説明

穿孔工具

【課題】
先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を、空気を吹き付けながら集塵する集塵装置を備えた穿孔工具において、少ない吸引力で効率よく集塵でき、外部へ粉塵が漏れることを効果的に防止する。
【解決手段】
モータと、モータの回転力を伝達して先端工具を回転させる伝達駆動部と、先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を集塵するとともに穿孔される箇所付近に空気を吹き付ける集塵装置を有する穿孔工具であって、集塵された粉塵混じりの空気を濾過するフィルタ手段と、濾過された空気を取入れて円周方向に送出する遠心ファン14を設ける。遠心ファン14は、取入れた空気の一部を吹き付けのために集塵装置に還流させる送気流口36と、残りの空気を外部に排出する排出口35a、bが形成されたハウジング2a内に配置し、その排出口35a、bを、遠心ファン14の回転方向に対して、送気流口36よりも回転方向後方に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔穴を開けるために電動モータやエンジン等で駆動される穿孔工具に関し、特に、先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を、空気を吹き付けながら集塵する集塵装置を装着できる穿孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやレンガといった石材に対し穿孔穴を開けるために穿孔工具が広く用いられている。穿孔工具は、ドリル刃などの先端工具を駆動することにより被削材に穿孔穴を開けるものであり、一般的な回転ドリルや、ドリル刃を回転打撃させるハンマドリルや、振動ドリルなどがある。穿孔工具を使用して穿孔作業を行う際には粉塵が発生するため、作業者は防塵マスクや保護眼鏡等を装着して作業をすることがある。近年、作業の際に発生する粉塵を取り除くために、粉塵を吸い取る集塵装置を配設したものが広く用いられるようになってきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、電気ドリル装置に、粉塵流路が接続された吸塵覆を設け、外部の集塵機により空気を吸引することにより、ドリルの先端付近で発生する粉塵を吸引する粉塵吸引装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】実公平6−32248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の記載の装置では、穿孔作業時に生じる粉塵は、ドリルの螺旋構造により吸塵覆の内部へ移動し、外部の集塵機によって吸引されるが、穿孔した穴のなかには粉塵が残っていたり、吸引ヘッド内でも吸引されずに残ってしまう粉塵もあり、完全に粉塵を吸引することは難しく、吸引漏れが生じていた。
【0006】
本発明の目的は、粉塵と共に空気を吸引する吸引口と、空気を吹き付ける吹出口を設けた集塵装置を有する穿孔工具において、少ない吸引力で効率よく集塵でき、外部へ粉塵が漏れることを効果的に防止することのできるようにすることにある。
【0007】
本発明の別の目的は、穿孔穴近傍へ吹き付ける空気の風量を十分に確保することで、穿孔作業時に生じる粉塵の集塵効率を向上させ、穿孔作業後に穿孔穴内に残留する粉塵の除去性能も向上させた穿孔工具を実現することにより作業現場及び作業者の環境を改善することにある。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、集塵装置の吸引口からの空気流と吹出口に空気を送る送風装置を、1つのファンで効率良く実現できる穿孔工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
【0010】
