説明

穿孔治具

【課題】被穿孔体の曲面部分への穿孔において、1つの穿孔治具で種々の大きさ及び曲り具合の曲面部分に対応することができる穿孔治具とする。
【解決手段】穿孔治具10が、穿孔ドリルDを案内する治具本体20と、治具本体の下端に設けられた少なくとも3個の可動脚50とを備え、可動脚は、穿孔ドリルの回転軸に平行な軸でそれぞれ独立して治具本体に軸着され、それぞれの可動脚が、収納位置と最大展開位置との間を軸52を中心に回動自在となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔治具に係り、特には被穿孔体の曲面部分に穿孔するための穿孔治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穿孔ドリルによって被穿孔体の正確な位置にぶれのない穿孔を行うための穿孔装置や穿孔治具が開発されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
ここで、穿孔ドリルによる被穿孔体の曲面部分への穿孔に際しては、当該曲面部分の大きさや曲り具合に応じて、使用する穿孔治具を変えていた。例えば、穿孔ドリルDで大きな曲面部分S11に穿孔する際には、図8に示すような大きな穿孔治具100を用いて穿孔を行い、穿孔ドリルDで中くらいの曲面部分S12に穿孔する際には、図9に示すような中くらいの穿孔治具200を用いて穿孔を行い、穿孔ドリルDで小さな曲面部分S13に穿孔する際には、図10に示すような小さな穿孔治具300を用いて穿孔を行っていた。
【特許文献1】実開昭63−176008号公報
【特許文献2】特開平06−270005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記したように、被穿孔体の曲面部分の大きさや曲り具合によって穿孔治具を変えていると、穿孔作業に時間が掛かるという問題があった。また、それぞれの曲面部分に適合した穿孔治具を使用するとなると、非常に多くの種類の穿孔治具を用意しておかなければならず、その製作の手間が煩雑であると共に保管場所の確保が必要であり、これも問題となっていた。
【0004】
本発明は前記の課題を解決するものであり、被穿孔体の曲面部分への穿孔において、1つの穿孔治具で種々の大きさ及び曲り具合の曲面部分に対応することができる穿孔治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、穿孔治具において、
穿孔ドリルを案内する治具本体と、
前記治具本体の下端に設けられた少なくとも3個の可動脚と、
を備え、
前記可動脚は、前記穿孔ドリルの回転軸に平行な軸でそれぞれ独立して前記治具本体に軸着され、それぞれの可動脚が、収納位置と最大展開位置との間を前記軸を中心に回動自在となっていることを特徴とする。
【0006】
このように請求項1に記載の発明によれば、穿孔治具が、穿孔ドリルを案内する治具本体と、治具本体の下端に設けられた少なくとも3個の可動脚とを備え、可動脚は、穿孔ドリルの回転軸に平行な軸でそれぞれ独立して治具本体に軸着され、それぞれの可動脚が、収納位置と最大展開位置との間を、軸を中心に回動自在となっているため、例えば、被穿孔体の大きな曲面部分に穿孔する際には可動脚を最大展開位置まで広げて使用し、被穿孔体の中くらいの曲面部分に穿孔する際には可動脚を適宜の展開位置まで広げて使用し、被穿孔体の小さな曲面部分に穿孔する際には可動脚を広げずに収納位置の状態で使用する、というように、被穿孔体の曲面部分の大きさや曲り具合に合わせて穿孔治具の可動脚を適宜の位置に回動させて使用することができ、1つの穿孔治具で種々の大きさ及び曲り具合の曲面部分に対応することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の穿孔治具において、
前記治具本体に、前記穿孔ドリルを挿通する案内孔を設けた穿孔ブッシュを嵌合していることを特徴とする。
【0008】
このように請求項2に記載の発明によれば、治具本体に、穿孔ドリルを挿通する案内孔を設けた穿孔ブッシュを嵌合しているため、穿孔ドリルをドリル径の異なるものに変更した場合でも、ドリル径に応じた案内孔を有する穿孔ブッシュに交換すれば、穿孔治具全体を交換しなくても確実な穿孔ドリルの案内を行うことができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の穿孔治具において、
