説明

穿孔工具

【課題】
粉塵を効率よく吸引できる集塵装置を有する穿孔工具を提供すること。
【解決手段】
モータと、モータの回転力を伝達して先端工具を駆動する伝達駆動部と、先端工具によって穿孔される被削材から発生する粉塵を吸引する集塵装置を有する穿孔工具において、集塵装置に、先端工具を貫通させる貫通部と、発生する粉塵とその周囲の空気を吸引するための吸引口26と、吸引口につながる流路25を有する集塵アダプタ20を設け、吸引口を貫通部に2つ以上設けた。この集塵アダプタ20は、貫通穴の形成された前面壁及び後面壁と、これらをつなぐものであって先端工具の回転軸と略平行な外周壁21及び内周壁22を有し、貫通部は内周壁22により画定され、吸引口26は内周壁22に形成された複数の穴又はスリットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータやエンジン等で駆動され、主にコンクリートやレンガといった石材に穿孔穴を開けるための穿孔工具に関し、特に、穿孔時に発生する粉塵を集塵する集塵装置を有する穿孔工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやレンガといった石材に対し穿孔穴を開けるために穿孔工具が用いられる。穿孔工具はドリル刃を駆動することにより被削材に穿孔穴を開けるものであり、一般的な回転ドリルや、ドリル刃を回転打撃させるハンマドリルや、振動ドリルなどがある。穿孔工具を使用して穿孔作業を行う際には粉塵が発生するため、作業者は防塵マスクや保護眼鏡等を装着して作業をすることがある。近年、作業の際に発生する粉塵を取り除くために、粉塵を吸い取る集塵装置を配設したものが広く用いられるようになってきた。
【0003】
特許文献1にはその一例を示す回転打撃工具が開示されており、その詳細について図12により説明する。図12は、外部集塵機に接続される回転打撃工具を示す部分断面図である。先端工具52は工具保持部60により回転打撃工具51に取り付けられる。先端工具52の一部を包囲する吸塵覆54は吸引口56を有し、吸塵覆54には粉塵流路58が接続される。吸塵覆54には複数のシール55,55′、55″が設けられる。吸塵覆54は、粉塵流路58を介して回転打撃工具51に取り付けられ、先端工具52の軸方向に移動可能に保持される。粉塵流路58には図示しない外部の集塵機、あるいは、回転打撃工具本体に内蔵された図示しない集塵ファンなどの集塵機と連結可能である。シール55,55′、55″はゴム等の弾性部材で形成されており、様々な径の先端工具に対応できるよう、放射状にのびた切り込みが設けられる。上記構成により、コンクリート等の穿孔時に発生する粉塵は、図示しない集塵機の吸引力により、吸塵覆54、粉塵流路58を介して図示しない集塵容器に集塵される。
【0004】
【特許文献1】実公平6−32248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
穿孔作業により発生する粉塵は、先端工具の回転により先端工具の外周方向へ放射状に拡散していくが、上述した従来の穿孔工具においてでは、吸引口56が一箇所であるため、吸引口56から遠い側に拡散した粉塵を吸引しきれない場合が生じる。そのため良好な吸引をするためには、集塵機の吸引出力を上げる必要があった。
【0006】
本発明の目的は、発生した粉塵を効率よく吸引できる集塵装置を有する穿孔工具を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、コンパクトで吸塵効果を向上させた集塵装置を有する穿孔工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
【0009】
本発明の一つ特徴によれば、電気モータ等の駆動源と、駆動源の回転力を伝達して先端工具を駆動する伝達駆動部と、先端工具によって穿孔される被削材から発生じる粉塵を吸引する集塵装置を有する穿孔工具において、集塵装置に、先端工具を貫通させる貫通部と、発生する粉塵とその周囲の空気を吸引するための吸引口と、吸引口につながる流路を有する集塵アダプタを設け、吸引口を貫通部に2つ以上設けたことを特徴とする。この集塵アダプタは、貫通穴の形成された前面壁及び後面壁と、これらをつなぐものであって先端工具の回転軸と略平行な内周壁と、外周壁を有し、貫通部は内周壁により画定され、吸引口は内周壁に形成された複数の穴又はスリットである。複数の穴又はスリットは、例えば、円筒形の内周壁の円周上に均等に配置するように形成される。また、内周壁に形成された複数の穴又はスリットは、穿孔工具の軸方向及び円周方向のサイズによって、その大きさを任意に設定可能である。