本発明の一つの特徴によれば、電気モータなどの駆動源と、駆動源の回転力を伝達して先端工具を回転させる伝達駆動部と、先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を集塵するとともに穿孔される箇所付近に空気を吹き付ける集塵装置を有する穿孔工具であって、集塵された粉塵混じりの空気を濾過するフィルタ手段と、濾過された空気を取入れて円周方向に送出する遠心ファンを設け、遠心ファンは、取入れた空気の一部を吹き付けのために集塵装置に送るための送気流口と、残りの空気を外部に排出するための排出口が形成された略円筒形の内壁を持つハウジング内に配置し、送気流口のファンの回転方向前方における排出口までの距離は、前記送気流口の回転方向後方における排出口までの距離よりも大きいように構成した。遠心ファンは、電気モータの回転軸に取り付け、穿孔工具のハウジング内に内蔵することができる。このハウジングは、穿孔工具の本体のハウジングと一体であっても良いし、モータ部のハウジングであっても良いし、遠心ファンを収容するための専用のハウジングであっても良い。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、排出口はハウジングの複数箇所に設けられ、排出口はいずれも送気流口の回転方向後方で回転角180度以内に配置すると良く、例えば、第1の排出口を送気流口の回転方向後方で回転角90度以内に、第2の排出口を送気流口の回転方向後方で回転角90度から180度以内に配置することができる。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、ハウジングは、遠心ファンの周囲を囲む略円筒形の内壁を有し、送気流口の回転角前方の遠心ファンの外周端と内壁との距離は、送気流口付近が最も遠く、送気流口から遠心ファンの軸を経てた反対側において外周端と内壁との距離が近く構成され、送気流口付近から反対側に向かって徐々にその距離が近くなるようにする。これは、円筒形のハウジングの内壁の中心軸が、遠心ファンの回転軸に対して、送気流口側にオフセットするように、ハウジングの内壁を形成すれば良い。この構成は、遠心ファンのハウジングが、穿孔工具の本体ハウジングと一体で成型されている場合に好的である。また、これとは逆に、遠心ファンの回転軸が前記内壁の中心軸より前記送気流口と反対側にずれるように、遠心ファンをハウジング内に配置するようにしても良い。
【0013】
本発明の他の特徴によれば、ハウジングの内壁で、送気流口の後方側に、遠心ファンの中心方向に突出するガイド部を形成する。ガイド部の形状は、遠心ファンにより発生される空気流をできるだけ多く送気流口に導くために、整流効果を考慮して決定すればよい。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、送気流口が、先端工具取り付け方向のハウジングにおいて、遠心ファンの回転方向後方に設けられるようにした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載発明によれば、送気流口のファンの回転方向前方における排出口までの距離は、送気流口の回転方向後方における排出口までの距離よりも大きくしたので、送気流口の前方で圧力を高めることができ、送気流口に強い空気流を送ることができ、集塵装置は少ない吸引力で効率よく集塵でき、外部へ粉塵が漏れることを効果的に防止することができる。
【0016】
請求項2に記載発明によれば、排出口は少なくとも2つ設けられ、送気流口の遠心ファンの回転方向前方における排出口までの距離は、送気流口の回転方向後方における排出口までの距離よりも大きいので、穿孔装置の本体ハウジングの横と後ろにそれぞれ排出口を設けることができる。
【0017】
請求項3に記載発明によれば、駆動源として電気モータを利用し、遠心ファンを電気モータの回転軸に設けたので、遠心ファンを本体ハウジング外に設け、また、遠心ファンの駆動源を設ける必要がないために、遠心ファンを本体ハウジング内に一体で形成でき、コンパクトな穿孔工具を実現できる。
【0018】
請求項4に記載発明によれば、排出口をハウジングの複数箇所に設け、いずれも送気流口の回転方向後方で回転角180度以内に配置するので、吸引された空気流のすべてではなく一部という限られた量を、高速、高圧力で送気流口に送ることができる。
【0019】
請求項5に記載発明によれば、第1の排出口を送気流口の回転方向後方で回転角90度以内に、第2の排出口を前記送気流口の回転方向後方で回転角90度から180度以内に配置したので、ハウジングの、横のみ、又は、後のみの場合とは異なり、その圧力を分散させて排出口より排出することができる。
【0020】
