竪型鍵盤楽器用転倒防止装置およびそれを用いた竪型鍵盤楽器の設置構造
【課題】アップライトピアノの底面と背面が為す角度の誤差に関らず安定して所期の状態に組み付けることが出来て、有効な転倒防止効果を発揮し得る鍵盤楽器用の転倒防止装置を提供すること。
【解決手段】底板部12を有しており、底板部12に竪型鍵盤楽器18が載置されるようになっていると共に、底板部12から上方に突出する第一竪板部14が設けられており、第一竪板部14が底板部12に載置される竪型鍵盤楽器18の後面に固定されるようになっている一方、第一竪板部14の下端部には、第一竪板部14に固定される竪型鍵盤楽器18の後面よりも後方に突出するように曲げられた取付角度対応機能部22が設けられている。
【解決手段】底板部12を有しており、底板部12に竪型鍵盤楽器18が載置されるようになっていると共に、底板部12から上方に突出する第一竪板部14が設けられており、第一竪板部14が底板部12に載置される竪型鍵盤楽器18の後面に固定されるようになっている一方、第一竪板部14の下端部には、第一竪板部14に固定される竪型鍵盤楽器18の後面よりも後方に突出するように曲げられた取付角度対応機能部22が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ピアノやオルガン等の鍵盤楽器の転倒を防止するための装置に係り、特に、アップライトピアノ等の竪型鍵盤楽器に好適に採用される転倒防止装置とそれを用いた竪型鍵盤楽器の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鍵盤楽器の一種として、アップライトピアノ等の竪型鍵盤楽器が知られている。また、一般的に、竪型鍵盤楽器は、グランドピアノ等の平型鍵盤楽器に比して安定性が低く、地震の発生時等において転倒を生じ易いことが問題となっている。蓋し、竪型鍵盤楽器では、重量が大きい打弦機構などの発音機構が後方の箱状部分内における高い位置に収容配置されており、重心位置が高いことから転倒が生じ易い。更に、重心が後方に偏倚せしめられていることに加えて、脚部の接地点間距離が前後方向で小さいことから、前後方向で転倒し易い。特に、奏者側であると共に、一般家庭で居室に設置される際に居住空間である前方へのピアノの倒れ込みは、その危険性から有効な対策が求められている。
【0003】
そこで、従来から、アップライトピアノの転倒を防止するための装置が提案されている。
具体的には、例えば、以下(1),(2)のタイプが提案されている。
(1)特許文献1(特開平9−152092号公報)に示されているように、ピアノの背面を、ピアノの背面側に位置する家屋の柱や壁面に対して直接固定するタイプ。
(2)特許文献2(実用新案登録3024229号公報)に示されているように、ピアノの背面に支持脚を付加的に取り付けるタイプ。
【0004】
ところが、これら従来構造の転倒防止装置には、未だ解決すべき問題点があった。即ち、特許文献1に示されている転倒防止装置では、家屋に対して転倒防止装置をねじ止め等することから、家屋の内装に対する悪影響を避けることが難しく、柱や壁面等の構造や材料等の条件およびピアノの設置位置等によっては使用することが困難な場合が多い。しかも、柱や根太等の位置を捜してねじ固定する作業自体が非常に面倒で難しく、施工状態によっては目的とする効果を安定して得難いという問題があった。加えて、ピアノを廃棄したり移動させたりすると、家屋の壁面にねじ穴等の取付跡が残ってしまうという問題もある。
【0005】
また、特許文献2に示された転倒防止装置では、ピアノの背面に支持脚を固設することによりピアノの後方への転倒防止を図ることが可能であるが、危険性の高い前方への転倒については何等の配慮も為されておらず、安全性の充分な確保には未だ至っていない。しかも、特許文献2に記載の転倒防止装置においては、ピアノの背面から後方に大きく突出するように支持脚が装着されることから、一般家庭の居室等での使用にはスペース上の理由から適さないことに加えて、楽器としてのみならず装飾的な意味合いをも有するピアノの外観を著しく損ねる結果となり、ユーザーが満足できるものでなかったのである。
【0006】
なお、特許文献3(特開平8−241071号公報)には、相互に略直交するように配された底板と側板を有する座椅子形状のピアノ設置板が提案されている。このピアノ設置板では、側板をアップライトピアノの背面(後面)に重ね合わせてねじ止め固定することにより、アップライトピアノの転倒を防止するようになっている。
【0007】
しかしながら、かかる特許文献3に記載のピアノ設置板では、ピアノ底面全体をカバーする大きな底板の長辺に側板が垂直に固着されてなる極めて大型で大重量の部品であるから、取扱いが面倒で見栄えが悪い。しかも、高い剛性を有する底板と側板が互いに直交するように固定されており、側板の底板に対する角度調整が許容され得ないことから、側板をアップライトピアノの背面に対して密着させて固定することが出来ないという問題がある。
【0008】
蓋し、アップライトピアノは、その重心位置や重量配分等の関係を考慮した設計上の理由から、或いはピアノ本体を構成する木材の個体差や湿度や温度等の周辺環境による影響などの理由から、ピアノの設置面と背面が必ずしも直角を為していないという特徴がある。それ故、特許文献3に記載の如き、底板と側板を直角に固定した従来構造のピアノ設置板では、側板をピアノの背面に密着させることが、現実的に不可能となるのである。
【0009】
このように、特許文献3に記載の如きピアノ設置板では、その装着状態下、側板とピアノの背面の間における隙間の存在が避けられないことから、ピアノに対する固着力ひいては安定性が充分に安定して発揮され難いという問題があると共に、側板とピアノ背面の間の隙間によって、設置されたピアノ本来の美しい外観を大きく損ねるという問題もあったのである。
【0010】
【特許文献1】特開平9−152092号公報
【特許文献2】実用新案登録3024229号公報
【特許文献3】特開平8−241071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、竪型鍵盤楽器の底面と背面が為す角度の誤差等といった竪型鍵盤楽器の個体差に関らず、安定して所期の状態に組み付けることが出来て、有効な転倒防止効果を発揮し得る、美観にも優れた鍵盤楽器用の転倒防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
すなわち、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置が特徴とするところは、底板部を有しており、該底板部に竪型鍵盤楽器が載置されるようになっていると共に、該底板部から上方に突出する第一竪板部が設けられて、該第一竪板部が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器の後面に固定されるようになっており、更に、該第一竪板部の下端部には、該第一竪板部に固定される竪型鍵盤楽器の後面よりも後方に突出するように曲げられた取付角度対応機能部が設けられていることにある。
【0014】
このような本発明に従う構造とされた竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、相互に接続された底板部と第一竪板部を有しており、底板部上にアップライトピアノ等の竪型鍵盤楽器を載置すると共に、竪型鍵盤楽器の後面に対して第一竪板部をボルト等で固定することにより、転倒防止対象物である竪型鍵盤楽器に対して装着され得る。これにより、竪型鍵盤楽器の接地面積を有利に確保して、前後方向での安定性を向上せしめて転倒を有利に防ぐことが出来る。それ故、危険性の高い前方への転倒を含むピアノ等の転倒を効果的に防止することが可能となるのである。
【0015】
特に、第一竪板部の基端部(底板部側の端部)が、第一竪板部に固定される竪型鍵盤楽器の後面よりも後方側に突出するように湾曲乃至は屈曲せしめられた取付角度対応機能部とされている。これによって、高い剛性を有する第一竪板部が、取付角度対応機能部において、第一竪板部の底板部に対する前後方向での傾斜角度が、装着対象となる竪型鍵盤楽器における底面(設置面)と背面との傾斜角度に対応し得る。
【0016】
これにより、形状とくに底面(接地面)と背面との傾斜角度に関して比較的に大きな個体差を有する竪型鍵盤楽器においても、その接地点を底板部上に当接させた状態で竪型鍵盤楽器の背面に対して第一竪板部を密着させて固定することが出来る。従って、転倒防止装置の竪型鍵盤楽器への取付強度を充分に確保できて、転倒防止効果を有効に発揮せしめることが可能となると共に、第一竪板部の基端部を除く部分が竪型鍵盤楽器の背面に密着せしめられることによって、特に側面視での外観を整えることが出来て、室内装飾品としての一面を有するアップライトピアノの外観を損ねることなく、実用的な転倒の防止手段を実現することが出来る。
【0017】
さらに、竪型鍵盤楽器の背面は、家屋の壁面と対向せしめられている場合が多く、特にアップライトピアノでは、背面から音が発せられることから、発音部位であるピアノ背面と家屋の壁面との間に隙間が設けられている必要がある。そこにおいて、本発明に係る転倒防止装置は、アップライトピアノの背面に第一竪板部を固着することによって装着されるようになっており、後方に突出する取付角度対応機能部が、アップライトピアノの後面と家屋の壁面との間に形成される隙間を巧く利用して配設されるようになっている。従って、転倒防止装置をスペース効率良く装着することが出来て、家屋の室内空間を有利に確保することが出来る。
【0018】
なお、ここでいう上方とは、平板形状とされた底板部を水平面上に載置した状態下における鉛直上方を示しており、底板部の厚さ方向一方の側を言う。
【0019】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記底板部と前記第一竪板部が単一の金属板によって一体形成されている構造が、好適に採用される。
【0020】
このような本態様に従う構造とされた竪型鍵盤楽器用転倒防止装置によれば、単一の金属板を用いて底板部と第一竪板部を一体形成することにより、底板部と第一竪板部の境界部分において強度が他の部分に比して低くなるのをより有利に回避することが出来る。それ故、転倒防止装置において優れた耐荷重性を実現することが出来て、アップライトピアノ等の大きな質量を有する竪型鍵盤楽器に対しても、充分なる信頼性をもって転倒防止効果を発揮し得る。
【0021】
また、単一の金属板を用いて底板部と第一竪板部を一体形成することから、例えば、プレス加工等によって容易に本発明に係る転倒防止装置を形成することが可能となる。それ故、生産性の向上等を有利に実現することが出来る。
【0022】
また、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記底板部の前端が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器における接地部の前端よりも前方に突出するようになっている構造が、好適に採用される。
【0023】
このような構造を採用することにより、竪型鍵盤楽器に対して前方への転倒の原因となるモーメントが及ぼされた場合には、底板部において竪型鍵盤楽器の脚部(キャスタ等の接地部)の前端よりも前方に突出せしめられた部分によって、モーメントに対する抗力を有利に得ることが出来て、竪型鍵盤楽器の転倒を有利に防ぐことが可能となる。
【0024】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記底板部の後端が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器における接地部の後端よりも後方に突出するようになっている構造が、好適に採用される。
【0025】
これによれば、底板部の後端が竪型鍵盤楽器の後端よりも後方に突出せしめられていることにより、竪型鍵盤楽器に対して後方への転倒の原因となるモーメントが生じた場合に、底板部における後方への突出部分によって、モーメントに対する抗力を有利に得ることが出来て、竪型鍵盤楽器の転倒を防止することが出来る。
【0026】
更にまた、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第一竪板部が前記底板部の後端から上方に突出せしめられていることが、望ましい。
【0027】
また、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第一竪板部と独立形成されて該第一竪板部と並立するようにして前記底板部から上方に突出せしめられる第二竪板部を有しており、該第二竪板部が竪型鍵盤楽器の後面に固定されるようになっている構造が、好適に採用される。
【0028】
これによれば、第二竪板部によって竪型鍵盤楽器に対する転倒防止装置の取付力をより有利に得ることが可能となって、耐荷重性能の向上を図ることが出来る。更に、第二竪板部を底板部の後端から上方に向かって直接的に延び出させることにより、第一竪板部に比して高い剛性を確保することが出来る。それ故、第一竪板部との協働によって、より安定した転倒防止効果を実現することが可能となる。
【0029】
