説明

窒素含有排水処理方法

【課題】生物学的硝化脱窒装置の脱窒塔の高濃度のCODよる汚染問題を解決する。
【解決手段】アンモニア含有排水を混合槽5に供給し処理水と混合し薬液で調整した後、DHS硝化塔13で硝化し、メタノールを添加しUASB脱窒塔17に送り、UASB脱窒塔17で脱窒細菌で窒素を除去した後、処理水貯槽23に送り処理水を外部へ排出すると同時に、処理水の一部を混合槽5に戻す窒素含有排水処理方法において、UASB脱窒塔17内のメタノール量が過剰となり、UASB脱窒塔17の出口のCODが設定値を越えたとき、UASB脱窒塔17と処理水貯槽23とを循環させるための戻りライン31を取り付け、UASB脱窒塔17に脱硝塩供給装置33から硝酸塩を供給し、メタノールと硝酸イオンとで脱窒反応を起させ、CODを低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的硝化脱窒処理装置を用いた窒素含有排水処理方法に関し、特に硝化処理後、水素供与体を添加し脱窒処理を行う生物学的硝化脱窒処理装置を用いた窒素含有排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水中に含まれる窒素は、富栄養化現象の原因とされ、排水中の窒素を除去する技術が多く開発されている。この一つである微生物を利用して排水中の窒素を除去する生物学的窒素処理方法も、従来からよく使用されており、順送法、AO(Anaerobic−Oxic)法、A2O(Anaerobic−Anoxic−Oxic)及びUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)−DHS(Downflow Hanging Sponge Cube)法などの循環法を含め多くのプロセスが提案さている。生物学的窒素処理方法は、好気性細菌である硝化細菌により排水中のアンモニア体窒素を、亜硝酸体又は硝酸体窒素にまで酸化する硝化工程と、嫌気性細菌である脱窒細菌を用いて硝酸体、亜硝酸体窒素を窒素に還元する脱窒工程とからなり、ここで使用するリアクタも種々の形態のものが開発されている。
【0003】
窒素含有排水は、下水のように有機物を多く含む排水から、工場から排出される排水で有機物を殆ど含まない排水まで幅広い。一般的に比較的有機物を多く含む窒素含有排水を生物学的窒素処理方法で処理する場合には、上流側に脱窒槽を下流側に硝化槽を配置する場合が多く、例えば、循環法の一つである循環UASB−DHS法は、前段のUASBリアクタで脱窒反応、後段のDHSリアクタで硝化反応を行い、後段の硝化反応の進んだ処理水の一部を前段の脱窒塔であるUASBリアクタへ循環させ、処理水中の有機物を脱窒反応の水素供与体として利用する(例えば特許文献1参照)。一方、有機物を殆ど含まない窒素含有排水を生物学的窒素処理方法で処理する場合には、上流側に硝化槽を下流側に脱窒槽を配置するのが一般的である。このような処理方法において、硝化反応に必要な無機炭酸の新たな供給方法も提案されている。(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−285696号公報
【特許文献2】特開2006−320844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機物を殆ど含まない窒素含有排水を生物学的窒素処理方法で処理する場合には、上記の通り、硝化細菌により排水中のアンモニア体窒素を、亜硝酸体又は硝酸体窒素とし、嫌気性細菌である脱窒細菌を用いて窒素に還元するのが一般的である。このとき脱窒反応に水素供与体が必要であり、この水素供与体はメタノール等を注入することで行われる。このような生物学的窒素処理方法を用いた排水処理装置において、脱窒槽内のメタノールが過剰となると脱窒槽内のCOD濃度が高くなる。本来、COD濃度の低い排水を対象とする脱窒槽の消化能力は低く、脱窒槽内のCOD濃度を低下させるためには長い時間が必要となる。このため脱窒槽内のCOD濃度が高くなると処理水中のCOD濃度も高くなり、この結果、処理水を放流することができなくなる。従来、このような状況が発生すると脱窒槽の排水及び処理水貯槽の処理水を回収し、別途処理していたが、多くの時間と労力を必要とし、これら排水及び処理水を回収することなく短時間で処理することができる処理方法の開発が待たれていた。
【0006】
