説明

空間容積の計測方法

【課題】 計測対象物の状態に応じて適切かつ正確な空間容積の計測を行う。
【解決手段】 レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意し、任意数の測定点に対して予備計測を行う(S3−3)。予備計測の結果に基づき、複数の測定モードの中から優位な測定モードを選定して本計測を行う(S3−5)。選定した測定モードにおける計測が実施できなかった場合には、段階的に計測所要時間を増加させて再計測を試み(S3−11)、計測所要時間が予め定めた上限値に達しても測定データが取得できなかった場合には、当該上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試み(S3−12)、計測試行回数が予め定めた上限値に達した場合には、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測に移行する(S3−9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間容積の計測方法に関するものであり、特に測定対象物の状態に応じて適切な計測を行うことが可能な空間容積の計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設工事では、空間にコンクリートを充填する作業を行う工事がある。例えば、トンネル工事における覆工コンクリート、場所打ちコンクリート杭、場所打ち擁壁等に関する工事である。
【0003】
これらの工事では、岩盤や土を掘削除去して構築した空間に、必要に応じて鉄筋や型枠を設置してコンクリートを流し込むことで地下空間に構造物を構築する。山岳トンネル工事を例にとって、その手順を説明する。山岳トンネル工事では、地山(岩盤)の掘削、一次支保(吹付コンクリート、ロックボルト、鋼製支保工等)、掘削面への防水シートの展張、型枠の設置、空間への覆工コンクリート打設という手順で工事を行う。この際、掘削面(防水シート面)に凹凸が生じるため、打設に必要なコンクリート量を事前に予測することが困難である。また、コンクリート打設中は、コンクリート構造物の品質を確保するため、残りの空間を適宜計測しながら必要なコンクリート量を予測して発注を行う。このようにコンクリート量を予測して発注することは、廃棄コンクリートを発生させないという点でも重要である。
【0004】
そこで、従来の建設工事では、スチールテープ、コンベックス、スタッフ、ロッド、水糸等の計測具を用いて、打設するコンクリート量を概算して予測していた。そして、概算量よりも少なめにコンクリートを発注し、工事の進捗状況を勘案しながら、不足分のコンクリートを追加発注することにより、廃棄コンクリートの発生量を抑えているのが現状である。
【0005】
このような不都合に対応するため、コンクリートを充填する空間容積を計測するための技術が種々提案されている。例えば、レーザ測距計を用いて空洞の立体的形状及び内容積を計測するための空洞計測装置が開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された空洞計測装置は、ロッドの先端にレーザ受光部を設けて、レーザ光を空洞の壁面に送出し、その反射光を受光するまでの時間差に基づいて壁面までの距離を算出する。そして、各深さ及び回動角度毎に算出した距離に基づいて、空洞の立体形状や内容積を算出する構成となっている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−30518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、レーザ測距計を用いて対象物までの距離を計測する場合、データのサンプリング結果から計測数値を算出する時間は、計測対象物の状態(照度、明度、乾湿、凹凸)によって変化することが知られている。ここで、計測対象物の状態が計測に適した条件であれば、短距離無線通信技術(例えば、Bluetooth(登録商標))を用いてデータ取得を行うと、0.3秒程度で演算結果が返ってくるが、計測対象物の状態が計測に適していないと、0.8秒程度を要することがある。このため、計測点毎に計測数値を算出するために必要な時間(以下、計測所要時間と記す)に差が生じてしまう。
【0008】
この際、一定の計測所要時間で制御を行おうとすると、次のような問題が生じる。すなわち、データの取得率を向上させるために測定点毎の計測所要時間を長く設定すると、全体の計測時間が増大する。また、データの取得率を向上させるために測定点毎の計測試行回数(サンプリング回数)を増加させた場合にも、全体の計測時間が増大する。また、計測時間の効率化を図るために測定点毎の計測所要時間を短く設定すると、データの取得率が低下する。
【0009】
計測対象物の状態が計測所要時間に与える影響は、特に乾湿条件に左右される。具体的には、計測対象物が湿潤状態の場合には、データの取得率を向上させるために計測所要時間を1.0秒あるいはそれ以上に設定する必要がある。また、計測試行回数(サンプリング回数)を増加させる必要もある。
このように、レーザ測距計を用いて正確な測定を行う場合には、計測対象物の状態に応じて計測所要時間や計測試行回数を変化させる必要がある。この点、上述した特許文献1に記載された技術は、計測対象物の状態について何ら考慮されていない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、計測対象物の状態に応じて適切かつ正確な測定を行うことが可能な空間容積の計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の空間容積の計測方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。
すなわち、本発明の空間容積の計測方法は、レーザ測距計を用いて空間容積を計測する方法であって、レーザ測距計を測定箇所に設置する工程と、レーザ照射位置を移動させながら複数の測定点に対して距離を測定する工程と、取得した測定データを演算装置に送信して空間容積を演算する工程とを有している。このレーザ測距計には、レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードが搭載されている。
【0012】
