説明

竹とんぼ

【課題】 竹とんぼの回収が容易に行える竹とんぼを提供する。
【解決手段】 プロペラ部とこのプロペラ部の中心部に上端を固定した回転軸部とからなり、この回転軸部の下側を上側のプロペラ部を取り付けた側より重くすることによって構成した飛行方向反転部を設けたことにより、前記課題を解決した。飛行方向反転部は、回転軸部の略中央部から上部側より下部側の径の大きな部分を設けることが好ましく、この回転軸部の下端部を漸次縮径させることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おもちゃの竹とんぼに関するものである。
【背景技術】
【0002】
竹とんぼは、プロペラ部と回転軸部とによって構成される日本の伝統的なおもちゃである。竹とんぼの中には、飛ばすときにプロペラ部と回転軸部とが分離するものと、分離しないものとがある。前者はその飛翔時にプロペラ部が回転軸部から分離されるため、飛翔距離は出るが、飛翔方向が安定しないきらいがある。後者は飛翔距離は若干前者に劣るが、飛翔方向が安定する利点がある。この発明はこの後者に属する。この後者のものは、飛ばす時に前方へ押し出すようにしてやるか、或いは斜目前方に傾けて飛ばすと、かなりの飛翔距離が得られるが、戻ってはこないので、飛ばすたび毎に失速して飛ばした位置より離れたところへ落下してしまい、その都度落下地点まで行って拾い上げなくてはならず、結構煩雑であるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、飛ばした位置に戻って来るように飛ばすことのできる竹とんぼを提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の目的を達成するための本発明に係る竹とんぼは、プロペラ部とこのプロペラ部の中心部に上端を固定した回転軸部とからなり、この回転軸部の下側を上側の前記プロペラ部を取り付けた側より重くすることによって構成した飛行方向反転部を設けたことを特徴とする。
【0005】
本発明に係る竹とんぼにおいて、前記飛行方向反転部は、前記回転軸部の略中央部から上部側より下部側へ径の大きな部分を設けることが好ましい。また、本発明に係る竹とんぼにおいて、前記回転軸部の下端部を漸次縮径させることが好ましい。また、本発明に係る竹とんぼにおいて、前記プロペラ部は、前記回転軸部が固定される固定部と、この固定部から外方向へ等間隔で延びる複数の羽根とからなり、この複数の羽根の先端部の近傍に、重りをそれぞれ設けることが好ましい。また、本発明に係る竹とんぼにおいて、前記プロペラ部は、前記回転軸部が固定される固定部と、この固定部から外方向に180°間隔で配置された2枚の羽根とからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明に係る竹とんぼによれば、回転軸部の下側を上側の前記プロペラ部を取り付けた側より重くすることによって構成した飛行方向反転部を設けたので、竹とんぼはまっすぐ遠くへ飛ばずに途中で反転して飛ばした位置へ戻ってくる。したがって、飛ばした竹とんぼの回収が容易となり、竹とんぼを同じ位置で何回も飛ばして楽しむことができる。この場合、さらに、プロペラ部の各羽根にその中心部から先端側に向けて下り勾配の傾斜を付けたり、各羽根にひねりを入れたり、各羽根の先端側を丸くしたり、回転軸部に粒子状の滑り止めを貼着したり、各羽根の先端側に重りをつけることの全部或は一部を適宜組み合わせることによって、さらに飛行距離を伸ばしたり、手元に戻ってくる機能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る竹とんぼを添付図面に基づいて詳述する。
【0008】
図1〜図4は本発明に係る竹とんぼの一例を示す図である。本発明に係る竹とんぼは、図1〜図4に示すように、プロペラ部2とこのプロペラ部2の中心部に上端を固定した回転軸部3とからなり、この回転軸部3の下側を上側のプロペラ部2を取り付けた側より重くすることによって構成した飛行方向反転部4を設けたことを特徴とする。竹とんぼ1の材料としては、竹が用いられるが、これに限定されず、他の材料、例えば、合成樹脂、木材等を用いたものでもよい。
