説明

空間温度計測装置

【課題】本発明は、簡便な装置を用いて少ない労力で室内の空間温度を高い空間分解能で計測可能な空間温度計測装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる空間温度計測装置は、計測対象の空間内を移動する台車と、台車に設置されて空間内の各点における空間温度を検出する温度センサと、温度センサの出力信号を処理して空間温度を演算する演算部と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に室内の空間温度を計測する空間温度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅やビルなどの建築物においていわゆる省エネが推進されている。建築物において省エネを図るためには、例えば、空調を適正化してエネルギーの無駄な損失を低減することが有効である。このためには、建築物の空間内で設計通りの除熱が行われているかなどの検証を行うことが求められる。この検証を行うには、空間内の各点を計測して、各点における温度の情報を得ることが必要である。得られた温度情報などから各点のエンタルピーを求め、熱の出入りが適切になされているかを評価できる。
【0003】
ところで、最近の建築物の内部においては、データサーバやパソコンなどの電子機器をはじめ、熱風を発する機器が増加している。そして、これらの機器の増加により、空間内の温度分布の様相が複雑化している。このため、省エネ推進のために空間内各点の温度の計測を行う際には、空間温度の様子を詳細に把握するために空間分解能を高くすることが望まれている。従来、室内の空間温度を計測する方法として、例えば特許文献1や特許文献2に開示される技術がある。
【0004】
特許文献1には、熱電対を測定対象空間内に移動自在に配設するとともに、熱電対の位置を割り出す位置検出手段と、熱電対による測温値を出力する測温データ出力手段を備えた空間内温度分布測定装置が開示されている。熱電対を測定空間内で移動することにより、ほとんど連続的な位置で測温データを得ることができるとしている。
【0005】
特許文献2には、天井高さの違いに合わせて長さ調節できる支柱に、長手方向、すなわち、高さ方向の間隔をおいて多数の温度センサを取り付けてなる温度分布測定用センサが開示されている。これにより、高さ方向の温度分布を測定するための多数の温度センサを短時間で簡単に設置できるようになるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−140929号公報
【特許文献2】特開平10−38701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、空間内の温度を三次元的に空間分解能高く計測するために特許文献1の技術を用いる場合は、パルスモータを動作させて、天井と床に配したプーリおよびパルスモータに取り付けたプーリに巻回された糸を周回させることにより熱電対を鉛直方向および水平方向に移動させる必要がある。このため、装置が複雑になり、また各計測点において的確な計測をすることができない。
【0008】
また、空間内の温度を三次元的に空間分解能高く計測するために特許文献2の技術を用いる場合は、温度センサを高さ方向に配置した支柱を水平方向に移動させて計測点を大幅に増加させる必要がある。このため、各計測点への支柱の移動および各点での計測のために多大な労力が必要になる。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、簡便な装置を用いて少ない労力で室内の空間温度を高い空間分解能で計測可能な空間温度計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる空間温度計測装置の代表的な構成は、計測対象の空間内を移動する台車と、台車に設置されて空間内の各点における空間温度を検出する温度センサと、温度センサの出力信号を処理して空間温度を演算する演算部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、台車を移動させ、台車に設けられた温度センサにより空間内の各点における空間温度を検出することにより、簡便な装置を用いて少ない労力で室内の空間温度を高い空間分解能で計測することができる。
【0012】
上記の台車は、計測対象の空間内に配設される軌道に基づいて走行するとよい。かかる構成によれば、台車が軌道により案内されて走行することにより、所望の空間内の空間温度の計測を容易に行うことができる。
