説明

立体視画像表示装置およびその動作方法

【課題】立体視画像表示装置において、ユーザの指の位置および入力装置の操作の両方に基づいて、立体視カーソルを容易に制御する。
【解決手段】立体視カーソルの位置に関するユーザ指示を受け付ける。ユーザの指の位置情報を取得し、この位置情報に基づいて、ユーザの指が有効空間S内に位置するか否かを判別する。判別結果に基づいてユーザ指示あるいは位置情報のいずれかを選択して立体視カーソルを構成する左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視差を有する左眼用画像および右眼用画像を表示してユーザに立体視画像を視認させる立体視画像表示装置およびその動作方法に関する。より詳しくは、左眼用画像に左眼用カーソル、右眼用画像に右眼用カーソルを重畳して表示することにより、立体視画像および立体視カーソルをユーザに視認させる立体視画像表示装置およびその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視差に対応する2つの撮影方向で同一の被写体を撮影して得られた2つの画像を表示し、これら2つの画像をユーザの左右各眼に入射させ、ユーザがこれらの2つの画像を脳内で合成することで立体視画像を視認できることが知られている。
【0003】
そして、このような立体視画像は、デジタルカメラやテレビなどの分野だけでなく、放射線画像撮影の分野においても利用されている。すなわち、被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線を照射し、その被写体を透過した放射線を放射線画像検出器によりそれぞれ検出して視差を有する2つの放射線画像を取得し、これらの2つの放射線画像を表示することが行われている。これにより、奥行感を有する立体視画像を視認することにより、診断をし易くすることができる。
【0004】
ところで、立体視画像を視認しているユーザが、奥行き方向の位置関係を直感的に把握するため、あるいは計測を行うために、立体視画像内の所望位置を指定したい場合があり得る。
【0005】
特許文献1には、立体視画像を視認させる立体視画像表示装置と立体視画像表示装置の前方に設けられたタッチパネルとを組み合わせ、タッチパネルを操作するユーザの指先等の位置を検出して立体視画像内の所望位置を指定する技術が提案されている。また、特許文献2には、トラックボール装置等の入力装置からの操作によって立体視カーソルを制御して立体視画像内の所望位置を指定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−293878号公報
【特許文献2】特開昭63−257784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に提案された技術では、ユーザが現実に近い感覚で立体視画像内の所望位置を指定することが可能であり、特許文献2に記載された技術では、精度よく立体視画像内の所望位置を指定するこができるため、これらの技術を組み合わせ、ユーザの指の位置およびマウス等の入力装置の操作の両方の指示に基づいて立体視カーソルを制御することが考え得る。
【0008】
しかしながら、ユーザの指の位置および入力装置の操作の両方の指示に基づいて、立体視カーソルを制御すると、ユーザは常にどちらの指示に基づいて、立体視カーソルを制御しているかを意識する必要がある。
【0009】
そして、ユーザがいずれの指示に基づいて立体視カーソルを制御しているのかを失念すると、たとえば、指の位置に基づいて立体視カーソルを制御しているにも関わらず、入力装置を操作してしまい、立体視カーソルが元の位置から大幅にずれて位置指定をやり直しさせざる負えない虞がある。そして、このような位置の指定をやり直しは、ユーザが意識していたにも関わらず、うっかり入力装置を誤操作した場合にも生じ得る。また、入力装置の操作に基づいて立体視カーソルを制御しているにも関わらず、指の位置を動かして立体視カーソルを操作しようとしてしまい、立体視カーソルが元の位置から移動せずにユーザが困惑する虞もある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、ユーザの指の位置および入力装置の操作の両方の指示に基づいて立体視カーソルを制御する場合であっても、容易に立体視カーソルの制御できる立体視画像表示装置およびその動作方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の立体視画像表示装置は、異なる2つの撮影方向から放射線撮影して得られた左眼用画像および右眼用画像に対し、左眼用画像に左眼用カーソル、右眼用画像に右眼用カーソルを重畳させて表示してユーザに立体視画像および立体視カーソルを視認させる表示部と、立体視カーソルの位置に関するユーザ指示を受け付ける指示受付部と、ユーザの指に装着され、ユーザの指の位置情報を取得する位置取得部と、位置取得部で取得されたユーザの指の位置情報に基づいて、指の位置が所定空間内に位置するか否かを判別する位置判別部と、指示受付部で受け付けられたユーザ指示または位置取得部で取得された位置情報のいずれかに基づいて、左