下である場合(図11ステップS306においてYES)、誤差の2乗和の合計値eが最小となった隣接する2つの分割領域の組み合わせを、最小値決定の対象から除外して(図11ステップS305)、ステップS302に戻る。ステップS306,S305の処理を行う理由は、誤差の2乗和は小さい場合であるが、冷熱量Qcの特性が変化していない場合を除外するためである。
【0038】
最後に、近似直線算出部4は、2つの相関係数R2がしきい値TH1より大で、かつ2つの係数γの差がしきい値TH2より大である隣接する2つの分割領域を確定し(図11ステップS304,S306においてNO)、この隣接する2つの分割領域の境界点を、変曲点の候補の点として確定する(図11ステップS307)。例えば図10の例では、外気エンタルピE21が変曲点の候補の点となる。以上で、変曲点判断処理が終了する。なお、図11で説明した各ステップにおいて、誤差の2乗和の代わりに、誤差の絶対値の和を使用してもよい。
【0039】
次に、理想直線算出部6の動作について説明する。図12(A)、図12(B)、図13は理想直線の算出方法を説明する図である。図12(A)、図12(B)、図13における30は冷熱量Qcのデータ、31は温熱量Qhのデータである。
【0040】
理想熱量消費特性DB5には、埋想的な熱量消費特性が予め記憶されている。理想直線算出部6は、計測値DB3に記憶されたデータに関して、外気エンタルピEをX軸(横軸)にとり、空調消費熱量QをY軸(縦軸)にとったときのデータの理想直線を算出する(図2ステップS5)。
【0041】
まず、理想直線算出部6は、図12(A)に示すようにX軸上の所定の外気エンタルピa[kJ/kg(DA)]の点と冷熱量Qcのデータの第1の変曲点P1とを通る直線を算出し、この直線を外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの理想直線L20とする。外気エンタルピaは、理想熱量消費特性DB5に予め記憶されている値である。
【0042】
また、理想直線算出部6は、図12(B)に示すようにX軸上の所定の外気エンタルピb[kJ/kg(DA)]の点と冷熱量Qcのデータの第1の変曲点P1とを通る直線を算出し、この直線を外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの理想直線L21とする。外気エンタルピbは、理想熱量消費特性DB5に予め記憶されている値である。
【0043】
さらに、理想直線算出部6は、図13に示すようにX軸上の所定の外気エンタルピb[kJ/kg(DA)]の点を通る、Y軸と平行な直線L22に関して、理想直線L20と線対称な直線を算出する。そして、理想直線算出部6は、この算出した直線の傾きを有し、かつX軸上の外気エンタルピb[kJ/kg(DA)]の点を通る直線を温熱量Qhの理想直線L23とする。以上で、理想直線算出部6の処理が終了する。
【0044】
次に、熱量多消費抽出部7は、近似直線算出部4が算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量Qが多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する(図2ステップS6)。図14〜図17は熱量多消費抽出処理と熱量多消費要因特定処理とを説明する図である。
【0045】
熱量多消費抽出部7は、例えば夏季の空調における熱量多消費の状態を抽出しようとする場合、図14に示すように外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の評価対象領域において温水が消費されているか否かを評価する。熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1のエンタルピが所定値ε[kJ/kg(DA)]近辺にある場合には、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域を評価対象領域とする。また、熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1が所定値ε[kJ/kg(DA)]近辺にない場合には、外気エンタルピが所定値ε[kJ/kg(DA)]以上の領域を評価対象領域とする。
【0046】
熱量多消費抽出部7は、評価対象領域において温水が消費されている場合(評価対象領域に温熱量Qhのデータが存在する場合)、夏季に温水が消費されており、熱量多消費の状態になっていると判断する。また、熱量多消費抽出部7は、評価対象領域において温水が消費されていない場合、問題がなく、熱量多消費の状態になっていないと判断する。こうして、夏季の空調における熱量多消費の状態を抽出することができる。
【0047】
また、熱量多消費抽出部7は、例えば夏季の空調における熱量多消費の状態を抽出しようとする場合、図15に示すように外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの近似直線L1のX軸との交点を求めることで、熱量多消費の状態になっているか否かを評価する。
【0048】
熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1が存在する場合には、図15に示すように外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの近似直線L1のX軸との交点nを求める。また、熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1が存在せず、第3の変曲点P3が存在し、外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcのデータを用いて近似直線が算出されている場合には、この近似曲線のX軸との交点を求める。また、熱量多消費抽出部7は、第3の変曲点P3が存在しない場合、あるいは第3の変曲点P3のエンタルピと所定値αとが一致せず、かつ第3の変曲点P3のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にない場合には、冷熱量Qcの全データを用いて算出された近似直線のX軸との交点を求める。