なお、第一竪板部と第二竪板部が独立形成されるとは、第一竪板部と第二竪板部が底板部を介して連結されている一方で、それら第一竪板部と第二竪板部が直接には連結されておらず、相互に離隔して形成されていることを示している。これにより、応力的には第一竪板部と第二竪板部を互いに別体と見なすことが可能であり、それら第一竪板部と第二竪板部に相互に異なる剛性を付与することが可能となっている。
【0030】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第二竪板部が前記底板部に載置される竪型鍵盤楽器の幅方向で前記第一竪板部よりも中央側に位置するようになっている構造が、好適に採用される。
【0031】
このような構造を採用することにより、アップライトピアノ等の竪型鍵盤楽器の幅方向両端を高さ方向(上下)に延びる支柱に対して第一竪板部を固定すると共に、竪型鍵盤楽器の下端部を幅方向(左右)に延びる土台に対して固定することにより、竪型鍵盤楽器の幅方向両端部に有利に装着することが出来る。
【0032】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第二竪板部と前記底板部が単一の金属板によって一体形成されていることが、望ましい。
【0033】
これによれば、底板部と第二竪板部との境界部分において強度の低下が生じるのを防ぐことが出来て、優れた耐荷重性を実現可能となり、アップライトピアノ等の大きな質量を有する竪型鍵盤楽器に対しても、高い信頼性をもって所期の転倒防止効果を発揮し得る。また、単一の金属板で底板部と一体的に形成することにより、プレス加工等によって容易に製造することが出来る。
【0034】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第二竪板部の突出高さ寸法が前記第一竪板部の突出高さ寸法に比して小さくされていることが、望ましい。
【0035】
これによれば、底板部に対して相対的に傾斜することなく固定的に設けられた第二竪板部の突出高さを低く設定することにより、ピアノの底面と後面が為す角の誤差に基づく竪型鍵盤楽器の背面と第二竪板部との離隔を、充分に小さくすることが出来る。それ故、高剛性の第二竪板部を竪型鍵盤楽器の背面に対して有利に密着せしめて固定することが出来て、所期の転倒防止効果を安定して得ることが出来る。一方、第二竪板部よりも突出高さ寸法が大きく設定される第一竪板部は、下端部に形成される取付角度対応機能部によって傾斜角度の調節が可能とされており、誤差によって竪型鍵盤楽器の背面からの離隔距離が比較的大きくなる場合にも、安定して所期の取付状態を実現することが出来る。
【0036】
なお、このような構造は、第二竪板部が竪型鍵盤楽器の幅方向で第一竪板部よりも中央側に位置するようにされた構造と組み合わせて採用することにより、特に有利な効果を得ることが可能となり得る。即ち、かかる構造の組合せを採用することにより、第一竪板部を、竪型鍵盤楽器の幅方向両端を高さ方向(上下)に延びる支柱に固定すると共に、第一竪板部に比して突出高さ寸法が小さく設定される第二竪板部を、竪型鍵盤楽器の下端部を幅方向(左右)に延びる土台に固定することが出来る。それ故、突出高さ寸法が比較的大きく設定される第一竪板部を、高さ方向を長手方向として延びる支柱に固定することで、突出高さ寸法に関らず有利に取り付けることが出来る一方、突出高さ寸法が比較的に小さく設定される第二竪板部は、幅方向を長手方向として延びる土台に固定することで、幅方向での取付位置に関らず有利に固定することが出来るのである。
【0037】
更にまた、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第二竪板部の後面には、接地面の高さを調整できる接地部材を備えた調整型接地機構が設けられていることが、望ましい。
【0038】
これによれば、底板部の凹凸や歪み等や底板部が載置される床面の凹凸や歪み等によって、床面への設置状態でガタツキや傾斜が生じる場合において、調整型接地機構によって接地面の高さを調整することにより、かかるガタツキや傾きを防いで安定した設置状態を実現することが出来る。
【0039】
また、本発明は、前記第1乃至第10の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置の一対を用いて、それら一対の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置を竪型鍵盤楽器に対して左右独立にセットして、各該竪型鍵盤楽器用転倒防止装置における前記第一竪板部を該竪型鍵盤楽器の背面に固定した竪型鍵盤楽器の設置構造も、特徴とする。
【0040】
これによれば、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置を用いて竪型鍵盤楽器の転倒を有効に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0042】
先ず、図1〜図7には、本発明の一実施形態としてのアップライトピアノ用の転倒防止装置10が示されている。転倒防止装置10は、底板部12と、底板部12に対して直交して上方に延び出す第一竪板部14および第二竪板部16とを一体的に有している。なお、実施形態の説明において、特に説明がない限り、上下方向とは図1における上下方向を言うものとし、前後方向とは図3における左右方向を言うものとする。
【0043】
より詳細には、底板部12は、全体として略平板形状を呈しており、鉄や鋼,ステンレス、アルミニウム合金等を材料とする高剛性の金属板によって略一定の厚さ寸法で形成されている。また、底板部12は、アップライトピアノ18の設置位置の床面に対して略密着状態で配設されるようになっており、アップライトピアノ18が底板部12に載置されるようになっている。また、底板部12は、その前後方向の寸法が幅方向(左右方向)の寸法よりも大きくされていると共に、アップライトピアノ18の脚部の接地部を構成する前後二つのキャスタを同時に載せることが可能な前後方向の長さ寸法を有している。
【0044】
さらに、底板部12は、幅方向(図1中、左右方向)での寸法が前後方向中間部分で変化せしめられており、後方部分が前方部分に比して幅広となっている。これにより、底板部12は全体として平面視で略L字形状を呈している。特に本実施形態では、転倒防止対象物であるアップライトピアノ18の底面形状に合わせて底板部12の平面形状が設定されており、アップライトピアノ18の脚部であるキャスタが底板部12に載置されるようになっていると共に、底板部12がアップライトピアノ18によって目立たないようになっている。また、底板部12が平面視で略L字形状を呈していることにより、奏者が座る椅子の設置位置において底板部12の厚さによる段差が生じるのを回避することが出来て、椅子のスムーズな前後方向への移動や安定した設置を実現できる。
【0045】
また、底板部12の幅方向一方の側の後端部には、上方に向かって突出する第一竪板部14が設けられている。第一竪板部14は、略一定の厚さ寸法を有する高剛性の金属板によって形成されていると共に、底板部12の後方部分(幅広部分)よりも小さい所定の幅寸法で形成されており、底板部12から上方に向かって所定の高さ寸法で延び出している。特に本実施形態における第一竪板部14は、単一の金属板を用いて底板部12と一体形成されており、高剛性の金属板に対して板金プレス等の曲げ加工を施すことにより形成されている。なお、第一竪板部14は、ピアノ18への安定した取付けや充分な取付強度の確保のために、幅方向寸法が10cm以上とされていることが望ましい。更に、後述する転倒防止効果を充分に得るために、第一竪板部14の高さ方向での寸法が30cm以上とされていることが望ましい。より望ましくは、第一竪板部14が40cm以上の高さ寸法とされる。また、この第一竪板部14は、装置全体の大型化を回避すると共に取扱いを容易とするために、幅寸法を40cmとすることが望ましく、より望ましくは30cm以下の幅寸法とされる。
【0046】
さらに、第一竪板部14には、複数のボルト挿通孔20が形成されている。このボルト挿通孔20は、左右方向が長軸とされた略長円形状を呈しており、本実施形態では、高さ方向(図1中、上下)で互いに所定距離だけ離隔して四つのボルト挿通孔20が形成されている。そして、かかるボルト挿通孔20に挿通せしめられる木ねじ等によって、第一竪板部14がアップライトピアノ18の後面に固定されるようになっている。
【0047】
更にまた、第一竪板部14の基端部(下端部)には、後方に向かって凸となるように曲げられて、後方に向かって突出せしめられた変形許容部22が形成されている。本実施形態における変形許容部22は、第一竪板部14の基端部分が、底板部12の後端から所定距離だけ上方に向かって突出せしめられた後、突出方向に対して略直角を為す方向に曲げられて前方に向かって延び出して、更に、略直角を為すように屈曲せしめられて上方に向かって延び出すように曲げ加工されることにより形成されている。換言すれば、本実施形態における第一竪板部14は、突出方向中間の一部に底板部12と略平行に広がる段差部を有しており、かかる段差部を挟んで、上側部分が下側部分よりも前方に位置せしめられている。これにより、第一竪板部14は、全体として略クランク状断面を有する段付き板形状とされている。なお、本実施形態では、一体形成される底板部12と第一竪板部14との境界における湾曲部分が、第一竪板部14の基端部である変形許容部22に含まれている。これにより、第一竪板部14は、底板部12の後端から直接に又は僅かに後方に突出してから、上方に向かって延び出しており、変形許容部22が全体として後方に向かって凸となる屈曲形状を呈している。
【0048】
そして、第一竪板部14の基端部において後方に突出して湾曲せしめられた変形許容部22が形成されることにより、第一竪板部14の板厚方向での剛性を確保して部材強度を損なうことなく、第一竪板部14の底板部12に対する前後方向での傾斜角度の変化を許容せしめて、第一竪板部14における底板部12からの立ち上がり角度を所定範囲で変化対応することが可能となっている。
【0049】
なお、この変形許容部22による第一竪板部14の底板部12からの立ち上がり角度の変化対応は、転倒防止装置10を装着するアップライトピアノ18に対して個別に対応して行われ得る。即ち、アップライトピアノ18は、設計上或いは環境条件等の理由から、その脚部の接地面に対する背面の傾斜角度が数度或いはそれ以上の角度で異なっている。転倒防止装置10の装着状態下では、底板部12にアップライトピアノ18の前後の両接地部が載置されることから、アップライトピアノ18自体の大きな重量を利用して底板部12がアップライトピアノ18の接地部に当接せしめられる。一方、第一竪板部14は、その複数のボルト挿通孔20の形成部位において、アップライトピアノ18の背面に対して強制的に締付固着される。その際、第一竪板部14の基端部に変形許容部22が設けられていることから、この第一竪板部14が、ボルト挿通孔20の形成部位で固定ねじの締付力を及ぼされることにより、強制的にアップライトピアノ18の背面に沿うようにして固定されることとなる。
【0050】
すなわち、単に底板部12上にアップライトピアノ18を載置しただけの初期状態では、アップライトピアノ18の背面と第一竪板部14との間には、該第一竪板部14の突出高さが比較的に大きいが故に、上部或いは下部において比較的に大きな隙間が発生し易い。しかし、かかる載置状態から、第一竪板部14を、ボルト挿通孔20に挿通されてアップライトピアノ18の背面にねじ入れられた木ねじの締め込みによって、アップライトピアノ18の背面に固定して行くにつれて、第一竪板部14の底板部12に対する立ち上がり角度が、変形許容部22における変形作用に基づいて、アップライトピアノ18における接地面と背面との角度に対して強制的に変化調整されることとなり、その結果、全ての木ねじを締付完了して、第一竪板部14をアップライトピアノ18の背面に固定した装着状態下では、第一竪板部14の平板状部分が、高さ方向の実質的に全長に亘って、アップライトピアノ18の背面に対して密着状態とされるのである。
【0051】
ここにおいて、特に好適には、転倒防止装置10の装着前の単体状態下での底板部12と第一竪板部14の間の角度:θ1が、装着を予定するアップライトピアノ18における接地面と背面の間の角度:θ2よりも、僅かに小さく設定される。現実的には、市販されるアップライトピアノの中で最も小さいθ2の値を基準値とし、この基準値であるθ2よりも更に小さく(例えば、0.5〜5度程度度小さく)θ1の値を設定することが望ましい。これにより、上述の如き木ねじの締付力の作用で強制的に密着させて装着せしめた状態下で、転倒防止装置10自体において底板部12と第一竪板部14の間の角度の復元方向に働く弾性が、底板部12と第一竪板部14の間でアップライトピアノ18を挟み込む方向に作用して、底板部12のピアノ接地面への密着力と、第一竪板部14のピアノ背面に対する密着力とが、一層有利に発揮され得ることとなる。
【0052】
また、本実施形態では、第一竪板部14の下端部に後方に向かって突出する変形許容部22が設けられていることにより、後述する転倒防止装置10のアップライトピアノ18に対する装着状態下において、底板部12が、アップライトピアノ18の接地箇所(アップライトピアノ18の底面の四隅付近に配設されたキャスタ)の後端よりも後方に延び出すようになっている。
