説明

窒化ケイ素フィルタの製造法

【課題】高気孔率であっても機械的強度が高く、DPFとして好適な窒化ケイ素フィルタの製造法の提供。
【解決手段】金属ケイ素粒子と、気孔形成材とを含む成形体を窒素中で熱処理することにより金属ケイ素を実質的に窒化ケイ素とする窒化ケイ素フィルタの製造法であって、前記金属ケイ素粒子は、全金属ケイ素粒子中の粒子直径20〜100μmの金属ケイ素粒子の含有割合が90質量%以上であり、かつ、粒子直径1〜10μmの金属ケイ素粒子の含有割合が0.1〜10質量%であることを特徴とする窒化ケイ素フィルタの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温排気ガス中に含まれる粉塵などを除去するために好適な窒化ケイ素フィルタの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素は、耐熱性、耐食性、耐薬品性、機械的強度などに優れた特性を有しており、高温や腐食性環境下での集塵、脱塵用フィルタやディーゼルエンジンから排出される微粒子(以下、パティキュレートという)の除去用フィルタ(以下、DPFという)として期待されている。このような窒化ケイ素フィルタの製造法は、出発原料で大別すると窒化ケイ素粒子を出発原料とする製造法(特許文献1〜3参照)と金属ケイ素粒子を出発原料とする製造法(特許文献4、5参照)とに分けられる。金属ケイ素粒子を出発原料とし、直接窒化により窒化ケイ素とする製造法は、一般に、窒化ケイ素粒子を出発原料とする製造法に比べて原料費用が安価であるため製造原価の点で優れる特徴がある。
【0003】
フィルタの圧力損失低減の要求に応えるため、通気性を改善しようとすると、気孔率を高くする必要がある。金属ケイ素を出発原料とする製造法において、高気孔率化を図るための手段としては、金属ケイ素に対する気孔形成材の添加量(質量比率)を増やす方法が挙げられるが、この方法では気孔形成材の添加量を増やすとともに、得られる窒化ケイ素フィルタの機械的強度が低下する傾向があるため、耐久性が必ずしも充分ではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−256069号公報(第1〜6頁)
【特許文献2】特開平7−187845号公報(第1〜5頁)
【特許文献3】特開平8−59364号公報(第1〜7頁)
【特許文献4】国際公開第01/47833号パンフレット(第3〜9頁)
【特許文献5】特開2005−47796号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属ケイ素粒子を出発原料とし、機械的特性に優れかつ気孔率が高く、すなわちパティキュレートの捕集効率が高く、DPFとして好適な窒化ケイ素フィルタの製造法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属ケイ素粒子と、気孔形成材とを含む成形体を窒素中で熱処理することにより金属ケイ素を実質的に窒化ケイ素とする窒化ケイ素フィルタの製造法であって、前記金属ケイ素粒子は、全金属ケイ素粒子中の粒子直径20〜100μmの粒子の含有割合が90質量%以上であり、かつ、粒子直径1〜10μmの粒子の含有割合が0.1〜10質量%であることを特徴とする窒化ケイ素フィルタの製造法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、金属ケイ素粒子を出発原料とし、窒素雰囲気中で加熱することによる直接窒化で窒化ケイ素とすることで得られるフィルタにおいて、従来法では困難であった高い通気性と優れた機械的強度とを兼ね備えたフィルタにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の窒化ケイ素フィルタの製造法(以下、本製造法という)では、出発原料となる全金属ケイ素粒子中の粒子直径(以下、粒径と略す)20〜100μmの粒子の含有割合を90質量%以上とする。本発明では、粒径が20〜100μmと比較的大きい粒子を全金属ケイ素粒子中に90質量%以上含有させることで、粒子間空隙が大きくなり、粒子間の接点数が少なくなる結果、気孔率が高くかつ気孔の連続性が良好な、すなわち通気性に優れた圧力損失の低い窒化ケイ素フィルタが得られる。具体的には、粒径20μm以上の粒子を用いることで、得られるフィルタの平均細孔直径(以下、細孔直径を細孔径と略す)を10μm以上にできるので、凝集粒径が10μm以上とされるパティキュレートなどを効率よく捕集できる。一方、粒径を100μm以下とすることで、窒化を充分に進行させることができる。また、粒径20〜100μmの粒子の含有割合を90質量%以上とすることで、気孔形成材の添加量が同一の場合、得られるフィルタの平均細孔径をより大きくでき、かつ気孔の連続性がより大きくなる結果、通気性を高くできる。好ましくは、上記含有割合を95質量%以上とする。
【0009】
金属ケイ素粒子の粒径が大きくなるほど、得られる窒化ケイ素フィルタの平均細孔径を大きくできるため、全金属ケイ素粒子中に粒径30〜100μmの粒子を90質量%以上含有させることが好ましく、粒径40〜100μmの粒子を80質量%以上含有させることが特に好ましい。
【0010】
ここで、本発明において、金属ケイ素粒子の粒径は個数基準粒径を示す。個数基準粒径は通常の方法で測定でき、例えば、レーザー回折・散乱式、動的光散乱式、光子相関式などの粒度分布計を使用することができる。
【0011】
