説明

端末装置、端末装置の制御方法、その制御プログラム及びその記録媒体

【課題】精度が高いドリフトを算出し、より迅速に測位衛星を捕捉して測位することができる端末装置等を提供すること。
【解決手段】端末装置30は、測位衛星を探索するための複数の探索手段40a1等と、 第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定手段と、探索手段を使用して、第1積算時間において、第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出手段と、探索手段を使用して、第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認手段と、探索手段を使用して、第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出手段と、各第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出手段等を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置、端末装置の制御方法、その制御プログラム及びその記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測位衛星を使用する衛星航法システムである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。このGPS受信機は、予め保存してあるGPS衛星の軌道情報等に基づいて、GPS衛星から受信する信号の信号周波数(受信信号周波数)を把握して、GPS受信機が有する同期手段によって、その受信信号周波数と同期することによってGPS衛星から信号を受信するように構成されている。
しかし、GPS受信機の同期手段の基準クロックを発生する例えば、水晶発振器は温度によって周波数が変動する(以下、「ドリフト」と呼ぶ)から、何らかの手段を講じない場合には、上述の受信信号周波数と迅速に同期することができず、測位の時間が長く必要になる。
これに対して、すべての同期手段を使用して、第1の捕捉対象である1個の測位衛星を捕捉することによってGPS受信機のドリフトを確定し、その後、測位に必要な数の測位衛星を捕捉する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2005−326281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来技術においては、算出したドリフトの精度によっては、そのドリフトを使用して測位に必要な数の測位衛星を捕捉するための時間が長く必要になる場合がある。この結果、測位位置算出までの時間を十分に早くすることができない場合があるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、精度が高いドリフトを算出し、より迅速に測位衛星を捕捉して測位することができる端末装置、端末装置の制御方法、端末装置の制御プログラム、端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、複数の測位衛星からの信号に基づいて現在位置を測位する端末装置であって、前記端末装置は、前記測位衛星を探索するための複数の探索手段と、第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定手段と、前記探索手段を使用して、第1積算時間において、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出手段と、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、前記候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認手段と、前記探索手段を使用して、前記第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出手段と、各前記第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、前記確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出手段と、前記第1差分を使用して、前記第1差分の算出に使用した前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉する測位必要数衛星捕捉手段と、を有することを特徴とする端末装置によって達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記端末装置は、前記候補受信周波数算出手段を有するから、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出することができる。
そして、前記端末装置は、前記候補周波数確認手段を有するから、前記候補受信周波数の信頼性を確認することができる。
さらに、前記端末装置は、前記確定周波数算出手段を有するから、前記確定周波数を算出することができる。
前記確定周波数は、前記候補受信周波数の信頼性が確認された上で、前記第1積算時間及び前記第2積算時間よりも長い前記第3積算時間において算出された周波数であるから、精度が高い。
このため、前記第1差分の精度も高くなるから、前記第1差分を使用して、迅速に前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉することができる。
これにより、精度が高いドリフトを算出し、より迅速に測位衛星を捕捉して測位することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において前記候補周波数確認手段による前記候補受信周波数の確認結果が否定的である場合には、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第4積算時間において、再度前記候補受信周波数を算出する候補受信周波数再算出手段を有することを特徴とする端末装置である。
【0008】
第2の発明の構成によれば、前記候補周波数の信頼性が否定的である場合には、前記第4積算時間において、再度前記候補受信周波数を算出することができるから、最初の前記候補周波数よりも信頼性が高い前記候補受信周波数を算出することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記第1捕捉対象衛星は、複数であることを特徴とする端末装置である。
【0010】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの構成において、各前記第1捕捉対象衛星に対応する前記第1差分の平均値を算出する平均差分算出手段を有することを特徴とする端末装置である。
【0011】