【0013】
上記の軌道は磁気テープよりなり、台車は台車に備えた磁気センサにより磁気テープを検出して走行するとよい。かかる構成によれば、磁気テープという簡易な軌道により台車が案内されて走行することにより、所望の空間内の空間温度の計測を容易に行うことができる。
【0014】
上記の温度センサは、台車に設けられた水平断面が流線形の支柱に取り付けられているとよい。かかる構成によれば、台車の移動により支柱が空間内に存在する媒体(例えば、空気)から受ける抵抗を最小にすることができるため、空間内の各点における自然な状態を妨げることなく空間温度を計測することができる。
【0015】
上記の温度センサは、水平平面上に、台車の移動方向に平行な所定の直線に対して線対称に複数配置されているとよい。かかる構成によれば、所定の直線を含む鉛直平面に対して対称に空間温度を計測することができるため、空間温度の計測を効率的に行うことができる。
【0016】
上記の演算部は、所定の予測式に基づいて空間温度を演算するとよい。かかる構成によれば、所定の時間内に所定の精度で空間温度を計測することができるため、空間温度の計測を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡便な装置を用いて少ない労力で室内の空間温度を高い空間分解能で計測可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態にかかる空間温度計測装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】計測車の駆動部周りを説明する図である。
【図3】温度センサの平面上の配置を説明する図である。
【図4】温度センサの複数の平面上の配置を説明する図である。
【図5】温度センサの平面上の他の配置を説明する図である。
【図6】空間温度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図7】簡便な計測方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明にかかる流速計測装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかる空間温度計測装置の全体構成を示す概略図である。空間温度計測装置1は、計測車10と計測端末30を含んで構成される。計測車10は、台車11と、2本の支柱12A、12Bと、9つの温度センサ(13A11から13B31)を含んで構成される。白抜き矢印は計測車10の進行方向を示す。
【0021】
台車11は、例えば、一般的な無人搬送車(Automatic
Guided Vehicle:AGV)を用いることができる。AGVを用いることにより、あらかじめ設定した経路を自動で走行させることができる。図1では、台車11の簡略な形状として、上面が平らな台車11を示しているが、台車11の形状は、温度センサ(13A11から13B31)を設置可能であれば特に限定されない。台車11は、樹脂製でもステンレス鋼板製でもよいし、他の材料で作られていてもよい。
【0022】
台車11は、空間内の床面を走行してもよいし、所定の手段により浮遊して移動してもよい。図1に示すように、台車11を案内する軌道として、台車11が走行する床面に例えば磁気テープ19が配設される。磁気テープ19についての詳細は後述する。台車11の進行に伴う計測点の数を多くすることにより、台車11の進行方向における計測の空間分解能を高めることができる。
【0023】
支柱12A、12Bは、台車11に設けられている。本実施形態では、支柱12A、12Bは、台車11の上面に直立して設けられている。ここで、支柱12A、12Bの水平断面は流線形であるとよい。流線形であることにより、台車11の進行に伴い支柱12A、12Bが空間内に存在する媒体(例えば、空気。以下、空間内に存在する媒体は空気として説明する。)から受ける抵抗が最も小さくなる。このため、台車11の進行により空気が支柱12A、12Bに衝突して計測へ与える影響を最小限に抑えることができるため、空間内の各点における自然な状態を妨げることなく空間温度を計測することができる。
【0024】