第1の発明は、計測対象物の状態が一定であるものの形状を計測する場合に適した計測方法であり、測定モードを選定して測定を行うようにしたものである。この第1の発明は、予めレーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、任意数の測定点に対して予備計測を行い、予備計測の結果に基づき、複数の測定モードの中から優位な測定モードを選定して本計測を行うことを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明は、概ね正確な形状を短時間で計測する場合に適した計測方法であり、測定モードを自動判別し、単一測定モード及び単一運転モードで計測を行うようにしたものである。この第2の発明は、予めレーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、任意数の測定点に対して複数の測定モードの中から最適な測定モードを選定して予備計測を行い、予備計測の結果に基づき優位な測定モードを選定して本計測を行うことを特徴とするものである。
【0014】
第3の発明は、データ取得率を向上させて、より正確な形状を計測する場合に適した方法であり、第1の発明及び第2の発明の計測手順に加えて、運転モードを可変として測定を行うようになっている。この第3の発明は、選定した測定モードにおける計測が実施できなかった場合には、段階的に計測所要時間を増加させて再計測を試み、計測所要時間が予め定めた上限値に達しても測定データが取得できなかった場合には、当該上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試み、計測試行回数が予め定めた上限値に達した場合には、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測に移行することを特徴とするものである。
なお、計測所要時間とは、レーザ測距計を用いて計測数値を算出するために必要とされる時間のことであり、計測対象物の状態に応じて変化する。また、計測試行回数とはデータサンプリングを試みる回数のことである。
【0015】
第4の発明は、全測定点に対して、測定モード及び運転モードを可変とすることにより、厳密な形状を計測する場合に適した計測方法である。この第4の発明は、レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、測定点毎に前記複数の測定モードの中から最適な測定モードを選定して計測を行い、選定した測定モードにおける計測が実施できなかった場合には、段階的に計測所要時間を増加させて再計測を試み、計測所要時間が予め定めた上限値に達しても測定データが取得できなかった場合には、当該上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試み、計測試行回数が予め定めた上限値に達した場合には、当該測定点における計測を中止して次の測定点における計測に移行することを特徴とするものである。
【0016】
第5の発明は、測定対象物が所定の規則に基づき大きく変化する場合に適する計測方法であり、いわゆるセミオート測定モードにより測定を行うようになっている。この第5の発明は、レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、測定箇所の状態に応じて測定箇所を複数に分割し、分割された測定箇所毎に最適な測定モードと、計測所要時間及び計測試行回数に関する運転モードとを選定して計測を行うことを特徴とするものである。
【0017】
第6の発明は、一般的な測定対象物とは極端に条件が異なった測定対象物に適する計測方法であり、いわゆるマニュアル測定モードにより測定を行うようになっている。この第6の発明は、レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、測定点毎に最適な測定モードと、計測所要時間及び計測試行回数に関する運転モードとを選定して計測を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空間容積の計測方法は、レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて設定された複数の測定モードの中から最適な測定モードを選定し、この最適な測定モードで測定を行うことにより、計測対象物の状態に応じて適切かつ正確な測定を行うことが可能となる。
【0019】
また、選定した測定モードにおける計測が実施できない測定点が存在する場合には、当該測定点における計測所要時間を段階的に増加させるとともに、計測試行回数が予め定めた上限値に達するまで再測定を行うことにより、さらに一層適切かつ正確な測定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る空間容積の計測方法の実施形態を説明する。
まず初めに、本発明の実施形態に係る空間容積の計測方法に用いる測定装置について説明する。
【0021】
<測定装置:第1の実施形態>
第1の実施形態に係る測定装置は、山岳トンネルにおいて覆工コンクリートの必要量を算出する場合に好適に用いるものである。図1は、第1の実施形態に係る測定装置を示す模式図である。
【0022】
第1の実施形態に係る測定装置は、レーザ測距計を支持するための支持装置と、支持装置に対してレーザ測距計を回動可能に取り付けるための回動装置と、測定データを取得して空間容積の演算処理を行うための演算装置と、を備えている。
すなわち、第1の実施形態に係る測定装置10は、図1に示すように、三脚11と、三脚11の上部に回動可能に取り付けられた回動テーブル12と、回動テーブル12上に載置されたレーザ測距計30と、レーザ測距計30との間で無線通信によりデータの送受信を行うとともに取得した測定データに基づいて空間容積の演算処理を行う携帯情報端末40とを備えている。
【0023】
三脚11は、レーザ測距計30を支持するための支持装置として機能する装置であって、一般的な測量に用いる三脚11を使用することができる。なお、支持装置として機能する装置は三脚11に限定されるものではなく、レーザ測距計30を支持できればどのような構造であってもよい。
【0024】
回動テーブル12は、支持装置に対してレーザ測距計30を回動可能に取り付けるための回動装置として機能するものである。この回動テーブル12は、トンネルの軸方向に対して略鉛直な平面に沿って回動可能となっている。また回動テーブル12には、外方へ向かって突出したハンドル13が取り付けられており、ハンドル13を操作することにより回動テーブル12をトンネルの軸方向に対して略鉛直な平面に沿って回動させることができる。なお、回動テーブル12は、直交する2軸方向にそれぞれ回動可能としてもよい。
