説明

空調装置

【課題】冷却用熱交換器9を通過した空気温度を良好に制御する。
【解決手段】電子制御装置70は、冷房負荷が大きいと判定した場合には冷房負荷が小さいと判定した場合に比べて制御ゲインKp、Kiを大きくする。制御ゲインKp、Kiが大きくなるほど、温度偏差E(n)を入力とする圧縮機11の冷媒吐出容量の制御応答が大きくなる。冷房負荷が大きいと判定した場合には冷房負荷が小さいと判定した場合に比べて、圧縮機11の冷媒吐出容量の制御応答が大きくなる。冷房負荷が大きい場合には、空気温度TEが目標温度TEOに到達するのに生じる遅延が短くなる。冷房負荷が小さい場合には冷房負荷が大きい場合に比べて、冷媒吐出量の制御応答が小さくなるので、冷房負荷が小さい場合には、空気温度TEの制御に際して、ハンチングが生じに難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機を備える空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空調装置では、例えば特許文献1に示すように、冷媒吐出容量を可変可能に構成された可変容量型圧縮機と、可変容量型圧縮機から吐出された冷媒により車室内空気を冷却する冷却用熱交換器とを備え、冷却用熱交換器を通過した空気により室内を冷房するものがある。
【0003】
このものにおいて、電子制御装置が可変容量型圧縮機の冷媒吐出容量を制御することにより、可変容量型圧縮機から冷却用熱交換器に流入する冷媒流量を変化させることになる。このことにより、冷却用熱交換器を通過した空気温度を制御することができる。
【0004】
そこで、冷却用熱交換器を通過した空気温度TEを検出する温度センサを設け、電子制御装置は、PID制御(PID:Proportional Integral Difference)により、温度センサの検出温度TEを目標温度TEOに一致させるように可変容量型圧縮機の冷媒吐出容量を制御する。
【特許文献1】特開平5−58138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の空調装置において、電子制御装置が、温度センサの検出温度TEと目標温度TEOとの温度偏差に基づいて可変容量型圧縮機の冷媒吐出容量を制御するため、室内の冷房負荷が大きい場合には、温度センサの検出温度TEが目標温度TEOに到達するのに遅延が生じる。
【0006】
また、電子制御装置が可変容量型圧縮機の冷媒吐出容量を制御する上で、温度センサの検出温度TEが目標温度TEOに素早く到達させるようにPID制御の制御ゲインを設定することも考えられるものの、室内の冷房負荷が小さい場合には、温度センサの検出温度TEが目標温度TEOを越えるオーバーシュートや、検出温度TEが目標温度TEOより低くなるアンダーシュートが生じることになる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、室内の冷房負荷の大小にかかわらず、冷却用熱交換器を通過した空気温度を良好に制御できるようにした空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第2の算出手段(S180)の算出毎に指令値を前記圧縮機(11)に出力して圧縮機(11)の冷媒吐出量を制御する制御手段(S190)と、を備え、前記制御ゲインが大きくなるほど、前記冷媒吐出量の制御応答が大きくなるものであり、前記冷却用熱交換器(9)を通過した空気により室内を冷房する空調装置であって、
前記室内の冷房負荷が大きい場合には前記冷房負荷が小さい場合に比べて、前記冷媒吐出量の制御応答が大きくなるように前記制御ゲインを変更するゲイン変更手段(S170)を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、制御応答とは、温度偏差に対する指令値の変化量の割合のことである。指令値の変化量とは、前回の指令値と今回の指令値との偏差のことである。
【0010】
以上により、冷房負荷が大きい場合には冷房負荷が小さい場合に比べて、冷媒吐出量の制御応答が大きくなるので、冷房負荷が大きい場合には、温度センサの検出温度と目標温度に到達するのに生じる遅延が短くなる。
【0011】
一方、冷房負荷が小さい場合には冷房負荷が大きい場合に比べて、冷媒吐出量の制御応答が小さくなるので、冷房負荷が小さい場合には、冷却用熱交換器を通過した空気温度の制御に際して、オーバーシュートやアンダーシュートが生じ難くなる。
【0012】
以上により、室内の冷房負荷の大小にかかわらず、冷却用熱交換器を通過した空気温度を良好に制御することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、前記圧縮機(11)と前記冷却用熱交換器(9)との間で流れる冷媒量を検出する流量センサ(76)を備え、
前記流量センサ(76)により検出された冷媒量が所定値以上である場合には前記冷房負荷が大きいとし、前記流量センサ(76)により検出された冷媒量が所定値未満である場合には前記冷房負荷が小さいとすることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、前記圧縮機(11)と前記冷却用熱交換器(9)との間で流れる冷媒量を推定する推定手段(S161)を備え、
前記推定手段(S161)により推定された冷媒量が所定値以上である場合には前記冷房負荷が大きいとし、前記推定手段(S161)により推定された冷媒量が所定値未満である場合には前記冷房負荷が小さいとすることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、前記圧縮機(11)から吐出された冷媒を冷却する冷却器(12)と、
前記冷却器(12)の冷媒出口と前記冷却用熱交換器(9)の冷媒入口との間に配置され、前記冷却器(12)により冷却された冷媒を減圧する減圧器(14)と、
前記圧縮機(11)の冷媒吐出口と前記減圧器(14)の冷媒入口との間の冷媒圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記圧力センサの検出圧力が所定値以上である場合には前記冷房負荷が大きいとし、前記圧力センサの検出圧力が所定値未満である場合には前記冷房負荷が小さいとすることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、前記圧縮機(11)から吐出された冷媒を冷却する冷却器(12)と、
前記冷却器(12)の冷媒出口と前記冷却用熱交換器(9)の冷媒入口との間に配置され、前記冷却器(12)により冷却された冷媒を減圧する減圧器(14)と、
前記圧縮機(11)の冷媒吐出口と前記減圧器(14)の冷媒入口との間の冷媒圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記圧縮機(11)は、駆動源から出力される回転力により前記冷媒を圧縮するものであり、
前記圧縮機(11)の回転数を検出する回転数センサを備え、
前記圧力センサの検出圧力が所定値以上で、かつ前記温度センサ(75)の検出温度が所定温度以上で、かつ前記回転数センサの検出回転数が所定回転数以上で、かつ前記冷媒吐出量の指令値が所定値以上であるときには、前記冷房負荷が大きいとし、
前記圧力センサの検出圧力が所定値未満である場合と、前記温度センサ(75)の検出温度が所定温度未満である場合と、前記回転数センサの検出回転数が所定回転数未満である場合と、前記冷媒吐出量の指令値が所定値未満である場合とのうち少なくとも1つの場合には、前記冷房負荷が小さいとすることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明では、今回の前記指令値をIout(n)、前回の前記指令値をIout(n−1)、今回の前記温度偏差をE(n)、前回の前記温度偏差をE(n−1)、第1の係数をKp、第2の係数をKiとした場合に、前記算出手段は、下記数式1に基づいて前記指令値Iout(n)を繰り返し算出するようになっており、
Iout(n)=Iout(n−1)
+Kp×(E(n)−E(n−1))+Ki×E(n)…数式1
前記ゲイン変更手段(170)は、前記第1、第2の係数をKp、Kiのうち少なくとも一方を前記制御ゲインとして変更することを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明では、第1の定数をa1、第2の定数をa2、変数をαとし、Kp=a1×α、およびKi=a2×αが成立する場合に、前記ゲイン変更手段(170)は、前記変数αを変更することにより、前記第1、第2の係数をKp、Kiのそれぞれを前記制御ゲインとして変更することを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明では、今回の前記指令値をIout(n)、前回の前記指令値をIout(n−1)、今回の前記温度偏差をE(n)、前回の前記温度偏差をE(n−1)、前々回の前記温度偏差をE(n−2)、第1の係数をKp、第2の係数をKi、第3の係数をKdとした場合に、前記算出手段は、下記数式2に基づいて前記指令値Iout(n)を繰り返し算出するようになっており、
Iout(n)=Iout(n−1)+Kp×(E(n)−E(n−1))
+Ki×E(n)
+Kd×((E(n)−E(n−1))−(E(n−1)−E(n−2))…数式2
前記ゲイン変更手段(170)は、前記第1、第2、第3の係数のうち少なくとも1つの係数を前記制御ゲインとして変更することを特徴とする。
【0020】
請求項9に係る発明では、第1の定数をa1、第2の定数をa2、第3の定数をa3、変数をαとし、Kp=a1×α、Ki=a2×α、およびKd=a3×αが成立する場合に、前記ゲイン変更手段(170)は、前記変数αを変更することにより、前記第1、第2、第3の係数Kp、Ki、Kdのそれぞれを前記制御ゲインとして変更することを特徴とする。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。図1に本実施形態の全体構成の構成を示す。
【0023】
車両用空調装置は、車室内最前部の計器盤内側に配設される室内空調ユニット1を備えている。室内空調ユニット1は空調ケーシング2を有している。空調ケーシング2は、車室内へ向かって空気が送風される空気通路を構成する。
【0024】
空調ケーシング2の空気通路の最上流部には、内気導入口3および外気導入口4を有する内外気切替箱5が配置されている。内外気切替箱5内には内外気切替ドア6が回転自在に支持されている。内外気切替ドア6は、サーボモータ7によって駆動され、内気導入口3と外気導入口4とのうち少なくとも一方を開放する。
【0025】
内外気切替箱5の下流側には、車室内に向かって空気を送風する電動式の送風機8が配置されている。送風機8は、遠心式の送風ファン8aをモータ8bにより駆動するようになっている。送風機8の下流側には送風空気を冷却する冷却用熱交換器9が配置されている。
【0026】
冷却用熱交換器9は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13、膨張弁14とともに周知の冷凍サイクル装置10を構成し、送風機8から送風された送風空気を冷却する熱交換器である。
【0027】
圧縮機11は、プーリ11aおよびベルト11cを介して車両エンジンEの回転動力が伝達されて回転駆動され、冷媒を吸入し、圧縮し、吐出する。
【0028】
本実施形態の圧縮機11は、外部からの指令値Ioutにより冷媒吐出容量を連続的に可変する電磁弁11bを備える斜板式の可変容量型圧縮機である。圧縮機11の冷媒吐出容量は、指令値Ioutの増大に伴って増大するようになっている。
