説明

立坑構造

【課題】トンネル内に設けられた立坑の換気機能を損なうことなく、耐久性および耐候性を備え、かつ立坑において発生する低周波数領域の圧力変動により立抗出口において発生する微気圧波を低減させることができる立坑構造を提供することである。
【解決手段】立坑構造においては、トンネルと外部とを連通させる立坑の壁面の少なくとも一部に多孔板構造が形成されている。多孔板構造は、立坑の長手方向と交差する立坑の断面の少なくとも一部に形成された空気室と、立坑に対して並行に配設され、空気室を複数の空間に分離する1または複数枚の多孔板と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に地山を残して下を掘ったトンネルまたはシェルター形状のトンネル構造物(明かりフード)などのトンネルにおいて車両等が高速で通過する際に、トンネル本坑およびトンネル本坑から分岐した枝坑を伝搬して外部に放出される際に発生する微気圧波を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルを高速車両が通過した場合に圧力変動が発生し大きな破裂音が生じることが知られている。この大きな破裂音を伴う騒音問題が、該トンネルの近隣において大きな問題となっている。
【0003】
特許文献1には、フード部の長さを延長することなく、また異なる先頭部形状を有する列車を運行する場合にも、最適に微気圧波を低減できるトンネル緩衝工について開示されている。特許文献1記載のトンネル緩衝工においては、トンネル入口にフード部を設置し、フード部から外方に突出しフード部内に連通する管部を設ける。それにより、フード部で生じた圧縮波が管部により分岐、反射、干渉するため、圧縮波の圧力勾配を緩やかにすることができ、トンネルに突入する列車の速度を上げる場合にも、フード部の長さを延長しないでトンネル入口に達する圧縮波の圧力勾配を低減させてトンネル出口で生じる微気圧波を低減することができる。
【0004】
また、特許文献2には、高速車両が外部から緩衝工、緩衝工からトンネル入口へ突入する際、また、トンネルから緩衝工、緩衝工から外部へ退出する際に、外部へ直接放射される低周波音を低減する緩衝工について開示されている。
【0005】
特許文献2記載の緩衝工では、緩衝工の外部側車両入出端の覆体の壁に切欠き部もしくは外部側車両入出端に向かって断面積が逓増する開端部を設ける。また、トンネル側車両入出端に絞り部を設ける。それにより、外部へ直接放射される低周波音を低減できる。
【0006】
さらに、特許文献3には、複数の遮蔽板を備えた管状体において、管状体内を伝播する音波を効果的に減衰する、特に、高速の移動体が管状体内に突入することによって出口で発生する微気圧波を効果的に低減する管状体構造について開示されている。
【0007】
特許文献3記載の管状体構造においては、管状体の内部に、この管状体の軸方向に延在する通路部を備え、管状体内で通路部を避けた領域に、音波を遮蔽する複数の遮蔽板を、それぞれ管状体の軸方向と略直交するように管状体の軸方向に所定間隔で設けて、これらの遮蔽板の音波の進行方向に向かい合う表面に吸音材を設ける。さらに、遮蔽板の表面とその反対側の裏面の両方に吸音材を設ける。これにより、遮蔽板の表面または両面に入射する音波のエネルギーを吸収し、音波を減衰させることができ、管状体内を伝播する音波を効果的に減衰させることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−155129号公報
【特許文献2】特開2000−80890号公報
【特許文献3】特開2006−16771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、トンネルには、トンネル本坑のみならず、トンネル本坑内の換気、または避難路の確保のため、トンネル本坑および該トンネル本坑から分岐して斜坑または立坑が建設される(以下、まとめて立坑と呼ぶ)。この立坑では、トンネル内部を高速車両が通過することにより、立坑内において低周波数の圧力変動が生じ、立坑出口において微気圧波が発生し、立坑出口近辺において低周波数の騒音が問題となる。
【0010】
特許文献1および特許文献2記載の緩衝工においては、列車がトンネル本坑に突入する際に発生する圧力変動に対して十分な効果を発揮するが、列車が立坑とトンネルとの分岐部を通過する際に発生する圧力変動には、効果がみられない。
【0011】
また、特許文献3記載の管状体構造は、立坑の長手方向を遮蔽する構造により形成されるため、立坑本来の機能である換気性能を低下させる構造となり、使用することができない。
【0012】
本発明の目的は、トンネル内に設けられた立坑の換気機能を損なうことなく、耐久性および耐候性を備え、かつ立坑において発生する低周波数領域の圧力変動により立抗出口において発生する微気圧波を低減させることができる立坑構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)