本発明の目的は、硝化処理後、水素供与体を添加し脱窒処理を行う生物学的硝化脱窒処理装置を用いた窒素含有排水処理方法において、脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、CODを短時間で低下させる窒素含有排水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、排水中のアンモニア体窒素を硝化槽で硝化処理した後、水素供与体を添加し脱窒槽で脱窒処理し窒素を除去する生物学的硝化脱窒装置を用いた窒素含有排水処理方法において、脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、脱窒槽に硝酸塩を注入しCOD成分を分解させることを特徴とする窒素含有排水処理方法である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の窒素含有排水処理方法において、前記窒素含有排水は、低有機物含有排水又は無機排水であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の窒素含有排水処理方法において、前記窒素含有排水は、石炭火力発電所から排出される窒素含有排水であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法において、前記水素供与体がメタノール又は酢酸であり、脱窒槽内のメタノール又は酢酸が過剰となり脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法において、前記硝酸塩は、脱窒槽内の硝酸イオン濃度が5,000mg/L未満となるように注入することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法において、前記硝酸塩は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムのいずれか1以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の本発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法において、前記生物学的硝化脱窒装置は、脱窒槽で処理した処理水の一部を硝化槽に返送する循環ラインを備え、脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、処理水の硝化槽への返送を停止し、脱窒槽に硝酸塩を注入しCOD成分を分解させることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の本発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法において、前記生物学的硝化脱窒装置は、脱窒槽の下流側に処理水貯槽を有し、脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、脱窒槽と処理水貯槽とで排水を循環させながら該循環水に硝酸塩を注入し、COD成分を分解させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る窒素含有排水処理方法は、脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、硝酸塩を注入する。これによりCOD成分と硝酸イオンとで脱窒反応を生じさせ、COD成分を分解させるので、脱窒槽が高濃度のCODで汚染された場合であっても脱窒槽内のCODを短時間に低下させることができる。脱窒槽の消化反応の反応速度は遅いけれども、脱窒反応は反応速度が速いため、短時間のうちにCOD成分を分解させることができる。また排水を抜出して、別途処理する必要がないので手間がかからない。
【0016】
本発明に係る窒素含有排水処理方法は、低有機物含有排水又は無機排水に好適に適用可能であり、石炭火力発電所から排出される窒素含有排水に好適に使用することができる。
【0017】
また本発明に係る窒素含有排水処理方法は、脱窒槽内において水素供与体であるメタノール又は酢酸が過剰となり脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたような場合に好適に適用することができる。
【0018】
また本発明によれば、硝酸塩は、脱窒槽内の硝酸イオン濃度が5,000mg/L未満となるように注入するので、脱窒細菌の活性を高く維持することができる。また、硝酸塩が硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムのいずれか1以上であるので、水中に溶解させたときほぼ中性であり、pH調整剤が不要か少量で済む。
【0019】
また本発明によれば、生物学的硝化脱窒装置が循環法を採用する場合であって、脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、処理水の硝化槽への返送を停止し、脱窒槽に硝酸塩を注入しCOD成分を分解させるので、高濃度のCOD排水による硝化細菌の活性低下を防止することができ、脱窒槽内のCOD濃度が低下した後、直ちに通常運転に復帰できる。
【0020】
また本発明によれば、脱窒槽の下流側に処理水貯槽を有するときは、脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、脱窒槽と処理水貯槽とで排水を循環させながら該循環水に硝酸塩を注入するので、脱窒槽と処理水貯槽内の水を一度に処理することが可能となり好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の窒素含有排水処理方法を説明するための図であって、代表的な生物学的硝化脱窒装置1のプロセスフロー図である。