請求項6に記載発明によれば、送気流口の回転角前方の遠心ファンの外周端と内壁との距離は、前記送気流口付近が最も遠く、前記送気流口から遠心ファンの軸を経てた反対側において徐々にその距離が近くなるようにしたので、円周端と内壁との間に高い圧力の空気が移動可能となり、その高い圧力によって、送気流口に強い空気流を送ることができる。
【0021】
請求項7に記載発明によれば、円筒形のハウジングの中心軸が、遠心ファンの回転軸に対して、送気流口側にオフセットするようにハウジングの内壁が形成されるので、内壁の形状を変えるだけで送気流口への空気流の強さを調整することができる。
【0022】
請求項8に記載発明によれば、空気流口の後方側に、遠心ファンの中心方向に突出するガイド部を形成したので、ガイド部によって送気流口へと遠心ファンによる風を案内することができるため、より効率的に送気流口へと風を案内することができ、送気流口への空気流の強さを一層強くすることができる。
【0023】
請求項9に記載発明によれば、送気流口の回転方向前方に、先端工具取り付け方向のハウジングがあるために、ハウジングを利用して送気流口の前方で圧力を高めることができるために、高い圧力によって送気流口に強い空気流を送ることができる。
【0024】
請求項10に記載発明によれば、送気流口のファンの回転方向前方で、送気流口の前方での圧力が高くなるように構成したので、送気流口に強い空気流を送ることができ、集塵装置は少ない吸引力で効率よく集塵でき、外部へ粉塵が漏れることを効果的に防止することができる。
【0025】
請求項11に記載発明によれば、遠心ファンの回転軸がハウジングの内壁の中心軸より送気流口と反対側にずれるように、遠心ファンをハウジング内に配置したので、モータの設置位置ごとずらすだけでハウジングの形状を変えずに送気流口に強い空気流を送ることができるので、集塵装置は少ない吸引力で効率よく集塵でき、外部へ粉塵が漏れることを効果的に防止することができる。
【0026】
請求項12に記載発明によれば、遠心ファンと内壁との距離は、送気流口付近がもっとも遠く、送気流口から回転方向前方に向かって徐々に近くなるように前記遠心ファンを取り付けたので、送気流口に強い空気流を送ることができる。
【0027】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る穿孔工具を図1〜図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態を示す穿孔工具の側面図であり、図2はその使用時の状態を示す側面図であり、図3は、集塵アダプタ10における空気の流れを説明するための図である。
【0029】
ハンマドリル本体1は、動作モードとして回転・打撃モード、回転モード、打撃モード及びニュートラルモードの4つのモードもしくはいずれかのモードを備えるものであって、そのハウジング2には、モータ18からなる駆動部と、打撃機構部と、回転伝達機構部及び切替機構が内蔵される。そして、ハウジング2の後端部(本明細書では、図1で示すように前後、上下の方向を定義する。以下、同じ)にはハンドル3が設けられ、このハンドル3には電源スイッチ4が設けられるとともに、給電用の電気コード5が接続される。ハウジング2の側部には、動作モード切替用のダイヤル状の切替部材6が回動可能に設けられる。また、ハンマドリル1の先端部には先端工具26が装着され、この先端工具26が打撃力又は回転力或はその双方を受けて被削材8に対し所要の作業を行う。
【0030】
ハンマドリル本体1において、動作モードの回転・打撃モード、回転モードによる作業時に生じる粉塵を集塵する工程について図1を参照して説明する。被削材8への穿孔作業において、作業者はハンマドリル1のハンドル3を保持し、電源スイッチ4を操作することで、モータ18を駆動し、モータ18の駆動力をもとに、ハンマドリル本体1の先端部に装着された先端工具26を回転・打撃させる。作業者はハンマドリル本体1のハンドル3を保持し、ハンマドリル1を被削材8の方向へ押し付けることで、先端工具26が被削材8を破砕し、被削材8に穿孔穴を生じさせる。
【0031】
