端子台の端子を短絡するための短絡板
【課題】短絡板の一部を切断した時に、強度を低下させることなく、切断面の露出を防止することのできる手段を提供する。
【解決手段】複数の腕部を有する短絡板本体20から腕部を切断したときに、切断面では導体が露出するので、短絡板本体20の絶縁コーティング層の上から絶縁キャップ25を被せることにより切断面を覆う。絶縁キャップ25の内周面には短絡板本体20の絶縁コーティング層との滑りを防止する滑り止め部材が設けられている。
【解決手段】複数の腕部を有する短絡板本体20から腕部を切断したときに、切断面では導体が露出するので、短絡板本体20の絶縁コーティング層の上から絶縁キャップ25を被せることにより切断面を覆う。絶縁キャップ25の内周面には短絡板本体20の絶縁コーティング層との滑りを防止する滑り止め部材が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子が配列された端子台において、所定の端子に接続することにより当該所定の端子を短絡する短絡板に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等の施設には、当該施設で取り扱う液体や気体の流量制御や濃度管理等を行うために流量センサ、濃度計など様々な計器等が設けられている。これら各計器等には入力配線、出力配線等の通信配線や電源等の接続配線、接地線、コモン線等、複数の配線が接続されている。
【0003】
計器等に接続される配線は、制御盤と呼ばれる筐体に集められる。制御盤に集められた配線は電源等の接続配線や制御演算処理装置との通信配線等に分配され、その後にこれらの配線を施設に直接設置されている各計器等へ接続することが一般的に行われている。また、計器類の仕様変更、制御方法の変更等などにより配線の変更が必要になった際に、配線の接続追加及び変更を効率的に行うための器具として、制御盤には複数の端子が設けられた端子台が取り付けられている。
【0004】
図10に端子台を例示する。端子台1には所定間隔で複数の端子2が直線状に配列されており、隣り合う端子は絶縁されていて導通が遮断されている。さらに、この端子の列(以下、端子列と呼ぶ)は2列並んで配置されており、一方の端子列の端子2とこれに対向する端子3とは導通されている。また、導体である端子2、3の露出を防ぐため、端子2および端子3はプラスチック等の絶縁材料からなるカバー4で覆われている。
【0005】
計器等や制御演算処理装置等への配線接続は端子台1を介して行われる。すなわち、一方の端子列の任意の端子2に計器等と接続する配線を接続し、他方の端子列のうち、配線が接続された端子2に対向する端子3に制御演算処理装置等や電源等と接続する配線を接続する。上述した通り、一方の端子列の端子2とこれに対向する端子3とは導通されているので、各端子に接続された配線は端子2と端子3を介して導通する。
【0006】
ここで、端子列内に電源等に接続する端子や接地する端子等が複数ある場合、端子ごとに電源の配線や接地線を接続しないで、共通する電源や、接地線の端子同士をまとめて短絡させる場合がある。このように端子列内の端子同士を短絡させる作業を「渡り」と呼び、この渡りにおいては端子列内の複数の端子を短絡できるようにするために、短絡板と呼ばれる配線材料が従来から使用されている。
【0007】
短絡板は「渡り金具」または「ショートバー」とも呼ばれ、端子台の配線材料として市販され、または、配線作業の現場で製作もされている。例えば、特許文献1においては櫛型の形状をした導体からなる短絡板が開示されている。この短絡板は、櫛の柄に当たる基体部と、櫛の歯に当たる部分であって基体部から垂直に複数本延びる腕部と、を備えている。さらに、各腕部の先端には端子台の端子に固定される固定端が設けられている。
【0008】
短絡板を端子台の端子に取り付ける際には、短絡板の腕部のうち端子台の短絡する端子(以下、短絡端子と呼ぶ)に対応する腕部のみを残し、短絡しない端子に対応する腕部はニッパ等の切断工具により基体部から絶縁コーティング層ごと切断する。これにより、短絡板の形状が短絡端子の位置や数に適合するものとなる。さらに、切断処理を終えた短絡板の固定端を各短絡端子に固定することにより、各短絡端子が導通する。
【0009】
図11に端子台の端子に配線および短絡板を固定したときの様子を例示する。配線5は端子台1の端子2A、2B、2C、2E、3Bに固定されている。ここで、配線の末端部が導体からなる圧着端子8から構成されている場合、この圧着端子8の露出を防ぐために当該圧着端子8には絶縁スリーブ10が装着される。
【0010】
また、短絡板107は端子台1の短絡端子3A、3C、3Eに固定されている。ここで、短絡板107の部分のうち導体からなる固定端114の露出を防ぐために、絶縁コーティング層116が端子台1のカバー4と重なる位置まで延びている。
