説明

空調設備用エネルギー管理システム

【課題】テナント毎の空調設備の空調エネルギー使用量を精度良く把握でき、同時使用時間帯での空調エネルギー使用量の分配を公平にし得る空調設備用エネルギー管理システムを提供する。
【解決手段】このシステムでは、エネルギー計測部3がビル設備2を利用するテナント6共有の各空調装置の電力使用量を計測し、ビル管理装置9が電力使用量の計測値を示す計測データを所定の周期で通信回線14を経由してセンタ装置15へ送信し、装置15が計測データに基づいてテナント6毎の空調エネルギー使用量を案分してテナント6毎に報告可能に管理する。装置15では、係数算出部19aが計測データから設定温度及び稼動時間を取得して算出した空調設定温度係数と係数記憶部21からの床面積係数との積で空調エネルギー係数を算出し、空調エネルギー算出部19が空調エネルギー係数、稼動時間、計測データに基づいてテナント毎の空調エネルギー使用量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル設備を利用する複数のテナントが共有するように建物に設置された空調設備の空調エネルギー使用量の管理に係り、詳しくは空調設備のテナント別の空調エネルギー使用量の実績管理を適確に行うために好適な空調設備用エネルギー管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル設備の同一フロア等で複数のテナントが1つの空調設備を共有し、空調設備の空調エネルギー使用量を示す電力量計を共有する場合、空調設備のテナント別の空調エネルギー使用量の実績を反映した空調エネルギー課金システムが普及している。但し、こうした空調エネルギー課金システムでは、テナント毎の空調エネルギー使用量を正確に把握することが困難になっている。
【0003】
そこで、こうした難点を解決するための技術も提案されており、係る周知技術としては、例えばエネルギ使用量を示す電力量計を共有する複数のテナントに、それぞれの設備エネルギ使用実績を反映した「設備エネルギ課金システム及び設備エネルギ課金方法」(特許文献1参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−230163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の技術では、空調設備スイッチのON・OFF操作時刻の履歴と、空調設備のエネルギー使用量、及び同時使用していたテナント数を計数し、複数のテナントが同時使用していた時間帯では、所定の割合で各テナントに分配する機能を持つものであるが、実際の空調設備のエネルギー使用量は、テナント毎の空調設定温度や空調延長時間、或いは部屋室の床面積といった様々な条件事項に応じてそれぞれ変化するものであり、係る変化分を考慮して分配を実施すべき必要がある。
【0006】
ところが、特許文献1の技術によれば、空調設備のON・OFF時間を計数し、同時使用していたテナント数に応じて分配する手法であり、空調設定温度や空調延長時間、部屋室の床面積といった条件事項を加味した計算を実施するものでないため、テナント毎の空調設備のエネルギー使用量を精度良く把握することができないことにより、同時使用していた時間帯でのエネルギー使用量の分配が不公平になり易いという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、テナント毎の空調設備の空調エネルギー使用量を精度良く把握でき、同時使用時間帯での空調エネルギー使用量の分配を公平にし得る空調設備用エネルギー管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、本発明の第1の手段は、ビル設備を利用する複数のテナントが共有するように建物に設置された空調設備の空調エネルギー使用量を示す電力使用量を計測するエネルギー計測部と、電力使用量の計測値を示す計測データを保持して所定の周期で通信回線へ送信するビル管理装置と、通信回線に接続されて遠隔地に設置されると共に、通信回線を介して送信された計測データに基づいてテナント毎の空調エネルギー使用量を案分して報告可能に管理するセンタ装置と、を備えた空調設備用エネルギー管理システムであって、センタ装置は、予め建物における空調設備が有効な部屋室の総床面積又は平均床面積に対する複数のテナントのそれぞれについての空調設備が有効な部屋室の床面積との比率である床面積係数を記憶した係数記憶部と、空調設備における複数のテナントのそれぞれについての設定温度及び稼動時間を計測データから取得すると共に、設定温度及び稼動時間に基づいて算出した空調設定温度係数と床面積係数との積によりテナント別の空調エネルギー係数を算出する係数算出部と、空調エネルギー係数、稼動時間、及び計測データに基づいてテナント毎の空調エネルギー使用量を算出する空調エネルギー算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