第4の発明の構成によれば、前記端末装置は、前記平均差分に基づいて、前記第1捕捉対象衛星以外の測位衛星を捕捉することができる。
前記平均差分は、前記第1差分の平均値であるから、各前記第1差分の誤差が相殺されており、前記第1差分よりも前記端末装置のドリフトを精度良く示している。
このため、前記端末装置は、前記平均差分を使用することにより、一層迅速に測位衛星を捕捉して測位することができる。
【0012】
前記目的は、第5の発明によれば、複数の測位衛星からの信号に基づいて現在位置を測位する端末装置が、 第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、第1積算時間において、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、前記候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出ステップと、前記端末装置が、各前記第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、前記確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出ステップと、前記端末装置が、前記第1差分の算出に使用した前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉する測位必要数衛星捕捉ステップと、を有することを特徴とする端末装置の制御方法によって達成される。
【0013】
第5の発明の構成によれば、第1の発明の構成と同様に、精度が高いドリフトを算出し、より迅速に測位衛星を捕捉して測位することができる。
【0014】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、複数の測位衛星からの信号に基づいて現在位置を測位する端末装置が、 第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、第1積算時間において、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、前記候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出ステップと、前記端末装置が、各前記第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、前記確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出ステップと、前記端末装置が、前記第1差分の算出に使用した前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉する測位必要数衛星捕捉ステップと、を実行させることを特徴とする端末装置の制御プログラムによって達成される。
【0015】
前記目的は、第7の発明によれば、コンピュータに、複数の測位衛星からの信号に基づいて現在位置を測位する端末装置が、 第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、第1積算時間において、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、前記候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認ステップと、前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出ステップと、前記端末装置が、各前記第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、前記確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出ステップと、前記端末装置が、前記第1差分の算出に使用した前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉する測位必要数衛星捕捉ステップと、を実行させることを特徴とする端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態である端末30等を示す概略図である。
図1に示すように、端末30はGSP装置40を有する。端末30は端末装置の一例である。端末30は、GPS装置40によって、複数の測位衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g及び12hからの信号S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7及びS8に基づいて現在位置を測位することができる。信号S1等は信号の一例である。
GPS衛星12a乃至12hは、端末30の現在位置から観測可能なGPS衛星の一例である。なお、本実施の形態においては、測位衛星の一例としてGPS衛星を使用しているが、広くSPS(Satellite Positioning System)衛星であればよく、GPS衛星に限らない。
端末30は例えば、携帯電話機であるが、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance等であってもよい。
【0018】
(端末30の主なハードウエア構成について)
図2は端末30の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、端末30は、例えばコンピュータを有しており、コンピュータは、バス32を有し、バス32には、CPU(Central Processing Unit)34、記憶装置36が接続されている。CPU34は所定のプログラムの処理を行う他、バス32に接続された記憶装置36等を制御する制御部である。記憶装置36は例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等である。
【0019】
また、このバス32は各種情報を表示するための表示装置42が接続されている。
さらに、このバス32には、図示しない基地局及び通信網を介して通信するための通信装置44が接続されている。
【0020】
さらに、このバス32には上述のGPS装置40が接続されている。
図2に示すように、GPS装置40は、GPS衛星12a等(図1参照)を捕捉するための同期周波数を生成するための基礎となる周波数の振動をする発振器である例えば水晶発振器41を有する。
また、GPS装置40はGPS衛星12a等を探索(サーチ)するための探索手段である例えば、探索ユニット40a1乃至40a18を有する。この探索ユニット40a1等は、水晶発振器41の振動による周波数を変調して後述する同期周波数を生成し、その同期周波数を使用してGPS衛星12a等をサーチするための構成である。すなわち、探索ユニット40a1等は、同期周波数を変更して、GPS衛星12a等からの信号S1等(図1参照)と同期することによって、GPS衛星12a等を捕捉できるように構成されている。