【0011】
ここで、短絡板107の腕部114のうち、短絡しない端子に対応する腕部114が切断されると、切断面117から導体115が露出してしまう。通常、配線変更を行う際には施設の電源を落としてから行うが、不注意により電源が入った状態で作業者が端子台にアクセスし、露出された導体115に触れてしまうと、感電するおそれがある。そこで、特許文献1に開示された短絡板においては、基体部から腕部を切断するに当たり、腕部の部分のうち絶縁コーティング層に覆われた基体部側に切り込み(カッティングライン)を設け、この切り込みから腕部を折り切るようにしている。切り込みに沿って腕部を折り切った後、折り切った腕部を絶縁コーティング層から引き抜くことで、切断面は絶縁コーティング層に覆われるので切断面の露出を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−110868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、折り切りできるような切り込みを設けると、その部分の強度が低くなる。その結果、短絡板に不測の衝撃が加えられた際に腕部が切り込みから折れて導通が遮断されるという別の問題が生じる。さらに、切り込みは絶縁コーティング層の内部に設けられているため、不足の衝撃により腕部が折り切られても外部からは折り切られたことが判らないという問題もある。
【0014】
そこで本発明は短絡板の強度を低下させることなく、切断面の露出を防止することのできる短絡板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る発明は、端子台の所定の端子を短絡する短絡板に関するものである。この短絡板は、端子台に所定間隔で直線状に配列された複数の端子と平行に伸張するように配置される基体部と、基体部から端子台の各端子に向かって延びる複数の腕部と、各腕部の先端に設けられ、端子台の端子に固定するための固定端とを備えている。さらに、基体部および各腕部には絶縁コーティング層が被覆されている。この短絡板は、端子台の端子のうち、短絡しない端子に対応する腕部を基体部から切断した際に、基体部に形成される切断面を覆うための絶縁キャップを備えている。絶縁キャップには、絶縁コーティング層の上から基体部に装着され、絶縁コーティング層と接する面には絶縁コーティング層との滑りを防止する滑り止め部材が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、短絡板に形成された切断面を覆うために、当該切断面に絶縁キャップを被せる。この絶縁キャップには滑り止め部材が設けられており、切断面に被せた絶縁キャップがずれて切断面が露出することを防いでいる。したがって、短絡板の強度を弱める様な加工を施すことなく、切断面の露出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における短絡板本体と絶縁キャップの構成を例示する図である。
【図2】絶縁キャップの側面図である。
【図3】本発明の実施形態における短絡板を端子台に接続する過程を説明する図である。
【図4】短絡板本体を例示する図である。
【図5】短絡板本体に絶縁キャップを装着させたときの斜視図である。
【図6】短絡板本体に絶縁キャップを装着させたときの断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る短絡板を端子台に接続させたときの図である。
【図8】本発明の実施形態に係る短絡板を端子台に接続させたときの別の図である。
【図9】絶縁キャップの他の態様を説明する図である。
【図10】端子台を例示する図である。
【図11】端子台に従来の短絡板が接続された状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、本実施形態に係る短絡板7を示す。この短絡板7は、短絡板本体20と、短絡板本体20に形成される切断面を覆うための絶縁キャップ25を含む。
【0019】
短絡板本体20は櫛形状をしており、櫛の柄に当たる基体部12と櫛の歯に当たる複数の腕部14A〜Dとから構成されている。短絡板本体20が端子台1(図10参照)に取り付けられたときには、基体部12は端子台1上に直線状に配列された端子2の列および端子3の列と平行に伸長するように配置されるとともに、基体部12から端子台1の各端子2、3に向かって腕部14A〜Dが延びている。各腕部14A〜Dは、端子2、3の配列ピッチと同じピッチで配列され、その先端の固定端13が端子台1の各端子2、3に固定される。なお、図1には短絡板本体20に4本の腕部14A〜Dが設けられているが、本数はこれに限られない。また、図1に示す固定端13は先端が開いたY型端子であるが、この態様に限られず、先端が閉じた丸型の端子であっても良い。