【0025】
また、図1に示す例では、ハンドル13を手動操作することにより回動テーブル12を回動させる構成となっているが、ステッピングモータにより回動テーブル12を回動させる構成としてもよい。ステッピングモータを用いて回動テーブル12を回動させる構成とすることにより、測定操作が自動化して測定の手間を軽減することができるとともに、各測定点に関する正確な座標管理を行うことができる。
【0026】
レーザ測距計30は、計測対象物に対してレーザ光を発射し、計測対象物で反射されてきたレーザ光を受光し、レーザ光を発射してから受光するまでの時間を計測することにより、レーザ送受光部から計測対象物までの距離を測定するための装置である。このレーザ測距計30は、周知のものを用いることができる(他の実施形態において同様)。
【0027】
携帯情報端末40は、バッテリ駆動可能な小型のコンピュータで、CPU、ROM、RAM等を備えており、ROM等に格納されたアプリケーションプログラムに従ってCPU等が動作することにより、簡易な演算機能を発揮できるようになっている。また、携帯情報端末40は、データの記憶機能や通信機能を備えている。なお、通信手段は、irDAやBluetooth等の短距離無線通信技術を用いたものであってもよいし、有線通信によりデータの送受信を行うものであってもよい。この携帯情報端末40は、周知のものを用いることができる(他の実施形態において同様)。
【0028】
次に、図2を参照して、第1の実施形態に係る測定装置10を用いて空間容積を測定する方法の概略を説明する。図2は、第1の実施形態に係る測定装置10を用いたトンネル工事における空間容積の計測を説明する模式図である。
【0029】
第1の実施形態に係る測定装置10を用いてトンネル覆工コンクリート量を計測するには、トンネル掘削が終了した後に、回動テーブルがトンネルの軸方向に対して略鉛直な平面に沿って回動するようにして、測定装置10をトンネルの略中央部に設置する。
そして、ハンドルを操作して回動テーブルを所定角度ずつ回転させながらレーザ測距計によりトンネル断面50までの距離を測定する。なお、ステッピングモータを用いて回動テーブルを所定角度ずつ回転させながら計測を行ってもよい。ステッピングモータを用いて回動テーブルを回動させることにより、人為的な誤差を排除してより一層正確な計測を行うことができる。
そして、レーザ測距計と携帯情報端末との間で無線通信を行い、携帯情報端末に測定データを蓄積する。トンネルの掘削が進むと、例えば3m毎に上述した作業を繰り返して、計測すべきすべての範囲において計測を行う。
【0030】
トンネル工事では、掘削作業及び一次支保工に続いて、覆工コンクリートを流し込むために、防水シート及び型枠を設置する。この型枠設置等に要する時間を利用して、携帯情報端末に蓄積した測定データに基づき地山を掘削した空間容積を演算し、型枠により形成される空間容積を差し引いて必要な覆工コンクリート量を算出する。携帯情報端末における演算処理は、携帯情報端末に搭載されたアプリケーションソフトウェアの機能により行われる。また、携帯情報端末に蓄積した測定データをパーソナルコンピュータに取り込み、パーソナルコンピュータに搭載されたアプリケーションソフトウェアを用いて、携帯情報端末では行うことができない複雑な演算処理を行い、トンネル断面形状を可視的に出力する等の処理を行うこともできる(他の実施形態において同様)。
このように、第1の実施形態に係る測定装置10では、トンネル工事において必要となる覆工コンクリート量について適切かつ正確な測定を行うことができる。
【0031】
<測定装置:第2の実施形態>
第2の実施形態に係る測定装置は、場所打ち杭の施工時にコンクリートの必要量を算出する場合や、場所打ち擁壁の施工時にコンクリートの必要量を算出する場合に好適に用いられるものである。図3は、第2の実施形態に係る測定装置を示す模式図である。
【0032】
第2の実施形態に係る測定装置は、レーザ測距計を支持するための支持装置と、支持装置に対してレーザ測距計を回動可能に取り付けるための回動装置と、測定データを取得して空間容積の演算処理を行うための演算装置と、を備えている。
【0033】
すなわち、第2の実施形態に係る測定装置20は、図3に示すように、ネジ支柱21と、ネジ支柱21に回動可能に取り付けられた回動テーブル22と、回動テーブル22上に載置されたレーザ測距計30と、レーザ測距計30との間で無線通信によりデータの送受信を行うとともに取得した測定データに基づいて空間容積の演算処理を行う携帯情報端末40とを備えている。
【0034】
ネジ支柱21は、レーザ測距計30を支持するための支持装置として機能する装置であって、鉄筋の外周面に雄ネジ部を備えたネジ鉄筋を用いることができる。なお、ネジ支柱21の長さ及び直径やネジのピッチ等は、測定箇所の規模や状況、予定する測定精度等に応じて適宜変更して設定することができる。
【0035】
回動テーブル22は、支持装置に対してレーザ測距計30を回動可能に取り付けるための回動装置として機能するものである。この回動テーブル22は、ネジ支柱21に螺合する雌ネジ部(図示せず)を有しており、ネジ支柱21の軸方向に対して略鉛直な平面に沿って回動しながら、ネジ支柱21の軸方向に移動するようになっている。回動テーブル22の回動及び移動は、手動で行ってもよいし、ステッピングモータ等の駆動機構を用いてもよい。
【0036】
次に、図4及び図5を参照して、第2の実施形態に係る測定装置を用いて空間容積を計測する方法の概略を説明する。図4及び図5は第2の実施形態に係る測定装置を用いた空間容積の計測を説明する模式図であり、図4は場所打ち杭の工事において空間容積を測定する場合の模式図、図5は場所打ち擁壁の工事において空間容積を計測する場合の模式図である。
【0037】
第2の実施形態に係る測定装置を用いて場所打ち杭のコンクリート量を計測するには、場所打ち杭施工機械60を用いて土を掘削し掘削孔70を形成する。この際、掘削中の孔壁を安定させるために掘削孔70の内部に泥水80を充填しながら掘削を行う(図4(a))。
【0038】
