説明

第四級アンモニウム塩

【課題】樹脂との相溶性並びに有機溶剤及び他のモノマーへの溶解性がよく樹脂組成物の帯電防止剤として、また紫外線硬化型コート剤の帯電防止付与性モノマーとしての利用が期待できる、新規な第四級アンモニウム塩を提供すること。
【解決手段】式(1):
【化1】


(式中、R、R及びRは、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、炭素数1から6のアルキル基を表し、Rはメチル基又は水素原子を表す。Aは、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン又はテトラフルオロボレートアニオンを表す。)で示される第四級アンモニウム塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な第四級アンモニウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシアルキルアンモニウム=クロリドは、架橋助剤として公知である(例えば、特許文献1参照)。本発明者は、該化合物は第四級アンモニウム塩であるので、樹脂組成物への帯電防止剤としての利用を試みた。該化合物を樹脂と混合したが、均一な樹脂組成物を得ることができず、このため表面抵抗率の測定をすることもできず、しかも樹脂の透明性を損なう結果となった(後述の比較応用例1参照)。また、該化合物がエチレン性二重結合を有するので、有機溶媒とともに多官能アクリレートモノマーに配合して紫外線硬化型コート剤の帯電防止付与性モノマーとしての利用を試みたが、均一な紫外線硬化型コート剤を得ることができず、このため表面抵抗率を測定することもできなかった(後述の比較応用例2参照)。
このように、該化合物は樹脂との相溶性が悪く、また有機溶剤及び他のモノマーへの溶解性が極めて低いので、樹脂、コート剤等の帯電防止分野には使用できないものである。
【特許文献1】特開昭58−138736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、樹脂との相溶性並びに有機溶剤及び他のモノマーへの溶解性がよく樹脂組成物の帯電防止剤として、また紫外線硬化型コート剤の帯電防止付与性モノマーとしての利用が期待できる、新規な第四級アンモニウム塩を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、下記式(1)で示される第四級アンモニウム塩が、樹脂との相溶性及び有機溶剤への溶解性がよいため、表面抵抗を低下させた均一な樹脂組成物が得られることを見出した。また、該第四級アンモニウム塩は、有機溶剤及び他のモノマーへの溶解性が良好であるため、均一な紫外線硬化型コート剤を得ることができ、コート剤の帯電防止付与性モノマーとして利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、式(1):
【0006】
【化1】

(式中、R、R及びRは、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、炭素数1から6のアルキル基を表し、Rはメチル基又は水素原子を表す。Aは、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン又はテトラフルオロボレートアニオンを表す。)で示される第四級アンモニウム塩(以下、アンモニウム塩(1)という。)に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアンモニウム塩(1)は、樹脂との相溶性が良好で、樹脂組成物に配合すればその表面抵抗を低下させることができるので、樹脂組成物の帯電防止剤としての利用、また、有機溶媒及び他のモノマーへの溶解性もよく、単官能モノマーとして紫外線硬化型コート剤に配合すればそのコート剤の硬化被膜の表面抵抗を低下させることができるので、帯電防止付与性モノマーとしての利用が期待でき有用な化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
式(1)中、R、R及びRは、炭素数1から6のアルキル基を表す。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0009】
式(1)中、Rは、メチル基又は水素原子を表し、好ましくはメチル基である。
【0010】
で示されるアニオンとしては、ビス(フルオロメタンスルホニル)アミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン等が挙げられ、好ましくはビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン及びトリフルオロメタンスルホネートアニオンである。
【0011】
本発明のアンモニウム塩(1)の具体例としては、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、
【0012】
2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、
【0013】
2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、
【0014】
2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、
【0015】
2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート、
【0016】
2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジエチルメチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジプロピルメチルアンモニウム=テトラフルオロボレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルジブチルメチルアンモニウム=テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0017】
アンモニウム塩(1)は、例えば式(2):
【0018】
【化2】

(式中、R、R、R及びRは前記と同じ。Xはハロゲンイオンを表す。)で示される第四級アンモニウム=ハライド(以下、アンモニウム=ハライド(2)という。)を、式(3):
(3)
(式中、Mは、水素イオン又はアルカリ金属イオンを表す。Aは、前記に同じ。)で示される酸又はそのアルカリ金属塩(以下、酸類(3)という。)
で、アニオン交換することにより製造することができる。
【0019】
アンモニウム=ハライド(2)は、市販品を用いてもよいし、例えば、式(4):
【0020】
【化3】