先端工具26は被削材8を破砕する先端部26aと、被削材8を破砕することで生じる粉塵を穿孔穴内で移動させる機能をもつ螺旋部26bを有する。作業時に先端工具26の先端部26aから生じた粉塵は、先端工具26の回転と螺旋部26bの形状とあいまって、集塵アダプタ10内部へ移動する。集塵アダプタ10内部へ移動した粉塵は、矢印に従って、モータ18の回転軸19に設けられた集塵ファン14によって発生される吸引力によって、吸引口10bから粉塵流路11へ導かれ、集塵装置のハウジング33に設けられた集塵ケース12内で、フィルタ13を通過することにより空気と粉塵に分離、濾過され、粉塵は集塵ケース12内へ貯蔵される。尚、集塵ケース12は着脱可能とすることが好ましく、集塵ケース12を脱着することで、貯まった粉塵を廃棄することができ、またフィルタ13を清掃したり、交換したりすることが可能となる。
【0032】
一方、分離された清浄空気は空気通路15を通って集塵ファン14の軸方向の取入口(図示せず)へ到達し、集塵ファン14によって、一部の空気は集塵アダプタ10へ環流され、残りは排出口よりハンマドリル本体1の外部へ排出される。この集塵ファン14付近の構造については後述する。
【0033】
ハンマドリル本体1内部には先端工具26を駆動させる動力源として、一体型のハウジング2内にモータ18が設けられる。先端工具26を駆動する際にはモータ18は回転するとともに発熱する。モータ18の発熱を抑えるためにモータ18の回転軸19には冷却ファン17が設けられ、冷却ファン17の吸引力により、テールカバー16に設けられた図示せぬ冷却風取り入れ口から冷却風を吸引し、矢印に従って、冷却風はモータ18を冷却する。冷却風はモータ冷却後、冷却ファン17へ到達し、図示せぬ排出口よりハンマドリル本体1外部へと排出される。
【0034】
集塵アダプタ10はハンマドリル本体1に取り付けられたスライダー31により保持され、スライダー31の内部にはスプリング32と伸縮可能な粉塵流路11が設けられ、スプリング32とスライダー31の構成によって、集塵アダプタ10は被削材8の方向に付勢される。穿孔穴をあける作業時には、穿孔穴が深くなって行くことに伴いハンマドリル本体1は被削材8の方向へと移動していく。集塵アダプタ10は被削材8の方向へスプリング32によって付勢されるが、穿孔時にハンマドリル本体1が被削材8の方向へと移動するのに伴い、スプリング32が押し縮められ、スライダー31が収縮することで、集塵アダプタ10は常に被削材8と接し、一定の位置関係を保つ。スライダー31は、2つの部材によって構成されており、一つの部材が他の部材の内部に入り込むことによって、スライダー31の長さは収縮する。このように、スライダー31を伸縮可能にしたために、穿孔穴の深さに対応した集塵を行なうことができる。また、スライダー31はロック機構41により任意の場所で伸縮を固定することも可能である。
【0035】
穿孔作業時に生じる粉塵は、先端工具26の螺旋構造により集塵アダプタ10内部へ移動し、集塵ファン14の吸引力によって空気と共に吸引口10bから吸引される。図3に示すように、穿孔作業時においては、空気の吐き出しをする吹出口10aから吹き出す空気は集塵アダプタ10内部へ送り込まれ、穿孔穴近傍に気流を生じさせることで、集塵能力の向上を図ることが可能となる。吹き出す空気の量は、吸引される空気の量に比べて少なくなるようにすると良い。これは、集塵アダプタ10の貫通孔(先端工具26を貫通させる穴)付近から周囲の大気を吸引させるためで、周囲の大気が吸引されることによって粉塵が周囲に飛散することを良好に防止できる。
【0036】
穿孔作業終了後には、穿孔穴内部に粉塵の一部が残留することが多い。そのため作業者は、図2に示すように、穿孔穴生成後に集塵アダプタ10の吹出口10aを穿孔穴へ近接させ、電源スイッチ4を操作することで、モータ18を駆動し、集塵ファン14を回転させる。この際、先端工具26も一緒に回転するが、その先端部26aは被削材8に接触していないため、被削材8を傷つけることはない。先端部26aと被削材8の位置関係が図2のように非接触となるように、スライダー31の最大伸長時の長さを設定するのが好ましい。
【0037】
ハンマドリル本体1内部での空気の流れは、空気通路15より集塵ファン14へ到達し、図示せぬ排出口よりハンマドリル本体1外部へと排出されるとともに、一部は集塵アダプタ10へ環流される。
【0038】
