説明

端子台及び通電部材の支持構造

【課題】剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を支持する際の締付手段による締付けを容易にかつ適正に行なう。
【解決手段】端子台20は、ベース部材3に設置される台部材21と、剛性の高い第1の通電部材11を含む3つの通電部材11,12,13を台部材21に締付ける締付手段(締付用ボルト33及び埋込ナット30)とを備える。ベース部材3に台部材21を、ベース部材3に設けられた支持孔部3aと台部材21に設けられ取付軸部22との軸方向に移動可能な嵌合によってフローティング支持する。埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付けにともない、台部材21が剛性の高い第1の通電部材11側に移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子台及び通電部材の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の端子台には、例えば、特許文献1に記載されたものがある。図14は特許文献1の端子台を示すもので、(a)はネジ接続前の側面図、(b)はネジ接続後の側面図である。図14(a)に示すように、端子基台101には、一対の隔壁103が設けられている。一対の隔壁103により仕切られた領域には保持具104が挿設されている。保持具104は、逆U字形に成形された弾性板状部材で、その両端部が端子基台101の隔壁103の根元部で対向する各内側面に沿って彫り込まれた凹部101aに挿入されている。保持具104の中央部には、バネ座金106,平座金107付きの小ネジ105が仮保持されている。小ネジ105の先端箇所には、圧着端子108が挿入されている。また、端子基台101には、隔壁103で仕切られた領域の中央箇所に端子金具である端子部台座102が埋設されている。そして、保持具に仮保持された小ネジ105を端子部台座102に対してネジ込んでゆくと、保持具104が変形することにより、圧着端子108と端子部台座102との接続が行なわれる(図14(b)参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−22080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1の端子台(図14(a),(b)参照。)において、圧着端子108の剛性が高い場合であって、圧着端子108を端子部台座102にネジ込む際に、端子部台座102上に圧着端子108が上方に離れて配置される場合が考えられる。このような場合、小ネジ105を端子部台座102に対してネジ込んでも、剛性の高い圧着端子108を端子部台座102に密着させることがむつかしい。このため、端子部台座102に対する圧着端子108の接触不良による通電不良を招いたり、小ネジ105のネジ込み作業性が低下したりすることになる。また、小ネジ105のねじ込みによる反力が、端子基台101、端子部台座102の弱体部分に集中して、その弱体部分に変形や割れ等の破損をきたすおそれもある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を支持する際の締付手段による締付けを容易にかつ適正に行なうことのできる端子台及び通電部材の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とする端子台及び通電部材の支持構造により解決することができる。
すなわち、請求項1に記載された端子台は、ベース部材に設置される台部材と、剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を前記台部材に締付ける締付手段とを備える。そして、前記ベース部材に前記台部材をフローティング支持する第1の支持手段、及び、前記台部材に前記締付手段の台部材側の締付部材をフローティング支持する第2の支持手段のうちの少なくとも一方の支持手段を設ける。前記締付手段による締付けにともない、前記少なくとも一方の支持手段によりフローティング支持された前記台部材と前記締付部材の少なくとも一方の部材が前記剛性の高い通電部材側に移動される構成とする。このように構成すると、締付手段による締付けにともない、台部材及び台部材側の締付部材の少なくとも一方の部材が剛性の高い通電部材側に移動することにより、剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を支持する際の締付手段による締付けを容易にかつ適正に行なうことができる。
【0007】
また、請求項2に記載された端子台は、請求項1に記載の端子台における前記第1の支持手段を、前記ベース部材に設けられた孔部と、前記台部材に設けられかつ前記孔部内に軸方向に移動可能に嵌合される軸部とにより構成したものである。このように構成すると、ベース部材の孔部内に台部材の軸部を相対的に移動可能に嵌合することにより、ベース部材に台部材をフローティング支持する第1の支持手段が構成される。これにより、締付手段による締付けにともない、台部材が剛性の高い通電部材側に移動することができる。