掘削が終了すると、掘削孔70の内部にネジ支柱21を設置する。この際、ネジ支柱21の下端部を泥水80の上面に一致させる(図4(b))。そして、回動テーブル22をネジ支柱21の下端部付近あるいは上端部付近に位置させる。回動テーブル22を掘削孔70の軸方向に対して略鉛直な平面に沿って回動させると、回動テーブル22がネジ支柱21の軸方向に移動する。この際、レーザ測距計により掘削孔70の断面までの距離を計測する。そして、レーザ測距計30と携帯情報端末(図示せず)との間で無線通信を行い、携帯情報端末に測定データを蓄積する(図4(c))。
【0039】
掘削作業に続いて、掘削孔70の内部に鉄筋90を挿入するとともに、泥水80の上面位置を示すための高さ検出棒100を設置する(図4(d))。鉄筋90の挿入作業に要する時間を利用して、携帯情報端末40に蓄積した測定データに基づき泥水80の上面より上部の空間容積を演算して、必要なコンクリート量を算出する。
【0040】
その後、高さ検出棒100の下端部付近までコンクリート110を流し込む(図4(e))。高さ検出棒100の下端部よりも上部に打設するコンクリート110の必要量は上述した演算により求められているため、必要なコンクリート110の量を容易に把握することができる。
【0041】
第2の実施形態に係る測定装置を用いて場所打ち擁壁コンクリート量を計測するには、現況の法面120で風化などの原因により脆弱化している部分を機械掘削する(図5(a)(b))。掘削が終了すると、擁壁型枠130を設置し、擁壁型枠130の土台140上にネジ支柱21を設置する(図5(c))。そして、回動テーブル22をネジ支柱21の下端部付近あるいは上端部付近に位置させる。回動テーブル22をネジ支柱21の軸方向に略鉛直な平面に沿って回動させると、回動テーブル22がネジ支柱21の軸方向に移動する。この際、レーザ測距計30により法面120及び擁壁型枠130までの距離を測定する。そして、レーザ測距計30と携帯情報端末(図示せず)との間で無線通信を行い、携帯情報端末に測定データを蓄積する(図5(d))。
【0042】
掘削作業に続いて、擁壁型枠130の内部に鉄筋90を挿入する(図5(e))。鉄筋90の挿入作業に要する時間を利用して、携帯情報端末に蓄積した測定データに基づき空間容積を演算して、必要なコンクリート110の量を算出し、擁壁型枠130にコンクリート110を流し込む(図5(f))。擁壁型枠130内に打設するコンクリート110の必要量は上述した演算により求められているため、必要なコンクリート110の量を容易に把握することができる。
【0043】
<計測方法の基本概念>
次に、図6及び図7を参照して、上述した測定装置を用いて空間容積を計測する方法を説明する。図6は測定モードが計測所要時間に与える影響の説明図、図7はグループ化した測定モードの説明図である。
【0044】
本発明の実施形態に係る空間容積の計測方法は、レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードが設定されたレーザ測距計を用いて空間容積の計測を行うもので、レーザ測距計を測定箇所に設置する工程と、レーザ照射位置を移動させながら複数の測定点に対して距離を測定する工程と、取得した測定データを演算装置に送信して空間容積を演算する工程とを有している。まず、本発明の実施形態に係る空間容積の計測方法で用いる複数の測定モードについて説明する。
【0045】
レーザ測距計を用いた計測では、レーザ照射位置の状態に応じて計測所要時間が変化することが知られている。レーザ照射位置の状態とは、例えば、照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態のことである。ここで、照度を「明」「暗」の2種類に区分し、明度を「白」「黒」の2種類に区分し、乾湿状態を「乾燥」「湿潤」の2種類に区分し、凹凸状態を「平滑」「凹凸」の2種類に区別した場合について説明する。
【0046】
計測所要時間に影響を与える条件として、2パラメータずつ4水準があるとすると、これらの組み合わせは、24=16通りとなる。すなわち、レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて区別すると、16通りの組み合わせとなる。
【0047】
ここで、8つの変数を計測所要時間に与える影響が小さいグループと大きいグループとに区別する。計測所要時間に与える影響が小さいグループである「影響小g」として「明」、「白」、「乾燥」、「平滑」の4つの関数があり、計測時間に与える影響が大きいグループである「影響大g」として「暗」、「黒」、「湿潤」、「凹凸」の4つの変数がある。なお、各グループ内では、各変数が計測所要時間に与える影響は同じであると仮定する。また、「影響小g」が計測時間に与える影響の計数を「1」と仮定し、「影響大g」が計測時間に与える影響の計数を「2」と仮定する。
【0048】
以上の仮定から、16通りの測定モードが計測所要時間に与える影響は、図6に示すようになる。図6において、影響計数が大きいほど計測所要時間が長くなる。そして、図6に基づいて、16通りの測定モードが計測所要時間に与える影響をグループ化すると、図7に示すようになる。
【0049】
測定モードの選定では、図7に示す測定モードの中から測定箇所に最も適した測定モードを選定すればよい。この際、測定モードを自動選定することができる。測定モードを自動選定するには、任意数の測定点(例えば5点)に対して、16通りの測定モードの中から最適な測定モードを判別し測定を実施する。そして、優位数(例えば、5点のうちの3点以上)を計測することができ、かつ最短時間で計測することができる測定モードを自動的に選定する。また、測定者が、16通りの測定モードの中から任意の測定モードを選定し、この測定モードで優位数が計測できることを確認して、実際の計測を開始してもよい。この際、測定モードの自動選定は、携帯情報端末やパーソナルコンピュータの機能として実施される。すなわち、測定モードの自動選定を行うためのアプリケーションプログラムを携帯端末情報やパーソナルコンピュータの記憶手段(例えば、ROMやハードディスク記憶装置)に格納しておき、携帯端末情報やパーソナルコンピュータの構成要素であるCPU等がアプリケーションプログラムに従って動作することにより、測定モードの自動選定が行われる。
なお、測定モードの選定数及び優位数は、測定箇所の状況や要求される測定精度等に応じて適宜変更して設定することができる。また、測定モードの数は16通りに限られず、測定箇所の状況や要求される測定精度等に応じて適宜増減して設定することができる。
【0050】
<計測方法:第1の実施形態>