【0009】
プロペラ部2は、例えば、回転軸部3に固定される固定部21と、この固定部21から径方向外方(外方向)に延びる複数の羽根22とからなる。羽根22の枚数は、複数であれば特に限定されないが、2枚であることが好ましい。羽根22が2枚の場合には、固定部21から径方向外方に延びると共に180°間隔で配置されていることが好ましい。なお、羽根22の枚数が3枚以上の場合には、羽根22は周方向に等間隔を空けて放射状に固定部21に設けられることが好ましい。例えば、羽根22の枚数が3枚の場合には、120°間隔で配置されていることが好ましい。実施例では、各羽根22はその中心部側から各羽根の先端側にかけて下り勾配の傾斜を付けてある。このように構成すると、プロペラ部2が回転した際に、気流が回転軸部の方向へ集まることから、回転軸部3の回転にぶれが生ずるのを、有効に防止して、安定したプロペラ部2の回転を担保することができるものである。また、プロペラ部2を構成する各羽根22に同時に、とくに図3に示すように、ひねりを付けると、より一層プロペラ部2の安定回転の度合いが増すことになる。実施例では下り勾配の角度は、プロペラ部の中心より5°前後とし、羽根のひねり角度は水平状態から5°前後としてある。
【0010】
羽根22は、例えば、上から目視した場合、水平方向において左回転したときに上方の推進力が作用するように形成されていることが好ましい。なお、羽根22は、例えば、側面から目視した場合、水平方向において右回転したときに上方の推進力が作用するように形成してもよく、左回転のときに上方の推進力が作用するものと、右回転のときに上方の推進力が作用するものとの2種類としてもよい。また、羽根22の先端部は丸く加工すると共に、その先端近傍には、回転軸部3の中心から等距離に一対の重り7を固定した状態で設けることができる。羽根22の先端部の丸みは、とくに図1に示したように、風を切る側を大きなアールとし、その反対側は小さなアールとしてある。また、羽根22は風を切る側を薄くして比較的鋭利に形成してもある。重り7の材料としては、竹とんぼ1の材量より重いものであれば、とくに材料に限定はないが、鉛などの金属製であることが好ましい。重り7の固定方法としては、とくに限定されず、例えば、羽根22の先端部近傍に重り孔24(実施例で直径7.5ミリ)を設け、この重り孔24に重り7(実施例で0.65g〜0.85g)を接着剤等の固定材料にて固定するようにしてもよいし、重り7を圧入するようにしてもよい。また、重り7を重り孔24へ入れてかしめて固定させるようにしても良い。さらに、この重り7は羽根22に張り付けるようにすることも考えられ、その取付方法に限定はない。このように重り7をつけると、プロペラ部2の回転慣性力が増して、竹とんぼ1の推進力が強くなることにより竹とんぼ1の飛行距離及び飛行時間を長くすることができる。
【0011】
回転軸部3は、例えば、断面円形の棒状に形成されている。回転軸部3の一端部である先端部がプロペラ部2の固定部21に設けた取付孔23へ挿入固定されている。このプロペラ部2と回転軸部3とは、例えば、回転軸部3の軸を中心に羽根22が径方向外方に延びるように取り付けられて、竹とんぼ1が略T字状に形成されている。プロペラ部2と回転軸部3との固定方法は、接着剤を介在させての圧入であるが、プロペラ部2と回転軸部3とを固定することができれば良く、その固定方法に限定はない。回転軸部3には、竹とんぼ1の飛ぶ方向を反転させる飛行方向反転部4が設けられている。
プロペラ部2と回転軸部3の製作方法、即ち竹とんぼの製作方法は、手作りが望ましく、その場合には天然の真竹より削り出すことが望ましい。天然の肉厚が7ミリ以上の曲がっていない真っすぐな真竹を選び、これを切り出してきて乾燥させ適当な長さの材料に切断した後、適当な容器(鍋や釜)に入れて煮込む。尚、この際に、切断した真竹をさらに加工してプロペラ部と回転軸部を削り出す前の状態に加工したものであっても良い。この材料を約1時間ほど煮込むと、真竹の油分がお湯に溶け出してきて浮力を失い材料が沈むので。これを取り出して水切りをして再乾燥させる。すると、比重が下がり乾燥後の変形が生じない極めて軽く硬い材料になる。
