説明

空間光変調されたディスプレイ・システムにおいて画像を処理するための装置および方法

【課題】ダイナミックレンジリミッタのダイナミックレンジの制限と、画像の各部における入力信号の輝度変化に基づきビデオ信号にピーキングを適用的に適用する。
【解決手段】本発明回路は、ビデオ信号を受信するように構成された第1の入力801を備えるピーキングフィルタ802を含む。第1のフィルタ出力はビデオ信号のためのピーキング信号を提供し、第2のフィルタ出力はピーキング信号に基づいてピーキングされたビデオ信号を提供する。さらに、第2のフィルタ出力に結合されたスロットル入力を備えるスロットル回路825を含む。スロットル出力はピーキングされたビデオ信号に基づいてスロットル信号807を提供する。スケーラ804は第1のフィルタ出力とダイナミックレンジリミッタ815の間に結合され及びスロットル出力に結合され、スロットル信号807に基づきピーキング信号を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、ディスプレイ・システムにおいて画像処理するための方法および装置に関し、より具体的には、空間光変調されたディスプレイ・システムにおいて画像データを処理するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間光変調(SLM:Spatial Light Modulating)システムは、ディジタル光処理(DLP:Digital Light Processing(商標))システムを含む。DTMおよびDLP(商標)は、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)社の商標である。SLM技術の近年の発展は、方形画素の代わりにダイヤモンド形の画素を提供するSLM素子に依存するものである。空間光変調(SLM)システムのための処理技術は、いわゆる「スムーズ画素(smooth pixel)」処理技術とよばれる。スムーズ画素技術によれば、表示された画像は、画素の第1のセットと画素の第2のセットを組み合わせることによって形成される。第2のセットは、第1のセットから変位している。第1および第2のセットの組み合わせは、表示された画像を形成する。
【0003】
空間光変調(SLM)システムの1つの例では、SLM素子は、表示されるべき、入力ピクチャまたはフレームの各々に対して第1および第2の画素セットを提供する。第1および第2の画素セットの各々から組み合わされた画素は、アレイ(配列)の中の空間光変調(SLM)素子の数よりも多い数の画素を表示する。
【0004】
しかしながら、この技術には、欠点が伴う。表示される画像において、第1のセットの画素は、第2のセットの画素と事実上重なる。結果として、重なる画素の領域における各光は、重なる画素の各々からの光の組み合わせである。これにより、意図したものよりも輝度が高くなることを生じさせるか、あるいは、意図した画像の部分よりも輝度が低くなることを生じさせることがある。この問題に対応するために、共同発明者ルメリック(Rumerich)氏によって2005年3月22日付で出願された同時係属出願PCT/US2005/09621は、重なった画素輝度の影響に対処するためのフィルタおよび方法に係る発明を開示している。出願人の発明であるフィルタは、スムーズ画素タイプのディスプレイ・システムによって与えられる画像を向上させることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画素輝度フィルタ技術を用いて、画素の輝度処理の間に画素に対して輝度が変更されたり、画素に対して利得が適用されたりするような場合、結果として生じた画素の強度がディスプレイの取り扱うことが可能な最大の値を超えることがある。この場合、最大値で、例えば、リミッタ回路によって、最大値を超える値が通常、クリッピングされる。この最大値まで画素出力強度をクリッピングすることにより、強度情報の幾らかが失われているため、誤った輪郭や他のアーティファクトが作成される。従って、画質を高めるための画素輝度処理、同時に、クリッピングを最小限にする回路および方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態は、ダイナミック・レンジ・リミッタに提供されるビデオ信号のピーキングを行う回路を提供してディスプレイ装置に画像を表示する。この回路は、ビデオ信号を受信するように構成された第1の入力を備えるピーキング・フィルタを含む。第1のフィルタ出力は、ビデオ信号のためのピーキング信号を提供する。第2のフィルタ出力は、ピーキング信号に基づいてピーキングされたビデオ信号を提供する。この回路は、さらに、第2のフィルタ出力に結合されたスロットル入力を備えるスロットル回路を含む。スロットル出力は、ピーキングされたビデオ信号に基づいてスロットル信号を提供する。スケーラは、第1のフィルタ出力とダイナミック・レンジ・リミッタとの間に結合される。さらに、スケーラは、スロットル出力に結合される。スケーラは、スロットル信号に基づいてピーキング信号を調節する。従って、ダイナミック・レンジ・リミッタのダイナミック・レンジの制限、さらに、表示される画像の各部における入力信号の輝度の変化に基づいてビデオ信号にピーキングが適用的に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の様々な実施の形態を実施するのに適した空間光変調器(SLM)のアレイを含むディスプレイ・システムを示すブロック図である。
【図2】図1に示されたディスプレイ・システムの電子サブシステムをより詳細に示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画素フィルタを含むSLMシステムを示すブロック図である。
【図4】受信した画素のデータと隣接する画素のデータとの間の関係を示す図であり、Aは本発明の実施の形態に係る調節された画素データの第1の画素セットを示し、Bは本発明の実施の形態に係る調節された画素データの第2の画素セットを示し、CはAおよびBに示された第1および第2の画素セットからなる画素マトリックスを示す。
【図5】本発明の実施の形態に係る画素フィルタのブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る図5の画素データ・フィルタにおける使用に適した例示的なルックアップ・テーブルを示す図である。
【図7】図5に示した画素データ・プロセッサの実施の形態の詳細な図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るスロットル回路のブロック図である。
【図9】図8に示すスロットル回路をより詳細に示すブロック図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
空間光変調器(SLM)デバイスは、ビデオ画像投影および印刷などの広範囲の撮像用途に使用されることが多くなっている。通常の空間光変調器は、液晶デバイス(LCD)やディジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD:Digital Micro‐mirror Device(商標))などの装置を含む。通常の空間光変調器は、入射光に作用してディスプレイ表面上に二次元画像を形成する変調器素子の二次元アレイ(配列)からなる。LCDに基づくデバイスは、アレイの中における各光素子を変調するために偏光特性を使用する。DMD(商標)に基づくデバイスは、個々の光素子を変調するために微小なマイクロミラーのアレイを使用する。空間光変調アレイにおける各素子は、対応する駆動電圧レベルに応じて可変の光強度を示す。本発明の一実施の形態においては、SLMアレイにおける各素子は、表示された画像の少なくとも1つの画素に対応する。