(式中、Rは前記に同じ。)で表されるグリシジル(メタ)アクリレートと式(5):
NH (5)
(式中、R及びRは前記に同じ。)で表されるアミン(以下、アミン(5)という。)を反応して得られる2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシジアルキルアミンを式(6):
―X (6)
(式中、R及びXは前記に同じ。)で表されるアルキルハライド(以下、アルキルハライド(6)という。)と反応させることで製造できる。
【0021】
アミン(5)としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルメチルアミン、エチルプロピルアミン等が挙げられる。
【0022】
アルキルハライド(6)としては、例えば、メチルクロリド、メチルブロミド、メチルヨージド、エチルクロリド、エチルブロミド、エチルヨージド、プロピルクロリド、プロピルブロミド、プロピルヨージド、ブチルクロリド、ブチルブロミド、ブチルヨージド等が挙げられる。
【0023】
アルキルハライド(6)の使用量は、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシジアルキルアミン1モルに対して0.5モル〜5モル、好ましくは0.6モル〜3モルであり、より好ましくは1モル〜2モルである。
【0024】
2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシジアルキルアミンとアルキルハライド(6)との反応は、溶媒を使用してもしなくてもよく、溶媒を使用する場合の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量は、特に制限はないが、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシジアルキルアミン1重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜2重量部である。
【0025】
2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシジアルキルアミンとアルキルハライド(6)との反応を実施するには、例えば、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシジアルキルアミン、アルキルハライド(6)及び溶媒の混合物を通常20℃以上、好ましくは30℃〜100℃で加熱攪拌するだけでよい。
【0026】
上記の方法により、アンモニウム=ハライド(2)を含む反応混合物を得た後、得られた反応混合物をアンモニウム塩(1)を製造するための反応にそのまま用いてもかまわない。必要であれば、活性炭を添加し、脱色したアンモニウム=ハライド(2)を用いることもできる。また必要であれば、濃縮してアンモニウム=ハライド(2)を主成分とする残渣を得、この残渣を本発明のアンモニウム塩(1)を製造するための反応にそのまま用いることもできる。また、さらに必要であれば、残渣を有機溶媒と混合し、残渣に含まれる未反応原料等を有機溶媒に溶解した後ろ過して得られる、精製されたアンモニウム=ハライド(2)を用いることもできる。
【0027】
酸類(3)としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ホウフッ化水素酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、リチウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド、リチウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、リチウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、カリウム=ヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ナトリウム=テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0028】
酸類(3)の使用量は、アンモニウム=ハライド(2)1モルに対し、通常0.5モル以上であり、好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0029】
アニオン交換反応は、通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、通常アンモニウム=ハライド(2)1重量部に対して通常20重量部以下、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
【0030】
アンモニウム=ハライド(2)、酸類(3)及び水の混合順序は特に限定されず、アンモニウム=ハライド(2)と水を混合した後に酸類(3)を添加してもよいし、酸類(3)と水を混合した後にアンモニウム=ハライド(2)を添加してもよい。
【0031】
反応温度は、通常0℃以上、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは20〜60℃である。
【0032】
反応終了後の反応液からアンモニウム塩(1)を取り出す方法としては、反応液を有機層と水層に分離し、所望により有機層を水洗した後、有機層を濃縮することによってアンモニウム塩(1)を得る方法、水に不溶の有機溶媒(例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン等)を反応中又は反応後に添加し、アンモニウム塩(1)を水に不溶の有機溶媒に抽出後、得られた抽出層を所望により水洗し、次いで有機溶媒を留去することによりアンモニウム塩(1)を得る方法等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例中、表面抵抗率は三菱化学株式会社製HirestaHT−210を用い、印加電圧500Vにて測定した。
【0034】
実施例1
2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=クロリド(HMPTA−Cl)の50%水溶液115.6g(クロロイオンとして0.235モル)、リチウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド74.1g(0.258モル)、イオン交換水115gを混合して、25℃で3時間攪拌した。反応終了後、有機層を分液操作により分離し、イオン交換水115gで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下で乾燥し、液状の2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(HMPTA−TFSI)99.6gを得た(収率87.9%)。以下にHMPTA−TFSIのNMRデータを示す。
