説明

穿刺アダプタ

【課題】確実にスリーブを固定することができる穿刺アダプタを提供する。
【解決手段】アーム14とフック18が互いに固定的に連接されており、さらに、境界部17を支点として二つのアーム14,16が開閉自在に交差しているため、アーム14の開閉動作に連動してフック18が動作する。つまり、スリーブ20がアダプタ本体12の溝に挿入された状態、つまり、図1の(B)に示す状態において、二つのアーム14,16が超音波探触子を挟持すると、それと同時にフック18がスリーブ20に引き掛けられる。また、二つのアーム14,16が超音波探触子を解放すると同時にフック18がスリーブ20から外される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺アダプタに関し、特に超音波探触子に取り付けられる穿刺アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
直腸や膣などの体腔に挿入して超音波診断を行うための体腔内挿入用の超音波探触子が知られている。その超音波探触子を用いて超音波画像を見ながら穿刺により組織の採取などを行う場合には、穿刺アダプタを超音波探触子に装着し、その穿刺アダプタに穿刺針を取り付けて所望部位への穿刺が行われる。そして従来から、穿刺アダプタやそれが取り付けられる超音波探触子に関する様々な技術が提案されている(下記特許文献参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、穿刺針を通すパイプ(スリーブ)が穿刺アダプタの本体から取り外し可能な構成が示されている。この構成により、パイプが汚損された場合にパイプのみが交換可能となり、穿刺アダプタごとの交換をより少なくすることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−189420号公報
【特許文献2】特開昭60−92747号公報
【特許文献3】特開平4−84948号公報
【特許文献4】特開平3−86156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
穿刺針を通すためのパイプ(スリーブ)が自在に着脱される構成の穿刺アダプタにおいては、穿刺アダプタの本体部にスリーブを確実に且つしっかりと固定しておく必要がある。このため、従来から、スリーブの固定を確実に行うことができる穿刺アダプタの提供が望まれていた。
【0006】
本発明は、こうした背景において成されたものであり、その目的は、確実にスリーブを固定することができる穿刺アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である穿刺アダプタは、超音波探触子へ自在に着脱され、さらに、穿刺針を通すためのスリーブが自在に着脱されて穿刺針の太さに応じたスリーブが選択的に装着される穿刺アダプタにおいて、スリーブの伸長方向に沿ったスリーブ挿入溝が設けられたアダプタ本体部と、前記スリーブ挿入溝に挿入されたスリーブを前記アダプタ本体部へ固定するスリーブ固定部と、前記アダプタ本体部を超音波探触子へ固定するアダプタ固定部と、を有し、前記アダプタ固定部によるアダプタ本体部の固定動作に連動して前記スリーブ固定部がスリーブを固定し、さらに、前記アダプタ固定部によるアダプタ本体部の解放動作に連動して前記スリーブ固定部がスリーブを解放する、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成では、アダプタ本体部を超音波探触子へ固定する動作とスリーブをアダプタ本体部へ固定する動作が連動しているため、アダプタ本体部が超音波探触子へ固定されている場合には、確実にスリーブがアダプタ本体部に固定される。つまり、穿刺アダプタを超音波探触子から外さないかぎり、穿刺アダプタからスリーブを外すことができないため、例えば、手術中に誤ってスリーブを脱落させることがない。
【0009】
望ましくは、前記スリーブ固定部は、スリーブのくびれ部分に引き掛けられることにより当該スリーブを前記アダプタ本体部へ固定するフックで構成され、前記アダプタ固定部は、超音波探触子を挟持することにより前記アダプタ本体部を超音波探触子へ固定する二つのアームで構成される、ことを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記二つのアームのうちの一方のアームと前記フックは、互いに固定的に連接され、前記二つのアームは、前記一方のアームと前記フックとの連接部を支点として開閉自在に交差するように前記アダプタ本体部へ取り付けられ、これにより、前記二つのアームが超音波探触子を挟持すると同時に前記フックがスリーブに引き掛けられ、さらに、前記二つのアームが超音波探触子を解放すると同時に前記フックがスリーブから外される、ことを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記スリーブは、その伸長方向に沿った少なくとも一部分に、伸長方向に垂直な断面における外周がスリーブの回転を防止するための形状である回転防止部を備え、前記アダプタ本体部は、スリーブの伸長方向に沿って伸長されたホルダを備え、当該ホルダは、その伸長方向に垂直な断面における内周が前記回転防止部の外周に合致した形状であり、これにより、前記スリーブの回転防止部が前記ホルダに嵌め込まれた状態で当該スリーブがアダプタ本体部へ固定されてアダプタ本体部に対する当該スリーブの回転が防止される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の穿刺アダプタにより、アダプタ本体部が超音波探触子へ固定されている場合に確実にスリーブがアダプタ本体部に固定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る穿刺アダプタの好適な実施形態を説明するための図であり、図1には、穿刺アダプタ10の外観図が示されている。
