説明

第四級アンモニウム塩を高濃度含有する水中油型乳化物の製造方法

【課題】第四級アンモニウム塩濃度が高いために生じる系の粘度上昇や製剤安定性等を損なうことなく抑制して、特に濃縮型の繊維処理剤、ヘアケア製品等として好適に使用することができる高濃度第四級アンモニウム塩を含んだo/w乳化物の製造方法を提供すること。
【解決手段】水中油型乳化物の全量を基準にして第四級アンモニウム塩の濃度が10〜40重量%である水中油型乳化物の製造方法であって、
(i)(a)第四級アンモニウム塩を含有する油相と(b)水相とを混合して水中油型乳化物を得る工程と、
(ii)該水中油型乳化物に無機電解質含有水溶液を添加して全組成中の第四級アンモニウム塩の濃度が10〜40重量%である水中油型乳化物を得る工程とを含み、
工程(ii)において添加する無機電解質重量が全無機電解質重量の80重量%以上である前記製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の第四級アンモニウム塩を含む水中油型(o/w)乳化物の製造方法に関し、初期粘度が低く、経時での粘度上昇が極めて小さく、長期外観安定性も良好であるo/w乳化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水性液に第四級アンモニウム塩を含むo/w乳化物は、柔軟剤等の繊維処理剤や、ヘアリンス剤、ヘアトリートメント剤等のヘアケア製品などの製品として又は製品原料として好適に使用されているが、近年、これらの製品においては、製造及び輸送時のコストダウン、消費者の使用性等の要請により高濃度化の傾向が高まっており、乳化物中の第四級アンモニウム塩濃度を高めて濃縮型製品として利用する技術が求められている。
しかしながら、第四級アンモニウム塩を高濃度で水性液に分散させようとすると、第四級アンモニウム塩の粒子間の相互作用等により系の粘度が高くなってしまい、その取り扱い性、使用性が問題となっていた。このような第四級アンモニウム塩を含むo/w乳化物の減粘化する方法として、第四級アンモニウム塩を含むo/w乳化物の製造過程において電解質を添加して減粘化する方法が従来より知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、第四級アンモニウム塩の乳化工程時に使用する水相に無機電解質を添加する方法が提案されている。しかしこの方法では、初期時点で大きな粘度低下は得られず、経時でも粘度上昇傾向であり効果が不十分である。
特許文献2では、第四級アンモニウム塩の乳化工程時と、乳化工程後周囲温度に冷却した後の複数回に分けて電解質を添加する方法が提案されている。しかしこの方法では、乳化工程後(冷却後)に添加する電解質の割合が全電解質に対して50%より少ないために特許文献1同様に十分な減粘効果が発揮されない。
特許文献3や4では、特許文献2同様に電解質を分割添加しており、乳化工程後に添加する電解質の割合を高くしている方法が提案されている。しかし乳化工程後の電解質の添加温度が高いために乳化物の経時粘度が上昇してしまう。
特許文献5では電解質を全量乳化工程後に添加してo/w乳化物を調製する方法が提案されている。しかし、粘度に関する記載がなく、また界面活性剤の添加量が非常に少ないため、電解質添加の有無での粘度の影響が小さい。
特許文献6では、第四級アンモニウム塩を高濃度に含む乳化物の減粘化に糖アルコールを添加する方法が提案されている。しかし、これら添加物は添加量が多く、コスト面で高価になってしまう。
従って、特別な装置を使用せず、初期粘度が低く、経時での粘度上昇が極めて小さく、長期外観安定性も良好である、第四級アンモニウム塩を高濃度に含むo/w乳化物の製造方法は、未だ実現できていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開平11−81136
【特許文献2】特表平8−507766
【特許文献3】特開平2−68137
【特許文献4】特開2002−187834
【特許文献5】特開平11−128721
【特許文献6】特開平10−298149
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、第四級アンモニウム塩濃度が高いために生じる系の粘度上昇や製剤安定性等を損なうことなく抑制して、特に濃縮型の繊維処理剤、ヘアケア製品等として好適に使用することができる高濃度第四級アンモニウム塩を含んだo/w乳化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、第四級アンモニウム塩を高濃度で含有するo/w乳化物の製造時に添加する無機電解質の添加順序、添加量を制御することで、o/w乳化物の初期粘度が低く、経時での粘度上昇が極めて小さく、長期外観安定性も良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水中油型乳化物の全量を基準にして第四級アンモニウム塩の濃度が10〜40重量%である水中油型乳化物の製造方法であって、
(i)(a)第四級アンモニウム塩を含有する油相と(b)水相とを混合して水中油型乳化物を得る工程と、
(ii)該水中油型乳化物に無機電解質含有水溶液を添加して全組成中の第四級アンモニウム塩の濃度が10〜40重量%である水中油型乳化物を得る工程とを含み、
工程(ii)において添加する無機電解質重量が全無機電解質重量の80重量%以上である前記製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、初期粘度が低く、経時での粘度上昇が極めて小さく、長期外観安定性も良好である、第四級アンモニウム塩を高濃度に含有したo/w乳化物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(高濃度第四級アンモニウム塩含有のo/w乳化物の製造方法)
本発明の高濃度第四級アンモニウム塩含有のo/w乳化物は、(a)第四級アンモニウム塩を含有する油相成分と、(b)乳化工程で使用する水相成分、及び(c)乳化工程後に添加する水相成分を用いるものである。
前記(a)成分に含有する第四級アンモニウム塩としては、特に制限なく使用することができるが、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。特に一般式(1)で表される第四級アンモニウム塩を含有することが好ましい。

















【0009】
【化1】

【0010】
一般式(1)において、R1の基は、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。R2〜R3の基は以下の(イ)又は(ロ)に記載の基であって同一でも異なっていても良い。