本発明に係る立坑構造は、トンネルと外部とを連通させる1または複数の立坑における立坑構造であって、トンネルを鉄道車両が通過する場合に発生する圧力変動を低減させるために、立坑の壁面の少なくとも一部に多孔板構造が形成されたものである。
【0014】
本発明に係る立坑構造においては、トンネルと外部とを連通させる立坑の壁面の少なくとも一部に多孔板構造が形成されている。
【0015】
この場合、トンネル内において生じた圧力変動を多孔板構造により吸音することができる。また、トンネル内において通気口、換気口、非常通路等が必要であるため、トンネル内において立坑が1または複数必ず形成されている。したがって、1または複数の立坑に設けられた多孔板構造によりトンネル内において生じた圧力変動を効率よく吸音することができる。
【0016】
(2)
多孔板構造は、立坑の長手方向と交差する立坑の断面の少なくとも一部に形成された空気室と、立坑に対して並行に配設され、空気室を複数の空間に分離する1または複数枚の多孔板と、を含むものである。
【0017】
この場合、多孔板構造は、1または複数の多孔板および空気室からなるので、圧力変動が多孔板の各孔を通過する際に、粘性減衰作用が発生し、空気振動が熱エネルギへと変換され、空気の振動に減衰性が生じ、有効に圧力変動を低減することができる。また、耐候性を有する部材からなるので、本発明に係る多孔板の耐候性を高く維持することができ、長期にわたって多孔板の構造が変化しない。そのため、長期間使用しても、圧力変動の吸音性能が劣化しない。また、立坑の換気通路を遮蔽しない構造であるため、立坑本来の機能である換気性能を低下させることもない。さらに多孔板に形成される孔形状は、小孔、円形の孔、スリット形状、ルーバーフィン形状、異形の孔、エンボス加工により形成される十字孔、パンチング加工からなる孔等のいずれか1種または複数種からなってもよい。
【0018】
(3)
多孔板構造は、1または複数枚の多孔板と垂直方向に1または複数の仕切り板がさらに配設され、低減対象とされる圧力変動の波長の1/2以下の間隔で1または複数の仕切り板により複数の空間が分離されたものである。
【0019】
この場合、多孔板構造には、対象とされる圧力変動の波長の1/2以下に設定される仕切り板が形成されるので、多孔板を通過してから空気室において圧力変動の干渉を防止することができる。その結果、多孔板構造は、有効に圧力変動を低減することができる。
【0020】
(4)
立坑の断面は、矩形状で形成され、空気室は、矩形状よりも大きい矩形状からなる断面を有してもよい。
【0021】
この場合、空気室は、立坑の矩形状の断面の周囲に設けられるので、立坑を通過する圧力変動と接触する多孔板および空気室の面積を増加することができる。その結果、対象とされる圧力変動を効率よく吸収することができる。
【0022】
(5)
多孔板は、20Hz以下の周波数帯域において高い吸音率を有するように、開口率が1%以上10%以下の範囲であり、開口径が3mm以上120mm以下であり、多孔板の板厚が3mm以上120mm以下であってもよい。
【0023】
この場合、多孔板は、20Hz以下の周波数帯域において高い吸音率を有するので、トンネル内に発生する20Hz以下の周波数からなる圧力変動を有効に低減することができる。その結果、立坑出口の近辺における微気圧波を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る一実施の形態について説明する。本実施の形態においては、トンネル本坑と分岐して形成された立坑に立坑構造の一例である立坑圧力変動低減装置を適用した場合について説明を行なう。
(第一実施の形態)
【0025】
図1は、本実施の形態に係る立坑圧力変動低減装置の一例を示す模式図である。
【0026】
図1に示すように、トンネル900は地中に延在して建設される。このトンネル900には、垂直方向に延在して立坑200が配設される。この立坑200は、通気口、換気口、非常用通路(避難路)等に使われる。なお、本実施の形態においては、立坑200の断面は矩形状からなるものとする。また、立坑200は直方体の空間からなるものとする。ただし、本実施の形態に限定されず、立坑200は、断面が円形、他の矩形状、多角形、異形、十字形からなるものとしてもよい。なお、一律の断面形状に限定されず、任意に断面形状が変化するものであってもよい。
【0027】
図1に示すように、立坑200の一部に、立坑200よりも大きな直方体の空間を有する立坑圧力変動低減装置100が建設される。
【0028】