【0015】
穿刺アダプタ10は、アダプタ本体12、二つのアーム14,16およびフック18で構成されており、スリーブ20がアダプタ本体12へ自在に着脱される。なお、図1の(A)には、スリーブ20がアダプタ本体12へ挿入される(あるいはアダプタ本体12から抜き取られる)状態を示しており、図1の(B)には、スリーブ20がアダプタ本体12へ挿入された状態を示している。本実施形態の穿刺アダプタ10は、例えば、直腸や膣などの体腔に挿入して超音波診断を行うための体腔内挿入用の超音波探触子などに取り付けられる。
【0016】
図2は、穿刺アダプタが超音波探触子へ取り付けられた状態を示しており、図2の(A)は、穿刺アダプタ10の取り付け側(上方)からみた外観図であり、図2の(B)は、穿刺アダプタ10の取り付け側とは反対側(下方)からみた外観図である。
【0017】
体腔内挿入用の超音波探触子30は、体腔内への挿入を容易にするために、棒状に(円筒状に)伸長された挿入部32を備えている。ちなみに、その挿入部32の先端部32aに超音波振動子が内蔵される。穿刺アダプタ10は、超音波探触子30の挿入部32の伸長方向に沿って伸長されており、挿入部32に沿うように取り付けられる。そして、穿刺アダプタ10から先端部32a側に向けて、図示しない穿刺針が突き出される。
【0018】
以下、図1に戻って穿刺アダプタ10の構造を説明する。穿刺アダプタ10のアダプタ本体12は、超音波探触子の挿入部(図2の符号32)の伸長方向に沿って伸長されている。また、穿刺アダプタ10には、スリーブ20が自在に着脱される。スリーブ20は、図示しない穿刺針をガイドするものであり、細い管状(ストロー状)に形成される。穿刺針は、針挿入口22から挿入されてスリーブ20内を通り、そしてアダプタ本体12の先端部12t側から穿刺針の先端が突き出される。
【0019】
スリーブ20は、穿刺針の太さに応じて複数本のセットとして準備されることが望ましい。つまり、穿刺針の太さに応じて異なる内径の複数本のスリーブ20が準備され、それら複数本のスリーブ20の中から利用する穿刺針に対応したスリーブ20が選択的に用いられることが望ましい。なお、セットとして準備される複数本のスリーブ20の外径は、穿刺アダプタ10に適合した同一径に揃えられる。つまり、スリーブ20は、穿刺アダプタ10のアダプタ本体12に設けられた溝に挿入されるため、複数本のスリーブ20の外径はアダプタ本体12の溝に適合した径に揃えられる。
【0020】
アダプタ本体12の溝に挿入されたスリーブ20は、フック18によってアダプタ本体12へ固定される。スリーブ20には、針挿入口22の近傍にフック受け24が設けられている。フック受け24は、スリーブ20の伸長方向で隣接する他の部分よりも径が小さく、くびれた形状である。そして、スリーブ20がアダプタ本体12の溝に挿入された状態、つまり、図1の(B)に示す状態において、フック18の位置にフック受け24が配置される。さらに、この状態でフック18がフック受け24に引き掛けられる。このため、フック18が引き掛けられるとスリーブ20の伸長方向のずれが抑えられる。
【0021】
スリーブ20は、全体として細い円筒形である。そこで、アダプタ本体12に挿入されたスリーブ20の伸長方向を軸とする回転を抑えるために、スリーブ20には回転ストッパ26が設けられている。回転ストッパ26は、その断面形状が略正方形である。つまり、スリーブ20の伸長方向に垂直な断面における外周の形状が、正方形の四つの角を丸めた形状となっている。
【0022】
一方、アダプタ本体12には、回転ストッパ26が嵌め込まれるホルダ12aが設けられている。ホルダ12aは、収容される回転ストッパ26を包み込むように形成されている。ホルダ12aの断面は、回転ストッパ26の断面に対応した形状になっている。つまり、ホルダ12aは、アダプタ本体12の伸長方向に垂直な断面における内周の形状が、回転ストッパ26の外周の形状に合致した略正方形となっている。このため、スリーブ20がアダプタ本体12の溝に挿入された状態、つまり、図1の(B)に示す状態において、回転ストッパ26がホルダ12aに嵌め込まれて、スリーブ20のアダプタ本体12に対する回転が抑えられる。
【0023】
本実施形態の穿刺アダプタ10は、二つのアーム14,16によって超音波探触子に固定される。そして、二つのアーム14,16による穿刺アダプタ10の固定動作に連動してフック18がスリーブ20を固定し、また、二つのアーム14,16による穿刺アダプタ10の解放動作に連動してフック18がスリーブ20を解放する。
【0024】