次に、集塵ファン14付近の構造について図4〜5を用いて詳述する。図4は、図2のA−A部の断面図である。集塵ファン14は、遠心ファンであり、空気通路15から流入する空気を、軸方向に形成された取入口(図示せず)より取り入れて吸引し、羽根の回転力によって円周方向に送風する。送風される空気流は、例えば図4の矢印51の方向に起こされ、その大部分は送気流口36より矢印52で示す方向に流れ、案内流路20を経由して集塵アダプタ10に送られる。残りの空気流は、ハウジング2aに形成された第1の排出口35a及び第2の排出口35bより矢印53、54に示すように外部に排出される。ここで、本実施形態では、ハウジング2aは、ハンマドリル本体1のハウジング2の一部であり、一体成形されたプラスチック製である。
【0039】
送気流口36へ流入した空気は、案内流路20を経由して集塵アダプタ10へ流入する。案内流路20は、図4の送気流口36付近では粉塵流路11の横にあるが、スライダー31においては、粉塵流路11の上側に位置するように構成される。ただし、この配置に限定する必要はなく、同軸状にして粉塵流路11を内側、案内流路20を外側に配置するようにしても良い。
【0040】
図4においては、集塵ファン14の回転方向(図では時計方向)において、排出口が2カ所設けられ、第1の排出口35aと第2の排出口35bは共に送気流口36よりも後方に配置される。ここで、前方とは、図5の概念図で示すように送気流口36からファンの中心点60に向かって参照線57を引いた場合、送気流口36から見て矢印55で示す方向の位置を言う。同様に、後方とは送気流口36から見て矢印56で示す方向の位置を言う。尚、集塵ファン14の回転方向が図示と逆になると、前方と後方が逆になることに留意すべきである。
【0041】
図5の定義によれば、第1の排出口35aと第2の排出口35bは、ともに送気流口36からみて後方に位置する。本実施形態による集塵ファン14のように、旋回力により気流の流れを生じるファンは、最も先方にある開放口が高圧となる。集塵アダプタ10へ流入させるための経路は、その形状が複雑となるため、流入抵抗が高く、効率よく送風するためには高い圧力が必要となる。そのため、集塵ファン14の回転方向において、送気流口36を排出口35よりも前方に設定することで、最も効率よく気流を集塵アダプタ10へ流入させることが可能となる。
【0042】
次に、本願発明の第2の実施形態を図6〜8を用いて説明する。図6は、本発明の第2の実施形態を示す集塵ファン部の断面図であり、図7は集塵ファン14とハウジングの内壁37との位置関係を説明するための概念図であり、図8はガイド部38の位置関係を説明するための拡大図である。
【0043】
図6において理解できるように、内壁37aと集塵ファン14の外周端との距離は、送気流口36からに前方又は後方に離れるに従って徐々に近くなっている。この状態を、図7の概念図を用いてさらに説明する。図7において、位置関係の理解のために、送気流口36からハウジングの内壁の中心点61を通って反対側に伸びる参照線57と、この参照線57と直交し、中心点61を通る補助線58を引いている。集塵ファン14の中心点60は、ハウジングの内壁の中心点61に対してオフセットされている。
【0044】
参照線57と補助線58により区画される領域を図7のように(I)(II)(III)(IV)と定義すると、送気流口36は領域(I)(II)に渡って形成される。第1の排出口35aは、領域(III)に形成される。第2の排出口35bは、領域(IV)に形成される。この様な配置により、送気流口36への流入圧力を高圧にし、流速が早くし、流量が多くすることが可能となり、効率よく気流を集塵アダプタ10へ流入させることが可能となる。但し、上記関係は送気流口や排出口の上下方向の高さなど他の要素によって影響されるので、それらを考慮して設定すると良い。
【0045】
尚、第2の実施形態では、流入圧力を高めるための工夫として、さらに、送気流口36の下流側に隣接して遠心ファンの中心方向に突出するガイド部38を形成した。その詳細を図8を用いて説明する。図8は、図6のガイド部38の位置関係を説明するための部分拡大図である。
【0046】
図8において、ハウジングの円筒形の内壁の位置を示すために、一点鎖線の参照線39を引いた。この参照線39とガイド部38の突出状態との比較で分かるように、送気流口36の下流側の内壁部分を、遠心ファンの中心方向に距離Bだけ突出させるガイド部38を形成した。このようにガイド部38を構成することによって、矢印55の方向に流れる空気流がガイド部38にぶつかり、その大部分が送気流口36の方向に導かれることになる。その結果、その際、送気流口36への流量が多くなるだけでなく、送風の圧力が高くなり、流速が早くなるという効果が得られる。