【0009】
図1は、本発明の様々な実施の形態を実施するのに適した空間光変調(SLM)アレイ500を含む例示的なシステム100を示す絵図である。システム100は、光学システム400に結合された少なくとも1つの光源301を含む。光学システム400は、リレーおよび照明光学部300および投影光学部200を含む。光学システム400は、空間光変調素子502の少なくとも1つのアレイ500を含む。本発明によれば、アレイ500は、反射型光素子502の半導体をベースとするアレイからなる。本発明の一実施の形態によれば、SLMアレイ500は、光スイッチング素子502の光バイナリー・パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulated)アレイ500からなる。一実施の形態によれば、PWMアレイ500の素子502は、微小電気機械システム(MEMS:Micro‐ElectroMechanical System)デバイス、例えば、ディジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD:Digital Micro−mirror Device(商標))のミラーからなる。
【0010】
電子サブシステム600は、ビデオ信号601を受信するための入力および空間光変調(SLM)アレイ500に結合された出力を含む。電子サブシステム600は、パルス幅変調(PWM)信号を提供してアレイ500の各素子502を駆動するために、入力されるビデオ信号601を処理する。PWM信号は、ビデオ信号601によって提供される画素値に従ってアレイ500の素子502の角度および滞留時間(dwell time)を制御する。ディスプレイ画面499に表示される画素の特性、例えば、輝度は、各々の対応するマイクロミラー素子502の滞留時間に関連する。
【0011】
電子サブシステム600は、ビデオ信号のソース(図示せず)からビデオ信号601を受信する。ビデオ信号601は、表示装置499に投影され、表示されるビデオ画像に対応するビデオ画像データからなる。電子サブシステム600は、ビデオ信号601を処理し、処理済みのビデオ信号602を提供してアレイ500を駆動する。
【0012】
光学システム400は、少なくとも1つのリレーおよび照明光学部300、少なくとも1つの投影光学部200、および、少なくとも1つの光源301を含む。光源301からの光は、少なくとも1つのリレー光学部300を介して転送される。リレー光学部300からの光は、SLMアレイ500の光反射素子502上に投影される。
【0013】
本発明の実施の形態によれば、様々な適切なビデオ信号ソースのうちの少なくとも1つによってビデオ信号601が提供される。本発明の様々な実施の形態のために適したビデオ信号ソースは、非常に多くのものが存在するため、全てを記載することはできないが、ほんの幾つかの例としては、限定するものではないが、ディジタル多用途ディスク(DVD:Digital Versatile Disk)システム、セット・トップ・ボックス(STB)、放送ビデオ・ソース、インターネット・ビデオ・ソース、ケーブル・ビデオ・ソース、衛星ビデオ・ソース、無線および電話ソースが挙げられる。本発明の実施の形態は、ディジタル・ビデオ中間システムを含み、ビデオ・ソースには、映画、テレシネ、ビデオ・マスターなどが挙げられる。
【0014】
ビデオ信号ソースに係らず、本発明の実施の形態のために適したビデオ信号601には、特に、アナログ・ビデオ信号、ディジタル・ビデオ信号、コンポーネント・ビデオ信号、およびコンポジット・ビデオ信号が含まれる。好ましい信号形式には、特に、NTSC(National Television Standards Committee)形式、PAL(Phase Alternate Lines)形式、およびPALプラス形式が含まれる。表示される画像の画素に対応する画素値を提供するものであれば、どのようなビデオ形式でも、本発明の様々な実施の形態における使用に適している。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態に係る図1に例示した電子サブシステム600の機能ブロックを示している。電子サブシステム600は、ビデオ信号601を受信する受信機610を含む。受信機610は、ビデオ処理ユニット640に結合される。ビデオ処理ユニット640は、空間光変調(SLM)アレイ・ドライバ690に結合される。
【0016】
本発明の実施の形態によれば、受信機610は入力においてビデオ信号601を受信する。本発明の例示的な実施の形態においては、受信機610は、従来のビデオ受信および復号化技術に従って、ビデオ信号601を復号化し、ビデオ信号601のアナログ・ディジタル(A/D)変換、輝度クロミナンス分離(Y/C分離)、および、クロミナンス(色)復調を実行する。
【0017】
本発明の実施の形態によれば、ビデオ処理ユニット640は、さらに、従来技術に従って、ビデオ処理機能、例えば、ビデオ信号601の順次走査変換および再サンプリングを行う。ビデオ処理ユニット640は、空間光変調(SLM)デバイス・ドライバ690に結合される。SLMデバイス・ドライバ690は、SLMアレイ500の各素子502を駆動するための駆動信号を提供する。本発明の実施の形態によれば、ビデオ・プロセッサは、改善された(enhanced)クロミナンス(2C)信号および輝度(2Y)信号をドライバ690の使用のために提供し、ドライバ690は、このクロミナンス(2C)信号および輝度(2Y)信号を、ビデオ信号601に従って光を変調するために、アレイ500の各素子502を駆動する。
【0018】
ビデオ処理ユニット640は、画素群発生器680に結合された画素フィルタ320を含む。本発明の一実施の形態においては、画素群発生器680は、いわゆる「スムーズ画素」処理技術のために画素群を提供する従来のデバイスである。本発明の一実施の形態によれば、画素フィルタ320は、本明細書中に記載された本発明の様々な実施の形態に従った画素処理機能を実施するために、ビデオ処理ユニット640のプロセッサをプログラムすることによって実施することができる。本発明の代替的な実施の形態においては、画素フィルタ320の各機能は、プロセッサをプログラムすることなくハードウェアによって提供される。本発明のさらに別の実施の形態によれば、ハードウェアにおいて画素フィルタ320の幾らかの機能が実施され、他の機能を実施するためにプログラムされたプロセッサによって、他の機能が実施される。しかしながら、当業者であれば、本明細書を読むことにより、ハードウェアおよびソフトウェアの多くの様々な組み合わせが本発明を実施するのに適していることが理解できるであろう。従って、本発明の画素フィルタは、1つの特定のハードウェアおよびプロセッサの構成に限定されるものではない。
【0019】
本発明の一実施の形態によれば、受信部610は、ビデオ信号601に基づいて輝度(Y)信号620を画素フィルタ320に提供する。本発明の一実施の形態によれば、受信部610は、ビデオ信号601に基づいてクロミナンス(C)信号619を提供する。
【0020】