温度センサ(13A11から13B31)は、それぞれ図1に示す棒状の温度センサ13取付部を介して支柱12A、12Bに取り付けられている。図1では、9つの温度センサ13を取り付けた例を示している。9つの温度センサ13は、異なる高さの3段の水平平面上に3つずつ設けられている。各段の水平平面上では、温度センサ13は、台車11前方の支柱12Aに2つ、台車11後方の支柱12Bに一つずつ配置されている。所定の数の温度センサ13を支柱12に取り付けて計測点を多くすることにより、計測の空間分解能を高めることができる。温度センサ13の詳しい配置については後述する。
【0025】
温度センサ13は、例えば熱電対が好適に用いられる。熱電対は応答性に優れるため、温度センサ13に熱電対を用いることにより空間温度を迅速に計測することができる。温度センサ13は、例えば白金などの金属を用いた金属抵抗温度計でもよい。白金抵抗温度計を用いることにより空間温度を精度よく計測することができる。このほかにも、温度センサ13に例えば半導体抵抗温度計を用いてもよい。
【0026】
図2は、計測車の駆動部周りを説明する図である。台車11の底部には、例えば、2個の駆動輪14と、4個の補助輪15と、駆動部16と、駆動部材17と、磁気センサ18と、位置センサ22が備えられている。駆動部16から出力される駆動力が駆動部材17を介して駆動輪14に伝達され、駆動輪14が回転することにより、台車11は走行する。駆動部16は、例えばモータである。駆動部16は、例えば制御部(図示せず)からの制御信号により制御されて駆動力を発生したり、駆動力の発生を停止したりする。補助輪15は、台車11が磁気テープ19に沿って安定して走行するのを補助する。白抜き矢印は台車11の進行方向を示す。
【0027】
磁気テープ19は、計測対象の空間内の例えば床面に配設されている。台車11の底部に取り付けられた磁気センサ18は、例えば可飽和コイルであり、磁気センサ18で磁気テープ19を磁気的に検出することにより、台車11は磁気テープ19に沿って走行する。磁気テープ19という簡易な軌道により台車11が案内されて走行することにより、所望の空間内の空間温度の計測を容易にすることができる。
【0028】
なお、台車11が走行する軌道は磁気テープ19でなくてもよく、例えば、軌道を光の反射テープにより形成して、光の反射テープを光学センサにより光学的に検出するようにしてもよい。また、軌道は空間内の壁面に設けられたレールであってもよい。軌道がレールの場合は、台車11の駆動輪14が機構的にレール上を走行するようにして、レールを検出するセンサ類を不要にすることもできる。
【0029】
位置センサ22は、例えばリニアエンコーダとすることができる。リニアエンコーダ(位置センサ)22は、例えば床面に設けられた磁性体からなる標識を磁気的または電磁的に読み取って台車11の走行位置を検出することができる。検出された台車11の走行位置は、空間内の計測点と関連づけられて、空間温度のデータ取得に用いられる。
【0030】
台車11の走行位置の検出は、リニアエンコーダ22によるほかに、例えば台車11に距離計測部(図示せず)を設けて、この距離計測部により空間内の所定箇所までの距離を計測することにより行うことができる。距離計測部としては、例えばレーザ距離計を用いることができる。
【0031】
すなわち、台車11に備えられたレーザ距離計により台車11が走行する空間内の四方の壁面までの距離や、計測の基準点となる所定の目標物までの距離を計測することにより、台車11の走行位置を検出することができる。距離計測部による走行位置の検出は、あらかじめ計測対象の空間の形状が把握されている場合や、所定の目標物がある場合に簡便に用いることができる。
【0032】
図3は、温度センサの平面上の配置を説明する図である。図1に示す計測車10に設けられる9つの温度センサ13のうち、一番上の段の水平平面上にある3つの温度センサ13A11、13A12、13B11の配置を示している。図3に示すように、2本の支柱12A、12Bの水平断面の各軸線は台車11の移動方向に平行な一本の直線Lを形成しており、温度センサ13B11はこの直線L上に位置する。そして、温度センサ13取付部を介してそれぞれ支柱12Aに取り付けられた2つの温度センサ13A11、13A12は、直線Lに対して線対称に配置されている。
【0033】
すなわち、温度センサ13A11と温度センサ13A12とを結ぶ線分は直線Lと交点Pで直交し、温度センサ13A11から交点Pまでの距離と、温度センサ13A12から交点Pまでの距離は等しく保たれている。図1に示す計測車10の中段の水平平面上にある3つの温度センサ13A21、13A22、13B21と、一番下の段の水平平面上にある3つの温度センサ13A31、13A32、13B31も、同様に配置されている。