【0008】
また、請求項3に記載された端子台は、請求項1に記載の端子台における第1の支持手段を、前記ベース部材に設けられた軸部と、前記台部材に設けられかつ前記軸部に軸方向に移動可能に嵌合される孔部とにより構成したものである。このように構成すると、ベース部材の軸部に台部材の孔部を相対的に移動可能に嵌合することにより、ベース部材に台部材をフローティング支持する第1の支持手段が構成される。これにより、締付手段による締付けにともない、台部材が剛性の高い通電部材側に移動することができる。
【0009】
また、請求項4に記載された端子台は、請求項2又は3に記載の端子台における前記第1の支持手段の前記孔部と前記軸部とが回り止め状態で嵌合されるものである。このように構成すると、第1の支持手段の孔部と軸部とが回り止め状態で嵌合されるので、ベース部材に台部材を回り止め状態でフローティング支持することができる。
【0010】
また、請求項5に記載された端子台は、請求項1に記載の端子台における前記第2の支持手段を、前記台部材に設けられかつ前記締付部材を軸方向に移動可能に保持する保持部により構成したものである。このように構成すると、台部材の保持部に締付手段の台部材側の締付部材を相対的に移動可能に嵌合することにより、台部材に締付手段の台部材側の締付部材をフローティング支持する第2の支持手段が構成される。これにより、締付手段による締付けにともない、台部材側の締付部材が台部材が剛性の高い通電部材側に移動することができる。
【0011】
また、請求項6に記載された端子台は、請求項5に記載の端子台における前記台部材の保持部に、前記締付部材を仮止めする仮止め手段を備えたものである。このように構成すると、台部材の保持部に締付手段の台部材側の締付部材を仮止め手段により仮止めすることで、台部材側の締付部材に対する締付用部材の締付けを容易に行なうことができる。
【0012】
また、請求項7に記載された通電部材の支持構造は、剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を、請求項1〜6のいずれか1つに記載の端子台を介してベース部材に支持するものである。このように構成すると、締付手段による締付けにともない、台部材及び台部材側の締付部材の少なくとも一方の部材が剛性の高い通電部材側に移動することにより、剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を支持する際の締付手段による締付けを容易にかつ適正に行なうことのできる端子台を備えた通電部材の支持構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の端子台及び通電部材の支持構造によれば、締付手段による締付けにともない、台部材及び台部材側の締付部材の少なくとも一方の部材が剛性の高い通電部材側に移動することにより、剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を支持する際の締付手段による締付けを容易にかつ適正に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0015】
[実施例1]実施例1を説明する。本実施例では、例えば、ハイブリッド車、電気自動車等の電源装置に用いられる通電部材の支持構造について例示する。なお、図1は通電部材の支持構造を示す平面図、図2は同じく正断面図、図3は締付用ボルトの締付前の状態における通電部材の支持構造を示す正断面図、図4は端子台を示す外観斜視図、図5は端子台を下面側から見た斜視図である。
図1及び図2に示すように、通電部材の支持構造1は、ベース部材3上に、剛性の高い通電部材11を含む複数本(図1では3本を示す。)の各通電部材11,12,13を端子台20を介して支持するものである。なお、説明の都合上、ベース部材3、各通電部材11,12,13、端子台20の順に説明する。また、通電部材の支持構造1における方位については、便宜上、各図に付記するように定める。
【0016】
まず、ベース部材3を説明する。図2に示すように、ベース部材3は、板状をなしており、基板あるいはヒートシンク等からなる。ベース部材3には、後述する端子台20を締付用ボルト33(後述する。)の締付け方向(図2において上から下方向)に移動可能にフローティング支持するための円形状の支持孔部3aが形成されている。なお、支持孔部3aは、本明細書でいう「孔部」に相当する。さらに、ベース部材3には、支持孔部3aに所定間隔を隔てて並ぶ円形状の回り止め孔部3bが形成されている(図4参照。)。
【0017】
次に、各通電部材11,12,13を説明する。