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御するカーソル表示制御部とを備え、カーソル表示制御部が、位置判別部の判別結果に応じて、ユーザ指示あるいは位置情報のいずれかを選択して左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御するものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の立体視画像表示装置の動作方法は、異なる2つの撮影方向から放射線撮影して得られた左眼用画像および右眼用画像に対し、左眼用画像に左眼用カーソル、右眼用画像に右眼用カーソルを重畳させて表示する表示部を備え、ユーザに立体視画像および立体視カーソルを視認させる立体視画像表示装置の動作方法であって、立体視カーソルの位置に関するユーザ指示を受け付け、ユーザの指の位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて、指の位置が所定空間内に位置するか否かを判別し、左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御する際、判別結果に基づいて、ユーザ指示あるいは位置情報のいずれかを選択して左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御することを特徴とする。
【0013】
ここで、本発明の立体視画像表示装置およびその動作方法における「立体視画像」とは、左眼用画像および右眼用画像をユーザの左右の各眼に入射させ、ユーザが左眼用画像および右眼用画像を脳内で合成して立体的な画像として認識するものを意味する。また、上記「立体視カーソル」とは、左眼用カーソルおよび右眼用カーソルをユーザの左右の各眼に入射させ、ユーザが左眼用カーソルおよび右眼用カーソルを脳内で合成して立体的なカーソルとして認識するものを意味する。また、上記「立体視カーソルの位置」とは、ユーザが脳内で認識している立体視カーソルの位置を意味する。
【0014】
また、本発明の立体視画像表示装置は、カーソル表示制御部が、位置判別部がユーザの指が所定空間内に位置すると判別した場合、位置情報に基づいて、左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御するものであってもよい。ここで、「位置情報に基づいて」とは、ユーザ指示および位置情報の両方を受け取り、その上で位置情報を選択して当該位置情報に基づくことを意味する。
【0015】
また、本発明の立体視画像表示装置は、カーソル表示制御部が、位置判別部がユーザの指が所定空間内に位置しないと判別した場合、ユーザ指示に基づいて、左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御するものであってもよい。ここで、「ユーザ指示に基づいて」とは、ユーザ指示および位置情報の両方を受け取り、その上でユーザ指示を選択して当該ユーザ指示に基づくことを意味する。
【0016】
また、本発明の立体視画像表示装置は、指示受付部が、さらにユーザ指示または位置情報のいずれかを優先する旨の優先指示を受け付けるものであり、カーソル表示制御部が、指示受付部が優先指示を受け付けた場合、判別結果よりも優先指示を優先して、立体視カーソルの表示を制御するものであってもよい。
【0017】
また、本発明の立体視画像表示装置は、カーソル表示制御部が、指示受付部がユーザ指示を優先する旨の優先指示を受け付けた場合、位置判別部がユーザの指が所定空間内に位置すると判別した場合であってもユーザ指示を優先して該ユーザ指示に基づいて、立体視カーソルの表示を制御するものであってもよい。
【0018】
また、本発明の立体視画像表示装置は、カーソル表示制御部が、指示受付部が位置情報を優先する旨の優先指示を受け付けた場合、位置判別部が前記ユーザの指が所定空間内に位置しないと判別した場合であっても位置情報を優先して位置情報に基づいて、立体視カーソルの表示を制御するものであってもよい。
【0019】
また、本発明の立体視画像表示装置は、カーソル表示制御部が、ユーザ指示または位置情報のいずれかに基づいて、左眼用カーソルおよび右眼用カーソルを表示する位置および/または大きさを制御するものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の立体視画像表示装置およびその動作方法によれば、立体視カーソルの位置に関するユーザ指示を受け付け、ユーザの指の位置情報を取得し、この位置情報に基づいて、指の位置が所定空間内に位置するか否かを判別し、ユーザ指示または位置情報のいずれかに基づいて左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御する際、判別結果に基づいてユーザ指示あるいは位置情報のいずれかを選択して左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御する。したがって、ユーザは立体視カーソルをユーザ指示または位置情報のいずれに基づいて制御しているのかを意識する必要がなく、立体視カーソルを容易に制御できる。
