説明

突出部を備えた切込みを有するタイヤトレッド

本発明は、複数個の隆起要素(1)を有するタイヤ用トレッドバンドであって、各隆起要素が接触面及び側面(11)を有し、隆起要素のうちの少なくとも幾つかが側面のうちの2つの側面上に延びる少なくとも1つの切込みを有し、切込みが第1の面(3)及び第2の面(4)によって画定され、第1の面及び第2の面が各々、突出部を有し、突出部は、第1の面(3)の各突出部(31)は、第2の面の第2の突出部(42)に向いた第1の突出部(41)と接触により係合することができるよう第1の面上に配置され、第2の面(4)の第1及び第2の突出部(41,42)は、互いに逆方向D1,D2に第1の面(3)の各突出部(31)の各側に1つずつ位置している、トレッドバンドにおいて、第1の面(3)の突出部(31)の両側に設けられ、第1の面の突出部(31)を第2の面(4)の第1の突出部(41)から隔てる接触前の距離e1は、第1の面の各突出部(31)を第2の面の第2の突出部(42)から隔てる接触前の距離e2とは異なっており、これら距離は、方向D1,D2に平行な方向に測定されることを特徴とするトレッドバンドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッドバンドに関し、特に、更に、かかるトレッドバンドのレリーフ要素が設けられた切込みに関する。
【背景技術】
【0002】
降雨後に水で覆われている路面上を走行する際又は冬の条件下で運転する際のタイヤのグリップを向上させるため、これらタイヤのトレッドバンドにエッジ及び排水空間を作るために様々な数の切れ目を設けることが公知のやり方である。切れ目の中には、運転が通常の運転条件下にあることを条件として、溝を画定している対向したフェースが運転中、互いに決して接触することはないような幅を持つ溝相互間に区別が行なわれる。これら溝は、側方フェース及び接触フェースを有するレリーフ要素を画定し、接触フェースは、運転中、路面に接触するようになったフェースである。
【0003】
また、これら切れ目の中には、各切込みを画定するフェースが或る特定の運転条件下において互いに接触することができるようにする狭い幅の切込みが存在する。後者の場合、追加のエッジ効果が用いられ、これら追加のエッジは、これら切込みのフェースが互いに接触することにより、トレッドバンドの剛性を過度に減少させないで、グリップを向上させるよう切込みによって作られる。
【0004】
また、各フェースに対向したフェースに設けられている凹凸部と協働する凹凸部を設けることにより切込みの対向したフェースの機械的インターロック関係を生じさせることによって剛性の減少をより一段と減少させることが公知のやり方であり、その目的は、一方のフェースの対向したフェースに対する相対運動をできるだけ減少させることにある。米国特許第5783002号明細書は、かかる構造を記載している。この場合、「レリーフ」という表現は、一フェース上で凹んだ部分(凹部)と突き出た部分(凸部)の両方又はいずれか一方を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5783002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、接触の際に路面によりトレッドバンドに加えられる力の方向に応じて、また、ユーザが遭遇する運転条件に起因して生じるグリップレベルに応じて、切込みを有するタイヤの性能を向上させることが一段と必要である。これは、特に、乾いた路面上における制動要件と比較して、トレッドバンドの最も大きな可撓性が必要とされる場合であって雪で覆われた路面上での車両の発進中の際である。後者の形態では、トレッドバンドを構成する要素の多大な堅固さ及びかくして高い剛性が必要とされる。
【0007】
本発明の目的は、雪路上での発進の際と乾いた路面上での制動の際の両方において考えられる限り最善の性能を達成することができるようにするタイヤを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、複数個のレリーフ要素を有するタイヤ用トレッドバンドであって、各レリーフ要素が接触フェース及び側方フェースを有し、レリーフ要素のうちの少なくとも幾つかが側方フェースのうちの2つの側方フェース上に開口した少なくとも1つの切込みを有し、切込みが第1のフェース及び第2のフェースによって画定され、第1のフェースが少なくとも1つの突出部を有し、第2のフェースが第1のフェース上に設けられる突出部と同数の対をなす第1及び第2の突出部を有し、第1のフェースの各突出部が対向した第2のフェース上の1対の第1の突出部と第2の突出部と接触により協働することができるよう設計されており、第2のフェースの第1及び第2の突出部が互いに逆方向D1,D2に第1のフェースの各突出部の各側に1つずつ位置している、トレッドバンドにおいて、第1のフェースの各突出部を第2のフェースの第1の突出部から隔てる接触前の距離e1は、第1のフェースの各突出部を第2のフェースの第2の突出部から隔てる接触前の距離e2とは異なっており、これら距離は、方向D1,D2に平行な方向に測定されることを特徴とするトレッドバンドが提供される。
