説明

空隙部を有する構造体に使用する多面体骨材形状。

【課題】機能劣化の要因となる車両載荷による骨材の破損や舗装面の変形、骨材破損片や舗装変形による舗装内空隙部の目詰まりや縮小といった問題点を解決し、長期供用が維持できる空隙部を有する構造体使用骨材形状を提供する。
【解決手段】使用する骨材の形状を平行面を有する事とし、更に舗装内部の空隙部確保のため、角部面取りした多面体形とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高機能舗装・ポーラスコンクリート等の空隙部を有する構造体の使用材料に関します。
【背景技術】
【0002】
高機能舗装とは、アスファルトを結合材とする走行面に排水可能な空隙を有する舗装であり、降雨時に雨水を空隙に通過させる事で水たまりでのスリップ事故の防止、前走車両の水捲き上げを防止、更に走行騒音の低下に効果のある舗装です。ポーラスコンクリートとは、セメントを結合材とする空隙を有した透水性のあるコンクリートです。結合材の違いにより異なる名称となりますが、同じ機能を有しており本願発明の以下の説明については、高機能舗装に於ける環境で示します。
【0003】
高機能舗装の一定期間にわたる供用の結果、舗装内部の空隙は車両の繰り返し載荷により除々に舗装骨材が破砕され、その微粒分の堆積により空隙部の目詰まりが発生したり、又繰り返し載荷による舗装の変形、歪みにより空隙部が無くなり、前記各機能が低減してしまい機能不能となってしまいます。本願発明の骨材形状についての先行技術文献は見当たりません。本願発明の特異性を確認できる資料として先行文献を示します。使用骨材での先行文献は、骨材の成分の改良、結合材の改良等で占められています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000ー120010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる高機能舗装の経年機能低下を防止させる為、使用材料のうち骨材を改良し、空隙部のつぶれを防止し、変形抵抗性の高い構造体とし、結果再舗設工事(切削オーバレイ)のインターバル(現状で6年程度)を延長させ、地球環境に優しい舗装とします。ポーラスコンクリートも同様の目標により長期供用可能な構造体とします。
【0006】
高機能舗装の目詰まりによる機能低下の代表的な要因として、1.風等による土や砂の堆積により舗装内空隙部が目詰まり、排水・騒音機能を低下させる。2.舗装使用骨材が車両載荷により破砕し、その破砕片が空隙部に目詰まりし、透水・騒音機能を低下させる。3.車両載荷による骨材の破砕で空隙部が潰れ舗装が沈下、変形が発生する。等が挙げられます。1の要因は、舗装使用材に関わる物では無く自然による機能低下であり、機能回復車等の機能回復技術が課題となっています。2及び3の要因は、舗装使用材に関わる機能低下となるため、本願発明では2及び3に対しての改善を目標としています。
【0007】
機能低下要因2及び3の原因は、高機能舗装の内部構造から来る不安定の環境から起因しています。まず使用している骨材の配列の問題があります。通常使用される骨材は天然石を砕石工場で砕いた砕石が使用されています。一般の舗装であれば、舗装内の空隙を確保する必要が無く、その舗装での砕石の組み合わせは、他の形状骨材に比べ格段の安定性を有しますが、空隙部を必要とする高機能舗装では逆に砕石の短所が現れます。
【0008】
高機能舗装の構造安定性の確保には使用する骨材の配列状態が重要となります。他にそれら骨材を結合させるため、一般舗装であれば結合材とするアスファルト材、高機能舗装用では高粘度アスファルトやエポキシアスファルト材が使用され結合の強化をしますが、これらによる効果は副次的な構造安定性の確保であり、強いて言えば安定性の補助材としての位置付けであり根本的な解決策ではありません。特に夏期の高温時では、結合性能は著しく低下してしまいます。
【0009】
