説明

端子圧入構造

【課題】 樹脂部品に金属端子を圧入する際に樹脂摩耗粉が発生しにくい端子圧入構造を提供すること。
【解決手段】 一端部の幅を狭くした平板状基部51と、その一端部とは逆側の他端部の側から平板状基部51の中心線に沿って延設された凸部20とを有する金属端子1を、圧入穴が設けられた樹脂部品に、その中心線の方向に圧入してなる端子圧入構造であり、凸部20は平板状基部51にほぼ平行に形成された上面と中心線の方向に延伸する2つの凸部側面500とを有し、2つの凸部側面500は金属端子1の圧入方向及び厚さ方向にテーパー角度を持って形成され、樹脂部品の圧入穴の幅は金属端子1の幅よりも大きく、その圧入穴の一面には、金属端子1の凸部20が嵌合する溝が設けられ、圧入完了時点では、溝のある面と対向する側の圧入穴の面に金属端子背面10が接触し平板状基部51の幅方向の縁辺と圧入穴の幅方向の面との間にはわずかな隙間がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の端子圧入構造に関し、特に樹脂成形部品に金属端子を圧入する構造で、圧入時に発生する樹脂摩耗粉発生を極力抑える必要のある電子部品に好適な端子圧入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的複雑な電子部品では、その電気回路の形成及び機械的構造を確保するため、樹脂成形部品に金属端子を圧入固定する場合が多い。その場合、金属端子はプレスにて打ち抜かれ、その打ち抜き形状で突起を形成し、樹脂成形部品の圧入穴側面に食い込ませ、金属端子を保持するのが一般的である。たとえば、特許文献1に開示された端子の圧入構造は狭ピッチで多極のコネクタ端子に適用される例である。
【0003】
【特許文献1】特開平9−219270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、プレス打ち抜きで金属端子の突起部を形成し、樹脂成形部品の圧入穴側面に食い込ませ、金属端子を保持する場合、金属端子の打ち抜き外形側面は、通常荒れた剪断面となり、圧入のとき、金属端子の突起が樹脂部品を引っ掻くこととなり、樹脂摩耗粉の発生が避けられない。
【0005】
電磁リレーなどの、内部に可動部と接点を持つ電子部品の場合、可動部の振動などで、圧入部で発生した摩耗粉等が遊離し、接点間に挟まり動作不良などを起こす場合がある。こうした問題を避ける必要がある場合には、入念な洗浄を施し、摩耗粉等の異物除去に努めるのが普通である。抜本対策としては、樹脂部品に金属端子をインサート成型すれば、摩耗粉の発生は極小となるが、インサート成型は成型設備が数倍高価であるため、製造コストを下げられないと言う問題がある。本発明では、樹脂部品に金属端子を圧入する際に、摩耗粉が発生しにくい構造を示し、インサート成型よりも低い製造コストと信頼性の両立方法を提示することである。
【0006】
すなわち、本発明の課題は樹脂部品に金属端子を圧入する際に樹脂摩耗粉が発生しにくい端子圧入構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の端子圧入構造は、一端部の幅を狭くした板状の基部と、前記一端部とは逆側の他端部の側から前記基部の中心線に沿って延設された凸部とを有する金属端子を、圧入穴が設けられた樹脂部品に、前記中心線の方向に圧入してなる端子圧入構造において、前記凸部は前記基部にほぼ平行に形成された上面と前記中心線の方向に延伸する2つの凸部側面とを有し、前記2つの凸部側面は前記金属端子の圧入方向及び厚さ方向にテーパー角度を持って形成され、前記圧入穴の幅は前記金属端子の幅よりも大きく、前記圧入穴の一面には、前記金属端子の前記凸部が嵌合する溝が設けられ、圧入完了時点では、前記溝のある面と対向する側の圧入穴の面に前記金属端子の基部の背面が接触し前記基部の幅方向の縁辺と前記圧入穴の幅方向の面との間には隙間があることを特徴とする。