前記可動脚の先端下面に、該可動脚と被穿孔体との間に隙間を形成する支持脚が設けられていることを特徴とする。
【0010】
このように請求項3に記載の発明によれば、可動脚の先端下面に、該可動脚と被穿孔体との間に隙間を形成する支持脚が設けられているため、より確実に穿孔治具を被穿孔体に固定することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の穿孔治具において、
前記治具本体は筒状に形成されており、その側壁に筒状の前記治具本体の内部に連通する吸引パイプを備えていることを特徴とする。
【0012】
このように請求項4に記載の発明によれば、治具本体は筒状に形成されており、その
側壁に筒状の治具本体の内部に連通する吸引パイプを備えているため、穿孔により生じる切粉を吸引パイプから吸引装置に吸引して周囲に切粉を飛散させることがなく、効率良く確実な穿孔を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1つの穿孔治具で種々の大きさ及び曲り具合の曲面部分に穿孔を行うことができるため、作業時間を短縮して効率良く穿孔を行うことができる。また、多くの種類の穿孔治具を製作及び保管しておかなくても良いため、時間及び場所の節約となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る穿孔治具の実施形態について説明する。ただし、本発明は図示例のものに限定されるものではない。
本実施形態の穿孔治具10は、被穿孔体Sの穿孔位置に固定した上で穿孔ドリルDを挿通して案内し、目的の穿孔位置に正確かつ確実に穿孔を行うための器具であり、図1に示すように、治具本体20、穿孔ブッシュ30、吸引パイプ40、可動脚50等を備えている。
【0015】
治具本体20は、少なくとも使用する穿孔ドリルDのドリル径よりも大きな内径の中空部21を有する筒形状に形成された部材である。
【0016】
また、治具本体20の上端部には、穿孔ブッシュ30を取り付られるようになっており、本実施形態では、穿孔ブッシュ30を治具本体20の上端部に嵌合した後に固定するための固定具22を備えている。本実施形態における固定具22は、ボルト状の雄固定具23とナット状の雌固定具24で構成されており、図2に示すように、雌固定具24は、接着、一体成形等によって治具本体20に固定されている。そして、穿孔ブッシュ30を治具本体20の上端部に嵌合した後に雄固定具23を雌固定具24に螺合させることにより、穿孔ブッシュ30の一部を雄固定具23と治具本体20の上面とで挟持し、穿孔ブッシュ30を治具本体20に固定するようになっている。
【0017】
穿孔ブッシュ30は、穿孔ドリルDが挿通しかつぐらつかない程度の径の案内孔31を設けた部材であり、治具本体20の上端部に取り付け固定して、穿孔ドリルDを穿孔位置に案内するものである。この穿孔ブッシュ30は、使用する穿孔ドリルDのドリル径に応じて交換するように複数種類用意されており、これにより穿孔ドリルDをぐらつきなく正確な穿孔位置に導くことができるようにされている。
【0018】
さらに、治具本体20の側面(側壁)には、外部と中空部21を連通する孔25が形成されており、この孔25には穿孔時に穿孔箇所の被穿孔体Sから生じる切粉を吸引する吸引装置(図示省略)に繋がる吸引パイプ40が取り付けられている。本実施形態では、孔25が治具本体20の側面に対して所定の角度傾けるように形成されており、吸引パイプ40は、前記所定の角度傾けた状態で治具本体20の側面に溶接されている。
【0019】
また、治具本体20の下端には、少なくとも3個の可動脚50を備えており、本実施形態では、図3に示すように、3個の可動脚50を備えている。可動脚50は、穿孔ドリルDの回転軸に平行な軸でそれぞれ独立して治具本体20に軸着されている。