【0020】
基体部12、腕部14はともに導体15と、導体15に被覆された絶縁コーティング層16から構成されている。また、固定端13は導体15から構成され、絶縁コーティング層16は被覆されていない。導体15は黄銅ニッケルメッキ、電気すずメッキ等から構成されており、絶縁コーティング層16は塩化ビニル、ナイロン等から構成されている。また、基体部12は円柱形状、腕部14は平板形状をしており、基体部12の断面積が腕部14の断面積よりも大きくなるように形成されている。なお、後述する図7に示すように、固定端13の長さ(腕部14の延伸方向に沿った長さ)は端子台1のカバー4よりも短く構成されている。したがって、固定端13を端子台1の端子2、3に固定すると、腕部14の絶縁コーティング層16の端部が端子台1のカバー4と重なるように配置され、固定端13の露出が防止される。
【0021】
図1に戻り、絶縁キャップ25は切り欠き35が形成されることにより断面がC字状となった円筒形状のリング部材36を備えている。リング部材36の中心軸方向の長さは、腕部14の幅よりも長く、所定の一個の腕部14の両側にある二個の腕部14間の距離(例えば図1では腕部14Aと14Cとの距離)よりも短くなるように、形成されている。また、リング部材36の直径は基体部12の直径よりもひと回り大きくなるように形成されている。さらに、リング部材36は絶縁性を有するとともに、リング部材36の形状が変形可能な弾性を備えた樹脂等の材料から構成されている。
【0022】
また図2に示すように、リング部材36の内周面には基体部12の絶縁コーティング層16との滑りを防止する円錐形状の針状突起37が備えられている。針状突起37は、絶縁コーティング層16よりも硬い材料であれば良く、リング部材36の材料として絶縁コーティング層16よりも硬い材料を使用する場合には、リング部材36と針状突起37とは一体的に形成することができる。
【0023】
さらに、リング部材36の外周面は油性ペン等の筆記具で文字の記入が可能となっており、短絡板7の配線番号を書き込むことができるようになっている。
【0024】
以上、短絡板7を構成する短絡板本体20と絶縁キャップ25の構成について説明した。次に、短絡板7を端子台1に固定する過程について説明する。
【0025】
図3に、配線5が接続された端子台1を示す。端子台1の各端子2、3はその露出を防ぐために絶縁体からなるカバー4で覆われている。端子台1の端子2の列には、接地線5A、5C、5Dがそれぞれ短絡端子2A、2C、2Dに固定され、入力線5Bが端子2Bに固定されている。また、端子2Bに対向する端子3Bには、入力線5Bから送られた信号を演算処理回路まで中継する中継線5Eが固定されている。ここで、接地線5A、5C、5D、および入力線5B、中継線5Eの圧着端子8は絶縁スリーブ10に覆われている。絶縁スリーブ10は各配線の絶縁被覆から端子台1のカバー4までの長さを有しており、圧着端子8の露出を防止している。
【0026】
接地線5A、5C、5Dを互いに導通させるために、接地線5A、5C、5Dが固定された短絡端子2A、2C、2Dに対向する短絡端子3A、3C、3Dを短絡板7により接続する。短絡板本体20は、これらの短絡端子3A、3C、3Dに対応する腕部14A、14C、14Dを残す一方で、端子3Bに対応する腕部14Bをニッパ等の切断工具により、腕部14Bの基体部12側から切断する。切断後の短絡板本体20を図4に示す。基体部12の腕部14Bが切断された箇所には切断面17が形成され、切断面17には絶縁コーティング層16から導体15が露出する。
【0027】
次に、図5に示すように基体部12に形成された切断面17を絶縁キャップ25で覆う。上述したように、絶縁キャップ25のリング部材36は弾性を有しており、基体部12上にリング部材36の切り欠き35を合わせてリング部材36を基体部12に押し付けると、リング部材36は切り欠き35から押し広げられ、その内側に基体部12を受け入れる。この結果、絶縁キャップ25が基体部12に巻きついた状態(図5参照)となる。この過程で図6に示すようにリング部材36の内周面に形成された針状突起37が基体部12の絶縁コーティング層16に刺さり、絶縁キャップ25の基体部12からの滑り、つまり、基体部12の中心軸方向のスライド移動及び基体部12の円周方向の回転移動を防止する。このように、基体部12の切断面17に対応する箇所に絶縁キャップ25を被せることで切断面17の露出が防止される。
【0028】
図7に示すように、絶縁キャップ25が装着された短絡板本体20の腕部14A、14C、14Dの各固定端13を、端子台1の短絡端子3A、3C、3Dに固定する。これにより、各短絡端子3A、3C、3Dが短絡される。なお、図7では本実施形態に係る短絡板7の構成の理解を容易にするため、端子3Bに接続された中継線5Eの図示を省略している。
【0029】
図7に示されるように、短絡板本体20の固定端13の長さは端子台1のケース4よりも短いので、固定端13の露出が防止される。さらに、短絡板本体20の切断面17には絶縁キャップ25が装着されているため、切断面17からの導体15の露出を防ぐことができる。この結果、端子台1周辺で導通されている導体(つまり、作業者が触れると感電のおそれのある導体)はすべて絶縁体により保護される。
【0030】
本実施形態における短絡板7は、前述した従来技術のように導体に切り込み(カッティングライン)を設けていないので、短絡板本体20の強度を弱めることなく、切断面の露出を防止できる。さらに、絶縁キャップ25の針状突起37が絶縁キャップ25の基体部12に対する滑りを防いでいるので、絶縁キャップ25装着後の基体部12から切断面17が再度露出することを防ぐことができる。
【0031】
最後に、絶縁キャップ25の外周面に短絡板7の配線番号を記入する。これにより配線図との照合が可能となり、配線ミスの防止につながる。
【0032】
なお、絶縁キャップ25のリング部材36の内周面に設けられた円錐形状の針状突起37の個数は、1個であっても複数個であっても良い。また、針状突起37を円錐形状とする代わりに、絶縁キャップ25の一方の側面から他方の側面まで連続して延伸させた断面が扇形の柱体としてもよい。さらに、針状突起37の代わりに、絶縁キャップ25が基体部12から滑ることを防ぐ他の滑り止め部材を使用してもよい。例えば、リング部材36の内周面に摩擦係数の高い粗面や凹凸面を形成したり、粘着剤を塗布しても良い。
【0033】
なお、本実施形態に係る腕部14には切り込み等強度を低下させる加工が施されていないため、腕部14を多少曲げても腕部14が折り切られることがない。したがって、短絡板本体20の腕部14の間隔が端子台1の端子45及び46の列の間隔と異なっている場合、図8に示すように腕部14を曲げて短絡板本体の腕部14の間隔を変えることによって、端子45、46の列の間隔に適合させることができる。このように、本実施形態における短絡板本体20は、もともとの腕部14の配置間隔と端子台1の端子45、46の配置間隔が異なっている場合にも、腕部14を曲げることで端子台1の端子の配置間隔に対応させることができる。
【0034】
さらに、従来技術における切り込みのある短絡板7は腕部14を曲げて端子台1の端子に固定させることは想定しておらず、腕部14の長さは3mm程度で、ほとんど曲げることのできない長さであったが、本実施形態に係る短絡板本体20の腕部14の長さは曲げ幅を増やすために腕部14の長さを15mmとしている。腕部14の長さを従来の短絡板の腕部より長くすることで、様々な端子間隔の端子台1に柔軟に対応することができる。
【0035】
なお、腕部14を曲げるときに、つられて基体部12まで曲がることを防止するため、図1に示すように基体部12を腕部14よりも太くし、基体部12の剛性を高めている。なお、図1では基体部12の形状を円柱状とし、この形状に沿うように絶縁キャップ25のリング部材36の形状を断面C字の円筒状とした。基体部12を腕部14より剛性を高めるため、基体部12の形状を腕部14よりも断面積の大きい平板形状とすることも可能である。その場合には、図9に示すように基体部12の形状に沿った断面が長方形のリング部材40を備えた絶縁キャップ25が使用される。リング部材40の断面を長方形にすることで、断面が円筒形状のリング部材36と比較して外周面に配線番号を書き込むことが容易になる。
【符号の説明】
【0036】
1 端子台、2 端子、3 対向する端子、4 カバー、5 配線、7 短絡板、8 圧着端子、10 絶縁スリーブ、12 基体部、13 固定端、14 腕部、15 導体、16 絶縁コーティング層、17 切断面、20 短絡板本体、25 絶縁キャップ、35 切り欠き、36 リング部材、37 針状突起、107 短絡板、114 固定端、115 導体、116 絶縁コーティング層、117 切断面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子が配列された端子台において、所定の端子に接続することにより当該所定の端子を短絡する短絡板に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等の施設には、当該施設で取り扱う液体や気体の流量制御や濃度管理等を行うために流量センサ、濃度計など様々な計器等が設けられている。これら各計器等には入力配線、出力配線等の通信配線や電源等の接続配線、接地線、コモン線等、複数の配線が接続されている。
【0003】