本発明の実施の形態においては、ビデオ信号プロセッサ640は、例えば、色空間変換、ガンマ補正除去、エラー拡散、オン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)機能、赤色、緑色、青色(RGB)の入力受信機能、および、ユーザによって操作可能な画像制御を含むさらなる処理機能を提供する場合がある。本発明の一実施の形態においては、ドライバ690は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)を含む。
【0021】
一実施の形態においては、本発明のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FGPA)690は、ビデオ信号プロセッサ640からRGBビデオ信号を受信し、パルス幅変調(PWM)制御機能、画像フォーマット、ビット平面変換、およびディジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)駆動信号機能を少なくとも部分的には、RGBビデオ信号に基づいて提供する。本発明の実施の形態によれば、システム600は、さらにメモリ622および電子サブシステム600のためのタイミングおよび制御回路621を含む。
【0022】
当業者であれば容易に理解できるであろうが、様々な構成および機能を用いて各プロセッサをシステム全体に共通に組み込むことができる。本明細書において記載された本発明の回路、システム、および方法を実施するものはどのようなプロセッサ構成であっても、本発明の範囲の中に含まれる。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態を示すブロック図である。空間光変調(SLM)アレイ500に関し、ディスプレイ画面400は、画素のマトリックス450からなる画像を表示できるように配列されている。マトリックス450は、少なくとも第1の画素群410と第2の画素群430(図4にも示す)を含む。本発明の代替的な実施の形態によれば、マトリックス450は、2つ以上の画素群を含む。本発明の実施の形態によれば、マトリックス450の画素の数は、第1の画素群410および第2の画素群430を提供するのに使用されるSLMアレイ500の素子502の数よりも多い。
【0024】
図3に示すように、光源301からの光はリレー光学サブシステム300を通過する。本発明の一実施の形態においては、光学サブシステム300は、色のついた光を提供する手段を含む。本発明の一実施の形態によれば、光学サブシステム300は、赤色光、緑色光、および青色光を交互に発生させるカラー・ホイール(color wheel)を含む。本発明の代替的な実施の形態によれば、光源301は、赤色光源、緑色光源、および青色光源を含む。色のついた光は、アレイ500に投影され、アレイ500から反射される。アレイ500から反射された光は、投影光学サブシステム200を介してディスプレイ499に提供される。
【0025】
アレイ500の各素子502は、画素データ・セット620によって提供される画素値に従って駆動される。マトリックス450の各画素は、入力される画素データ・セット620の画素値に対応する。画素データ・セット620は、ビデオ信号601に基づいて作成される。図3において、画素データ・セット620は、文字A〜Oの配列によって示されている。
【0026】
画素プロセッサ320は、画素データ・セット620の画素値を調節し、調節された画素データ・セット678を画素群発生器675に提供する。図3において、調節された画素データ・セット678は、文字A’〜O’の配列によって表される。画素群発生器675は、調節された画素データ・セット678を第1の画素データ群679および第2の画素データ群680に分離する。一実施の形態においては、画素群発生器675は、「スムーズ画素」処理技術などの公知の画素処理技術に従って動作する。スムーズ画素処理に従って、入力画素データ・セット、例えば、620が第1および第2の画素データ群に分離される。第1および第2の画素データ群は、表示されたマトリックスからなる第1および第2の画素群を提供する。
【0027】
しかしながら、従来の画素処理技術は、画素フィルタ320を含んでおらず、従来のシステムは、調節された画素データ・セット678を画素発生器675に提供するものでもない。従って、本発明に従ったマトリックス450からなる第1の画素群410および第2の画素群430は、従来のスムーズ画素処理技術に対して大きな利点を提供する。
【0028】
図4は、本発明の実施の形態に従った、画素データ・セット620、調節された画素データ・セット678、画素データ群679および680、画素群410および430、および画素マトリックス450の間の関係を表している。図4に示すように、第1の画素群410は、隣接する画素412の行hおよび列cからなる。便宜的に、単一のインジケータ412によって群410の個々の画素を示す。第2の画素群430は、隣接する画素432の行hおよび列cからなる。
【0029】
画素群410および430は、例えば、距離dの分互いに変位して表示されるようにディスプレイ画面499に投影される。本発明の一実施の形態においては、画素群410および430は、ディスプレイ画面499の表面の平面の概ねx方向に互いに変位している。
【0030】
本発明の一実施の形態においては、第2の画素群430は、第1の画素群410から1個の画素の高さの約半分の距離分第1の画素群410から離れて表示される。結果として得られる画素マトリックス450は、従って、重なった画素を含む。換言すれば、第1の画素群410からの個々の画素は、第2の画素群430からの個々の画素と重なる。
【0031】
本発明の一実施の形態においては、SLM素子502は、ダイヤモンド形の素子からなる。従って、マトリックス450の各画素は、概ねダイヤモン形の画素(例えば、図4に示されている)からなる。しかしながら、他の画素の形、例えば、四角形も知られており、他の画素の形が適した本発明のアプリケーションも存在する。
【0032】
図3は、画素群410および430のために間隔を提供する従来の手段の1つの例である。光学素子210は、画素セット410および430の1つを第1の角度φで画面499に反射する。光学素子210は次に他の画素セットを第2の角度φで画面499に反射する。この技術では、マトリックス450の有する表示される画素の数がSLMデバイス500上に利用可能な素子502の数よりも多くなるという利点が得られる。本発明の一実施の形態においては、マトリックス450の画素の数は、SLMデバイス500の利用可能なマイクロミラー502の数の約2倍である。
【0033】
しかしながら、上述した技術は、重なった画素を生み出す。重なった画素の各々からの光は組み合わせられる。従って、所与の画素の表示輝度は、画素データ・セット620において提供される輝度値620に対応しない場合がある。重なった画素の表示輝度は、意図した輝度よりも大きい場合がある。また、重なった画素の表示輝度は、意図した輝度よりも小さい場合がある。
【0034】
本発明の実施の形態によれば、画素データ・セット620は、画素フィルタ320に提供される。フィルタ320は、変更された画素データ・セット678を提供する。画素データ群679、680は、変更された画素データ・セット678から形成される。画素データ群679および680の画素の画素値は、画素群410、430をそれぞれ発生するために使用される。表示後の組み合わされた画素群410、430は、マトリックス450からなる。
【0035】
本発明の例示的な実施の形態によれば、画素フィルタ320は、以下のダイアグラムによって表される調節された例示的なデータ・セット678を提供する。
【0036】
【表1】