(イ) 水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基又はベンジル基で好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基
(ロ)炭素数10〜26、好ましくは炭素数14〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。
またR4の基は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基又はベンジル基を表す。このうち、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。Xはハロゲン原子又はモノアルキル硫酸基である。例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル硫酸基、エチル硫酸基、水酸基等が挙げられる。このうち、ハロゲン原子、メチル硫酸基が好ましい。
【0011】
一般式(2)において、R4の基は、一般式(1)と同一の意味を有する。R5の基は、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。R6の基は、以下の(イ)又は(ロ)に記載の基であって同一でも異なっていても良い。
(イ)水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基又はベンジル基で好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基
(ロ)炭素数10〜26、好ましくは炭素数14〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。Xは、一般式(1)と同一の意味を有する。
一般式(3)において、R7、R8の基は、どちらか一方が一般式(2)のR5の基、もう一方がR6の基と同一の意味を有する。
【0012】
前記一般式(1)及び一般式(2)の第四級アンモニウム塩の具体例としては、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジ牛脂ジメチルアンモニウムクロリド、ジヤシ油ジメチルアンモニウムクロリド、ジデシルメチルベンジルアンモニウムクロリド、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−ステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−オレオイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、1,2−ジタローイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパンクロリド、1,2−ジパームオイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパンクロリド、N,N−ジパルミオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−リノーレイルオキシエチル−N−メチル−N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−パルミオイルオキシエチル−N−メチル−N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジパ−ムオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N,N−トリステアロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N,N−トリオレオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N,N−トリパ−ムオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジリノーレイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジパルミオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジパ−ムオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェートが好ましい。上記一般式(3)のモノ長鎖型イミダゾリン塩の具体例としては、1−ステアロイルオキシエチル−2−メチルイミダゾリン塩酸塩、1−ステアロイルオキシエチル−2−エチルイミダゾリン塩酸塩、1−ステアロイルオキシエチル−2−プロピルイミダゾリン塩酸塩などが挙げられる。
【0013】
前記一般式(1)〜(3)中の長鎖炭素部位は一般的な油脂から誘導される脂肪酸の残基である。油脂としては例えば、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ脂、カポック油、白カラシ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、シナアット油、シナキリ油、大豆油、茶実油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、木ロウ、落花生油、馬脂、牛脂、牛脚脂、牛酪脂、豚脂、山羊脂、羊脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。これらの油脂を硬化、変性、精製等を行ってもよく、2種以上の油脂を混合しても良い。
前記第四級アンモニウム塩の濃度は、水中油型乳化物の全量を基準にして10〜40重量%、好ましくは12〜38重量%、より好ましくは15〜35重量%である。前記第四級アンモニウム塩の濃度が低すぎると第四級アンモニウム塩の高濃度化に伴う粘度上昇を抑制するという本発明の目的から外れてしまい、濃縮型の製品として利用することができない。一方、濃度が高すぎると減粘効果が低下する。
(a)成分に含まれる油分としては、シリコーン油類等を挙げることができる。
前記シリコーン油類の具体例としては、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。このうち、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。特に、重量平均分子量10000〜30000のポリエーテル変性シリコーンが好ましい。側鎖がポリオキシアルキレン基であるのが特に好ましい。
【0014】
前記(a)成分には、前記第四級アンモニウム塩の乳化分散を容易にするため、必要に応じて非イオン性界面活性剤を配合することができる。非イオン性界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等が挙げられる。
このような非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸POE(15)グリセリル、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、トリオレイン酸POE(20)ソルビタン、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット、POE(20)ひまし油、POE(40)ひまし油、POE(50)ひまし油、POE(20)硬化ひまし油、POE(40)硬化ひまし油、POE(60)硬化ひまし油、POE(100)硬化ひまし油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25EO)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40EO)、POE(20)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(40)セチルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(20)イソデシルエーテル、POE(60)イソヘキサデシルエーテル、POE(40)イソトリデシルエーテル、POE(50)イソトリデシルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(25)オクチルドデシルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(7.5)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ステアリルアミン、POE(15)ステアリン酸アミド等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、特にPOE(40)イソトリデシルエーテルが好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記非イオン性界面活性剤のo/w乳化物中の配合濃度は0.5〜10重量%、好ましくは1〜7重量%、より好ましくは2〜5重量%である。0.5重量%より少ないと第四級アンモニウム塩の乳化分散効果が十分発揮されないために経時で分離等が生じ、10重量%より多いと安定なo/w乳化粒子が形成されないために経時でゲル化してしまう。
前記(a)成分には、前記第四級アンモニウム塩、及び前記非イオン性界面活性剤から持ち込まれる有機溶媒や水を含んでいてもよい。この場合、前記第四級アンモニウム塩及び前記非イオン性界面活性剤と、有機溶媒及び/又は水との比率は、質量比で10:1〜1:1が好ましく、8:1〜3:1がより好ましい。前記有機溶剤が多いと乳化時の粒子化が困難となるため、粗大な粒子が多くなり安定性に劣る。一方、水が多いと前記(a)成分がゲル化増粘し、乳化が困難となる。
前記有機溶媒の具体例としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール等の低級アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。
【0016】
前記(a)成分には、必要に応じて油性成分を配合することもできる。このような油性成分としては、低級アルコール、多価アルコール等の有機溶剤、油溶性香料、油溶性抗菌剤、脂肪酸類、酸化防止剤等を挙げることができ、これらの成分の配合量は本発明の効果を妨げない範囲で適宜選定することができる。
水相成分である前記(b)成分は、水の他、無機電解質もまた含有することができる。
水相成分である前記(c)成分は、水と無機電解質とを含有する。
本発明において使用できる無機電解質としては、水溶液中でイオン化する無機塩であれば特に限定するものではないが、特に元素の周期表の1、2族に属する金属を用いたハライド塩、硫酸塩が好ましい。具体例としては、塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化カルシウム,硫酸ナトリウム,塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。またこれらは単独でも2種以上を併用してもよい。このうち、塩化ナトリウム,塩化カルシウム,硫酸マグネシウムが好ましく、塩化カルシウムが特に好ましい。
【0017】
前記o/w乳化物製造時に前記(b)成分及び(c)成分からそれぞれ添加される無機電解質の割合は、(c)成分添加時に添加される無機電解質重量が全無機電解質重量の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であることが望ましい。(c)成分添加時に添加される無機電解質重量が全無機電解質重量の80%未満の場合、十分な初期粘度低下効果が得られない。
前記(b)成分及び(c)成分における無機電解質濃度は、飽和状態以下であれば任意である。またo/w乳化物中の無機電解質濃度は0.1〜5重量%、好ましくは0.15〜3.5重量%、より好ましくは0.2〜2重量%が望ましい。0.1重量%より少ないと十分な減粘効果が発揮されず、5重量%より多いと経時で分離等が生じ、o/w乳化物の安定性が悪くなる。
前記(c)成分添加直後の水中油型乳化物の温度は、10〜37℃、好ましくは12〜34℃、より好ましくは15〜30℃が望ましい。10℃より低いと長期保存時に分離を引き起こし易くなる。37℃より高くなると、経時で増粘傾向が顕著に表れてしまう。
【0018】
前記(b)成分及び(c)成分には、必要に応じて、前記(a)成分で添加可能な非イオン性界面活性剤を添加しても良い。非イオン性界面活性剤の種類、濃度等は前記(a)成分添加時と同等である。分散安定剤、低温安定化剤、色素類、水溶性高分子、水溶性有効成分、pH調整剤等もまた添加することができる。また、これらの(b)成分及び(c)成分への添加割合は任意である。
前記水溶性有効成分としては、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤等があり、その具体例として、塩化ベンザルコニウム、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾロン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾロン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
前記pH調整剤としては、一般的な調製剤である塩酸、硫酸、クエン酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