【0053】
一方、底板部12の幅方向他方の側の後端部分には、第二竪板部16が一体形成されている。第二竪板部16は、底板部12の後方部分(幅広部分)よりも小さい所定の幅寸法とされており、底板部12の後端から略直角を為して上方に延び出すように屈曲形成されている。なお、この第二竪板部16は、第一竪板部14と同様、幅寸法は50cm以下とされることが望ましく、より好適には30cm以下とされる。特に本実施形態では、底板部12と第二竪板部16が単一の高剛性の金属板によって形成されており、板金プレス等によって曲げ加工を施すことにより、底板部12と第二竪板部16が一体形成されている。
【0054】
また、第一竪板部14と第二竪板部16は、幅方向(図1中、左右)で所定距離だけ離隔して並立しており、互いに独立して形成されていると共に、第二竪板部16の高さ寸法が第一竪板部14の高さ寸法に比して小さく設定されており、特に本実施形態では、4分の1程度の高さ寸法で形成されている。より具体的には、この第二竪板部16は、アップライトピアノ18における背面の最下部で水平方向に配設された横木フレームの上端と略同じ高さ寸法とされることが望ましく、例えば、好ましくは10cm以上、より好ましくは15cm以上で、且つ上方の横木フレームにまでは至らないように、好ましくは30cm以下、より好ましくは20cm以下とされる。
【0055】
さらに、第二竪板部16には、複数のボルト挿通孔24が形成されている。このボルト挿通孔24は、上下方向が長軸とされた長円形状を呈しており、本実施形態では、幅方向(左右方向)で互いに離隔して二つのボルト挿通孔24が形成されている。そして、かかるボルト挿通孔24に挿通せしめられる木ねじ等によって、第二竪板部16がアップライトピアノ18の後面に固定されるようになっている。
【0056】
ここにおいて、第二竪板部16は、底板部12に対して、第一竪板部14のように変形許容部22等を介することなく、直接に略直角に屈曲状態で立ち上がって形成されている。それ故、この第二竪板部16は、底板部12に対して、第一竪板部14よりも大きな角度剛性をもって立ち上がっている。しかし、第二竪板部16は、第一竪板部14に比して、底板部12からの立ち上がり高さが小さくされている。それ故、アップライトピアノ18への装着状態下、アップライトピアノ18の背面と第二竪板部16の間に隙間が殆ど発生することなく、良好な密着状態が安定して実現され得ることとなるのである。
【0057】
なお、本実施形態では、第一竪板部14の変形許容部22よりも上方に位置する部分と第二竪板部16との前後方向での位置が揃えられており、同一平面上に位置せしめられていると共に、第一竪板部14の基端部に形成される変形許容部22が第二竪板部16の基端部に比して後方に突出せしめられている。
【0058】
なお、本実施形態では、底板部12の前後方向寸法が幅方向で異なっており、第一竪板部14の形成側が第二竪板部16の形成側に比して前方に大きく突出せしめられている。これにより、後述するアップライトピアノ18の底板部12への載置状態下では、底板部12において左右方向外側に位置する部分の前端がアップライトピアノ18の前側のキャスタ(脚部)の接地箇所よりも前方に突出するようになっていると共に、左右方向内側に位置する部分の前端がアップライトピアノ18の前側のキャスタの接地箇所よりも後方に位置するようになっている。
【0059】
さらに、第二竪板部16の後面(図3中、右側面)には、調整型接地機構26が配設されている。調整型接地機構26は、第二竪板部16に固着される固着金具28と接地部材としてのアジャスタ30を含んで構成されている。
【0060】
固着金具28は、矩形プレート状の金属材を屈曲せしめることによって形成されて、略L字断面を有しており、互いに直交するプレート状部分を備えた構造とされている。そして、互いに直交するプレート状部分の一方が固着部32とされて、第二竪板部16に重ね合わされて溶接等により固着されることにより第二竪板部16に取り付けられていると共に、他方が延出部34とされて、第二竪板部16から後方に向かって延び出して底板部12と平行な方向で広がっている。
【0061】
また、アジャスタ30は、逆向きの椀形状を呈する接地部36がロッド部38に組み付けられて構成されている。更に、ロッド部38には略全長に亘って雄ねじが刻設されてボルト状とされており、ロッド部38の下端部を接地部36の中央に形成される円形孔に挿通せしめてナットで固定することにより接地部36がロッド部38に組み付けられている一方、ロッド部38が固着金具28の延出部34の略中央に形成されたボルト孔に対して下方から挿し入れられて螺着されることにより、アジャスタ30が固着金具28を介して第二竪板部16の後面に組み付けられるようになっている。なお、アジャスタ30は、ロッド部38を軸回りで回転せしめることにより延出部34よりも下方への突出量を調節可能とされている。
【0062】
そして、上述の如き構造とされた転倒防止装置10は、図8,図9に示されているように、アップライト型のピアノ18に対して装着される。詳細には、左右対称とされた一組の転倒防止装置10の底板部12が床面上に敷設されると共に、かかる底板部12上にアップライトピアノ18の左右両端部分に設けられる四つのキャスタが載せられる。更に、各転倒防止装置10の第一竪板部14が、第一竪板部14に形成されたボルト挿通孔20に対して挿通せしめられる木ねじ等によって、アップライトピアノ18の背面における左右両端縁部の柱状の支柱40に固定される。更にまた、各転倒防止装置10の第二竪板部16は、第二竪板部16に形成されたボルト挿通孔24に対して挿通せしめられる木ねじ等によって、アップライトピアノ18の背面における下端縁部の梁状の土台42に固定される。これにより、一対の転倒防止装置10は、アップライトタイプのピアノ18の左右両端部に対して互いに独立して装着されている。なお、各転倒防止装置10は、第二竪板部16が第一竪板部14よりもアップライトピアノ18の左右方向中央側に位置するように配設される。また、第一竪板部14の左右方向外側端縁部がアップライトピアノ18の左右方向外側端縁部よりも僅かに左右方向中央側に位置せしめられていると共に、底板部12の左右方向外側端縁部がアップライトピアノ18の左右方向外側端縁部よりも僅かに左右方向外側にはみ出している。
【0063】
かかる装着状態下において、底板部12の前端縁部がアップライトピアノ18の前側のキャスタよりも前方に突出せしめられていると共に、第一竪板部14の基端部に形成される変形許容部22が、アップライトピアノ18の後面よりも後方に突出せしめられている。更に、第二竪板部16の後面に設けられる調整型接地機構26がアップライトピアノ18の後面よりも後方に位置せしめられている。
【0064】
ここにおいて、アップライトピアノ18に対して本実施形態に従う構造とされた転倒防止装置10を装着することにより、アップライトピアノ18の転倒を効果的に防ぐことが可能となっている。
【0065】
すなわち、アップライトピアノ18は、音響等の観点からキャスタ等の脚部によって小さな接地面積で接地せしめられており、安定性を充分に確保することが困難である。そこで、本実施形態に係る転倒防止装置10においては、竪板部14,16がアップライトピアノ18に固定されるようになっていると共に、アップライトピアノ18が床面に敷設された底板部12に載置されるようになっている。これにより、アップライトピアノ18の実質的な接地面積を転倒防止装置10の底板部12によって充分に大きく確保することが出来て、アップライトピアノ18の安定性の向上を図ることが可能となっている。しかも、転倒防止装置10は、音響への影響が小さい支柱40や土台42に対して固定されており、転倒防止装置10の装着による接地面積の増大が、ピアノ18の音響機能に悪影響を及ぼさないように配慮されている。
【0066】
また、アップライトピアノ18は、その構造上、重心が前後方向で後方に偏倚して位置せしめられていることから、地震の発生時等には、先ず、後方への転倒が問題となり易い。そこにおいて、本実施形態に従う構造とされた転倒防止装置10では第一竪板部14の基端部分が段差状に屈曲せしめられていることにより、転倒防止装置10の装着状態下において、底板部12の後端がアップライトピアノ18の後面よりも後方に延び出している。それ故、アップライトピアノ18の後方への転倒を引き起こすモーメントに対する抗力を、底板部12の後端部分によって有効に得ることが出来て、アップライトピアノ18の後方への転倒を有利に防ぐことが出来る。
【0067】
さらに、第二竪板部16の後面に設けられている調整型接地機構26によってもアップライトピアノ18の後方への転倒が防がれるようになっている。即ち、調整型接地機構26を調節して接地部36を床面に対して予め押し付けておくことにより、アップライトピアノ18の後面よりも後方に配設される調整型接地機構26によって、アップライトピアノ18の後方への転倒モーメントに対する抗力を得ることが出来て、アップライトピアノ18が後方に転倒するのをより有利に防ぐことが出来るようになっている。特に本実施形態では、第一竪板部14に比して剛性を高く設定された第二竪板部16の後面に対して調整型接地機構26が配設されている。それ故、調整型接地機構26の接地状態をより安定せしめることが出来て、調整型接地機構26による転倒防止効果をより有利に得ることが出来ると共に、第二竪板部16と変形許容部22に囲まれた領域を巧く利用してスペース効率良く調整型接地機構26が配設されるようになっている。
【0068】
また、アップライトピアノ18では、前方への転倒も問題となる。特に、家屋の壁面に面する場合が多い後方への転倒に比して、奏者側である前方への転倒は、下敷きになる等の被害が想定されることから危険性が高く、より優れた転倒防止効果が求められている。そこで、本実施形態に係る転倒防止装置10においては、アップライトピアノ18の前方への転倒も効果的に防止できるようになっている。
【0069】
すなわち、本実施形態に係る転倒防止装置10では、アップライトピアノ18の四つのキャスタ(脚部)が何れも底板部12上に載せられるようになっていると共に、第一竪板部14および第二竪板部16がアップライトピアノ18の背面にボルト固定されるようになっている。従って、アップライトピアノ18が底板部12に載置された状態で転倒防止装置10がアップライトピアノ18に対して固定的に装着されるようになっている。更に、本実施形態では、底板部12がアップライトピアノ18の前端よりも前方に突出せしめられるようになっている。
【0070】
これにより、アップライトピアノ18に対して前方への転倒を促すモーメントが作用せしめられた場合には、転倒防止装置10の前端部分によって該モーメントに対する抗力が補強されて、アップライトピアノ18の前方への転倒を有効に防ぐことが可能となっているのである。
【0071】
また、本実施形態に従う構造とされた転倒防止装置10は、互いに独立して突出高さ寸法が異なる第一竪板部14と第二竪板部16を有しており、それらの竪板部14,16によって転倒防止装置10がアップライトピアノ18に対して固定されるようになっている。また、それら第一竪板部14と第二竪板部16は、互いに異なる剛性を有しており、変形許容部22を備えることにより個別のピアノ形状へ対応した追従的な変形を許容される第一竪板部14と、底板部12から直接的に上方に向かって屈曲せしめられて、第一竪板部14よりも高い剛性を備えた第二竪板部16の協働によって、アップライトピアノ18の転倒をより有利に防止することが可能とされている。特に本実施形態では、第一竪板部14と第二竪板部16がそれぞれ独立形成されていることにより、高さや形状が異なる第一竪板部14と第二竪板部16を容易に形成することが出来るようになっている。
【0072】
さらに、第一竪板部14がアップライトピアノ18の幅方向両端部に位置せしめられることにより、突出高さ寸法の大きい第一竪板部14をアップライトピアノ18の背面において幅方向両端部を高さ方向に延びる柱状の部材(略鉛直方向に延びる支柱40)に固定することが出来る。それ故、第一竪板部14を高さ寸法に関らずアップライトピアノ18に対して有利に固定することが出来る。従って、第一竪板部14の高さ寸法を充分に大きく設定して、前後方向での転倒を生ぜしめるモーメントを安定して転倒防止装置10に伝達せしめることが可能となっている。また、第二竪板部16が第一竪板部14よりも幅方向内側に位置せしめられていることにより、第一竪板部14よりも突出高さ寸法の小さい第二竪板部16は、アップライトピアノ18の背面において下端部を幅方向に延びる梁状の部材(水平方向に延びる土台42)に固定することが出来るようになっている。これにより、転倒防止装置10の取付位置が左右方向で誤差を生じる場合にも、第二竪板部16をアップライトピアノ18に安定して固定することが出来る。
【0073】
ここにおいて、第一竪板部14の突出高さ寸法が、第二竪板部16の突出高さ寸法に比して大きくされていることにより、第一竪板部14とアップライトピアノ18の背面との隙間が、第二竪板部16とアップライトピアノ18の背面との隙間に比して大きくなり易い。そこで、本実施形態に従う構造とされた転倒防止装置10においては、第一竪板部14の基端部に変形許容部22を設けることにより、第一竪板部14の底板部12に対する傾斜角度を調節可能としている。そして、底板部12と第一竪板部14が為す角を、アップライトピアノ18の底面と背面が為す角と略等しくなるように調節することにより、第一竪板部14がアップライトピアノ18の背面に対して密着せしめられるようになっており、アップライトピアノ18の個体差(特に、底面と背面の傾斜角度の違い)に関らず、安定して所期の装着状態を実現できるようになっている。