【0010】
本発明の他の特徴によれば、内周壁は、集塵アダプタ本体部から着脱可能で貫通穴を有する円環状部材上に形成される。円環状部材は、集塵アダプタ本体部から穿孔工具本体側に着脱可能であり、貫通穴に、先端工具との隙間を塞ぐための弾性材で構成されたシール部材を設ける。また、円環状部材は、集塵アダプタ本体部から穿孔工具本体とは反対側に着脱可能とすることも可能である。
【0011】
本発明のさらに他の特徴によれば、集塵アダプタは、貫通された先端工具付近に空気を吹き付けるための吹出口と、吹出口に清浄空気を送出するための吹出流路を有する。この吹出しのための空気は、電気モータの回転軸に設けられたファンによって、吸引口から空気を吸引し、吹出口への送出用の空気の供給を行うようにすれば効率的である。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、駆動源と、駆動源の回転力を伝達して先端工具を駆動する伝達駆動部と、先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を吸引する集塵装置を有する穿孔工具において、集塵装置に、先端工具を貫通させる貫通部と、発生する粉塵とその周囲の空気を吸引するための流路を有する集塵アダプタを設け、集塵アダプタ内部に、集塵アダプタの外周壁と先端工具の間に位置する壁が設けられる。この壁によって、粉塵とその周囲の空気を吸引する吸引口が形成される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の穿孔工具によれば、集塵アダプタは貫通部に吸引口を2つ以上有するため、先端工具から拡散するように移動する粉塵を、2つ以上の吸引口によって吸引することができるために、効率よく吸引することができる。
【0014】
請求項2記載の穿孔工具によれば、集塵アダプタは、貫通穴の形成された前面壁及び後面壁と、これらをつなぐものであって先端工具の回転軸と略平行な内周壁と外周壁を有し、貫通部は内周壁により画定され、吸引口は内周壁に形成された複数の穴又はスリットであるため、発生した粉塵を、複数の吸引口から内周壁、外周壁、後面壁、前面壁により包囲された空間を経由して集塵のための流路部へと吸引することが可能となり、粉塵が包囲された空間より漏れることを抑制することができる。
【0015】
請求項3記載の穿孔工具によれば、内周壁は、集塵アダプタ本体部から着脱可能で貫通穴を有する円環状部材上に形成されるため、組み立て性が向上するだけでなく、異なる吸引口の内壁を持つ円環状部材を、容易に交換可能とすることができる。特に、先端工具の径に合わせて内径の異なる内周壁を取り付けることで吸引口を先端工具に近づけることができ、粉塵が拡散する前に発生した粉塵を吸引することができるために、発生した粉塵をより効率的に集塵することができる。
【0016】
請求項4記載の穿孔工具によれば、円環状部材は、集塵アダプタ本体部から穿孔工具本体側に着脱可能であり、貫通穴に、先端工具との隙間を塞ぐための弾性材で構成されたシール部材を設けたので、貫通穴から粉塵が漏れるのを防止することができる。
【0017】
請求項5記載の穿孔工具によれば、円環状部材は、集塵アダプタ本体部から穿孔工具本体とは反対側に着脱可能であるために、先端工具を穿孔工具本体に取付けたままの状態で、円環状部材を取付けることができるために、円環状部材の着脱が容易な集塵アダプタを提供することができる。
【0018】
請求項6記載の穿孔工具によれば、集塵アダプタは、貫通された先端工具付近に空気を吹き付けるための吹出口と、吹出口に清浄空気を送出するための吹出流路を有するため、集塵アダプタ内部や穿孔穴内に残留する粉塵を吹き出した後に、集塵アダプタの吹出口により集塵することができるために、粉塵が集塵アダプタ内部や穿孔穴内に残留することを抑制することができ、集塵アダプタ内部や穿孔穴内に残留する粉塵の除去性能を向上させることができる。
【0019】
請求項7記載の穿孔工具によれば、電気モータの回転軸にファンを設け、ファンの回転力によって吸引口からの吸引と、吹出口への送出用の空気の供給を行うため、駆動用の一つのモータで吸引と送出の動力をもまかなうので、2つモータを必要としないために、コンパクトで効率の良い穿孔工具を実現できる。
【0020】