【0021】
また、本発明の立体画像表示装置によれば、ユーザの指が所定空間内に位置すると判別した場合は位置情報に基づいて、左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御するため、位置情報に基づいて立体視カーソルを制御している際にユーザ指示を受け付けても、立体視カーソルに不本意な位置ずれが生じることがなく、立体視カーソルが所望位置に位置するように容易に制御できる。
【0022】
また、本発明の立体視画像表示装置によれば、ユーザの指が所定空間内に位置しないと判別した場合はユーザ指示に基づいて、左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御するため、ユーザ指示に基づいて制御している際の位置情報によっても、立体視カーソルが所望位置に精度よく位置するように容易に制御できる。
【0023】
また、本発明の立体視画像表示装置によれば、ユーザ指示を優先する旨の優先指示を受け付けると、ユーザの指が所定空間内に位置すると判別した場合であってもユーザ指示を優先してユーザ指示に基づいて、立体視カーソルの表示を制御するため、ユーザの指の位置に関わらずユーザ指示に基づいて精度よく立体視カーソルを容易に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】放射線撮影表示システムの概略構成図
【図2】放射線撮影装置の一部正面図
【図3】立体視画像表示装置の概略構成図
【図4】モニタと位置取得部との位置関係を示す図
【図5】立体視画像表示装置による一連の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る立体視画像表示装置の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態である立体視画像表示装置を用いた放射線撮影表示システムの概略構成図である。この放射線撮影表示システム1は、被写体である乳房Mを互いに異なる2つの撮影方向から放射線撮影し、視差を有する2つの画像を表示することにより、ユーザに乳房Mの立体視画像を視認させるものである。放射線撮影表示システム1は、図1に示すように、放射線撮影装置10および立体視画像表示装置40から構成されている。
【0026】
最初に、放射線撮影装置10について説明する。放射線撮影装置10は、乳房Mに互いに異なる2つの撮影方向から放射線を照射することで三次元撮影を行い、乳房Mの放射線画像データを取得し、この放射線画像データを格納した画像ファイルGFを立体視画像表示装置40に送信するものである。
【0027】
放射線撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対して上下方向(Z方向)に移動可能であり、且つ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13とを備えている。
【0028】
アーム部13はCの形をしており、その一端には撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線照射部16が取り付けられている。アーム部13の回転および上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0029】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線検出器15と、放射線検出器15からの電荷信号の読み出しを制御する検出器コントローラ33が備えられている。また、撮影台14の内部には、放射線検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関二重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するA/D変換部等も設けられた回路基板等も備えられている。
【0030】
また、撮影台14はアーム部13に対し回転可能に構成されているが、三次元撮影の際には基台11に対してアーム部13が回転した場合でも、撮影台14の向きは基台11に対し固定された向きにできる。
【0031】
放射線検出器15は、電荷信号の記録と読み出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電気信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像の検出器を用いるようにしてもよい。
【0032】
また、電荷信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフさせることによって電荷信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0033】
放射線照射部16の内部には放射線源17と、放射線源コントローラ32が格納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流(mA)、照射時間(ms)、管電圧(kV)等)を制御するものである。