【0047】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、穿孔穴近傍への送気流の風量を十分に確保することでき、穿孔作業時に生じる粉塵の集塵効率を向上させるとともに、穿孔作業後に穿孔穴内に残留する粉塵を除去性能も向上させたので、作業現場及び作業者の環境を改善することが可能である。
【0048】
また、本発明によれば、粉塵と共に空気を吸引する吸引口と、空気を吹き付ける吹出口を設けた集塵装置を有する穿孔工具において、一つの遠心ファンを使って効率よく集塵及び送風ができるという効果が得られる。
【0049】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、本願発明では電気モータを使った穿孔工具について説明をしたが、その駆動源は電気モータだけに限られず、内燃機関や圧縮空気を使った穿孔工具に用いても良い。また、集塵ファン14と冷却ファン17は別体型でなく、一体型であっても良い。その場合は、集塵ファンの排出口からの空気をモータ18に送るようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態を示す穿孔工具の側面図であり、集塵部分とモータ部分のみ断面を示す。
【図2】本発明の実施形態を示す穿孔工具の使用時の状態を示す側面図であり、集塵部分とモータ部分のみ断面を示す。
【図3】図1の穿孔工具の集塵アダプタ10における空気の流れを説明するための図。
【図4】図2のA−A部の断面図。
【図5】送気流口36と、第1及び第2の排出口35a、35bの位置関係を説明するための概念図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す集塵ファン部の断面図。
【図7】集塵ファン14とハウジングの内壁37との位置関係を説明するための概念図。
【図8】図6のガイド部38の位置関係を説明するための部分拡大図。
【符号の説明】
【0052】
1 ハンマドリル本体 2 ハウジング 3 ハンドル 4 電源スイッチ
5 電源コード 6 切替部材 8 被削材 10 集塵アダプタ
10a 吹出口 10b 吸引口 11 粉塵流路 12 集塵ケース
13 フィルタ 14 集塵ファン 15 空気通路 16 テールカバー
17 冷却ファン 18 モータ 19 回転軸 20 案内流路
22 (集塵装置の)ハウジング 26 先端工具
26a (先端工具の)先端部 26b (先端工具の)螺旋部
31 スライダー 33 (集塵装置の)ハウジング
35a、35b 排出口 36 送気流口 37 内壁
38 ガイド部 39 参照線 41 ロック機構 57 参照線
58 補助線 60 集塵ファンの中心点 61 ハウジングの内壁の中心点
63、64、65、66 ハウジングと集塵ファンの距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、該駆動源の回転力を伝達して先端工具を回転させる伝達駆動部と、
前記先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を集塵するとともに前記穿孔される箇所付近に空気を吹き付ける集塵装置を有する穿孔工具であって、
前記集塵された粉塵混じりの空気を濾過するフィルタ手段と、該濾過された空気を取入れて円周方向に送出する遠心ファンを設け、
前記遠心ファンは、取入れた空気の一部を前記吹き付けのために前記集塵装置に送るための送気流口と、残りの空気を外部に排出するための排出口が形成されたハウジング内に配置され、
前記送気流口の前記遠心ファンの回転方向前方における前記排出口までの距離は、前記送気流口の回転方向後方における排出口までの距離よりも大きいことを特徴とする穿孔工具。
【請求項2】
前記排出口は少なくとも2つ設けられ、前記送気流口の前記遠心ファンの回転方向前方における排出口までの距離は、前記送気流口の回転方向後方における排出口までの距離よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の穿孔工具。