請求項8記載の穿孔工具によれば、内周壁に形成された複数の穴又はスリットは、円筒形の内周壁の円周上に均等に配置するように形成されるため、集塵アダプタ内で複数の穴又はスリットによって均等に吸引されるために、集塵アダプタ内での吸引状況の差が生じにくく、効率の良い吸引を行うことができる。
【0021】
請求項9記載の穿孔工具によれば、集塵アダプタ内部に、集塵アダプタの外周壁と先端工具の間に位置する壁が設けられるので、この壁により集塵アダプタ内部の領域を占めるために、集塵アダプタ内部において粉塵とその周囲の空気を吸引する流速を大きくすることができ、集塵のための流路部へとより多くの粉塵とその周囲の空気を吸引することができる。
【0022】
請求項10記載の穿孔工具によれば、集塵アダプタ内の壁によって吸引口が形成されるので、流速をより大きくすることができ、集塵のための流路部へと更に多くの粉塵とその周囲の空気を吸引することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明による穿孔工具の第一の実施形態を図1〜図3を用いて説明する。図1は本発明の実施形態に係る穿孔工具の全体を示す図であり、その一部に破断した断面を示す。図2は図1の回転打撃工具101のA−A部の部分断面図である。図3は集塵アダプタ20の組み立て構造を示す斜視図である。
【0024】
穿孔工具の一例である回転打撃工具101は、動作モードとして回転・打撃モード、回転モード、打撃モード及びニュートラルモードの4つのモードを備えるものであって、そのハウジング2には、駆動源であるモータ7と、図示しない打撃機構部、回転伝達機構部及び動作モード切替機構部を有する。本体のハウジング2の後端部(図1に示した方向を前後、上下として説明する。以下、同じ。)にはハンドル3が設けられ、ハンドル3にはスイッチ4が設けられるとともに、給電用の電気コード5が接続される。回転打撃工具101の先端部(前端部)には工具保持部10が設けられ、これによってドリル刃などの先端工具11が装着可能である。モータ7の回転力は、図示せぬ回転伝達機構部及び打撃機構部を介して、回転力及び/又は打撃力として先端工具11に伝達され、先端工具11が被削材29に対し所要の作業を行う。
【0025】
被削材29への穿孔作業では、作業者は回転打撃工具101のハンドル3を保持し、スイッチ4を操作することで、モータ7を駆動し、モータ7の回転力が伝達されることにより、回転打撃工具101の先端部に装着された先端工具11が回転・打撃する。作業者は回転打撃工具101を被削材29の方向へ押し付けることにより、先端工具11が被削材29を破砕し、被削材29に穿孔穴を生じさせる。
【0026】
先端工具11は、被削材29を破砕する先端部11aと、被削材29を破砕することで生じる粉塵を穿孔穴内で移動させる機能をもつ螺旋部11bを有する。図1に示すように、先端工具11の先端部付近は、集塵アダプタ10の貫通部27を貫通し、被削材29に達する。この貫通領域たる貫通部27の長さは、先端工具11の全長のうちのほんの一部分である。
【0027】
先端工具11の駆動時には、モータ7は回転するとともに発熱するため、その回転軸8にはモータ7を冷却するために空気を吸引する冷却ファン9が設けられる。冷却ファン9の吸引力により、モータ7のテールカバー12に設けられた図示せぬ冷却風取り入れ口から空気が流入し、モータ7を冷却した後、冷却ファン9へ到達し、図示せぬ冷却風排出口より回転打撃工具101の外部へと排出される。
【0028】
集塵アダプタ20は、後面壁23、前面壁24の間が、外周壁21と内周壁22で囲まれた2重構造となっている。内周壁22の内周側は空洞であり、ここが先端工具11を貫通させる領域である貫通部27となる。集塵アダプタ20は、さらに外周壁21と連結される集塵アダプタ流路部25を有し、先端工具11に取り付けられた集塵装置のスライダー部17に固定される。スライダー部17は、その後方において集塵装置のハウジング30に取り付けられる。集塵アダプタ20、スライダー部17及びハウジング30によって集塵装置が構成され、集塵装置は回転打撃工具101に着脱可能である。
【0029】
集塵アダプタ20の内周壁22は、先端工具の回転軸と略平行又は同軸な略円筒形状であり、その円周方向には複数の独立した吸引口26が形成される。後面壁23の貫通部27の入口は、ゴム等の弾性材で形成され様々な径の先端工具に対応できるよう放射状にのびた切り込みを有するシール28が配設される。集塵アダプタ20は回転打撃工具101に取り付けられた集塵装置のスライダー部17の先端に保持される。スライダー部17は2つの部材によって構成され、1つの部材がスプリング18の付勢力に抗して他の部材に入り込むことによって、収縮する。スライダー部17の内部には伸縮可能な粉塵流路19が設けられ、集塵アダプタ20は被削材29の方向(前方)に付勢される。スライダー部17は、最大伸長位置から最小収縮位置まで伸縮可能であり、その伸縮によって集塵アダプタ20が先端工具11の螺旋部11bの前端から後端付近までに位置することが可能となる。