また、立坑圧力変動低減装置100には、多孔板310および多孔板320が立坑200を周回するように形成される。これらの多孔板310および多孔板320は、立坑200内の空間を流れる気体(換気される気体)の流れを阻害しないように形成される。すなわち、立坑圧力変動低減装置100の内部であって、かつ立坑200の内部以外の部分に配設される。
【0029】
本実施の形態においては、多孔板310は、立坑200の断面の周囲に沿って形成されており、多孔板320は、立坑圧力変動低減装置100の内側で、かつ多孔板310の外側に形成される。すなわち、多孔板310は、四角筒形状からなり、多孔板320は、多孔板310よりも大きい断面を有する四角筒形状からなる。
【0030】
この多孔板310には、四角筒形状の外部と内部とを貫通する多数の孔形状が形成されている。この多孔板310の各孔は、小穴、円形孔、異形孔、スリット形状の孔、ルーバーフィン形状を有する孔、十字孔、その他任意の孔形状の少なくとも1種の孔形状からなることが好ましい。
【0031】
以下、本実施の形態においては、多孔が円形孔であることとして説明する。この多孔板310は、開口率が1%以上10%以下の範囲であり、開口径が3mm以上120mm以下であり、多孔板の板厚が3mm以上120mm以下であることが好ましい。本実施の形態において多孔板310は、板厚が6mmであり、開口率が4.5%であり、孔径が20mmである。
【0032】
同様に、多孔板320には、四角筒形状の外部と内部とを貫通する多数の孔形状が形成されている。この多孔板320の各孔は、小穴、円形孔、異形孔、スリット形状の孔、ルーバーフィン形状を有する孔、十字孔、その他任意の孔形状の少なくとも1種の孔形状からなることが好ましい。
【0033】
以下、本実施の形態においては、多孔が円形孔であることとして説明する。この多孔板320は、開口率が1%以上10%以下の範囲であり、開口径が3mm以上120mm以下であり、多孔板の板厚が3mm以上120mm以下であることが好ましい。本実施の形態において多孔板320は、板厚が6mmであり、開口率が4.5%であり、孔径が20mmである。
【0034】
また、多孔板310および多孔板320は、リサイクル面および防錆の観点から、アルミニウム板部材またはステンレス部材からなることが好ましい。さらに多孔板310および多孔板320の各孔形状は、パンチング加工により形成されてもよく、またはエンボス加工により形成されてもよい。
【0035】
さらに、立坑圧力変動低減装置100には、多孔板310および多孔板320に垂直な方向に複数の仕切り板330が形成されている。この複数の仕切り板330は、中央部に立坑200の断面と同じ面積の開口が形成され、立坑200内の空間を流れる気体を阻害しないように形成される。
【0036】
また、これらの仕切り板330は、対象とする圧力変動の波長の1/2以下の間隔で設けられる。これにより多孔板310、多孔板320の各孔を通過した位置で平面波となり、吸音性能を高めることができる。
【0037】
次に、図2は、図1の立坑圧力変動低減装置100の他の例を示す模式的断面図である。図2(a)は、図1の立坑圧力変動低減装置100の他の例を示し、図2(b)は図1の立坑圧力変動低減装置100のさらに他の例を示す。
【0038】
図2(a)に示すように、立坑圧力変動低減装置100aにおいては、立坑200に対して、立坑圧力変動低減装置100aが立坑200の一方向に対してのみ形成された場合を示す模式的断面図である。
【0039】
この場合、多孔板310aおよび多孔板320aは、平板状からなる。多孔板310aおよび多孔板320aは所定の間隔L1で配設される。また、多孔板320aおよび空気室の内壁110とは所定の間隔L2で配設される。それにより、2つの空気層が形成される。
【0040】
また、図2(b)に示すように、立坑圧力変動低減装置100bにおいては、立坑200に対して、立坑圧力変動低減装置100bが立坑200の断面の2方向に対してのみ形成された場合を示す模式的断面図である。
【0041】
この場合、多孔板310bおよび多孔板320bは、複数の多孔板を用いて立孔200の2面に並行に配置される。並行に設置された多孔板310bと多孔板320bとは、所定の間隔L1およびL3で配置され、また多孔板320bと空気室の内壁110とは、所定の間隔L2およびL4で配置される。なお、間隔L1と間隔L3とは同じ値または近似する値であってもよく、間隔L2と間隔L4とは同じ値または近似する値であってもよい。それにより、複数の空気層が形成される。
【0042】
(実施例)
次に、図1および図2に示した立坑圧力変動低減装置100の効果を確認するため、以下の実施例を行った。
(実施例1)
図3は、実施例1において使用した立坑圧力変動低減装置100の一部を示す模式的拡大図である。
【0043】
図3に示すように、多孔板310、多孔板320および空気室の内壁110を平行に配置させ、多孔板310から低周波数の圧力変動を示す音を与えた。なお、実施例1においては、図3に示す立坑圧力変動低減装置100の一部を図1に示した立坑圧力変動低減装置100に適用して実験を行った。
【0044】
(比較例1)
比較例1は、立坑圧力変動低減装置100を形成せず、立坑200のみを形成して実験を行った。
【0045】
図4は、図3に示した実施例1における立坑圧力変動低減装置100の吸音率を示す図である。図4の縦軸は吸音率を示し、横軸は周波数を設計周波数(設計時に想定した対象周波数)で除算した値を示す。
【0046】
図4に示すように、対象周波数を吸音周波数で除算した値が周波数1/2から周波数2までにおいてほぼ吸音率0.5%以上となることから、実施例1における立坑圧力変動低減装置100は、広い周波数帯域において圧力変動の吸音効果を備えていることがわかった。
【0047】
次に、図3の立坑圧力変動低減装置100を用いて立坑200における圧力変動の低減効果を確認した。
【0048】
図5は、立坑200出口近辺の立坑200内圧力の変化を示す図である。図5の縦軸は圧力変化を示し、横軸は時間を示す。
【0049】
図5の太線Aは、実施例1の立坑圧力変動低減装置100を用いた場合の圧力変動を示し、細線Bは、比較例1の立坑圧力変動低減装置100を用いない場合の圧力変動を示す。
【0050】
このように、図5の細線B(比較例1)においては、時間T1,T2,T3で、大きな圧力変動が生じているが、図5の太線Aにおいては、時間T1,T2,T3で、当該圧力変動が生じていないことがわかる。すなわち、立坑圧力変動低減装置100を用いることにより低周波数領域の圧力変動を低減できることがわかった。その結果、圧力変動により生じる立坑200出口における微気圧波を低減することができることがわかった。
【0051】
続いて、図6は、立坑200から放射された微気圧波を周波数分析した結果を示す図である。図6の縦軸は音圧レベルを示し、横軸は周波数を設計周波数(設計時に想定した対象周波数)で除算した値を示す。また、図6の太線Aは、実施例1の立坑圧力変動低減装置100を用いた場合の圧力変動を示し、細線Bは、比較例1の立坑圧力変動低減装置100を用いない場合の圧力変動を示した。
【0052】
このように、図6の細線B(比較例1)においては、周波数1/4から周波数1/2の範囲、および周波数1において山形状がみられる。一方、図6の太線A(実施例1)においては、周波数1/4から周波数1/2の範囲、周波数1において山形状が消えており、微気圧波が低減されていることがわかる。
【0053】
(実施例2)
続いて、実施例2においては、図3の立坑圧力変動低減装置100の一部を図2(b)で示した立坑圧力変動低減装置100bに適用した場合について行った。
【0054】
図7は、立坑200出口近辺の立坑200内圧力の変化を示す図である。図7の縦軸は圧力変化を示し、横軸は時間を示す。
【0055】
図7の太線Aは、実施例1の立坑圧力変動低減装置100を用いた場合の圧力変動を示し、点線A1は、実施例2の立坑圧力変動低減装置100bを用いた場合の圧力変動を示し、細線Bは、比較例1の立坑圧力変動低減装置100を用いない場合の圧力変動を示す。
【0056】
このように、図7の細線B(比較例1)においては、時間T1,T2,T3で大きな圧力変動が生じているが、図5で示したように、図7の太線Aにおいては、当該圧力変動が生じていないことがわかる。また、図7の点線A1においても、当該圧力変動をほぼ低減できていることがわかる。すなわち、立坑圧力変動低減装置100を用いることがより好ましいが、立坑圧力変動低減装置100bを用いることにより低周波数領域の圧力変動を低減できることがわかった。その結果、圧力変動により生じる立坑200出口における微気圧波を低減することができる。
【0057】
続いて、図8は、立坑200から放射された微気圧波を周波数分析した結果を示す図である。図8の縦軸は音圧レベルを示し、横軸は周波数を設計周波数(設計時に想定した対象周波数)で除算した値を示す。また、図8の太線Aは、実施例1の立坑圧力変動低減装置100を用いた場合の微気圧波を示し、点線A1は、実施例2の立坑圧力変動低減装置100bを用いた場合の微気圧波を示し、細線Bは、比較例1の立坑圧力変動低減装置100を用いない場合の微気圧波を示した。
【0058】
このように、図8の細線B(比較例1)においては、周波数1/4から周波数1/2の範囲、および周波数1において山形状がみられる。一方、図8の太線A(実施例1)においては、図6と同様に、周波数1/4から周波数1/2の範囲、周波数1において山形状が消えており、微気圧波が低減されていることがわかる。また、点線A1(実施例2)においては、太線A(実施例1)にまでは至らないものの周波数1/4から周波数1/2の範囲、周波数1において山形状が消えており、微気圧波が低減されていることがわかる。
【0059】