【0019】
本発明の工程(i)において(a)成分と(b)成分とを混合して水中油型乳化物を生成する方法としては、一般的に知られている乳化法であれば特に制限されるものではなく、目的に応じて選択することができる。例えば本発明を、シリコーン油類を含有した衣料用柔軟仕上げ剤調製で活用するならば、特開平6−269656記載の所謂乳化液晶法を用いることができる。すなわち、第四級アンモニウム塩とシリコーン油類が含有する前記(a)成分を混合し、これに無機電解質を含有する前記(b)成分の一部を添加して液晶を形成させた後(液晶形成工程)、該液晶に前記(b)成分の残量を添加・混合して液晶を水相に分散させ、転相させる(分散工程)ことで連続的にo/w乳化物(1)を得ることができる。
(a)成分と(b)成分とを混合するときの各成分の温度は同じでも異なっていてもよい。(a)成分の温度は、通常30〜70℃であり、40〜60℃であるのが油分の混合性や臭気劣化等の観点から好ましい。(b)成分の温度は、通常35〜75℃であり、45〜65℃であるのが(a)成分との混合性、液晶形成状態の観点から好ましい。
工程(i)で得られたo/w乳化物の温度は、(c)成分と混合したときに10〜37℃になる温度に調節するのが好ましい。
尚、本明細書において、工程(i)において得られる水中油型乳化物を「o/w乳化物(1)」と称することもある。
【0020】
本発明の工程(ii)においては、工程(i)で得られたo/w乳化物中に(c)成分を均一分散することができれば特に使用する装置の制限はなく、例えばバッチ式であればパドルやプロペラ羽根等を備えた攪拌槽やアジホモミキサー等を、連続式であればラインミキサーやラインホモミキサー、スタティックミキサー等が挙げられる。また、前記(c)成分及び工程(i)で得られたo/w乳化物が混合される前のそれぞれの温度は、混合後に得られるo/w乳化物の温度が10℃以上37℃以下になるように制御されれば特に制限されるものではない。
尚、本明細書において、工程(ii)において得られる水中油型乳化物を「o/w乳化物(2)」と称することもある。
本発明により得られるo/w乳化物の初期及び経時粘度は、ハンドリングの面から低粘度が好ましく、例えば25℃での粘度は1500mPa・s以下が好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
前記(a)成分で使用した第四級アンモニウム塩混合物の組成を表1に示す(単位:重量%)。
【0022】
【表1】

【0023】
前記(a)成分で使用した非イオン性界面活性剤は、POE(40)イソトリデシルエーテル(ライオンケミカル製)である。
前記(a)成分で使用したシリコーン油は、ポリエーテル変性シリコーン(東レ製CF1188HV)である。
<乳化法・調製方法>
特開平6−269656記載の液晶乳化法で前記第四級アンモニウム塩を含有するo/w乳化物を連続的に調製した。液晶形成工程では、乳化機としてラインミキサー(「ラインミキサー(1)」とする,同型の4枚タービン羽根2段組,1段目の羽根の位置(容器底より)21.2mm,2段目の羽根の位置(容器底より)55.9mm,攪拌羽根の羽根径52.6mm,攪拌羽根の羽根幅6.6mm,容器内径66.0mm,容器容量0.29L)を使用した。分散工程では、乳化機としてラインミキサー(「ラインミキサー(2)」とする,同型の4枚タービン羽根2段組,1段目の羽根の位置(容器底より)24.4mm,2段目の羽根の位置(容器底より)65.7mm,攪拌羽根の羽根径40.1mm,攪拌羽根の羽根幅7.9mm,容器内径80.0mm,容器容量0.50L)を使用した。
乳化工程後のo/w乳化物(1)と無機電解質との混合装置は、スタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテド製,管内径13.0mm,管長351.0mm,エレメント数18段)を使用した。
【0024】
[実施例1]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(3882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(400g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(14330g)を予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(100g)を精製水(488g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速254.1g/min、前記成分(b)の一部を流速179.1g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b)の残り(流速537.4g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)を連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、29.4g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物である水中油型乳化物を流速1000g/min、30℃で得た。
【0025】
[実施例2]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(3882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(400g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(3582g,これをb-1とする)、及び精製水(10748g)と17%塩化カルシウム水溶液(58g)の混合液(これをb-2とする)をそれぞれ予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(90g)を精製水(440g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速254.1g/min、前記成分(b-1)を流速179.1g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b-2、流速540.3g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、26.5g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0026】