【0034】
かかる構成により、直線Lを含む鉛直平面に対して対称な9点において空間温度を計測することができるため、空間温度の計測を効率的に行うことができる。空間温度の計測を行う時刻は9点とも同じでもよいし、各点で違いを設けて効率的な計測を行ってもよい。例えば、計測車10が磁気テープ19上を直進し、2つの温度センサ13A11、13A12が同時刻に空間温度を検出した後、計測車10がさらに進み所定の時間が経過した時点で、温度センサ13B11が2つの温度センサ13A11、13A12が計測した点を結ぶ線分の中点で計測を行うようにすることができる。
【0035】
このような方法で計測を行うことにより、計測車10の進行方向に垂直でかつ水平平面に平行な直線上の温度を所定の間隔で3点計測できる。中段の3つの温度センサ13A21、13A22、13B21および最下段の3つの温度センサ13A31、13A32、13B31についても、同様に計測することにより、計測車10の進行方向に垂直な平面上の9点の空間温度を効率的に計測することができる。
【0036】
軌道19を直線状に形成して、計測車10を直線的に走行させて計測することにより、水平方向に所定の間隔毎に計測点を得ることができる。これにより、所定の空間分解能で空間温度の計測を行うことができる。すなわち、例えば計測時間間隔を一定とし、計測車10を遅く走行させれば、走行距離あたりの計測点は多くなり空間分解能を高くすることができるし、逆に計測車10を速く走行させれば、計測点は少なくなり空間分解能を低くすることができる。計測車10を直線的に走行させることができない場合は、外挿や内挿により計測データを適宜補正することにより計測の空間分解能を一定とすることができる。
【0037】
図4は、温度センサの複数の平面上の配置を説明する図である。図1に示す計測車10の温度センサ13の配置の他の例を示したものであり、図4(a)は最上段の水平平面上の温度センサ13の配置、(b)は中断の水平平面上の温度センサ13の配置、(c)は最下段の水平平面上の温度センサ13の配置である。
【0038】
図4(a)および(c)に示すように、最上段と最下段の水平平面上の温度センサ13の配置は、図1に示す計測車10と同じである。これに対して、中断の水平平面上の温度センサ13の配置は、図4(b)に示すように、温度センサ13A21が、温度センサ13A11と温度センサ13A12を結ぶ線分の中点と、温度センサ13A31と温度センサ13A32を結ぶ線分の中点とを結ぶ直線上に位置するようになっている。また、温度センサ13B21と温度センサ13B22の配置は、温度センサ13B21と温度センサ13B22を結ぶ線分の中点が、温度センサ13B11と温度センサ13B31を結ぶ線分上に位置するようになっている。
【0039】
3段の水平平面上の温度センサ13をこのように配置することにより、空間温度の計測を同時刻で行う場合は、互いに平行な2つの鉛直平面上に9つの計測点を得ることができる。すなわち、温度センサ13A11、13A12、13A21、13A31、13A32で構成される鉛直平面上に5点と、温度センサ13B11、13B21、13B22、13B31で構成される鉛直平面上に4点の計測点を得ることができる。よって、空間温度の計測を効率的に行うことができる。
【0040】
空間温度の計測時刻に違いを設けて、例えばまず温度センサ13A11、13A12、13A21、13A31、13A32による計測を同時刻に行い、次に温度センサ13B11、13B21、13B22、13B31による計測は、計測車10が所定の距離を進んで、温度センサ13A11、13A12、13A21、13A31、13A32により前に計測された地点で構成される鉛直平面上に温度センサ13B11、13B21、13B22、13B31が到達した時点で行うことにすれば、同一鉛直平面上に9つの計測点を得ることができ、空間温度の計測を効率的に行うことができる。
【0041】
図5は、温度センサの平面上の他の配置を説明する図である。的確な空間温度の計測が可能な範囲で、最大数の温度センサ13を平面上に配置した場合を示している。図5に示すように、支柱12Aには3つの温度センサ13A11、13A12、13A13が、また、支柱12Bには、2つの温度センサ13B11、13B12がそれぞれ温度センサ13取付部を介して取り付けられている。2本の支柱12A、12Bの水平断面の各軸線は台車11の移動方向に平行な一直線Mを形成している。
【0042】
5つの温度センサ13A11、13A12、13A13、13B11、13B12はいずれも同じ高さにあり、図5に示すように、温度センサ13A11、13A12、13A13は計測車10の進行方向に垂直な一直線上に位置している。温度センサ13B11は、温度センサ13B11を通り直線Mに平行な直線が、温度センサ13A11と温度センサ13A12を結ぶ線分と交点Qで直交するように位置している。また、温度センサ13B12は、温度センサ13B12を通り直線Mに平行な直線が、温度センサ13A12と温度センサ13A13を結ぶ線分と交点Rで直交するように位置している。
【0043】
空間温度の計測点の数を増やして計測の空間分解能を高めるための一つの方法に、温度センサ13の数を増やすことがあるが、温度センサ13の数を増やすと温度センサ13が障害となって空気の流れが阻害されるため、空間の自然な状態における温度を計測することができない。また、温度センサ13の数を増やすと、温度センサ13の検出信号を後述する演算部20に伝達するための配線の数も増加することにより配線が複雑になる。このため、空間温度を簡便な装置で高い空間分解能で計測するために温度センサ13の数を増やす場合は、温度センサ13の数を最大とした場合の温度センサ13の数および配置を図5に示す通りとすることが適切である。
【0044】
また、交点Qは、温度センサ13A11と温度センサ13A12を結ぶ線分の中点とし、交点Rは、温度センサ13A12と温度センサ13A13を結ぶ線分の中点とすることができる。これにより、5つの温度センサ13A11、13A12、13A13、13B11、13B12は直線Mに対して線対称に配置される。かかる構成により、空間温度の計測を効率的に行うことができる。
【0045】
図5に示す配置と同じ配置の温度センサ13群を、異なる高さの複数の水平平面上に設けて効率的に計測することができることは、図3で説明したのと同様である。また、温度センサ13A11、13A12、13A13による計測時刻を同時刻とし、温度センサ13B11、13B12による計測は、計測車10が進んだ所定時間後に、温度センサ13A11、13A12、13A13が計測した地点を結ぶ直線上で行うようにすることができることも、図3で説明したのと同様である。
【0046】
図6は、空間温度計測装置の構成を示すブロック図である。計測端末30は、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)を含む半導体集積回路により実現することができる。計測端末30は、演算部20と表示部31を含んで構成される。
【0047】
演算部20は、温度センサ13からの出力信号を処理して計測点における空間温度を算出する。すなわち、熱電対、金属抵抗温度計、半導体抵抗温度計などの温度センサ13からの出力信号は、A/D変換によりデジタル化され演算部20の電子回路により信号処理されて、空間内の各計測点における空間温度が算出される。なお、温度センサ13から演算部20への信号出力は、信号ケーブルを介して有線で行ってもよいし、無線で行ってもよい。
【0048】
演算部20における空間温度の演算は、所定の予測式に基づいて行われるとよい。すなわち、温度センサ13は、各計測点において空間温度に到達するまで一定の時間遅れがある。これに対し、所定の予測式を使用することにより、計測開始時の温度センサ13の検出温度や計測開始後の検出温度の上昇下降曲線の傾きなどから空間温度を予測して空間温度の予測値を短時間で算出することができる。従って、所定の時間内に所定の精度で空間温度を計測することができるため、空間温度の計測を効率的に行うことができる。
【0049】
表示部31は、演算部20の演算結果を表示する。例えば、パソコンの表示画面に計測対象の空間内の各計測点における空間温度の分布を表示することができる。
【0050】
図7は、簡便な計測方法を説明する図である。図7(a)は、磁気テープ19上を走行する計測車10による計測を上から見た説明図である。図7(a)に示すように、磁気テープ19が配設された床面の各計測位置(s0からs5)に例えば磁性体からなる標識(21s0から21s5)が設置されている。
【0051】
磁気テープ19に沿って走行する台車11は、リニアエンコーダ(位置センサ)22により各計測位置の標識(21s0から21s5)を読み取って計測位置を記録するとともに、時間計測部(図示せず)により各計測位置を通過する時刻(t0からt5)を計測して記録する。なお、各計測位置は、例えば、計測車10が走行する空間に設定した所定のXYZ座標空間上の位置として決定することができる。
【0052】