以上のように、本実施の形態においては、トンネル900内において生じた圧力変動を立坑圧力変動低減装置100,100a,100bにより吸音することができる。また、立坑圧力変動低減装置100,100a,100bは、1または複数の多孔板310,320,310a,320a,310b,320bおよび空気室からなるので、圧力変動が多孔板310,320,310a,320a,310b,320bの各孔を通過する際に、粘性減衰作用が発生し、空気振動が熱エネルギへと変換され、空気の振動に減衰が生じ、有効に圧力変動を低減することができる。
【0060】
また、多孔板310,320,310a,320a,310b,320bが、耐候性を有する部材からなるので、本発明に係る立坑圧力変動低減装置100,100a,100bの耐候性を高く維持することができ、長期にわたって立坑圧力変動低減装置100,100a,100bの構造が変化しない。そのため、長期間使用しても、圧力変動の吸音性能が劣化しない。また、立坑200の換気通路を遮蔽しない構造であるため、立坑200本来の機能である換気性能を低下させることもない。
【0061】
さらに、立坑圧力変動低減装置100,100a,100bには、波長の1/2以下に設定される仕切り板330が形成されるので、多孔板310,320,310a,320a,310b,320bを通過してから空気室において圧力変動の干渉を防止することができる。その結果、立坑圧力変動低減装置100,100a,100bは、有効に圧力変動を低減することができる。
【0062】
また、空気室は、立坑200の矩形状の断面の周囲に設けられるので、立坑200を通過する圧力変動と接触する多孔板310,320,310a,320a,310b,320bおよび空気室の面積を増加することができる。その結果、効率よく音吸収を行なうことができる。
【0063】
本発明は、上記の好ましい一実施の形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態に係る立坑圧力変動低減装置の一例を示す模式図
【図2】図1の立坑圧力変動低減装置の他の例を示す模式的断面図
【図3】実施例1において使用した立坑圧力変動低減装置の一部を示す模式的拡大図
【図4】図3に示した実施例1における立坑圧力変動低減装置の吸音率を示す図
【図5】立坑出口近辺の立坑内圧力の変化を示す図
【図6】立坑から放射された微気圧波を周波数分析した結果を示す図
【図7】立坑出口近辺の立坑内圧力の変化を示す図
【図8】立坑から放射された微気圧波を周波数分析した結果を示す図
【符号の説明】
【0065】
L1,L2,L3,L4 間隔
100,100a,100b 立坑圧力変動低減装置
110 空気室内壁
200 立坑
310,320,310a,320a,310b,320b 多孔板
330 複数の仕切り板
900 トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルと外部とを連通させる1または複数の立坑における立坑構造であって、
前記トンネルを鉄道車両が通過する場合に発生する圧力変動を低減させるために、前記立坑の壁面の少なくとも一部に多孔板構造が形成されたことを特徴とする立坑構造。
【請求項2】
前記多孔板構造は、
前記立坑の長手方向と交差する前記立坑の断面の少なくとも一部に形成された空気室と、
前記立坑に対して並行に配設され、前記空気室を複数の空間に分離する1または複数枚の多孔板と、を含むことを特徴とする請求項1記載の立坑構造。
【請求項3】
前記多孔板構造は、
前記1または複数枚の多孔板と垂直方向に1または複数の仕切り板がさらに配設され、
前記低減対象とされる圧力変動の波長の1/2以下の間隔で前記1または複数の仕切り板により前記複数の空間が分離されたことを特徴とする請求項2記載の立坑構造。
【請求項4】
前記立坑の断面は、矩形状で形成され、
前記空気室は、前記矩形状よりも大きい矩形状からなる断面を有することを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の立坑構造。
【請求項5】
前記多孔板は、
20Hz以下の周波数帯域において高い吸音率を有するように、開口率が1%以上10%以下の範囲であり、開口径が3mm以上120mm以下であり、多孔板の板厚が3mm以上120mm以下であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の立坑構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−215019(P2008−215019A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56799(P2007−56799)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)