【0029】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒と送風ファン(図示せず)により送風された外気とを熱交換させて、冷媒を冷却する冷却器である。気液分離器13は、凝縮器12で冷却された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するものである。膨張弁14は、気液分離器13で分離された液相冷媒を減圧膨張させる。
【0030】
冷却用熱交換器9は、膨張弁14で減圧膨張された冷媒と送風機8から送風された送風空気との間で熱交換して送風機8からの送風空気を冷却する。
【0031】
室内空調ユニット1には、冷却用熱交換器9から吹き出される冷風を加熱するヒータコア15が配置されている。ヒータコア15は、車両エンジン11dの冷却水を熱源として、冷却用熱交換器9からの冷風を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア15の側方にはバイパス通路16が形成され、このバイパス通路16にはヒータコア15のバイパスする空気が流れる。
【0032】
冷却用熱交換器9とヒータコア15との間には、エアミックスドア17が回転自在に支持されている。エアミックスドア17は、ヒータコア15およびバイパス通路16とともに、温度調節ユニットを構成するもので、サーボモータ18により駆動される。
【0033】
エアミックスドア17の開度により、ヒータコア15を通る空気量(温風量)と、バイパス通路16を通過してヒータコア15をバイパスする空気量(冷風量)との割合を調節して、車室内に吹き出す空気の温度が調整されるようになっている。
【0034】
空調ケーシング2の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラスWに向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ開口部19、乗員の顔部に向けて空調風を吹き出すためのフェイス開口部20、および乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのフット開口部21の計3種類の開口部が設けられている。
【0035】
開口部19〜21の上流部にはデフロスタドア22、フェイスドア23およびフットドア24が回転自在に配置されている。ドア22〜24は、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ25によって開閉操作される。フェイス開口部20は、ダクト(図示省略)を介して計器盤のフェイス吹出口に連通されている。
【0036】
次に、本実施形態の車両用空調装置の電気的構成について図1を参照して説明する。
【0037】
車両用空調装置は、電子制御装置70、外気センサ71、内気センサ72、日射センサ73、水温センサ74、冷却用熱交換器温度センサ75、流量センサ76、および空調操作パネル80を備える。
【0038】
外気センサ71は外気温Tamを検出するセンサである。内気センサ72は内気温Trを検出するセンサである。日射センサ73は車室内に入射する日射量Tsを検出するセンサである。水温センサ74はエンジン11dの冷却水温度Twを検出するセンサである。
【0039】
冷却用熱交換器温度センサ75は、冷却用熱交換器9を通過した空気温度TEを検出する温度センサである。流量センサ76は、圧縮機11の冷媒吐出口と凝縮器12の冷媒入口との間に配置され、圧縮機11から凝縮器12に流れる冷媒流量Gを検出する。
【0040】
空調操作パネル80には、車室内の希望温度Tsetを設定する温度設定スイッチ80a、および圧縮機11の稼働および停止を設定するACスイッチ80bなどから構成されている。
【0041】
電子制御装置70は、マイクロコンピュータおよびメモリなどから構成されている。マイクロコンピュータは、空調制御処理を実行し、空調制御処理の実行に伴って、センサ71、72…75の出力信号および空調操作パネル80の出力信号に基づいて、電磁弁11bおよびモータ7、8b、18、25を制御する。メモリには、コンピュータプログラム以外に、各種データが記憶されている。
【0042】
次に、本実施形態の作動について図5、図6を参照して説明する。
【0043】
まず、電子制御装置70による空調制御処理の概略作動について説明する。
【0044】
すなわち、吹き出し空気温度TEが目標温度TEOに近づくように圧縮機11の冷媒吐出容量を制御する。なお、圧縮機11の蒸発器温度制御の詳細については後述する。
【0045】
続いて、希望温度Tset、内気温度Tr、外気温度Tam、日射量Tsを数式3に代入して目標吹き出し空気温度TAOを算出する。目標吹き出し空気温度TAOは、温度センサの検出温度Trが希望温度Tsetを維持するために必要であるフェイス吹出口31〜34からの目標吹き出し温度である。
【0046】
TAO=Kset×Tset−KR×Tr
−KAM×Tam−KS×Ts+C…(数式1)
なお、Kset、KR、KAMおよびKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0047】
続いて、目標吹き出し空気温度TAOに基づいてサーボモータ7を制御する。これに伴って、内外気切替ドア6によって内気導入口3と外気導入口4とのうち少なくとも一方が開放される。例えば、目標吹き出し空気温度TAOが所定温度以下で、冷房運転が実施されているときには、内外気切替ドア6によって内気導入口3だけが開口される。
【0048】
さらに、目標吹き出し空気温度TAOに基づいて送風機8のモータ8bの目標回転数Naを求める。これに加えて、送風機8のモータ8bの回転数を目標回転数Naに近づけるようにモータ8bを制御する。これにより、送風機8の送風量が目標送風量に近づくことになる。
【0049】
さらに、目標吹き出し空気温度TAOに基づいてサーボモータ25を制御して、デフロスタドア22、フェイスドア23およびフットドア24をそれぞれ開閉する。