一般舗装での隣り合う砕石の間はアスファルトや微粒分を含む小砕石により充填されて隣り合う砕石は面接触の状態となり安定しますが、高機能舗装では空隙確保のために単粒度の骨材のみを使用するので、結果砕石間には空隙が残り,舗装の安定性は著しく低下するのです。又、高機能舗装で配列された砕石は、隣り合う砕石は点接触の状態となり同強度を有する骨材でも繰り返しの車両載荷により、砕石は破損してしまうのです。
【0010】
骨材の破損による舗装の変形や空隙部の縮小、破損片による空隙部の目詰まりとなってしまう事が最たる機能低下の原因である事を重視し、高機能舗装に於ける最適骨材の形状を開発し、社会に提供するものです。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、高機能舗装等に使用する骨材形状を平行面を有する9面以上の多面体形状とする事を特徴とします。更に高機能舗装特有の舗装内空隙部を形成させるため、9面以上の多面体の頂点を含む稜線部に面取りを施す事を特徴とします。更に球体に変形性能に優れた平行面を付加し、球面を頂点を含む稜線部に面取りとして施す8面体以下の多面体で有る事を特徴とします。
【0012】
本願発明の多面体構造骨材は、並行する面を有しています。これは、骨材同士の点接触による脆弱性の改善であり、骨材の並びに対し面と面が接触し配列される事が可能な形状としています。面接触による骨材の並びでは、前記した点接触による骨材の破壊が無い事で構造性能が安定し変形抵抗性を高めます。
【0013】
仮に正6面体となる立方体の骨材を使用した場合、一般舗装では骨材配置が安定し耐久性が増しますが、高機能舗装では特徴である内部空隙部が無くなり使用不可の形状となります。他に正4面体に関しても空隙が確保できません。それと共に車両のタイヤを損傷させる鋭角を有する多面体であり、本願発明の骨材形状は少なくとも頂点が鈍角で構成される多面体が推奨されます。
【0014】
6面体形状の頂点を含む稜線部に面取りを施す事で、必要とする舗装空隙部が確保されるので、18面体の理想的な形状となります。頂点を含む稜線部の面取りにより舗設作業においても少ない震動で骨材の適正配置が可能となります。又、正四面体は平行とする面を有しませんが、各頂点を底面と平行に面取りする事で変則8面体となり、一般利用可能な骨材形状となり、さらに面取りを付加することで14面体形状の空隙舗装用の骨材形状となります。
【0015】
高機能舗装の充填率の概略として、従来使用している砕石骨材の実績率は58%から60%であり、空隙は40%強あるのですが、他小骨材13%、アスファルト結合材が7%の合計概ね20%が空隙部に充填される事より最終空隙部は20%となっています。本願発明での多面体骨材であれば小骨材を省略できるので、空隙率の増加が出来、機能を更に上げる事が可能です。更に面接触による配置となるためアスファルト結合材量が減少できる事も挙げられます。
【0016】
高機能骨材に必要な骨材1面当たりの面積は、以下の方法により算出できます。まず車両の載荷重25トン車を想定した時前車輪にかかる1輪当りの載荷重量は、最大10.5トンとなり、タイヤ接地面積は400平方センチメートルとされます。使用骨材径を20mmとした場合、タイヤ接地面積内に100個の骨材が存在し、1個当たりの載荷重は1050Nとなります。
【0017】
一般天然石の骨材利用での骨材必要最底強度は、概ね72Nの骨材強度であり骨材面当たり必要面積を求めれば、14.6平方mmとなります。更に安全率を3倍とする時、多面骨材の実使用での1面当たり最小必要面積は、43.7平方mmとなります。これは一辺6.61mmの四角面や直径13.91mmの円形面に相当します。
【0018】
従来の天然石砕石による点接触の組み合わせの環境に比べ本願発明の各骨材が面接触をする事で、広域面積での載荷を支持する事が出来、骨材の必要な強度をより低く設定する事も可能となります。例えば、現行利用されるセメントコンクリートによる強度50Nクラスの人工骨材でも利用可能となり得ます。この部の研究により天然材に替わる地球環境に優しい骨材が利用可能となります。
【0019】