【0074】
また、本実施形態に係る転倒防止装置10は、金属板をプレス加工等することによって形成されており、底板部12がアップライトピアノ18の設置床面に対して略密着せしめられるようになっていると共に、第一竪板部14および第二竪板部16がアップライトピアノ18の後面に密着せしめられるようになっている。これにより、転倒防止装置10は、アップライトピアノ18への装着状態下において、金属板の厚さ方向に略直交する方向で外部から看取されるようになっており、特に図8に示されているように側面形状が主に看取されるようになっている。これにより、アップライトピアノ18への装着状態における転倒防止装置10の視認面積(投影面積)が小さくなっており、転倒防止装置10の装着によって、アップライトピアノ18の装飾性が損なわれることを回避し、更には、装飾物としての価値の向上をも図ることが出来得る。
【0075】
さらに、底板部12は、その長さ方向中間部分で幅寸法が変化せしめられており、アップライトピアノ18の下端部(脚部)の底面形状と略対応する平面形状を呈している。それ故、底板部12は、その受圧面積を十分に大きく確保しつつ、アップライトピアノ18の載置状態での平面視において、アップライトピアノ18の脚部を縁取るように看取されるのであって、アップライトピアノ18の外観をより美しく見せることが出来る。要するに、本実施形態に従う構造の転倒防止装置10では、耐震性能の向上を図りつつ、アップライトピアノ18の室内装飾品としての美しさをより有利に発揮せしめることが可能とされているのである。
【0076】
また、第二竪板部16の背面に調整型接地機構26を配設することにより、アップライトピアノ18が直接載せられてアップライトピアノ18の重量によって床面に押し付けられる左右方向(幅方向)外側に比して、床面からの浮き上がりが問題となり易い左右方向内側の接地状態を調整型接地機構26によって調整することが可能となる。それ故、転倒防止装置10を介するアップライトピアノ18の床面への接地状態を安定させることが出来て、転倒防止効果をより有利に得ることが可能となる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0078】
例えば、前記実施形態においては、第一竪板部14と第二竪板部16を備えた転倒防止装置10が示されているが、第二竪板部16はなくても良く、図10,11に示されている転倒防止装置44のように、第一竪板部14と底板部12で構成されていても良い。また、三つ以上の竪板部を備えていても良い。この場合には、それら複数の竪板部の形状や剛性を異ならせることにより、より有利に転倒防止効果を発揮させることが可能となり得る。
【0079】
また、底板部12の平面形状は、前記実施形態における具体的な記載によって何等限定されるものではない。具体的には、例えば、前後方向の中間部分で幅方向寸法が変化しない矩形形状の平面とされていても良い。これによれば、より単純な形状の底板部を採用することにより、より生産性に優れた転倒防止装置を実現することが可能となり得る。
【0080】
また、変形許容部22の形状は、前記実施形態において具体的に示された形状によって限定されるものではない。具体的には、例えば、円弧状断面を呈するように湾曲せしめられていても良い。
【0081】
さらに、底板部12の後端部は、必ずしもアップライトピアノ18の後面よりも後方に突出せしめられていなくても良い。具体的には、例えば、アップライトピアノ18の後面と底板部の後端が同一平面上に位置せしめられるようになっていても良く、かかる底板部の後端から後方に向かって突出するように変形許容部が形成されていても良い。
【0082】
また、第一竪板部14や第二竪板部16は、何れも底板部12の後端に設けられている必要はなく、底板部12の前後方向中間部分に溶接等の手段によって固着されて、取り付けられていても良い。これによれば、底板部12の後端がアップライトピアノ18の後ろ側のキャスタ位置よりも後方に突出させられることから、後方への転倒を有効に防ぐことが可能となる。
【0083】
また、前記実施形態に示されているように、底板部12を床面に対して安定して設置するためには、調整型接地機構26が設けられていることが望ましいが、調整型接地機構26は必須ではなく、なくても良い。更に、調整型接地機構の構造は、前記実施形態の具体的な記載によって何等限定されるものではない。
【0084】
また、前記実施形態では、底板部12と第一,第二竪板部14,16が、単一の金属板によって一体形成されている例を示したが、底板部12と第一竪板部14,第二竪板部16は、それぞれ別部材として形成されていても良い。なお、それら底板部12と第一竪板部14と第二竪板部16が、それぞれ別体形成された部材とされている場合には、第一竪板部14と第二竪板部16を底板部12に対して、例えば、溶接やボルト固定等によって固着せしめることにより、転倒防止装置を構成することが出来る。具体的には、例えば、図12,13に示されている転倒防止装置46のように、第一竪板部14および第二竪板部16の下端縁部が前方に折り返されており、かかる折り返し部分が底板部12に重ね合わされて溶接やボルト止めされることにより、構成することも可能である。また、その他にも、例えば、図14,15に示されている転倒防止装置48のように、第一竪板部14と第二竪板部16の下端部が下方に向かってストレートに延び出しており、下端縁部が底板部12の上面に突き合わされて、底板部12に対して溶接によって固着されることにより、構成することも出来る。
【0085】
また、前記実施形態においては、アップライトピアノ18の両端部に対して左右一対の転倒防止装置10を装着するようになっていたが、例えば、前記実施形態で示された一対の転倒防止装置10が相互に連結された構造を有する転倒防止装置を採用して、一つの転倒防止装置の底板部上にアップライトピアノ18の四つのキャスタが載せられるようになっていても良い。
【0086】
また、アップライトピアノ18を、底板部12に対して固定するボルトや適当な形状の固定金具を採用することも可能である。これにより、アップライトピアノ18の接地点を底板部12に対して一層強固に当接状態に保持せしめて、安定性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0087】
更にまた、アップライトピアノ18の底板部12に対する接地部構造は、例示の如きキャスタ部分に限定されるものでない。具体的には、例えば、キャスタを外して底板部12に接地したり、或いは、底板部12においてキャスタに対応する位置に凹所や貫通孔を形成してキャスタを底板部12内に収容状態としても良い。これにより、アップライトピアノ18の底板部12に対する接地面積の向上と、それに伴う密着強度の向上、安定性の向上などを図ることが可能となる。
【0088】
また、転倒防止装置の床面への設置構造としては、床面に対して転倒防止装置を載置するだけでなく、転倒防止装置を家屋等の床面に対して固定するための固定手段等を併せて採用することも出来る。具体的には、例えば、図16に示す転倒防止装置50のように、底板部52における前端縁部や第一竪板部14側の後端部付近などに貫通孔54を形成して、かかる貫通孔54に挿通されるボルトや木ねじ等によって、底板部52を床面に固定することも可能である。なお、図16に示されている貫通孔54の形成位置は、あくまでも例示であって、設置されるピアノや家屋の床面等の構造等に応じて適宜に設定される。また、貫通孔54の形成数も、あくまでも例示であって、三つ以上の貫通孔54を設けてそれぞれに挿通されるボルト等によって床面に固定することにより、転倒防止装置のより強固且つ安定した設置を実現することも可能であるし、一つの貫通孔54に挿通されるボルト等によって簡易に位置決め固定を実現することも出来る。また、固定手段としては、必ずしもボルトや木ねじの螺着による固定でなくても良く、床面に対して予め挿込穴を形成して、係る挿込穴に対して貫通孔54に挿通されるロッド状の部材を挿し入れることによって、床面に平行な方向での移動を阻止する位置決め固定を主眼とした構造や、釘や接着等による簡便な固定構造であっても良い。更には、挿し込みによって抜出方向でロックされる構造を挿し入れられるロッド状の部材と挿込穴に設けても良い。
【0089】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態としての転倒防止装置を示す正面図。
【図2】同転倒防止装置の背面図。
【図3】同転倒防止装置の右側面図。
【図4】同転倒防止装置の左側面図。
【図5】同転倒防止装置の平面図。
【図6】同転倒防止装置の底面図。
【図7】同転倒防止装置の図5におけるVII−VII線断面図。
【図8】同転倒防止装置のアップライトピアノへの装着状態を示す右側面図。
【図9】同転倒防止装置のアップライトピアノへの装着状態を示す背面図。
【図10】本発明の別の一実施形態としての転倒防止装置を示す正面図。
【図11】同転倒防止装置の平面図。
【図12】本発明のまた別の一実施形態としての転倒防止装置を示す右側面図。
【図13】同転倒防止装置の左側面図。
【図14】本発明の更に別の一実施形態としての転倒防止装置を示す右側面図。
【図15】同転倒防止装置の左側面図。
【図16】本発明の更にまた別の一実施形態としての転倒防止装置を示す平面図。
【符号の説明】
【0091】
10 転倒防止装置、12 底板部、14 第一竪板部、16 第二竪板部、18 アップライトピアノ、22 変形許容部、26 調整型接地機構、30 アジャスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ピアノやオルガン等の鍵盤楽器の転倒を防止するための装置に係り、特に、アップライトピアノ等の竪型鍵盤楽器に好適に採用される転倒防止装置とそれを用いた竪型鍵盤楽器の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鍵盤楽器の一種として、アップライトピアノ等の竪型鍵盤楽器が知られている。また、一般的に、竪型鍵盤楽器は、グランドピアノ等の平型鍵盤楽器に比して安定性が低く、地震の発生時等において転倒を生じ易いことが問題となっている。蓋し、竪型鍵盤楽器では、重量が大きい打弦機構などの発音機構が後方の箱状部分内における高い位置に収容配置されており、重心位置が高いことから転倒が生じ易い。更に、重心が後方に偏倚せしめられていることに加えて、脚部の接地点間距離が前後方向で小さいことから、前後方向で転倒し易い。特に、奏者側であると共に、一般家庭で居室に設置される際に居住空間である前方へのピアノの倒れ込みは、その危険性から有効な対策が求められている。
【0003】
そこで、従来から、アップライトピアノの転倒を防止するための装置が提案されている。
具体的には、例えば、以下(1),(2)のタイプが提案されている。
(1)特許文献1(特開平9−152092号公報)に示されているように、ピアノの背面を、ピアノの背面側に位置する家屋の柱や壁面に対して直接固定するタイプ。
(2)特許文献2(実用新案登録3024229号公報)に示されているように、ピアノの背面に支持脚を付加的に取り付けるタイプ。
【0004】
ところが、これら従来構造の転倒防止装置には、未だ解決すべき問題点があった。即ち、特許文献1に示されている転倒防止装置では、家屋に対して転倒防止装置をねじ止め等することから、家屋の内装に対する悪影響を避けることが難しく、柱や壁面等の構造や材料等の条件およびピアノの設置位置等によっては使用することが困難な場合が多い。しかも、柱や根太等の位置を捜してねじ固定する作業自体が非常に面倒で難しく、施工状態によっては目的とする効果を安定して得難いという問題があった。加えて、ピアノを廃棄したり移動させたりすると、家屋の壁面にねじ穴等の取付跡が残ってしまうという問題もある。
【0005】
また、特許文献2に示された転倒防止装置では、ピアノの背面に支持脚を固設することによりピアノの後方への転倒防止を図ることが可能であるが、危険性の高い前方への転倒については何等の配慮も為されておらず、安全性の充分な確保には未だ至っていない。しかも、特許文献2に記載の転倒防止装置においては、ピアノの背面から後方に大きく突出するように支持脚が装着されることから、一般家庭の居室等での使用にはスペース上の理由から適さないことに加えて、楽器としてのみならず装飾的な意味合いをも有するピアノの外観を著しく損ねる結果となり、ユーザーが満足できるものでなかったのである。
【0006】
なお、特許文献3(特開平8−241071号公報)には、相互に略直交するように配された底板と側板を有する座椅子形状のピアノ設置板が提案されている。このピアノ設置板では、側板をアップライトピアノの背面(後面)に重ね合わせてねじ止め固定することにより、アップライトピアノの転倒を防止するようになっている。
【0007】
