説明

空調装置用コンデンサ

特に自動車の空調システムのためのコンデンサにおいて、凝縮部(1b)と、その凝縮部の上に配置された過冷却部(1c)とを備え、仕切壁(2b)によって、凝縮部(1b)に接続される下部(2c)と、過冷却部(1c)に接続される上部(2d)とに区画されるほぼ管状の調整器(2)を備え、調整器の下部と上部との間に上昇パイプ(4)を備え、さらに、調整器の下部(2c)に乾燥剤の容器(7)を備え、調整器(2)はその上部にプラグ(6)が設けられ、一旦、プラグが交換可能ユニットから取り外されると、乾燥剤容器とともに仕切壁(2b)が調整器から上方に取り出されることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のための、空調装置用コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス冷媒が流れる上部凝縮部と、その上部凝縮部の下方に配置され、膨張弁へと向けられる凝縮された液体冷媒が流れる過冷却部とを有する空調装置用コンデンサを構成することが、欧州特許第480330号明細書から公知である。ボード状であって、チューブのリブ付ブロックからなるコンデンサの横に、あるいは、そこからある距離を隔てて、管状の調整器が設けられ、その中には、冷媒に含まれる水分を吸収するための乾燥剤が配設され得る。
【0003】
コンデンサの下方領域の正面に、空気の流れ方向に沿って給気冷却器を配置することを可能にするために、特に、ディーゼル車両に用いられているように、コンデンサは上部過冷却部を備え、その下方に、凝縮部が設けられる。このようにして、過冷却部が、給気冷却器の熱放出により影響されないようにしている。
【発明の開示】
【0004】
コンデンサが上部過冷却部を有する場合に、組立作業及びメンテナンスを容易にするために、本発明によれば、シールプラグが、好ましくは調整器の上端部に設けられる。このシールプラグの取り外し後は、調整器を上部と下部とに区切るパーティションと、そこに搭載される乾燥剤容器とが、好ましくはスタンドパイプと一緒に、調整器から上方に取り出されることが可能になる。ここで、乾燥剤容器と一体であるパーティションと、スタンドパイプとは、調整器内に挿入される交換可能ユニットを形成し、それによって、一方ではコンデンサの組立作業が、他方ではそのメンテナンスが容易化され、短い時間を費やすだけで実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照しつつ、以下に詳細に説明される。
【0006】
図1は、概略、矩形状を有し、水平方向に伸びる、リブが付けられた冷媒用のチューブ1aからなるボード状のコンデンサ1を示しており、図面の紙面に垂直に、コンデンサのリブが付けられたチューブ1aの間を通って空気が流れる。コンデンサ1は、ガス冷媒が流れる下方凝縮部1bと、その上方に、パーティション1fによって凝縮部1bから仕切られた、凝縮された液冷媒が流れる過冷却部1cを有する。
【0007】
ガス冷媒は、入口開口1dを介して、凝縮部1bの側面に供給され、反対側の出口開口1eに向けて、水平方向のリブが付けられたチューブ1aを通って流れる。入口開口1dと出口開口1eの両方とも、凝縮部1bの下端から離れた位置に設けられている。図1の構成では、凝縮部1bにおける曲がりくねった形状に形成される流れガイドに関して圧力損失を減少するために、ガス冷媒は、入口及び出口開口の間を水平に流れる。
【0008】
しかし、本発明による構成では、入口開口1dと出口開口1eとの間で、凝縮部1bに曲がりくねった形状のガスガイドを設けることも可能である。
【0009】
調整器2は、管状に形成され、好ましくは、ほぼボード状コンデンサ1の厚さの大きさの直径を有し、凝縮部1bの出口開口1eに連結されている。この管状調整器2は、好ましくは、コンデンサ1の高さに渡って伸びており、凝縮部1bの出口開口1eに連なった連結パイプ3は、調整器2の入口2aに対して、ほぼ同じ高さで開口しており、その結果、エリア冷媒が集まる、液体冷媒のためのリザーバが調整器2の入口2aの下に形成される。
【0010】
調整器2は、パーティション2bによって下部2cと上部2dとに区画され、そのパーティション2bは、凝縮部1bと過冷却部1cとの間のパーティション1fとほぼ同じ高さにある。調整器の上部2dは、連結パイプ3aによってコンデンサ1の過冷却部1cに連結されている。この連結パイプ3aは、好ましくは、パーティション2b、1fの直ぐ上か、もしくは調整器の上部2dの下部領域、及びコンデンサの過冷却部1cの下部領域に配置される。
【0011】