一方、空隙部の確保については、上記の骨材の実使用での1面当たり最小必要面積を確保しつつ、頂点を含む稜線部を面取りする量を変更する事で自在に調整する事が可能となります。面取りの構成は平面によるもの、曲面によるもの、他放物線曲面、球体面を面取り部として接触面を加工した形状等に限定されません。それは同等の機能、実施工性を有する事を基本に、それと共に骨材形状加工技術の進化に伴い生産効率の良い面取り加工の方法やそれによる面取り形状も変化する事によります。
【発明の効果】
【0020】
1.従来の不安定構造を改善し長期安定供用できます。
2.従来の空隙部を更に増加し機能を増して長期安定供用ができます。
3.使用材料の内、使用結合材量を減少出来ると共に、小骨材が不要となり地球環境に優しい省資源型舗装となります。
4.長期供用が可能となり、機能劣化に伴う再舗設工事のインターバルが大幅に延長出来、地球環境に優しい構造体となります。
5.空隙部の容量を自由に変化出来、現地環境に合わせた最適構造体ができます。
6.骨材多面形状により、低強度の人造骨材の利用も可能となります。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の空隙部を有する構造体 A.設置直後 B.載荷による骨材破損 C.骨材破損による沈下変形
【図2】四面体の多角化 A.基本形 B.頂点面取り8面体 C.稜線部を面取りした14面体
【図3】六面体の多角化 A.基本形 B.頂点面取りした14面体 C.球体を6面化した図 D.球体を6面化した立体図
【図4】透水不能構造例 A.頂点面取りした四面体の配列側面図 B.面取りした四面体の配列平面図 C.頂点面取りした六面体の配列側面図
【図5】多面体骨材での形状例 A.寸法図 B.立体図
【図6】球体から造る形状例
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に実施の形態を示す図面に基づき本願発明による骨材形状を更に詳しく説明します。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略します。
【0023】
従来の高機能舗装の劣化を側面図として図1に示します。図1ーAは、舗設(1)した空隙(2)を有し、結合材(3)、小骨材(4)、砕石骨材(5)で構成されています。結合材(3)は高機能舗装の場合アスファルトを使用しますが、ポーラスコンクリートではセメントが使用されます。
【0024】
図1ーBに車両載荷により砕石骨材(5)がひび割れ粉砕していく過程を図示しています。点接触による骨材端部に集中荷重がかかり骨材破損(6)となっていきます。図1―Cに更なる車両載荷による結果、粉砕片(7)による空隙部の目詰まり、舗装の変形を示します。舗装の轍堀り等がこの代表的な変形です。轍堀りが発生するとハンドル操作が不安定となり、交通事故が多発します。
【0025】
舗装の対変更抵抗性を高めるため現状では、結合材の性能を強化する方法で高粘度アスファルトや強化補助材を混入したエポキシフスファルトなどを使用しますが、夏期の高温時では、粘性が低下し変形の抜本的処置とはなっていません。変形防止の基本は骨材によるものであり、骨材形状を現状の点接触から面接触とする事で安定化出来るのです。
【0026】
変形抵抗性のみを考慮した場合の形状は、平行面を多数有する形状が有効であり、図2ーAに四面体(8)を示し、その頂点を面取りした8面体形状(9)を図2ーBに示します。変形に対し骨材配置接触面による4方向で抵抗する事になります。又、図3ーAに示す六面体(10)を図3ーBでその頂点を面取りした14面体形状(11)を示し、変形に対し骨材配置接触面による3方向で抵抗する事になります。図3ーAの直方体は、実舗設作業ではその骨材角部のため骨材配置が困難であり実用不能です。
【0027】
図4ーAに8面体形状(9)の骨材で構成される舗設側面を示します。骨材組み合わせが解りづらいので、図4ーBに平面での10個の骨材での組み合わせを示します。配置骨材方向の上向き(12)下向き(13)を付記します。図4ーCに14面体形状(11)の骨材で構成される舗設断面を示します。いずれも全面で骨材接触する事で格段の変形抵抗性を確保できます。但し、一般舗装での骨材としてはこのような骨材形状が最適となりますが、空隙部を有する事が必要な舗設では、水の透過する透水路が骨材面接触により分断され図4の骨材では成立しません。