計器等に接続される配線は、制御盤と呼ばれる筐体に集められる。制御盤に集められた配線は電源等の接続配線や制御演算処理装置との通信配線等に分配され、その後にこれらの配線を施設に直接設置されている各計器等へ接続することが一般的に行われている。また、計器類の仕様変更、制御方法の変更等などにより配線の変更が必要になった際に、配線の接続追加及び変更を効率的に行うための器具として、制御盤には複数の端子が設けられた端子台が取り付けられている。
【0004】
図10に端子台を例示する。端子台1には所定間隔で複数の端子2が直線状に配列されており、隣り合う端子は絶縁されていて導通が遮断されている。さらに、この端子の列(以下、端子列と呼ぶ)は2列並んで配置されており、一方の端子列の端子2とこれに対向する端子3とは導通されている。また、導体である端子2、3の露出を防ぐため、端子2および端子3はプラスチック等の絶縁材料からなるカバー4で覆われている。
【0005】
計器等や制御演算処理装置等への配線接続は端子台1を介して行われる。すなわち、一方の端子列の任意の端子2に計器等と接続する配線を接続し、他方の端子列のうち、配線が接続された端子2に対向する端子3に制御演算処理装置等や電源等と接続する配線を接続する。上述した通り、一方の端子列の端子2とこれに対向する端子3とは導通されているので、各端子に接続された配線は端子2と端子3を介して導通する。
【0006】
ここで、端子列内に電源等に接続する端子や接地する端子等が複数ある場合、端子ごとに電源の配線や接地線を接続しないで、共通する電源や、接地線の端子同士をまとめて短絡させる場合がある。このように端子列内の端子同士を短絡させる作業を「渡り」と呼び、この渡りにおいては端子列内の複数の端子を短絡できるようにするために、短絡板と呼ばれる配線材料が従来から使用されている。
【0007】
短絡板は「渡り金具」または「ショートバー」とも呼ばれ、端子台の配線材料として市販され、または、配線作業の現場で製作もされている。例えば、特許文献1においては櫛型の形状をした導体からなる短絡板が開示されている。この短絡板は、櫛の柄に当たる基体部と、櫛の歯に当たる部分であって基体部から垂直に複数本延びる腕部と、を備えている。さらに、各腕部の先端には端子台の端子に固定される固定端が設けられている。
【0008】
短絡板を端子台の端子に取り付ける際には、短絡板の腕部のうち端子台の短絡する端子(以下、短絡端子と呼ぶ)に対応する腕部のみを残し、短絡しない端子に対応する腕部はニッパ等の切断工具により基体部から絶縁コーティング層ごと切断する。これにより、短絡板の形状が短絡端子の位置や数に適合するものとなる。さらに、切断処理を終えた短絡板の固定端を各短絡端子に固定することにより、各短絡端子が導通する。
【0009】
図11に端子台の端子に配線および短絡板を固定したときの様子を例示する。配線5は端子台1の端子2A、2B、2C、2E、3Bに固定されている。ここで、配線の末端部が導体からなる圧着端子8から構成されている場合、この圧着端子8の露出を防ぐために当該圧着端子8には絶縁スリーブ10が装着される。
【0010】
また、短絡板107は端子台1の短絡端子3A、3C、3Eに固定されている。ここで、短絡板107の部分のうち導体からなる固定端114の露出を防ぐために、絶縁コーティング層116が端子台1のカバー4と重なる位置まで延びている。
【0011】
ここで、短絡板107の腕部114のうち、短絡しない端子に対応する腕部114が切断されると、切断面117から導体115が露出してしまう。通常、配線変更を行う際には施設の電源を落としてから行うが、不注意により電源が入った状態で作業者が端子台にアクセスし、露出された導体115に触れてしまうと、感電するおそれがある。そこで、特許文献1に開示された短絡板においては、基体部から腕部を切断するに当たり、腕部の部分のうち絶縁コーティング層に覆われた基体部側に切り込み(カッティングライン)を設け、この切り込みから腕部を折り切るようにしている。切り込みに沿って腕部を折り切った後、折り切った腕部を絶縁コーティング層から引き抜くことで、切断面は絶縁コーティング層に覆われるので切断面の露出を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−110868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、折り切りできるような切り込みを設けると、その部分の強度が低くなる。その結果、短絡板に不測の衝撃が加えられた際に腕部が切り込みから折れて導通が遮断されるという別の問題が生じる。さらに、切り込みは絶縁コーティング層の内部に設けられているため、不足の衝撃により腕部が折り切られても外部からは折り切られたことが判らないという問題もある。
【0014】