【0034】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置されて乳房Mを押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向(Z方向)に移動させる移動機構19とが設けられている。圧迫板18の位置、圧迫厚は、圧迫板コントローラ34により制御される。
【0035】
制御部30は、中央処理装置(CPU)、半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイス、入力部30aを備えている。制御部30は、各種のコントローラ31〜34に対して所定の制御信号を出力し、放射線撮影装置10の全体の制御を行うものである。そして、制御部30は、三次元撮影によって放射線検出器15で検出された電荷信号に所定の信号処理を施した放射線画像データを画像ファイルGFに格納して立体視画像表示装置40に送信する。
【0036】
入力部30aは、たとえば、キーボードやマウス等のポインティングデバイスから構成されるものであり、CC(頭尾方向)や、MLO(内外斜位方向)等の撮影種類や、三次元撮影における、アーム部13が放射線検出器15の検出面15aに垂直な方向に対してなす角度である撮影角度θを含む撮影条件の入力や撮影開始の入力を受け付けるものである。
【0037】
図2は放射線撮影装置10の一部正面図である。放射線撮影装置10の作用について、図1および図2を用いて説明する。まず、撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房Mを所定の圧力で圧迫する。
【0038】
次に、入力部30aにおいて、撮影者による乳房Mの撮影指示が入力されて撮影が開始する。制御部30は入力された撮影種類を読み出し、撮影種類の情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施形態においては、撮影種類としてCC(頭尾方向)が入力されたものとするが、特に限定されるものではない。
【0039】
制御部30は三次元撮影における互いに異なる2つの撮影角度θの組み合わせを読み出し、一方の撮影角度θの情報をアームコントローラ31に出力する。本実施形態において、撮影角度θは、図2示すように時計回りを正方向、反時計回りを負方向とする。なお、本実施形態においては、撮影角度θ=0°および4°が入力されたものとするが、特に限定されるものではない。2つの撮影方向のなす角度は、視差に対応するように2°〜8°の範囲となるように、撮影角度θの組み合わせで入力されるのが望ましい。
【0040】
そして、アームコントローラ31が、制御部30から出力された撮影種類および撮影角度θ=0°の情報を受け付け、アーム部13が、図2に示すように、検出面15aに垂直となる制御信号を出力する。
【0041】
そして、アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が検出面15aに対して垂直である0°となる状態において、制御部30は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と右眼用画像GRの放射線画像データの読み出しを行うように制御信号を出力する。
【0042】
この制御信号に応じて、放射線源17が放射線を照射し、放射線検出器15が照射された放射線を検出し、検出器コントローラ33によって放射線検出器15から電荷信号が読み出される。制御部30が、この電荷信号に所定の信号処理を施して右目用画像GRの放射線画像データを記憶する。
【0043】
次に、アームコントローラ31が、制御部30から出力された撮影角度θ=+4°の情報に基づき、アーム部13が、図2に示すように、検出面15aに垂直な方向に対して+4°傾くような制御信号を出力する。
【0044】
そして、アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が検出面15aに対して+4°傾いた状態において、制御部30は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と左眼用画像GLの放射線画像データの読み出しを行うように制御信号を出力する。
【0045】
この制御信号に応じて、放射線源17が放射線を照射し、放射線検出器15が照射された放射線を検出し、検出器コントローラ33によって放射線検出器15から電荷信号が読み出される。制御部30は、この電気信号に所定の信号処理を施して左目用画像GLの放射線画像データを記憶する。制御部30は、乳房Mの右眼用画像GRおよび左眼用画像GLのそれぞれの放射線画像データを画像ファイルGFに格納して立体視画像表示装置40に送信する。
【0046】
なお、本実施形態では、撮影角度θ=0°で右眼用画像GRの放射線画像データ、撮影角度θ=+4°で左眼用画像GLの放射線画像データの順でそれぞれ読み出して記憶をするものであるが、特に限定されるものではない。すなわち撮影角度θ=0°で左眼用画像GLの放射線画像データ、撮影角度θ=+4°で右眼用画像GRの放射線画像データの順でそれぞれ読み出して記憶してもよい。
【0047】