【0009】
かくして、複数個の突出部が第1のフェース上に形成され、これら突出部は、接触により、e1に等しい距離の運動後に、対向した第2のフェース上に設けられている第1の突出部と協働し、そして、e2に等しい距離の運動後に第2の突出部と協働するようになっており、これら運動は、互いに逆方向であり、距離e1は、厳密に言えば、距離e2よりも小さい。
【0010】
本発明のトレッドバンドを備えたタイヤにより、先行技術とは異なり、切込みを画定した一方のフェースの対向したフェースに対する相対運動を制限することが可能であり、かくして、使用条件に最も良く合うようにかかる運動を加減することが可能である。
【0011】
有利には、このトレッドバンドは、タイヤに設けられている可視手段、例えばタイヤの目に見える外面に成形により設けられた矢印によって識別される好ましい回転方向を有するタイヤに装着される。好ましい回転方向は、制動操作の際に、路面によりトレッドバンドに及ぼされる制動力下において、切込みのフェースに設けられた突出部が、タイヤが路面により及ぼされるトラクション力又は駆動力を受けたときに突出部が互いに接触する場合よりも迅速に互いに接触するよう定められている。当然のことながら、好ましい回転方向を示すために用いられる可視手段は、トレッドバンドそれ自体に設けられるのが良い。
【0012】
具体的に説明すると、本発明のタイヤが高いグリップレベルを示す路面(特に、乾いた路面)上における制動下で利用されるとき、路面によりタイヤのトレッドバンドに加えられる力は、このタイヤを装着した車両の移動方向とは逆の方向に向けられ、これは、切込みを閉じる傾向を有し、切込みを画定する対向したフェースは、一方向においては互いに対して動く傾向を有し、非常に短い距離を動いた後では、フェース上に形成されている突出部の相互接触によってロック状態になる。また、この迅速なロックにより、2つの切込み相互間における薄手の材料バンドの撓みを制限することが可能である。ロック前の距離の適当な選択により、効果的な制動にとって望ましいほぼ瞬時のロック効果を得ることができる。
【0013】
これとは対照的に、非常に僅かなグリップしか示さない路面上における発進状況では(牽引トルクがタイヤに作用する状態において)、路面が車両の所望の移動方向に差し向けられた力をトレッドバンドに加えるので、対向したフェースがこれらフェース上に形成されている凸部の相互接触によってはロック状態にならない程度まで薄手の材料バンドの撓みを増大させることが可能である。
【0014】
本発明の特に有利な変形形態では、突出部を備えると共に長さLを有する各切込みに関し、これら切込みの突出部のうちの少なくとも幾つかは、細長い形状のものであり、切込みの長さLの少なくとも50%にわたって延びる。より好ましくは、更に、細長い形状のこれら突出部は、切込みの全長にわたって延び、その目的は、これら凸部が高いグリップレベルを示す路面上での制動下において互いに接触したときにこれら凸部相互間の接触の力に対する良好な制御を提供することにある。
【0015】
切込みの長さLは、この切込みが要素の接触フェース上に形成する2つのエッジのうちの一方の長さとして測定される。なお、切込みは、新品状態では、この要素の内部に形成されている。
【0016】
機械的ロック効果を最適化するためには、少なくとも1つの切込みの対向した壁上に形成されている突出部の全てが細長い形状のものであり、切込みの長さの少なくとも50%にわたって延び、或いは、より好ましくは、切込みの全長にわたって延びるのが有利である。
【0017】
また、切込みの一方の壁の対向した壁に対する滑り(即ち、方向D1,D2に垂直な方向における)を制限する目的で、突出部は、切込みの長さLの少なくとも50%にわたって延び、ジグザグ又は波形の形状を有している。かくして、制動と組み合わせされたコーナリングの際、ジグザグ形突出部は、方向D1,D2における壁の相対運動の迅速なロックを可能にすると同時に方向D1,D2に垂直な方向におけるこれら壁の相対運動のロックを可能にする。より有利には、突出部は、真っ直ぐな形であれジグザグの形であれいずれにせよ、一方のフェースの対向したフェースに対する相対運動に対する良好な制御を達成するよう切込みの長さLの少なくとも95%にわたって延びる。