そこで本発明は短絡板の強度を低下させることなく、切断面の露出を防止することのできる短絡板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る発明は、端子台の所定の端子を短絡する短絡板に関するものである。この短絡板は、端子台に所定間隔で直線状に配列された複数の端子と平行に伸張するように配置される基体部と、基体部から端子台の各端子に向かって延びる複数の腕部と、各腕部の先端に設けられ、端子台の端子に固定するための固定端とを備えている。さらに、基体部および各腕部には絶縁コーティング層が被覆されている。この短絡板は、端子台の端子のうち、短絡しない端子に対応する腕部を基体部から切断した際に、基体部に形成される切断面を覆うための絶縁キャップを備えている。絶縁キャップには、絶縁コーティング層の上から基体部に装着され、絶縁コーティング層と接する面には絶縁コーティング層との滑りを防止する滑り止め部材が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、短絡板に形成された切断面を覆うために、当該切断面に絶縁キャップを被せる。この絶縁キャップには滑り止め部材が設けられており、切断面に被せた絶縁キャップがずれて切断面が露出することを防いでいる。したがって、短絡板の強度を弱める様な加工を施すことなく、切断面の露出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における短絡板本体と絶縁キャップの構成を例示する図である。
【図2】絶縁キャップの側面図である。
【図3】本発明の実施形態における短絡板を端子台に接続する過程を説明する図である。
【図4】短絡板本体を例示する図である。
【図5】短絡板本体に絶縁キャップを装着させたときの斜視図である。
【図6】短絡板本体に絶縁キャップを装着させたときの断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る短絡板を端子台に接続させたときの図である。
【図8】本発明の実施形態に係る短絡板を端子台に接続させたときの別の図である。
【図9】絶縁キャップの他の態様を説明する図である。
【図10】端子台を例示する図である。
【図11】端子台に従来の短絡板が接続された状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、本実施形態に係る短絡板7を示す。この短絡板7は、短絡板本体20と、短絡板本体20に形成される切断面を覆うための絶縁キャップ25を含む。
【0019】
短絡板本体20は櫛形状をしており、櫛の柄に当たる基体部12と櫛の歯に当たる複数の腕部14A〜Dとから構成されている。短絡板本体20が端子台1(図10参照)に取り付けられたときには、基体部12は端子台1上に直線状に配列された端子2の列および端子3の列と平行に伸長するように配置されるとともに、基体部12から端子台1の各端子2、3に向かって腕部14A〜Dが延びている。各腕部14A〜Dは、端子2、3の配列ピッチと同じピッチで配列され、その先端の固定端13が端子台1の各端子2、3に固定される。なお、図1には短絡板本体20に4本の腕部14A〜Dが設けられているが、本数はこれに限られない。また、図1に示す固定端13は先端が開いたY型端子であるが、この態様に限られず、先端が閉じた丸型の端子であっても良い。
【0020】
基体部12、腕部14はともに導体15と、導体15に被覆された絶縁コーティング層16から構成されている。また、固定端13は導体15から構成され、絶縁コーティング層16は被覆されていない。導体15は黄銅ニッケルメッキ、電気すずメッキ等から構成されており、絶縁コーティング層16は塩化ビニル、ナイロン等から構成されている。また、基体部12は円柱形状、腕部14は平板形状をしており、基体部12の断面積が腕部14の断面積よりも大きくなるように形成されている。なお、後述する図7に示すように、固定端13の長さ(腕部14の延伸方向に沿った長さ)は端子台1のカバー4よりも短く構成されている。したがって、固定端13を端子台1の端子2、3に固定すると、腕部14の絶縁コーティング層16の端部が端子台1のカバー4と重なるように配置され、固定端13の露出が防止される。
【0021】
図1に戻り、絶縁キャップ25は切り欠き35が形成されることにより断面がC字状となった円筒形状のリング部材36を備えている。リング部材36の中心軸方向の長さは、腕部14の幅よりも長く、所定の一個の腕部14の両側にある二個の腕部14間の距離(例えば図1では腕部14Aと14Cとの距離)よりも短くなるように、形成されている。また、リング部材36の直径は基体部12の直径よりもひと回り大きくなるように形成されている。さらに、リング部材36は絶縁性を有するとともに、リング部材36の形状が変形可能な弾性を備えた樹脂等の材料から構成されている。