第1の実施形態に係る計測方法は、計測対象物の状態が一定であるものの形状を計測する場合に適した計測方法であり、測定モード及び運転モードを選定して計測を行うようにしたものである。
上述したように、レーザ測距計を用いて距離を測定する場合には、計測対象物の状態に応じて計測所要時間が変化する。そこで、ステッピングモータ等を組み込んだ自動測定装置に、16通りの測定モードを搭載しておき、測定対象物の状態に応じて測定モードを選定して計測を行う。
【0051】
図8を参照して、第1の実施形態に係る計測方法を説明する。図8は、第1の実施形態に係る計測方法を示すフローチャートである。
第1の実施形態では、まず初めに、任意数の測定点に対して予備計測を行う(S1−1)。そして、予備計測の結果に基づき、予め設定された複数の測定モード(例えば16通りの測定モード)の中から、測定対象物に最適な測定モードを選定する(S1−2)。
続いて、選定した測定モードで本計測を行い(S1−3)、測定データを携帯情報端末に送信して蓄積する(S1−4)。続いて、すべての測定点における計測が終了したか否かを判断し(S1−5)、すべての測定点における計測が終了していなければ、次の測定点へ移動して(S1−6)、計測を継続する。
【0052】
そして、すべての測定点における計測が終了したら、任意のタイミング(例えば型枠等の設置工事中)で、携帯情報端末のデータ処理機能により空間容積を算出する(S1−7)。なお、携帯情報端末における演算処理能力に応じて、計測データの送信及び蓄積と空間容積の演算処理とを並行して行ってもよい。
【0053】
<計測方法:第2の実施形態>
第2の実施形態に係る計測方法は、概ね正確な形状を短時間で計測する場合に適した計測方法であり、測定モードを自動判別し、単一測定モード及び単一運転モードで計測を行うようにしたものである。
【0054】
図9を参照して、第2の実施形態に係る計測方法を説明する。図9は、第2の実施形態に係る計測方法を示すフローチャートである。
第2の実施形態では、まず初めに、任意の数の測定点(例えば5つの測定点)を選定し(S2−1)、各測定点に対して、予め設定された複数の測定モード(例えば16通りの測定モード)の中から最適な測定モードを選定する(S2−2)。そして、選定した測定モードで、任意の数の測定点(例えば5つの測定点)に対して予備計測を行う(S2−3)。なお、測定モードの選定に際して、最短時間で計測することができる測定モードを自動的に選定してもよいし、測定者が16通りの測定モードの中から任意の測定モードを選定し、この測定モードで優位数が計測できることを確認して行ってもよい。
【0055】
続いて、予備計測の結果に基づいて、優位数(例えば5点のうちの3点以上)を占める優位な測定モードを自動判別する(S2−4)。ここで、優位な測定モードとは、優位数を計測することができ、かつ最短時間で計測することができる測定モードのことである。
続いて、自動判別した測定モードで本計測を行い(S2−5)、測定データを携帯情報端末に送信して蓄積する(S2−6)。続いて、すべての測定点における計測が終了したか否かを判断し(S2−7)、すべての測定点における計測が終了していなければ、次の測定点へ移動して(S2−8)、計測を継続する。
【0056】
そして、すべての測定点における計測が終了したら、任意のタイミング(例えば型枠等の設置工事中)で、携帯情報端末のデータ処理機能により空間容積を算出する(S2−9)。なお、携帯情報端末における演算処理能力に応じて、計測データの送信及び蓄積と空間容積の演算処理とを並行して行ってもよい。
【0057】
<計測方法:第3の実施形態>
第3の実施形態に係る計測方法は、データ取得率を向上させて、より正確な形状を計測する場合に適した方法であり、第2の発明の計測手順に加えて、運転モードを可変として計測を行うようになっている。
この第3の実施形態に係る計測方法は、選定した測定モードにおける計測が実施できなかった場合に、当該測定点において計測が可能となるまで計測所要時間を段階的に増加させて再計測を試みる。さらに、計測所要時間が予め定めた上限値に達しても計測が実施できなかった場合には、当該上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試みる。続いて、計測試行回数が予め定めた上限値に達した場合には、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測に移行するものである。
【0058】
図10を参照して、第3の実施形態に係る計測方法を説明する。図10は、第3の実施形態に係る計測方法を示すフローチャートである。
第3の実施形態では、まず初めに、任意の数の測定点(例えば5つの測定点)を選定し(S3−1)、各測定点に対して、予め設定された複数の測定モード(例えば16通りの測定モード)の中から最適な測定モードを選定する(S3−2)。そして、選定した測定モードで、任意の数の測定点(例えば5つの測定点)に対して予備計測を行う(S3−3)。なお、測定モードの選定に際して、最短時間で計測することができる測定モードを自動的に選定してもよいし、測定者が16通りの測定モードの中から任意の測定モードを選定し、この測定モードで優位数が計測できることを確認して行ってもよい。
【0059】
続いて、予備計測の結果に基づいて、優位数(例えば5点のうちの3点以上)を占める優位な測定モードを自動判別する(S3−4)。ここで、優位な測定モードとは、優位数を計測することができ、かつ最短時間で計測することができる測定モードのことである。
続いて、自動判別した測定モードで本計測を行い(S3−5)、計測が実施できたか否かを判断する(S3−6)。ここで、計測が実施できた場合には、測定データを携帯情報端末に送信して蓄積する(S3−7)。続いて、すべての測定点における計測が終了したか否かを判断し(S3−8)、すべての測定点における計測が終了していなければ、次の測定点へ移動して(S3−9)、計測を継続する。
【0060】
一方、計測が実施できなかった場合には、計測所要時間が上限値となるまで(S3−10)、段階的に(例えば10%程度ずつ)計測所要時間を増加させる(S3−11)。なお、計測所要時間が予め定めた上限値に達した場合には、それ以上、計測所要時間を増加させない。ここで、レーザ測距計が内部設定値として計測所要時間の最大値を有している場合には、この最大値が計測所要時間の上限値となる。また、レーザ測距計が内部設定値として計測所要時間の最大値を有していない場合には、例えば2秒程度を通信時間の上限値とする。