【0050】
次に、目標吹き出し空気温度TAO、冷却用熱交換器9の吹き出し空気温度TE、およびエンジン冷却水温度Twを数式4に代入してエアミックスドア17の目標開度SWを算出する。
【0051】
SW={(TAO−TE)/(Tw−TE)}×100(%)…(数式2)
続いて、エアミックスドア17の開度を目標開度SWに近づけるようにサーボモータ18を制御する。これにより、開口部19〜21から吹き出される空気温度が目標吹き出し空気温度TAOに近づくことになる。
【0052】
次に、本実施形態の圧縮機11の蒸発器温度制御の詳細について図2、図3を参照して説明する。図2、図3は蒸発器温度制御を示すフローチャートである。
【0053】
電子制御装置70は、図2、図3のフローチャートにしたがって、蒸発器温度制御を実行する。ACスイッチ80bがオンされているときに、蒸発器温度制御の実行が開始される。蒸発器温度制御の実行は繰り返し行われる。
【0054】
まず、ステップS100において、制御処理の実行回数nを1と設定して、次のステップS110において、温度偏差E(n−1)(=E(0))を0とする。温度偏差E(n−1)は、空気温度TEと目標温度TEOとの温度偏差の初期値である。目標温度TEOは、冷却用熱交換器温度センサ75からの吹き出し空気温度の目標温度である。
【0055】
次のステップS120において、センサ71、72、73から内気温度Tr、外気温度Tam、および日射量Tsを取り込む。続いて、ステップS130において、内気温度Tr、外気温度Tam、および日射量Tsに基づいて、目標温度TEO(n)を算出する。
【0056】
次のステップ140において、冷却用熱交換器温度センサ75から空気温度TE(n)を取り込む。空気温度TE(n)は、n回目の冷却用熱交換器温度センサ75の検出温度である。
【0057】
次のステップ150において、空気温度TE(n)と目標温度TEO(n)との温度偏差E(n)(=TE(n)−TEO(n))を求める。
【0058】
次のステップS160において、流量センサ76から冷媒流量Gを取り込む。続いて、ステップS170において、冷媒流量Gから制御ゲインKp、Kiを決定する。
【0059】
まず、制御ゲインKpとして、冷媒流量Gに応じて、2値Kp1、Kp2のうち一方の値を決める。値Kp2は値Kp1より大きな値である。制御ゲインKpの決定に際してヒステリシスが設定されている。例えば、冷媒流量Gが閾値G2を上回ると、制御ゲインKpとして値Kp2を決定する。冷媒流量Gが閾値G1より下がると、制御ゲインKpとして値Kp1を決定する。閾値G2は閾値G1(<G2)より大きな値である。
【0060】
このように、冷媒流量Gが閾値G2より大きい場合には、冷媒流量Gが冷媒流量G1より小さい場合に比べて、制御ゲインKpを大きくする。
【0061】
また、制御ゲインKiとして、冷媒流量Gに応じて、2値Ki1、Ki2(>Kp1)のうち一方の値を決める。値Ki2は値Ki1より大きな値である。制御ゲインKiの決定に際してヒステリシスが設定されている。例えば、冷媒流量Gが閾値G4を上回ると、制御ゲインKiとして値Ki2を決定する。冷媒流量Gが閾値G3より下がると、制御ゲインKiとして値Ki1を決定する。閾値G4は閾値G3(<G4)より大きな値である。
【0062】
このように、冷媒流量Gが閾値G4より大きい場合には、冷媒流量Gが冷媒流量G3より小さい場合に比べて、制御ゲインKiが小さくなる。
【0063】
次に、図3のステップS180において、前回の指令値をIout(n−1)、今回の温度偏差をE(n)、前回の温度偏差をE(n−1)として、圧縮機11の冷媒吐出容量における今回の指令値Iout(n)を数式1に基づいて算出する。
【0064】
Iout(n)=Iout(n−1)
+Kp×(E(n)−E(n−1))+Ki×E(n)…(数式3)
次のステップS190において、今回の指令値Iout(n)を圧縮機11の電磁弁11bに出力する。これにより、電磁弁11bが駆動されて、圧縮機11の冷媒吐出容量が制御される。すなわち、PI制御により圧縮機11の冷媒吐出容量が制御されることになる。
【0065】
次に、ステップS200において、当該蒸発器温度制御を継続するか否かを判定する。ACスイッチ80bがオフされているときに、ステップS200において、NOと判定する。その後、ステップS210に進んで、当該蒸発器温度制御を終了する。
【0066】
また、ACスイッチ80bがオンされているときに、ステップS200において、YESと判定する。これに伴い、次のステップS220において、指令値Iout(n)を指令値Iout(n−1)に代入する。次のステップS230において、温度偏差E(n)を温度偏差E(n−1)に代入する。次のステップS230において、実行回数nの値を1つインクリメントする(n=n+1)。
【0067】
その後、図2のステップS120に進んで、指令値Iout(n−1)と温度偏差E(n−1)とを用いて上述と同様に、ステップS120、S130、S140、S150、S160、S170、S180、S190、S200の処理を繰り返す。
【0068】
これにより、ACスイッチ80bがオンされている限り、指令値Iout(n)に応じて圧縮機11の冷媒吐出容量が制御される。圧縮機11は、車両エンジンEの回転動力により駆動され、冷媒を吸入し、圧縮し、吐出する。
【0069】
圧縮機11から吐出された冷媒は凝縮器12により凝縮冷却される。この冷却された冷媒は気液分離器13により気相冷媒と液相冷媒とに分離される。膨張弁14は、気液分離器13で分離された液相冷媒を減圧膨張させる。この減圧膨張された冷媒は冷却用熱交換器9に流入する。冷却用熱交換器9は、膨張弁14からの冷媒が蒸発することにより送風機8から送風された送風空気を冷却する。
【0070】
ここで、冷却用熱交換器9は、膨張弁14から流入する冷媒量は、上述の如く、圧縮機11の冷媒吐出容量により変化する。冷媒吐出容量は、指令値Iout(n)により制御される。