【0022】
また図2に示すように、リング部材36の内周面には基体部12の絶縁コーティング層16との滑りを防止する円錐形状の針状突起37が備えられている。針状突起37は、絶縁コーティング層16よりも硬い材料であれば良く、リング部材36の材料として絶縁コーティング層16よりも硬い材料を使用する場合には、リング部材36と針状突起37とは一体的に形成することができる。
【0023】
さらに、リング部材36の外周面は油性ペン等の筆記具で文字の記入が可能となっており、短絡板7の配線番号を書き込むことができるようになっている。
【0024】
以上、短絡板7を構成する短絡板本体20と絶縁キャップ25の構成について説明した。次に、短絡板7を端子台1に固定する過程について説明する。
【0025】
図3に、配線5が接続された端子台1を示す。端子台1の各端子2、3はその露出を防ぐために絶縁体からなるカバー4で覆われている。端子台1の端子2の列には、接地線5A、5C、5Dがそれぞれ短絡端子2A、2C、2Dに固定され、入力線5Bが端子2Bに固定されている。また、端子2Bに対向する端子3Bには、入力線5Bから送られた信号を演算処理回路まで中継する中継線5Eが固定されている。ここで、接地線5A、5C、5D、および入力線5B、中継線5Eの圧着端子8は絶縁スリーブ10に覆われている。絶縁スリーブ10は各配線の絶縁被覆から端子台1のカバー4までの長さを有しており、圧着端子8の露出を防止している。
【0026】
接地線5A、5C、5Dを互いに導通させるために、接地線5A、5C、5Dが固定された短絡端子2A、2C、2Dに対向する短絡端子3A、3C、3Dを短絡板7により接続する。短絡板本体20は、これらの短絡端子3A、3C、3Dに対応する腕部14A、14C、14Dを残す一方で、端子3Bに対応する腕部14Bをニッパ等の切断工具により、腕部14Bの基体部12側から切断する。切断後の短絡板本体20を図4に示す。基体部12の腕部14Bが切断された箇所には切断面17が形成され、切断面17には絶縁コーティング層16から導体15が露出する。
【0027】
次に、図5に示すように基体部12に形成された切断面17を絶縁キャップ25で覆う。上述したように、絶縁キャップ25のリング部材36は弾性を有しており、基体部12上にリング部材36の切り欠き35を合わせてリング部材36を基体部12に押し付けると、リング部材36は切り欠き35から押し広げられ、その内側に基体部12を受け入れる。この結果、絶縁キャップ25が基体部12に巻きついた状態(図5参照)となる。この過程で図6に示すようにリング部材36の内周面に形成された針状突起37が基体部12の絶縁コーティング層16に刺さり、絶縁キャップ25の基体部12からの滑り、つまり、基体部12の中心軸方向のスライド移動及び基体部12の円周方向の回転移動を防止する。このように、基体部12の切断面17に対応する箇所に絶縁キャップ25を被せることで切断面17の露出が防止される。
【0028】
図7に示すように、絶縁キャップ25が装着された短絡板本体20の腕部14A、14C、14Dの各固定端13を、端子台1の短絡端子3A、3C、3Dに固定する。これにより、各短絡端子3A、3C、3Dが短絡される。なお、図7では本実施形態に係る短絡板7の構成の理解を容易にするため、端子3Bに接続された中継線5Eの図示を省略している。
【0029】
図7に示されるように、短絡板本体20の固定端13の長さは端子台1のケース4よりも短いので、固定端13の露出が防止される。さらに、短絡板本体20の切断面17には絶縁キャップ25が装着されているため、切断面17からの導体15の露出を防ぐことができる。この結果、端子台1周辺で導通されている導体(つまり、作業者が触れると感電のおそれのある導体)はすべて絶縁体により保護される。
【0030】
本実施形態における短絡板7は、前述した従来技術のように導体に切り込み(カッティングライン)を設けていないので、短絡板本体20の強度を弱めることなく、切断面の露出を防止できる。さらに、絶縁キャップ25の針状突起37が絶縁キャップ25の基体部12に対する滑りを防いでいるので、絶縁キャップ25装着後の基体部12から切断面17が再度露出することを防ぐことができる。
【0031】
最後に、絶縁キャップ25の外周面に短絡板7の配線番号を記入する。これにより配線図との照合が可能となり、配線ミスの防止につながる。
【0032】
なお、絶縁キャップ25のリング部材36の内周面に設けられた円錐形状の針状突起37の個数は、1個であっても複数個であっても良い。また、針状突起37を円錐形状とする代わりに、絶縁キャップ25の一方の側面から他方の側面まで連続して延伸させた断面が扇形の柱体としてもよい。さらに、針状突起37の代わりに、絶縁キャップ25が基体部12から滑ることを防ぐ他の滑り止め部材を使用してもよい。例えば、リング部材36の内周面に摩擦係数の高い粗面や凹凸面を形成したり、粘着剤を塗布しても良い。