探索ユニット40a1等は、GPS衛星12a等からの信号S1等に含まれるC/Aコード(Coarse and Access)コードとGPS装置40が発生するレプリカC/Aコードとの相関処理を行い、C/Aコードの位相を特定するための相関器(例えば、特表2004−501352、段落0027等参照)である。効率良く相関処理を行うためには、周波数も同期する必要がある。本明細書においては、相関処理を行うために必要な周波数の同期について説明する。
この探索ユニット40a1乃至40a18は、GPS衛星12a等を捕捉した後の、追尾(トラッキング)にも使用される。
【0021】
なお、周波数のサーチと、GPS衛星12a等のサーチは同義で使用する。
各探索ユニット40a1等は、一度に一つの周波数を使用することができる。
したがって、例えば合計18個の探索ユニット40a1等を有するGPS装置40は、同時に18の周波数を使用することができる。
ここで、GPS装置40によるサーチの方法を説明する。
【0022】
図3は、GPS衛星12a等の一般的なサーチ方法の一例を示す概念図である。
GPS衛星12a等からの信号を取得するためには、GPS受信機側の同期周波数を各衛星の周波数に合わせる必要がある。ここで、各衛星やGPS受信機の位置が相対的に変動することによるドップラー効果と、GPS受信機側の同期周波数を生成している水晶発振器41の仕様上の振動数が変動することによって、GPS衛星12a等から発信される信号S1と、GPS受信機が受信する各衛星の周波数が、以下に説明するように、異なる場合がある。
【0023】
例えば、周波数を示す直線LH上の点H0(図3参照)は、図1のGPS衛星12aが発信する信号S1の周波数を示している。GPS受信機の位置における信号S1の周波数は、ドップラー効果DPによってH1まで変化する。
【0024】
しかし、GPS受信機は信号S1を周波数H1の信号とは必ずしも認識しない。
これは、上述したように、GPS受信機側が生成する周波数のずれによって、GPS装置40は信号S1の周波数をSH1aと認識するからである。すなわち、周波数SH1aは、GPS受信機の位置における信号S1の真の周波数ではなく、GPS受信機が認識するみかけの受信周波数である。GPS受信機が、信号S1をサーチするためには、このみかけの受信周波数SH1aと同期する必要がある。言い換えると、GPS受信機が信号S1を捕捉した場合には、みかけの受信周波数SH1aと同期したことになる。よって、みかけの受信周波数SH1aを、捕捉周波数とも呼ぶ。
上述の、GPS受信機側の周波数のずれを一般にドリフトと呼ぶ。すなわち、ドップラー効果DPによって変化した周波数H1と捕捉周波数SH1aとの差がドリフトである。
周波数H1から周波数SH1aへの変化(全ドリフトと呼ぶ)は、GPS受信機側の要因によるものであるが、図3に示すように、この全ドリフトは、予め推定されている周波数のずれである初期推定ドリフトD1と、ドリフト誤差D2を含む。ドリフトの詳細な意味については、後述する。
なお、初期推定ドリフトD1は、受信機が、温度変化と周波数の変化を予め実測したデータを保持していれば、そのデータを使用して推定することができる。また、初期推定ドリフトD1として、前回測位時の全ドリフトを使用してもよい。
【0025】
GPS受信機は、測位開始時においては、初期推定ドリフトD1を示す情報は予め推定して保持しているが、ドリフト誤差D2は把握できず、ドップラー効果DPと初期推定ドリフトD1を考慮した周波数H2を同期周波数としてサーチを開始する。なお、同期周波数を初期サーチ周波数とも呼ぶ。
GPS受信機は、例えば、1番目のサーチSr1、2番目のサーチSr2、3番目のサーチSr3というように同期周波数H2を中心として複数の周波数を並行的に使用してサーチを実施する。例えば、8番目のサーチSr8において周波数SH1aと一致する。なお、周波数のサーチSr1等は、一定の周波数幅(ステップとも言う)である例えば、100ヘルツ(Hz)の幅において行われているから、サーチSr8において周波数SH1aと完全に一致しないのが通常である。しかし、GPS受信機側の同期周波数が周波数SH1aと近似することによって、信号S1等に含まれるC/Aコードと、GPS装置40が発生するレプリカC/Aコードの相関値が一定の閾値以上になるから、C/Aコードの位相を特定し、測位に使用することができる。
次に、上述のドリフトについて詳細に説明する。
【0026】
図4は、ドリフトを説明するための概念図である。
まず、図4(a)を使用して、GPS衛星12a等が有する絶対時間と、GPS装置40を有する端末30にとっての時間のずれについて説明する。
【0027】
図2の水晶発振器41の仕様振動数は例えば、雰囲気温度が摂氏25度(℃)である場合において、T1秒間(絶対時間の1秒間)にH1(例えば、27.456×10)回である。すなわち、水晶発振器41の仕様周波数はH1ヘルツ(Hz)である。これは、GPS装置40は、水晶発振器41のH1回の振動がGPS装置40にとっての1秒間に該当すると認識することを意味する。そして、水晶発振器41が仕様周波数H1ヘルツを維持する限り、GPS装置40にとっての1秒間は、絶対時間の1秒間T1と等しい。
【0028】
ところが、水晶発振器41の振動性能は雰囲気温度によって変動し例えば、図4(a)に示すように、周波数がA(例えば、10ヘルツ(Hz))ずれ、T1秒間経過する前に、H1回振動する場合がある。この場合、水晶発振器41は、T1秒間にはH1+A回(H11回)振動する。すなわち、H11回の振動が絶対時間の1秒間T1に該当する。
【0029】
一方、GPS装置40にとっての1秒間は、水晶発振器41がH1回振動した時点で経過している。これは、GPS装置40にとっての1秒間は絶対時間T1のH1/H11であるT2であることを意味する。上述のように、H1が27.456×10、Aが10だとすれば、GPS装置40にとっての1秒間であるT2はH1/H11であるから絶対時間では、0.999999636秒である。
【0030】
このように、GPS装置40側の時間と絶対時間にずれが生じるために、以下に説明するように、GPS装置40の位置における信号の周波数とGPS装置が認識する周波数にもずれが生じる。
【0031】
次に、図4(b)を使用して、ドリフトについて説明する。
なお、周波数は、ドップラー効果によっても変化するが、ここで説明するのは、水晶発振器41側の要因による周波数のずれである。
図4(b)に示すように例えば、GPS衛星12aからの信号S1は、端末30の位置では、1秒間にSH1(例えば、1575.42×10)回振動する。すなわち、信号S1は、端末30の位置ではSH1ヘルツ(Hz)である。
【0032】
しかし、図4(a)を使用して説明したGPS装置40にとっての、1秒間であるT2においては、信号S1はSH1×T2(例えば、1575.419426×10)回しか振動しない。すなわち、絶対時間の1秒間T1においてSH1回振動する信号S1は、GPS装置40にとっての1秒間であるT2にはSH1×T2回しか振動しない。