しかしながら、かかる特許文献3に記載のピアノ設置板では、ピアノ底面全体をカバーする大きな底板の長辺に側板が垂直に固着されてなる極めて大型で大重量の部品であるから、取扱いが面倒で見栄えが悪い。しかも、高い剛性を有する底板と側板が互いに直交するように固定されており、側板の底板に対する角度調整が許容され得ないことから、側板をアップライトピアノの背面に対して密着させて固定することが出来ないという問題がある。
【0008】
蓋し、アップライトピアノは、その重心位置や重量配分等の関係を考慮した設計上の理由から、或いはピアノ本体を構成する木材の個体差や湿度や温度等の周辺環境による影響などの理由から、ピアノの設置面と背面が必ずしも直角を為していないという特徴がある。それ故、特許文献3に記載の如き、底板と側板を直角に固定した従来構造のピアノ設置板では、側板をピアノの背面に密着させることが、現実的に不可能となるのである。
【0009】
このように、特許文献3に記載の如きピアノ設置板では、その装着状態下、側板とピアノの背面の間における隙間の存在が避けられないことから、ピアノに対する固着力ひいては安定性が充分に安定して発揮され難いという問題があると共に、側板とピアノ背面の間の隙間によって、設置されたピアノ本来の美しい外観を大きく損ねるという問題もあったのである。
【0010】
【特許文献1】特開平9−152092号公報
【特許文献2】実用新案登録3024229号公報
【特許文献3】特開平8−241071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、竪型鍵盤楽器の底面と背面が為す角度の誤差等といった竪型鍵盤楽器の個体差に関らず、安定して所期の状態に組み付けることが出来て、有効な転倒防止効果を発揮し得る、美観にも優れた鍵盤楽器用の転倒防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
すなわち、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置が特徴とするところは、底板部を有しており、該底板部に竪型鍵盤楽器が載置されるようになっていると共に、該底板部から上方に突出する第一竪板部が設けられて、該第一竪板部が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器の後面に固定されるようになっており、更に、該第一竪板部の下端部には、該第一竪板部に固定される竪型鍵盤楽器の後面よりも後方に突出するように曲げられた取付角度対応機能部が設けられていることにある。
【0014】
このような本発明に従う構造とされた竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、相互に接続された底板部と第一竪板部を有しており、底板部上にアップライトピアノ等の竪型鍵盤楽器を載置すると共に、竪型鍵盤楽器の後面に対して第一竪板部をボルト等で固定することにより、転倒防止対象物である竪型鍵盤楽器に対して装着され得る。これにより、竪型鍵盤楽器の接地面積を有利に確保して、前後方向での安定性を向上せしめて転倒を有利に防ぐことが出来る。それ故、危険性の高い前方への転倒を含むピアノ等の転倒を効果的に防止することが可能となるのである。
【0015】
特に、第一竪板部の基端部(底板部側の端部)が、第一竪板部に固定される竪型鍵盤楽器の後面よりも後方側に突出するように湾曲乃至は屈曲せしめられた取付角度対応機能部とされている。これによって、高い剛性を有する第一竪板部が、取付角度対応機能部において、第一竪板部の底板部に対する前後方向での傾斜角度が、装着対象となる竪型鍵盤楽器における底面(設置面)と背面との傾斜角度に対応し得る。
【0016】
これにより、形状とくに底面(接地面)と背面との傾斜角度に関して比較的に大きな個体差を有する竪型鍵盤楽器においても、その接地点を底板部上に当接させた状態で竪型鍵盤楽器の背面に対して第一竪板部を密着させて固定することが出来る。従って、転倒防止装置の竪型鍵盤楽器への取付強度を充分に確保できて、転倒防止効果を有効に発揮せしめることが可能となると共に、第一竪板部の基端部を除く部分が竪型鍵盤楽器の背面に密着せしめられることによって、特に側面視での外観を整えることが出来て、室内装飾品としての一面を有するアップライトピアノの外観を損ねることなく、実用的な転倒の防止手段を実現することが出来る。
【0017】
さらに、竪型鍵盤楽器の背面は、家屋の壁面と対向せしめられている場合が多く、特にアップライトピアノでは、背面から音が発せられることから、発音部位であるピアノ背面と家屋の壁面との間に隙間が設けられている必要がある。そこにおいて、本発明に係る転倒防止装置は、アップライトピアノの背面に第一竪板部を固着することによって装着されるようになっており、後方に突出する取付角度対応機能部が、アップライトピアノの後面と家屋の壁面との間に形成される隙間を巧く利用して配設されるようになっている。従って、転倒防止装置をスペース効率良く装着することが出来て、家屋の室内空間を有利に確保することが出来る。
【0018】
なお、ここでいう上方とは、平板形状とされた底板部を水平面上に載置した状態下における鉛直上方を示しており、底板部の厚さ方向一方の側を言う。
【0019】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記底板部と前記第一竪板部が単一の金属板によって一体形成されている構造が、好適に採用される。
【0020】
このような本態様に従う構造とされた竪型鍵盤楽器用転倒防止装置によれば、単一の金属板を用いて底板部と第一竪板部を一体形成することにより、底板部と第一竪板部の境界部分において強度が他の部分に比して低くなるのをより有利に回避することが出来る。それ故、転倒防止装置において優れた耐荷重性を実現することが出来て、アップライトピアノ等の大きな質量を有する竪型鍵盤楽器に対しても、充分なる信頼性をもって転倒防止効果を発揮し得る。
【0021】
また、単一の金属板を用いて底板部と第一竪板部を一体形成することから、例えば、プレス加工等によって容易に本発明に係る転倒防止装置を形成することが可能となる。それ故、生産性の向上等を有利に実現することが出来る。
【0022】
また、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記底板部の前端が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器における接地部の前端よりも前方に突出するようになっている構造が、好適に採用される。
【0023】
このような構造を採用することにより、竪型鍵盤楽器に対して前方への転倒の原因となるモーメントが及ぼされた場合には、底板部において竪型鍵盤楽器の脚部(キャスタ等の接地部)の前端よりも前方に突出せしめられた部分によって、モーメントに対する抗力を有利に得ることが出来て、竪型鍵盤楽器の転倒を有利に防ぐことが可能となる。
【0024】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記底板部の後端が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器における接地部の後端よりも後方に突出するようになっている構造が、好適に採用される。
【0025】
これによれば、底板部の後端が竪型鍵盤楽器の後端よりも後方に突出せしめられていることにより、竪型鍵盤楽器に対して後方への転倒の原因となるモーメントが生じた場合に、底板部における後方への突出部分によって、モーメントに対する抗力を有利に得ることが出来て、竪型鍵盤楽器の転倒を防止することが出来る。
【0026】
更にまた、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第一竪板部が前記底板部の後端から上方に突出せしめられていることが、望ましい。
【0027】
また、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第一竪板部と独立形成されて該第一竪板部と並立するようにして前記底板部から上方に突出せしめられる第二竪板部を有しており、該第二竪板部が竪型鍵盤楽器の後面に固定されるようになっている構造が、好適に採用される。
【0028】
これによれば、第二竪板部によって竪型鍵盤楽器に対する転倒防止装置の取付力をより有利に得ることが可能となって、耐荷重性能の向上を図ることが出来る。更に、第二竪板部を底板部の後端から上方に向かって直接的に延び出させることにより、第一竪板部に比して高い剛性を確保することが出来る。それ故、第一竪板部との協働によって、より安定した転倒防止効果を実現することが可能となる。
【0029】
なお、第一竪板部と第二竪板部が独立形成されるとは、第一竪板部と第二竪板部が底板部を介して連結されている一方で、それら第一竪板部と第二竪板部が直接には連結されておらず、相互に離隔して形成されていることを示している。これにより、応力的には第一竪板部と第二竪板部を互いに別体と見なすことが可能であり、それら第一竪板部と第二竪板部に相互に異なる剛性を付与することが可能となっている。
【0030】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第二竪板部が前記底板部に載置される竪型鍵盤楽器の幅方向で前記第一竪板部よりも中央側に位置するようになっている構造が、好適に採用される。
【0031】
このような構造を採用することにより、アップライトピアノ等の竪型鍵盤楽器の幅方向両端を高さ方向(上下)に延びる支柱に対して第一竪板部を固定すると共に、竪型鍵盤楽器の下端部を幅方向(左右)に延びる土台に対して固定することにより、竪型鍵盤楽器の幅方向両端部に有利に装着することが出来る。
【0032】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第二竪板部と前記底板部が単一の金属板によって一体形成されていることが、望ましい。
【0033】
これによれば、底板部と第二竪板部との境界部分において強度の低下が生じるのを防ぐことが出来て、優れた耐荷重性を実現可能となり、アップライトピアノ等の大きな質量を有する竪型鍵盤楽器に対しても、高い信頼性をもって所期の転倒防止効果を発揮し得る。また、単一の金属板で底板部と一体的に形成することにより、プレス加工等によって容易に製造することが出来る。
【0034】
さらに、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第二竪板部の突出高さ寸法が前記第一竪板部の突出高さ寸法に比して小さくされていることが、望ましい。
【0035】
これによれば、底板部に対して相対的に傾斜することなく固定的に設けられた第二竪板部の突出高さを低く設定することにより、ピアノの底面と後面が為す角の誤差に基づく竪型鍵盤楽器の背面と第二竪板部との離隔を、充分に小さくすることが出来る。それ故、高剛性の第二竪板部を竪型鍵盤楽器の背面に対して有利に密着せしめて固定することが出来て、所期の転倒防止効果を安定して得ることが出来る。一方、第二竪板部よりも突出高さ寸法が大きく設定される第一竪板部は、下端部に形成される取付角度対応機能部によって傾斜角度の調節が可能とされており、誤差によって竪型鍵盤楽器の背面からの離隔距離が比較的大きくなる場合にも、安定して所期の取付状態を実現することが出来る。
【0036】
なお、このような構造は、第二竪板部が竪型鍵盤楽器の幅方向で第一竪板部よりも中央側に位置するようにされた構造と組み合わせて採用することにより、特に有利な効果を得ることが可能となり得る。即ち、かかる構造の組合せを採用することにより、第一竪板部を、竪型鍵盤楽器の幅方向両端を高さ方向(上下)に延びる支柱に固定すると共に、第一竪板部に比して突出高さ寸法が小さく設定される第二竪板部を、竪型鍵盤楽器の下端部を幅方向(左右)に延びる土台に固定することが出来る。それ故、突出高さ寸法が比較的大きく設定される第一竪板部を、高さ方向を長手方向として延びる支柱に固定することで、突出高さ寸法に関らず有利に取り付けることが出来る一方、突出高さ寸法が比較的に小さく設定される第二竪板部は、幅方向を長手方向として延びる土台に固定することで、幅方向での取付位置に関らず有利に固定することが出来るのである。
【0037】
更にまた、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置においては、前記第二竪板部の後面には、接地面の高さを調整できる接地部材を備えた調整型接地機構が設けられていることが、望ましい。
【0038】
これによれば、底板部の凹凸や歪み等や底板部が載置される床面の凹凸や歪み等によって、床面への設置状態でガタツキや傾斜が生じる場合において、調整型接地機構によって接地面の高さを調整することにより、かかるガタツキや傾きを防いで安定した設置状態を実現することが出来る。
【0039】
また、本発明は、前記第1乃至第10の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置の一対を用いて、それら一対の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置を竪型鍵盤楽器に対して左右独立にセットして、各該竪型鍵盤楽器用転倒防止装置における前記第一竪板部を該竪型鍵盤楽器の背面に固定した竪型鍵盤楽器の設置構造も、特徴とする。