このように乾燥させた材料を用いて、プロペラ部と回転軸部を削り出すわけであるが、プロペラ部を作る際には、羽根に下り勾配をつけつつひねりをつけるようにすることが好ましい。このように羽根を材料から削り出しながら下り勾配やひねりをつけると、完成後の竹とんぼが水に濡れたり、高温の場所に置かれても、熱加工して変形させたもののように、元に戻ってしまうことを極力防ぐことができるものである。このように羽根に下り勾配とひねりを付けることが、厚さ7ミリ以上の肉厚のある真竹が必要となる所以でもある。回転軸部を作る際には、その上端部側のプロペラ部に固着する側から下方に向けて徐々に拡径させて行き、下端部に達する手前で急激に縮径させて、実施例に示した回転軸部3と飛行方向反転部4を得るものである。
【0012】
この飛行方向反転部4は、回転軸部3の下側を上側のプロペラ部2を取り付けた側より重くすることによって、竹とんぼ1の飛ぶ方向を反転させて竹とんぼ1を飛ばした場所やその近傍に戻ってくるならば、特に限定されず、例えば、回転軸部3の略中央部から下方近傍の径を大きくして形成するようにしてもよい。この飛行方向反転部4の径は、竹とんぼ1の材質や大きさ等によって任意に決められる。飛行方向反転部4の上部は、回転軸部3から漸次拡径されていることが好ましい。また、飛行方向反転部4の下端部(回転軸部3の下端部)は、漸次縮径されて縮径部5として形成されていることが好ましい。なお、飛行方向反転部4は、回転軸部3の径を大きくして形成したが、これに限定されず、例えば、回転軸部3の外周にチューブ状の部材を装着するようにしてもよいし、回転軸部3の外周に帯状部材等を巻きつけるようにしてもよいし、回転軸部3の下側に重り等を取り付けるようにしてもよい。回転軸部3にはさらに、小粒子(好ましくは硅砂)を接着剤と共に塗布させると、手で摺り合わせる際に滑り止めとなり、空回りを防止することができる。この滑り止めはまた、羽根に重りをつけたことに伴うもので、手による回転軸部3に対する摺り合わせの際に滑りをなくし、強い回転力をプロペラ部に与えることができるものである。
この竹とんぼの材料は、上述したように真竹を用いることが最も望ましいが、真竹以外の竹(肉厚が7ミリ程度あるものが望ましい。)好ましくはトンキン竹、木材等を用いることができ、削り出し以外の合成樹脂の成形品であることも可能である。
【0013】
次に、本発明に係る竹とんぼ1の作用効果について説明する。この竹とんぼ1を飛ばして遊ぶには、例えば、回転軸部3を両掌で挟んだ状態において回転軸部3(竹とんぼ1)を図5に示すように前方に傾斜させる。この状態のまま、回転軸部3を両掌に挟んで互いに異なる方向に両掌を摺り合わせて例えば右手を前方に突き出すように回転軸部3を回転させる。その際に回転軸部3の手で摺り合わせる部分の外径が太く形成してあるので、回転させ易く、これにより、竹とんぼ1は斜め前方に回転しながら勢い良く飛び出し、飛んでいく。そして、回転軸部3の重心が下部側にあることから、回転軸部3の回転は軸線を一致して安定しぶれることがないので、飛行方向が定まり、飛行距離も増大する。このようにして竹とんぼ1は、前方へ飛んでいって徐々に上昇し、その最上昇位置で回転軸部3に飛行方向反転部4が設けられているために、すなわち、回転軸部3の略中央部から下方近傍までの径が大きく形成されて回転軸部3の略中央部から下方の重量が重いために、回転軸部3が自然に振り子運動を起こして揺動して前傾状態からしだいに直立状態に移り、回転速度が落ちてきつつさらに慣性力によって揺動して後傾状態になるので、プロペラ部2よりも回転軸部3の下方が前方に移動する。このように、プロペラ部2よりも回転軸部3の下方が後方から前方に移動すると、竹とんぼ1はその飛ぶ方向が反転する。その結果、竹とんぼ1は、まっすぐ遠くへ飛ばずに輪を描いて飛ばした場所やその近傍に戻ってくるので、手で回転軸部3をキャッチすることが可能となる。この様子を示したのが図6である。従って、飛ばした竹とんぼ1の回収が容易になり、竹とんぼ1を定位置で何回も飛ばして遊ぶことが可能となる。仮に正確に飛ばした位置へ戻って来なくても、反転して戻ってくるので、竹とんぼ1の回収は容易である。
【0014】