図1に示すように、通電部材11は、電装部品であるトランス(図示しない。)のバスバーであって、高電圧化、高電流化にともなって、例えば締付用ボルト33(後述する。)の締付力により変形されない程度に高い剛性を有するものとなっている。図3に示すように、通電部材11の先端部には、締付用ボルト33(後述する。)のねじ軸部33bを挿通するボルト挿通孔11aが形成されている。なお、通電部材11を、「第1の通電部材11」という。
また、図3に示すように、通電部材12は、第1の通電部材11の下側で、その通電部材11と端子台20との間に配置されるノイズ端子である。通電部材12の先端部には、締付用ボルト33(後述する。)のねじ軸部33bを挿通するボルト挿通孔12aが形成されている。なお、通電部材12を、「第2の通電部材12」という。
また、通電部材13は、第1の通電部材11の上側に配置される接続端子である。通電部材13の先端部には、締付用ボルト33(後述する。)のねじ軸部33bを挿通するボルト挿通孔13aが形成されている。なお、通電部材13を、「第3の通電部材13」という。また、第2の通電部材12の剛性は、第1の通電部材11の剛性に比べて小さく、また、第2の通電部材12の剛性に比べて大きい剛性を有している。
また、図1に示すように、第1の通電部材11の先端部は、後側から前方の端子台20上に指向される。また、第2の通電部材12の先端部は、右側から左方の端子台20上に指向される。また、第3の通電部材13の先端部は、左側から右方の端子台20上へ指向される。このように、前記各通電部材11,12,13の先端部が、多方向から端子台20上に集約されるようになっている。
【0018】
次に、端子台20を説明する。図2に示すように、端子台20は、樹脂により埋込ナット30をインサート成形(モールド成形とも呼ばれる。)により一体化したものである。図4に示すように、樹脂により端子台20の主体をなす台部材21が形成されている。台部材21は、平坦な左側面21a(図5参照。)を有する平面D型の中空筒状に形成されている。図3に示すように、台部材21の上端部内に、埋込ナット30が同一軸線L上に配置されている。埋込ナット30は、その上方から頭付きボルトからなる締付用ボルト33のねじ軸部33bと螺合するねじ孔30aを有している。埋込ナット30の上端面は、台部材21の上面と同一平面をなしている。また、締付用ボルト33は、ねじ軸部33bの上端部に頭部33aを有している。なお、埋込ナット30と締付用ボルト33とは、本明細書でいう「締付手段」を構成している。また、埋込ナット30は、本明細書でいう「台部材側の締付部材」に相当する。また、締付用ボルト33は、本明細書でいう「締付用部材」に相当する。
【0019】
図3に示すように、前記台部材21の高さ21Hは、前記ベース部材3と前記第1の通電部材11との対向面の相互間の高さH1の公差の下限値よりも所定量d分、低い高さに設定されている。所定量dは、例えば0.5mm程度とする。これにより、ベース部材3上に台部材21を載置し、第1の通電部材11を有する電装部品(トランス)をベース部材3上に設置した際に、台部材21と第1の通電部材11との対向面の相互間に少なくとも所定量dの隙間ができることになる。
【0020】
前記台部材21の下端面には、前記ベース部材3の支持孔部3a内に軸方向すなわち上下方向に移動可能に嵌合される円筒状の取付軸部22が突出されている(図5参照。)。取付軸部22は、例えば台部材21に一体形成されている。なお、取付軸部22は、本明細書でいう「軸部」に相当する。また、台部材21の取付軸部22とベース部材3の支持孔部3aとは、本明細書でいう「第1の支持手段」を構成している。
【0021】
図4に示すように、前記台部材21の下端部の側面には、右後方へ突出する回り止め片23が突出されている。回り止め片23の先端部の下面には、前記ベース部材3の回り止め孔部3b内に軸方向すなわち上下方向に移動可能に嵌合される円柱状の回り止めピン24が突出されている(図5参照。)。回り止めピン24は、例えば金属製で台部材21にインサート成形により一体化されている。また、台部材21の回り止めピン24を有する回り止め片23とベース部材3の回り止め孔部3bとは、本明細書でいう「回り止め手段」を構成している。
【0022】
図4に示すように、前記台部材21には、その前側部及び右側部の前半部上に連続的に立ち上がる前側壁部25と、後側部及び右側部の後半部上に連続的に立ち上がる後側壁部26と、左側部上に立ち上がる左側壁部27が一体形成されている。前側壁部25と後側壁部26との間には、前記第2の通電部材12及び前記第3の通電部材13がそれぞれ差込可能になっている(図1参照。)。また、前側壁部25及び後側壁部26は、締付作業時における前記締付用ボルト33の右側方への倒れ込みを防止しうる高さH2を有している(図3参照。)。また、後側壁部26の下端部には、横長四角形状の差込孔26aが形成されている(図4参照。)。差込孔26aには、第1の通電部材11が差込可能になっている(図1参照。)。また、左側壁部27は、前記第1の通電部材11と前記第2の通電部材12との合計の板厚よりも所定量低い高さ27Hを有している(図2参照。)。