【0018】
本発明の他の特徴及び他の利点は、本発明の幾つかの実施形態を非限定的な例として示す添付の図面を参照して行われる以下に与えられる説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の切込みを備えたトレッドバンドの一要素の図である。
【図2】図1に断面で示された切込みを画定する一フェースの図である。
【図3】断面が台形の突出部を備えた3つの切込みを有するトレッドバンドの一要素の断面図である。
【図4】発進の際における図3に示された要素の切込みの挙動のシミュレーションを示す図である。
【図5】制動の際における図3に示された要素の切込みの挙動のシミュレーションを示す図である。
【図6】製造上の観点から良好な突出部の第2の変形形態を示す図である。
【図7】突出部が新品状態においてトレッド表面と交差する構成の切込みの別の変形形態を示す図である。
【図8】本発明の切込みの実施形態の変形形態を示す図であり、切込みの端部が狭い幅のものであり、方向D1,D2において互いに位置合わせされている状態を示す図である。
【図9】本発明の切込みの別の変形形態の一フェースを示す図であり、突出部が切込みの長さの一部にわたって延び、ジグザグの形状を有している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書における説明に付随して示されている数字は全て、目安として与えられており、寸法は、これらが絶対的であるにせよ相対的であるにせよいずれにせよ、目安に過ぎず、更に、同一の構造的要素は、本発明の互いに異なる変形例を示す図では同一の参照符号で示される。
【0021】
図1は、溝により画定されたトレッドバンドの材料要素1を示している。この要素1は、このトレッドバンドを備えたタイヤが走行しているときに路面に接触するようになった接触フェース10及びエッジ12に沿って接触フェースと交差させた側方フェース11を有している。この要素1は、本発明の切込み2を有し、この切込みは、この要素の2つのエッジ12にほぼ平行な2つのエッジ21,22を形成するよう接触フェース10上に開口している。この切込み1は又、この要素の2つの互いに反対側の側方フェース11上に開口している。かくして、切込み2により互いに隔てられた2つの要素半部1′,1″が形成される。この切込み2は、新品状態のトレッドバンドの接触フェース10に沿って測定された長さLを有し、この長さLは、この場合、切込み2により接触フェース10に形成されている各エッジ21,22の長さに一致している。
【0022】
切込み1は、第1のフェース3及び第2のフェース4により画定され、これら第1及び第2のフェースは、互いに対向すると共に切込みの幅eとして定められた距離に一致する平均距離を隔てた状態で位置している。慣例として、この幅eは、2mm以下であり、好ましくは、0.6mm以下であり、したがって、走行時、対向したフェース3,4は、互いに少なくとも部分的に接触するようになる。
【0023】
切込みを画定するフェースの各々は、対向したフェースの方向に延びるよう突き出た数個の突出部又は突起を備えている。これら突出部は、細長い形状のものであり、この場合、切込みの全長Lにわたり且つ接触フェースに平行な方向に延びている。これら突出部は、図1で理解できるように正方形の形の断面を有している。一方のフェースの突出部は、これらが対向したフェースの突出部と交互に位置するよう位置決めされている。
【0024】
第1のフェース3の突出部31が、対向した第2のフェース4に設けられている1対の突出部と接触により協働することができるよう第1のフェース上に配置されており、この1対の突出部は、第1の突出部41及び第2の突出部42から成り、第2のフェース4の第1及び第2の突出部41,42は、互いに逆方向D1,D2において第1のフェース3の突出部31の各側に1つずつ位置している。方向D1は、接触フェースに垂直であり且つ切込みのフェースのうちの一方に接する方向であり、この方向D1は、トレッドの外側に向かって(即ち、トレッドが走行しているときの路面に向かって)向けられている。方向D2は、接触フェースに垂直であり且つ切込みのフェースのうちの一方に接する方向であり、この方向D2は、方向D1と反対方向に向けられている。
【0025】
同様に、第1のフェース3に設けられた第2の突出部32が、対向したフェースの別の1対の突出部42,43と接触により協働するようになっており、この場合、接触距離は、それぞれ、e1,e2に等しく、したがって、方向D1における値e1の相対運動後、フェース3の各突出部は、接触により対向したフェース4の突出部と協働することができ、又、フェース3の各突出部は(しかしながら、切込みの底部の最も近くに位置する突出部を除く)、接触により、方向D2における値e2の相対運動後、対向したフェース4の突出部と協働することができるようになっている。この対に属する突出部のうちの一方は、先の対の突出部でもある。これは、各対に属する突出部が別々である場合には、話が別である。
【0026】
突出部相互間の接触に先立ち、第1のフェース4の突出部31,32,33を第2のフェース4の第1の突出部41,42,43からそれぞれ隔てる距離e1は、突出部相互間の接触に先立って、第1のフェースの突出部31,32を第2のフェースの第2の突出部42,43からそれぞれ隔てる距離e2とは異なっており、これら距離e1,e2は、方向D1,D2に平行な方向に測定される。
【0027】
この構成により、先行技術とは異なり、第1のフェースの第2のフェースに対する運動を制限することが可能であり、但し、これらの運動が接触フェースに垂直な方向(即ち、D1又はD2)であることを条件とする。
【0028】
好ましくは、距離e1は、少なくとも0.1mmに等しく、せいぜい0.4mmに等しい。距離e2は、0.4よりも大きく、好ましくは1mmよりも大きい。
【0029】
図2は、図1に示された要素のII‐II線矢視断面図である。この図2は、各フェース3,4の突出部31,32,33,41,42,43が、タイヤが製造用モールドから出る際のタイヤ、即ち、車両に取り付けられていない状態のタイヤ上で占める位置でこれら突出部を示している。ほぼ距離e1だけ離れた状態でたった1つの突出部を備えた切込みの底部の最も近くに位置する突出部を除き、第1のフェース3の突出部の横には対向したフェースの第1及び第2の突出部が設けられている。各フェース上において、突出部は、トレッド摩耗レベルとは無関係に効果的であるように切込みの全体的広がりにわたって存在するように分布して配置されている。突出部の正方形断面形状が突出部の良好なインターロックにとって望ましい。各突出部は、真っ直ぐな細長い形状のものであり、切込みを画定するフェースの全長Lにわたって延びている。
【0030】
図3は、断面が台形である突出部31,32,33,41,42,43を備えた3つの切込み2を有するトレッドバンドの一要素の断面図であり、互いに接触するようになった突出部の壁は、斜めになっている。この形態では、突出部は、互いに接触状態にはなっていない。適当な最小距離を選択することにより、タイヤが取り付けられている車両の荷重支持という単純な効果、したがって、トレッドバンドの圧縮という単純な効果により突出部のうちの幾つかの相互接触を行なわせることが可能〜場合がある。これは、特に、制動下において望ましく、その理由は、かかる場合、切込みのフェースの相対運動の可能性がないからである(材料の変形以外においては)。このトレッドは、方向性であり、即ち、かかるトレッドを備えたタイヤは、そのサイドウォール上にタイヤの設定された走行方向を示す可視手段、例えば、矢印を有する。この走行方向は、図3において矢印Rで示されており、図示の例では、タイヤは、矢印Mにより示された方向において図面の左側から右側に動く。方向D1,D2は、互いに逆向きであり、トレッドバンドのトレッド表面(踏み面)に垂直である。図4及び図5に示されているように互いに接触する突出部の部分相互間の距離e1,e2は、距離D1,D2に平行に測定される。
【0031】
図4は、車両が発進しているとき、即ち、牽引(トラクション)力又は駆動力の作用を受けている場合における図3に示されたトレッドバンドの要素1の挙動のシミュレーションを占める図である。車両の移動方向は、矢印Mにより示され、路面によりトレッドバンドに加えられる牽引力は、矢印Mと同一方向に差し向けられた矢印Fdにより示されている。この形態では、切込みのフェース上に形成された突出部31,32,33,41,42,43は、少なくともこれらフェースの相互の相対運動がe2に等しい値に達するまで、かかる相対運動をロックする。この相対運動は、要素の大きな変形にとって好都合であり、したがって、この牽引力が加えられている間、要素と路面の良好な接触にとって望ましい。
【0032】