【請求項3】
前記駆動源は電気モータであり、前記遠心ファンは電気モータの回転軸に設けられることを特徴とする請求項2に記載の穿孔工具。
【請求項4】
前記排出口は前記ハウジングの複数箇所に設けられ、前記排出口はいずれも前記送気流口の回転方向後方で回転角180度以内に配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載の穿孔工具。
【請求項5】
前記排出口として、第1の排出口と第2の排出口を設け、前記第1の排出口は前記送気流口の回転方向後方で回転角90度以内に、前記第2の排出口は前記送気流口の回転方向後方で回転角90度から180度以内に配置されることを特徴とする請求項4に記載の穿孔工具。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記遠心ファンの周囲を囲む略円筒形の内壁を有し、前記送気流口の回転角前方の前記遠心ファンの外周端と前記内壁との距離は、前記送気流口付近が最も遠く、前記送気流口から遠心ファンの軸を隔てた反対側において前記外周端と前記内壁との距離が近く構成され、前記送気流口付近から前記反対側に向かって徐々にその距離が近くなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の穿孔工具。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記遠心ファンの周囲を囲む略円筒形の内壁を有し、前記円筒形の中心軸が、前記遠心ファンの回転軸に対して、前記送気流口側にオフセットするように前記ハウジングの内壁が形成されることを特徴とする請求項6に記載の穿孔工具。
【請求項8】
前記ハウジングの内壁で前記送気流口の後方側に、前記遠心ファンの中心方向に突出するガイド部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の穿孔工具。
【請求項9】
前記送気流口が、先端工具取り付け方向のハウジングにおいて前記遠心ファンの回転方向後方に設けられることを特徴とする請求項1に記載の穿孔工具。
【請求項10】
駆動源と、該駆動源の回転力を伝達して先端工具を回転させる伝達駆動部と、
前記先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を集塵するとともに前記穿孔される箇所付近に空気を吹き付ける集塵装置を有する穿孔工具であって、
前記集塵された粉塵混じりの空気を濾過するフィルタ手段と、該濾過された空気を取入れて円周方向に送出する遠心ファンを設け、
前記遠心ファンは、取入れた空気の一部を前記吹き付けのために前記集塵装置に送るための送気流口と、残りの空気を外部に排出するための排出口が形成されたハウジング内に配置され、
前記送気流口の前記遠心ファンの回転方向前方で、前記送気流口の前方での圧力が高くなるように構成したことを特徴とする穿孔工具。
【請求項11】
電気モータと、該電気モータの回転力を伝達して先端工具を回転させる伝達駆動部と、
前記先端工具によって穿孔される被削材から生じる粉塵を集塵するとともに前記穿孔される箇所付近に空気を吹き付ける集塵装置を有する穿孔工具であって、
前記集塵された粉塵混じりの空気を濾過するフィルタ手段と、該濾過された空気を取入れて円周方向に送出する遠心ファンを前記電気モータの回転軸に取り付け、
前記遠心ファンは、取入れた空気の一部を前記吹き付けのために前記集塵装置に送るための送気流口と、残りの空気を外部に排出するための排出口が形成されたハウジング内に配置され、
前記ハウジングは、前記遠心ファンの周囲を囲む略円筒形の内壁を有し、
前記遠心ファンは、その回転軸が前記内壁の中心軸より前記送気流口と反対側にずれるように、前記ハウジング内に配置されることを特徴とする穿孔工具。
【請求項12】
前記遠心ファンと前記内壁との距離は、前記送気流口付近がもっとも遠く、前記送気流口から前記遠心ファンの回転方向前方に向かって徐々に近くなるように前記遠心ファンが取り付けられることを特徴とした請求項11に記載の穿孔工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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