【0071】
ここで、指令値Iout(n)を算出する際に用いられる制御ゲインKp、Kiは、冷媒流量Gに基づいて切り替わる。
【0072】
すなわち、冷媒流量Gが閾値G2より大きい場合には、冷媒流量Gが冷媒流量G1より小さい場合に比べて、制御ゲインKpが大きくなる。冷媒流量Gが閾値G4より大きい場合には、冷媒流量Gが冷媒流量G3より小さい場合に比べて、制御ゲインKiが小さくなる。
【0073】
ここで、冷媒流量Gは車室内の冷房負荷を示す情報である。冷媒流量Gが閾値G2より大きくなると、冷房負荷が大きいと判定し、冷媒流量Gが閾値G1より小さくなると、冷房負荷が小さいと判定する。このため、冷房負荷が大きいと判定される場合には冷房負荷が小さいと判定される場合に比べて制御ゲインKpが大きくなる。なお、冷房負荷の大小の判定の詳細については後述する。
【0074】
一方、冷媒流量Gが閾値G4より大きくなると、冷房負荷が大きいと判定し、冷媒流量Gが閾値G3より小さくなると、冷房負荷が小さいと判定する。このため、冷房負荷が大きい場合には冷房負荷が小さい場合に比べて制御ゲインKiが大きくなる。
【0075】
ここで、制御ゲインKp、Kiはその値が大きくなると、圧縮機11の冷媒吐出容量における制御応答が大きくなる。制御応答とは、温度偏差E(n)に対する指令値の変化量ΔIの割合である。指令値の変化量ΔIは、今回の指令値Iout(n)と前回の指令値Iout(n−1)との偏差(Iout(n)−Iout(n−1))である。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、冷房負荷が大きいと判定した場合には冷房負荷が小さいと判定した場合に比べて制御ゲインKp、Kiが大きくなる。制御ゲインKp、Kiが大きくなるほど、圧縮機11の冷媒吐出容量の制御応答が大きくなる。
【0077】
このため、冷房負荷が大きいと判定した場合には冷房負荷が小さいと判定した場合に比べて、圧縮機11の冷媒吐出容量の制御応答が大きくなる。すなわち、冷房負荷が大きいと判定した場合には、冷房負荷が小さいと判定した場合に比べて、圧縮機11の吐出冷媒流量の制御応答が大きくなる。このため、冷房負荷が大きい場合には、空気温度TEが目標温度TEOに到達するのに生じる遅延が短くなる。
【0078】
一方、冷房負荷が小さい場合には冷房負荷が大きい場合に比べて、冷媒吐出量の制御応答が小さくなるので、冷房負荷が小さい場合には、空気温度TEの制御に際して、オーバーシュートやアンダーシュートが生じ難くなる。すなわち、空気温度TEの制御に際して、ハンチングが生じ難くなる。
【0079】
以上により、冷房負荷の大小にかかわらず、冷却用熱交換器9を通過した空気温度を良好に制御することができる。
【0080】
次に、冷房負荷の大小の判定については説明する。
【0081】
例えば、車室内の冷房運転を実施しているとき、内気導入口3が内外気切替ドア6により開口される。このため、冷却用熱交換器9には、内気導入口3を介して導入された内気が流れることになる。
【0082】
車室内の冷房負荷が小さいときに、フェイス吹出口から吹き出される冷風により、室内温度Trは短期間で低下するので、温度偏差E(n)が短期間で小さくなる。このため、圧縮機11の冷媒吐出容量が小さくなり、冷媒流量Gが閾値G1、G3より小さくなる。
【0083】
一方、冷房負荷が大きいときには、フェイス吹出口から冷風が吹き出されても、室内温度Trが低下するのに遅延が生じる。このため、温度偏差をE(n)が大きくなり、圧縮機11の冷媒吐出容量が大きくなる。したがって、冷媒流量Gが閾値G2、G4より大きくなる。
【0084】
以上により、本実施形態では、冷媒流量Gが閾値G2、G4より大きくなると、冷房負荷が大きいと判定し、冷媒流量Gが閾値G1、G3より小さくなると、冷房負荷が小さいと判定することになる。
【0085】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、流量センサにより検出された冷媒流量Gに基づいて冷房負荷の大小を判定した例を示したが、これに代えて、本第2実施形態では、冷媒流量Gの推定値を用いて冷房負荷の大小を判定する。なお、以下、冷媒流量Gの推定値を推定冷媒閾値gという。
【0086】
本実施形態では、車両エンジン11dの回転数を検出するための回転センサが用いられる。車両エンジン11dの回転数は、圧縮機11の回転数Naとして用いられる。
【0087】
圧縮機11の冷媒吐出口と膨張弁14の冷媒入口との間の冷媒圧力Phを検出する高圧センサが用いられる。圧縮機11の冷媒吸入口と膨張弁14の冷媒出口との間の冷媒圧力Psを検出する低圧センサが用いられる。
【0088】
本実施形態の電子制御装置70は、図4、図5のフローチャートにしたがって、蒸発器温度制御を実行する。
【0089】
図4では、図2中のステップS160に代えて、ステップS161が用いられる。図5では、図3中のステップS170に代えて、ステップS171が用いられている。
【0090】
図4のステップS161では、冷媒圧力Ph、冷媒圧力Ps、回転数Na、および前回の指令値I(n)を下記の数式4に代入して推定冷媒閾値gを求める。
【0091】
g=(Ph−Ps)×Nc×I(n−1)…数式4
図5のステップS171では、推定冷媒閾値gに基づいて制御ゲインKp、Kiを決定する。制御ゲインKp、Kiの決定方法は、図3のステップS170の場合と同様であるため、省略する。
【0092】
図4、図5中のフローチャートにおいてステップS161、S171以外のステップは、図2、図3と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
以上説明した本実施形態では、推定冷媒閾値gを用いて制御ゲインKp、Kiを決定する。したがって、上述の第1実施形態と同様に、冷房負荷が大きいと判定した場合には冷房負荷が小さいと判定した場合に比べて、圧縮機11の冷媒吐出容量の制御応答が大きくなる。このため、冷房負荷の大小にかかわらず、冷却用熱交換器9を通過した空気温度を良好に制御することができる。
【0094】
(第3実施形態)
上述の第1実施形態では、制御ゲインKp、Kiを決定するのに用いられる冷媒流量Gの閾値を制御ゲイン毎に設けた例を示したが、これに代えて、共通の閾値を用いて制御ゲインKp、Kiを変更する本第3実施形態を示す。
【0095】
本実施形態の電子制御装置70は、図6、図7のフローチャートにしたがって、蒸発器温度制御を実行する。
【0096】
図6では、図2中のステップS170に代えて、ステップS172が用いられる。図7では、図3中のステップS180に代えて、ステップS182が用いられている。
【0097】
図6のステップS172では、後述する制御ゲインKp、Kiの変更に用いる係数αを冷媒流量Gに基づいて決定する。
【0098】
具体的には、係数αとして、冷媒流量Gに応じて、2値α1、α2のうち一方の値を決める。値α2は値α1より大きな値である。係数αの決定に際してヒステリシスが設定されている。例えば、冷媒流量Gが閾値G2を上回ると、係数αとして値α2を決定する。冷媒流量Gが閾値G1より下がると、係数αとして値α1を決定する。閾値G2は閾値G1より大きな値である。
【0099】
次に、図7のステップS182では、係数αを用いて制御ゲインKp、Kiを決定する。
【0100】
具体的には、下記の数式5、数式6を用いて制御ゲインKp、Kiを決定する。
【0101】
Kp=a1×α…数式5
Ki=a2×α…数式6
ここで、a1は第1の定数、a2は第2の定数である。
【0102】
したがって、冷媒流量Gが閾値G2を上回ると、Kp=a1×α2になり、冷媒流量Gが閾値G1より下がると、Kp=a1×α1になる。加えて、冷媒流量Gが閾値G2を上回ると、Ki=a2×α2になり、冷媒流量Gが閾値G1より下がると、Ki=a2×α1になる。
【0103】
以上説明した本実施形態では、共通の閾値G1、G2を用いて、制御ゲインKp、Kiの変更することができる。すなわち、共通の閾値G1、G2を用いて、冷房負荷が大きいか否かを判定することになる。
【0104】
(第4実施形態)
上述の第1実施形態では、流量センサにより検出された冷媒流量Gに基づいて冷房負荷の大小を判定した例を示したが、これに代えて、本第4実施形態では、
冷媒圧力等を用いて冷房負荷が大きいか否かを判定する。
【0105】
本実施形態では、車両エンジン11dの回転数を検出するための回転センサが用いられる。車両エンジン11dの回転数は、圧縮機11の回転数Naとして用いられる。圧縮機11の冷媒吐出口と膨張弁14の冷媒入口との間の冷媒圧力Phを検出する高圧センサが用いられる。
【0106】
本実施形態の電子制御装置70は、図8、図9のフローチャートにしたがって、蒸発器温度制御を実行する。
【0107】
図8では、図2中のステップS160に代えて、ステップS163が用いられる。図9では、図3中のステップS170に代えて、ステップS173が用いられている。
【0108】
図8のステップS163では、冷媒圧力Ph、回転数Na、空気温度TE(n)、および前回の指令値I(n−1)に基づいて冷媒流量g’の大小を判定する。
【0109】
冷媒圧力Phが所定圧力Pd以上で、かつ回転数Naが所定回転数Nc以上で、かつ空気温度TE(n)が所定温度t以上で、かつ前回の指令値I(n−1)が所定値I以上であるときに、冷媒流量g’が大きいと判定する。すなわち、冷房負荷が大きいと判定する。
【0110】
一方、冷媒圧力Phが所定圧力Pd未満である場合と、回転数Naが所定回転数Nc未満で有る場合と、空気温度TE(n)が所定温度t未満である場合と、前回の指令値I(n−1)が所定値I未満である場合とのうち、少なくとも1つの場合には、冷媒流量g’が小さいと判定する。すなわち、冷房負荷が小さいと判定する。なお、冷媒圧力Phなどに基づいて冷媒流量g’の大小を判定した理由は、後述する。
【0111】
図9のステップS173では、冷房負荷の大小に基づいて制御ゲインKp、Kiを決定する。冷房負荷が大きいと判定したときにはKp=Kp2、Ki=Ki2とし、冷房負荷が小さいと判定したときにはKp=Kp1、Ki=Ki1とする。
【0112】
ここで、値Kp1、Kp2、Ki1、Ki2は、上述の第1実施形形態の値Kp1、Kp2、Ki1、Ki2とそれぞれと同一である。
【0113】
したがって、冷房負荷が大きいと判定した場合には冷房負荷が小さいと判定した場合に比べて制御ゲインKp、Kiが大きくなる。したがって、上述の第1実施形形態と同様に、冷房負荷の大小にかかわらず、冷却用熱交換器9を通過した空気温度を良好に制御することができる。
【0114】
次に、本実施形態において冷媒圧力Phなどに基づいて冷媒流量g’の大小を判定した理由について説明する。
【0115】
まず、冷房負荷が大きいときには、フェイス吹出口から冷風が吹き出されても、室内温度Trが低下するのに遅延が生じる。これに伴い、内気導入口3から導入された空気温度が低下するのに遅延が生じる。このため、空気温度TE(n)が所定温度tより高くなり、温度偏差をE(n)が大きくなる。これに伴い、温度偏差をE(n)を小さくするために前回の指令値I(n−1)は所定値Iより大きな値になる。よって、圧縮機11の回転数Naは所定回転数Ncより大きくなり、圧縮機11の冷媒吐出容量が大きくなる。したがって、冷媒圧力Phが
所定圧力Pdより高くなる。
【0116】
これにより、冷媒圧力Ph≧Pd、かつ回転数Na≧Nc、かつTE(n)≧t、かつI(n−1)≧Iであるときには、車室内の冷房負荷が大きいと判定する。
【0117】