図5は、制動下における、即ち、制動力を受けた状態における図3に示された要素1の挙動のシミュレーションを示している。路面によりタイヤに加えられる制動力の方向は、矢印Fbにより示されており、この制動力の方向は、この場合、矢印Mにより示された運動とは逆の方向に差し向けられている。この形態では、切込みのフェース上に形成された突出部31,32,33,41,42,43は、かかる運動がe1に等しい値に達するやいなや互いにほぼ瞬時に又はそれどころか瞬時にロックする。というのは、この値e1は、車両が荷重を支持していることにより一部が吸収される場合があるからである。この瞬時ロックは、要素の剛性の増大及びかくして要素の変形の制限にとって望ましい。
【0033】
図6は、鋭いコーナ部の生成を回避することにより本発明の切込みを成形するために用いられる成形要素を製造しやすくする突出部31,32,33,41,42,43の第2の変形形態を示している。この変形形態の場合、突出部31,32,33,41,42,43の断面は、図6の平面で見て、台形の輪郭ではなく、湾曲しており、これら輪郭は、種々の表面を互いにつなぐ半径の組み合わせを有している。かかる切込みを成形するための成形要素を製造するため、距離e2に等しい平均厚さの平べったい金属プレートを提供し、次に、材料を除去することにより、突出部相互間のゾーンに対応した長さe1の領域を作り、最終的に、絞り成形により成形要素を形成することが可能である。
【0034】
図7は、切込み2のフェース3に設けられた突出部31が新品状態のトレッド要素の接触フェース10と交差する切込みの別の変形形態を示している。トレッドが新品状態にあるとき、接触フェースから目に見える切込みの幅は、e′(切込みの平均幅eよりも小さい)に減少しており、これは、タイヤが新品であるときに実施される或る特定の試験の際に好都合である。
【0035】
図8は、本発明の切込み2の実施形態の変形形態を示しており、平均幅eの切込み2は、接触フェース10上に開口した端部2′及び切込みの底部のところに設けられた端部2″を有している。この変形形態では、これら端部は、実質的に切込みの平均幅eよりも小さい幅e″のものである。さらに、これら端部2′,2″は、方向D1,D2において互いに一線をなして形成されている。かくして、トレッドバンド要素の機械的挙動を切込み2に関して対称にし、これにより、ぶれを回避することが可能である。
【0036】
本発明のタイヤを製造し、かかるタイヤ及び基準タイヤを用いた雪路上での発進試験及び乾いた路面上における制動試験においてこれらタイヤを相互に比較した。基準タイヤは、同一のトレッドパターン及び同一の切込みを有し、唯一の異なる点は、基準タイヤの切込みの突出部が全て、同一の距離だけ離れていることにあった。
【0037】
タイヤは、サイズ205/55R16のものであり、これらタイヤをAudiA4に装着した。
【0038】
以下の表は、乾いた路面上における制動試験において、100km/時から0km/時へ制動した際の結果を示しており、制動による停止距離を測定した。加速度試験も又、雪路に関して実施され、この試験では、加速度を時間の関数として連続的に測定し、試験の最初の4秒にわたり平均加速度を算出した。
【0039】
各試験において、基準タイヤの性能に対応したベース100よりも良好な性能により、容器性能の観点における改良結果が示されている。
【0040】
【表1】

【0041】
図9は、本発明の切欠きを画定したフェースの図を示しており、この図では、このフェース上に形成された突出部は、切込みの全長にわたって延びると共に複数の破線によるジグザグ線で構成された細長い形状を有している。
【0042】
本発明は、説明すると共に図示した例には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、かかる例の種々の改造例を想到できる。特に、本発明は、ラインが要素の接触フェース上において、非直線状の幾何学的形状、特に、波又はジグザグで構成された幾何学的形状を辿る切込みの場合(ここでは図示されていない)に利用できる。