【0030】
被削材29への穿孔作業時には、穿孔穴が深くなって行くことに伴い回転打撃工具101が被削材29の方向へと移動していく。これに伴い、スプリング18が押し縮められ、スライダー部17が収縮することで、集塵アダプタ20の前面壁24は常に被削材29と接触関係を保つ。
【0031】
次に、本発明を適用した回転打撃工具101において、作業時に生じる粉塵を集塵する工程について説明する。被削材29への穿孔作業において、作業者は回転打撃工具101のハンドル3を保持し、電源スイッチ4を操作することで、モータ7を駆動し、モータ7の駆動力により、工具保持部10に装着された先端工具11を回転・打撃させ、回転打撃工具101を被削材29の方向へ付勢することで、先端工具11が被削材29を破砕し、穿孔穴を生じさせる。先端工具11の先端部11aから生じた粉塵は、先端工具11の回転と螺旋部11bの形状とあいまって、集塵アダプタ20内部へ移動する。
【0032】
集塵アダプタ20の内部において粉塵は先端工具11の回転により先端工具11の外周方向に向かって放射状に拡散していく。本実施形態による集塵アダプタ20においては、図2に示すように、粉塵の拡散方向と一致するように、集塵アダプタ20の内周壁22に複数の吸引口26を設ける。吸引口26の形状は、丸い穴、楕円形の穴、四角形の穴など任意の形状が可能である。また、穴ではなく、軸方向(図1でいえば前後方向)に伸びるスリットであっても良い。吸引口の個数、位置は、穿孔に使用される先端工具11に合うように任意に選択することが可能である。この吸引口26を複数設けたことによって、集塵アダプタ20内部に拡散した粉塵を効率的に吸引することが可能となる。
【0033】
集塵アダプタ後側部分20aには、図3に示すように先端工具11が貫通するシール28が形成され、外周壁21、後面壁23、集塵アダプタ流路部25を含んで構成される。これらの構造が集塵アダプタの本体部分であり、外周壁21の外周側の一部には、集塵アダプタ前側部分20bを保持する為の溝21a及び凹部21bが複数設けられる。集塵アダプタ前側部分20bは、集塵アダプタ本体部に着脱される部材であり、被削材29に当接する側に取り付けられる。その部材は、貫通用の穴を有する円環状の前面壁24と、前面へ気から鉛直に伸びる略円筒形の内周壁22から構成され、内周壁22には複数の吸引口26が形成される。これらは例えばプラスチックにより一体成型される。吸引口26の形状は、本実施形態では、先端工具11の軸方向いっぱいに伸びるスリット状である。略円筒形の内周壁22の直径やスリットの大きさは、使用される先端工具11の径や、被削材29から発生する切屑や粉塵の大きさに合わせて適宜設定すればよい。前面壁24の円周部の複数箇所、例えば2カ所において、取り付け部24aが設けられ、取り付け部24aには集塵アダプタ後側部分20aの凹部21bに嵌合する凸部24bが設けられる。集塵アダプタ前側部分20bと集塵アダプタ後側部分20aの接合部には、ゴムやスポンジ等の弾性材を配置し、密着性を高めることが好ましい。
【0034】
以上のように集塵アダプタ前側部分20bを着脱交換可能としたので、先端工具11の径に適合するように、内周壁22の直径や吸引口26の数、大きさ、配置が異なる集塵アダプタ前側部分20bに変更でき、先端工具11の径を変更した場合でも粉塵を効率的に吸引することが可能となる。尚、本実施例においては集塵アダプタ本体部(後側部分)と着脱部材(後側部分)の取り付けに凹凸部の嵌合を利用したが、ねじ止めや他の嵌め止め等の他の手段を用いてもよい。
【0035】
集塵アダプタ20内部へ移動した粉塵は、モータ7の回転軸8に設けられた集塵ファン15の吸引力により吸引口26から吸引され、集塵アダプタ流路部25から図1に示した矢印の方向に沿って粉塵流路19へ導かれ、集塵ケース13内のフィルタ14にて空気と粉塵に分離され、粉塵は集塵ケース13内へ貯蔵される。一方、フィルタ14により濾過された空気のみが空気通路16を通過し集塵ファン15へ到達し、図示せぬ排出口より回転打撃工具101の外部へと排出される。
【0036】