【図2】本発明の窒素含有排水処理方法を説明するための図であって、代表的な生物学的硝化脱窒装置1に、本発明の窒素含有排水処理方法を適用した例を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る窒素含有排水処理方法は、排水中のアンモニア体窒素を硝化槽で硝化処理した後、水素供与体を添加し脱窒槽で脱窒処理し窒素を除去する生物学的硝化脱窒装置を用いた窒素含有排水処理方法において、脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、脱窒槽にCOD成分を分解させるに必要な量の硝酸塩を注入し、COD成分と硝酸イオンとで脱窒反応を生じせCOD成分を分解し、脱窒槽内のCODを短時間内に低下させる方法である。脱窒槽内のCOD濃度の設定値は、任意に設定すればよく、例えば設定値として、河川等に放流可能な規制値を採用してもよい。
【0023】
以下、有機物を殆ど含まない窒素含有排水を生物学的硝化脱窒装置1で処理する場合を例として、本発明に係る窒素含有排水処理方法を説明する。ここでは脱窒槽内のCOD濃度の設定値を、河川等に放流可能な30mg/Lとする。図1は有機物を殆ど含まない窒素含有排水を処理する生物学的硝化脱窒装置1の代表的なプロセスフロー図である。
【0024】
排水貯槽内の窒素含有排水(以下単に排水と記す場合もある)は、排水供給ライン3を通じて混合槽5へ送られる。排水中の全窒素濃度は、供給ライン3に設けられたサンプリングポイト7で測定される。混合槽5へ送られた排水は、排水中の全窒素濃度が500mg/L以下となるように、処理水貯槽23から送られる処理水と混合される。さらに混合槽5には栄養塩供給装置9から無機炭素源である二酸化炭素を供給することを主目的とし、表1に示す栄養塩が供給され、さらにpH調整剤供給装置11から塩酸、硫酸などのpH調整剤が供給される。
【0025】
【表1】

【0026】
混合槽5で調整された排水は、DHS硝化塔13へ送られる。DHS硝化塔13内には、複数の微生物固定化担体(図示省略)が充填されており、DHS硝化塔13には下方から空気が供給される。排水は、DHS硝化塔13の上部から散水され、微生物固定化担体を通過するとき、微生物固定化担体に付着する硝化細菌の作用により空気中の酸素で酸化され、排水中のアンモニア体窒素は、硝酸体窒素又は亜硝酸体窒素となる。硝化反応の反応式は下記の式(1)で示される。
NH+0.103CO+1.86O→0.0182CNO+0.00245CNO+0.979NO+1.98H+0.938HO・・・(1)
【0027】
硝化された排水は、ライン15を通じてUASB脱窒塔17へ送られる。ライン15途中には、メタノール供給装置19が接続し、所定量のメタノールが供給され、排水はメタノールと共にUASB脱窒塔17へ送られる。メタノールは脱窒反応に必要な水素供与体として与えられるものであり、メタノールに代え、酢酸であってもよい。
【0028】
UASB脱窒塔17は、内部にグラニュールを保持し、UASB脱窒塔17に送られた排水中の硝酸体窒素又は亜硝酸体窒素は、グラニュール中の脱窒細菌の作用により、メタノールと反応し窒素ガスと炭酸ガスに分解される。脱窒反応は式(2)で示される。これらの工程により排水中のアンモニア体窒素が窒素ガスに分解される。
6NO+5CHOH→3N+5CO+7HO+6OH・・・(2)
【0029】
処理水は、ライン21を通り処理水貯槽23に送られる。ライン21の途中には、処理水中の全窒素濃度及びCOD濃度を測定するためのサンプリングポイト25が設けられている。処理水中の全窒素濃度及びCOD濃度が共に規制値である30mg/L以下であることが確認された後、処理水貯槽23の処理水は、処理水排出ライン27を通じて河川又は海域へ排出される。処理水の一部は、循環ライン29を通り混合槽5に戻される。
【0030】
図1に示す生物学的硝化脱窒装置1において、通常、メタノールは、DHS硝化塔13の入口の全窒素量に対応した量が供給されており、生物学的硝化脱窒装置1が正常である場合には、UASB脱窒塔17内において過剰のメタノールは存在せず、UASB脱窒塔17内のCOD濃度は規制値を越えることはない。しかしながら、UASB脱窒塔17内のメタノールが過剰となると、処理水中のCOD濃度が規制値を超え、放流できなくなる。メタノールが過剰となるケースとしては、原水中の全窒素濃度が大きく変化した場合、メタノール供給装置19の故障、誤操作等が考えられる。メタノールは、DHS硝化塔13の滞留時間を考慮し、数時間前のDHS硝化塔13の入口の全窒素量に対応した量が供給されるため、DHS硝化塔13の入口の全窒素量が大きく変化するとUASB脱窒塔17でメタノールが過剰となる。
【0031】