別の変形例では、少なくとも1つの切込みがこれを画定するフェースに設けられた突出部を備え、この切込みは、この切込みが形成されている要素の接触フェースに垂直な平行に対してせいぜい30°に等しい角度だけ傾けられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のレリーフ要素(1)を有するタイヤ用トレッドバンドであって、各レリーフ要素は、接触フェース及び側方フェース(11)を有し、前記レリーフ要素のうちの少なくとも幾つかは、前記側方フェースのうちの2つの側方フェース上に開口した少なくとも1つの切込みを有し、前記切込みは、第1のフェース(3)及び第2のフェース(4)によって画定され、前記第1のフェースは、少なくとも1つの突出部を有し、前記第2のフェースは、前記第1のフェース上に設けられる突出部と同数の対をなす第1及び第2の突出部を有し、前記第1のフェース(3)の各突出部(31)は、対向した前記第2のフェース上の1対の第1の突出部(41)と第2の突出部(42)と接触により協働することができるよう設計されており、前記第2のフェース(4)の前記第1及び第2の突出部(41,42)は、互いに逆方向D1,D2に前記第1のフェース(3)の各突出部(31)の各側に1つずつ位置している、トレッドバンドにおいて、前記第1のフェース(3)の各突出部(31)を前記第2のフェース(4)の前記第1の突出部(41)から隔てる接触前の距離e1は、前記第1のフェースの各突出部(31)を前記第2のフェースの前記第2の突出部(42)から隔てる接触前の距離e2とは異なっており、前記距離e1,e2は、前記方向D1,D2に平行な方向に測定される、トレッドバンド。
【請求項2】
突出部(31,32,33,41,42,43)を備えた各切込み(2)は、長さLを有し、前記突出部のうちの少なくとも幾つかは、細長い形状のものであり、前記切込みの前記長さLの少なくとも50%にわたって延びている、請求項1記載のトレッドバンド。
【請求項3】
少なくとも1つの切込みの互いに反対側のフェースに形成されている前記突出部(31,32,33,41,42,43)は全て、細長い形状のものであり、前記切込みの前記長さLの少なくとも50%にわたって延びている、請求項2記載のトレッドバンド。
【請求項4】
前記突出部(31,32,33,41,42,43)は、前記切込みの前記長さLの少なくとも50%にわたって延びていて、ジグザグ又は波形の形状をしている、請求項3記載のトレッドバンド。
【請求項5】
前記突出部(31,32,33,41,42,43)は、前記切込みを前記長さLの少なくとも95%にわたって延びている、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。
【請求項6】
前記突出部(31,32,33,41,42,43)を有する平均幅eの各切込みは、前記切込みの前記平均幅eよりも小さい幅e″の端部(2′,2″)を有し、前記端部は又、互いに位置合わせ状態で且つ前記切込み(2)の中間平面内に位置決めされている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。
【請求項7】
少なくとも1つの切込み(2)は、該切込みを画定する前記フェースに設けられた前記突出部(31,32,33,41,42,43)を備え、該少なくとも1つの切込み(2)は、この切込みが形成されている前記要素の前記接触フェースに垂直な方向に対してせいぜい30°に等しい角度だけ傾けられている、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。
【請求項8】
前記トレッドバンドは、設定された走行方向を有し、この走行方向は、前記トレッドに設けられている目視手段によって指示される、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一に記載のトレッドバンドを有するタイヤであって、前記タイヤは、前記タイヤに設けられている可視手段によって識別される好ましい回転方向を有し、前記好ましい回転方向は、制動操作中に、路面により前記トレッドバンドに及ぼされる制動力下において、前記切込みの前記フェースに設けられた前記突出部が、前記タイヤが前記路面により及ぼされるトラクション力を受けたときに前記突出部が互いに接触する場合よりも迅速に互いに接触するよう定められている、タイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−510916(P2012−510916A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538928(P2011−538928)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065168
【国際公開番号】WO2010/063558
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)