すなわち、信号S1の絶対時間の1秒間T1における周波数とGPS装置40が認識する1秒間T2における周波数にずれBが生じる。
この周波数のずれBが、一般にドリフト又はドリフト量と呼ばれるものである。
【0033】
GPS装置40が信号S1をサーチし、衛星12aを捕捉するためには、信号S1の絶対時間T1における周波数SH1ヘルツ(Hz)ではなくて、GPS装置40が認識する1秒間T2における周波数SH1×T2ヘルツ(Hz)の信号をサーチする必要がある。すなわち、みかけの受信周波数SH1aの信号をサーチする必要がある。
このみかけの受信周波数SH1aの信号のサーチは、以上に説明した端末30の主なハードウエア構成と以下に説明する主なソフトウエア構成等によって行われる。
【0034】
(端末30の主なソフトウエア構成について)
図5は、端末30の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
図5に示すように端末30は、図2の通信装置44に対応する通信部102、表示装置42に対応する表示部104及びGPS装置40に対応する測位部106を有する。
端末30はまた、各部を制御する制御部100を有する。
さらに、端末30は、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0035】
図5に示すように、端末30は、第2記憶部150に概位置情報152を格納している。概位置情報152は、端末30の概略位置P0を示す情報である。概略位置P0は、例えば、前回測位時の測位位置である。
【0036】
図5に示すように、端末30は、第2記憶部150に衛星軌道情報154を格納している。衛星軌道情報154は、すべてのGPS衛星12a等の概略軌道を示すアルマナック、及び、各GPS衛星12a等の精密軌道を示すエフェメリスを含む。端末30は、例えば、信号S1等からアルマナック及びエフェメリスをデコードして取得する。
【0037】
図5に示すように、端末30は、第1記憶部110に、観測可能衛星算出プログラム112を格納している。観測可能衛星算出プログラム112は、制御部100が、概略位置P0から観測可能なGPS衛星12a等を算出するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、衛星軌道情報154に含まれるアルマナックを参照して現在時刻において概略位置P0から観測可能なGPS衛星12a等を算出する。
本実施の形態においては、観測可能なGPS衛星12a等は、例えば、GPS衛星12a乃至12hである。
制御部100は、観測可能なGPS衛星12a等を示す観測可能衛星情報156を第2記憶部150に格納する。
【0038】
図5に示すように、端末30は、第1記憶部110に、第1捕捉対象衛星決定プログラム114を格納している。第1捕捉対象衛星決定プログラム114は、制御部100が、図1のGPS衛星12a等のうち、第1番目に探索して捕捉する対象となるGPS衛星(第1捕捉対象衛星)を決定するための情報である。すなわち、第1捕捉対象衛星決定プログラム114と制御部100は、複数のGPS衛星12a等から第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定手段の一例である。
【0039】
具体的には、制御部100は、第2記憶部150に格納されている概位置情報152と衛星軌道情報154のアルマナック又はエフェメリスに基づいて、各GPS衛星12a等の仰角等を算出し、迅速に捕捉できると推測される少なくとも1個のGPS衛星を第1捕捉対象衛星に決定する。制御部100は、好ましくは複数のGPS衛星を第1捕捉対象衛星に決定する。
制御部100は、例えば、仰角が45度以上のGPS衛星12a及び12bの2個のGPS衛星を第1捕捉対象衛星として決定する。45度以上という仰角の範囲は、マルチパスを排除することができる等、受信環境が良い範囲として、予め規定されている。
本実施の形態においては、第1捕捉対象衛星がGPS衛星12a,12b及び12cの3個であるとして、以下の説明をする。
制御部100は、第1捕捉対象衛星を示す第1捕捉対象衛星情報158を第2記憶部150に格納する。
なお、制御部100は、例えば、GPS衛星12aだけが、仰角閾値以上である場合には、仰角閾値を低くして、例えば、30度に変更し、他のGPS衛星12b等のうち少なくとも1個を第1捕捉対象衛星として決定する。
【0040】
端末30はまた、図5に示すように、第1記憶部110に、同期周波数算出プログラム116を格納している。同期周波数算出プログラム116は、制御部100が、各GPS衛星12a等から発信される信号S1等の周波数と、各GPS衛星12a等ごとに異なるドップラー効果DP(図3参照)と、第1捕捉対象衛星である各GPS衛星12a等に共通な初期推定ドリフトD1(図3参照)に基づいて、各GPS衛星12a等ごとの同期周波数を算出するためのプログラムである。同期周波数算出プログラム116に基づいて制御部100が算出する同期周波数は、予測同期周波数の一例である。
制御部100は、同期周波数を示す同期周波数情報160を第2記憶部150に格納する。
なお、本実施の形態とは異なり、同期周波数を信号S1等の発信時の周波数とドップラー効果のみに基づいて設定するように構成してもよい。すなわち、図3の周波数H1を同期周波数として設定してもよい。
【0041】
端末30はまた、図5に示すように、第1記憶部110に、候補周波数算出プログラム118を格納している。候補周波数算出プログラム118は、制御部100が、上述の探索ユニット40a1等を使用して、第1積算時間である例えば、1秒(s)間において、第1捕捉対象衛星の候補周波数HCを算出するためのプログラムである。候補周波数HCは、候補受信周波数の一例である。候補周波数算出プログラム118と制御部100は、候補受信周波数算出手段の一例である。
制御部100は、第1捕捉対象衛星捕捉プログラム118に従って、例えば、探索ユニット40a1乃至40a3をGPS衛星12aに割り当て、探索ユニット40a4乃至40a6をGPS衛星12bに割り当て、探索ユニット40a7乃至40a9をGPS衛星12cに割り当て、GPS衛星12a,12b及び12cを捕捉する。
なお、本明細書において、「GPS衛星12a等の捕捉」は、「GPS衛星12a等からの信号S1等の受信」と同義で使用する。
制御部100は、GPS衛星12a等の捕捉において、信号S1等に含まれるC/Aコードと、端末30が発生したレプリカC/Aコードの相関処理を行う。
【0042】
図6は、相関処理の説明図である。
コヒーレントは、端末30が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。レプリカC/Aコードは、端末30が発生する符号である。