【0049】
熱量多消費抽出部7は、近似直線のX軸との交点のエンタルピが例えば所定値ζ[kJ/kg(DA)]以上の場合、熱量多消費の状態になっていると判断する。また、熱量多消費抽出部7は、交点のエンタルピが例えば所定値ζ[kJ/kg(DA)]未満の場合、問題がなく、熱量多消費の状態になっていないと判断する。こうして、夏季の空調における熱量多消費の状態を抽出することができる。
【0050】
また、熱量多消費抽出部7は、例えば夏季と冬季の中間期の空調における熱量多消費の状態を抽出しようとする場合、図16に示すように外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以上第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線L2のX軸との交点を求めることで、熱量多消費の状態になっているか否かを評価する。
【0051】
熱量多消費抽出部7は、第1、第2の変曲点P1,P2が存在する場合には、図16に示すように外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以上第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線L2のX軸との交点nを求める。また、熱量多消費抽出部7は、第2の変曲点P2が存在しない場合、あるいは第2の変曲点P2のエンタルピと所定値αとが一致せず、かつ第2の変曲点P2のエンタルピが所定値αを中心とする一定の誤差範囲内にない場合には、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点を求める。また、熱量多消費抽出部7は、第1の変曲点P1が存在せず、第3の変曲点P3が存在し、外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcのデータを用いて近似直線が算出されている場合には、この近似曲線のX軸との交点を求める。
【0052】
熱量多消費抽出部7は、近似直線のX軸との交点のエンタルピが例えば所定値η[kJ/kg(DA)]以下の場合、熱量多消費の状態になっていると判断する。また、熱量多消費抽出部7は、交点のエンタルピが例えば所定値η[kJ/kg(DA)]より大の場合、問題がなく、熱量多消費の状態になっていないと判断する。こうして、中間期の空調における熱量多消費の状態を抽出することができる。
【0053】
また、熱量多消費抽出部7は、例えば冬季の空調における熱量多消費の状態を抽出しようとする場合、図17に示すように温熱量Qhの近似直線L4のX軸との交点mを求め、この交点mのエンタルピを中心とする一定の範囲内に冷熱量Qcの変曲点が存在するか否かで、熱量多消費の状態になっているか否かを評価する。
【0054】
熱量多消費抽出部7は、交点mのエンタルピを中心とする一定の範囲内に冷熱量Qcの変曲点(図17の例では第2の変曲点P2)が存在する場合、熱量多消費の状態になっていると判断する。また、熱量多消費抽出部7は、交点mのエンタルピを中心とする一定の範囲内に冷熱量Qcの変曲点が存在しない場合、問題がなく、熱量多消費の状態になっていないと判断する。こうして、冬季の空調における熱量多消費の状態を抽出することができる。
【0055】
次に、熱量多消費要因特定部9は、熱量多消費抽出部7が抽出した熱量多消費の要因を特定する(図2ステップS7)。熱量多消費要因DB8には、熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報が予め記憶されている。熱量多消費要因特定部9は、この熱量多消費要因DB8に記憶されている情報を基に熱量多消費の要因を特定する。
【0056】
熱量多消費の要因は、外気エンタルピの範囲と多消費されている熱量の種類によって決まる。
熱量多消費要因特定部9は、夏季に温水が消費されており、熱量多消費の状態になっていると判断された場合、夏季の空調が熱量多消費の要因であると特定する。
【0057】
また、熱量多消費要因特定部9は、外気エンタルピが第1の変曲点P1のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点、あるいは第3の変曲点P3のエンタルピ以上の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点を求めた結果、この交点のエンタルピが所定値ζ[kJ/kg(DA)]以上で、熱量多消費の状態になっていると判断された場合、夏季の空調が熱量多消費の要因であると特定する。
【0058】
また、熱量多消費要因特定部9は、外気エンタルピが第2の変曲点P2のエンタルピ以上第1の変曲点P1のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点、あるいは外気エンタルピが第3の変曲点P3のエンタルピ以下の領域における冷熱量Qcの近似直線のX軸との交点を求めた結果、この交点のエンタルピが所定値η[kJ/kg(DA)]以下で、熱量多消費の状態になっていると判断された場合、中間期の空調が熱量多消費の要因であると特定する。
【0059】
また、熱量多消費要因特定部9は、温熱量Qhの近似直線のX軸との交点を求め、この交点のエンタルピを中心とする一定の範囲内に冷熱量Qcの変曲点の存在が確認された結果、熱量多消費の状態になっていると判断された場合、冬季の空調が熱量多消費の要因であると特定する。
【0060】
表示部10は、熱量多消費抽出部7が抽出した熱量多消費を示す状態情報と、熱量多消費要因特定部9が特定した熱量多消費の要因を示す要因情報とを表示する(図2ステップS8)。空調熱量消費評価装置を使用するユーザは、熱量多消費の要因情報が表示された場合、適切な改善方法を検討することができる。
【0061】
以上のように、本実施の形態では、建物属性などの定性情報を使わずに、熱量消費の無駄を検知することができ、エネルギー多消費の要因を特定することができる。
【0062】