第2の手段は、第1の手段において、空調設定温度係数は、空調設備を設定基準温度として予め定めた温度で所定時間作動させたときの電力使用量に対する任意の温度で空調設備を所定時間作動させたときの電力使用量の比率であることを特徴とする。
【0010】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段において、エネルギー計測部は、電力使用量の積算電力値を計測する空調用積算電力計を備え、ビル管理装置は、空調設備の電源のON・OFF時及び設定温度の変更時に計測データとして、少なくとも時刻データ、設定温度データ、及び積算電力値を取り込んで記憶することを特徴とする。
【0011】
第4の手段は、第3の手段において、空調設備は、複数のテナント毎に配置された複数の空調装置であり、エネルギー計測部及びビル管理装置は、ビル設備として顧客側が使用する顧客ビルに設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空調設備用エネルギー管理システムによれば、空調設備の使用時に条件事項である空調設定温度や空調延長時間、或いは部屋室の床面積を加味して空調エネルギー使用量の計算を実施するため、テナント毎の空調設備の空調エネルギー使用量を精度良く把握でき、同時使用していた時間帯での空調エネルギー使用量の分配を公平にし得るようになり、各テナントに対して公正な電力使用料を請求することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係る空調設備用エネルギー管理システムの基本構成を示した概略ブロック図である。
【図2】図1に示す空調設備用エネルギー管理システムの各部における動作処理を示したフローチャートである。
【図3】図1に示す空調設備用エネルギー管理システムのセンタ装置に備えられる係数算出部による空調装置の冷房運転時の空調設定温度係数の算出を説明するために示した図であり、(a)は時間推移に対する電力使用量の関係で示される電力使用量曲線の特性図、(b)は設定温度、電力使用量、及び空調設定温度係数を示す空調温度係数の相関値のデータを表形式で例示した図である。
【図4】図1に示す空調設備用エネルギー管理システムのセンタ装置において付設される表示装置の表示画面上に表示されるテナント毎の空調エネルギー使用量を含む表形式の電力管理データを例示した図である。
【図5】図1に示す空調設備用エネルギー管理システムのセンタ装置の報知部から顧客ビルのビル管理装置に接続される1つのテナントの端末装置に送信されて通知されると共に、端末装置に付設される表示装置の表示画面上に表示される空調設備の空調エネルギー使用量の電子データによるメッセージを例示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の空調設備用エネルギー管理システムについて、実施例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る空調設備用エネルギー管理システムの基本構成を示した概略ブロック図である。この空調設備用エネルギー管理システムは、ビル設備を利用する複数のテナント6が共有するように建物に設置された空調設備の空調エネルギー使用量を示す電力使用量を計測するエネルギー計測部3と、電力使用量の計測値を示す計測データを保持して所定の周期で通信回線14へ送信するビル管理装置9と、通信回線14に接続されて遠隔地に設置されると共に、通信回線14を介して送信された計測データに基づいてテナント6毎の空調エネルギー使用量を案分して報告可能に管理するセンタ装置15と、を備えて構成される。尚、ここではテナント6がテナントa〜cとして3区分されるものとする。
【0016】
このうち、空調設備は、各テナント6毎にそれぞれ配置された略図する複数(ここでは3台)の空調装置であり、エネルギー計測部3及びビル管理装置9は、ビル設備として顧客側が使用する顧客ビル2に設置される。エネルギー計測部3は、各空調装置の電力使用量の積算電力値を計測する空調用積算電力計5を備える。また、各空調装置の温度設定やON・OFFの操作設定を行う各テナント6毎に設置された略図するコントローラには、それぞれ設定温度時(変更時を含む)に空調設定温度出力として設定温度データを出力する空調設定温度出力部7と、電源のON・OFF時(変更時を含む)に空調ON・OFF信号出力として空調ON・OFF信号及びON・OFF時刻信号等のデータを出力する空調ON・OFF信号出力部8と、が接続されており、これらの空調設定温度出力部7及び空調ON・OFF信号出力部8についても、エネルギー計測部3の構成に含まれる。