例えば、図6に示すように、コヒーレント時間が5msecであれば、5msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとったときのコードフェーズと、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。インコヒーレント時間(積算時間)は、例えば、1秒(s)である。インコヒーレント時間は、積算時間と同義である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
【0043】
図7は、相関積算値とコードフェーズの関係の一例を示す図である。
図7の相関積算値の最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、C/Aコードのコードフェーズ(レプリカC/Aコードのコードフェーズと等しい)である。
そして、端末30は、例えば、コードフェーズCP1から2分の1チップ離れたコードフェーズのうち、相関積算値が大きい方の相関積算値をノイズの相関積算値Pnoiseとする。
端末30は、PmaxとPnoiseとの差分をPmaxで除した値を信号強度SNR(Signal to Noise Ratio)として規定する。このように、本明細書においては、SNRを,PmaxとPnoiseとの差分をPmaxで除した値として定義する。
【0044】
図8は、候補周波数算出プログラム118等の説明図である。
GPS衛星12aを捕捉する場合について、以下説明する。
図8に示すように、制御部100は、同期周波数H2を中心とする一定の周波数範囲を第1サーチ範囲W1として規定する。第1サーチ範囲W1は、統計上、捕捉周波数SHが存在する周波数範囲として規定されている。
図8に示すように、制御部100は、3つの探索ユニットにそれぞれ周波数を割当て、1秒(s)積算による相関処理を行う。この処理を、候補周波数算出処理と呼ぶ。
例えば、同期周波数H2に探索ユニット40a1を割り当て、同期周波数H2よりも50ヘルツ(Hs)低い周波数に探索ユニット40a2を割り当て、同期周波数H2よりも50ヘルツ(Hs)高い周波数に探索ユニット40a3を割り当てて、第1ステップの積算を行う。
第1ステップの積算の終了後、第2ステップの積算を行う。制御部100は、同様に第5ステップの積算まで実施する。各積算は、いずれも積算時間が1秒(s)間である。
例えば、第1ステップの積算乃至第5ステップの積算によって、50ヘルツ(Hz)の周波数間隔で、第1サーチ範囲W1をサーチすることができる。
なお、各周波数において、制御部100は、コードフェーズをずらしながら、相関処理を行っているが、説明を省略する。
【0045】
制御部100は、信号強度SNRが最大の相関処理であって、SNRが第1閾値α1以上の相関処理に対応する周波数HCa及びその前後50ヘルツ(Hz)の周波数(HCb及びHCc)を候補周波数HCとして算出する。候補周波数HCは、候補受信周波数の一例である。
候補周波数HCaが、信号強度SNRが最大の相関処理であって、SNRが第1閾値α1以上の相関処理に対応する周波数であるとすれば、候補周波数HCbはHCaよりも50ヘルツ(Hz)低い周波数であり、候補周波数HCcはHCaよりも50ヘルツ(Hz)高い周波数である。候補周波数HCa,HCb及びHCcを総称して、候補周波数HCと呼ぶ。第1閾値α1は、例えば、0.5である。
制御部100は、候補周波数HCを示す候補周波数情報162を第2記憶部150に格納する。
なお、制御部100は、最大の信号強度SNRが第1閾値α1未満である場合には、積算時間を4秒(s)に変更して、上述の候補周波数算出処理を行う。制御部100は、最大の信号強度SNRが第1閾値α1以上になるまで、候補周波数算出処理を継続する。
【0046】
端末30はまた、図5に示すように、第1記憶部110に、候補周波数確認プログラム120を格納している。候補周波数確認プログラム120は、制御部100が、探索ユニット40a1等を使用して、第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、候補周波数HCの信頼性を確認するためのプログラムである。候補周波数確認プログラム120と制御部100は、候補受信周波数確認手段の一例である。
第2積算時間は、例えば、4秒(s)である。
【0047】
制御部100は、図8に示す方法によって、候補周波数確認プログラム120に基づいて、候補周波数HCが、実際にGPS衛星12aからの信号S1であることを確認する。この処理を、候補周波数確認処理と呼ぶ。
具体的には、制御部100は、候補周波数HCa,HCb及びHCcにおいて、相関処理を行う。
ここで、候補周波数HCaだけではなくて、その前後50ヘルツ(Hz)の周波数においても相関処理を行うのは、GPS受信装置40が信号S1の直接波を受信しているとしても、候補周波数HCの算出に誤差が含まれている可能性があるからである。言い換えると、候補周波数HCaの算出に含まれる誤差を考慮して、候補周波数HCaだけではなくて、その前後50ヘルツ(Hz)の周波数においても相関処理を行うのである。
【0048】
制御部100は、3つの周波数のうち、SNRが最大のものが、第2閾値α2以上であれば、候補周波数HCが信号S1の直接波の受信周波数であり、信頼性が十分であると判断する。第2閾値α2は、上述の第1閾値α1よりも大きく設定されている。第2閾値α2は、例えば、0.7である。
ここで、候補周波数HCが信号S1ではなくて、妨害波である場合には、第2積算時間において相関処理を行っても、SNRは第2閾値α2に達しない。
これに対して、候補周波数HCが信号S1である場合には、第2積算時間において相関処理を行うことによって、SNRは第2閾値α2に達する。
このため、制御部100は、候補周波数HCのうち、SNRが最大のものが第2閾値α2以上であるか否かによって、候補周波数HCの信頼性を確認することができる。
なお、制御部100は、最大の信号強度SNRが第2閾値α2未満である場合には、候補周波数HCaを中心にして、さらに、積算時間を4秒(s)維持したまま、候補周波数確認処理を継続する。制御部100は、最大の信号強度SNRが第2閾値α2以上になるまで、候補周波数確認処理を継続する。
【0049】
端末30はまた、図5に示すように、第1記憶部110に、確定周波数算出プログラム122を格納している。確定周波数算出プログラム122は、制御部100が、探索ユニット40a1等を使用して、第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数HFを算出するためのプログラムである。確定周波数HFは、確定周波数の一例である。確定周波数算出プログラム122と制御部100は、確定周波数算出手段の一例である。
第3積算時間は、例えば、8秒(s)である。
【0050】
図8に示すように、制御部100は、第2サーチ範囲W2を規定する。第2サーチ範囲W2は、第1サーチ範囲W1よりも狭い周波数範囲である。また、第2サーチ範囲W2は、候補周波数HCのうち、SNRが最大のものが第2閾値α2以上である周波数を中心として、前後50ヘルツ(Hz)未満の範囲を第2サーチ範囲W2として規定する。
図8では、候補周波数HCaを中心として第2サーチ範囲W2を規定している。