【0008】
また、前記圧入方向のテーパー角度は2〜10度であり、前記厚さ方向のテーパー角度は30〜45度であるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属端子に形成されたテーパーを持つ凸部が、樹脂成型品の圧入穴内面の溝に嵌合し、金属端子の打ち抜き外形面は圧入穴の面とわずかな隙間を持った状態で圧入されるため、打ち抜き外形面で樹脂成型品の圧入穴を削り摩耗粉を発生させる可能性は非常に低くなる。更に、金属端子のテーパーを持つ凸部はエンボス加工にて形成すると、その際パンチ形状が転写され、加工に用いるパンチの表面荒さを十分に小さくすれば、テーパーを持つ凸部の表面荒さを小さく押さえることが出来、樹脂成形品の圧入穴内面の溝との嵌合時の樹脂摩耗粉発生を極小化することが可能である。すなわち、本発明によれば、樹脂部品に金属端子を圧入する際に、樹脂摩耗粉が発生しにくい端子圧入構造を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
図1は本発明に係る金属端子の概略を示す斜視図である。金属端子1は、その中心線に沿って延設された凸部20を持ち、この凸部20は金属端子全体の平板状基部51にほぼ平行な上面を持つと共に、凸部側面500として圧入方向に延伸する2つのテーパー面を持つ。この凸部側面500は、金属端子の圧入方向及び金属端子の厚さ方向にテーパー角度を持つ形状となっており、その表面は1.6Ra程度の表面荒さに押さえられるように、ラップ仕上げの成型パンチにてプレス成形される。
【0012】
図2は本発明に係る樹脂成形品を示す斜視図である。この樹脂成型品101は、金属端子の圧入穴110を持ち、その穴の一面には金属端子1の凸部20(図1参照)よりもわずかに小さい形状の溝120を持つ。また、穴寸法は、金属端子の幅よりも大きい寸法であり、特に、圧入時に金属端子の打ち抜き外形側面の剪断面が樹脂を削らないように十分な隙間を持たせてある。
【0013】
図3は金属端子の挿入初期の状態を示す斜視図である。金属端子1を樹脂成型品101に圧入する場合、当初、穴外形が金属端子よりも大きいため、ほとんど摩擦を起こすことなく挿入される。このとき、テーパーを持つ凸部20と溝120も十分な隙間を持つため、摩耗粉を発生させることは無い。
【0014】
図4は圧入完了直前の端子圧入構造の概略を示す斜視図である。図1、図3及び図4を参照して、圧入過程を説明する。図3を流用して、金属端子が所定の高さまで挿入されると、端子外形は依然として圧入穴との隙間を持っているが、テーパーを持つ凸部20と溝120の斜面間の隙間がほぼ無くなり、嵌合し始める。嵌合が進むと、金属端子1はテーパーを持つ凸部20が溝120に接触し、板厚方向に押されるため、金属端子背面10が圧入穴主面111に接触する。更に金属端子1を押し下げると、図4のように、(1)金属端子のテーパーを持つ2つの凸部側面500と、圧入穴110の溝120での接触面となる嵌合テーパー面130及び嵌合テーパー面131の2面との間、(2)金属端子の平板状基部51の凸部とは逆側の金属端子背面10と、圧入穴主面111との間の合計3面で金属端子が拘束され、圧入穴110に金属端子が圧入保持される。そのとき平板状基部51の縁辺と圧入穴側部面112との間には隙間がある。
【0015】
その圧入時に摺動する3面は、プレス成形パンチ及び樹脂成形パンチを鏡面仕上げとすることで、凸部20及び金属端子背面10の表面荒さを、圧入穴主面111及び溝120と共に十分に小さくすることが出来、打ち抜き剪断面での摺動に比べ大幅に摩耗粉の発生を少なくすることが可能である。
【0016】