一方、温度センサ13は、各計測位置における空間温度を検出するとともに、その検出の時刻(t0からt5)を時間計測部により記録する。記録は、例えば計測端末30の記憶部に計測データを格納することにより行う。
【0053】
各計測位置を温度センサ13が通過する時刻と、各計測位置における空間温度を検出する時刻を対応付けることにより、図7(b)に示すように、各計測位置において任意の温度センサ13により計測された空間温度は、各計測位置(s0からs5)に対応する時刻(t0からt5)における空間温度として求めることができる。この計測方法により、計測位置とその計測位置における空間温度の対応付けが容易になるため、計測点が多い場合でも簡便に計測を行うことができる。
【0054】
上記説明した如く、本実施形態にかかる空間温度計測装置1においては、磁気テープ19に沿って走行する台車11に設置された温度センサ13により空間温度を検出して、その検出信号から演算部20における演算により空間内の各点における空間温度を算出することができる。これにより、簡便な装置を用いて少ない労力で容易に室内の空間温度を高い空間分解能で計測することができる。
【0055】
また、温度センサ13を取り付ける支柱12の水平断面を流線形とすることにより、台車11の進行に伴い支柱12が空気から受ける抵抗を最小にして、空間内の各点における自然な状態を妨げることなく空間温度を計測することができる。温度センサ13を、水平平面上に、台車11の移動方向に平行な所定の直線に対して線対称に複数配置する場合は、所定の直線を含む鉛直平面に対して対称に空間温度を計測することができるため、空間温度の計測を効率的に行うことができる。さらに、演算部20において、所定の予測式に基づいて空間温度を演算することにより、所定の時間内に所定の精度で空間温度を計測することができるため、空間温度の計測を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、主に室内の空間温度を計測する空間温度計測装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 …空間温度計測装置
10 …計測車
11 …台車
12A、12B …支柱
13A11から13B31 …温度センサ
14 …駆動輪
15 …補助輪
16 …駆動部
17 …駆動部材
18 …磁気センサ
19 …磁気テープ(軌道)
20 …演算部
21 …標識
22 …リニアエンコーダ(位置センサ)
30 …計測端末
31 …表示部
L、M …直線
P、Q、R …交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象の空間内を移動する台車と、
前記台車に設置されて前記空間内の各点における空間温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの出力信号を処理して前記空間温度を演算する演算部と、
を備えていることを特徴とする空間温度計測装置。
【請求項2】
前記台車は、前記計測対象の空間内に配設される軌道に基づいて走行することを特徴とする請求項1に記載の空間温度計測装置。
【請求項3】
前記軌道は磁気テープよりなり、前記台車は該台車に備えた磁気センサにより前記磁気テープを検出して走行することを特徴とする請求項2に記載の空間温度計測装置。
【請求項4】
前記温度センサは、前記台車に設けられた水平断面が流線形の支柱に取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空間温度計測装置。
【請求項5】
前記温度センサは、水平平面上に、前記台車の移動方向に平行な所定の直線に対して線対称に複数配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空間温度計測装置。
【請求項6】
前記演算部は、所定の予測式に基づいて前記空間温度を演算することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空間温度計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112470(P2011−112470A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268203(P2009−268203)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】