制御部100は、第2サーチ範囲W2において、例えば、候補周波数HCaを中心として前後30ヘルツ(Hz)の周波数において相関処理を行う。そして、制御部100は、SNRが最大の周波数を確定周波数HFとして算出する。この処理を、確定周波数算出処理と呼ぶ。
制御部100は、確定周波数HFを示す確定周波数情報164を第2記憶部150に格納する。
【0051】
なお、弱電界下である場合(例えば、−140dBm以下)には、上述の候補周波数算出処理における積算時間を当初から4秒(s)とし、候補周波数確認処理における積算時間を当初から8秒(s)としてもよい。
【0052】
端末30はまた、図5に示すように、第1記憶部110に、候補周波数再算出プログラム124を格納している。候補周波数再算出プログラム124は、制御部100が、候補周波数確認プログラム120に基づく確認結果が否定的である場合に、探索ユニット40a1等を使用して、第1積算時間よりも長い時間として規定される第4積算時間において、再度、候補周波数HCを算出するためのプログラムである。候補周波数再算出プログラム124と制御部100は、候補受信周波数再算出手段の一例である。
【0053】
図9は、候補周波数再算出プログラム124の説明図である。
図9に示すように、制御部100は、候補周波数確認処理において、最大のSNRが第2閾値α2未満の場合には、第1サーチ範囲W1を、4秒積算によってサーチする。サーチの中心周波数は、同期周波H2である。
4秒積算によって算出した候補周波数HCは、1秒積算によって算出した候補周波数HCよりも信頼度が高い。
制御部100は、再度算出した候補周波数HCを示す候補周波数情報162を第2記憶部150に格納する。具体的には、既に算出している候補周波数HCを新たに算出した候補周波数HCによって更新する。この処理を、候補周波数再算出処理と呼ぶ。
制御部100は、上述の候補周波数確認プログラム120によって 再度算出された候補周波数HCの信頼性を確認し、さらに、確定周波数算出プログラム122に基づいて、確定周波数HFを算出する。
【0054】
図5に示すように、端末30は、ドリフト誤差算出プログラム126を有する。ドリフト誤差算出プログラム126は、制御部100が、同期周波数情報160に示される各GPS衛星12aに対応する同期周波数と、上述の確定周波数HFとの差分であるドリフト誤差D2を算出するためのプログラムである。ドリフト誤差算出プログラム126と制御部100は、第1差分算出プログラムの一例である。
【0055】
具体的には、制御部100は、ドリフト誤差算出プログラム126に基づいて、GPS衛星12aの同期周波数H2aと確定周波数HFaとの差分であるドリフト誤差D2aを算出する。
なお、上述のGPS衛星12aについての処理と同様に、制御部100は、GPS衛星12bの同期周波数H2bと確定周波数HFbとの差分であるドリフト誤差D2bを算出し、GPS衛星12cの同期周波数H2cと確定周波数HFcとの差分であるドリフト誤差D2cを算出する。
【0056】
なお、本実施の形態とは異なり、周波数H1(図7参照)を初期サーチ周波数とする場合には、確定周波数HFと周波数H1との差分がドリフト誤差D2となる。この場合のドリフト誤差D2は、全ドリフトを示す。
【0057】
また、図5に示すように、端末30は、第1記憶部110に、平均ドリフト誤差算出プログラム128を格納している。平均ドリフト誤差算出プログラム128は、制御部100が、ドリフト誤差情報166に含まれるドリフト誤差D2a,D2b及びD2cの平均値である平均ドリフト誤差Davを算出するためのプログラムである。平均ドリフト誤差算出プログラム128と制御部100は、平均差分算出手段の一例である。
制御部100は、平均ドリフト誤差Davを示す平均ドリフト誤差情報168を第2記憶部150に格納する。
なお、例えば、第1捕捉対象衛星がGPS12aの1個だけの場合には、平均ドリフト誤差Davは、ドリフト誤差D2aと等しい。
なお、捕捉した第1捕捉対象衛星がn個(nは正の整数)であれば、すべての第1差分をnで除した数値が平均ドリフト誤差Davである。
【0058】
図10は、平均ドリフト誤差算出プログラム128の説明図である。
図10に示すように、制御部100は、条件1乃至条件4のいずれかを満たす場合に、平均ドリフト誤差Davを算出する。
条件1は、1秒積算(候補周波数算出処理)で、SNRが1の衛星が1個以上あることである。SNRの衛星が例えば、GPS衛星12aの1個である場合には、平均ドリフト誤差Davは、ドリフト誤差D2aと等しい。なお、この場合、確定周波数HFの算出はせずに、1秒積算でSNRが1に対応する候補周波数HCと同期周波数H2aとの差分がドリフト誤差D2a(及び平均ドリフト誤差Dav)となる。
なお、平均ドリフト誤差Davを算出した後は、制御部100は、上述の候補周波数算出処理、候補周波数確認処理、確定周波数算出処理を中止する。そして、平均ドリフト誤差Davを使用して、各GPS衛星の同期周波数H2を算出し、その同期周波数H2を使用して各GPS衛星を捕捉するようになっている。これは、後述の条件2乃至条件4についても、同様である。
【0059】
条件2は、1秒積算(候補周波数算出処理)で、SNRが0.7以上の衛星が2個以上あることである
【0060】
条件3は、4秒積算(候補周波数確認処理)で、SNRが0.7以上の衛星が1個以上であって、かつ、8秒積算(確定周波数算出処理)が終了したことである。
【0061】
条件4は、4秒積算(候補周波数確認処理)で、SNRが0.5以上の衛星が2個以上であって、かつ、8秒積算(確定周波数算出処理)が終了したことである。
【0062】
また、図5に示すように、端末30は、第1記憶部110に、測位必要数衛星捕捉プログラム130を有する。測位必要数衛星捕捉プログラム130は、制御部100が、上述の平均ドリフト誤差D2avを示す平均ドリフト誤差情報168に基づいて、平均ドリフト誤差D2avの算出に使用した第1捕捉対象衛星以外のGPS衛星を捕捉するための情報である。すなわち、測位必要数衛星捕捉プログラム130と制御部100は、測位必要数衛星捕捉手段の一例である。
なお、ドリフト誤差D2が算出された場合には、そのドリフト誤差D2は、平均ドリフト誤差D1avの算出に使用されるから、平均ドリフト誤差D2avの算出に使用した第1捕捉対象衛星以外のGPS衛星は、ドリフト誤差D2の算出に使用した第1捕捉対象衛星以外のGPS衛星と一致する。
【0063】
図11は、測位必要数衛星捕捉プログラム130の説明図である。
図11に示すように、制御部100は、平均ドリフト誤差D2avの算出に、GPS衛星12a,12b及び12cを使用した場合には、平均ドリフト誤差Davを使用して、例えば、GPS衛星12dを捕捉する。
このとき、制御部100は、使用可能なすべての探索ユニット40a1等のうち、第1捕捉対象衛星を追尾するために必要な探索ユニット40a1等を使用して例えば、第1捕捉対象衛星であるGPS衛星12a,12b及び12cを追尾(トラッキング)する。そして、他の探索ユニットを使用して、測位に必要な数の各GPS衛星12dを捕捉するようになっている。
