説明

端末機器配線の短絡検出装置

【課題】 複雑な精度の高い回路構成とすることなく、安価な回路構成で短絡を精度よく判別すること。
【解決手段】 少なくとも1つの端末機器を並列接続した端末機器配線と、該端末機器配線に電圧を供給する駆動電源と、該駆動電源と前記端末機器配線との間に直列に接続された負荷と、前記端末機器配線に電圧が供給された際に、そのときに前記負荷の両端間に生じる電圧の大小レベルを検出して、短絡を判別する短絡検出部とを備えた端末機器配線の短絡検出装置であって、前記負荷は、電流が増加すると内部抵抗が増加する負荷である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動電源と端末機器配線との間に直列に接続された負荷の両端間に生じる電圧の大小レベルを検出して、短絡を判別する端末機器配線の短絡検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば火災報知システムにおいて、建物内の適所に設置された火災感知器が発報すると、火災受信機では火災警報を出力し、その火災感知器に対応して、端末機器の一例としての地区ベルを鳴動させているが、そのため、端末機器配線の一例としての地区音響配線に駆動電源を供給し、接続された地区ベルに一斉に電源を供給している。そして、この地区音響配線の短絡検出装置として、例えば、特開2000−339572号公報(特許文献1)に開示される装置の他にも、様々な装置が従来より知られている。
【0003】
図2は、地区音響配線の短絡検出装置の従来例の1つである。例えば2つの地区ベルBを並列接続した地区音響配線Lは、火災受信機REの地区音響端子Bn,Bcに接続されている。火災受信機REは、固定負荷R1、ヒューズF1、逆流防止用のダイオードD1、駆動電源E1が端子Bnに対して直列に接続され、他端が接地されたリレー接点RY1(常時は開)が端子Bcに対して接続され、電圧検出部20が固定負荷R1の両端間に接続され、また、信号処理部10が設けられている。地区ベルBは例えば定格電流1Aであり、駆動電源E1は地区ベルBの接続個数によって定格電流が適宜設定されるが、この場合は例えば10Aである。また、電圧検出部20と信号処理部10とは短絡検出部T1を構成している。
【0004】
信号処理部10は図示しない火災感知器からの火災信号を受信すると、リレー接点RY1を閉じる。すると、地区音響配線Lは、端子Bn,Bcを通じて駆動電源E1より駆動電圧が供給されて地区ベルBが駆動される。また、そのときに固定負荷R1の両端間に生じる電圧レベルV1を電圧検出部20が検出し、信号処理部10は、電圧レベルV1を収集して、内部メモリに格納された短絡レベルVTと比較して、正常か、短絡かを判別する。
【特許文献1】特開2001−184571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、地区ベルBを正常に駆動させるためには、地区音響配線Lにおける駆動電圧の電圧ドロップを少なくする必要がある。そのため、固定負荷R1は微小な抵抗値とする必要があった。例えば、固定負荷R1の抵抗値を0.1Ωとすると、地区ベルB駆動時の電圧レベルV1は0.2Vである。また、地区音響配線Lに3Aの電流が流れたときに短絡であると判断するものとして、短絡レベルVTは0.3Vとなる。短絡検出部T1は、地区ベルB駆動時の電圧レベルV1の0.2Vと短絡レベルVTとを精度よく区別しなければならない。つまり、短絡検出部T1は、固定負荷R1の両端間に発生する微小な電圧レベルV1を検出して、この電圧レベルV1と短絡レベルVTとを比較して、短絡の発生を判別するが、微小な電圧レベルV1を検出して、精度よく短絡の発生を判別するためには、複雑な精度の高い回路構成としなければならなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複雑な精度の高い回路構成とすることなく、安価な回路構成で短絡を精度よく判別することができる端末機器配線の短絡検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つの端末機器を並列接続した端末機器配線と、該端末機器配線に電圧を供給する駆動電源と、該駆動電源と前記端末機器配線との間に直列に接続された負荷と、前記端末機器配線に電圧が供給された際に、そのときに前記負荷の両端間に生じる電圧の大小レベルを検出して、短絡を判別する短絡検出部とを備えた端末機器配線の短絡検出装置であって、前記負荷は、電流が増加すると内部抵抗が増加する負荷であることを特徴とする。また、前記負荷は、ポリスイッチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、駆動電源と端末機器配線との間に直列に接続される負荷を、電流が増加すると内部抵抗が増加する負荷、例えばポリスイッチとして、端末機器配線に電圧が供給された際に、そのときに負荷の両端間に生じる電圧の大小レベルを短絡検出部が検出して、正常か、短絡かを判別する構成としたので、複雑な精度の高い回路構成とすることなく、安価な回路構成で短絡を精度よく判別することができるという効果がある。また、短絡電流を従来よりも微少に制限することができて、例えば、従来よりも、リレーの接点容量を小さく、配線パターンを細くすることができるなどの簡素化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施例である地区音響配線の短絡検出装置を示す図であり、図2との違いは、固定抵抗R1の代わりにポリスイッチR2を設けたことである。
【0010】
すなわち、例えば2つの地区ベルBを並列接続した地区音響配線Lは、火災受信機REの地区音響端子Bn,Bcに接続されている。火災受信機REは、ポリスイッチR2、ヒューズF1、逆流防止用のダイオードD1、駆動電源E1が端子Bnに対して直列に接続され、他端が接地されたリレー接点RY1(常時は開)が端子Bcに対して接続され、電圧検出部20がポリスイッチR2の両端間に接続され、また、信号処理部10が設けられている。地区ベルBは例えば定格電流1Aであり、駆動電源E1は地区ベルBの接続個数によって定格電流が適宜設定されるが、この場合は例えば10Aである。また、電圧検出部20と信号処理部10とは短絡検出部T2を構成している。