詳述すると、図4に示すように、それぞれの可動脚50は、その基端においてネジ52とスプリング53で治具本体20の下面に付勢され、取り付けられている。また、図5に示すように、それぞれの可動脚50の先端上面にはピン54が形成されており、治具本体20の下面に形成されたピン溝26にピン54が係合して、可動脚50を図3の実線で示す収納位置に固定するようになっている。
さらに、可動脚50の先端下面には、可動脚50と被穿孔体Sとの間に隙間を形成する支持脚51が設けられている
【0020】
そして、図5の矢印で示すように、可動脚50を一旦下方に引き、ピン54とピン溝26の係合を外した上で、前記ネジ52を軸として、それぞれの可動脚50を回動させることができるようになっており、図3の実線で示す収納位置と、波線で示す最大展開位置との間を軸を中心に自在に回動させることができるようになっている。
また、本実施形態では、可動脚50を最大展開位置まで回動させると、ネジ52で回動自在に取り付けられている基端部分が、図6の矢印で示すように、治具本体20に設けられた可動脚固定溝27に嵌合するように形成されており、その結果、可動脚50が簡単には回動しないように最大展開位置に固定されるようになっている。なお、可動脚固定溝27は、可動脚50を最大展開位置に固定する位置のみに形成されていなくても良く、収納位置と最大展開位置の間の適宜の展開位置でも固定できるように複数の深さの溝が形成されていても良い。
【0021】
次に、本実施形態の穿孔治具10の作用について説明する。
ここでは、被穿孔体の曲面部分が大きい場合、被穿孔体の曲面部分が小さい場合、被穿孔体の曲面部分に障害物が存在する場合及び被穿孔体の曲面部分が中くらいの場合について説明する。
【0022】
被穿孔体Sの大きな曲面部分に穿孔を行う際には、穿孔治具10を穿孔位置に合わせ、図4のように収納位置に固定されている可動脚50を、図5のように一旦下方に引いてピン54とピン溝26の係合を外した上で、ネジ52を軸として回動させる。そして、穿孔治具10が安定して設置できる適当な位置まで可動脚50を展開する。例えば最大展開位置まで展開した場合には、図6のように可動脚50が可動脚固定溝27に固定される。3個の可動脚50をそれぞれ適当な位置まで展開し終わったら、吸引装置を作動させ(先に作動させてあっても良い)、穿孔ドリルDを挿通して穿孔を行う。
【0023】
被穿孔体Sの小さな曲面部分や、図7に示すような被穿孔体S1に障害物S2が存在するような位置に穿孔を行う際には、穿孔治具10を穿孔位置に合わせ、図4のように収納位置に固定されている可動脚50を展開せず、そのままの状態で吸引装置を作動させ(先に作動させてあっても良い)、穿孔ドリルDを挿通して穿孔を行う。また、3個の可動脚50のうち、1個若しくは2個だけ適当な位置まで展開させても良い。穿孔治具10が最も安定するように可動脚50を展開、収納させると良い。
【0024】
被穿孔体Sの中くらいの曲面部分に穿孔を行う際には、穿孔治具10を穿孔位置に合わせ、図4のように収納位置に固定されている可動脚50を、図5のように一旦下方に引いてピン54とピン溝26の係合を外した上で、ネジ52を軸として回動させる。そして、穿孔治具10が安定して設置できる適当な位置まで可動脚50を展開する。3個の可動脚50をそれぞれ適当な位置まで展開し終わったら、吸引装置を作動させ(先に作動させてあっても良い)、穿孔ドリルDを挿通して穿孔を行う。
【0025】
このように、穿孔治具10は、被穿孔体の曲面部分が小さい又は障害物があるときは可動脚50を閉じた状態で用い、被穿孔体の球面部分が大きくなるにつれて可動脚50を広げて用いる。このことにより、穿孔治具10は、穿孔位置の形態に合せて用いることができる。
【0026】
以上のように、本実施の形態の穿孔ホルダによれば、穿孔治具が、穿孔ドリルを案内する治具本体と、治具本体の下端に設けられた少なくとも3個の可動脚とを備え、可動脚は、穿孔ドリルの回転軸に平行な軸でそれぞれ独立して治具本体に軸着され、それぞれの可動脚が、収納位置と最大展開位置との間を、軸を中心に回動自在となっているため、例えば、被穿孔体の大きな曲面部分に穿孔する際には可動脚を最大展開位置まで広げて使用し、被穿孔体の中くらいの曲面部分に穿孔する際には可動脚を適宜の展開位置まで広げて使用し、被穿孔体の小さな曲面部分に穿孔する際には可動脚を広げずに収納位置の状態で使用する、というように、被穿孔体の曲面部分の大きさや曲り具合に合わせて穿孔治具の可動脚を適宜の位置に回動させて使用することができ、1つの穿孔治具で種々の大きさ及び曲り具合の曲面部分に対応することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、治具本体の上端部に、穿孔ドリルを挿通する案内孔を設けた穿孔ブッシュを嵌合しているため、穿孔ドリルをドリル径の異なるものに変更した場合でも、ドリル径に応じた案内孔を有する穿孔ブッシュに交換すれば、穿孔治具全体を交換しなくても確実な穿孔ドリルの案内を行うことができる。