フィルタ14は集塵ケース13から着脱可能とするのが好ましい。そのため、集塵装置のハウジング30の下部又は側部を開放状態で構成し、又は開閉可能に構成すると良い。集塵ケース13を集塵装置より着脱可能とする構成とすれば、集塵ケース13内部に貯蔵された粉塵を容易に廃棄することができる。また、フィルタ14が目詰まりなどした際に容易にフィルタ14の交換をすることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、発生した粉塵を吸引口から漏れなく吸引可能とする集塵装置を実現できる。
【0038】
次に、図4を用いて、本発明の第1の実施形態の変形例の1つを示す。図4は集塵アダプタ20の別の組み立て構造を示す斜視図である。
【0039】
図4においては、図3に示す構造に比べて着脱可能とした部材を、前側(被削材29側)でなく、後側(回転打撃工具101側)にしたものである。集塵アダプタ本体部である集塵アダプタ後側部分20cに、先端工具11が貫通するシール(図示せず)が形成され、外周壁21’、前面壁24’、集塵アダプタ流路部25は集塵アダプタ前側部分20d側に形成される。外周壁21’の外周部には、集塵アダプタ後側部分20cを保持する為の溝21a及び凹部21bが設けられる。集塵アダプタ前側部分20dが、被削材29に当接する側であり、前面壁24’には略円形の貫通穴27aが形成される。
【0040】
内周壁22には複数の吸引口26が形成される。吸引口26の形状は、先端工具11の軸方向に伸びるスリット状である。後面壁23’の円周部の複数箇所、例えば2カ所において、取り付け部23aが設けられ、取り付け部23aには集塵アダプタ前側部分20dの凹部21bに嵌合する凸部23bが設けられる。取り付け部23aの凸部23bとは反対の端は、集塵アダプタ後側部分20cの着脱を容易とするように、つまみ部分23cが突出して形成される。集塵アダプタ後側部分20cと集塵アダプタ前側部分20dの接合部には、ゴムやスポンジ等の弾性材を配置し、密着性を高めることが好ましい。
【0041】
図4においては、先端工具11が貫通するシールを有する側の部材、即ち、集塵アダプタ後側部分20cが着脱可能に構成したため、作業者が使用する先端工具11に合わせてシールを容易に交換することができる。また、シールが摩耗した場合にも、着脱可能部材だけを交換すればよいので、交換パーツの費用が安くすみ、シールの交換も容易となる。
【0042】
次に、本願発明の第2の実施形態について図5〜10を用いて説明する。尚、第一の実施形態と同様な部材については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
図5において、回転打撃工具101の構成は、図1で説明した構成とほぼ同じであり、特に違うところは、モータ7の回転軸8に設けられた集塵ファン15aから排出される空気の流れである。また、ハウジング30、スライダー部17、集塵アダプタ20を有する集塵装置には、集塵のための粉塵流路19だけでなく、空気の吹出しのための吹出流路32及び吹出口36が設けられる。
【0044】
穿孔作業時に生じる粉塵は、集塵アダプタ20e内部へ移動し、集塵ファン15aの作用によって、粉塵及び空気が集塵アダプタ20eから粉塵通路19へと移動する。その後に集塵ケース13に設けられたフィルタ14によって、粉塵は集塵ケース13内部に貯蔵され、フィルタ13により濾過された空気のみが空気通路16へと移動する。空気通路16に移動した空気は、集塵ファン15aによって、その一部が集塵アダプタ20eに還流され、残りの空気が図示しない排出口を介して本体外部へ排出される。還流される空気は、吹出流路32へ移動する。吹出流路32は、スライダー部17の内部で、粉塵通路19の上側に設けられる。尚、吹出流路32と粉塵流路19の配置は、上下でも良いし、左右でも良いし、又は、同軸状にして内側に粉塵流路19で外側に吹出流路32でも良い。
【0045】
吹出流路32を通過した空気は、集塵アダプタ20eの後端側を通り、集塵アダプタ20eの上部にある吹出口36へと案内される。吹出口36は、集塵アダプタ20eに形成される。この吹出口36によってフィルタ13によって濾過された清浄な空気が、先端工具11の先端、及び/又は、被削材29の付近に吹き付けられる。このように先端工具11の先端付近に風を吹きつけることができるため、滞留している粉塵を効果的に巻き上げ、比較的少ない吸引力にて集塵することができ、さらに、集塵アダプタ20eの外部への粉塵が漏れることも抑制することができる。
【0046】