【0023】
次に、前記したベース部材3に端子台20を介して各通電部材11,12,13を支持する手順の一例を説明する。まず、ベース部材3上に、第1の通電部材11を有する電装部品(トランス)が設置される。このとき、第1の通電部材11を端子台20の後側壁部26の差込孔26a(図4参照。)に差込むとともに、ベース部材3の支持孔部3aに端子台20の取付軸部22を軸方向(上下方向)に移動可能に嵌合する(図3参照。)。これにより、ベース部材3上に端子台20がフローティング支持される。これとともに、ベース部材3の回り止め孔部3bに端子台20の回り止めピン24を軸方向(上下方向)に嵌合する(図3参照。)。これにより、ベース部材3上に端子台20が回り止めされる。次に、図3に示すように、第2の通電部材12を、端子台20の前側壁部25と後側壁部26との間を通じて、台部材21と第1の通電部材11との間に差込む。また、第3の通電部材13を、端子台20の前側壁部25及び後側壁部26の間に差込んで、第1の通電部材11上に配置する。
【0024】
続いて、締付用ボルト33(詳しくは、ねじ軸部33b)を、第3の通電部材13のボルト挿通孔13a、第1の通電部材11のボルト挿通孔11a、第2の通電部材12のボルト挿通孔12aに順に挿通し、端子台20の埋込ナット30(詳しくは、ねじ孔30a)に締付ける。これにともない、図2に示すように、各通電部材11,12,13のうちの剛性の高い第1の通電部材11を基準として、その通電部材11側に端子台20の台部材21が引き上げられるように移動される。このとき、ベース部材3の支持孔部3aに対して、端子台20の取付軸部22が上方に摺動する。これとともに、第1の通電部材11を間にして第2の通電部材12及び第3の通電部材13が埋込ナット30と締付用ボルト33の頭部33aとの間に締付けられる。これにより、端子台20上に各通電部材11,12,13が通電可能な状態に締結された状態に支持される。
【0025】
上記した端子台20によると、埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付けにともない、台部材21が剛性の高い第1の通電部材11側に移動することにより、各通電部材11,12,13を支持する際の埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付けを容易にかつ適正に行なうことができる(図2参照。)。ひいては、各通電部材11,12,13を相互に面接触状に密着させることができる。これにより、各通電部材11,12,13の接触不良による通電不良を防止あるいは低減することができる。また、埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付作業性を向上することができる。また、埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付けによる反力が、ベース部材3、台部材21の弱体部分に集中することを回避することができるので、その弱体部分に生じる変形や割れ等の破損を防止あるいは低減することができる。
【0026】
また、ベース部材3の支持孔部3a内に台部材21の取付軸部22を相対的に移動可能に嵌合することにより、ベース部材3に台部材21をフローティング支持する第1の支持手段が構成される(図3参照。)。これにより、埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付けにともない、台部材21が剛性の高い第1の通電部材11側に移動することができる(図2参照。)。
【0027】
また、前記した通電部材の支持構造1によると、埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付けにともない、台部材21が剛性の高い第1の通電部材11側に移動することにより、各通電部材11,12,13を支持する際の埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付けを容易にかつ適正に行なうことのできる端子台20を備えた通電部材の支持構造1を提供することができる(図2参照。)。
【0028】
[実施例2]実施例2を説明する。本実施例は、前記実施例1の一部に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。また、以降の実施例についても、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、図6はベース部材と端子台との関係を示す斜視図である。