次に、本製造法では、全金属ケイ素粒子中の粒径1〜10μmの粒子の含有割合を0.1〜10質量%とする。本発明者らは鋭意検討した結果、粒径20〜100μmの粒子に対し、粒径が1〜10μmと小さい粒子を少量添加することで、粒径20〜100μmの粒子間の空隙を閉塞させることなく、むしろ粒径20〜100μmの粒子同士の接点を強化する結果、得られる窒化ケイ素フィルタの機械的強度を高められることがわかり、本発明に至った。このとき、機械的強度向上を目的として添加する粒子の粒径が1μm未満であるかまたは10μmを超える場合、上記の効果が得られにくく、一方、粒径1〜10μmの粒子が10質量%より多く含まれると粒径20〜100μmの粒子間の空隙を閉塞させてしまい、所望の通気性と機械的強度を備えたフィルタが得られにくくなるため、いずれも好ましくない。添加する粒子の粒径が1〜5μmであると、機械的強度を向上させる効果が得られやすいため好ましい。特に好ましくは粒径を1〜3μmとする。また、全金属ケイ素粒子中の粒径1〜10μmの粒子の含有割合が1〜5質量%であると上記の効果が得られやすいため特に好ましい。
【0012】
本製造法では上記の金属ケイ素粒子に対し、気孔形成材を添加して成形体とする。金属ケイ素粒子のみから成形体を形成し、窒素中で熱処理した場合、金属ケイ素が窒化ケイ素となる際の体積膨張により金属ケイ素粒子間に形成されていた空隙が閉塞され、その結果充分な通気性が得られなくなるおそれがあるが、本製造法では気孔形成材の添加により、金属ケイ素が窒化ケイ素となる過程で体積膨張した後も、充分な空隙を確保可能となる。
【0013】
気孔形成材の添加量は、気孔形成材の材質および比重のほか、最終製品であるフィルターの通気性や用途に応じ適宜選択されるが、本製造法においては成形体中に金属ケイ素粒子を50〜90質量%および気孔形成材を50〜10質量%含有させると好ましい。気孔形成材の混合割合が10質量%未満であると得られる窒化ケイ素フィルタの気孔率が小さくなりすぎ、フィルタとしての機能が低下するおそれがある。一方、気孔形成材の添加量が50質量%を超えると窒化ケイ素フィルタの気孔率が大きくなりすぎ、機械的強度が不足して実用に耐えなくなるおそれがある。
【0014】
本製造法によれば、従来法(たとえば、特許文献5参照)と同一の気孔形成材の添加量で比較した場合、より優れた通気性が得られる。この理由は、気孔形成材の添加により、強度向上の目的で添加した上記の粒径1〜10μmの金属ケイ素粒子を、気孔形成材と粒径20〜100μmの金属ケイ素粒子との隙間に集中させる効果が得られやすくなるためであると考えられる。そしてその結果、粒径1〜10μmの金属ケイ素粒子が粒径20〜100μmの金属ケイ素粒子間の空隙を閉塞させることなく、かつ粒径1〜10μmの金属ケイ素粒子の添加量が少量であっても粒径20〜100μmの金属ケイ素粒子間の接点を効果的に強化でき、機械的強度に優れたフィルタが得られやすくなる。
【0015】
また、気孔形成材としては気孔を形成できるものであれば特に制限されないが、酸化物セラミックス粒子および/または有機樹脂粒子を用いることが好ましい。なかでも、該粒子が略球状で、かつ中空または中実の形状を有する粒子であると、少ない添加量で所望の気孔を形成できるため特に好ましい。
【0016】
酸化物セラミックス粒子としては、熱処理時に気孔を形成し、しかも熱処理過程で生成する窒化ケイ素粒子に対して焼結助剤的な働きをするものであれば結晶質、非晶質のいずれも好適に使用される。なかでもAl、Si、Ca、Y、TiおよびMgからなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物を主成分とすると焼結助剤的な効果も高いため好ましい。また、酸化物セラミックス粒子からなる気孔形成材を用いる場合には、その形状が中空状であると、少ない添加量で気孔を形成する効果が得られやすいため好ましい。このとき、中空であれば外皮に相当する部分が緻密質でもよいし多孔質でもよい。
【0017】
有機樹脂粒子としては、熱分解性の高分子粒子であると熱処理過程で分解、飛散し、焼結体内に残留物を残さず得られる窒化ケイ素フィルタの特性を損なわないため好ましい。たとえば、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
【0018】
本製造法において、気孔形成材と金属ケイ素粒子との混合には、ボールミルやミキサーなどの一般的な混合手段が使用でき、また、気孔形成材と金属ケイ素粒子とを含む成形体を所望の窒化ケイ素フィルター形状に作成する方法としては、プレス成形、押出成形、鋳込成形などの通常のセラミックス成形法が適宜採用される。なお、成形に際して、有機バインダーを加えてもよい。このような有機バインダーとしては、ポリビニルアルコールまたはその変成物、でんぷんまたはその変成物、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂またはアクリル系共重合体、酢酸ビニル樹脂または酢酸ビニル系共重合体、などの有機物を使用できる。
【0019】
前記成形体を熱処理する条件としては、窒素雰囲気下で2段階の熱処理とし、金属ケイ素粒子の窒化に適した第1段および生成した窒化物である窒化ケイ素粒子の焼結に適した第2段に分けるのが好ましい。
【0020】
第1段の熱処理条件としては、窒素雰囲気下、常圧で1200〜1400℃にて4〜18時間保持するのが好ましい。温度が1200℃未満であると金属ケイ素粒子の窒化が起こらず、一方、温度が1400℃を超えると金属ケイ素の融点(1410℃)付近で金属ケイ素粒子が融解し、焼結体の形状を保持できないため好ましくない。温度保持時間が4時間未満であると金属ケイ素粒子の窒化が不充分となり好ましくなく、また温度保持時間が18時間を超えると窒化反応がそれ以上ほとんど進行しなくなり、運転費用がかさむため好ましくない。
【0021】