吹出口36の形状、設置位置をさらに説明する。図6は、図5の集塵アダプタ20eの詳細を示す拡大断面図である。集塵アダプタ20eの内部の流路は、その前後方向に2つに分かれており、前側に集塵アダプタ流路部25a、後側に吹出流路35a、35bが形成される。吹出流路35aは吹出流路35bに連結されており、内周壁22の内周側に設けられた吹出口36に連結される。吹出口36を設ける位置は任意であるが、図7に示すように、内周壁22の内側であって、上方の位置、好ましくは最上部になる位置に設けると良い。このように、吹出口36を吸引口26の位置でなく、吸引口26からずらした位置であって、集塵アダプタ流路部25aと離れた側の内周壁22に設けられるので、吹き付けた空気がすぐに吸引口26から吸引されることを防止できるので、効率よく空気を吹き付けることができる。
【0047】
図8は、図7において先端工具11がシール28を貫通した場合の状態を示す図である。図7と図8の比較により、先端工具11の直径に比べ、シール28に形成されている穴の径が小さいということが理解できるであろう。
【0048】
図9は、先端工具で穿孔作業を行っているときの状態を示す図である。穿孔作業時には、吹出口36の先端がふさがれるため、吹出口36の先端部に形成される切り込みにより先端工具11側、即ち貫通孔の中央方向に吹き出す空気が流れ、その後粉塵と共に周囲の吸引口26に吸引される。穿孔作業の終了時には、回転打撃工具101をずらして、集塵アダプタ20eの吹出口36の位置が、開けられた孔にあわせるようにすることにより、図10で示すように穿孔された孔のなかから粉塵を効率よく吐き出させることができ、吐き出された粉塵は周囲の吸引口26によって効率よく吸引される。
【0049】
本願発明の第2の実施形態によれば、吹出口36は、集塵アダプタ20eに形成されるため、吹き付け手段として集塵アダプタと別の部材を追加する必要がない。また、吹き付けの際に用いる風は、集塵のために用いる集塵ファン14により起こされるため、新たに送風用ファンなどの送風装置を追加する必要がない。
【0050】
さらに、スライダー部31の内部に設けられた吹出流路32の内部を吹き付けに用いる空気が通過するために、吹き付けに用いる空気の風を移動させるために、スライダー部31以外の新たな部材を設ける必要がないという効果がある。
【0051】
次に、本願発明の第3の実施形態について図11を用いて説明する。集塵アダプタ20の内部において粉塵は先端工具11の回転により先端工具11の外周方向に向かって放射状に拡散していく。第3の実施形態による集塵アダプタ20cにおいては、図11に示すように、外周壁21cと先端工具11の間の一部には壁22cが設けられる。この壁22cによって、粉塵とその周囲の空気を吸引する2つの吸引口26cが形成される。尚、本実施形態では、壁22cによって2つの吸引口26cが形成されるようにしたが、2つに限らずに、3つ以上形成しても良い。
【0052】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明ように、本発明によれば、穿孔作業時に生じる粉塵を効率的に集塵することが可能となり、作業現場及び作業者の環境を改善することが可能となる。尚、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、集塵アダプタ20、20aの各寸法、形状は任意に設定して良い。また、後面壁23に配設されるシール28の代わりに、放射状にのびるブラシを配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る穿孔工具を示す全体図(一部に断面を示す)である。
【図2】図1の集塵アダプタ20のA−A部の部分断面を示す図である。
【図3】図1の集塵アダプタ20の組み立て構造を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態の変形例を示す集塵アダプタ20の組み立て構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る穿孔工具を示す全体図(一部に断面を示す)である。
【図6】図5の集塵アダプタ20eの詳細を示す拡大断面図である。
【図7】図6の集塵アダプタ20eのB−B部の断面を示す断面図である。
【図8】図7において、先端工具11が挿入されたときの状態を示す断面図である。
【図9】図5の集塵アダプタ20eを用いて、穿孔作業を行っているときの状態を示す図である。
【図10】図5の集塵アダプタ20eを用いて、穿孔作業後の集塵状態を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る集塵アダプタ20の部分断面を示す図である。