【0017】
ビル管理装置9は、エネルギー計測部3における各部(空調用積算電力計5、空調設定温度出力部7、及び空調ON・OFF信号出力部8)と接続され、各空調装置の電源のON・OFF時及び設定温度の変更時に計測データとして、少なくとも時刻データ、設定温度データ、及び積算電力値を取り込むデータ取込部10と、取り込んだ計測データを記憶保持する記憶部13と、記憶した計測データを通信回線14へ所定の周期で送信するための通信装置12と、これらの各部の動作を所定のプログラムに従って制御する制御装置11と、を備えて構成される。即ち、上述したエネルギー計測部3における空調用積算電力計5、空調設定温度出力部7、及び空調ON・OFF信号出力部8は、制御装置11に予め記憶されたプログラムに従って、データ取込部10に対して計測データ(時刻データ、設定温度データ、及び積算電力値)を出力し、ビル管理装置9では、データ取込部10が制御装置11に制御されて計測データを取り込む。このとき、各テナント6のコントローラによって操作された各空調装置に係る空調ON・OFF信号出力部8から出力される空調ON・OFF信号及びON・OFF時刻信号等のデータや空調設定温度出力部7からの設定温度データ及び設定温度時刻データを変更したときの変更データ、或いはコントローラの何れか1つをON・OFF操作して動作変更したり、設定温度変更の操作を行った時点で空調用積算電力計5が計測した電力使用量のデータ(積算電力値)についても、データ取込部10が取り込んで記憶装置13に記憶保持する。
【0018】
センタ装置15は、通信回線14を介して送信される計測データを受信すると共に、計測データの受信に必要な通信要求を行う通信装置16と、通信装置16及び通信回線14を介して顧客ビル2についてのビル管理装置9の通信装置12と遠隔的に接続する時期や時刻を記憶し、それらの時期や時刻を制御動作に供してビル管理装置9の記憶装置13から計測データを取得する顧客テナント情報取得部18と、取得した計測データを記憶する記憶装置20と、予め建物における各空調装置が有効な部屋室の総床面積又は平均床面積に対する各テナント6のそれぞれについての空調設備が有効な部屋室の床面積との比率である床面積係数を記憶した係数記憶部21と、各空調装置における各テナント6のそれぞれについての設定温度及び稼動時間を計測データから取得すると共に、設定温度及び稼動時間に基づいて算出した空調設定温度係数と床面積係数との積によりテナント6別の空調エネルギー係数を算出する係数算出部19aと、空調エネルギー係数、稼動時間、及び計測データに基づいてテナント6毎の空調エネルギー使用量を算出する空調エネルギー算出部19と、テナント6毎の空調エネルギー使用量の算出結果を報告書として作成する報告書作成部22と、報告書の内容を各テナント6別のメッセージとして報知させる報知部23と、これらの各部の動作を所定のプログラムに従って制御する制御装置17と、を備えて構成される。
【0019】
センタ装置15の各部について、係数記憶部21は記憶部20に具備され、係数算出部19aは空調エネルギー算出部19に具備される。係数記憶部21での床面積係数について、各空調装置が有効な部屋室の総床面積に対する各テナント6のそれぞれについての空調設備が有効な部屋室の床面積との比率を用いれば、例えばテナントaが0.20、テナントbが0.33、テナントcが0.47である場合を例示できる。勿論、総床面積に代えて平均床面積を用いて比率を得ても良いが、総床面積との対比で得た比率の方が全体における占有率を把握し易い。何れにせよ、床面積係数は各テナント6の床面積が契約変更等により増減する場合には、それに応じて再登録されるものである。また、報知部23では、予め各テナント6の各担当者宛てのアドレスを登録しておくことにより、通信装置16及び通信回線14を介して報告書の内容のメッセージを各テナント6の各担当者に宛てて送信することができる。
【0020】