図6に示すように、本実施例は、前記実施例1におけるベース部材3の円形状の支持孔部3a(図4参照。)を、多角形状(図6では六角形状を示す。)の支持孔部(符号、3a1を付す。)に変更している。これとともに、前記実施例1における台部材21の円筒状の取付軸部22(図5参照。)を、支持孔部3a1に嵌合可能な多角形筒状(図6では六角筒状を示す。)の取付軸部(符号、22Aを付す。)に変更している。したがって、ベース部材3の支持孔部3a1と台部材21の取付軸部22Aとを回り止め状態で嵌合することができる。これにより、前記実施例1(図4参照。)における回り止め孔部3b及び回り止めピン24を有する回り止め片23を省略することができる。
【0029】
本実施例によっても、前記実施例1とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。また、ベース部材3の支持孔部3a1と台部材21の取付軸部22Aとが回り止め状態で嵌合されるので、ベース部材3に台部材21を回り止め状態でフローティング支持することができる。
【0030】
[実施例3]実施例3を説明する。本実施例は、前記実施例1の一部に変更を加えたものである。なお、図7は通電部材の支持構造を示す正断面図である。
図7に示すように、本実施例は、前記実施例1におけるベース部材3の支持孔部3a(図2参照。)を、ベース部材3上に突出する円柱状の支持ピン部3cに変更している。なお、支持ピン部3cは、ベース部材3と樹脂により一体形成してもよいし、別体のピン部材、ボルト等をベース部材3に取付けることによっても形成することができる。また、前記実施例1における台部材21の取付軸部22(図2参照。)を、支持ピン部3cに嵌合可能な取付孔部22Bに変更している。したがって、ベース部材3の支持ピン部3cに台部材21の取付孔部22Bを相対的に移動可能に嵌合することができる。なお、支持ピン部3cは、本明細書でいう「軸部」に相当する。また、取付孔部22Bは、本明細書でいう「孔部」に相当する。また、支持ピン部3cと取付孔部22Bとは、本明細書でいう「第1の支持手段」を構成している。
【0031】
本実施例によっても、前記実施例1とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。また、ベース部材3の支持ピン部3cに台部材21の取付孔部22Bを相対的に移動可能に嵌合することにより、ベース部材3に台部材21をフローティング支持する第1の支持手段が構成される。これにより、埋込ナット30に対する締付用ボルト33の締付けにともない、台部材21が剛性の高い第1の通電部材11側に移動することができる。なお、前記実施例2に準じて、支持ピン部3c及び取付孔部22Bを、それぞれ多角形状の支持ピン部及び取付孔部に変更することにより、支持ピン部と取付孔部とを回り止め状態で嵌合することができる。
【0032】
[実施例4]実施例4を説明する。本実施例は、前記実施例1の一部に変更を加えたものである。なお、図8は通電部材の支持構造を示す正断面図、図9は締付用ボルトの締付前の状態における通電部材の支持構造を示す正断面図、図10は端子台を示す分解斜視図である。
図9に示すように、本実施例は、前記実施例1(図3参照。)におけるベース部材3の支持孔部3a及び回り止め孔部3bが省略されている。また、前記端子台20の取付軸部22及び回り止めピン24を有する回り止め片23、並びに各側壁部25,26,27及び埋込ナット30が省略された台部材(符号、21Aを付す)が、ベース部材3上にねじ手段、接着手段、一体形成等により一体的に設けられている。これにともない、台部材21Aの上半部には、四角形筒状の保持筒部28が形成されている。
【0033】
本実施例では、前記埋込ナット30(図3参照。)に代えて、台部材21Aと別体の締付ナット31を使用する(図10参照。)。締付ナット31は、多角形(例えば四角形)の外形を有している。締付ナット31は、台部材21Aの保持筒部28内に軸方向すなわち上下方向に移動可能に嵌合されている。なお、締付ナット31と締付用ボルト33とは、本明細書でいう「締付手段」を構成している。また、締付ナット31は、本明細書でいう「台部材側の締付部材」に相当する。また、保持筒部28は、本明細書でいう「第2の支持手段」を構成している。また、締付ナット31の高さ(板厚)31H(図9参照。)は、一辺(短片)の長さ31L(図10参照。)よりも大きく設定している。これにより、締付ナット31が保持筒部28内に上下方向に摺動しやすく嵌合することができる。
【0034】
次に、前記したベース部材3に端子台20を介して各通電部材11,12,13を支持する手順の一例を説明する。保持筒部28内に締付ナット31を嵌合した端子台20上に、前記実施例1と同様に、各通電部材11,12,13を配置する(図9参照。)。続いて、締付用ボルト33(詳しくじは、ねじ軸部33b)を、第3の通電部材13のボルト挿通孔13a、第1の通電部材11のボルト挿通孔11a、第2の通電部材12のボルト挿通孔12aに順に挿通し、端子台20の締付ナット31(詳しくは、ねじ孔31a)に締付ける。これにともない図8に示すように、剛性の高い第1の通電部材11を基準として、その通電部材11側に締付ナット31が引き上げられるように移動される。このとき、締付ナット31は、台部材21Aの保持筒部28内を上方へ摺動する。これとともに、第1の通電部材11を間にして第2の通電部材12及び第3の通電部材13が締付ナット31と締付用ボルト33の頭部33aとの間に締付けられる。これにより、端子台20上に各通電部材11,12,13が通電可能な状態に締結された状態に支持される。