スタンドパイプ4は、調整器の上部2dからパーティション2bを貫通して、下部2cの下方領域に通じている。スタンドパイプ4は、好ましくは、調整器2の底面から微小距離離間した位置で終端する。
【0012】
凝縮された冷媒は、過冷却部1cから出口開口1gを介して放出され、そこから、パイプ(図示せず)が膨張弁へと通じている。凝縮部1bから調整器に供給された冷媒は、スタンドパイプ4を介して、過冷却部1cへと上方に導かれ、そこで、液体冷媒は、意図的な熱除去に晒される。
【0013】
スタンドパイプ4の下端には、フィルタ5が設けられ(図1,4,3(a),及び3(b))、冷媒は、スタンドパイプを介して過冷却部1cに運ばれる前に、そのフィルタ5を通る。スタンドパイプ4の上端にフィルタを配置することも可能であるし、又は、図2,3(a),及び5に示されるように、上部2dに配置することも可能であり、上側に配置されるフィルタは5’によって示されている。
【0014】
図2は、フィルタ5’が、スタンドパイプ4の出口開口と過冷却部1cへの連結開口2eとの間に配置された構成を概略的に示しており、それにより、スタンドパイプ4を上昇した冷媒は、過冷却部1cに達する途中で、必ずフィルタ5’を通り抜けなければならない。
【0015】
図2は、調整器2がコンデンサ1の側面に直接取り付けられた実施形態を概略的に示しており、それにより、調整器2は、パーティションによってのみ、コンデンサの凝縮部1b及び過冷却部1cから区分される。この場合、コンデンサと調整器の各々の部分の間の連結パイプ3,3aが省略され、それにより、凝縮部1bと調整器の下部2cとの間には連結開口1eのみ、調整器の上部2dとコンデンサの過冷却部1cとの間には連結開口2eのみが、共通のパーティションに残っている。
【0016】
調整器2は、例えばねじすじによって管状の調整器にねじ込まれるシールプラグ6によって上面がシールされる。パーティション2bは、シールプラグ6の取り外し後に、調整器からのパーティション2bの取り出しを容易にするハンドルブラケット2f(図3(b)、3(c))もしくは他の手段を備えることができる。パーティション2bは、その外周縁部にシールリングが備えられ、それにより、調整器において、上部2dが下部2cに対してシールされる。パーティション2bは、スタンドパイプ4及び乾燥剤用容器、例えばバッグ7またはカートリッジと連結され、その結果、それらの部品2b,4,5及び7が、交換可能ユニットを形成し、シールプラグ6を取り外した後に、上方より、調整器2から取り出すことができる。パーティション2bの外周縁部のシールは、好ましくは交換可能ユニットと一緒に取り外されるように、調整器2に取り付けられ、その結果、必要ならば交換することができる。しかしながら、調整器2内にシールが設けられ、そこにパーティション2bが挿入されることも可能である。パーティション2bにシールを設けた構成では、そのシールの座面が、好ましくは調整器2の内側周縁部に設けられる。
【0017】
乾燥剤が入れられたバッグ7は、パーティション2bの下側面に吊り下げられたり、スタンドパイプ4の円周面に取り外し可能に固定されても良い。
【0018】
再挿入のため、交換可能ユニットは、調整器内に挿入され、そして、調整器は、シールプラグ6によってシールされ得る。他の例によれば、パーティション用のスペーサシールプラグ6に設けられ、交換可能ユニットの挿入及びシールプラグのねじ締めの後、スペーサは、パーティション2bをその外周縁部がシールされる所定位置に位置決めし、パーティションは、調整器内のシール座面に当接する。
【0019】
図3は、交換可能ユニットの異なる構成を示すものである。図3(a)及び3(c)によれば、バッグ7は、スタンドパイプ4に固定されたフック4aに吊り下げられている。図3(b)に示す実施形態では、バッグ7が挿入される搭載ブラケット4bがスタンドパイプ4に形成されている。
【0020】
図3(c)は、湾曲したスタンドパイプ4’、すなわち、突部を備えたスタンドパイプの実施形態を示しており、バッグ7は、スタンドパイプ4’のフックに吊り下げられている。この構成により調整器2の直径は小さく保たれることが可能である。フックの代わりに、バッグ7とスタンドパイプ4又はパーティション2bとの間をクリップ接続することも可能である。バッグ7をスタンドパイプ4に連結するために、ケーブルクリップもしくは類似の固定手段を設けることも可能である。
【0021】
図3(d)によれば、乾燥剤のため、管状バッグ7’または管状カートリッジが設けられ、その中心を貫いてスタンドパイプ4が伸び、その結果、乾燥剤を有する管状バッグ7’は、スタンドパイプ4上において、下から離されている。保持容器として、ディスク4dがスタンドパイプ4の下端にねじ止めされている。この実施形態では、ディスク4dに設けられたフィルタ5が、スタンドパイプ4に取り外し可能に連結される。