例えば、第1捕捉対象衛星であるGPS衛星12a,12b及び12cを追尾するためにそれぞれ2個の探索ユニット40a1等を使用すると合計6個の探索ユニット40a1等が必要になる。そして、例えば、すべての探索ユニット40a1等から6個の探索ユニット40a1乃至a6を除いた11個の探索ユニット40a7乃至40a18を使用して、GPS衛星12dを捕捉するようになっている。
すなわち、各GPS衛星12dの当初の初期サーチ周波数H2d等を平均ドリフト誤差D2avに基づいて補正し、補正後の新たな同期周波数を使用してサーチする。
制御部100は、図5の概位置情報152と衛星軌道情報154によって、GPS衛星12dからの信号のドップラー効果を算出することができ、平均ドリフトDavはGPS装置40側の情報であるからGPS衛星12a,12b及び12c以外のGPS衛星12dのサーチにも共通して使用する。このため、GPS衛星12dのサーチはGPS衛星12c等からの信号S4の端末30の位置における周波数と推測される同期周波数SH1d等(図11参照)を基準に開始することができる。上述のように、平均ドリフト誤差Davは、実測によって得た情報であるから正確であり、これに基づいて設定される、同期周波数SH1dも実際に受信する周波数と極めて近い。このため、GPS衛星12dの捕捉を迅速に完了することができる。
すなわち、GPS衛星12dの捕捉が例えば、時間tが1で足りる。これにより、第1捕捉対象衛星12a,12b及び12cを捕捉して平均ドリフト誤差Davを算出した後は、他のGPS衛星12dを迅速に捕捉することができる。
なお、本実施の形態とは異なり、制御部100は、測位必要数衛星捕捉プログラム130に基づいて、複数のGPS衛星12d等を捕捉するようにしてもよい。
【0064】
(本実施の形態の端末30の動作例等について)
以上のように、端末30は構成されるが、以下その動作例を説明する。
図12は端末30の動作例を示す概略フローチャートである。
まず、端末30は、概位置情報152と衛星軌道情報154(図5参照)に基づいて、観測可能なGPS衛星12a等のうち、迅速に捕捉可能と推測される例えば、GPS衛星12a,12b及び12cを第1捕捉対象衛星に決定する(ステップST1)。このステップST1は、第1捕捉対象衛星決定ステップの一例である。
【0065】
続いて、端末30は、割当探索ユニット数の探索ユニット40a1等を使用して、第1捕捉対象衛星であるGPS衛星12a,12b及び12cの捕捉を開始する(ステップST2)。
ステップST2では、図8に示すように、端末30は、例えば前回の測位時のドリフトである初期推定ドリフトD1とドップラー効果DPに基づいて算出した周波数をGPS衛星12a等の初期サーチ周波数H2としてサーチを開始する。
【0066】
続いて、端末30は、ステップST3に進み、候補周波数を算出する(図8参照)。このステップST3は、候補周波数算出ステップの一例である。
続いて、端末30は、SNRが1のGPS衛星があるか、又は、SNRが0.7以上のGPS衛星が2個以上あるか否かを判断する(ステップST4)。
端末30は、ステップST3において、SNRが1のGPS衛星があるか、又は、SNRが0.7以上のGPS衛星が2個以上あると判断した場合には、平均ドリフト誤差Davを算出する(ステップST8)。
これに対して、端末30は、ステップST3において、SNRが1のGPS衛星がなく、かつ、SNRが0.7以上のGPS衛星が2個以上ないと判断した場合には、ステップST5に進み、候補周波数の信頼性を確認する(図8参照)。このステップST5は、候補周波数確認ステップの一例である。
【0067】
続いて、端末30は、ステップST6に進み、確定周波数を算出する(図8参照)。このステップST6は、確定周波数算出ステップの一例である。
続いて、端末30は、ドリフト誤差D2を算出する(ステップST7)。このステップST7は、第1差分算出ステップの一例である。
【0068】
続いて、端末30は、平均ドリフト誤差D2avを算出する(ステップST8)。
続いて、端末30は、測位必要数のGPS衛星を捕捉する(ステップST9)。このステップST9は、測位必要数衛星捕捉ステップの一例である。
続いて、端末30は、測位に成功したか否を判断し(ステップST10)、測位が成功したと判断した場合には、現在位置(測位位置)を出力する(ステップST11)。
これに対して、端末30は、ステップST10において、測位に成功しなかったと判断した場合には、再度測位を行う。
【0069】
上述のステップにより、精度が高いドリフトを算出し、より迅速に測位衛星を捕捉して測位することができる。
【0070】
また、端末30は、必ずしも、水晶発振器ごとに特有のドリフト量と温度との関係を示すデータと温度を測定する回路を設ける必要がないから、小型化、コストの低下が可能である。
【0071】
なお、本実施の形態とは異なり、端末30は、測位必要数以上のGSP衛星12a等から信号を受信し、そのうちから、測位誤差の少ないGPS衛星12a等を選択して測位するようにしてもよい。
【0072】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の第1捕捉対象衛星決定ステップと、候補受信周波数算出ステップと、候補周波数確認ステップと、確定周波数算出ステップと、第1差分算出ステップと、測位必要数衛星捕捉ステップ等を実行させるための端末装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような端末装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0073】
これら端末装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプラグラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewriterble)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0074】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態である端末等を示す概略図である。
【図2】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図3】GPS衛星の一般的なサーチ方法の一例を示す概念図である。
【図4】ドリフトを説明するための概念図である。
【図5】端末の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
【図6】相関処理の説明図である。
【図7】相関積算値等を示す図である。
【図8】候補周波数算出プログラム等の説明図である。
【図9】候補周波数算出プログラム等の説明図である。
【図10】平均ドリフト誤差算出プログラムの説明図である。
【図11】測位必要数衛星捕捉プログラムの説明図である。