【0028】
さらに、本実施の形態では、可動脚の先端下面に、該可動脚と被穿孔体との間に隙間を形成する支持脚が設けられているため、より確実に穿孔治具を被穿孔体に固定することができる。
【0029】
またさらに、本実施の形態では、治具本体は筒状に形成されており、その側壁に筒状の治具本体の内部に連通する吸引パイプを備えているため、穿孔により生じる切粉を吸引パイプから吸引装置に吸引して周囲に切粉を飛散させることがなく、効率良く確実な穿孔を行うことができる。
【0030】
これらの結果、1つの穿孔治具で種々の大きさ及び曲り具合の曲面部分に穿孔を行うことができるため、作業時間を短縮して効率良く穿孔を行うことができる。また、多くの種類の穿孔治具を製作及び保管しておかなくても良いため、時間及び場所の節約となる。
【0031】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る穿孔治具を示す概略図である。
【図2】穿孔ドリルを挿通した状態の穿孔治具を示す断面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】穿孔治具の可動脚が収納位置にあるときの概略拡大図である。
【図5】穿孔治具の可動脚が収納位置から展開する途中を示す概略拡大図である。
【図6】穿孔治具の可動脚が最大展開位置にあるときの概略拡大図である。
【図7】被穿孔体に障害物があるときの穿孔治具の様子を示す概略図である。
【図8】従来において被穿孔体の大きな曲面部分を穿孔する際の穿孔治具と作業状態を示す図である。
【図9】従来において被穿孔体の中くらいの曲面部分を穿孔する際の穿孔治具と作業状態を示す図である。
【図10】従来において被穿孔体の小さな曲面部分を穿孔する際の穿孔治具と作業状態を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 穿孔治具
20 治具本体
21 中空部
22 固定具
23 雄固定具
24 雌固定具
25 孔
26 ピン溝
27 可動脚固定溝
30 穿孔ブッシュ
31 案内孔
40 吸引パイプ
50 可動脚
51 支持脚
52 ネジ(軸)
53 スプリング
54 ピン
D 穿孔ドリル
S,S1 被穿孔体
S2 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔ドリルを案内する治具本体と、
前記治具本体の下端に設けられた少なくとも3個の可動脚と、
を備え、
前記可動脚は、前記穿孔ドリルの回転軸に平行な軸でそれぞれ独立して前記治具本体に軸着され、それぞれの可動脚が、収納位置と最大展開位置との間を前記軸を中心に回動自在となっていることを特徴とする穿孔治具。
【請求項2】
前記治具本体に、前記穿孔ドリルを挿通する案内孔を設けた穿孔ブッシュを嵌合していることを特徴とする請求項1に記載の穿孔治具。
【請求項3】
前記可動脚の先端下面に、該可動脚と被穿孔体との間に隙間を形成する支持脚が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の穿孔治具。
【請求項4】
前記治具本体は筒状に形成されており、その側壁に筒状の前記治具本体の内部に連通する吸引パイプを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の穿孔治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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