説明

端子圧着機用アプリケータ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の電気配線などに用いられるワイヤハーネスの製造工程において、端子と電線とを加締圧着する端子圧着機に装着するアプリケータの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車などの電気配線に使用されるワイヤハーネスの生産は、大量生産方式から少量多品種生産方式に移行する傾向にあり、一台の電線端末処理装置により多種類の電線の規格(線径、単線、撚線、被覆の色など)、長さおよび異種の端子の加締、圧着等の一連の処理工程を行うことのできる装置が要請されるようになっている。そこで、我々は先に、図6に示すような電線の端末処理装置を提案した(特開平6−36854号公報)。
【0003】上記提案に係る電線の端末処理装置は、電線供給装置P、反転装置Q、切断装置R、搬送装置S、皮剥き装置T、端子圧着ユニットUおよびこれらの装置を制御する自動制御装置Vなどから構成されている。これらの一連の装置のうち、端子圧着ユニットUは、電線の端末導体部に所要の端子を圧着するためのもので、図7R>7に示すように、スタンドa上に係着された架台b上に装着された端子圧着機cを備えている。
【0004】端子圧着機cには、所定の端子に対応する加締型と端子送り機構を有するアプリケータdが装着されており、スタンドaに軸着された端子リールeに巻かれた連鎖状の端子fを端子ガイドを介してアプリケータdの加締型に1個ずつ供給して、電線の末端と圧着するようにしている。連鎖状の端子fは、複数の端子を一連の帯状に連結した形状にプレス加工して形成したもので、端子リールeに捲回して保持されている。
【0005】前記の電線の端末処理装置において、端子の品番交換を行う場合は、下記のイ)からへ)までの工程を必要としている。
イ)端子圧着ユニットUのアプリケータdから端子fを外すロ)余った端子fを端子リールeに巻き取り、スタンドaから外すハ)アプリケータdを端子圧着機cから外すニ)新たに使用するアプリケータを端子圧着機cに装着するホ)新たに使用する端子リールをスタンドaに取り付けるヘ)端子リールから導出した新たな端子をアプリケータにセットする上記のように、端子の品番交換に際して煩雑な交換作業が多く、端子圧着ユニットUを準備するために長時間を要する難点があり、また、交換作業の所要時間を短縮するため、あらかじめ多品種に対応する端子圧着ユニットUを多数用意しておくことは、コスト上昇を来すと共に、広大な収容空間を必要とするため実用化するには改良すべき問題点があった
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、端子圧着機に着脱自在に装着するようにしたアプリケータであり、端子の品番変更における交換作業が迅速に実施できる端子圧着機用アプリケータを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するため、本発明の端子圧着機用アプリケータは、端子圧着部を備えていると共に、端子圧着機に着脱自在に装着する端子圧着機用アプリケータであって、圧着用アンビルと圧着治具を備えた端子圧着部と、端子送り機構を有する端子供給部と、連鎖状端子を捲回した端子リールと、該端子リールを支持するリールスタンドとを基板を介して一体的に配設してなり、端子リールは、端子リールに巻かれた連鎖状端子の導出する方向が、端子圧着部の圧着用アンビルから前記基板に平行する直線に対して若干の角度をもたせて傾斜しており、端子圧着機側に設けた係止手段に前記基板を着脱自在に装着するように構成したことを特徴とする。端子供給部は、圧着治具に連動して揺動する端子送りアームを備えていることが好ましい(請求項2)。
【0008】
【作用】本発明の端子圧着機用アプリケータは、端子圧着機側に設けた係止手段に基板を着脱自在に装着することにより簡単に取り付けることができ、また、端子リールを一体的に備えているため、端子リールから導出された端子がアプリケータの端子圧着部に常にセットされた状態で準備しておくことができる。そのため、端子の品番変更に伴う部品の交換および条件設定の作業は、所定のアプリケータを端子圧着機に対して脱着する交換作業のみで完了する。したがって、端子の品番変更などの交換作業が短時間で済み、生産性が向上すると共に、小型であるため多品種の端子に対応して多数基のアプリケータを用意しておき、必要に応じて直ちに交換することも実現可能となる端子リールは、端子リールに巻かれた連鎖状端子の導出する方向が、端子圧着部の圧着用アンビルから前記基板に平行する直線に対して若干の角度をもたせて傾斜しているから、端子リールから導出された連鎖状端子は、曲率の大きい弧を描いて送り出され、圧着用アンビルへ円滑に供給することができる。
【0009】
【実施例】図1は、本発明の実施例に係わる端子圧着機用アプリケータAを示す側面図であり、図2はその正面図、図3はその平面図である。端子圧着機用アプリケータAは、長方形の基板1と、基板1の一端に固設した端子圧着部2と、端子圧着部2に並設した端子供給部3と、基板1の他端に立設したリールスタンド4と、端子リール5とから構成されている。
【0010】端子圧着部2は、コ字状の支持枠6の基底部6aに設置した圧着用アンビル7と、支持枠6の釣支部6bに昇降自在に設けた加締治具8とから成り、支持枠6の釣支部6bに端子供給部3が並設されている。加締治具8は、一端に設けた加締部8aを圧着用アンビル7に対向させ、他端の上方から端子圧着機のスライドラム(図示せず)による押圧を受けて、圧着用アンビル7上に載置した端子を加締めるようにしている。