【0035】
上記した端子台20によると、締付ナット31に対する締付用ボルト33の締付けにともない、締付ナット31が剛性の高い第1の通電部材11側に移動することにより、各通電部材11,12,13を支持する際の締付ナット31に対する締付用ボルト33の締付けを容易にかつ適正に行なうことができる(図8参照。)。ひいては、前記実施例1と同様に、各通電部材11,12,13の接触不良による通電不良を防止あるいは低減することができる。また、締付ナット31に対する締付用ボルト33の締付作業性を向上することができる。また、締付ナット31に対する締付用ボルト33の締付けによる反力が、ベース部材3、台部材21Aの弱体部分に集中することを回避することができるので、その弱体部分に生じる変形や割れ等の破損を防止あるいは低減することができる。
【0036】
また、台部材21Aの保持筒部28に締付ナット31を相対的に移動可能に嵌合することにより、台部材21Aに締付ナット31をフローティング支持する第2の支持手段が構成される(図9参照。)。これにより、締付ナット31に対する締付用ボルト33の締付けにともない、締付ナット31が剛性の高い第1の通電部材11側に移動することができる(図8参照。)。
【0037】
また、前記した通電部材の支持構造1によると、締付ナット31に対する締付用ボルト33の締付けにともない、締付ナット31が剛性の高い第1の通電部材11側に移動することにより、各通電部材11,12,13を支持する際の締付ナット31に対する締付用ボルト33の締付けを容易にかつ適正に行なうことのできる端子台20を備えた通電部材の支持構造1を提供することができる(図8参照。)。
【0038】
[実施例5]
実施例5を説明する。本実施例は、前記実施例4の一部に変更を加えたものである。なお、図11は端子台を示す斜視図である。
図11に示すように、本実施例は、前記実施例4における台部材21Aの保持筒部28(図10参照。)の上端部における対向する両側壁部28a,28bの内壁面に、締付ナット31を仮止めいわゆる抜止めする係止爪29を対向状に突出したものである。この場合、締付ナット31は、台部材21Aの保持筒部28の両側壁部28a,28bの弾性変形いわゆる撓み変形(図 中、二点鎖線28a,28b参照。)を利用して保持筒部28内に嵌合されており、その両側壁部28a,28bの弾性復元により仮止めされる。なお、係止爪29は、本明細書でいう「仮止め手段」を構成している。
【0039】
本実施例によっても、前記実施例4とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。また、台部材21Aの保持筒部28に締付ナット31を係止爪29により仮止めすることで、締付ナット31に対する締付用ボルト33の締付けを容易に行なうことができる。
【0040】
また、図12は端子台の変更例1を示す斜視図、図13は端子台の変更例2を示す斜視図である。
[端子台20の変更例1]
端子台20の変更例1は、図12に示すように、前記実施例5における台部材21Aの保持筒部28の対向する両側壁部28a,28b(図11参照。)に、係止爪29の下方近くに隣接する横長状の開口孔28Aを形成し、両側壁部28a,28bの係止爪29の周辺部を撓み変形しやすくしたものである。これにより、台部材21Aの保持筒部28に対する締付ナット31の組付性を向上することができる。
【0041】
[端子台20の変更例2]
端子台20の変更例2は、図13に示すように、前記実施例5における台部材21Aの保持筒部28の対向する両側壁部28a,28b(図11参照。)を薄肉化し、その両側壁部28a,28bを撓み変形しやすくしたものである。これにより、台部材21Aの保持筒部28に対する締付ナット31の組付性を向上することができる。
【0042】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、端子台は、剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を締付手段により台部材に締付けるものであればよい。また、端子台には、第1の支持手段及び第2の支持手段の両支持手段を備えることが可能である。また、台部材の支持孔部3a,3a1又は回り止め孔部3bは、ベース部材3を貫通する貫通孔に限らず、有底状の凹穴とすることができる。また、埋込ナット30は、台部材21にインサート成形に限らず、接着により一体化することができる。