次に立体視画像表示装置40について説明する。図3は立体視画像表示装置40の概略構成図である。立体視画像表示装置40は、図3に示すように、表示部としてのモニタ41、立体視眼鏡42、ユーザの指に装着される位置取得部43、指示受付部としての入力部44およびコンピュータ45から構成されている。
【0048】
立体視画像表示装置40は、左眼用画像GLおよび右眼用画像GRを表示することにより、左眼用画像GLおよび右眼用画像GRをユーザの左右各眼に入射させ、ユーザに乳房Mの立体視画像を視認させるものである。また、立体視画像表示装置40は、左眼用画像GLに左眼用カーソルCL、右眼用画像GRに右眼用カーソルCRを重畳して表示することにより、ユーザに立体視画像内に立体視カーソルを視認させるものである。
【0049】
モニタ41は、コンピュータ45に接続され、モニタ画面411に左眼用画像GLまたは右眼用画像GRの両方をフレーム・シーケンシャル方式、すなわち左眼用画像GL、右眼用画像GR、左眼用画像GL、右眼用画像GR・・・というように、たとえば、数十msec程度の周期で切り替えて表示する。また、モニタ41は、左眼用画像GLおよび右眼用画像GRに左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRを重畳させて前述のフレーム・シーケンシャル方式で表示するものである。なお、モニタ41は、必要に応じてモニタ画面411に撮影条件や、診断レポート等も表示できる。
【0050】
立体視眼鏡42は、左眼用部分421および右眼用部分422に、互いに独立して開閉する液晶シャッタを有している。これらの液晶シャッタは、コンピュータ45によって左眼用画像GLの表示中は左眼用部分421が開で右眼用部分422が閉、右眼用画像GRの表示中は左眼用部分421が閉で右眼用部分422が開となるように、前述の左眼用画像GLと右眼用画像GRとの切り替えに同期して開閉制御されるものである。
【0051】
位置取得部43は、ユーザの指に装着され、ユーザの指の三次元位置を測定して位置情報として取得するものである。そして、位置取得部43は取得した位置情報をコンピュータ45に出力する。位置取得部43としては公知の磁気センサや加速度センサなどを用いることができる。
【0052】
入力部44は、たとえば、キーボードやマウス等のポインティングデバイスから構成されるものであり、ユーザによる立体視カーソルの表示に関する指示、表示の開始指示、表示の終了指示等を受け付けるものである。なお、入力部44はコンピュータ45に接続されている。
【0053】
コンピュータ45には、本実施形態である立体視画像表示装置40として機能させるためのプログラムがインストールされている。コンピュータ45は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイス等を備えており、これらのハードウェアにより、制御部451、表示制御部452、位置判別部453およびカーソル表示制御部454を構成している。
【0054】
制御部451は、放射線撮影装置10から画像ファイルGFを受信、入力部44が受け付けたユーザ指示の受け取り、および立体視画像表示装置40の全体を制御するものである。表示制御部452は右眼用画像GRおよび左眼用画像GLを前述のフレーム・シーケンシャル方式で表示するよう、モニタ41を制御するものである。
【0055】
位置判別部453は、位置取得部43からの位置情報に基づいて、ユーザの指が有効空間S内に位置しているか否かを判別するものである。この有効空間Sは、モニタ41に対する位置で設定されるものである。図4はモニタ41と位置取得部43との位置関係を示す図であり、図4の上図はモニタ41と位置取得部43を上から見た平面図、下図は側面図である。図4に示すように、有効空間Sは、モニタ画面411と同一の断面形状を有し、モニタ画面411からユーザに向かって0.1〜1m程度の範囲の空間である。
【0056】
カーソル表示制御部454は、入力部44からのユーザ指示および位置取得部43からの位置情報の両方を受け取り、ユーザ指示または位置情報のいずれかを選択して立体視カーソルがユーザの所望位置に位置するよう、立体視カーソルを構成する左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御するものである。カーソル表示制御部454は、モニタ41に左眼用画像GLおよび右眼用画像GRに左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRを重畳させて前述のフレーム・シーケンシャル方式で表示させるものである。
【0057】
カーソル表示制御部454は、入力部44からのユーザ指示に基づく場合は、マウス等のポインティングデバイスの操作や、キーボード入力に応じて左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御し、位置情報に基づく場合は、ユーザの指の位置に連動して、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御する。
【0058】