第2段の熱処理条件としては、窒素雰囲気下、常圧で1500〜1800℃にて1〜12時間保持することが好ましい。温度が1500℃未満であると窒化ケイ素粒子の焼結が進まないため好ましくなく、1800℃を超えると窒化ケイ素粒子が分解するので好ましくない。温度保持時間が1時間未満であると粒子同士の結合が充分に進行しないため好ましくない。一方、12時間を超えると特に、高温では窒化ケイ素が分解しやすくなり好ましくない。なお、第1段の熱処理と第2段の熱処理は、中間で温度をいったん下げても、または温度を下げることなく連続で実施してもよい。
【0022】
熱処理時の昇温速度は、成形体の大きさ、形状などにより適宜選択されるが、10〜600℃/hであると窒化率、気孔径の点で好ましい。昇温過程であっても、第1段および第2段で規定する温度範囲にある場合は、その経過時間はそれぞれ第1段および第2段の保持時間に加えるものとする。ここで窒素雰囲気とは、実質的に窒素のみを含み酸素を含まない雰囲気をいうが、他の不活性気体を含んでいてもよい。窒素分圧は50kPa以上が好ましい。
【0023】
本製造法で得られる窒化ケイ素フィルタの気孔率は、55〜80%であると好ましい。気孔率は、アルキメデス法により測定する。気孔率が55%未満であると圧力損失が大きくなるためフィルタとして好ましくなく、また気孔率が80%を超えると強度が低いためフィルタとしての実用に耐えなくなるおそれがある。
【0024】
本製造法で得られる窒化ケイ素フィルタの水銀圧入法で測定された平均細孔径は10〜45μmであると好ましい。平均細孔径が10μm未満であるとフィルタ使用時の圧力損失が大きくなり好ましくない。平均細孔径が45μmを超えると、気孔内の形状がいかに複雑であっても、パティキュレートのような排気微粒子の捕捉除去がしにくくなるため好ましくない。
【0025】
また、本製造法で得られる窒化ケイ素フィルタの圧縮強度は1MPa以上であると好ましい。圧縮強度が1MPa未満であるとフィルタとしての長期使用に耐えなくなるおそれがあるため好ましくない。
【実施例】
【0026】
以下に実施例(例1〜10)と比較例(例11〜14)とを示す。得られた多孔体は以下に示す評価法によって測定した。
【0027】
[評価方法]
個数基準粒径および粒度分布:レーザー散乱・回折装置(堀場製作所製、商品名:LA−920)を使用して求めた。
気孔率および平均細孔径:水銀ポロシメータ(ユアサアイオニクス社製、AUTOSCAN−33)で測定した。
圧縮強度:ハニカム形状に作製したフィルタから、縦横が7×7セルからなり、長さ12mmの試験片を切り出し、押出方向と平行に荷重を印加速度0.5mm/分で印加して室温で測定した。
【0028】
[例1(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、個数基準平均粒径D50=40μmの金属ケイ素粉末に、シリカおよびアルミナを主成分とする直径80μmの中空球状粒子からなる気孔形成材を、金属ケイ素粒子と気孔形成材との合計質量に対する気孔形成材の質量の比率が10%となるように添加して混合粉末を準備した。上記混合粉末100質量部に対して、メチルセルロース10質量部、イオン交換水35質量部を添加し、混練して押出成形原料とした。
【0029】
前記押出成形原料を真空押出機でハニカム形状の成形体に押出成形後、100℃で乾燥し、窒素雰囲気中で500℃まで加熱して脱脂を行った。上記で得られたハニカム成形体を窒素雰囲気中、常圧で昇温速度2℃/分で1350℃まで昇温後、4時間保持して第1段階の熱処理を行い、さらに昇温速度4℃/分で温度1700℃とし、4時間保持して多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。この多孔体の気孔率は58.0%、平均細孔径は12.8μm、圧縮強度は10.1MPaであった。
【0030】
[例2(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=30μmの金属ケイ素粉末を用い、気孔形成材として直径80μmの中実球状アクリル樹脂粒子を使用し、さらに金属ケイ素粒子と気孔形成材との合計質量に対する気孔形成材の質量の比率を30質量%に変更した以外は例1と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は65.1%、平均細孔径は19.8μm、圧縮強度は3.7MPaであった。
【0031】
[例3(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=46μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は66.7%、平均細孔径は20.3μm、圧縮強度は3.1MPaであった。
【0032】
[例4(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=55μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は67.3%、平均細孔径は21.0μm、圧縮強度は2.8MPaであった。
【0033】
[例5(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=40μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は63.6%、平均細孔径は16.7μm、圧縮強度は5.7MPaであった。
【0034】
[例6(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=40μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は64.5%、平均細孔径は18.1μm、圧縮強度は5.2MPaであった。