【0037】
第1の画素データ群679は、A’、C’、E’、G’、I’、K’、M’、O’のラベルのついた画素データからなる。第2の画素データ群680は、B’、D’、F’,H’、J’、L’、N’のラベルのついた画素からなる。画素群410および430は、画素データ群679および680にそれぞれ基づいて作成される。マトリックス410は、第1の画素群410および第2の画素群430からなる。
【0038】
マトリックス450の図から明らかなように、第1の画素群410からの画素は、少なくとも部分的に画素群430の画素に重なっており、逆もまた同じである。例えば、第1の画素群410の画素の位置は、第2の画素群430からのB、F、L、およびH画素の位置と重なっている。この重なりにより、マトリックス410によって表される画像に強度に歪みが生ずる。
【0039】
本発明の実施の形態によれば、重なりによって生ずる画素強度の歪みは、図3、図5、および図7によって示される画像補正(image enhancing)フィルタ構成320によって低減される。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態に係る画素フィルタ320の実施の形態を示している。画素フィルタ320は、少なくとも1つの二次元フィルタを含み、この二次元フィルタは、以下に示す配列hに従って画素データ・セット620の各画素に作用する。
【0041】
【表2】

【0042】
βは、強度の歪みを除去しようとする画素データ・セット620の画素に係るスケーリング・ファクタであり、
αは、強度の歪みを除去しようとする画素データ・セット620の画素に重なる各画素のためのスケーリング・ファクタである。
【0043】
より具体的には、フィルタ320は、マトリックス450における各画素に重なる画素の強度寄与を補償するのに十分な量だけ、データ・セット620の各画素の強度値Iを調節する。例えば、図4において、画素データ・セット620の画素Gの強度(I)は、量(β)によってスケーリングされ、表示されたマトリックス450における重なった画素B(I)、F(I)、L(I)、およびH(I)によって生ずる強度の歪みが低減される。本発明の一実施の形態においては、調節された画素G’は、以下に示した関係に従った調節された強度値IG’を有する。
【0044】
【数1】

【0045】
ここで、
βは、強度の歪みを除去しようとする画素Gに係るスケーリング・ファクタであり、
αは、画素Gの強度に寄与する重なった画素に係るスケーリング・ファクタである。
【0046】
本発明の実施の形態によれば、βとαとの間の関係は、β=1+4αによって与えられる。この関係は、単位DC利得(unity DC gain)を提供する。しかしながら、本発明はこの点に限定されるものではない。本発明の一実施の形態においては、αは、ほぼ+1/8であり、βは、ほぼ3/2である。これらの例示的なスケーリング・ファクタを選択することは、単位DC利得を提供するものであり、本発明実施の形態においては、歪みを補償する場合もある。
【0047】
上述した例によれば、例示的なデータ・セット620のための画素データ、さらに、調節されたデータ・セット678は、以下のように表される。
【0048】
【表3】

【0049】
図5は、図3に示されたフィルタ320a、320b、および320cのような3つのうちの1つを表す例示的なフィルタ構成320を示すブロック図である。フィルタ320は、上述した等式1に記載された関係を実施し、コンポーネント・ビデオ信号620の赤色成分、緑色成分、および青色成分のそれぞれにおける画素のために上述した等式1の関係を実施する。便宜的に、1つのフィルタ320の動作を例示的な画素Gに関連して説明する。図4に示すような重なった画素群410および430は本明細書において、説明の目的で例として参照される。しかしながら、入力される画素セット620からなる画素の各々が重なった画素によって生ずる強度歪みを同様に処理して除去するのに適していることが理解できよう。
【0050】
図5を参照すると、本発明の実施の形態に係る画素フィルタ320(645)が示されている。画素フィルタ320は遅延回路646を含む。遅延回路646は、画素データ・セット620の画素データを受信する。遅延回路646は、受信した画素データを遅延させる複数の画素のための画素データを概ね同時に提供するために受信した画素データを遅延させる。図5に示された例においては、遅延回路646は、(マトリックス450において例示的な画素Gに重なった)画素H、L、F、およびBのための画素データを加算器648に提供する。同時に、遅延回路646は、例示的な画素Gのためのデータを第2のスケーラ652に提供する。加算器648は、画素H、L、F、およびBのための画素値の合計を表す出力を第1のスケーラ651に提供する。第1のスケーラ651は、スケーリング・ファクタαをその入力に適用し、スケーリングされた出力を提供する。第2のスケーラ652は、スケーリング・ファクタβをその入力に適用し、スケーリングされた出力を提供する。スケーリングされたスケーラ651および652の出力は、減算器653によって組み合わされる。減算器653の差出力は、例示的な画素Gのための調節された値G’を表す。本発明の一実施の形態によれば、減算器653の差出力は、オプションとしてリミッタに提供される。この場合、リミッタ654によって提供される連続的な出力値は、調節された画素データ・セット678からなる。
【0051】
本発明の一実施の形態によれば、第1のスケーラ651のためのスケーリング・ファクタは、第1の調節器655によって提供される調節ファクタXによって調節可能である。本発明の一実施の形態によれば、第2のスケーラ652のためのスケーリング・ファクタは、第2の調節器657によって提供される調節ファクタYによって調節可能である。
【0052】
図6は、調節可能なスケーリング・ファクタを含む画素フィルタ320の実施の形態を実施する画素フィルタ制御回路700を示している。画素制御回路700は、ルックアップ・テーブル150を含む。ルックアップ・テーブル150は、X154およびY156のために、複数の選択可能なXYのペアのファクタを格納する。テーブルのXYのペアの各々は、テーブル150のフィルタ制御セッティング152の1つに対応する。図6に示す例においては、8つの想定可能なフィルタ制御設定、例えば、0〜7が与えられている。スケーラ調節ファクタXおよびYを選択するために、8つの制御設定の1つを表すフィルタ制御信号がテーブル150のフィルタ制御入力688に与えられる。入力688によって選択されるフィルタ制御設定に対応するXY値のペアは、第1および第2の調節器655および657に対して調節ファクタXおよびYを提供する。このように、ルックアップ・テーブル150は、スケーラ651および652に対して調節可能なスケーリング・ファクタを提供する。
【0053】
本発明の一実施の形態においては、テーブル150のXおよびYの値は、スケーリング・ファクタαとβとの所与の関係を維持すると共に、スケーリング・ファクタαおよびβの調節を可能にする。本発明の一実施の形態においては、αおよびβの間の所与の関係は、以下によって与えられる単位利得の関係である。
β=1+α
【0054】
図7は、図6に示したフィルタの一実施の形態をより詳細に示した図である。フルライン遅延レジスタ803および805に画素データ・セット620を表すビデオ信号が提供される。ライン遅延レジスタ803および805は、本発明の一実施の形態に従って、表示されたビデオのライン全体の分だけビデオ信号を遅延させる。この例のため、ライン遅延レジスタ803および805の遅延は、以下の例によって示される原理に従って選択される。画素Mのためのデータが、例えば、入力620に与えられると、ライン遅延レジスタ805の出力はHとなり、ライン遅延レジスタ803の出力はCとなる。図7に示すように、遅延レジスタ805、803の出力および当初のビデオ入力信号、例えば、Mは、遅延レジスタ807、809、および800の第二のバンクにそれぞれ結合される。遅延レジスタ803および800の出力は、加算器812によって加算される。加算器812の出力は、加算器823の第1の入力に提供される。
【0055】
加算器823に対する第2の入力は、以下のように提供される。遅延要素809の出力は、遅延要素811に与えられる。遅延要素811の出力は、加算器813の1つの入力に提供される。加算器813に対する他の入力は、遅延要素807の出力によって提供される。加算器813の合計出力は、加算器823の第2の入力に結合される。
【0056】
上述した例によれば、H+L+B+Fの合計が与えられる。画素H、L、B、およびFは、図1のマトリックス450の画素Gに重なる画素である。この合計は、画素Gに重なる画素の各々のために画素の強度値の合計を表す。この合計は、次に、スケーリング・ファクタαによってスケーリングされる。本発明の一実施の形態においては、スケーリングは、以下のように行われる。H+L+B+Fの合計が乗算器814に提供される。乗算器814は、乗算器入力655に示された第1の乗算器Xに従って合計H+L+B+Fを乗算する。乗算器814の出力は、除算器651に提供される。図7に示された実施の形態においては、除算器651は、乗算器814の出力を32で除算する。従って、加算器823からの合計(H+L+B+H)の出力は、x/32のファクタによってスケーリングされる。32は定数であり、x/32は、スケーリング・ファクタαからなる。例えば、図7において、x=4である場合、α=4/32または1/8である。従って、上述した例における画素のスケーリング後の合計は、(1/8)(H+L+B+F)となる。
【0057】
同様に、乗算器804にデータ値Gを提供することによって第2のスケーリング・ファクタβが画素データ値Gに適用される。乗算器804の出力は、1/8除算器652に提供される。従って、Gはスケーリング・ファクタβからなるy/8のファクタによってスケーリングされる。減算器817は、スケーリング後の画素の強度データ値β(G)とスケーリング後の重なった画素の各強度値の合計、即ち、(α)(H+L+B+F)との間の差を表す出力を提供する。
【0058】
本発明の一実施の形態においては、減算器817の出力は、リミッタ654に提供される。リミッタ654は、画素強度値のレンジの中で減算器817によって提供される差の値を維持する。本発明の一実施の形態においては、様々な追加の遅延レジスタ、例えば、819が図7のフィルタ回路に設けられ、回路の時間修正を可能とする。
【0059】
当業者であれば、単位利得の関係の他にも、βとαとの間の様々な他の関係を想定することが可能であることが理解できるであろう。テーブル150は、様々な関係を実施するのに適している。テーブル150におけるxyのペアの適切な値を置き換えることによって他の関係も容易に得ることができることが分かるであろう。表におけるxとyのペアの全ての値で、βとαとの間の特定の関係が維持されるように、上記ペアはカスタマイズ可能であることが理解できるであろう。
【0060】
本発明の一実施の形態によれば、ルックアップ・テーブル150は、メモリ(図示せず)、例えば、半導体メモリにおいて実施することができる。この場合、メモリは、xおよびyの値を格納する。メモリは、図7のフィルタ645の入力x(655で示す)およびy(657で示す)にそれぞれ結合された出力xおよび出力yを含む。8つのxとyのペアを含むルックアップ・テーブルの実施の形態においては、αの値が0〜7/32の1/32の単位で増加するようにxを選択可能である。同じテーブルでは、βの値が1〜15/8の1/8の単位で増加するようにyを選択可能である。
【0061】
当業者であれば、上述したフィルタがソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアの様々な組み合わせで実施可能であることが理解できるであろう。本発明の一実施の形態によれば、ルックアップ・テーブルは、電子メモリ内に格納される。例えば、データ・セットは、バス・レジスタ、RAM、または、DLPシステム・マイクロプロセッサに関連する他のデータ記憶装置に格納される。なお、本発明は、メモリのタイプに関して限定されるものではなく、このような値を格納するのに他の適した方法が存在する。本発明の一実施の形態においては、フィルタ制御値は、DLP表示システムに対するユーザが操作可能なインターフェースを介してユーザによって選択可能である。本発明の別の実施の形態においては、フィルタ制御値は、DLPシステムを制御するために設けられたシステム・マイクロプロセッサ(図示せず)によって自動的に調節される。
【0062】
さらに、図5および図7は、本発明に係るフィルタの実施の形態を表すが、当業者であれば、本発明は特定のコンポーネントの構成に限定されるものではないことが理解できるであろう。例えば、本発明を実施するために、他のフィルタ・アーキテクチャも想定可能である。即ち、他のフィルタ・アーキテクチャは、画素値に影響を与え、画素強度を調節して、重なった画素によって生ずる強度の歪みを少なくとも部分的に補償する。さらに、本発明は、多くの実施の形態でβ=1+4αを選択することが有益であるが、この点に関し、本発明は、このような値に限定されるものではない。βおよびαの値は、本発明の様々な実施の形態に係る他の値、関係を有するように選択可能である。