そして、カーソル表示制御部454は、位置判別部453がユーザの指が有効空間S内にあると判別した場合は、立体視カーソルの表示指示を入力部44が受け付けた場合であっても、位置情報を選択して当該位置情報に基づいて左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御し、ユーザの指が有効空間S内にないと判別した場合は、ユーザが指を動かした場合であっても、入力部44が受け付けた立体視カーソルの表示指示を選択して当該表示指示に基づいて左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御する。
【0059】
このように、カーソル表示制御部454は、位置情報またはユーザ指示のいずれか一方に基づいて、立体視カーソルが立体視画像内の所望位置に位置するよう、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御するため、ユーザは立体視カーソルが位置情報またはユーザ指示のいずれに基づいて制御しているのかを意識する必要がなく、立体視カーソルを容易に制御できる。また、位置情報に基づいて立体視カーソルを制御している際の入力部44の誤操作による位置指定のやり直しをも回避できる。
【0060】
また、カーソル表示制御部454は、ユーザ指示および位置情報のいずれに基づく場合であっても、立体視カーソルがユーザの所望位置に位置するように、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの左眼用画像GLおよび右眼用画像GRにおける表示位置を制御するものである。またカーソル表示制御部454は、立体視カーソルの所望位置への移動がモニタ画面411に対して垂直な方向の移動のみを必要とする場合は、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示の大きさのみを制御する。具体的には、所望位置が立体視カーソルの現在位置よりもユーザに近い場合、すなわち立体視画像の奥行き方向の手前側である場合は、立体視カーソルがより大きくなるように左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示の大きさを制御する。また、カーソル表示制御部454は、所望位置が立体視カーソルの現在位置よりもユーザから遠い場合、すなわち立体視画像の奥行き方向の奥側である場合は、立体視カーソルがより小さくなるように左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示の大きさを制御する。これにより、ユーザは立体視カーソルの奥行き方向の位置関係を直感的に把握できる。
【0061】
また、カーソル表示制御部454は、立体視カーソルの所望位置への移動がモニタ画面411に対して平行な方向の移動のみを必要とする位置である場合は左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示位置のみを制御し、所望位置が平行な方向および垂直な方向の両方の移動を必要とする場合は左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示位置および表示の大きさの両方を制御する。
【0062】
また、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの形状は特に限定されるものではなく、たとえば、矢印形状、三角形状であってもよい。この場合、カーソル表示制御部454は、立体視カーソルが所望位置を指し示すように、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示向きを制御するものであってもよい。また、カーソル表示制御部454は、立体視画像内の立体視カーソルの位置等に応じて立体視カーソルの色が変わるよう、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示色を制御するものであってもよい。
【0063】
カーソル表示制御部454は、入力部44が位置情報よりも入力部44からのユーザ指示を優先させる旨の優先指示を受け付けると、たとえユーザの指が有効空間S内に位置する場合であっても、入力部44からのユーザ指示に基づいて、立体視カーソルが所望位置に位置するよう、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御する。これにより、たとえば、指によって立体視カーソルを所望位置に移動させているユーザが、立体視カーソルを現在位置から微調整したい場合、ユーザ指示に基づいて、精度よく立体視カーソルを所望位置に位置させることができる。
【0064】
また、カーソル表示制御部454は、入力部44が入力部44からのユーザ指示よりも位置情報を優先させる旨の優先指示を受け付けると、位置情報を優先させて立体視カーソルが所望位置に位置するよう、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御する。なお、カーソル表示制御部454は、ユーザ指示よりも位置情報を優先させる旨の優先指示を受け付けると、たとえユーザの指が有効空間S内に位置しない場合であっても、位置取得部43からの位置情報に基づいて、立体視カーソルが所望位置に位置するよう、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御できるものである。