【0035】
H−NMR((CDCO) σ:1.96(s,3H)、3.25(s,9H)、3.48(d,2H)、4.15(d,2H)、4.45−4.48(m,1H)、4.87(s,1H)、5.69(s,1H)、6.18(s,1H)
【0036】
実施例2
HMPTA−Clの50%水溶液32g(クロロイオンとして0.065モル)、リチウム=トリフルオロメタンスルホネート11.5g(0.071モル)、イオン交換水22.8g及び酢酸エチル150gを混合して、25℃で3時間攪拌した。反応終了後、有機層を分液操作により分離し、イオン交換水22.8gで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、ワックス状の2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=トリフルオロメタンスルホネート(HMPTA−TF)22.0gを得た(収率96.4%)。以下にHMPTA−TFのNMRデータを示す。
【0037】
H−NMR((CDCO) σ:1.97(s,3H)、3.25(s,9H)、3.48(d,2H)、4.15(d,2H)、4.45−4.48(m,1H)、4.85(s,1H)、5.69(s,1H)、6.18(s,1H)
【0038】
実施例3
HMPTA−Clの50%水溶液32g(クロロイオンとして0.065モル)、カリウム=ヘキサフルオロホスフェート13.2g(0.071モル)、イオン交換水22.6g及び酢酸エチル150gを混合して、25℃で3時間攪拌した。反応終了後、有機層を分液操作により分離し、イオン交換水22.6gで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、固体状の2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート(HMPTA−PF6)16.3gを得た(収率72.4%)。以下にHMPTA−PF6のNMRデータを示す。
【0039】
H−NMR((CDCO) σ:1.96(s,3H)、3.24(s,9H)、3.47(d,2H)、4.15(d,2H)、4.45−4.48(m,1H)、4.85(s,1H)、5.68(s,1H)、6.18(s,1H)
【0040】
応用例1〜3及び参考例1
2液架橋型アクリル粘着剤SKダイン909A(登録商標、綜研化学株式会社製)100重量部に、帯電防止剤として表1のアンモニウム塩(1)5重量部、アクリル樹脂用硬化剤としてL−45(綜研化学株式会社製)0.2重量部、及び希釈溶剤としてメチルエチルケトン50重量部を添加して粘着剤液を調製した。この粘着剤液をポリカーボネート上にバーコーターを用いて乾燥厚み約10μmで塗布した後、80℃で5分間加熱硬化させて評価用試験粘着板を作製した。作製した試験粘着板を23℃、50%RHの雰囲気中に24時間保持した後、23℃、50%RHで塗布面の表面抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。
参考例1として、アンモニウム塩(1)を使用しない以外は応用例1と同様にして、評価用試験粘着板の作製、保持及び表面抵抗率測定を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
比較応用例1
帯電防止剤として、HMPTA−Clを用いて上述の粘着剤液を調整したが、均一な粘着剤液を得ることができず、表面抵抗率の測定をすることができなかった。
【0043】
表1の結果から、アンモニウム塩(1)を添加しても均一な粘着剤液が得られ、またアンモニウム塩(1)を帯電防止剤として配合することによって該粘着剤液から作製した粘着剤組成物は、良好な帯電防止性と透明性を示すことがわかった。
【0044】
応用例4〜6及び参考例2
多官能アクリレートモノマーとしてトリペンタエリスリトールデカアクリレート(T−PE−A)、帯電防止付与性モノマーとして表2のアンモニウム塩(1)、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び有機溶媒(イソプロパノール、メチルエチルケトン及び/又は酢酸エチル)を混合して紫外線硬化型コート剤を調製した。このコート剤を用いて、ポリカーボネート上にバーコーターを用いて乾燥厚み約5μmで被膜を作製した後、80℃で5分間乾燥させ、高圧水銀灯下120W/cmで1J/cm紫外線を照射し、硬化させて評価用試験コート板を作製した。作製した試験コート板を23℃、50%RHの雰囲気中に24時間保持した後、23℃、50%RHで硬化被膜面の表面抵抗率を測定した。表2に紫外線硬化型コート剤の組成、外観及び評価試験用コート板の表面抵抗率の測定結果を示す。また、評価用試験コート板を流水約10L/分に30秒間さらし、乾燥後、上述と同様にして硬化被膜面の表面抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。
参考例2として、アンモニウム塩(1)を使用しない以外は応用例4と同様にして、評価用試験コート板の作製、保持及び表面抵抗率測定、並びに流水後の表面抵抗率測定を行った。その結果を表2に示す。

【0045】
【表2】

IPA:イソプロパノール
MEK:メチルエチルケトン
EA:酢酸エチル
【0046】
比較応用例2
帯電防止付与性モノマーとして、HMPTA−Clを用いて上述の紫外線硬化型コート剤を調整したが、均一な紫外線硬化型コート剤を得ることができず、表面抵抗率の測定をすることができなかった。
【0047】
表2の結果から、アンモニウム塩(1)を添加しても均一な紫外線硬化型コート剤が得られ、またアンモニウム塩(1)を帯電防止付与性モノマーとして用いると該コート剤から作製したコート膜は、良好な帯電防止性と透明性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で示される第四級アンモニウム塩。
式(1):
【化1】

(式中、R、R及びRはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、炭素数1から6のアルキル基を表し、Rはメチル基又は水素原子を表す。Aは、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン又はテトラフルオロボレートアニオンを表す。)
【請求項2】
がメチル基である請求項1に記載の第四級アンモニウム塩。
【請求項3】
、R及びRがメチル基である請求項1又は2に記載の第四級アンモニウム塩。

【公開番号】特開2009−137901(P2009−137901A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317425(P2007−317425)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】