【0011】端子供給部3には、端子送り機構として端子送りアームが揺動自在に設けられており、図示していないロッドを介して加締治具8の昇降運動に連動して端子送りアーム9が駆動するようにしてある。端子送りアーム9の先端部には送り爪10が連結されており、リールスタンド4に支持された端子リール5から端子送り台11に導出された連鎖状端子12を送り爪10で掛合して圧着用アンビル7に向けて一個ずつ供給するようにしている。
【0012】リールスタンド4の上端部には、リールスタンド4の縁部を切り込んで形成した支持孔13が設けられており、端子リール5の支持軸14を軸支することにより、端子リール5を回転自在に支持している。端子リール5の支持軸14は、端子リール5に巻かれた連鎖状端子12の導出する方向αが、端子圧着部2の圧着用アンビル7から基板1に平行する直線βに対して若干の角度θを持たせて設定してある(図3参照)。そのため、端子リール5から導出された連鎖状端子12は、曲率の大きい弧を描いて送り出され、圧着用アンビル7へ円滑に供給される。
【0013】端子圧着機用アプリケータAを端子圧着機に装着する係止手段は、とくに限定されるものではないが、実施例では、相手側装置に、図4に示すような、装着用溝15aを有する2本の係止部材15を相対向して着設した固定板16を着設し、係止部材15の装着用溝15a相互間に端子圧着機用アプリケータAの基板1を嵌入し、係止部材15に設けた固定ねじ17で締め付けて固定することにより、着脱自在に装着するようにしている
【0014】端子圧着機用アプリケータAを装着する端子圧着機は、とくに限定されるものではないが、図5に示すように、端子と電線との圧着を連続的に行う電線の末端処理装置に用いられる端子圧着ユニット18に装着することが好適である。端子圧着ユニット18は、移動自在なスタンド19に設置された架台20上に端子圧着機21が立設されている。端子圧着機21の駆動部22の下方に、あらかじめ連鎖状端子12がセットされている端子圧着機用アプリケータAの端子圧着部2が位置するように、端子圧着機用アプリケータAを着脱自在に装着するようにしている。したがって、端子の品番変更の際は、端子圧着機用アプリケータAの着脱による交換のみで品番変更の作業が完了する。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、端子は常にアプリケータの端子圧着部にセットされた状態で保持されているため、端子の品番変更に伴う作業は、端子リールと一体化したアプリケータを端子圧着に対して脱着するのみで完了する。したがって、端子の品番変更などの交換作業が簡素化され短時間で済むため、工程の生産性が著しく向上する。また、小型であるため多品種の端子に対応して多数基用意しておき、必要に応じて直ちに交換することも実用化できるなどの利点がある。また、端子リールは、端子リールに巻かれた連鎖状端子の導出する方向が、端子圧着部の圧着用アンビルから前記基板に平行する直線に対して若干の角度をもたせて傾斜しているから、端子リールから導出された連鎖状端子は、曲率の大きい弧を描いて送り出され、圧着用アンビルへ円滑に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係わる端子圧着機用アプリケータを示す側面図である。
【図2】図1の端子圧着機用アプリケータの正面図である。
【図3】図1の端子圧着機用アプリケータの平面図である。
【図4】図1の端子圧着機用アプリケータを着脱自在に装着する係止手段を示す説明図である。
【図5】図1の端子圧着機用アプリケータを電線の端子圧着ユニットに装着した状態を示す側面図である。
【図6】従来の電線の端末処理装置を示す斜視図である。
【図7】図6の電線の端末処理装置の端子圧着ユニットを示す側面図である。
【符号の説明】
A 端子圧着機用アプリケータ
1 基板
2 端子圧着部
3 端子供給部
4 リールスタンド
5 端子リール
7 圧着用アンビル
8 圧着治具
12 連鎖状端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 端子圧着部を備えていると共に、端子圧着機に着脱自在に装着する端子圧着機用アプリケータであって、圧着用アンビルと圧着治具を備えた端子圧着部と、端子送り機構を有する端子供給部と、連鎖状端子を捲回した端子リールと、該端子リールを支持するリールスタンドとを基板を介して一体的に配設してなり、端子リールは、端子リールに巻かれた連鎖状端子の導出する方向が、端子圧着部の圧着用アンビルから前記基板に平行する直線に対して若干の角度をもたせて傾斜しており、端子圧着機側に設けた係止手段に前記基板を着脱自在に装着するように構成したことを特徴とする端子圧着機用アプリケータ。
【請求項2】 端子供給部が、圧着治具に連動して揺動する端子送りアームを備えていることを特徴とする請求項1記載の端子圧着機用アプリケータ。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【特許番号】特許第3119421号(P3119421)
【登録日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【発行日】平成12年12月18日(2000.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−21695
【出願日】平成7年2月9日(1995.2.9)
【公開番号】特開平8−213145
【公開日】平成8年8月20日(1996.8.20)
【審査請求日】平成10年4月3日(1998.4.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【参考文献】
【文献】特開 平6−36854(JP,A)
【文献】特開 平5−190244(JP,A)
【文献】実開 平7−1591(JP,U)
【文献】実開 昭61−18592(JP,U)
【文献】実開 昭56−44488(JP,U)