【図12】従来の穿孔工具を示す全体図である。
【符号の説明】
【0055】
1、101 回転打撃工具 2 ハウジング 3 ハンドル
4 スイッチ 5 電源コード 6 モード切替スイッチ 7 モータ
8 回転軸 9 冷却ファン 10 工具保持部 11 先端工具
11a 先端部 11b 螺旋部 12 テールカバー 13 集塵ケース
14 フィルタ 15 集塵ファン 16 空気通路 17 スライダー部
18 スプリング 19 粉塵流路 20 集塵アダプタ
20a 集塵アダプタ後側部分 20b 集塵アダプタ前側部分
21、21’、21c 外周壁 21a 溝部 21b 凹部
22、22c 内周壁 23 後面壁 24、24’ 前面壁
24a 取り付け部 24b 凸部 25 集塵アダプタ流路部
26、26c 吸引口 27、27c 貫通部
27a 貫通穴 28 シール 29 被削材
30 (集塵装置の)ハウジング 31a 固定パイプ
31b スライダーパイプ 32 吹出流路 36 吹出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、該駆動源の回転力を伝達して先端工具を駆動する伝達駆動部と、前記先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を吸引する集塵装置を有する穿孔工具において、
前記集塵装置に、前記先端工具を貫通させる貫通部と、前記発生する粉塵とその周囲の空気を吸引するための吸引口と、該吸引口につながる流路を有する集塵アダプタを設け、
前記吸引口を前記貫通部に2つ以上設けたことを特徴とする穿孔工具。
【請求項2】
前記集塵アダプタは、貫通穴の形成された前面壁及び後面壁と、これらをつなぐものであって前記先端工具の回転軸と略平行な内周壁と、外周壁を有し、
前記貫通部は前記内周壁により画定され、前記吸引口は前記内周壁に形成された複数の穴又はスリットであることを特徴とする請求項1に記載の穿孔工具。
【請求項3】
前記内周壁は、前記集塵アダプタ本体部から着脱可能で貫通穴を有する円環状部材上に形成されることを特徴とする請求項2に記載の穿孔工具。
【請求項4】
前記円環状部材は、前記集塵アダプタ本体部から前記穿孔工具本体側に着脱可能であり、
前記貫通穴に、前記先端工具との隙間を塞ぐための弾性材で構成されたシール部材を設けたことを特徴とする請求項3に記載の穿孔工具。
【請求項5】
前記円環状部材は、前記集塵アダプタ本体部から前記穿孔工具本体とは反対側に着脱可能であることを特徴とする請求項3に記載の穿孔工具。
【請求項6】
前記集塵アダプタは、貫通された先端工具付近に空気を吹き付けるための吹出口と、該吹出口に清浄空気を送出するための吹出流路を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の穿孔工具。
【請求項7】
前記駆動源は電気モータであり、該電気モータの回転軸にファンを設け、該ファンの回転力によって前記吸引口からの吸引と、前記吹出口への送出用の空気の供給を行うことを特徴とする請求項6に記載の穿孔工具。
【請求項8】
前記内周壁に形成された複数の穴又はスリットは、円筒形の内周壁の円周上に均等に配置するように形成されることを特徴とする請求項2に記載の穿孔工具。
【請求項9】
駆動源と、該駆動源の回転力を伝達して先端工具を駆動する伝達駆動部と、前記先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を吸引する集塵装置を有する穿孔工具において、
前記集塵装置に、前記先端工具を貫通させる貫通部と、前記発生する粉塵とその周囲の空気を吸引するための流路を有する集塵アダプタを設け、
前記集塵アダプタ内部であって、集塵アダプタの外周壁と先端工具の間には壁が設けられることを特徴とする穿孔工具。
【請求項10】
前記集塵アダプタは、前記壁によって、粉塵とその周囲の空気を吸引する吸引口が形成されることを特徴とする請求項9に記載の穿孔工具。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−202256(P2009−202256A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45321(P2008−45321)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】