【0065】
カーソル表示制御部454は、入力部44が優先指示を解除する旨の解除指示を受け付けることにより、ユーザの指が有効空間S内にある場合は位置情報、ユーザの指が有効空間S内にない場合はユーザ指示に基づいて、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御するように戻る。
【0066】
次に立体視画像表示装置40による一連の処理について説明する。図5は、立体視画像表示装置40による一連の処理を示すフローチャートである。最初に、制御部451が放射線撮影装置10から画像ファイルGFを受信する(ST1)。入力部44が表示を開始する旨の指示を受け付けると(ST2)、表示制御部452は、左眼用画像GL、右眼用画像GR、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRをモニタ41に表示させる(ST3)。
【0067】
位置取得部43がユーザの指の位置情報を取得し(ST4)、位置判別部453がユーザの指が有効空間S内に位置するか否かを判別する(ST5)。カーソル表示制御部454は、位置判別部453がユーザの指が有効空間S内にあると判別した場合は位置情報に基づいて、立体視カーソルが所望位置に位置するよう、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御し(ST6)、位置判別部453がユーザの指が有効空間S内にいないと判別した場合は入力部44からのユーザ指示に基づいて、立体視カーソルが所望位置に位置するよう、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御する(ST7)。そして、入力部44が、表示を終了する旨の指示を受け付けると(ST7)、処理を終了する。なお、各部の処理は、制御部451の制御命令によって行われる。
【0068】
上記の実施形態によれば、位置取得部43がユーザの指の位置情報を取得し、位置判別部453が、この位置情報に基づいて、指の位置が有効空間S内に位置するか否かを判別する。そして、カーソル表示制御部454が、判別結果に基づいてユーザ指示または位置情報のいずれかを選択して立体視カーソルが立体視画像内のユーザの所望位置に位置するよう、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御する。したがって、ユーザは常にどちらの指示に基づいて、立体視カーソルを制御しているかを意識する必要はなく、立体視カーソルを容易に制御できる。
【0069】
また、上記の実施形態によれば、ユーザの指が有効空間S内に位置すると判別した場合は、位置取得部43からの位置情報に基づいて、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御するため、たとえ、入力部44の誤操作があっても、位置指定のやり直しを回避でき、立体視カーソルを容易に制御できる。
【0070】
また、上記の実施形態によれば、ユーザの指が有効空間S内に位置しないと判別した場合は、入力部44からユーザ指示に基づいて、左眼用カーソルCLおよび右眼用カーソルCRの表示を制御するため、たとえユーザが指を動かしても、立体視カーソルが精度よく所望位置に位置するように容易に制御できる。
【0071】
また、上記の実施形態によれば、入力部44からのユーザ指示を優先する旨の優先指示を受け付けると、ユーザの指が所定空間内に位置すると判別した場合であっても入力部44からのユーザ指示を優先してユーザ指示に基づいて、立体視カーソルを制御するため、指の動きによって立体視カーソルを制御しているユーザが、入力部44からのユーザ指示に基づいて、精度よく立体視カーソルが所望位置に位置するように容易に制御できる。
【0072】
なお、上記の実施形態においては、表示制御部452とカーソル表示制御部454と別々であるものとして説明したが、表示制御部452がカーソル表示制御部454を兼ねている構成であってもよい。
【0073】
なお、上記の実施形態においては、左眼用カーソルCLの左眼用画像GLにおける位置座標、右眼用カーソルCRの右眼用画像GRにおける位置座標を取得し、三角測量法等によって立体視カーソルの三次元位置を測定する構成としてもよい。また、立体視画像内の2つの位置を指定して三次元距離を測定する構成としてもよい。
【0074】
なお、上記の実施形態における立体視画像表示装置40は、上記の構成に限定されるものではなく、パララックスバリア方式およびレンチキュラー方式を用いてもよく、右眼用画像GRおよび左眼用画像GLを互いに直交する偏光で表示し、ハーフミラーで光学的に結合させ、ユーザが、右眼用画像GRが右眼のみに入射する右眼用偏光レンズと左眼用画像GLが左眼のみに入射する左眼用偏光レンズとを備えた偏光メガネを装着することにより、立体視画像を視認する偏光フィルタ方式を用いてもよい。
【0075】