【0022】
更なる実施形態によれば、乾燥剤を有する容器7がスタンドパイプにしっかりと接合され、その容器内の乾燥剤のみが交換可能であったり、または、乾燥剤が交換されるべきときに、容器7がスタンドパイプ及びフィルタ5とともに交換可能であっても良い。
【0023】
図4は、変形例による構造を示しており、凝縮部の底部から離れている出口開口1eから調整器2に伸びるパイプ3’が、入口2aにおいて調整器の下部領域に開口している。この構成においても、液体冷媒のためのリザーバが、過冷却部における出口開口1eの高さまで、調整器内に形成される。
【0024】
調整器内に液体冷媒のためのリザーバを形成するため、調整器2の底部よりも上方に離れた位置に出口開口1eを配置するメリットは、空調装置が使用されていないときに、凝縮部への液体冷媒の還流が防止されるという点にある。空調装置の非動作状態において、液体冷媒の還流が生じると、再動作時にダメージを受ける可能性がある。
【0025】
交換可能ユニットのメリットは、主として、フィルタ5とスタンドパイプ4を交換可能である点にあり、それらは汚損のリスクを負っている。交換可能ユニットを交換するときには、冷媒側の圧力損失が低減され、その圧力損失は主として凝縮部の出口開口1eによって引き起こされ、スタンドパイプ4及びフィルタ5の汚損によって増加される。とくに、フィルタ5が、図2,3(a)及び5に示されるように、スタンドパイプ4の上端に配置されたとき、スタンドパイプ4の区域において堆積が起こり、それは交換によって速やかに取り除かれる。
【0026】
図5は、交換可能ユニットの実用的な実施形態を示すもので、同一もしくは対応する部品には、前述の図面と同じ参照番号が使われている。この実施形態では、かご型のフィルタハウジング50がパーティション2b上に配置され、調整器において上部と下部との間のシールを確保するために、シールリング51が、フィルタハウジングとパーティション2bとの間に設けられている。冷媒を放出するために横方向に開かれているフィルタハウジング50は、パーティション2b及びスタンドパイプ4にしっかりと接合されている。この構成において、パーティション2bは、フィルタハウジング50と一体的に形成することができる。シールリング51は、パーティション2bとフィルタハウジング50との間の円周状の溝に挿入することができる。フィルタハウジング50は、例えば、上部ディスク50aと下部ディスク50bから構成され、それらは、ステー50cによって相互に連結される。
【0027】
フィルタハウジング50はハンドル手段2fを備えることができる。好ましくは、フィルタハウジング50の上部側面に凹部を形成し、シールプラグ6が調整器2から取り外されたとき、そこに、例えば抜き取りツール60の弾性フック61をスナップインサートする。フックは、フィルタハウジングにおける凹部の肩部に係合し、それにより、交換可能ユニットが、ツール60によって調整器2から上方に引き出される。
【0028】
図6は、そのようなツール60の実施形態を示すものであり、そのフック61は、U字状に配置され、引き出しのためフィルタハウジング50における肩部と係合するように、半径方向に男性的に変形可能である。しかしながら、他の方法で形成されたツールも使用することができる。
【0029】
交換可能ユニットは、少なくともパーティション2bと乾燥剤を有する容器7を備える。好ましくは、フィルタ5を備えたスタンドパイプ4も交換可能ユニットに一体化することができる。
【0030】
シールプラグが取り外された後に、まず1つの部分、例えばパーティションが調整器から引き出され、その後、更なる部材が調整器から取り除かれるように、交換可能ユニットを2つの部分に分けて形成することも可能である。
【0031】
また、シールプラグを取り外した後に、交換可能ユニットが調整器から下方向に引き出されるように、シールプラグが調整器2の下側に設けられる実施形態も可能である。ここで、スタンドパイプ4は、例えば、ハンドル手段としての役割を果たすことができ、それによってパーティションを調整器から取り外すことができる。しかしながら、ハンドル手段として、下方に突き出すハンドルブラケットを有することも可能である。そのような実施形態に対しては、パーティションまたは交換可能ユニットが挿入時に当接するストッパを設けることも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】上方過冷却部を有するコンデンサ及び横に配置された調整器の交換可能ユニットの概略図である。