因みに、上述したビル管理装置9及びセンタ装置15は、よく知られているように、CPU、主メモリ、補助記憶部(HDD)等による記憶装置、表示装置、及びキーボード・マウス等の入出力装置を備えて構成されるコンピュータ機能を有するもので、ビル管理装置9は端末機能、センタ装置15はサーバ機能を持つものである。図1に示すビル管理装置9及びセンタ装置15の構成では、表示装置及び入出力装置については略図している。汎用的な例として、ビル管理装置9の記憶装置13には補助記憶部を用いることができ、制御装置11の制御機能を含むその他の各部の機能は、主メモリに記憶させたCPUのプログラム機能(入出力装置の操作に対応する)により構築可能なものである。センタ装置15における記憶部20及び係数記憶部21についても補助記憶部を用いることができ、制御装置17の制御機能を含むその他の各部の機能についても、同様に主メモリに記憶させたCPUのプログラム機能(入出力装置の操作に対応する)により構築可能なものである。
【0021】
図2は、この空調設備用エネルギー管理システムの各部における動作処理を示したフローチャートである。この動作処理では、まずセンタ装置15の顧客テナント情報取得部18が顧客ビル2からデータを取得する時期や時間を有しており、そのタイミングに至ると制御装置17に対して顧客テナント情報取得要求(ステップS1)を行い、この要求を受けた制御装置17が通信装置16を起動させて通信回線14を介してビル管理装置9の通信装置12との接続を行い、ビル管理装置9の制御装置11へデータ取得コマンド送信(ステップS2)を行う。但し、ここでは各テナント6のテナントa〜cの各空調装置が稼動した際、テナントaが稼動後に1時間経過したときに空調装置のコントローラによるOFF操作が行われ、更に1時間30分経過したときにテナントb及びテナントcが空調装置のコントローラによるOFF操作が行われるものとし、各空調装置の総電力使用量は最初の1時間では567.000kWhであり、次の1時間30分に至る間は456.000kWhであって、各空調装置の温度設定はテナントaでは26℃、テナントbでは24℃、テナントcでは28℃を維持していたものとする。
【0022】
次に、コマンドを受信した制御装置11は、記憶装置13に記憶されている計測データであり、各空調装置の空調ON・OFF信号出力部8から出力される空調ON・OFF信号の出力時刻データ、設定温度を変更したときの空調設定温度出力部7から出力される設定温度データ及び設定温度変更時刻データ、並びにコントローラの何れか1つでON・OFFや設定温度変更操作を行った時点での空調用積算電力計5が計測した電力使用量データを記憶装置13から読み出し、通信装置12から通信回線14を介して通信装置16を経由して制御装置17へ送信し、制御装置17が計測データを受信することにより、ビル管理装置9からのデータ取得(ステップS3)が行われた後、制御装置17が受信した計測データを記憶装置20に記憶させることにより、記憶装置格納(ステップS4)の処理が行われる。
【0023】
更に、センタ装置15では、空調エネルギー算出部19が記憶装置20に記憶されている計測データを取得することにより、顧客ビル情報テナント情報取込み(ステップS5)の処理が行われた後、係数算出部19aが空調エネルギー算出部19により取り込んだ計測データから各テナント6のそれぞれについての設定温度及び稼動時間を取り込み、設定温度及び稼動時間に基づいて空調設定温度出力部7から出力される設定温度データを用いて空調設定温度係数演算(ステップS6)の処理を行う。ここでは、テナントaが空調装置をOFF操作してから、起動後1時間のデータに基づいて空調設定温度係数を算出することになる。
【0024】
図3は、この空調設備用エネルギー管理システムのセンタ装置15に備えられる係数算出部19aによる空調装置の冷房運転時の空調設定温度係数の算出を説明するために示した図であり、同図(a)は時間推移に対する電力使用量Aの関係で示される電力使用量曲線Sの特性図、同図(b)は設定温度C、電力使用量A、及び空調設定温度係数を示す空調温度係数Bの相関値のデータを表形式で例示した図である。ここでは、空調装置が冷房運転のときの設定温度Cに対する電力使用量Aに基づいて得られる電力使用量曲線Sと空調温度係数Bとの相関性を具体的に例示している。例えば、顧客ビル2において、空調装置の冷房運転時の設定温度Cの基準温度を26℃と決めている場合、この設定温度C1=26℃では電力使用量A1が3.716.8kWhであり、空調温度係数B1が1.0となる。また、設定温度C2=28℃では電力使用量A2が3.701.2kWhであり、空調温度係数B2が設定温度C1=26℃のときよりも少ない値の電力使用量であることにより、1−(電力使用量A1−電力使用量A2)/電力使用量A1なる関係から得られる値の0.99579となる。更に、設定温度C3=24℃では電力使用量A3が3.727.2kWhであり、空調温度係数B3が設定温度C1=26℃のときよりも大きい値の電力使用量であることにより、1+(電力使用量A3−電力使用量A1)/電力使用量A1なる関係から得られる値の1.00279となる。
【0025】
このように、空調設定温度係数演算(ステップS6)の処理では、係数算出部19aが空調エネルギー算出部19で取得したテナントaの計測データのうちのコントローラの設定温度26℃に基づいて、空調設定温度係数である空調温度係数B1(=1.0)を求めた後、空調エネルギー算出部19が係数記憶部21からテナントaの床面積係数0.2を取り込むことにより、テナント6の室面積係数の取込み(ステップS7)の処理を行ってから係数算出部19aがテナントaについての空調温度係数B1(=1.0)と床面積係数0.2との積により空調エネルギー係数(=0.2)を算出する係数演算(ステップS8)を行う。
【0026】
引き続き、係数演算全テナント分完了であるか否かの判定(ステップS9)を行う。この判定の結果、全テナント分完了でなければ空調設定温度係数演算(ステップS6)の処理の前にリターンしてその後の処理を繰り返す。上述した説明では、テナントb及びテナントcの分が未処理であるため、処理が繰り返されることになる。テナントbについては、設定温度C3=24℃のために空調温度係数B3=1.00279と床面積係数0.33との積による空調エネルギー係数(=0.33092)が算出され、テナントcについては、設定温度C2=28℃のために空調温度係数B2=0.99579と床面積係数0.47との積による空調エネルギー係数(=0.46802)が算出されることになる。
【0027】
更に、全テナント分完了であれば、空調エネルギー算出部19がテナントaの空調装置のコントローラによりOFF操作を行ってから、稼動後の1時間の電気使用量である567.000kWhを空調エネルギー使用量に対し、空調エネルギー使用量演算(案分)(ステップS10)の処理を行う。この空調エネルギー使用量演算(案分)(ステップS10)の処理では、テナントaの空調エネルギー係数(=0.2)をテナントa〜cの空調エネルギー係数の総和(0.2+0.33092+0.46802)で割り、電気使用量(=567.000kWh)を乗算することで求められる。この結果、テナントaの空調エネルギー使用量を示す電力使用量案分値は113.520kWh、テナントbの電力使用量案分値は187.831k Wh、テナントcの電力使用量案分値は265.649kWhとなる。
【0028】
引き続き、空調エネルギー算出部19は、記憶装置20に記憶されている顧客ビル2についての空調装置の電力使用量案分の計算が実施されていないデータが存在するか否かを確認することにより、案分完了か否かの判定(ステップS11)を行う。この判定の結果、完了でなければ顧客ビル情報テナント情報取込み(ステップS5)の処理の前にリターンしてその後の処理を繰り返すが、完了していれば算出した各係数の結果や電力使用量案分値を記憶装置20に記憶することにより、計算結果登録(ステップS12)を行う。因みに、テナントaのみの案分完了であり、テナントb及びテナントcが案分完了でない場合には、例えばテナントaでコントローラのOFF操作が行われたときからテナントbとテナントcとでコントローラのOFF操作が行われた1時間30分のデータを取り込み、先に説明したステップS6〜ステップS10を実施し、テナントb及びテナントcの電力使用量案分値を計算することになる。
【0029】
図4は、この空調設備用エネルギー管理システムのセンタ装置15において付設される表示装置の表示画面T上に表示されるテナント毎の空調エネルギー使用量を含む表形式の電力管理データを例示した図である。図4を参照すれば、表示装置の表示画面T上には、略図する入出力装置を所定に操作することにより、記憶装置20に記憶された顧客ビル2についてのテナント6毎の各空調装置の電力使用量案分値を含む電力管理データを表示することができる。具体的に云えば、表示画面T上には、空調装置が稼動してから1時間後、テナントaが行ったコントローラのOFF操作実施までの電力使用量の案分経過を示す表データTAと、テナントaのコントローラによるOFF操作後、1時間30分経過した時点でテナントb及びテナントcで行われたコントローラによるOFF操作までの電力使用量の案分経過を示す表データTBと、が縦方向に表示され、最上部には顧客ビル2の名称と電力計測日とを表示する表示部TCが表示される。また、表データTA、TBは横方向に、テナント名Ta、空調設備使用電力量(kWh)Tb、空調設定温度(℃)Tc、空調設計温度係数Td、空調稼動時間(h)Te、床面積係数Tf、係数の積Tg、算出結果(kWh)Thの項目が持たされに、横方向にはテナント名Taが示す総計、識別子(a、b、c)の項目が持たされたテーブル形式の構成となっている。
【0030】
表データTAにおけるテナント名Taの総計は、空調設備使用電力量Tbが567.000kWh、空調設定温度Tcが空白、空調設定温度係数Tdが空白、空調稼動時間Teが1.00h、床面積係数Tfが1、係数の積Tgが0.99894(約1)、算出結果Thが567.000kWhと表示され、テナント名Taのテナントaは、空調設備使用電力量Tbが空白、空調設定温度Tcが26℃、空調設定温度係数Tdが1.00000、空調稼動時間Teが1.00h、床面積係数Tfが0.20、係数の積Tgが0.20000、算出結果Thが113.520kWhと表示され、テナント名Taのテナントbは、空調設備使用電力量Tbが空白、空調設定温度Tcが24℃、空調設定温度係数Tdが1.00279、空調稼動時間Teが1.00h、床面積係数Tfが0.33、係数の積Tgが0.33092、算出結果Thが187.831kWhと表示され、テナント名Taのテナントcは、空調設備使用電力量Tbが空白、空調設定温度Tcが28℃、空調設定温度係数Tdが0.99579、空調稼動時間Teが1.00h、床面積係数Tfが0.47、係数の積Tgが0.46802、算出結果Thが265.649kWhと表示されている。
【0031】
表データTBにおけるテナント名Taの総計は、空調設備使用電力量Tbが456.000kWh、空調設定温度Tcが空白、空調設定温度係数Tdが空白、空調稼動時間Teが1.50h、床面積係数Tfが1、係数の積Tgが0.79894(約1)、算出結果Thが456.000kWhと表示され、テナント名Taのテナントaは、空調設備使用電力量Tbが空白、空調設定温度Tcが26℃、空調設定温度係数Tdが1.00000、空調稼動時間Teが0h、床面積係数Tfが0.20、係数の積Tgが0、算出結果Thが0kWhと表示され、テナント名Taのテナントbは、空調設備使用電力量Tbが空白、空調設定温度Tcが24℃、空調設定温度係数Tdが1.00279、空調稼動時間Teが1.50h、床面積係数Tfが0.33、係数の積Tgが0.33092、算出結果Thが188.875kWhと表示され、テナント名Taのテナントcは、空調設備使用電力量Tbが空白、空調設定温度Tcが28℃、空調設定温度係数Tdが0.99579、空調稼動時間Teが1.50h、床面積係数Tfが0.47、係数の積Tgが0.46802、算出結果Thが267.125kWhと表示されている。
【0032】
更に、センタ装置15における制御装置17は、予め決められた日時や接続許可された入出力装置の所定操作を検出すると、報告書作成部22を起動する。報告書作成部22では、顧客ビル2のテナント6毎に所定期間である1ヶ月の空調設備使用電力量Tbの案分値の累計を算出すると共に、その算出結果を報告書として作成する報告書作成(ステップS13)の処理を行って動作処理を終了する。尚、予め各テナント6の各担当者宛てのアドレスを登録するようにして制御装置17が報知部23を起動し、通信装置16及び通信回線14を介して報告書の内容のメッセージを各テナント6の各担当者に宛てて、電子メールやFAXで送信することも可能である。
【0033】
図5は、この空調設備用エネルギー管理システムのセンタ装置15の報知部23から顧客ビル2のビル管理装置9に接続される1つのテナントaの略図する端末装置(パソコン)に送信されて通知されると共に、端末装置に付設される表示装置の表示画面上に表示される空調設備の空調エネルギー使用量の電子データによるメッセージを例示した模式図である。図5では、報告書の内容のメッセージを示す空調設備電力使用量通知メール22Aとして、顧客ビル2である○○ビルのテナントaの或る担当者へ宛てた報告書の内容のメッセージを示している。但し、○○ビルのテナントaは、顧客ビル2以外の××ビルにもテナントして入居しており、そこでも顧客ビル2の場合と同様な設備機能が配置されていると想定すると、空調設備電力使用量通知メール22A上では、上述した2010年9月分の○○ビルにおける空調設備使用電気量Tb=113.520kWh以外に××ビルでの空調設備使用電気量Tb=550.000kWhを加算した総計663.520kWhを表示する様子を示している。
【0034】
上述した実施例1に係る空調設備用エネルギー管理システムによれば、顧客ビル2のテナント6毎の空調設備使用電力量、各空調装置の空調設定温度や空調稼動時間をそれぞれ自動的に集計すると共に、テナント6毎の空調設備使用電力量の案分を自動で算出するため、顧客ビル2の管理者はテナント6毎のデータ取得や空調設備使用電力量を集計する必要がなくなる。また、空調設備使用電力量の案分には、空調設定温度に持たせた空調設定温度係数とテナント6毎の床面積に持たせた床面積係数との積により算出したテナント別の空調エネルギー係数を用いているため、テナント6毎の空調設備の空調エネルギー使用量(空調設備使用電力量)を精度良く算出することができ、同時使用時間帯での空調エネルギー使用量(空調設備使用電力量)の分配を公平に実施し得る。
【0035】
尚、図1に示した空調設備用エネルギー管理システムは、センタ装置15に通信回線14を介して接続された顧客ビル2が1系統である場合を示したが、図5で説明したように顧客ビル2は2系統以上であってもエネルギー計測部3及びビル管理装置9の設置を同様に適用し、センタ装置15で顧客ビル2別にテナント6毎の空調設備の空調エネルギー使用量(空調設備使用電力量)を累積計算して精度良く把握できるので、本発明の空調設備用エネルギー管理システムは、実施例1で開示した構成のものに限定されない。
【符号の説明】
【0036】
2 顧客ビル
3 エネルギー計測部
5 空調用積算電力計
6 テナント
7 空調設定温度出力部
8 空調ON・OFF信号出力部
9 ビル管理装置
10 データ取込部
11、17 制御装置
16 通信装置
13、20 記憶装置
14 通信回線
15 センタ装置
18 顧客テナント情報取得部
19 空調エネルギー算出部
19a 係数算出部
21 係数記憶部
22 報告書作成部
22A 空調設備電力使用量通知メール
23 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビル設備を利用する複数のテナントが共有するように建物に設置された空調設備の空調エネルギー使用量を示す電力使用量を計測するエネルギー計測部と、前記電力使用量の計測値を示す計測データを保持して所定の周期で通信回線へ送信するビル管理装置と、前記通信回線に接続されて遠隔地に設置されると共に、前記通信回線を介して送信された前記計測データに基づいてテナント毎に前記空調エネルギー使用量を案分して報告可能に管理するセンタ装置と、を備えた空調設備用エネルギー管理システムであって、
前記センタ装置は、予め前記建物における前記空調設備が有効な部屋室の総床面積又は平均床面積に対する前記複数のテナントのそれぞれについての前記空調設備が有効な部屋室の床面積との比率である床面積係数を記憶した係数記憶部と、前記空調設備における前記複数のテナントのそれぞれについての設定温度及び稼動時間を前記計測データから取得すると共に、前記設定温度及び前記稼動時間に基づいて算出した空調設定温度係数と前記床面積係数との積によりテナント別の空調エネルギー係数を算出する係数算出部と、前記空調エネルギー係数、前記稼動時間、及び前記計測データに基づいてテナント毎の前記空調エネルギー使用量を算出する空調エネルギー算出部と、を備えたことを特徴とする空調設備用エネルギー管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の空調設備用エネルギー管理システムにおいて、前記空調設定温度係数は、前記空調設備を設定基準温度として予め定めた温度で所定時間作動させたときの電力使用量に対する任意の温度で前記空調設備を前記所定時間作動させたときの電力使用量の比率であることを特徴とする空調設備用エネルギー管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の空調設備用エネルギー管理システムにおいて、前記エネルギー計測部は、前記電力使用量の積算電力値を計測する空調用積算電力計を備え、前記ビル管理装置は、前記空調設備の電源のON・OFF時及び設定温度の変更時に前記計測データとして、少なくとも時刻データ、設定温度データ、及び前記積算電力値を取り込んで記憶することを特徴とする空調設備用エネルギー管理システム。
【請求項4】
請求項3記載の空調設備用エネルギー管理システムにおいて、前記空調設備は、前記複数のテナント毎に配置された複数の空調装置であり、前記エネルギー計測部及び前記ビル管理装置は、前記ビル設備として顧客側が使用する顧客ビルに設置されたことを特徴とする空調設備用エネルギー管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−40723(P2013−40723A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178486(P2011−178486)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】