[実施例3]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(3882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(400g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(3582g,これをb-1とする)、及び精製水(10748g)と17%塩化カルシウム水溶液(118g)の混合液(これをb-2とする)をそれぞれ予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(80g)を精製水(390g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速254.1g/min、前記成分(b-1)を流速179.1g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b-2、流速543.3g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、23.5g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0027】
[実施例4]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(3882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(400g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(14682g)を予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(40g)を精製水(196g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速254.1g/min、前記成分(b)の一部を流速183.5g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b)の残り(流速550.6g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、11.8g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0028】
[実施例5]
実施例1と同様の方法で、(c)成分を予め10℃に保温、及びo/w乳化物(1)の冷却温度を10℃に変更することで、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、10℃で得た。
[実施例6]
実施例1と同様の方法で、(c)成分を予め34℃に保温、及びo/w乳化物(1)の冷却温度を34℃に変更することで、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、34℃で得た。
[実施例7]
実施例1と同様の方法で、(c)成分を予め37℃に保温、及びo/w乳化物(1)の冷却温度を37℃に変更することで、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、37℃で得た。
【0029】
[実施例8]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(3882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(100g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(14630g)を予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(100g)を精製水(488g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速239.1g/min、前記成分(b)の一部を流速182.9g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b)の残り(流速548.6g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、29.4g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0030】
[実施例9]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(3882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(400g)及びシリコーン(2000g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(12730g)を予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(100g)を精製水(488g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速334.1g/min、前記成分(b)の一部を流速159.1g/minでラインミキサー(1)に供給する。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b)の残り(流速477.4g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行う。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、29.4g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0031】
[実施例10]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(5882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(600g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(11836g)を予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(150g)を精製水(732g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速364.1g/min、前記成分(b)の一部を流速148.0g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b)の残り(流速443.8g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、44.1g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0032】
[実施例11]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(8236g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(800g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(8988g)を予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(200g)を精製水(976g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速491.8g/min、前記成分(b)の一部を流速112.4g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b)の残り(流速337.0g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、58.8g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
[実施例12]
実施例1と同様の方法で、(c)成分の無機電解質に塩化ナトリウムを用いて、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
[実施例13]
実施例1と同様の方法で、(c)成分の無機電解質に硫酸マグネシウムを用いて、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0033】
[比較例1]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(3882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(400g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(3582g,これをb-1とする)、及び精製水(10748g)と17%塩化カルシウム水溶液(294g)の混合液(これをb-2とする)をそれぞれ予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(50g)を精製水(244g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速254.1g/min、前記成分(b-1)を流速179.1g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b-2、流速552.1g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、14.7g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0034】
[比較例2]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(3882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(400g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(3582g,これをb-1とする)、及び精製水(10748g)と17%塩化カルシウム水溶液(588g)の混合液(これをb-2とする)をそれぞれ予め容器に用意して60℃に加温した。まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速254.1g/min、前記成分(b-1)を流速179.1g/minでラインミキサー(1)に供給する。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b-2、流速566.8g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行う。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0035】
[比較例3]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(5882g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(600g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(2960g,これをb-1とする)、及び精製水(8876g)と17%塩化カルシウム水溶液(448g)の混合液(これをb-2とする)をそれぞれ予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(74g)を精製水(360g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速364.1g/min、前記成分(b-1)を流速148.0g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b-2、流速466.2g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、21.7g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0036】
[比較例4]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(8236g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(800g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(2248g,これをb-1とする)、及び精製水(6740g)と17%塩化カルシウム水溶液(588g)の混合液(これをb-2とする)をそれぞれ予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(100g)を精製水(488g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速491.8g/min、前記成分(b-1)を流速112.4g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b-2、流速366.4g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、29.4g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0037】