この透過水路の確保のために骨材稜線部に面取りを追加する事が必要となります。図2ーCに8面体の稜線部に直面の面取りを施した骨材形状(14)を示します。又図3ーCに6面体の曲面による面取り(15)を示し、図3ーDに6面体の頂点を含む稜線部を曲面で面取りした立体図(16)として示します。
【0028】
形状決定の手順を説明します。理解が簡単な直方体に属する立方体を例として説明します。まず、舗設される厚みより最適骨材の大きさを決定します。舗装厚みを50mmとする時、骨材が4段で構成されるとすれば、骨材径は12.5mmとなりますが、結合材の充填寸法を考慮し、−0.5mmとし使用骨材を一辺12mmとします。
【0029】
次に接触面の一面当り必要面積を求めます。車両の載荷重25トン車、1輪当りの最大載荷重量は10.5トン、タイヤ接地面積は400平方cm、使用骨材径を12mmとする時、タイヤ接地面積内には277個の骨材配置となり1個当たりの載荷重は379Nとなります。又骨材強度を従来の最低強度となる72Nとした時、必要面積は、5.26平方mmであり、安全率を3倍とみなせば15.78平方mmとなり正方面で1辺4mmの正方面に匹敵します。
【0030】
空隙部を25%目標とする骨材形状例(17)を図5に示します。図5ーAに加工寸法を例示します。図5ーBに形状が解りやすい様立体図を示します。この骨材例(17)では骨材接触面積を36平方mmとして、安全率を概ね6.8倍としており充分な耐力と変更抵抗性を有します。又、空隙部は29%確保されており充分に透水性、騒音低減の性能も満足しています。この形状は、立方体とする6面体を頂点、稜線部に直面の面取りを施した結果、26面体の構造となっています。
【0031】
一方、面取りを頂点を含め均一曲線とする場合では、球体から骨材接触面を造っていく事が考えられます。図6に理解し易い様模視図として示します。必要な骨材面積を円錐底面積(18)とする円錐部(19)を球体(20)より切り離し接触面を加工するものです。図3ーDが球面を面取りとする六面体(16)立体模視図として表示しています。
【0032】
多面体の構成面数が多くなると限りなく球体に近づきますが、それは空隙部の増加になり、反面骨材接触面積が減少していくので、形状の決定には舗設する現地環境、目的により選択されます。
【産業上の利用可能性】
【0033】
現在は高機能舗装やポーラスコンクリートの骨材形状としていますが、将来の性能保証型工事発注形態での工事では必ず利用される舗設用骨材となり、舗装業界で利用されます。他透水性、通風性機能の構造体の使用骨材として、建築業界にも利用が見込めます。他に河川等の護岸築堤等にも利用される事になります。
【符号の説明】
【0034】
1.舗設部
2.空隙
3.結合材
4.小骨材
5.砕石骨材
6.骨材のひび割れ
7.破損粉砕片
8.四面体
9.8面体形状
10.六面体
11.14面体
12.骨材上向き
13.骨材下向き
14.面取りした8面体
15.面取りを球面とする6面体
16.面取りを球面とする6面体の立体形
17.決定骨材形状例
18.円錐底面積
19.円錐部
20.球体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高機能舗装やポーラスコンクリート等の使用骨材となる、対変形性能に優れた平行面を有する9面以上で構成される多面体骨材形状。
【請求項2】
骨材の頂点を含む稜線部に面取りを施した請求項1の骨材形状。
【請求項3】
高機能舗装やポーラスコンクリート等の使用材料となる、球体の表面に対変形性能に優れた平行面を有し、頂点を含む稜線部に球体面を利用した8面体以下で形成される多面体骨材形状。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180713(P2012−180713A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45733(P2011−45733)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(309014366)
【Fターム(参考)】