一方、冷房負荷が小さいときに、フェイス吹出口から吹き出される冷風により、室内温度Trは短期間で低下するので、空気温度TE(n)が所定温度tより小さくなり、温度偏差をE(n)が小さくなる。これに伴い、温度偏差E(n)を維持するために前回の指令値I(n−1)は所定値Iより小さな値になる。よって、圧縮機11の回転数Naは所定回転数Ncより小さくなり、圧縮機11の冷媒吐出容量が小さくなる。したがって、冷媒圧力Phが所定圧力Pdより低くなる。
【0118】
これにより、冷媒圧力Ph<Pd、回転数Na<Nc、TE(n)<t、I(n−1)<Iのうちいずれか1つに該当するときには、車室内の冷房負荷が小さいと判定する。
【0119】
(他の実施形態)
上述の第1〜第4実施形態では、数式3で用いられる制御ゲインKp、Kiのそれぞれを冷媒流量Gに基づいて変更した例を示したが、これに代えて、制御ゲインKp、Kiのいずれか一方を冷房負荷に基づいて変更してもよい。
【0120】
上述の第1〜第4実施形態では、PI制御により圧縮機11の冷媒吐出容量を制御する例を示したが、これに代えて、PID制御により圧縮機11の冷媒吐出容量を制御するようにしてもよい。
【0121】
すなわち、今回の指令値をIout(n)、前回の指令値をIout(n−1)、今回の温度偏差をE(n)、前回の温度偏差をE(n−1)、前々回の温度偏差をE(n−2)、制御ゲインをKp、Ki、Kdとした場合に、電子制御装置70は、図2中のステップS180において、下記数式4に基づいて指令値Iout(n)を繰り返し算出する。
【0122】
Iout(n)=Iout(n−1)+Kp×(E(n)−E(n−1))
+Ki×E(n)
+Kd×((E(n)−E(n−1))−(E(n−1)−E(n−2))…数式7
電子制御装置70は、次の(1)、(2)のように、制御ゲインKp、Ki、Kdを冷房負荷に基づいて変更すればよい。
【0123】
(1)上述の第1実施形態と同様に、冷媒流量Gにより制御ゲインKp、Kiを決定する。制御ゲインKdとしては、冷媒流量Gに応じて、2値Kd1、Kd2のうち一方の値を決める。値Kd2は値Kd1より大きな値である。例えば、冷媒流量Gが閾値G2を上回ると、制御ゲインKdとして値Kd2を決定する。冷媒流量Gが閾値G1より下がると、制御ゲインKdとして値Kd1を決定する。閾値G2は閾値G1(<G2)より大きな値である。
【0124】
(2) 上述の第3実施形態と同様に、冷媒流量Gに応じて2値α1、α2のうち一方の値を係数αとして決める。これに伴い、第1の定数をa1、第2の定数をa2、第3の定数をa3としたときに、下記の数式8、数式9、数式10を用いて制御ゲインKp、Ki、Kdを決める。
【0125】
Kp=a1×α…数式8
Ki=a2×α…数式9
Kd=a3×α…数式10
上述の各実施形態では、本発明に係る空調装置を車両用空調装置に適用した例を示したが、これに限らず、発明に係る空調装置を設置型の空調装置に適用してもよい。
【0126】
上述の各実施形態では、本発明に係る圧縮機11として可変容量型圧縮機を用いた例を示したが、これに限らず、電動モータにより駆動され、かつ回転数により冷媒吐出流量が変化する電動型圧縮機を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1の電子制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図3】図1の電子制御装置の制御処理の残りを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態における電子制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態における電子制御装置の制御処理の残りを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態における電子制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態における電子制御装置の制御処理の残りを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第4実施形態における電子制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図9】第4実施形態における電子制御装置の制御処理の残りを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0128】
1 室内空調ユニット
2 空調ケーシング
8 送風機
9 冷却用熱交換器
10 冷凍サイクル装置
11 圧縮機
11d 車両エンジン
12 凝縮器
13 気液分離器
14 膨張弁
15 ヒータコア
16 バイパス通路
17 エアミックスドア
70 電子制御装置
71 外気センサ
72 内気センサ
73 日射センサ
74 水温センサ
75 冷却用熱交換器温度センサ
76 流量センサ
80 空調操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出し、かつ冷媒吐出量を変化可能に構成されている圧縮機(11)と、
前記圧縮機(11)とともに冷凍サイクル装置を構成し、前記冷媒を蒸発させて空気を冷却する冷却用熱交換器(9)と、
前記冷却用熱交換器(9)を通過した空気温度を検出する温度センサ(75)と、
前記温度センサ(75)の検出温度と目標温度との温度偏差を繰り返し算出する第1の算出手段(S150)と、
前記第1の算出手段(S150)の算出毎に前記温度偏差を小さくする前記圧縮機(11)の冷媒吐出量の指令値を制御ゲインを用いて算出する第2の算出手段(S180)と、
前記第2の算出手段(S180)の算出毎に前記指令値を前記圧縮機(11)に出力して前記圧縮機(11)の冷媒吐出量を制御する制御手段(S190)と、を備え、
前記制御ゲインが大きくなるほど、前記冷媒吐出量の制御応答が大きくなるものであり、
前記冷却用熱交換器(9)を通過した空気により室内を冷房する空調装置であって、