【0061】
そして、計測所要時間が上限値に達しても計測が実施できなかった場合には、上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試みる(S3−12)。続いて、計測が実施できたか否かを判断し(S3−13)、計測が実施できた場合には、測定データの送信処理(S3−7)へ移行する。
【0062】
一方、計測が実施できなかった場合には、計測試行回数が予め定めた上限値(例えば3回)に達したか否かを判断し(S3−14)、計測試行回数が予め定めた上限値となるまで、再計測(S3−12)を繰り返す。ここで、計測試行回数が予め定めた上限値となったら、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測へ移行する(S3−9)。なお、計測試行回数の上限値を1回とした場合には、データの再計測を行わずに次の測定点における計測へ移行することになる。
【0063】
そして、すべての測定点における計測が終了したら、任意のタイミング(例えば型枠等の設置工事中)で、携帯情報端末のデータ処理機能により空間容積を算出する(S3−15)。なお、携帯情報端末における演算処理能力に応じて、計測データの送信及び蓄積と空間容積の演算処理とを並行して行ってもよいことは、上述した第2の実施形態に係る計測方法と同様である。
【0064】
上述した計測所要時間の増加処理(S3−11)において、携帯情報端末やパーソナルコンピュータに接続された表示装置の表示画面に、計測条件の再設定中である旨の表示、及び再計測に要している時間を表示する構成としてもよい。具体的には、計測所要時間を増加させている場合には、表示装置の表示画面に「計測条件再設定中」及び「再計測時間:1.4秒」等の表示を行う。
【0065】
<計測方法:第4の実施形態>
第4の発明は、全測定点に対して、測定モード及び運転モードを可変とすることにより、厳密な形状を計測する場合に適した計測方法である。この第4の発明は、測定点毎に複数の測定モードの中から最適な測定モードを選定して計測を行う。続いて、選定した測定モードにおける計測が実施できなかった場合には、段階的に計測所要時間を増加させて再計測を試みる。ここで、計測所要時間が予め定めた上限値に達しても測定データが取得できなかった場合には、当該上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試みる。さらに、計測試行回数が予め定めた上限値に達した場合には、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測を行うものである。
【0066】
図11を参照して、第4の実施形態に係る計測方法を説明する。図11は、第4の実施形態に係る計測方法を示すフローチャートである。
第4の実施形態では、まず初めに、各測定点において、予め設定された複数の測定モード(例えば16通りの測定モード)の中から任意の測定モードを選定し(S4−1)、選定した測定モードで計測を行う(S4−2)。続いて、計測が実施できたか否かを判断し(S4−3)、計測が実施できた場合には、測定データを携帯情報端末に送信して蓄積する(S4−4)。続いて、すべての測定点における計測が終了したか否かを判断し(S4−5)、すべての測定点における計測が終了していなければ、次の測定点へ移動して(S4−6)、計測を継続する。
【0067】
一方、計測が実施できなかった場合には、計測所要時間が上限値となるまで(S4−7)、段階的に(例えば10%程度ずつ)計測所要時間を増加させる(S4−8)。なお、計測所要時間が予め定めた上限値に達した場合には、それ以上、計測所要時間を増加させない。ここで、レーザ測距計が内部設定値として計測所要時間の最大値を有している場合には、この最大値が計測所要時間の上限値となる。また、レーザ測距計が内部設定値として計測所要時間の最大値を有していない場合には、例えば2秒程度を計測所要時間の上限値とする。
【0068】
そして、計測所要時間が上限値に達しても計測が実施できなかった場合には、上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試みる(S4−9)。続いて、計測が実施できたか否かを判断し(S4−10)、計測が実施できた場合には、測定データの送信処理(S4−4)へ移行する。
【0069】
一方、計測が実施できなかった場合には、計測試行回数が予め定めた上限値(例えば3回)に達したか否かを判断し(S4−11)、計測試行回数が予め定めた上限値となるまで、再計測(S4−9)を繰り返す。ここで、計測試行回数が予め定めた上限値となったら、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測へ移行する(S4−6)。なお、計測試行回数の上限値を1回とした場合には、再計測を行わずに次の測定点における計測へ移行することになる。
【0070】
そして、すべての測定点における計測が終了したら、任意のタイミング(例えば型枠等の設置工事中)で、携帯情報端末のデータ処理機能により空間容積を算出する(S4−12)。なお、携帯情報端末における演算処理能力に応じて、計測データの送信及び蓄積と空間容積の演算処理とを並行して行ってもよいことは、上述した第1の実施形態に係る計測方法と同様である。
【0071】
上述した計測所要時間の増加処理(S4−8)において、携帯情報端末やパーソナルコンピュータに接続された表示装置の表示画面に、計測条件の再設定中である旨の表示、及び再計測に要している時間を表示することができることは、上述した第3の実施形態に係る計測方法と同様である。
【0072】
<計測方法:第5の実施形態>
第5実施形態に係る計測方法は、測定対象物が所定の規則に基づき大きく変化する場合に適する計測方法であり、いわゆるセミオート測定モードにより測定を行うようになっている。具体的には、L型擁壁に生コンクリートを充填する際に空間容積を計測する場合等、計測対象物が所定の規則に基づいて大きく変化する場合に優位となる方法である。すなわち、L型擁壁に生コンクリートを充填する場合は、コンクリート面と地山面が計測対象物となるため、第5の実施形態に係る計測方法が優位となる。