以下、図1に示す生物学的硝化脱窒装置1において、UASB脱窒塔17内のCODが規制値を超えたときの処置方法を図2を用いて説明する。図2は、図1に示す生物学的硝化脱窒装置1に本発明を適用したプロセスフロー図である。図1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
処理水のCODが規制値を超えた場合には、最初に処理水排出ライン27を閉じて処理水が外部へ排出されるのを止める。又同時に循環ライン29を閉じて混合槽5に送る処理水を止め、代わりに水道水等を別系統から導き混合槽5に供給する。CODが高い処理水を混合槽5に戻すと、CODの高い排水がDHS硝化塔13に送られ、硝化細菌の活性が低下してしまう。CODが非常に低い状態で生育していた硝化細菌に対して、高COD成分が加わると、硝化細菌以外の細菌が増殖し、DHS硝化塔13の活性が低下してしまう。
【0033】
UASB脱窒塔17中の排水及び処理水貯槽23中の処理水は、次の要領でCODを低下させる。UASB脱窒塔17と処理水貯槽23との間で水を循環させるために、処理水貯槽23からUASB脱窒塔17に水を戻すための戻りライン31を設ける。さらにこの戻りライン31に硝酸塩を供給する硝酸塩供給装置33を接続する。UASB脱窒塔17と処理水貯槽23との間で水を循環させながら、硝酸塩供給装置33から所定量の硝酸塩を供給し、COD成分であるメタノールを分解させる。なお、硝酸塩は、必ずしも戻りライン31に供給する必要はなく、基本的には脱窒反応が起こるUASB脱窒塔17に供給できれば良く、UASB脱窒塔17又は処理水貯槽23に供給してもよい。
【0034】
本来、メタノールは、DHS硝化塔13から送られる排水に含まれる硝酸体窒素、亜硝酸体窒素と脱窒反応を起し消失する。ところがUASB脱窒塔17内の排水に含まれるメタノールが過剰となった状態では、脱窒反応を生じさせるに必要な硝酸体窒素、亜硝酸体窒素がいないため、脱窒反応は起こらずメタノールも消失しない。そこでUASB脱窒塔17と処理水貯槽23との間を循環する水に含まれるメタノールに対応した量の硝酸塩を添加し、メタノールと硝酸イオンとで脱窒反応を生じさせメタノールを分解させる。
【0035】
UASB脱窒塔17と処理水貯槽23との間で水を循環させながら、硝酸塩供給装置33から所定量の硝酸塩を供給し、COD成分であるメタノールを分解させるのは、UASB脱窒塔17と処理水貯槽23との水を同時に処理すると共に、UASB脱窒塔17内のグラニュールの流動化及びメタノールと硝酸イオンとの混合性を高め、脱窒反応を促進することが主目的である。
【0036】
硝酸塩は、固体のまま供給してもよいけれども、予め水に溶解させ水溶液として供給する方法が定量供給、制御性の点から容易である。硝酸塩の添加量は、メタノールと脱窒反応しメタノールを消失させるに必要な量である。このときUASB脱窒塔17と処理水貯槽23とを循環する水中の硝酸塩濃度が5000mg/L以上とならないように硝酸塩を制御しながら供給する。硝酸塩の供給量が多く、水中の硝酸イオン濃度が5,000mg/Lを越えると、脱窒細菌の活性が低下するので好ましくない。
【0037】
供給する硝酸塩は、水中で溶解し硝酸イオンを生じるものであればよく、さらに水に溶解したときほぼ中性を示すものが好ましい。水に溶解したときほぼ中性を示す硝酸塩を使用することで、pH調整剤の使用が不要になるか又は使用量が少量となるため経済的である。このような硝酸塩としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムが例示される。これらは一種を単独で使用可能なことはもちろん、二種以上を使用してもよい。
【0038】
UASB脱窒塔17内のメタノールは、硝酸塩を供給することなく、UASB脱窒塔17内の脱窒細菌の消化作用により分解せることも可能であるが、脱窒細菌の消化速度は非常に遅く、1週間程度は必要となる。これに対して、脱窒細菌の脱窒速度は速いため数時間内にCODは正常値に戻る。処理水中の全窒素濃度及びCOD濃度が規制値以下であることをサンプリングポイト25で確認した後、戻りライン31及び硝酸塩供給装置33を取りはずし、処理水排出ライン27及び循環ライン29を開け通常運転に復帰させる。上記に通り、本発明の窒素含有排水処理方法を使用すればUASB脱窒塔17内の排水又は処理水貯槽の処理水を抜出し、別途処理する必要がないので手間がかからず、さらに短時間内に生物学的硝化脱窒装置1を正常復帰させることができる。
【0039】
次に、処理水のCODが規制値を超える他のケースについて説明する。DHS硝化塔13の硝化菌の活性が低下した場合においても、UASB脱窒塔17内のCODが規制値を超えて高くなる危険性がある。DHS硝化塔13の硝化細菌の活性が低下すると、DHS硝化塔13内でのアンモニア体窒素の硝化割合が低下し、硝酸イオンの生成が少なくなる。そのためUASB脱窒塔17に送られる排水中の硝酸体窒素、亜硝酸体窒素も低下する。一方、メタノールは、DHS脱窒塔13入口の全窒素量に対応した量のメタノール量が供給されるため、硝酸体窒素、亜硝酸体窒素濃度が低下するとUASB脱窒塔17内のメタノール量が過剰になる。このケースでは、処理水中にアンモニア体窒素が含まれるので、処理水はCODのみならず、全窒素濃度が共に高くなる。