前記室内の冷房負荷が大きい場合には前記冷房負荷が小さい場合に比べて、前記冷媒吐出量の制御応答が大きくなるように前記制御ゲインを変更するゲイン変更手段(S170)を備えることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記圧縮機(11)と前記冷却用熱交換器(9)との間で流れる冷媒量を検出する流量センサ(76)を備え、
前記流量センサ(76)により検出された冷媒量が所定値以上である場合には前記冷房負荷が大きいとし、前記流量センサ(76)により検出された冷媒量が所定値未満である場合には前記冷房負荷が小さいとすることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記圧縮機(11)と前記冷却用熱交換器(9)との間で流れる冷媒量を推定する推定手段(S161)を備え、
前記推定手段(S161)により推定された冷媒量が所定値以上である場合には前記冷房負荷が大きいとし、前記推定手段(S161)により推定された冷媒量が所定値未満である場合には前記冷房負荷が小さいとすることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項4】
前記圧縮機(11)から吐出された冷媒を冷却する冷却器(12)と、
前記冷却器(12)の冷媒出口と前記冷却用熱交換器(9)の冷媒入口との間に配置され、前記冷却器(12)により冷却された冷媒を減圧する減圧器(14)と、
前記圧縮機(11)の冷媒吐出口と前記減圧器(14)の冷媒入口との間の冷媒圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記圧力センサの検出圧力が所定値以上である場合には前記冷房負荷が大きいとし、前記圧力センサの検出圧力が所定値未満である場合には前記冷房負荷が小さいとすることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項5】
前記圧縮機(11)から吐出された冷媒を冷却する冷却器(12)と、
前記冷却器(12)の冷媒出口と前記冷却用熱交換器(9)の冷媒入口との間に配置され、前記冷却器(12)により冷却された冷媒を減圧する減圧器(14)と、
前記圧縮機(11)の冷媒吐出口と前記減圧器(14)の冷媒入口との間の冷媒圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記圧縮機(11)は、駆動源から出力される回転力により前記冷媒を圧縮するものであり、
前記圧縮機(11)の回転数を検出する回転数センサを備え、
前記圧力センサの検出圧力が所定値以上で、かつ前記温度センサ(75)の検出温度が所定温度以上で、かつ前記回転数センサの検出回転数が所定回転数以上で、かつ前記冷媒吐出量の指令値が所定値以上であるときには、前記冷房負荷が大きいとし、
前記圧力センサの検出圧力が所定値未満である場合と、前記温度センサ(75)の検出温度が所定温度未満である場合と、前記回転数センサの検出回転数が所定回転数未満である場合と、前記冷媒吐出量の指令値が所定値未満である場合とのうち少なくとも1つの場合には、前記冷房負荷が小さいとすることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項6】
今回の前記指令値をIout(n)、前回の前記指令値をIout(n−1)、今回の前記温度偏差をE(n)、前回の前記温度偏差をE(n−1)、第1の係数をKp、第2の係数をKiとした場合に、前記算出手段は、下記数式1に基づいて前記指令値Iout(n)を繰り返し算出するようになっており、
Iout(n)=Iout(n−1)
+Kp×(E(n)−E(n−1))+Ki×E(n)…数式1
前記ゲイン変更手段(170)は、前記第1、第2の係数をKp、Kiのうち少なくとも一方を前記制御ゲインとして変更することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項7】
第1の定数をa1、第2の定数をa2、変数をαとし、Kp=a1×α、およびKi=a2×αが成立する場合に、前記ゲイン変更手段(170)は、前記変数αを変更することにより、前記第1、第2の係数をKp、Kiのそれぞれを前記制御ゲインとして変更することを特徴とする請求項6に記載の空調装置。
【請求項8】
今回の前記指令値をIout(n)、前回の前記指令値をIout(n−1)、
今回の前記温度偏差をE(n)、前回の前記温度偏差をE(n−1)、前々回の前記温度偏差をE(n−2)、第1の係数をKp、第2の係数をKi、第3の係数をKdとした場合に、前記算出手段は、下記数式2に基づいて前記指令値Iout(n)を繰り返し算出するようになっており、
Iout(n)=Iout(n−1)+Kp×(E(n)−E(n−1))
+Ki×E(n)
+Kd×((E(n)−E(n−1))−(E(n−1)−E(n−2))…数式2
前記ゲイン変更手段(170)は、前記第1、第2、第3の係数のうち少なくとも1つの係数を前記制御ゲインとして変更することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項9】
第1の定数をa1、第2の定数をa2、第3の定数をa3、変数をαとし、Kp=a1×α、Ki=a2×α、およびKd=a3×αが成立する場合に、前記ゲイン変更手段(170)は、前記変数αを変更することにより、前記第1、第2、第3の係数Kp、Ki、Kdのそれぞれを前記制御ゲインとして変更することを特徴とする請求項8に記載の空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−964(P2010−964A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163028(P2008−163028)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】