また、竹とんぼ1の羽根22の先端部近傍に重り7を設けることにより、竹とんぼ1を飛ばすときプロペラ部2の回転慣性力、すなわち、竹とんぼ1の推進力が強くなるので、竹とんぼ1の飛行距離及び飛行時間を長くすることができる。その結果、竹とんぼ1を一層楽しく飛ばして遊ぶことができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上説明したように本発明に係る竹とんぼは、回転軸部に、竹とんぼの飛ぶ方向を反転させる飛行方向反転部を設けたことで、竹とんぼはまっすぐ遠くへ飛んだままにならず飛ばした位置やその近傍に戻ってくるので、飛ばした竹とんぼの回収が容易になり、竹とんぼを定位置に居て、或は定位置から余り動くことなく、何回も飛ばして遊ぶことができることから、特に竹とんぼの飛ばし方等の新しい遊戯方法を楽しむことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る竹とんぼの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る竹とんぼの一例を示す正面図である。
【図3】本発明に係る竹とんぼの一例を示す側面図である。
【図4】本発明に係る竹とんぼの一例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る竹とんぼを飛ばす直前の状態を説明するための説明図である。
【図6】本発明に係る竹とんぼを飛ばした様子を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 竹とんぼ
2 プロペラ部
3 回転軸部
4 飛行方向反転部
5 縮径部
7 重り
21 固定部
22 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラ部とこのプロペラ部の中心部に上端を固定した回転軸部とからなり、この回転軸部の下側を上側の前記プロペラ部を取り付けた側より重くすることによって構成した飛行方向反転部を設けたことを特徴とする、竹とんぼ。
【請求項2】
前記プロペラ部は、その中心部から各羽根の先端に向けて下り勾配の傾斜を付けたことを特徴とする、請求項1に記載の竹とんぼ。
【請求項3】
前記プロペラ部の各羽根の先端を丸くしたことを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の竹とんぼ。
【請求項4】
前記プロペラ部の各羽根は、前記回転軸部の側から先端側にかけて少しひねってあることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の竹とんぼ。
【請求項5】
前記回転軸部には、粒子状の滑り止めが貼着されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の竹とんぼ。
【請求項6】
前記飛行方向反転部は、前記回転軸部の略中央部から上部側より下部側へ径の大きな部分を設けたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の竹とんぼ。
【請求項7】
前記回転軸部の下端部を漸次縮径させたことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の竹とんぼ。
【請求項8】
前記プロペラ部は、前記回転軸部が固定される固定部と、この固定部から外方向へ等間隔で延びる複数の羽根とからなり、
この複数の羽根の先端部の近傍に、重りをそれぞれ設けたことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の竹とんぼ。
【請求項9】
前記プロペラ部は、前記回転軸部が固定される固定部と、この固定部から外方向に180°間隔で配置された2枚の羽根とからなることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の竹とんぼ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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