【図12】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h・・・GPS衛星、30・・・端末、40・・・GPS装置、40a1乃至40a18・・・探索ユニット、100・・・制御部、112・・・観測可能衛星算出プログラム、114・・・第1捕捉対象衛星決定プログラム、116・・・同期周波数算出プログラム、118・・・候補周波数算出プログラム、120・・・候補周波数確認プログラム、122・・・確定周波数算出プログラム、124・・・候補周波数再算出プログラム、126・・・ドリフト誤差算出プログラム、128・・・平均ドリフト誤差算出プログラム、130・・・測位必要数衛星捕捉プログラム、132・・・測位プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位衛星からの信号に基づいて現在位置を測位する端末装置であって、
前記端末装置は、
前記測位衛星を探索するための複数の探索手段と、
第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定手段と、
前記探索手段を使用して、第1積算時間において、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出手段と、
前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、前記候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認手段と、
前記探索手段を使用して、前記第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出手段と、
各前記第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、前記確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出手段と、
前記第1差分を使用して、前記第1差分の算出に使用した前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉する測位必要数衛星捕捉手段と、を有することを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記候補周波数確認手段による前記候補受信周波数の確認結果が否定的である場合には、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第4積算時間において、再度前記候補受信周波数を算出する候補受信周波数再算出手段を有することを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記第1捕捉対象衛星は、複数であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の端末装置。
【請求項4】
各前記第1捕捉対象衛星に対応する前記第1差分の平均値を算出する平均差分算出手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の端末装置。
【請求項5】
複数の測位衛星からの信号に基づいて現在位置を測位する端末装置が、 第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、第1積算時間において、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、前記候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出ステップと、
前記端末装置が、各前記第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、前記確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出ステップと、
前記端末装置が、前記第1差分の算出に使用した前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉する測位必要数衛星捕捉ステップと、
を有することを特徴とする端末装置の制御方法。
【請求項6】
コンピュータに、
複数の測位衛星からの信号に基づいて現在位置を測位する端末装置が、 第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、第1積算時間において、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、前記候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出ステップと、
前記端末装置が、各前記第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、前記確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出ステップと、
前記端末装置が、前記第1差分の算出に使用した前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉する測位必要数衛星捕捉ステップと、
を実行させることを特徴とする端末装置の制御プログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
複数の測位衛星からの信号に基づいて現在位置を測位する端末装置が、 第1の捕捉対象となる少なくとも1つの第1捕捉対象衛星を決定する第1捕捉対象衛星決定ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、第1積算時間において、前記第1捕捉対象衛星の候補受信周波数を算出する候補受信周波数算出ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第1積算時間よりも長い時間として規定される第2積算時間において、前記候補受信周波数の信頼性を確認する候補周波数確認ステップと、
前記端末装置が、前記探索手段を使用して、前記第2積算時間よりも長い時間として規定される第3積算時間において、確定周波数を算出する確定周波数算出ステップと、
前記端末装置が、各前記第1捕捉対象衛星に対応する予測同期周波数と、前記確定周波数との差分を示す第1差分を算出する第1差分算出ステップと、
前記端末装置が、前記第1差分の算出に使用した前記第1捕捉対象衛星以外の前記測位衛星を捕捉する測位必要数衛星捕捉ステップと、
を実行させることを特徴とする端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−333593(P2007−333593A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166435(P2006−166435)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】