【0040】
これによれば、本発明に係る竪型鍵盤楽器用転倒防止装置を用いて竪型鍵盤楽器の転倒を有効に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0042】
先ず、図1〜図7には、本発明の一実施形態としてのアップライトピアノ用の転倒防止装置10が示されている。転倒防止装置10は、底板部12と、底板部12に対して直交して上方に延び出す第一竪板部14および第二竪板部16とを一体的に有している。なお、実施形態の説明において、特に説明がない限り、上下方向とは図1における上下方向を言うものとし、前後方向とは図3における左右方向を言うものとする。
【0043】
より詳細には、底板部12は、全体として略平板形状を呈しており、鉄や鋼,ステンレス、アルミニウム合金等を材料とする高剛性の金属板によって略一定の厚さ寸法で形成されている。また、底板部12は、アップライトピアノ18の設置位置の床面に対して略密着状態で配設されるようになっており、アップライトピアノ18が底板部12に載置されるようになっている。また、底板部12は、その前後方向の寸法が幅方向(左右方向)の寸法よりも大きくされていると共に、アップライトピアノ18の脚部の接地部を構成する前後二つのキャスタを同時に載せることが可能な前後方向の長さ寸法を有している。
【0044】
さらに、底板部12は、幅方向(図1中、左右方向)での寸法が前後方向中間部分で変化せしめられており、後方部分が前方部分に比して幅広となっている。これにより、底板部12は全体として平面視で略L字形状を呈している。特に本実施形態では、転倒防止対象物であるアップライトピアノ18の底面形状に合わせて底板部12の平面形状が設定されており、アップライトピアノ18の脚部であるキャスタが底板部12に載置されるようになっていると共に、底板部12がアップライトピアノ18によって目立たないようになっている。また、底板部12が平面視で略L字形状を呈していることにより、奏者が座る椅子の設置位置において底板部12の厚さによる段差が生じるのを回避することが出来て、椅子のスムーズな前後方向への移動や安定した設置を実現できる。
【0045】
また、底板部12の幅方向一方の側の後端部には、上方に向かって突出する第一竪板部14が設けられている。第一竪板部14は、略一定の厚さ寸法を有する高剛性の金属板によって形成されていると共に、底板部12の後方部分(幅広部分)よりも小さい所定の幅寸法で形成されており、底板部12から上方に向かって所定の高さ寸法で延び出している。特に本実施形態における第一竪板部14は、単一の金属板を用いて底板部12と一体形成されており、高剛性の金属板に対して板金プレス等の曲げ加工を施すことにより形成されている。なお、第一竪板部14は、ピアノ18への安定した取付けや充分な取付強度の確保のために、幅方向寸法が10cm以上とされていることが望ましい。更に、後述する転倒防止効果を充分に得るために、第一竪板部14の高さ方向での寸法が30cm以上とされていることが望ましい。より望ましくは、第一竪板部14が40cm以上の高さ寸法とされる。また、この第一竪板部14は、装置全体の大型化を回避すると共に取扱いを容易とするために、幅寸法を40cmとすることが望ましく、より望ましくは30cm以下の幅寸法とされる。
【0046】
さらに、第一竪板部14には、複数のボルト挿通孔20が形成されている。このボルト挿通孔20は、左右方向が長軸とされた略長円形状を呈しており、本実施形態では、高さ方向(図1中、上下)で互いに所定距離だけ離隔して四つのボルト挿通孔20が形成されている。そして、かかるボルト挿通孔20に挿通せしめられる木ねじ等によって、第一竪板部14がアップライトピアノ18の後面に固定されるようになっている。
【0047】
更にまた、第一竪板部14の基端部(下端部)には、後方に向かって凸となるように曲げられて、後方に向かって突出せしめられた変形許容部22が形成されている。本実施形態における変形許容部22は、第一竪板部14の基端部分が、底板部12の後端から所定距離だけ上方に向かって突出せしめられた後、突出方向に対して略直角を為す方向に曲げられて前方に向かって延び出して、更に、略直角を為すように屈曲せしめられて上方に向かって延び出すように曲げ加工されることにより形成されている。換言すれば、本実施形態における第一竪板部14は、突出方向中間の一部に底板部12と略平行に広がる段差部を有しており、かかる段差部を挟んで、上側部分が下側部分よりも前方に位置せしめられている。これにより、第一竪板部14は、全体として略クランク状断面を有する段付き板形状とされている。なお、本実施形態では、一体形成される底板部12と第一竪板部14との境界における湾曲部分が、第一竪板部14の基端部である変形許容部22に含まれている。これにより、第一竪板部14は、底板部12の後端から直接に又は僅かに後方に突出してから、上方に向かって延び出しており、変形許容部22が全体として後方に向かって凸となる屈曲形状を呈している。
【0048】
そして、第一竪板部14の基端部において後方に突出して湾曲せしめられた変形許容部22が形成されることにより、第一竪板部14の板厚方向での剛性を確保して部材強度を損なうことなく、第一竪板部14の底板部12に対する前後方向での傾斜角度の変化を許容せしめて、第一竪板部14における底板部12からの立ち上がり角度を所定範囲で変化対応することが可能となっている。
【0049】
なお、この変形許容部22による第一竪板部14の底板部12からの立ち上がり角度の変化対応は、転倒防止装置10を装着するアップライトピアノ18に対して個別に対応して行われ得る。即ち、アップライトピアノ18は、設計上或いは環境条件等の理由から、その脚部の接地面に対する背面の傾斜角度が数度或いはそれ以上の角度で異なっている。転倒防止装置10の装着状態下では、底板部12にアップライトピアノ18の前後の両接地部が載置されることから、アップライトピアノ18自体の大きな重量を利用して底板部12がアップライトピアノ18の接地部に当接せしめられる。一方、第一竪板部14は、その複数のボルト挿通孔20の形成部位において、アップライトピアノ18の背面に対して強制的に締付固着される。その際、第一竪板部14の基端部に変形許容部22が設けられていることから、この第一竪板部14が、ボルト挿通孔20の形成部位で固定ねじの締付力を及ぼされることにより、強制的にアップライトピアノ18の背面に沿うようにして固定されることとなる。
【0050】
すなわち、単に底板部12上にアップライトピアノ18を載置しただけの初期状態では、アップライトピアノ18の背面と第一竪板部14との間には、該第一竪板部14の突出高さが比較的に大きいが故に、上部或いは下部において比較的に大きな隙間が発生し易い。しかし、かかる載置状態から、第一竪板部14を、ボルト挿通孔20に挿通されてアップライトピアノ18の背面にねじ入れられた木ねじの締め込みによって、アップライトピアノ18の背面に固定して行くにつれて、第一竪板部14の底板部12に対する立ち上がり角度が、変形許容部22における変形作用に基づいて、アップライトピアノ18における接地面と背面との角度に対して強制的に変化調整されることとなり、その結果、全ての木ねじを締付完了して、第一竪板部14をアップライトピアノ18の背面に固定した装着状態下では、第一竪板部14の平板状部分が、高さ方向の実質的に全長に亘って、アップライトピアノ18の背面に対して密着状態とされるのである。
【0051】
ここにおいて、特に好適には、転倒防止装置10の装着前の単体状態下での底板部12と第一竪板部14の間の角度:θ1が、装着を予定するアップライトピアノ18における接地面と背面の間の角度:θ2よりも、僅かに小さく設定される。現実的には、市販されるアップライトピアノの中で最も小さいθ2の値を基準値とし、この基準値であるθ2よりも更に小さく(例えば、0.5〜5度程度度小さく)θ1の値を設定することが望ましい。これにより、上述の如き木ねじの締付力の作用で強制的に密着させて装着せしめた状態下で、転倒防止装置10自体において底板部12と第一竪板部14の間の角度の復元方向に働く弾性が、底板部12と第一竪板部14の間でアップライトピアノ18を挟み込む方向に作用して、底板部12のピアノ接地面への密着力と、第一竪板部14のピアノ背面に対する密着力とが、一層有利に発揮され得ることとなる。
【0052】
また、本実施形態では、第一竪板部14の下端部に後方に向かって突出する変形許容部22が設けられていることにより、後述する転倒防止装置10のアップライトピアノ18に対する装着状態下において、底板部12が、アップライトピアノ18の接地箇所(アップライトピアノ18の底面の四隅付近に配設されたキャスタ)の後端よりも後方に延び出すようになっている。
【0053】
一方、底板部12の幅方向他方の側の後端部分には、第二竪板部16が一体形成されている。第二竪板部16は、底板部12の後方部分(幅広部分)よりも小さい所定の幅寸法とされており、底板部12の後端から略直角を為して上方に延び出すように屈曲形成されている。なお、この第二竪板部16は、第一竪板部14と同様、幅寸法は50cm以下とされることが望ましく、より好適には30cm以下とされる。特に本実施形態では、底板部12と第二竪板部16が単一の高剛性の金属板によって形成されており、板金プレス等によって曲げ加工を施すことにより、底板部12と第二竪板部16が一体形成されている。
【0054】
また、第一竪板部14と第二竪板部16は、幅方向(図1中、左右)で所定距離だけ離隔して並立しており、互いに独立して形成されていると共に、第二竪板部16の高さ寸法が第一竪板部14の高さ寸法に比して小さく設定されており、特に本実施形態では、4分の1程度の高さ寸法で形成されている。より具体的には、この第二竪板部16は、アップライトピアノ18における背面の最下部で水平方向に配設された横木フレームの上端と略同じ高さ寸法とされることが望ましく、例えば、好ましくは10cm以上、より好ましくは15cm以上で、且つ上方の横木フレームにまでは至らないように、好ましくは30cm以下、より好ましくは20cm以下とされる。
【0055】
さらに、第二竪板部16には、複数のボルト挿通孔24が形成されている。このボルト挿通孔24は、上下方向が長軸とされた長円形状を呈しており、本実施形態では、幅方向(左右方向)で互いに離隔して二つのボルト挿通孔24が形成されている。そして、かかるボルト挿通孔24に挿通せしめられる木ねじ等によって、第二竪板部16がアップライトピアノ18の後面に固定されるようになっている。
【0056】
ここにおいて、第二竪板部16は、底板部12に対して、第一竪板部14のように変形許容部22等を介することなく、直接に略直角に屈曲状態で立ち上がって形成されている。それ故、この第二竪板部16は、底板部12に対して、第一竪板部14よりも大きな角度剛性をもって立ち上がっている。しかし、第二竪板部16は、第一竪板部14に比して、底板部12からの立ち上がり高さが小さくされている。それ故、アップライトピアノ18への装着状態下、アップライトピアノ18の背面と第二竪板部16の間に隙間が殆ど発生することなく、良好な密着状態が安定して実現され得ることとなるのである。
【0057】
なお、本実施形態では、第一竪板部14の変形許容部22よりも上方に位置する部分と第二竪板部16との前後方向での位置が揃えられており、同一平面上に位置せしめられていると共に、第一竪板部14の基端部に形成される変形許容部22が第二竪板部16の基端部に比して後方に突出せしめられている。
【0058】
なお、本実施形態では、底板部12の前後方向寸法が幅方向で異なっており、第一竪板部14の形成側が第二竪板部16の形成側に比して前方に大きく突出せしめられている。これにより、後述するアップライトピアノ18の底板部12への載置状態下では、底板部12において左右方向外側に位置する部分の前端がアップライトピアノ18の前側のキャスタ(脚部)の接地箇所よりも前方に突出するようになっていると共に、左右方向内側に位置する部分の前端がアップライトピアノ18の前側のキャスタの接地箇所よりも後方に位置するようになっている。
【0059】
さらに、第二竪板部16の後面(図3中、右側面)には、調整型接地機構26が配設されている。調整型接地機構26は、第二竪板部16に固着される固着金具28と接地部材としてのアジャスタ30を含んで構成されている。
【0060】
固着金具28は、矩形プレート状の金属材を屈曲せしめることによって形成されて、略L字断面を有しており、互いに直交するプレート状部分を備えた構造とされている。そして、互いに直交するプレート状部分の一方が固着部32とされて、第二竪板部16に重ね合わされて溶接等により固着されることにより第二竪板部16に取り付けられていると共に、他方が延出部34とされて、第二竪板部16から後方に向かって延び出して底板部12と平行な方向で広がっている。
【0061】
また、アジャスタ30は、逆向きの椀形状を呈する接地部36がロッド部38に組み付けられて構成されている。更に、ロッド部38には略全長に亘って雄ねじが刻設されてボルト状とされており、ロッド部38の下端部を接地部36の中央に形成される円形孔に挿通せしめてナットで固定することにより接地部36がロッド部38に組み付けられている一方、ロッド部38が固着金具28の延出部34の略中央に形成されたボルト孔に対して下方から挿し入れられて螺着されることにより、アジャスタ30が固着金具28を介して第二竪板部16の後面に組み付けられるようになっている。なお、アジャスタ30は、ロッド部38を軸回りで回転せしめることにより延出部34よりも下方への突出量を調節可能とされている。