本実施の形態の空調熱量消費評価装置は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、空調の熱量消費の無駄を検知し、エネルギー多消費の要因を特定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…空調消費熱量計測部、2…外気エンタルピ計測部、3…計測値データベース、4…近似直線算出部、5…理想熱量消費特性データベース、6…理想直線算出部、7…熱量多消費抽出部、8…熱量多消費要因データベース、9…熱量多消費要因特定部、10…表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測手段と、
外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測手段と、
前記空調消費熱量計測手段が計測または算出した空調消費熱量と前記外気エンタルピ計測手段が計測又は算出した外気エンタルピとを対応付けて記憶する第1の記憶手段と、
この第1の記憶手段に記憶されたデータに関して、外気エンタルピを一方の軸にとり、空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出手段と、
この近似直線算出手段が算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出手段と、
熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する第2の記憶手段と、
この第2の記憶手段に記憶されている情報を基に熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定手段とを備えることを特徴とする空調熱量消費評価装置。
【請求項2】
請求項1記載の空調熱量消費評価装置において、
前記近似直線算出手段は、
前記近似曲線の変曲点を探索する変曲点探索手段と、
前記近似曲線を求める近似曲線導出手段とを有し、
前記変曲点探索手段は、外気エンタルピが所定値α以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第1の変曲点を探索し、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第2の変曲点を探索し、前記第1、第2の変曲点が存在しない場合には、冷水に関する空調消費熱量の全データを対象として第3の変曲点を探索し、
前記近似曲線導出手段は、外気エンタルピが所定値β以下の領域における温水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが第1の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在し、前記第2の変曲点が存在しない場合、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以上前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在せず、前記第3の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出することを特徴とする空調熱量消費評価装置。
【請求項3】
空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測ステップと、
外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測ステップと、
前記空調消費熱量計測ステップで計測または算出した空調消費熱量と前記外気エンタルピ計測ステップで計測又は算出した外気エンタルピとを対応付けて第1の記憶手段に格納する記憶ステップと、
前記第1の記憶手段に記憶されたデータに関して、外気エンタルピを一方の軸にとり、空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出ステップと、
この近似直線算出ステップで算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出ステップと、
熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する第2の記憶手段の情報に基づいて、熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定ステップとを備えることを特徴とする空調熱量消費評価方法。
【請求項4】
請求項3記載の空調熱量消費評価方法において、
前記近似直線算出ステップは、
前記近似曲線の変曲点を探索する変曲点探索ステップと、
前記近似曲線を求める近似曲線導出ステップとを含み、
前記変曲点探索ステップは、外気エンタルピが所定値α以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第1の変曲点を探索し、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第2の変曲点を探索し、前記第1、第2の変曲点が存在しない場合には、冷水に関する空調消費熱量の全データを対象として第3の変曲点を探索し、
前記近似曲線導出ステップは、外気エンタルピが所定値β以下の領域における温水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが第1の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在し、前記第2の変曲点が存在しない場合、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以上前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在せず、前記第3の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出することを特徴とする空調熱量消費評価方法。
【請求項1】
空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測手段と、
外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測手段と、
前記空調消費熱量計測手段が計測または算出した空調消費熱量と前記外気エンタルピ計測手段が計測又は算出した外気エンタルピとを対応付けて記憶する第1の記憶手段と、
この第1の記憶手段に記憶されたデータに関して、外気エンタルピを一方の軸にとり、空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出手段と、
この近似直線算出手段が算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出手段と、
熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する第2の記憶手段と、
この第2の記憶手段に記憶されている情報を基に熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定手段とを備えることを特徴とする空調熱量消費評価装置。
【請求項2】
請求項1記載の空調熱量消費評価装置において、
前記近似直線算出手段は、
前記近似曲線の変曲点を探索する変曲点探索手段と、
前記近似曲線を求める近似曲線導出手段とを有し、
前記変曲点探索手段は、外気エンタルピが所定値α以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第1の変曲点を探索し、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第2の変曲点を探索し、前記第1、第2の変曲点が存在しない場合には、冷水に関する空調消費熱量の全データを対象として第3の変曲点を探索し、
前記近似曲線導出手段は、外気エンタルピが所定値β以下の領域における温水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが第1の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在し、前記第2の変曲点が存在しない場合、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以上前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在せず、前記第3の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出することを特徴とする空調熱量消費評価装置。
【請求項3】
空調消費熱量を計測または算出する空調消費熱量計測ステップと、
外気エンタルピを計測または算出する外気エンタルピ計測ステップと、
前記空調消費熱量計測ステップで計測または算出した空調消費熱量と前記外気エンタルピ計測ステップで計測又は算出した外気エンタルピとを対応付けて第1の記憶手段に格納する記憶ステップと、
前記第1の記憶手段に記憶されたデータに関して、外気エンタルピを一方の軸にとり、空調消費熱量を他方の軸にとったときのデータの近似直線と近似曲線の変曲点とを算出する近似直線算出ステップと、
この近似直線算出ステップで算出した近似直線または変曲点に基づいて、理想的な量よりも空調消費熱量が多く消費されている熱量多消費の状態を抽出する熱量多消費抽出ステップと、
熱量多消費の状態毎に熱量多消費の要因情報を予め記憶する第2の記憶手段の情報に基づいて、熱量多消費の要因を特定する熱量多消費要因特定ステップとを備えることを特徴とする空調熱量消費評価方法。
【請求項4】
請求項3記載の空調熱量消費評価方法において、
前記近似直線算出ステップは、
前記近似曲線の変曲点を探索する変曲点探索ステップと、
前記近似曲線を求める近似曲線導出ステップとを含み、
前記変曲点探索ステップは、外気エンタルピが所定値α以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第1の変曲点を探索し、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータを対象として第2の変曲点を探索し、前記第1、第2の変曲点が存在しない場合には、冷水に関する空調消費熱量の全データを対象として第3の変曲点を探索し、
前記近似曲線導出ステップは、外気エンタルピが所定値β以下の領域における温水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが第1の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1の変曲点が存在し、前記第2の変曲点が存在しない場合、外気エンタルピが前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以上前記第1の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第2の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出し、前記第1、第2の変曲点が存在せず、前記第3の変曲点が存在する場合、外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以上の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出すると共に外気エンタルピが前記第3の変曲点のエンタルピ以下の領域における冷水に関する空調消費熱量のデータに対して近似直線を算出することを特徴とする空調熱量消費評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−88047(P2013−88047A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229561(P2011−229561)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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