[比較例5]
成分(a)として表1で示した第四級アンモニウム塩(12588g、85%エタノール溶液)、非イオン性界面活性剤(1000g)及びシリコーン(800g)の混合物を予め容器に用意して55℃に加温した。一方、成分(b)として精製水(6142g)を予め容器に用意して60℃に加温した。さらに(c)成分として塩化カルシウム(250g)を精製水(1220g)で溶解させた物を予め容器に用意しておき30℃に保温した。
まず、液晶形成工程として前記成分(a)を流速619.4g/min、前記成分(b)の一部を流速76.8g/minでラインミキサー(1)に供給した。その時のラインミキサー(1)の回転数は1800rpmである。得られた液晶物と前記成分(b)の残り(流速230.3g/min)をラインミキサー(2)に供給し分散工程を行った。分散工程でのラインミキサー(2)の回転数は5100rpmである。得られたo/w乳化物(1)(約60℃)は連続的に熱交換器により30℃に冷却し、最後にo/w乳化物(1)に30℃に保温した(c)成分(17%塩化カルシウム水溶液、73.5g/min)を連続的に添加、前記スタティックミキサーで混合し、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、30℃で得た。
【0038】
[比較例6]
比較例1と同様の方法で、o/w乳化物(1)の冷却後の温度を40℃、(c)成分の温度を40℃とし、目的物であるo/w乳化物(2)を流速1000g/min、40℃で得た。
[粘度測定方法、保存方法]
東京計器製BL型回転粘度計を使用して前記o/w乳化物(2)の粘度測定を行った。その際、使用容器は日電理科硝子株式会社製びガラス容器SV−50を用い、容器の底から6cmの高さまでサンプルを入れて測定した。サンプル採取後から5分後粘度測定前までは、前記(c)成分添加直後o/w乳化物温度と同温度の恒温槽に保管した。5分後時の粘度測定温度は、前記(c)成分添加直後o/w乳化物温度と同温度で行った。5分後時粘度測定後、直ぐにサンプルを25℃恒温槽に入れて保存を開始した。1日後以降の粘度測定温度は25℃で測定した。使用ローターは粘度が1000mP・s未満ではNo.2ローターで、1000以上4000mPa・s未満ではNo.3ローターで、4000mP・s以上ではNo.4ローターを用い、それぞれ30rpmで20秒後の値を測定値とした。
【0039】
[外観評価]
日電理科硝子株式会社製ガラス容器SV−50に底から5cmの高さまでサンプルを採取し、採取直後から25℃恒温槽にて1ヶ月保存し、その後目視にて状態変化を観察した。分離の程度は定規にて測定した。
◎:均一分散
○:分離層が3mm未満
△:分離層が3mm以上10mm未満
×:分離層が10mm以上又はゲル化
以上の実施組成、比較組成[(a)成分、(b)成分及び(c)成分]、及び結果を表2に示す。





































【0040】
【表2】

【0041】
表2によれば、本発明(実施例1〜3)の場合、第四級アンモニウム塩濃度が16.5%時において、無機電解質である塩化カルシウムの添加全量に対する乳化工程後の添加割合[前記(c)成分]が、100%、90%、80%になるように配合すると、前記o/w乳化物(2)の初期粘度及び1ヶ月までの経時粘度が約30〜40mPa・sと低粘度でかつ増粘が抑制され、保存1ヵ月後の外観も均一分散が維持された。それに対し、比較例1〜2のように塩化カルシウムの前記添加割合が、50%、0%にすると、経時での増粘傾向が確認され、保存1ヶ月後の外観も大きな分離が確認された。この結果は、第四級アンモニウム塩濃度が25%、35%の場合も同様である(実施例10〜11、比較例3〜4)。しかしながら、第四級アンモニウム塩濃度が45%の場合、塩化カルシウムの前記添加割合を100%にしても前記o/w乳化物(2)の粘度が経時で上昇しゲル化してしまった(比較例5)。
【0042】
表2によれば、本発明(実施例1〜6)の場合、前記(c)成分を前記o/w乳化物(1)に添加した直後温度が10〜34℃であると、前記の通りo/w乳化物(2)の初期、経時粘度及び外観は良好であった。また前記(c)成分を前記o/w乳化物(1)に添加した直後温度が37℃であると、前記の通りo/w乳化物(2)の経時粘度が僅かながら高くなることが確認されたが、外観は良好であり大きな問題はなかった(実施例7)。
表2によれば、本発明(実施例8〜9)の場合、前記(c)成分を前記o/w乳化物(1)に配合する前記非イオン性界面活性剤濃度が0.5〜10重量%であると、前記の通りo/w乳化物(2)の初期、経時粘度及び外観は良好であった。
表2によれば、本発明(実施例1、12〜13)の場合、前記(c)成分の無機電解質に元素周期表の1、2族に属する金属のハライド塩や硫酸塩を用いると、前記の通りo/w乳化物(2)の初期、経時粘度及び外観は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の第四級アンモニウム塩を含有するo/w乳化物の製造方法より製造されるo/w乳化物は、初期粘度が低く、経時での粘度上昇が極めて小さく、長期外観安定性も良好であるため、衣料用柔軟仕上げ剤として好適に使用可能であるが、これに限られるものではなく、例えば、化粧料、洗浄料等にも好適も利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型乳化物の全量を基準にして第四級アンモニウム塩の濃度が10〜40重量%である水中油型乳化物の製造方法であって、
(i)(a)第四級アンモニウム塩を含有する油相と(b)水相とを混合して水中油型乳化物を得る工程と、
(ii)該水中油型乳化物に無機電解質含有水溶液を添加して全組成中の第四級アンモニウム塩の濃度が10〜40重量%である水中油型乳化物を得る工程とを含み、
工程(ii)において添加する無機電解質重量が全無機電解質重量の80重量%以上である前記製造方法。
【請求項2】
工程(ii)において無機電解質含有水溶液を添加した直後の水中油型乳化物の温度が10℃以上37℃以下である請求項1記載の水中油型乳化物の製造方法。

【公開番号】特開2007−237050(P2007−237050A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61304(P2006−61304)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】