【0033】
なお、本実施形態に係る腕部14には切り込み等強度を低下させる加工が施されていないため、腕部14を多少曲げても腕部14が折り切られることがない。したがって、短絡板本体20の腕部14の間隔が端子台1の端子45及び46の列の間隔と異なっている場合、図8に示すように腕部14を曲げて短絡板本体の腕部14の間隔を変えることによって、端子45、46の列の間隔に適合させることができる。このように、本実施形態における短絡板本体20は、もともとの腕部14の配置間隔と端子台1の端子45、46の配置間隔が異なっている場合にも、腕部14を曲げることで端子台1の端子の配置間隔に対応させることができる。
【0034】
さらに、従来技術における切り込みのある短絡板7は腕部14を曲げて端子台1の端子に固定させることは想定しておらず、腕部14の長さは3mm程度で、ほとんど曲げることのできない長さであったが、本実施形態に係る短絡板本体20の腕部14の長さは曲げ幅を増やすために腕部14の長さを15mmとしている。腕部14の長さを従来の短絡板の腕部より長くすることで、様々な端子間隔の端子台1に柔軟に対応することができる。
【0035】
なお、腕部14を曲げるときに、つられて基体部12まで曲がることを防止するため、図1に示すように基体部12を腕部14よりも太くし、基体部12の剛性を高めている。なお、図1では基体部12の形状を円柱状とし、この形状に沿うように絶縁キャップ25のリング部材36の形状を断面C字の円筒状とした。基体部12を腕部14より剛性を高めるため、基体部12の形状を腕部14よりも断面積の大きい平板形状とすることも可能である。その場合には、図9に示すように基体部12の形状に沿った断面が長方形のリング部材40を備えた絶縁キャップ25が使用される。リング部材40の断面を長方形にすることで、断面が円筒形状のリング部材36と比較して外周面に配線番号を書き込むことが容易になる。
【符号の説明】
【0036】
1 端子台、2 端子、3 対向する端子、4 カバー、5 配線、7 短絡板、8 圧着端子、10 絶縁スリーブ、12 基体部、13 固定端、14 腕部、15 導体、16 絶縁コーティング層、17 切断面、20 短絡板本体、25 絶縁キャップ、35 切り欠き、36 リング部材、37 針状突起、107 短絡板、114 固定端、115 導体、116 絶縁コーティング層、117 切断面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子台に所定間隔で直線状に配列された複数の端子と平行に伸張するように配置される基体部と、
基体部から端子台の各端子に向かって延びる複数の腕部と、
各腕部の先端に設けられ、端子台の端子に固定するための固定端と、
を備え、
基体部および各腕部には絶縁コーティング層が被覆された、
端子台の所定の端子を短絡する短絡板であって、
端子台の端子のうち、短絡しない端子に対応する腕部を基体部から切断した際に、基体部に形成される切断面を覆うための絶縁キャップを備え、
絶縁キャップは、
絶縁コーティング層の上から基体部に装着され、
絶縁コーティング層と接する面には絶縁コーティング層との滑りを防止する滑り止め部材が設けられた、
ことを特徴とする、短絡板。
【請求項1】
端子台に所定間隔で直線状に配列された複数の端子と平行に伸張するように配置される基体部と、
基体部から端子台の各端子に向かって延びる複数の腕部と、
各腕部の先端に設けられ、端子台の端子に固定するための固定端と、
を備え、
基体部および各腕部には絶縁コーティング層が被覆された、
端子台の所定の端子を短絡する短絡板であって、
端子台の端子のうち、短絡しない端子に対応する腕部を基体部から切断した際に、基体部に形成される切断面を覆うための絶縁キャップを備え、
絶縁キャップは、
絶縁コーティング層の上から基体部に装着され、
絶縁コーティング層と接する面には絶縁コーティング層との滑りを防止する滑り止め部材が設けられた、
ことを特徴とする、短絡板。
【図2】
【図9】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−159404(P2011−159404A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18063(P2010−18063)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
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