なお、上記の実施形態における被写体は乳房Mに限定されるものではなく、頭部、頸部、腹部、脚部、肺または胃等を被写体とするものであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
CL 左眼用カーソル
CR 右眼用カーソル
GL 左眼用画像
GR 右眼用画像
S 有効空間(所定空間)
1 立体視画像表示装置
41 モニタ(表示部)
43 位置取得部
44 入力部(指示受付部)
453 位置判別部
454 カーソル表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2つの撮影方向から放射線撮影して得られた左眼用画像および右眼用画像に対し、前記左眼用画像に左眼用カーソル、前記右眼用画像に右眼用カーソルを重畳させて表示してユーザに立体視画像および立体視カーソルを視認させる表示部と、
前記立体視カーソルの表示位置に関するユーザ指示を受け付ける指示受付部と、
前記ユーザの指に装着され、該ユーザの指の位置情報を取得する位置取得部と、
前記位置取得部で取得されたユーザの指の位置情報に基づいて、前記指の位置が所定空間内に位置するか否かを判別する位置判別部と、
前記指示受付部で受け付けられたユーザ指示または前記位置取得部で取得された位置情報のいずれかに基づいて、前記左眼用カーソルおよび前記右眼用カーソルの表示を制御するカーソル表示制御部とを備え、
該カーソル表示制御部が、前記位置判別部の判別結果に応じて、前記ユーザ指示あるいは前記位置情報のいずれかを選択して前記左眼用カーソルおよび前記右眼用カーソルの表示を制御するものであることを特徴とする立体視画像表示装置。
【請求項2】
前記カーソル表示制御部が、前記位置判別部が前記ユーザの指が前記所定空間内に位置すると判別した場合、前記位置情報に基づいて、前記左眼用カーソルおよび前記右眼用カーソルの表示を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の立体視画像表示装置。
【請求項3】
前記カーソル表示制御部が、前記位置判別部が前記ユーザの指が所定空間内に位置しないと判別した場合、前記ユーザ指示に基づいて、前記左眼用カーソルおよび前記右眼用カーソルの表示を制御するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の立体画像表示装置
【請求項4】
前記指示受付部が、さらに前記ユーザ指示または前記位置情報のいずれかを優先する旨の優先指示を受け付けるものであり、前記カーソル表示制御部が、前記指示受付部が前記優先指示を受け付けた場合、前記判別結果よりも前記優先指示を優先して、立体視カーソルの表示を制御するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記カーソル表示制御部が、前記指示受付部が前記ユーザ指示を優先する旨の前記優先指示を受け付けた場合、前記位置判別部が前記ユーザの指が前記所定空間内に位置すると判別した場合であっても前記ユーザ指示を優先して該ユーザ指示に基づいて、前記立体視カーソルの表示を制御するものであることを特徴とする請求項4記載の立体視画像表示装置。
【請求項6】
前記カーソル表示制御部が、前記指示受付部が前記位置情報を優先する旨の前記優先指示を受け付けた場合、前記位置取得部が前記ユーザの指が所定空間内に位置しないと判別した場合であっても前記位置情報を優先して該位置情報に基づいて、前記立体視カーソルの表示を制御するものであることを特徴とする請求項4または5に記載の立体視画像表示装置。
【請求項7】
前記カーソル表示制御部が、前記ユーザ指示または前記位置情報のいずれかに基づいて、前記左眼用カーソルおよび前記右眼用カーソルを表示する位置および/または大きさを制御するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の立体視画像表示装置。
【請求項8】
異なる2つの撮影方向から放射線撮影して得られた左眼用画像および右眼用画像に対し、前記左眼用画像に左眼用カーソル、前記右眼用画像に右眼用カーソルを重畳させて表示する表示部を備え、ユーザに立体視画像および立体視カーソルを視認させる立体視画像表示装置の動作方法であって、
前記立体視カーソルの位置に関するユーザ指示を受け付け、
前記ユーザの指の位置情報を取得し、
該取得した位置情報に基づいて、前記指の位置が所定空間内に位置するか否かを判別し、
前記左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御する際、該判別結果に基づいて前記ユーザ指示あるいは前記位置情報のいずれかを選択して前記左眼用カーソルおよび右眼用カーソルの表示を制御することを特徴とする立体視画像表示装置の動作方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−31169(P2013−31169A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159376(P2012−159376)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】