【0040】
このケースにおいても、前記と同様に、処理水排出ライン27及び循環ライン29を閉じた後、UASB脱窒塔17と処理水貯槽23との間で水を循環させるために、処理水貯槽23からUASB脱窒塔17に処理水を戻すための戻りライン31を設け、この戻りライン31に硝酸塩を供給する硝酸塩供給装置33を装着し、UASB脱窒塔17と処理水貯槽23との間で水を循環させながら、硝酸塩を供給し、COD成分であるメタノールを分解させる。この間にDHS硝化塔13を健全化させ回復させることで、アンモニア体窒素が硝化され定常運転に復帰させることができる。
【0041】
上記実施形態に示すように、本発明の窒素含有排水処理方法は、脱窒槽内のCOD濃度が設定値以上になったとき、簡単にCODを低下させることができる。このような窒素含有排水処理方法は、排水に含まれる有機物の量が少ない排水又は無機排水に好適に使用可能である。このような排水としては、石炭火力発電所から排出される復水脱塩装置から排出される排水、電気集じん機の洗浄排水、脱硫排水又はこれらが混合した排水などが例示される。なお、上記実施形態では、硝化塔にDHS硝化塔を脱窒塔にUASB脱窒塔を用いた例を示したけれども硝化塔及び脱窒塔がこれらリアクタに限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 生物学的硝化脱窒装置
3 排水供給ライン
5 混合槽
7 サンプリングポイント
9 栄養塩供給装置
11 pH調整剤供給装置
13 DHS硝化塔
15 ライン
17 UASB脱窒塔
19 メタノール供給装置
21 ライン
23 処理水貯槽
25 サンプリングポイント
27 処理水排出ライン
29 循環ライン
31 戻りライン
33 硝酸塩供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水中のアンモニア体窒素を硝化槽で硝化処理した後、水素供与体を添加し脱窒槽で脱窒処理し窒素を除去する生物学的硝化脱窒装置を用いた窒素含有排水処理方法において、
脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、脱窒槽に硝酸塩を注入しCOD成分を分解させることを特徴とする窒素含有排水処理方法。
【請求項2】
前記窒素含有排水は、低有機物含有排水又は無機排水であることを特徴とする請求項1に記載の窒素含有排水処理方法。
【請求項3】
前記窒素含有排水は、石炭火力発電所から排出される窒素含有排水であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒素含有排水処理方法。
【請求項4】
前記水素供与体がメタノール又は酢酸であり、脱窒槽内のメタノール又は酢酸が過剰となり脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法。
【請求項5】
前記硝酸塩は、脱窒槽内の硝酸イオン濃度が5,000mg/L未満となるように注入することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法。
【請求項6】
前記硝酸塩は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムのいずれか1以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法。
【請求項7】
前記生物学的硝化脱窒装置は、脱窒槽で処理した処理水の一部を硝化槽に返送する循環ラインを備え、
脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、処理水の硝化槽への返送を停止し、脱窒槽に硝酸塩を注入しCOD成分を分解させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法。
【請求項8】
前記生物学的硝化脱窒装置は、脱窒槽の下流側に処理水貯槽を有し、
脱窒槽内のCOD濃度が設定値を超えたとき、脱窒槽と処理水貯槽とで排水を循環させながら該循環水に硝酸塩を注入し、COD成分を分解させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の窒素含有排水処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−62656(P2011−62656A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216480(P2009−216480)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(595095629)中電環境テクノス株式会社 (44)
【出願人】(502395985)
【Fターム(参考)】