この第5の実施形態に係る計測方法は、測定箇所の状態に応じて測定箇所を複数に分割する。続いて、分割された測定箇所毎に最適な測定モードと、レーザ照射による計測所要時間及び計測試行回数に関する最適な運転モードとを選定して計測を行うようになっている。ここで、測定箇所の分割は、計測対象物の深度や高さ、方位などの範囲を指定して行われる。なお、セミオート測定モードには、分割された測定箇所毎に、計測所要時間や計測試行回数を任意選定して計測を行う方法も含まれる。
【0073】
図12を参照して、第5の実施形態に係る計測方法を説明する。図12は、第5の実施形態に係る計測方法を示すフローチャートである。
第5の実施形態では、まず初めに、測定箇所の状態に応じて測定箇所を複数に分割する(S5−1)。続いて、分割された測定箇所毎に、予め設定された複数の測定モード(例えば16通りの測定モード)の中から最適な測定モードを選定するとともに、運転モードを選定し(S5−2)、選定した測定モード及び運転モードで計測を行う(S5−3)。
【0074】
そして、計測が実施できたか否かを判断し(S5−4)、計測が実施できた場合には、測定データを携帯情報端末に送信して蓄積する(S5−5)。続いて、すべての測定点における計測が終了したか否かを判断し(S5−6)、すべての測定点における計測が終了していなければ、次の測定点へ移動して(S5−7)、計測を継続する。
【0075】
一方、計測が実施できなかった場合には、計測所要時間が上限値となるまで(S5−8)、段階的に(例えば10%程度ずつ)計測所要時間を増加させる(S5−9)。なお、計測所要時間が予め定めた上限値に達した場合には、それ以上、計測所要時間を増加させない。ここで、レーザ測距計が内部設定値として計測所要時間の最大値を有している場合には、この最大値が計測所要時間の上限値となる。また、レーザ測距計が内部設定値として計測所要時間の最大値を有していない場合には、例えば2秒程度を計測所要時間の上限値とする。なお、測定箇所毎に、計測所要時間が選定されている場合には、上述したステップ5−8(S5−8)及びステップ5−9(S5−9)の処理は省略される。
【0076】
そして、計測所要時間が上限値に達しても計測が実施できなかった場合には、上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試みる(S5−10)。続いて、計測が実施できたか否かを判断し(S5−11)、計測が実施できた場合には、測定データの送信処理(S5−5)へ移行する。
【0077】
一方、計測が実施できなかった場合には、計測試行回数が予め定めた上限値(例えば3回)に達したか否かを判断し(S5−12)、計測試行回数が予め定めた上限値となるまで、再計測(S5−10)を繰り返す。ここで、計測試行回数が予め定めた上限値となったら、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測へ移行する(S5−7)。なお、計測試行回数の上限値を1回とした場合には、再計測を行わずに次の測定点における計測へ移行することになる。また、計測所要時間及び計測試行回数を選定しない場合には、単一の運転モードで計測を行うことになる。
【0078】
そして、すべての測定点における計測が終了したら、任意のタイミング(例えば型枠等の設置工事中)で、携帯情報端末のデータ処理機能により空間容積を算出する(S5−13)。なお、携帯情報端末における演算処理能力に応じて、計測データの送信及び蓄積と空間容積の演算処理とを並行して行ってもよいことは、上述した第1の実施形態に係る計測方法と同様である。
【0079】
<計測方法:第6の実施形態>
第6の実施形態に係る計測方法は、一般的な測定対象物とは極端に条件が異なった測定対象物に適する計測方法であり、いわゆるマニュアル測定モードにより計測を行うようになっている。この第6の実施形態に係る計測方法は、測定点毎に最適な測定モードと、計測所要時間及び計測試行回数に関する最適な運転モードとを選定して、計測を行うものである。
【0080】
図13を参照して、第6の実施形態に係る計測方法を説明する。図13は、第6の実施形態に係る計測方法を示すフローチャートである。
第6の実施形態では、まず初めに、測定点毎に、予め設定された複数の測定モード(例えば16通りの測定モード)の中から測定モードを選定するとともに、計測所要時間及び計測試行回数に関する最適な運転モードを選定し(S6−1)、選定した測定モード及び運転モード計測を行う(S6−2)。
【0081】
そして、計測が実施できたか否かを判断し(S6−3)、計測が実施できた場合には、測定データを携帯情報端末に送信して蓄積する(S6−4)。続いて、すべての測定点における計測が終了したか否かを判断し(S6−5)、すべての測定点における計測が終了していなければ、次の測定点へ移動して(S6−6)、計測を継続する。
【0082】
一方、計測が実施できなかった場合には、計測所要時間が上限値となるまで(S6−7)、段階的に(例えば10%程度ずつ)計測所要時間を増加させる(S6−8)。なお、計測所要時間が予め定めた上限値に達した場合には、それ以上、計測所要時間を増加させない。ここで、レーザ測距計が内部設定値として計測所要時間の最大値を有している場合には、この最大値が計測所要時間の上限値となる。また、レーザ測距計が内部設定値として計測所要時間の最大値を有していない場合には、例えば2秒程度を計測所要時間の上限値とする。なお、測定点毎に、計測所要時間が選定されている場合には、上述したステップ6−7(S6−7)及びステップ6−8(S6−8)の処理は省略される。
【0083】
そして、計測所要時間が上限値に達しても計測が実施できなかった場合には、上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試みる(S6−9)。続いて、計測が実施できたか否かを判断し(S6−10)、計測が実施できた場合には、測定データの送信処理(S6−4)へ移行する。
【0084】
一方、計測が実施できなかった場合には、計測試行回数が予め定めた上限値(例えば3回)に達したか否かを判断し(S6−11)、計測試行回数が予め定めた上限値となるまで、再計測(S6−9)を繰り返す。ここで、計測試行回数が予め定めた上限値となったら、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測へ移行する(S6−6)。なお、計測試行回数の上限値を1回とした場合には、再計測を行わずに次の測定点における計測へ移行することになる。また、計測所要時間及び計測試行回数を選定しない場合には、単一の運転モードで計測を行うことになる。
【0085】