【図2】横に配置された調整器及び交換可能ユニットを備えたコンデンサの図である。
【図3】調整器の交換可能ユニットの各実施形態である。
【図4】コンデンサの変形実施形態である。
【図5】交換可能ユニットの実用的実施形態である。
【図6】交換可能ユニットを調整器から引き出すためのツールである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮部(1b)と、
前記凝縮部の上に配置された過冷却部(1c)と、
パーティション(2b)によって、前記凝縮部(1b)に連結される下部(2c)と、前記過冷却部(1d)に連結される上部(2d)とに区画されるほぼ管状の調整器(2)と、
前記調整器の下部と上部との間のスタンドパイプ(4)と、
前記調整器の下部(2c)において、前記パーティション(2b)の下方の乾燥剤容器(7)と、を備え、
前記調整器(2)にはシールプラグ(6)が設けられ、当該シールプラグを取り外した後に、前記乾燥剤容器とともに前記パーティション(2b)が前記調整器から取り出し可能である、特に自動車のための、空調装置用コンデンサ。
【請求項2】
前記スタンドパイプ(4)は、前記パーティション(2b)に結合される、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
ハンドル手段(2f)が前記パーティション(2b)に結合され、それによって、前記シールプラグ(6)を取り外した後に、前記パーティション(2b)が前記調整器(2)から引き出される、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記パーティション(2b)において、シール(20)が設けられ、それは、前記パーティションととともに調整器から取り外し可能である、前述した請求項の1つに記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記スタンドパイプ(4)の下端または前記調整器の上部(2d)において、フィルタ(5)が前記スタンドパイプに設けられる、前述した請求項の1つに記載のコンデンサ。
【請求項6】
フィルタハウジング(50)が前記パーティション(2b)の上に固定される、前述した請求項の1つに記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記フィルタハウジング(50)は、前記フィルタハウジング(50)、パーティション(2b)、及びスタンドパイプ(4)によって形成される交換可能ユニットを引き出すべく、上部側に、ツール(60)のための係合手段を有する、請求項6に記載のコンデンサ。
【請求項8】
バッグ(7)に含まれる乾燥剤が、スタンドパイプ(4)に取り外し可能に固定される、前述の請求項の1つに記載のコンデンサ。
【請求項9】
凝縮部(1b)と、
前記凝縮部の上に配置された過冷却部(1c)と、
パーティション(2b)によって、前記凝縮部(1b)に連結される下部(2c)と、前記過冷却部(1d)に連結される上部(2d)とに区画されるほぼ管状の調整器(2)と、
前記調整器の下部と上部との間のスタンドパイプ(4)と、を備え、
前記調整器(2)と前記凝縮部(1b)との間の接続部(3)または凝縮部(1b)の出口開口(1e)が、前記調整器に冷媒のリザーバを形成するため、前記調整器の底部から上方に離れて配置される、特に自動車のための、空調装置用コンデンサ。
【請求項10】
凝縮部(1b)は、水平方向に伸び、リブ付けされたチューブ(1a)を有し、それを通って、ガス冷媒の流れが、前記凝縮部の全体において水平方向に導かれる、請求項9に記載のコンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−529877(P2008−529877A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554529(P2007−554529)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005295
【国際公開番号】WO2006/128720
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(501010812)デンソー アウトモーティヴ ドイチュランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトゥング (5)
【氏名又は名称原語表記】DENSO AUTOMOTIVE Deutschland Gmbh
【Fターム(参考)】