また、前記実施例では、台部材21,21Aにナット部材(埋込ナット30、締付ナット31)を設け、このナット部材にボルト部材(締付用ボルト33)を締付けるようにしたが、逆に台部材21,21Aにナット部材(埋込ナット30、締付ナット31)に代えてボルト部材を設け、このボルト部材にナット部材を締付けるように構成してもよい。また、台部材21の取付軸部22,22Aは、筒状に代えて、柱状に形成することができる。また、支持孔部3a,3a1及び取付軸部22,22Aは、多角形に限らず、楕円形、異形状とすることによっても回り止め状態で嵌合することができる。また、支持ピン部3c及び取付孔部22Bは、多角形に限らず、楕円形、異形状とすることによっても回り止め状態で嵌合することができる。また、保持筒部28と締付ナット31とは、多角形に限らず、楕円形、異形状とすることによっても回り止め状態で嵌合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1にかかる通電部材の支持構造を示す平面図である。
【図2】通電部材の支持構造を示す正断面図である。
【図3】締付用ボルトの締付前の状態における通電部材の支持構造を示す正断面図である。
【図4】端子台を示す外観斜視図である。
【図5】端子台を下面側から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施例2にかかるベース部材と端子台との関係を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例3にかかる通電部材の支持構造を示す正断面図である。
【図8】本発明の実施例4にかかる通電部材の支持構造を示す正断面図である。
【図9】締付用ボルトの締付前の状態における通電部材の支持構造を示す正断面図である。
【図10】端子台を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の実施例5にかかる端子台を示す斜視図である。
【図12】端子台の変更例1を示す斜視図である。
【図13】端子台の変更例2を示す斜視図である。
【図14】特許文献1の端子台を示すもので、(a)はネジ接続前の側面図、(b)はネジ接続後の側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 通電部材の支持構造
3 ベース部材
3a 支持孔部(孔部)
3a1 支持孔部(孔部)
3c 支持ピン部(軸部)
11 第1の通電部材(剛性の高い通電部材)
12 第2の通電部材
13 第3の通電部材
20 端子台
21 台部材
21A 台部材
22 取付軸部(軸部)
22A 取付軸部(軸部)
22B 取付孔部(孔部)
28 保持筒部
29 係止爪(仮止め手段)
30 埋込ナット
31 締付ナット
33 締付用ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に設置される台部材と、剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を前記台部材に締付ける締付手段とを備える端子台であって、
前記ベース部材に前記台部材をフローティング支持する第1の支持手段、及び、前記台部材に前記締付手段の台部材側の締付部材をフローティング支持する第2の支持手段のうちの少なくとも一方の支持手段を設け、
前記締付手段の締付けにともない、前記少なくとも一方の支持手段によりフローティング支持された前記台部材と前記締付部材の少なくとも一方の部材が前記剛性の高い通電部材側に移動される構成とした
ことを特徴とする端子台。
【請求項2】
請求項1に記載の端子台であって、
前記第1の支持手段を、前記ベース部材に設けられた孔部と、前記台部材に設けられかつ前記孔部内に軸方向に移動可能に嵌合される軸部とにより構成したことを特徴とする端子台。
【請求項3】
請求項1に記載の端子台であって、
前記第1の支持手段を、前記ベース部材に設けられた軸部と、前記台部材に設けられかつ前記軸部に軸方向に移動可能に嵌合される孔部とにより構成したことを特徴とする端子台。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の端子台であって、
前記第1の支持手段の前記孔部と前記軸部とが回り止め状態で嵌合されることを特徴とする端子台。
【請求項5】
請求項1に記載の端子台であって、
前記第2の支持手段を、前記台部材に設けられかつ前記締付部材を軸方向に移動可能に保持する保持部により構成したことを特徴とする端子台。
【請求項6】
請求項5に記載の端子台であって、
前記台部材の保持部に、前記締付部材を仮止めする仮止め手段を備えたことを特徴とする端子台。
【請求項7】
剛性の高い通電部材を含む少なくとも2つの通電部材を、請求項1〜6のいずれか1つに記載の端子台を介してべース部材に支持することを特徴とする通電部材の支持構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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