【0062】
そして、上述の如き構造とされた転倒防止装置10は、図8,図9に示されているように、アップライト型のピアノ18に対して装着される。詳細には、左右対称とされた一組の転倒防止装置10の底板部12が床面上に敷設されると共に、かかる底板部12上にアップライトピアノ18の左右両端部分に設けられる四つのキャスタが載せられる。更に、各転倒防止装置10の第一竪板部14が、第一竪板部14に形成されたボルト挿通孔20に対して挿通せしめられる木ねじ等によって、アップライトピアノ18の背面における左右両端縁部の柱状の支柱40に固定される。更にまた、各転倒防止装置10の第二竪板部16は、第二竪板部16に形成されたボルト挿通孔24に対して挿通せしめられる木ねじ等によって、アップライトピアノ18の背面における下端縁部の梁状の土台42に固定される。これにより、一対の転倒防止装置10は、アップライトタイプのピアノ18の左右両端部に対して互いに独立して装着されている。なお、各転倒防止装置10は、第二竪板部16が第一竪板部14よりもアップライトピアノ18の左右方向中央側に位置するように配設される。また、第一竪板部14の左右方向外側端縁部がアップライトピアノ18の左右方向外側端縁部よりも僅かに左右方向中央側に位置せしめられていると共に、底板部12の左右方向外側端縁部がアップライトピアノ18の左右方向外側端縁部よりも僅かに左右方向外側にはみ出している。
【0063】
かかる装着状態下において、底板部12の前端縁部がアップライトピアノ18の前側のキャスタよりも前方に突出せしめられていると共に、第一竪板部14の基端部に形成される変形許容部22が、アップライトピアノ18の後面よりも後方に突出せしめられている。更に、第二竪板部16の後面に設けられる調整型接地機構26がアップライトピアノ18の後面よりも後方に位置せしめられている。
【0064】
ここにおいて、アップライトピアノ18に対して本実施形態に従う構造とされた転倒防止装置10を装着することにより、アップライトピアノ18の転倒を効果的に防ぐことが可能となっている。
【0065】
すなわち、アップライトピアノ18は、音響等の観点からキャスタ等の脚部によって小さな接地面積で接地せしめられており、安定性を充分に確保することが困難である。そこで、本実施形態に係る転倒防止装置10においては、竪板部14,16がアップライトピアノ18に固定されるようになっていると共に、アップライトピアノ18が床面に敷設された底板部12に載置されるようになっている。これにより、アップライトピアノ18の実質的な接地面積を転倒防止装置10の底板部12によって充分に大きく確保することが出来て、アップライトピアノ18の安定性の向上を図ることが可能となっている。しかも、転倒防止装置10は、音響への影響が小さい支柱40や土台42に対して固定されており、転倒防止装置10の装着による接地面積の増大が、ピアノ18の音響機能に悪影響を及ぼさないように配慮されている。
【0066】
また、アップライトピアノ18は、その構造上、重心が前後方向で後方に偏倚して位置せしめられていることから、地震の発生時等には、先ず、後方への転倒が問題となり易い。そこにおいて、本実施形態に従う構造とされた転倒防止装置10では第一竪板部14の基端部分が段差状に屈曲せしめられていることにより、転倒防止装置10の装着状態下において、底板部12の後端がアップライトピアノ18の後面よりも後方に延び出している。それ故、アップライトピアノ18の後方への転倒を引き起こすモーメントに対する抗力を、底板部12の後端部分によって有効に得ることが出来て、アップライトピアノ18の後方への転倒を有利に防ぐことが出来る。
【0067】
さらに、第二竪板部16の後面に設けられている調整型接地機構26によってもアップライトピアノ18の後方への転倒が防がれるようになっている。即ち、調整型接地機構26を調節して接地部36を床面に対して予め押し付けておくことにより、アップライトピアノ18の後面よりも後方に配設される調整型接地機構26によって、アップライトピアノ18の後方への転倒モーメントに対する抗力を得ることが出来て、アップライトピアノ18が後方に転倒するのをより有利に防ぐことが出来るようになっている。特に本実施形態では、第一竪板部14に比して剛性を高く設定された第二竪板部16の後面に対して調整型接地機構26が配設されている。それ故、調整型接地機構26の接地状態をより安定せしめることが出来て、調整型接地機構26による転倒防止効果をより有利に得ることが出来ると共に、第二竪板部16と変形許容部22に囲まれた領域を巧く利用してスペース効率良く調整型接地機構26が配設されるようになっている。
【0068】
また、アップライトピアノ18では、前方への転倒も問題となる。特に、家屋の壁面に面する場合が多い後方への転倒に比して、奏者側である前方への転倒は、下敷きになる等の被害が想定されることから危険性が高く、より優れた転倒防止効果が求められている。そこで、本実施形態に係る転倒防止装置10においては、アップライトピアノ18の前方への転倒も効果的に防止できるようになっている。
【0069】
すなわち、本実施形態に係る転倒防止装置10では、アップライトピアノ18の四つのキャスタ(脚部)が何れも底板部12上に載せられるようになっていると共に、第一竪板部14および第二竪板部16がアップライトピアノ18の背面にボルト固定されるようになっている。従って、アップライトピアノ18が底板部12に載置された状態で転倒防止装置10がアップライトピアノ18に対して固定的に装着されるようになっている。更に、本実施形態では、底板部12がアップライトピアノ18の前端よりも前方に突出せしめられるようになっている。
【0070】
これにより、アップライトピアノ18に対して前方への転倒を促すモーメントが作用せしめられた場合には、転倒防止装置10の前端部分によって該モーメントに対する抗力が補強されて、アップライトピアノ18の前方への転倒を有効に防ぐことが可能となっているのである。
【0071】
また、本実施形態に従う構造とされた転倒防止装置10は、互いに独立して突出高さ寸法が異なる第一竪板部14と第二竪板部16を有しており、それらの竪板部14,16によって転倒防止装置10がアップライトピアノ18に対して固定されるようになっている。また、それら第一竪板部14と第二竪板部16は、互いに異なる剛性を有しており、変形許容部22を備えることにより個別のピアノ形状へ対応した追従的な変形を許容される第一竪板部14と、底板部12から直接的に上方に向かって屈曲せしめられて、第一竪板部14よりも高い剛性を備えた第二竪板部16の協働によって、アップライトピアノ18の転倒をより有利に防止することが可能とされている。特に本実施形態では、第一竪板部14と第二竪板部16がそれぞれ独立形成されていることにより、高さや形状が異なる第一竪板部14と第二竪板部16を容易に形成することが出来るようになっている。
【0072】
さらに、第一竪板部14がアップライトピアノ18の幅方向両端部に位置せしめられることにより、突出高さ寸法の大きい第一竪板部14をアップライトピアノ18の背面において幅方向両端部を高さ方向に延びる柱状の部材(略鉛直方向に延びる支柱40)に固定することが出来る。それ故、第一竪板部14を高さ寸法に関らずアップライトピアノ18に対して有利に固定することが出来る。従って、第一竪板部14の高さ寸法を充分に大きく設定して、前後方向での転倒を生ぜしめるモーメントを安定して転倒防止装置10に伝達せしめることが可能となっている。また、第二竪板部16が第一竪板部14よりも幅方向内側に位置せしめられていることにより、第一竪板部14よりも突出高さ寸法の小さい第二竪板部16は、アップライトピアノ18の背面において下端部を幅方向に延びる梁状の部材(水平方向に延びる土台42)に固定することが出来るようになっている。これにより、転倒防止装置10の取付位置が左右方向で誤差を生じる場合にも、第二竪板部16をアップライトピアノ18に安定して固定することが出来る。
【0073】
ここにおいて、第一竪板部14の突出高さ寸法が、第二竪板部16の突出高さ寸法に比して大きくされていることにより、第一竪板部14とアップライトピアノ18の背面との隙間が、第二竪板部16とアップライトピアノ18の背面との隙間に比して大きくなり易い。そこで、本実施形態に従う構造とされた転倒防止装置10においては、第一竪板部14の基端部に変形許容部22を設けることにより、第一竪板部14の底板部12に対する傾斜角度を調節可能としている。そして、底板部12と第一竪板部14が為す角を、アップライトピアノ18の底面と背面が為す角と略等しくなるように調節することにより、第一竪板部14がアップライトピアノ18の背面に対して密着せしめられるようになっており、アップライトピアノ18の個体差(特に、底面と背面の傾斜角度の違い)に関らず、安定して所期の装着状態を実現できるようになっている。
【0074】
また、本実施形態に係る転倒防止装置10は、金属板をプレス加工等することによって形成されており、底板部12がアップライトピアノ18の設置床面に対して略密着せしめられるようになっていると共に、第一竪板部14および第二竪板部16がアップライトピアノ18の後面に密着せしめられるようになっている。これにより、転倒防止装置10は、アップライトピアノ18への装着状態下において、金属板の厚さ方向に略直交する方向で外部から看取されるようになっており、特に図8に示されているように側面形状が主に看取されるようになっている。これにより、アップライトピアノ18への装着状態における転倒防止装置10の視認面積(投影面積)が小さくなっており、転倒防止装置10の装着によって、アップライトピアノ18の装飾性が損なわれることを回避し、更には、装飾物としての価値の向上をも図ることが出来得る。
【0075】
さらに、底板部12は、その長さ方向中間部分で幅寸法が変化せしめられており、アップライトピアノ18の下端部(脚部)の底面形状と略対応する平面形状を呈している。それ故、底板部12は、その受圧面積を十分に大きく確保しつつ、アップライトピアノ18の載置状態での平面視において、アップライトピアノ18の脚部を縁取るように看取されるのであって、アップライトピアノ18の外観をより美しく見せることが出来る。要するに、本実施形態に従う構造の転倒防止装置10では、耐震性能の向上を図りつつ、アップライトピアノ18の室内装飾品としての美しさをより有利に発揮せしめることが可能とされているのである。
【0076】
また、第二竪板部16の背面に調整型接地機構26を配設することにより、アップライトピアノ18が直接載せられてアップライトピアノ18の重量によって床面に押し付けられる左右方向(幅方向)外側に比して、床面からの浮き上がりが問題となり易い左右方向内側の接地状態を調整型接地機構26によって調整することが可能となる。それ故、転倒防止装置10を介するアップライトピアノ18の床面への接地状態を安定させることが出来て、転倒防止効果をより有利に得ることが可能となる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0078】
例えば、前記実施形態においては、第一竪板部14と第二竪板部16を備えた転倒防止装置10が示されているが、第二竪板部16はなくても良く、図10,11に示されている転倒防止装置44のように、第一竪板部14と底板部12で構成されていても良い。また、三つ以上の竪板部を備えていても良い。この場合には、それら複数の竪板部の形状や剛性を異ならせることにより、より有利に転倒防止効果を発揮させることが可能となり得る。
【0079】
また、底板部12の平面形状は、前記実施形態における具体的な記載によって何等限定されるものではない。具体的には、例えば、前後方向の中間部分で幅方向寸法が変化しない矩形形状の平面とされていても良い。これによれば、より単純な形状の底板部を採用することにより、より生産性に優れた転倒防止装置を実現することが可能となり得る。
【0080】
また、変形許容部22の形状は、前記実施形態において具体的に示された形状によって限定されるものではない。具体的には、例えば、円弧状断面を呈するように湾曲せしめられていても良い。
【0081】
さらに、底板部12の後端部は、必ずしもアップライトピアノ18の後面よりも後方に突出せしめられていなくても良い。具体的には、例えば、アップライトピアノ18の後面と底板部の後端が同一平面上に位置せしめられるようになっていても良く、かかる底板部の後端から後方に向かって突出するように変形許容部が形成されていても良い。
【0082】
また、第一竪板部14や第二竪板部16は、何れも底板部12の後端に設けられている必要はなく、底板部12の前後方向中間部分に溶接等の手段によって固着されて、取り付けられていても良い。これによれば、底板部12の後端がアップライトピアノ18の後ろ側のキャスタ位置よりも後方に突出させられることから、後方への転倒を有効に防ぐことが可能となる。
【0083】