アーム14とフック18は、互いに固定的に連接されて、S字状の部材を構成している。このS字状の部材は、予め一つの部材として形成されてもよいし、アーム14とフック18が接合されて形成されてもよい。そして、このS字状の部材のアーム14とフック18の境界部(連接部)17を支点として、二つのアーム14,16が開閉自在に交差するようにアダプタ本体12に取り付けられている。
【0025】
二つのアーム14,16は、超音波探触子を囲んだ状態で閉じることによって、超音波探触子を挟持して穿刺アダプタ10を超音波探触子へ固定する(図2参照)。なお、超音波探触子を固定する際、アーム14のアームストッパ14aが、アーム16のストッパ受け16aに引き掛けられて、二つのアーム14,16が互いに固定される。一方、超音波探触子から穿刺アダプタ10を取り外す際には、アームストッパ14aがストッパ受け16aから外されて、そして二つのアーム14,16を開くことにより、超音波探触子が解放される。
【0026】
本実施形態では、アーム14とフック18が互いに固定的に連接されており、さらに、境界部17を支点として二つのアーム14,16が開閉自在に交差しているため、アーム14の開閉動作に連動してフック18が動作する。つまり、スリーブ20がアダプタ本体12の溝に挿入された状態、つまり、図1の(B)に示す状態において、二つのアーム14,16が超音波探触子を挟持すると、それと同時にフック18がスリーブ20に引き掛けられる。また、二つのアーム14,16が超音波探触子を解放すると同時にフック18がスリーブ20から外される。
【0027】
このように、本実施形態の穿刺アダプタ10は、穿刺アダプタ10の超音波探触子への取り付けとスリーブ20の穿刺アダプタ10への固定が同時に行われる一括ロックタイプとなっている。このため、穿刺アダプタ10の取り付けとスリーブ20の固定をそれぞれ別に行う手間が省けることに加え、例えば、穿刺アダプタ10の取り付けのみを行ってスリーブ20の固定を忘れてしまうようなことがない。つまり、確実にスリーブ20の固定が行われる。また、穿刺アダプタ10を取り外さない限りスリーブ20が外れないため、スリーブ20のみを誤って取り外してしまうこともない。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る穿刺アダプタの外観図である。
【図2】本発明に係る穿刺アダプタが超音波探触子へ取り付けられた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 穿刺アダプタ、12 アダプタ本体、14,16 アーム、18 フック、20 スリーブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子へ自在に着脱され、さらに、穿刺針を通すためのスリーブが自在に着脱されて穿刺針の太さに応じたスリーブが選択的に装着される穿刺アダプタにおいて、
スリーブの伸長方向に沿ったスリーブ挿入溝が設けられたアダプタ本体部と、
前記スリーブ挿入溝に挿入されたスリーブを前記アダプタ本体部へ固定するスリーブ固定部と、
前記アダプタ本体部を超音波探触子へ固定するアダプタ固定部と、
を有し、
前記アダプタ固定部によるアダプタ本体部の固定動作に連動して前記スリーブ固定部がスリーブを固定し、さらに、前記アダプタ固定部によるアダプタ本体部の解放動作に連動して前記スリーブ固定部がスリーブを解放する、
ことを特徴とする穿刺アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載の穿刺アダプタにおいて、
前記スリーブ固定部は、スリーブのくびれ部分に引き掛けられることにより当該スリーブを前記アダプタ本体部へ固定するフックで構成され、
前記アダプタ固定部は、超音波探触子を挟持することにより前記アダプタ本体部を超音波探触子へ固定する二つのアームで構成される、
ことを特徴とする穿刺アダプタ。
【請求項3】
請求項2に記載の穿刺アダプタにおいて、
前記二つのアームのうちの一方のアームと前記フックは、互いに固定的に連接され、
前記二つのアームは、前記一方のアームと前記フックとの連接部を支点として開閉自在に交差するように前記アダプタ本体部へ取り付けられ、
これにより、前記二つのアームが超音波探触子を挟持すると同時に前記フックがスリーブに引き掛けられ、さらに、前記二つのアームが超音波探触子を解放すると同時に前記フックがスリーブから外される、
ことを特徴とする穿刺アダプタ。
【請求項4】
請求項3に記載の穿刺アダプタにおいて、
前記スリーブは、その伸長方向に沿った少なくとも一部分に、伸長方向に垂直な断面における外周がスリーブの回転を防止するための形状である回転防止部を備え、
前記アダプタ本体部は、スリーブの伸長方向に沿って伸長されたホルダを備え、当該ホルダは、その伸長方向に垂直な断面における内周が前記回転防止部の外周に合致した形状であり、
これにより、前記スリーブの回転防止部が前記ホルダに嵌め込まれた状態で当該スリーブがアダプタ本体部へ固定されてアダプタ本体部に対する当該スリーブの回転が防止される、
ことを特徴とする穿刺アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−288773(P2006−288773A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114103(P2005−114103)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】