そして、すべての測定点における計測が終了したら、任意のタイミング(例えば型枠等の設置工事中)で、携帯情報端末のデータ処理機能により空間容積を算出する(S6−12)。なお、携帯情報端末における演算処理能力に応じて、計測データの送信及び蓄積と空間容積の演算処理とを並行して行ってもよいことは、上述した第1の実施形態に係る計測方法と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施形態に係る測定装置を示す模式図。
【図2】第1の実施形態に係る測定装置を用いたトンネル工事における空間容積の計測を説明する模式図。
【図3】第2の実施形態に係る測定装置を示す模式図。
【図4】第2の実施形態に係る測定装置を用いて場所打ち杭の工事における空間容積を計測する場合の模式図。
【図5】第2の実施形態に係る測定装置を用いて場所打ち擁壁の工事における空間容積を計測する場合の模式図。
【図6】測定モードが計測所要時間に与える影響の説明図。
【図7】グループ化した測定モードの説明図。
【図8】第1の実施形態に係る計測方法を示すフローチャート。
【図9】第2の実施形態に係る計測方法を示すフローチャート。
【図10】第3の実施形態に係る計測方法を示すフローチャート。
【図11】第4の実施形態に係る計測方法を示すフローチャート。
【図12】第5の実施形態に係る計測方法を示すフローチャート。
【図13】第6の実施形態に係る計測方法を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0087】
10、20 測定装置
11 三脚
12 回動テーブル
13 ハンドル
21 ネジ支柱
22 回動テーブル
30 レーザ測距計
40 携帯情報端末
50 トンネル断面
60 杭施工機械
70 掘削孔
80 泥水
90 鉄筋
100 高さ検出棒
110 コンクリート
120 法面
130 擁壁型枠
140 土台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ測距計を用いて空間容積を計測する方法であって、
レーザ測距計を測定箇所に設置する工程と、レーザ照射位置を移動させながら複数の測定点に対して距離を測定する工程と、取得した測定データを演算装置に送信して空間容積を演算する工程とを有し、
予めレーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、
任意数の測定点に対して予備計測を行い、
前記予備計測の結果に基づき、前記複数の測定モードの中から優位な測定モードを選定して本計測を行うことを特徴とする空間容積の計測方法。
【請求項2】
レーザ測距計を用いて空間容積を計測する方法であって、
レーザ測距計を測定箇所に設置する工程と、レーザ照射位置を移動させながら複数の測定点に対して距離を測定する工程と、取得した測定データを演算装置に送信して空間容積を演算する工程とを有し、
予めレーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、
任意数の測定点に対して前記複数の測定モードの中から最適な測定モードを選定して予備計測を行い、
前記予備計測の結果に基づき優位な測定モードを選定して本計測を行うことを特徴とする空間容積の計測方法。
【請求項3】
選定した測定モードにおける計測が実施できなかった場合には、段階的に計測所要時間を増加させて再計測を試み、
計測所要時間が予め定めた上限値に達しても測定データが取得できなかった場合には、当該上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試み、
計測試行回数が予め定めた上限値に達した場合には、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測に移行することを特徴とする請求項1又は2に記載の空間容積の計測方法。
【請求項4】
レーザ測距計を用いて空間容積を計測する方法であって、
レーザ測距計を測定箇所に設置する工程と、レーザ照射位置を移動させながら複数の測定点に対して距離を測定する工程と、取得した測定データを演算装置に送信して空間容積を演算する工程とを有し、
レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、
測定点毎に前記複数の測定モードの中から最適な測定モードを選定して計測を行い、
選定した測定モードにおける計測が実施できなかった場合には、段階的に計測所要時間を増加させて再計測を試み、
計測所要時間が予め定めた上限値に達しても測定データが取得できなかった場合には、当該上限値の計測所要時間で当該測定点における再計測を試み、
計測試行回数が予め定めた上限値に達した場合には、当該測定点における計測を中止して、次の測定点における計測に移行することを特徴とする空間容積の計測方法。
【請求項5】
レーザ測距計を用いて空間容積を計測する方法であって、
レーザ測距計を測定箇所に設置する工程と、レーザ照射位置を移動させながら複数の測定点に対して距離を測定する工程と、取得した測定データを演算装置に送信して空間容積を演算する工程とを有し、
レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、
測定箇所の状態に応じて測定箇所を複数に分割し、
分割された測定箇所毎に最適な測定モードと、計測所要時間及び計測試行回数に関する運転モードとを選定して計測を行うことを特徴とする空間容積の計測方法。
【請求項6】
レーザ測距計を用いて空間容積を計測する方法であって、
レーザ測距計を測定箇所に設置する工程と、レーザ照射位置を移動させながら複数の測定点に対して距離を測定する工程と、取得した測定データを演算装置に送信して空間容積を演算する工程とを有し、
レーザ照射位置の照度、明度、乾湿状態、及び凹凸状態に応じて複数の測定モードを用意するとともに、
測定点毎に最適な測定モードと、計測所要時間及び計測試行回数に関する運転モードとを選定して計測を行うことを特徴とする空間容積の計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−79952(P2009−79952A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248373(P2007−248373)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)