また、前記実施形態に示されているように、底板部12を床面に対して安定して設置するためには、調整型接地機構26が設けられていることが望ましいが、調整型接地機構26は必須ではなく、なくても良い。更に、調整型接地機構の構造は、前記実施形態の具体的な記載によって何等限定されるものではない。
【0084】
また、前記実施形態では、底板部12と第一,第二竪板部14,16が、単一の金属板によって一体形成されている例を示したが、底板部12と第一竪板部14,第二竪板部16は、それぞれ別部材として形成されていても良い。なお、それら底板部12と第一竪板部14と第二竪板部16が、それぞれ別体形成された部材とされている場合には、第一竪板部14と第二竪板部16を底板部12に対して、例えば、溶接やボルト固定等によって固着せしめることにより、転倒防止装置を構成することが出来る。具体的には、例えば、図12,13に示されている転倒防止装置46のように、第一竪板部14および第二竪板部16の下端縁部が前方に折り返されており、かかる折り返し部分が底板部12に重ね合わされて溶接やボルト止めされることにより、構成することも可能である。また、その他にも、例えば、図14,15に示されている転倒防止装置48のように、第一竪板部14と第二竪板部16の下端部が下方に向かってストレートに延び出しており、下端縁部が底板部12の上面に突き合わされて、底板部12に対して溶接によって固着されることにより、構成することも出来る。
【0085】
また、前記実施形態においては、アップライトピアノ18の両端部に対して左右一対の転倒防止装置10を装着するようになっていたが、例えば、前記実施形態で示された一対の転倒防止装置10が相互に連結された構造を有する転倒防止装置を採用して、一つの転倒防止装置の底板部上にアップライトピアノ18の四つのキャスタが載せられるようになっていても良い。
【0086】
また、アップライトピアノ18を、底板部12に対して固定するボルトや適当な形状の固定金具を採用することも可能である。これにより、アップライトピアノ18の接地点を底板部12に対して一層強固に当接状態に保持せしめて、安定性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0087】
更にまた、アップライトピアノ18の底板部12に対する接地部構造は、例示の如きキャスタ部分に限定されるものでない。具体的には、例えば、キャスタを外して底板部12に接地したり、或いは、底板部12においてキャスタに対応する位置に凹所や貫通孔を形成してキャスタを底板部12内に収容状態としても良い。これにより、アップライトピアノ18の底板部12に対する接地面積の向上と、それに伴う密着強度の向上、安定性の向上などを図ることが可能となる。
【0088】
また、転倒防止装置の床面への設置構造としては、床面に対して転倒防止装置を載置するだけでなく、転倒防止装置を家屋等の床面に対して固定するための固定手段等を併せて採用することも出来る。具体的には、例えば、図16に示す転倒防止装置50のように、底板部52における前端縁部や第一竪板部14側の後端部付近などに貫通孔54を形成して、かかる貫通孔54に挿通されるボルトや木ねじ等によって、底板部52を床面に固定することも可能である。なお、図16に示されている貫通孔54の形成位置は、あくまでも例示であって、設置されるピアノや家屋の床面等の構造等に応じて適宜に設定される。また、貫通孔54の形成数も、あくまでも例示であって、三つ以上の貫通孔54を設けてそれぞれに挿通されるボルト等によって床面に固定することにより、転倒防止装置のより強固且つ安定した設置を実現することも可能であるし、一つの貫通孔54に挿通されるボルト等によって簡易に位置決め固定を実現することも出来る。また、固定手段としては、必ずしもボルトや木ねじの螺着による固定でなくても良く、床面に対して予め挿込穴を形成して、係る挿込穴に対して貫通孔54に挿通されるロッド状の部材を挿し入れることによって、床面に平行な方向での移動を阻止する位置決め固定を主眼とした構造や、釘や接着等による簡便な固定構造であっても良い。更には、挿し込みによって抜出方向でロックされる構造を挿し入れられるロッド状の部材と挿込穴に設けても良い。
【0089】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態としての転倒防止装置を示す正面図。
【図2】同転倒防止装置の背面図。
【図3】同転倒防止装置の右側面図。
【図4】同転倒防止装置の左側面図。
【図5】同転倒防止装置の平面図。
【図6】同転倒防止装置の底面図。
【図7】同転倒防止装置の図5におけるVII−VII線断面図。
【図8】同転倒防止装置のアップライトピアノへの装着状態を示す右側面図。
【図9】同転倒防止装置のアップライトピアノへの装着状態を示す背面図。
【図10】本発明の別の一実施形態としての転倒防止装置を示す正面図。
【図11】同転倒防止装置の平面図。
【図12】本発明のまた別の一実施形態としての転倒防止装置を示す右側面図。
【図13】同転倒防止装置の左側面図。
【図14】本発明の更に別の一実施形態としての転倒防止装置を示す右側面図。
【図15】同転倒防止装置の左側面図。
【図16】本発明の更にまた別の一実施形態としての転倒防止装置を示す平面図。
【符号の説明】
【0091】
10 転倒防止装置、12 底板部、14 第一竪板部、16 第二竪板部、18 アップライトピアノ、22 変形許容部、26 調整型接地機構、30 アジャスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部を有しており、該底板部に竪型鍵盤楽器が載置されるようになっていると共に、該底板部から上方に突出する第一竪板部が設けられて、該第一竪板部が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器の後面に固定されるようになっており、更に、該第一竪板部の下端部には、該第一竪板部に固定される竪型鍵盤楽器の後面よりも後方に突出するように曲げられた取付角度対応機能部が設けられていることを特徴とする竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項2】
前記底板部と前記第一竪板部が単一の金属板によって一体形成されている請求項1に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項3】
前記底板部の前端が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器における接地部の前端よりも前方に突出するようになっている請求項1又は2に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項4】
前記底板部の後端が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器における接地部の後端よりも後方に突出するようになっている請求項1乃至3の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項5】
前記第一竪板部が前記底板部の後端から上方に突出せしめられている請求項1乃至4の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項6】
前記第一竪板部と独立形成されて該第一竪板部と並立するようにして前記底板部から上方に突出せしめられる第二竪板部を有しており、該第二竪板部が竪型鍵盤楽器の後面に固定されるようになっている請求項1乃至5の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項7】
前記第二竪板部が前記底板部に載置される竪型鍵盤楽器の幅方向で前記第一竪板部よりも中央側に位置するようになっている請求項6に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項8】
前記第二竪板部と前記底板部が単一の金属板によって一体形成されている請求項6又は7に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項9】
前記第二竪板部の突出高さ寸法が前記第一竪板部の突出高さ寸法に比して小さくされている請求項6乃至8の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項10】
前記第二竪板部の後面には、接地面の高さを調整できる接地部材を備えた調整型接地機構が設けられている請求項6乃至9の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項11】
前記第1乃至第10の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置の一対を用いて、それら一対の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置を竪型鍵盤楽器に対して左右独立にセットして、各該竪型鍵盤楽器用転倒防止装置における前記第一竪板部を該竪型鍵盤楽器の背面に固定したことを特徴とする竪型鍵盤楽器の設置構造。
【請求項1】
底板部を有しており、該底板部に竪型鍵盤楽器が載置されるようになっていると共に、該底板部から上方に突出する第一竪板部が設けられて、該第一竪板部が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器の後面に固定されるようになっており、更に、該第一竪板部の下端部には、該第一竪板部に固定される竪型鍵盤楽器の後面よりも後方に突出するように曲げられた取付角度対応機能部が設けられていることを特徴とする竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項2】
前記底板部と前記第一竪板部が単一の金属板によって一体形成されている請求項1に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項3】
前記底板部の前端が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器における接地部の前端よりも前方に突出するようになっている請求項1又は2に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項4】
前記底板部の後端が該底板部に載置される竪型鍵盤楽器における接地部の後端よりも後方に突出するようになっている請求項1乃至3の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項5】
前記第一竪板部が前記底板部の後端から上方に突出せしめられている請求項1乃至4の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項6】
前記第一竪板部と独立形成されて該第一竪板部と並立するようにして前記底板部から上方に突出せしめられる第二竪板部を有しており、該第二竪板部が竪型鍵盤楽器の後面に固定されるようになっている請求項1乃至5の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項7】
前記第二竪板部が前記底板部に載置される竪型鍵盤楽器の幅方向で前記第一竪板部よりも中央側に位置するようになっている請求項6に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項8】
前記第二竪板部と前記底板部が単一の金属板によって一体形成されている請求項6又は7に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項9】
前記第二竪板部の突出高さ寸法が前記第一竪板部の突出高さ寸法に比して小さくされている請求項6乃至8の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項10】
前記第二竪板部の後面には、接地面の高さを調整できる接地部材を備えた調整型接地機構が設けられている請求項6乃至9の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置。
【請求項11】
前記第1乃至第10の何れか一項に記載の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置の一対を用いて、それら一対の竪型鍵盤楽器用転倒防止装置を竪型鍵盤楽器に対して左右独立にセットして、各該竪型鍵盤楽器用転倒防止装置における前記第一竪板部を該竪型鍵盤楽器の背面に固定したことを特徴とする竪型鍵盤楽器の設置構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−298845(P2007−298845A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127966(P2006−127966)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(506151316)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(506151316)
【Fターム(参考)】
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