【0011】
ポリスイッチR2とは、ポリマ系のPCTサーミスタであり、電流が増加すると内部抵抗が増加する負荷であり、過電流や加熱によって熱せられると素子内部の温度が増加し、抵抗値が急激に増大する。例えば、定格電流の2倍で動作して、その抵抗値が10の4乗から6乗に達する。本実施例のポリスイッチR2は、例えば、通常時の抵抗値は0.1Ωであり、また短絡と判断される3Aの電流が流れたときには、抵抗値が急激に増大する。そのため、ポリスイッチR2の両端間に生じる電圧レベルV1は、地区ベルBの駆動時においては従来と同様の微小な電圧レベルV1(例えば、0.2V)であるが、短絡発生時においては、従来の短絡発生時に生じる微少な電圧レベルV1よりも大きな電圧が発生する。そのため、短絡レベルVTは、従来(例えば、0.3V)よりも非常に大きな電圧レベルに設定することができる。これにより、短絡検出部T2は、従来の複雑な精度が高い回路構成よりも安価な回路構成とでき、しかも、精度よく短絡の発生を判別することができる。
【0012】
また、ポリスイッチR2の内部抵抗が増加するため、短絡電流を従来よりも微少に制限することができる。そのため、従来よりも、リレー接点RY1の接点容量を小さく、配線パターンを細くすることができる。また、駆動電源E1よりも電圧値の大きい外部電源が地区音響配線Lに短絡した場合に、駆動電源E1を保護する逆流防止用のダイオードD1の定格電流を小さくすることができる。
【0013】
なお、ポリスイッチR2は、過電流によって抵抗値が急激に増大する点から、ヒューズF1の役割を兼用させることができ、ヒューズF1をなくすこともできる。このとき、過電流防止回路として、ポリスイッチR2はヒューズのように交換する必要はなく、火災受信機REの電源をオフすることで、温度が下がり、抵抗値は元に戻る。
【0014】
信号処理部10は、図示しない火災感知器からの火災信号を受信すると、リレー接点RY1を閉じる。すると、地区音響配線Lは、端子Bn,Bcを通じて駆動電源E1より駆動電圧が供給されて地区ベルBが駆動される。また、そのときにポリスイッチR2の両端間に生じる電圧レベルV1を電圧検出部20が検出し、信号処理部10は、電圧レベルV1を収集して、内部メモリに格納された短絡レベルVTと比較して、地区音響配線Lの配線状態を判別する。つまり、電圧レベルV1が短絡レベルVT以上であれば短絡と判断し、また、電圧レベルV1が0Vであれば断線と判断し、またそれ以外の場合は正常と判断する。そして、断線、短絡と判断した場合は、図示しないスピーカから異常発生を報知する。
【0015】
なお、本実施例では、地区音響配線Lに駆動電圧が供給させるときに、電圧検出部20が電圧レベルを検出して、短絡を判別することを示したが、地区音響配線Lに常時監視電圧を供給して、この監視電圧を上記駆動電圧と同様にして、常時短絡を判別することもできる。
【0016】
そのためには、地区音響配線Lの末端に終端抵抗を設けるとともに、地区ベルBには、鳴動する方向にのみ電流が流れるようにダイオードを配置し、駆動電源E1から制限した監視電圧を端子Bc側から端子Bn側にかければよい。そして、地区ベルBを鳴動させる場合に、駆動電源E1を端子Bn側から端子Bc側にかかるように切り替えるスイッチ回路を設ければよい。
【0017】
また、本実施例では、端末機器を地区ベルとして説明したが、火災感知器や防火戸等の制御機器としてもよく、端末機器配線を地区音響配線として説明したが、感知器配線や制御機器配線としてもよい。
【0018】
この発明は、少なくとも1つの端末機器としての地区ベルBを並列接続した端末機器配線としての地区音響配線Lと、該地区音響配線Lに電圧を供給する駆動電源E1と、該駆動電源E1と前記地区音響配線Lとの間に直列に接続された負荷と、前記地区音響配線Lに電圧が供給された際に、そのときに前記負荷の両端間に生じる電圧の大小レベルを検出して、短絡を判別する短絡検出部T2としての電圧検出部20及び信号処理部10とを備えた端末機器配線の短絡検出装置であって、前記負荷は、電流が増加すると内部抵抗が増加する負荷としてのポリスイッチR2であるので、複雑な精度の高い回路構成とすることなく、安価な回路構成で短絡を精度よく検出することができるという効果がある。また、短絡電流を従来よりも微少に制限することができて、例えば、従来よりも、リレー接点RYの接点容量を小さく、配線パターンを細くすることができるなどの簡素化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例である地区音響配線の短絡検出装置を示す回路図である。
【図2】従来の地区音響配線の短絡検出装置を示す回路図である。
【符号の説明】
【0020】
B 地区ベル(端末機器)
L 地区音響配線(端末機器配線)
E1 駆動電源
R2 負荷(ポリスイッチ)
T2 短絡検出部
RE 火災受信機
10 信号処理部
20 電圧検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの端末機器を並列接続した端末機器配線と、
該端末機器配線に電圧を供給する駆動電源と、
該駆動電源と前記端末機器配線との間に直列に接続された負荷と、
前記端末機器配線に電圧が供給された際に、そのときに前記負荷の両端間に生じる電圧の大小レベルを検出して、短絡を判別する短絡検出部とを備えた端末機器配線の短絡検出装置であって、
前記負荷は、電流が増加すると内部抵抗が増加する負荷であることを特徴とする端末機器配線の短絡検出装置。
【請求項2】
前記負荷は、ポリスイッチであることを特徴とする請求項1記載の端末機器配線の短絡検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−194794(P2006−194794A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8375(P2005−8375)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】