【0063】
ダイナミック・レンジの制限に対する改良された応答
上述した画素のフィルタリングおよび処理の技術は、特定のタイプの画素処理、例えば、スムーズ画素処理を介して失われた元のピクチャのシャープネス(鮮明度)を回復する役割を果たすものである。しかしながら、使用するフィルタリング技術に係らず、画素輝度レベルにおける一時的なピーク(transient peaks)が信号パスのダイナミック・レンジを超えることがある。ダイナミック・レンジ・リミッタは、一時的な輝度レベルをクリッピングするために使用されることが多い。即ち、ダイナミック・レンジ・リミッタは、システムにおけるディスプレイ装置のダイナミック・レンジ能力を超える画素の輝度値を減少させる。クリッピング量は、画素輝度値および信号パスのダイナミック・レンジの制限との間の差に基づく。クリッピングの結果として、表示されたピクチャのウォッシュアウト(washout)が起こる可能性がある。
【0064】
このコンセプトを示すため、以下の表4に例示的な画素輝度値のセットが示されている。この例では、零は黒を表し、50は、グレイを表し、100は最大値のホワイトを表す。従って、例示的なピクチャでは、グレイの背景(50)の上に単一のホワイトの画素(100)が存在する。
【0065】
【表4】

表4 入力信号例
【0066】
図3を参照して説明したように、例示的なフィルタは、フィルタ320a、320b、320cを含む。各フィルタは、二次元フィルタである。各フィルタは、各画像の画素の以下に定義するアレイhとの畳み込みを行う二次元フィルタである。
【0067】
【表5】

【0068】
βは、強度の歪みを除去しようとする画素に係るスケーリング・ファクタであり、
αは、歪みに寄与する対応する隣接する各画素のためのスケーリング・ファクタである。
【0069】
この例では、図3および図6のフィルタは、表6に示す例示的な値からなる。
【0070】
【表6】

表6
【0071】
表7は、図3および図6のフィルタによって鮮明化が行われた後にディスプレイに対して供給されるであろう画素輝度値を示している。
【0072】
【表7】

表7
【0073】
表7から分かるように、フィルタリングにより、ホワイト(白)画素は「白よりも白く(whiter than white)なる。隣接する画素は、50のグレイの背景の値よりも若干暗くなる。125の画素値に対応するのに十分なダイナミック・レンジを有するシステムにおいて用いられる図3および図5のフィルタの実施の形態では、フィルタは、意図した鮮明化効果を生み出すであろう。しかしながら1つの例示的なアプリケーションでは、画素値のダイナミック・レンジは最大値、例えば、100に制限される。最大値が100である場合のフィルタの出力は、表8に示されている。
【0074】
【表8】

表8
【0075】
表8に示された輝度値は、ディスプレイに与えられると、「ウォッシュアウトされた(washed out)」ホワイト・ドットの外観を生み出すであろう。従って、本発明の実施の形態は、このようなダイナミック・レンジの制限による影響を補償する方法および装置を含む。さらに、本発明は、ダイナミック・レンジの制限による影響を適用的に補償するという利点を提供する。このように、補償の量は、画像における所与の画素の回りにあるか、隣接する画素がクリッピングされる予想量に基づく。本発明の実施の形態においては、クリッピング量が評価され、予想されたクリッピング量に従って画素値を調節することによって補償が行われる。このように、本発明は、表示された画像の所与の領域に最適な分を超えて補償が行われるのを回避する。本発明の実施の形態では、クリッピングを減少させるのに十分な量だけ画素を調節し、全体の輝度は維持される。これを達成するために、本発明の実施の形態では、システムのダイナミック・レンジの制限を超えると予想された画素の値を減少する。同時に、ダイナミック・レンジの制限を超えると予想されない近傍の画素の値が増加する。
【0076】
図8は、本発明の実施の形態に従ったアダプティブ(適応)フィルタ800を示している。スロットル回路825は、801において連続的な画素の輝度の値を受信する。この連続的な値は、さらに、輝度処理のために画素輝度プロセッサ802に提供される。輝度が処理された画素は、画素輝度プロセッサ802からスロットル回路825に提供される。スロットル回路825は、入力801において、輝度処理プロセッサ802とシステム・ディスプレイとの間の信号パスのダイナミック・レンジ制限に基づいて各画素を適用的に処理する(例示的なディスプレイが図3の499に示されている)。スロットル回路825は、スロットル信号807を提供する。スロットル信号807は、輝度プロセッサ802の出力に適用され、信号パスのダイナミック・レンジの制限を超える画素の輝度を減少させ、表示される画素の全体的な輝度は維持される。
【0077】
本発明の一実施の形態においては、画素輝度プロセッサ802は、フィルタである。本発明の一実施の形態においては、画素輝度プロセッサ802は、上述した、さらに、図2〜図7に示したフィルタのいずれであってもよい。本発明の一実施の形態においては、画素輝度プロセッサ802は、ピーキング利得調節部805を含む。
【0078】
図1に示された例のようなSLMシステムは、画素輝度データを様々な目的で処理する。1つの理由は、図3の410に示されているもののようなスタガード画素(staggered pixel)ディスプレイにおける重なった画素による輝度の変化のために画像を補償するためである。本発明の他の実施の形態では、画素輝度は、ガンマ、または逆ガンマ関数に従って補償される。本発明の他の実施の形態では、所与の原色のために特に大きな強度の主成分を有する光源のために画素輝度が補償される。本発明の一実施の形態においては、画素プロセッサ802は、図5に示したタイプのピーキング・フィルタである。本発明の他の実施の形態では、鮮明化および他の画像および画素輝度変換機能を有する画像プロセッサを含む。特に、本発明は、信号パスのダイナミック・レンジを超えた画素輝度値に一時的なピークを生じさせる可能性のあるタイプの高周波強調フィルタリングを実行するどのようなプロセッサ802やフィルタを用いた使用にも適している。
【0079】
画素輝度処理のタイプに係らず、画素プロセッサ802は、入力画素データを処理し、輝度処理された出力803を提供する。処理された出力803は、スケーラ804によってスケーリング可能である。図8に示す実施の形態によれば、スケーラ804のスケーリングされた出力は、加算器818によって801で入力信号に加えられる。加算器818の出力は、リミッタ815に提供される。上述したように、リミッタ815は、ディスプレイ装置のために適切な輝度レンジを超える画素値を制限する。画素データが処理され、制限された後、画素データは、データ・フォーマット・ロジックによってフォーマットされ、ディスプレイを用いて表示される(例えば、1つの例示的なディスプレイとして、図3の499を参照)。
【0080】
本発明の一実施の形態によれば、フィルタ800は、スロットル回路825およびスケーラ804を含む。スロットル回路825の入力862は、加算器808を介して画素プロセッサ802に結合される。プロセッサ入力802およびプロセッサ出力803は、加算器808の入力に結合される。スロットル信号807は、スロットル回路825の出力で提供される。スロットル信号807は、スケーラ804のための可変のスケーリング・ファクタとして機能する。スロットル回路825は、加算器808を介して、入力された画素データ802および処理された画素データ803の両方を受信する。801での所与の入力画素のために、スロットル回路825は、入力画素を含む隣接画素がリミッタ815のレンジを超えた輝度値を有する可能性があるかどうかを判定する。
【0081】
例えば、図4Aおよび図4Bにおいて、第1の画素セットおよび第2の画素セットがそれぞれ示されている。第1の画素セットおよび第2の画素セットの両方を含む表示された画素マトリックスは、図4Cに示されている。第1の画素セットは、例示的な所与の画素Gを含み、入力画素データの画素Gのために、第2の画素H、L、B、およびFは、表示された画素マトリックスにおいて画素Gに隣接する。
【0082】
次に、図8を参照し、例示的な画素Gについて説明すると、スロットル回路825は、ピーキングされたビデオ信号862からなるピーク値に基づいてリミッタ815によって画素G、H、L、B、およびFの少なくとも1つに適用されるクリッピング量を推定する。スロットル回路825は、入力862で画素G、H、L、B、およびFの輝度値がダイナミック・レンジの制限を超える量に基づいて出力信号を提供する。さらに、スロットル回路825は、スロットル信号出力を提供し、このスロットル信号出力は、ピーク・フィルタ802の出力で、ダイナミック・レンジ制限を超える輝度値の画素の量に基づいて対応する画素値を調節する。このように、入力801の入力信号の画素において、ピーキングが選択的に適用される。選択は、入力信号801によって表される画像の一部からなる画素の輝度値に基づく。
【0083】
本発明の代替的な実施の形態は、1つの画素セットのみを用いてデータのフレームを表示するシステムにおける使用に特に適している。換言すれば、本発明の実施の形態は、スムーズ画素またはスタガード画素技術を使用しないシステムにおける使用に適している。この場合、隣接画素は、所与の画素に隣り合う画素からなる。本発明の一実施の形態においては、スロットル回路825がプロセッサ802の処理により所与の画素のクリッピングまたは隣接画素のクリッピングが生じると判定した場合、スロットル回路825は、スロットル信号807を調節する。スロットル信号807の調節量は、所与の画素または隣接画素に適用されるクリッピング量に基づく。本発明の一実施の形態においては、調節量は、概ねダイナミック・レンジ・リミッタのダイナミック・レンジの制限内の値に隣接画素の輝度値を制限するのに十分な量である。
【0084】
スケーラ804は、スロットル信号807に基づいて画素プロセッサ802の出力803で画素の輝度値のスケーリングを行う。本発明の適用的な実施の形態においては、スロットル信号807は、画素毎に隣接画素の輝度値のスケーリングを行う。従って、各画素は、対応する隣接画素に従って処理される。よって、表示された画像の各部分のために最適なスケーリングに基づいて、異なるスケーリング・ファクタが適用される。このように、スロットル回路800は、適用的に鮮明化レベルを調節し、ダイナミック・レンジの制限に対応する。
【0085】
本発明の一実施の形態においては、プロセッサ802は、ピーキング・フィルタを含む。ピーキング・フィルタ出力803は、スケーラ804に提供される。スケーラ804は、スロットル信号807に従ってピーキングされた出力値のスケーリングを行う。スケーラ804の出力はリミッタ815に提供される。
【0086】
図9は、図8のスロットル回路をより詳細に示している。処理されるべき連続的な画素が本発明の一実施の形態に係るフィルタ構成900の入力に提供される。図3の320に関連して説明されるフィルタを使用する実施の形態においては、フィルタ903は、各画像の連続的な画素と以下に定義されるアレイhとの畳み込みを行う二次元フィルタである。
【0087】
【表9】

【0088】
図9に示された例では、例示的なアレイの値は以下の通りである。
【0089】
【表10】

【0090】
例示した各値は、例示的、説明の目的のためのものにすぎないことを理解することが重要である。本発明の様々な実施の形態のために、上述したように図2〜図7を参照して様々な範囲の値を想定し、決定することが可能である。図9において示された実施の形態においては、フィルタ903のために利得制御部905が設けられる。本発明の実施の形態においては、利得制御部905が図5および図6に例示された利得制御部と同様に動作する場合がある。
【0091】
利得制御部905の出力は、スケーラ904に提供される。スケーラ904は、スロットル回路925によって提供されるスロットル信号907に従って、利得制御部905の出力のスケーリングを行う。本発明の一実施の形態においては、スケーラ904の出力は、入力801で結合器、例えば、加算器918によって結合される。加算器918の出力は、リミッタ654に提供される。リミッタ654は、加算器918の出力をディスプレイのためのダイナミック・レンジ内に出力画素の輝度を調節するのに十分な量だけクリッピングする。
【0092】
本発明の代替的な実施の形態においては、図8のプロセッサ802は、図9の903に示す二次元ハイパス・アレイの形態で実施される。本発明の一実施の形態においては、ハイパス・アレイ903の出力は、乗算器905に提供される。本発明の一実施の形態によれば、ハイパス・アレイ903の出力は、ピーキング信号である。ピーキング信号は、801でビデオ信号入力を「ピークにする(ピーキングする)」ために使用される。乗算器905は、「ピーキング利得」をハイパス・アレイ903の出力に提供するために、ハイパス・アレイ903出力の振幅、即ち、ピーキング信号を制御レジスタ921に格納された値に従って調節する。本発明の一実施の形態においては、ピーキング利得は、表示されるビデオ画像の知覚される品質に基づいて入力ビデオ信号の最適なピーキングを得るために、例えば、技術者によって調節可能であり、別の実施の形態においては、視聴者によって調節可能である。乗算器905の出力は、スケーラ904および加算器975に提供される。スケーラ904は、ピーキング信号を加算器918に結合する。加算器918は、ピーキング信号を入力ビデオ信号801に結合する。入力信号801は、さらに、加算器975に提供される。加算器975の出力は、ピーキングされたビデオ信号906である。ピーキングされたビデオ信号は、スロットル回路925に提供される。本発明の実施の形態によれば、スロットル回路925は、絶対値回路951、コアリング回路953、さらに、フィルタ955を含む。スケーラ904と共に、スロットル回路925は、本発明の実施の形態に従ったビデオ信号のピーキングを行う回路を構成する。
【0093】
本発明の一実施の形態によれば、スロットル回路925は、例えば、分数乗算(fractional multiplying)によって、乗算器905からのピーキング信号出力のスケーリングを行うことにより、ピーキング信号を調節する。入力ビデオ信号801に適用されるピーキングの量は、ピーキング信号に基づく。本発明の一実施の形態においては、ピーキング信号の利得は、レジスタ915に格納された値から派生する。本発明の一実施の形態においては、利得は可変であり、ピーキング信号のために、零利得および単位利得との間の利得を提供する。
【0094】
次に、スロットル回路925がフィルタ903のピーキング信号出力のために単位利得を提供する場合について説明する。ハイパス・アレイ903の出力は、レジスタ921によって提供される値に従って回路905によって調節される。調節されたハイパス・アレイ出力は、乗算器904によってスケーリングされ、乗算器904のスケーリングされた出力は、加算器918によって入力801で信号に加算される。加算器918は、合計を出力信号919としてリミッタ654に提供する。リミッタ654は、例えば、クリッピングによって、出力信号919の値を制限することにより、この値が後続する信号パス、例えば、リミッタ出力とディスプレイの間の信号パスのダイナミック・レンジの制限内に概ね収まるようにする。
【0095】
スロットル回路925のスロットル信号907出力が全ての状態において、1(unity)であるならば、このシステムは、本願の図1〜図7に示されたフィルタと同じように動作するであろう。しかしながら、本発明の様々な実施の形態によれば、スロットル信号907は可変である。本発明の一実施の形態においては、スロットル信号907は、零と1との間で可変である。本発明の別の実施の形態においては、スロットル信号907のための別の調節制限が提供される。本発明の他の実施の形態においては、零の値は完全にピーキングを妨げ、1の値は、スロットル無しでフィルタ903によってピーキングが決定されることを可能にする。本発明の実施の形態によれば、スロットル信号907は、スロットル回路925に応じて適用的に制御される。
【0096】
スロットル回路925は、ビデオ入力信号801によって表されるビデオ画像の部分に適用されるクリッピング量を評価する。本発明の一実施の形態によれば、スロットル回路925は、コアリング回路953の入力に結合される絶対値回路951を含む。コアリング回路953の出力は、拡散回路(spreading circuit)955に提供される。
【0097】
本発明の一実施の形態においては、ピーキングされたビデオ信号906は絶対値回路951に提供される。絶対値回路951は、ピーキングされたビデオ信号906の連続画素の絶対値を判定する。実際には、絶対値回路951は、ピーキングされたビデオ信号906の正負の値を、入力画素値のレンジの中心に関し、重ね合わせる。
【0098】
絶対値回路951の出力は、コアリング回路953に結合される。コアリング回路953は、入力において、最も大きな正であり、最も大きな負であるクリッピングされていない画素値に対応する閾値を提供する。本発明の一実施の形態においては、コアリング回路953は、入力において画素に対して非線形な関数を適用し、クリッピング閾値に関して画素輝度を評価する。
【0099】
コアリング回路953の出力は、拡散回路955に提供される。本発明の一実施の形態においては、拡散回路955は、コアリング回路953によって提供される連続的な画素を受け取る二次元フィルタからなる。拡散回路955は、アレイIによって表される所与の画素およびその隣接画素からなるビデオ信号の部分を評価する。拡散回路955に対する各々の連続入力値に対し、対応する拡散クリッピング推定出力が拡散回路955の出力に提供される。所与の入力に対応する拡散クリッピング推定値は、以下のように決定される。各所与の連続入力値について、対応する「最大(max)」画素が識別される。この最大画素値は、アレイIにおける最大の値である。
【0100】
拡散回路955は、拡散クリッピング推定値xを提供する。Xは、リミッタ654によって強制されるダイナミック・レンジ内に最大画素の輝度値を収めるために必要な量だけ最大画素の輝度を調節するスケーラである。スロットル信号907は、拡散クリッピング推定値に基づく。
【0101】
本発明の一実施の形態によれば、拡散回路955の出力は、乗算器957によって調節される利得である。本発明の一実施の形態によれば、乗算器957の増倍率は、制御レジスタ915によって提供される。本発明の一実施の形態によれば、制御レジスタ915は、拡散回路955の出力に適用される値(ここでは、スロットル利得として参照される)を格納し、スロットル信号907の利得を調節する。本発明の一実施の形態によれば、乗算器957の出力は、リミッタ958によって制限され、反転器959によって反転される。従って、一実施の形態によれば、極性およびレンジ設定回路がスロットル信号907のために提供される。
【0102】
上述した回路は、制限が発生されると予測される場所の近傍でピーキングの量を減少させ、ホワイトまたはブラックの細部のウォッシュアウトを阻止する。本発明の様々な実施の形態によれば、回路903および回路955は、複数のライン遅延を用いることによって実施される。例えば、回路903および回路955のために、本発明の実施の形態を図7に示すような回路によって提案されるようなライン遅延構成が用いられる。本発明の一実施の形態によれば、ハイパス・アレイ903によって計算されるラインの一ライン上、および一ライン下の予測した制限を行うために回路903および回路955が実施されるようにライン遅延の数を選択する。例えば、図9に示す本発明の実施の形態を実施するために、4つのライン遅延が利用される。2つのライン遅延は、ハイパス・アレイ903の3つの垂直に配列された画素に対する同時アクセスを提供する。同様に図9に示す拡散回路955の一実施の形態は、2つの追加のライン遅延を用いて実施され、上述した計算を可能にする。
【0103】
図9に示す回路の一実施の形態は、2つのライン遅延を有することにより、本実施の形態のためのライン遅延の合計量を節約する。本実施の形態は、拡散回路955におけるXによって表されるハイパス・アレイ903を近似計算することによって実施される。本発明の実施の形態によれば、拡散回路955のXを実施するハイパス・アレイに使用される近似計算は表11に示されている。近似計算は、2つのアレイを含む。2つのアレイの例は、表11に示されている。
【0104】
【表11】

表11
【0105】
表11の近似計算を使用することにより、零係数に関連する遅延が必要ではなくなる。これにより、本発明の一実施の形態では、良好な性能を提供することが判明している。
【0106】
本発明の様々な実施の形態によれば、本発明の他の実施の形態、さらなる実施の形態も、その基本的な範囲を逸脱することなく、考案することができ、その範囲は、付随する請求の範囲によって決定されるものである。
【符号の説明】
【0107】
100 ディスプレイ・システム
499 ディスプレイ画面
500 空間光変調(SLM)アレイ
654,815 ダイナミック・レンジ・リミッタ
802,903 画素輝度プロセッサ
804,904 スケーラ
805 遅延レジスタ
825,925 スロットル回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイナミックレンジを有するディスプレイシステム(100)であって、
第1及び第2の画素グループ(410,430)に分割される画素のマトリックス(450)を有する画像を表示するために配置された光変調アレイ(500)を有するディスプレイ画面(499)であって、前記第1及び第2の画素グループ(410,430)における画素が互いに対応し、対応する画素がオーバーラップし且つずれている、ディスプレイ画面と、
前記画素を、前記ディスプレイシステム(100)の前記ダイナミックレンジの範囲内に制限するダイナミックレンジリミッタ(654,815)と、
入力ビデオ信号(801)を受信し及び該入力ビデオ信号(801)を少なくとも1つのライン遅延レジスタ(805)を用いてフィルタして出力(803)を生成するように構成された画素輝度プロセッサ(802,903)と、
前記画素輝度プロセッサ(802)からの前記出力(803)を受信するように構成されたスロットル入力を有するスロットル回路(825,925)であって、可変スケールファクタであるスロットル信号(807)を生成するように構成されたスロットル回路(825,925)と、
を備え、
スケーラ(804,904)が前記スロットル信号(807)を及びさらに前記画素輝度プロセッサ(802)からの前記出力(803)を受信するように構成されており、該スケーラ(804,904)はさらに、前記スロットル信号(807)(807)を用いて前記画素輝度プロセッサ(802)からの前記出力(803)をスケーリングして、該スケーラ(804,904)の出力信号を生成するように構成されており、
前記ディスプレイシステム(100)は、前記スケーラ(804,904)からの前記出力信号を前記ダイナミックレンジリミッタ(654,815)へ送るように構成されている、前記ディスプレイシステム。
【請求項2】
前記画素輝度プロセッサ(802)からの前記出力(803)及び前記入力ビデオ信号(801)を受信するように構成された加算器(808)をさらに備えており、
該加算器(808)は前記スロットル回路(825,925)が受信する前記出力(803)を含むピーキングされたビデオ信号(862)を生成し、及び、該ピーキングされたビデオ信号(862)が前記及び第2の画素グループ(410,430)の組み合わせについての輝度値を含んでおり、
該画素グループ(410,430)における画素について、前記ピーキングされたビデオ信号(862)を、輝度値がダイナミックレンジの限界を超える量に基づいて減少させることで、前記スロットル回路(825,925)が前記スロットル信号(807)を生成する、請求項1のディスプレイシステム。
【請求項3】
前記入力ビデオ信号(801)及び前記スケーラ(804,904)からの前記出力信号を受信するように構成された別の加算器(818)をさらに備えており、
該加算器(818)は前記スケーラ(804,904)からの前記出力信号を前記入力ビデオ信号(801)に加算し、
該加算器(818)の別の加算出力(919)が、前記ダイナミックレンジリミッタ(654,815)への前記出力信号を含む、請求項2のディスプレイシステム。
【請求項4】
前記スロットル回路が、前記マトリックス(450)の連続する画素についての前記画素輝度プロセッサ(802)からの前記出力(803)を受信する2次元フィルタ(320)を持つ拡散回路(955)であって、所与の画素およびその隣接画素を有する前記出力の部分を評価し、及び、最大画素の輝度を、該最大画素の輝度値を前記ダイナミックレンジリミッタ(654,815)により強制されるダイナミックレンジ内にするために十分な量だけ調節する拡散回路を有し、前記ダイナミックレンジの限界を超えない前記連続する画素の前記最大画素に隣接する画素の輝度が増大する、請求項1のディスプレイシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−141643(P2012−141643A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90954(P2012−90954)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【分割の表示】特願2008−515674(P2008−515674)の分割
【原出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】