この凸部が有するテーパーについて、図5に基づいて説明する。図5は金属端子の凸部側面のテーパー角度を示し、図5(a)は圧入方向のテーパー角度を示す金属端子の平面図、図5(b)は厚さ方向のテーパー角度を示す金属端子の側面図である。
【0017】
図5(a)に示した凸部側面500の圧入方向のテーパー角度θは2〜10度が適切である。この角度が10度を超えると金属端子を固定保持する力が小さくなり、20度を超えると使用できない。また、圧入高さを一定の範囲で調整したい場合は、圧入代を安定して確保するため、3度以下の比較的小さいテーパー角度とすべきである。ただし、2度未満では、樹脂部品の圧入穴に対して高度な寸法精度が要求され実用的でない。
【0018】
また、図5(b)に示した凸部側面500の厚さ方向のテーパー角度θは30〜45度が適切であり、45度を越えると、端子の幅方向の振れを押さえる効果が低くなり、60度を超えると金属端子の振れが大きく実用的でない。また、30度未満では、圧入穴の溝から受ける押圧力が小さくなり厚さ方向の固定力が低下する。
【0019】
本発明によれば、金属端子に形成されたテーパーを持つ凸部が、樹脂成型品の圧入穴内面に設けられた溝に嵌合し、金属端子の打ち抜き外形面(縁辺部)はわずかな隙間を持った状態で圧入されるため、打ち抜き外形面で樹脂成型品の端子圧入穴を削り摩耗粉を発生させる可能性は非常に低くなる。更に、金属端子のテーパーを持つ凸部はエンボス加工にて形成されるが、その際パンチ形状が転写されるので、加工に用いるパンチの表面荒さを十分に小さくすれば、テーパーを持つ凸部の表面荒さを小さく押さえることが出来、樹脂成形品の端子圧入穴内面の溝との嵌合時の摩耗粉発生を極小化することが可能である。よって、高価なインサート成型工程と洗浄工程は省略可能であるため、樹脂摩耗粉を極力少なくしたい電磁リレーなどの電子部品の製造コストを低く押さえることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明での金属端子の概略を示す斜視図。
【図2】本発明での樹脂成形品を示す斜視図。
【図3】金属端子の挿入初期状態を示す斜視図。
【図4】圧入完了直前の端子圧入構造を示す斜視図。
【図5】本発明での金属端子の凸部側面のテーパー角度を示し、図5(a)は圧入方向のテーパー角度を示す平面図、図5(b)は厚さ方向のテーパー角度を示す側面図。
【符号の説明】
【0021】
1 金属端子
10 金属端子背面
20 凸部
51 平板状基部
101 樹脂成型品
110 圧入穴
111 圧入穴主面
112 圧入穴側部面
120 溝
130,131 嵌合テーパー面
500 凸部側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部の幅を狭くした板状の基部と、前記一端部とは逆側の他端部の側から前記基部の中心線に沿って延設された凸部とを有する金属端子を、圧入穴が設けられた樹脂部品に、前記中心線の方向に圧入してなる端子圧入構造において、前記凸部は前記基部にほぼ平行に形成された上面と前記中心線の方向に延伸する2つの凸部側面とを有し、前記2つの凸部側面は前記金属端子の圧入方向及び厚さ方向にテーパー角度を持って形成され、前記圧入穴の幅は前記金属端子の幅よりも大きく、前記圧入穴の一面には、前記金属端子の前記凸部が嵌合する溝が設けられ、圧入完了時点では、前記溝のある面と対向する側の圧入穴の面に前記金属端子の基部の背面が接触し前記基部の幅方向の縁辺と前記圧入穴の幅方向の面との間には隙間があることを特徴とする端子圧入構造。
【請求項2】
前記圧入方向のテーパー角度は2〜10度であり、前記厚さ方向のテーパー角度は30〜45度であることを特徴とする請求項1記載の端子圧入構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate