説明

立体駐輪設備

【課題】機械設備も基礎構造もシンプルにすることができる立体駐輪設備を提供する。
【解決手段】立体駐輪設備は、上下方向に複数段の保管棚4が配列されると共に、各段に放射状に複数の保管棚4が配列される保管庫1と、複数段にかつ放射状に配列された複数の保管棚4によって囲まれた空間を上下方向に昇降可能な昇降体6と、保管庫1に旋回不能に固定され、昇降体6が昇降するのを案内するマスト8と、を備える。昇降体6には、自転車を保管棚に受け渡す移載装置5、及び移載装置5を水平面内で旋回させる旋回装置7が設けられる。昇降体6が移載装置5を昇降させることによって移載装置5と上下方向に配列された複数段の保管棚4のそれぞれとの位置合わせが可能になり、旋回装置7が移載装置5を旋回させることによって移載装置5と放射状に配列された複数の保管棚4のそれぞれとの位置合わせが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に複数段の保管棚が配列されると共に、各段に放射状に複数の保管棚が配列される保管庫を備える立体駐輪設備に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車は年齢・性別に関わらずにあらゆる人々に利用されている。日本の市街地では土地が狭くかつ高いので、自転車を駐輪するための充分なスペースを確保することが困難である。これが原因で市街地のどこへいっても自転車が迷惑駐輪されている。この問題を解決するために、市街地の駅前やデパート等の狭いスペースに効率的に自転車を駐輪できるツリー型の立体駐輪設備が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
この種の立体駐輪設備は、上下方向に複数段の保管棚が配列されると共に、各段に放射状に複数の保管棚が配列される保管庫を備える。利用者が入出庫ブースの受け渡し位置に自転車をセットし、入庫指示をすると、受け渡し位置にセットされた自転車が機械によって搬送され、自動的に目的の保管棚に収納されるようになっている。一方、利用者が出庫指示をすると、保管棚に保管された自転車が機械によって自動的に受渡し位置に搬出されるようになっている。
【0004】
この種の立体駐輪設備においては、機械が自動的に自転車を入出庫するときに必ず上下方向と回転方向の「位置の割り出し」が必要になる。すなわち、目的の保管棚に自転車の上下方向の位置を合わせ、かつ目的の保管棚と自転車が一直線になるように自転車の回転方向を合わせる必要がある。
【0005】
上下方向と回転方向の「位置の割り出し」を行うために、特許文献1には、複数段にかつ放射状に配列された複数の保管棚が水平面内で旋回できるようにし、複数の保管棚の外側に自転車を昇降させるエレベータを設けた立体駐輪設備が開示されている。エレベータには自転車を保管棚に受け渡す移載装置が搭載されている。目的の保管棚と移載装置との上下方向及び回転方向の「位置の割り出し」が完了したら、移載装置が目的の保管棚に自転車を受け渡すようになっている。
【0006】
他方、特許文献2には、複数段にかつ放射状に配列された複数の保管棚を保管庫に固定し、保管庫の中央に自転車を昇降させるエレベータを配置した立体駐輪設備が開示されている。エレベータは、中心線の回りを回転可能なマストと、マストに沿って昇降可能な移送台と、を備える。移送台には移載装置が載せられる。移送台を昇降させると共にマストをその中心線の回りに回転させることによって、移載装置の上下方向及び回転方向の「位置の割り出し」が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−123693号公報
【特許文献2】特開平11−324375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の発明にあっては、回転方向の「位置の割り出し」を行うにあたって複数段かつ放射状に配列された複数の保管棚の全体を回転させている。このため、保管棚の全体を回転させる旋回駆動モータの容量が大きくなるという課題がある。
【0009】
特許文献2に記載の発明にあっても、回転方向の「位置の割り出し」を行うにあたって保管庫の中央に位置するマスト、移送台及び移載装置の機械全体が旋回する。このため、特許文献1に記載の立体駐輪設備ほどでないにしても旋回駆動モータの容量が大きいという課題がある。この他にも、旋回するマストを支持できないのでマストの高さには座屈を考慮した制限があったり、移載装置の昇降ケーブルベアが旋回時に振り回されたり、機械を据え付けるピットを深くする必要があったり、機械設置工事が大掛かりになったりするという課題もある。
【0010】
本発明は上記従来の立体駐輪設備の上記課題を解決するもので、機械設備も基礎構造もシンプルにすることができる立体駐輪設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上下方向に複数段の保管棚が配列されると共に、各段に放射状に複数の保管棚が配列される保管庫と、複数段にかつ放射状に配列された複数の保管棚によって囲まれた空間を上下方向に昇降可能な昇降体と、前記保管庫に旋回不能に固定され、前記昇降体が昇降するのを案内するマストと、を備え、前記昇降体には、自転車を保管棚に受け渡す移載装置、及び前記移載装置を水平面内で旋回させる旋回装置が設けられ、前記昇降体が前記移載装置を昇降させることによって前記移載装置と上下方向に配列された前記複数段の保管棚のそれぞれとの位置合わせが可能になり、前記旋回装置が前記移載装置を旋回させることによって前記移載装置と放射状に配列された前記複数の保管棚のそれぞれとの位置合わせが可能になる立体駐輪設備により、上述した課題を解決する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、旋回装置が旋回させるのは移載装置だけなので、旋回駆動モータの容量を小さくできたり、機械を据え付けるピットを浅くできたり、移載装置の昇降ケーブルベアが振り回されるおそれがない、という効果を奏する。また、マストが保管庫に固定されるので、マストにサポートをとることが可能になり、マストの小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における立体駐輪設備の垂直断面図
【図2】図1のII-II線断面図
【図3】図1のIII部拡大図
【図4】従来例の立体駐輪設備の模式図(図中(a)は立体駐輪設備の垂直断面図を示し、図中(b)は水平断面図を示す)
【図5】本発明例の立体駐輪設備の模式図(図中(a)は立体駐輪設備の垂直断面図を示し、図中(b)は水平断面図を示す)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下添付図面に基づいて、本発明の第一の実施形態における立体駐輪設備を説明する。図1は立体駐輪設備の垂直面内の断面図を示し、図2は水平方向の断面図を示す。これらの図において、同一の参照番号が付されているものは、同一の構成である。
【0015】
立体駐輪設備は、自転車を立体的に格納する保管庫1と、地上の一階部分に設けられる受け渡し位置にセットされた自転車を保管庫に収納する搬送装置2と、を備える。保管庫1は円筒形状の収容スペースを有し、上下方向に複数段の保管棚4が設けられると共に、各段には放射状に複数の保管棚4が配列される。
【0016】
搬送装置2は、移載装置5、昇降体6、旋回装置7を備える。移載装置5は、受け渡し位置3にセットされた自転車を入出庫ブース1b内の昇降体6上に引き込むと共に、上昇・旋回した後に自転車を保管棚4に受け渡す。昇降体6は保管庫1の中央(多段にかつ放射状に配列された複数の保管棚4によって囲まれた空間)を昇降する。旋回装置7は昇降体6上に設けられて移載装置5を水平面内で旋回させる。移載装置5及び旋回装置7は昇降体6と一緒に昇降する。
【0017】
昇降体6の昇降動作は垂直方向に伸びるマスト8によって案内される。マスト8の断面は例えば四角形であり、上下方向に同一断面である。マスト8はピット9上に固定されると共に、上下方向に一定間隔をおいてサポート10a〜10cに支持される。サポート10a〜10cは保管庫1の図示しないフレームに固定されている。マスト8の上端部は保管庫1の天井部1−1に固定された天井サポート10dによって支持される。
【0018】
保管庫1は、自転車が収容される円筒状の保管庫本体1aと、保管庫本体1aの下部に設けられて保管庫本体1aを支持する入出庫ブース1bと、を備える。円筒状の保管庫本体1aには、複数段にかつ放射状に複数の保管棚4が配列される。
【0019】
図1に示すように、複数の保管棚4は保管庫1に上下方向に一定のピッチで配列される。図2に示すように、各段には放射状に複数の保管棚4が配列される(図2参照)。複数の保管棚4はいずれも保管庫1の中心Cを向く。マスト8は移載装置5の旋回範囲の外側に、かつ放射状に配列される保管棚4の内周側と外周側との間に配置される。マスト8と保管棚4との干渉を避けるために、マスト8が設けられた部分において放射状に配列される複数の保管棚4の周方向のピッチが他の部分よりも広く設定される。マスト8が設けられていない部分の保管棚4の周方向のピッチは一定に設定される。
【0020】
図1に示すように、入出庫ブース1bは保管庫本体1aよりも小径の円筒形に形成される。入出庫ブース1bは地上部のコンクリート製の基礎上に据え付けられる。入出庫ブース1bには扉14が設けられる。利用者が自転車を入出庫ブース1bの手前の受渡し位置3にセットして、カード操作又はボタン操作を行なうと、入出庫ブース1bの扉14が開くようになっている。
【0021】
図3は昇降体6、旋回装置7、及び移載装置5の詳細図を示す。昇降体6は側面形状がL字に形成され、マスト8に取り付けられたレール15に沿って昇降する。昇降体6にはレール15上を転がる上下一組のローラ16が回転可能に設けられる。昇降体6はワイヤーロープ17の一端に吊り下げられる。図1及び図2に示すように、ワイヤーロープ17の他端は滑車18を介してワイヤーロープ巻取り手段としてのウィンチ19に接続される。ウィンチ19によってワイヤーロープ17を巻き上げると、昇降体6がマスト8に沿って昇降する。なお、昇降体6を昇降させる構造には上記にもさまざまな構造を採用することができる。例えばカウンターウェイトを設けてもよいし、歯付きベルトとプーリによって昇降体6を昇降させてもよい。
【0022】
図3に示すように、昇降体6には移載装置5がベアリング18を介して水平面内で旋回可能に設けられる。移載装置5は、自転車を案内するV字形のガイド部材5aと、自転車の前輪の車軸を左右方向に挟むプレート状の一対のホルダ5bと、一対のホルダ5bをガイド部材5aに沿ってスライドさせる駆動機構5cと、を備える。一対のホルダ5bはホルダ駆動機構5dによって互いの間隔が狭まったり広がったりする。駆動機構5cは、例えばプーリ間に掛け渡された無端状のベルトを周回させることによって、ベルトに連結された一対のホルダ5b及びホルダ駆動機構5dをガイド部材5aに沿ってスライドさせる。
【0023】
移載装置5を水平面内で旋回させる旋回装置7は、平歯車、ウォーム歯車等の歯車と、歯車を回転駆動させるサーボモータと、を含む。サーボモータを駆動させると、サーボモータの出力が歯車を介して移載装置5に伝わり、移載装置5が水平面内を旋回する。図2に示すように、旋回装置7による移載装置5の旋回範囲は放射状に配列された複数の保管棚4の内側である。移載装置5の旋回中心Cは保管庫1の中心Cと一致する。放射状に配列された複数の保管棚4はいずれも旋回中心Cを向く。
【0024】
立体駐輪設備の全体の動作の概略は以下のとおりである。利用者が入出庫ブース1b手前の受け渡し位置3に自転車をセットし、駐輪開始のボタンを押すと(又はカードを挿入すると)、入出庫ブース1bの扉14が開き、扉14の中から移載装置5が出てきて自転車を入出庫ブース1b内に引き込む。その後、昇降体6が目的の保管棚4まで自転車を上昇させる。それと同時に、旋回装置7が放射状に配置された目的の保管棚4と移載装置5とが一直線になるように移載装置5を旋回させる。昇降体6による自転車の昇降と旋回装置7による自転車の旋回は同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。移載装置5と目的の保管棚4との位置合わせが終了したら、移載装置5が自転車の後輪側を前方にして自転車を保管棚4に渡す。移載装置5が自転車を保管棚4の奥まで押し込むと、保管棚4のクランプ部としての板ばねが自転車の後輪を自立した状態に保持する。
【0025】
自転車を出庫する場合には、上記入庫動作と逆の動作が行われる。利用者がボタンを押すと(カードを挿入すると)、昇降体6が目的の保管棚4まで移載装置5を昇降させ、旋回装置7が目的の保管棚4と一直線になるように移載装置5を旋回させる。移載装置5と目的の保管棚4との位置合わせができたら、移載装置5が保管棚4に向かって移動し、保管棚4上の自転車を昇降体6上に引き込む。次に、昇降体6が自転車を入出庫ブース1bまで降下させる。自転車が入出庫ブース1bまで降下したら、入出庫ブース1bの扉14が開き、移載装置5が受渡し位置3に自転車を出庫する。最後に入出庫ブース1bの扉が閉まり、出庫動作が完了する。昇降体6を昇降させるウィンチ19、旋回装置7、移載装置5は、図示しない監視室等に設けられる制御装置によって制御される。
【0026】
図4及び図5は、マスト21を回転させる従来例と、マスト8を固定し、昇降体6に旋回装置7を設けた本発明例とでマスト21,8の大きさ、ピットの深さを比較したものである。図4は従来例を示し、図5は本発明例を示す。図4(a)に示すように、従来例はマスト21ごと旋回する構造であり、マスト21の下部に旋回装置22を配置していた。このため、機械装置が大掛かりである、ピット23の深さが深い、マスト21の高さ制限がある(マスト21の高さを高くすると不安定になるのでマスト21の高さに制限がある)、座屈を考慮したマスト21断面にする必要があり、二本のマスト21が必要になる等の課題があった。
【0027】
図5(a)の本発明例に示すように、マスト8を保管庫1に固定することで、数か所でサポート10a〜10cをとることが可能になる。マスト8の座屈を考慮する際に用いられる細長比を一定にすることができるので、高さが高くなっても同一断面とすることができる。また、旋回するのが移載装置5(図5には図示しないが昇降体6上に設けられている)だけなので、ピット9が浅くて済む、移載装置5の昇降ケーブルベアも回転しないので振り回される心配がない。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限られることなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変更が可能である。例えば、地上部に受け渡し位置を設け、保管庫を地下に設け、昇降体が地上部と地下の保管棚との間で自転車を昇降させるようにしてもよい。
【0029】
上記実施形態では、保管棚、昇降体、旋回装置、移載装置の構造の一例を説明したが、これらの機械の構造は必要な機能を具備するものであれば上記実施形態に限られることはなく、様々に変更可能である。
【実施例1】
【0030】
図1及び図2に示す立体駐輪設備を製作した。マストを2本から1本に低減でき、ピット深さは1300mmから600mmに浅くすることができた。図2に示すように、保管棚の二列分のスペースがマストを使用するためのスペースに使われたが、保管庫の直径を6.7mから7.0mに増加させることで水平面内の自転車収納台数は18台を維持することができた。
【符号の説明】
【0031】
1…保管庫
4…保管棚
5…移載装置
7…旋回装置
6…昇降体
8…マスト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に複数段の保管棚が配列されると共に、各段に放射状に複数の保管棚が配列される保管庫と、
複数段にかつ放射状に配列された複数の保管棚によって囲まれた空間を上下方向に昇降可能な昇降体と、
前記保管庫に旋回不能に固定され、前記昇降体が昇降するのを案内するマストと、を備え、
前記昇降体には、自転車を保管棚に受け渡す移載装置、及び前記移載装置を水平面内で旋回させる旋回装置が設けられ、
前記昇降体が前記移載装置を昇降させることによって前記移載装置と上下方向に配列された前記複数段の保管棚のそれぞれとの位置合わせが可能になり、前記旋回装置が前記移載装置を旋回させることによって前記移載装置と放射状に配列された前記複数の保管棚のそれぞれとの位置合わせが可能になる立体駐輪設備。
【請求項2】
前記マストは、前記旋回装置による自転車の旋回範囲から外れた位置に配置され、
前記マストと前記保管棚との干渉を避けられるように、前記マストが設けられた部分において放射状に配列される前記複数の保管棚の周方向のピッチが他の部分よりも広く設定されることを特徴とする請求項1に記載の立体駐輪設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−53472(P2013−53472A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193015(P2011−193015)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)