【0035】
[例7(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=40μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は64.3%、平均細孔径は18.0μm、圧縮強度は5.4MPaであった。
【0036】
[例8(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=55μmの金属ケイ素粉末を用い、金属ケイ素粒子と気孔形成材との合計質量に対する気孔形成材の質量の比率を50質量%に変更した以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は74.8%、平均細孔径は24.5μm、圧縮強度は1.4MPaであった。
【0037】
[例9(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=55μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例8と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は74.1%、平均細孔径は23.9μm、圧縮強度は2.1MPaであった。
【0038】
[例10(実施例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=55μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例8と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は72.6%、平均細孔径は21.3μm、圧縮強度は2.3MPaであった。
【0039】
[例11(比較例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=40μmの金属ケイ素粉末を用い、金属ケイ素粒子と気孔形成材との合計質量に対する気孔形成材の質量の比率を5質量%に変更した以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は51.0%、平均細孔径は7.2μm、圧縮強度は16.2MPaであった。
【0040】
[例12(比較例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=18μmの金属ケイ素粉末を用い、金属ケイ素粒子と気孔形成材との合計質量に対する気孔形成材の質量の比率を15質量%に変更した以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は53.0%、平均細孔径は8.0μm、圧縮強度は6.1MPaであった。
【0041】
[例13(比較例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=18μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例8と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は72.8%、平均細孔径は20.5μm、圧縮強度は0.2MPaであった。
【0042】
[例14(比較例)]
表1に示す粒度分布を有する、D50=40μmの金属ケイ素粉末を用いた以外は例2と同様にして多孔質の窒化ケイ素フィルタを得た。このフィルタの気孔率は59.1%、平均細孔径は11.2μm、圧縮強度は9.3MPaであった。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、特定の粒度分布を有する金属ケイ素を出発原料として、これを窒化して窒化ケイ素とすることを特徴とする窒化ケイ素フィルタの製造法であり、フィルタの機械的強度を低下させることなく、気孔率を高めることができるので、特に低圧損でパティキュレートの捕集効率が高く、DPFとして好適なフィルタの製造法に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケイ素粒子と、気孔形成材とを含む成形体を窒素中で熱処理することにより金属ケイ素を実質的に窒化ケイ素とする窒化ケイ素フィルタの製造法であって、
前記金属ケイ素粒子は、全金属ケイ素粒子中の粒子直径20〜100μmの粒子の含有割合が90質量%以上であり、かつ、粒子直径1〜10μmの粒子の含有割合が0.1〜10質量%である
ことを特徴とする窒化ケイ素フィルタの製造法。
【請求項2】
前記成形体中に、金属ケイ素粒子を50〜90質量%および気孔形成材を50〜10質量%含む、請求項1記載の窒化ケイ素フィルタの製造法。
【請求項3】
前記気孔形成材が酸化物セラミックス粒子および/または有機樹脂粒子である、請求項1または2記載の窒化ケイ素フィルタの製造法。
【請求項4】
前記フィルタの気孔率が55〜80%であり、水銀圧入法で測定される平均細孔直径が10〜45μmでありかつ圧縮強度が1.0MPa以上である、請求項1〜3のいずれか記載の窒化ケイ素フィルタの製造法。

【公開番号】特開2007−160256(P2007−160256A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361909(P2005−361909)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】