説明

第4級アンモニウム塩

【課題】 従来のp−ドデシルベンゼンスルホナートをアニオンとする常温で固体の第4級アンモニウム塩を樹脂用の帯電防止剤として用いるときに比べて、樹脂との相溶性が改善され、種々の樹脂に対して帯電防止剤として使用しうることが期待できる、常温で液体の新規な第4級アンモニウム塩を提供すること。
【解決手段】
種々の樹脂に対して帯電防止剤として使用しうることが期待できる式(1):


(式中、Qはトリオクチルメチルアンモニウムカチオン又はN−ヘキシル−4−メチルピリジニウムカチオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な第4級アンモニウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
p−ドデシルベンゼンスルホナートをアニオンとする第4級アンモニウム塩は公知である。このような化合物について、特許文献1及び2に記載されている。具体的に開示されたp−ドデシルベンゼンスルホナートをアニオンとする第4級アンモニウム塩は、テトラブチルアンモニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナート、テトラフェニルアンモニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナート、及びセチルピリジニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナートである。かかる第4級アンモニウム塩はいずれも常温で固体であり、樹脂用の帯電防止剤として用いるとき、樹脂との相溶性に問題を生じやすい。
【特許文献1】特許第3131100号
【特許文献2】特開昭58−98742号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、常温で液体である新規な第4級アンモニウム塩を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が上記課題を解決する為に鋭意検討したところ、驚くべきことに、トリオクチルメチルアンモニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナート及びN−ヘキシル−4−メチルピリジニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナートが常温で液体であり、しかも種々の樹脂に対して帯電防止剤として使用しうることが期待できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち本発明は、式(1):
【0006】
【化1】

(式中、Qはトリオクチルメチルアンモニウムカチオン又はN−ヘキシル−4−メチルピリジニウムカチオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第4級アンモニウム塩は、常温で液体であるので、種々の樹脂に対する帯電防止剤としての使用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の第4級アンモニウム塩は、トリオクチルメチルアンモニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナート及びN−ヘキシル−4−メチルピリジニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナートである。
【0009】
本発明の第4級アンモニウム塩は、例えば式(2):
・X (2)
(式中、Qは前記に同じ。Xはハロゲン原子を示す。)で表される第4級アンモニウム=ハライド(以下、アンモニウム=ハライド(2)という)をp−ドデシルベンゼンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(以下、p−ドデシルベンゼンスルホン酸類という)を用いてアニオン交換反応をすることで製造できる。
【0010】
アンモニウム=ハライド(2)は、市販品を用いても良いし、例えばトリオクチルメチルアンモニウム=ハライドの場合には、トリオクチルアミンをハロゲン化メチルと反応させることで製造できる。またN−ヘキシル−4−メチルピリジニウム=ハライドの場合には、4−メチルピリジンをハロゲン化ヘキシルと反応させることで製造できる。
【0011】
ハロゲン化メチルとしてはメチルクロリド、メチルブロミド、メチルヨージドが、またハロゲン化ヘキシルとしてはヘキシルクロリド、ヘキシルブロミド、ヘキシルヨージドが挙げられる。
【0012】
p−ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩としては、p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、p−ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが挙げられる。
【0013】
p−ドデシルベンゼンスルホン酸類の使用量は、アンモニウム=ハライド(2)1モルに対して、通常0.9モル以上、好ましくは0.9モル〜1.1モルであり、より好ましくは0.95〜1.05モルである。
【0014】
アニオン交換反応は通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、アンモニウム=ハライド(2)1重量部に対して通常20重量部以下、好ましくは0.5〜10重量部であり、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0015】
アンモニウム=ハライド(2)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸類及び水の混合順序は特に限定されず、アンモニウム=ハライド(2)と水を混合した後にp−ドデシルベンゼンスルホン酸類を添加してもよいし、p−ドデシルベンゼンスルホン酸類と水を混合した後にアンモニウム=ハライド(2)を添加してもよい。また、着色が問題となる場合には、アンモニウム=ハライド(2)と水を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過して得られた濾液をアニオン交換反応に用いることもできる。
【0016】
反応温度は、通常10℃以上、好ましくは15〜60℃、特に好ましくは20〜40℃である。
【0017】
反応終了後の反応液は、本発明の第4級アンモニウム塩の水溶解性が低いので、水層と有機層とに分液している。この反応液から第4級アンモニウム塩を分離するには、所望により有機層を水洗した後、有機層を乾燥することによって第4級アンモニウム塩が得られる。また、必要であれば水不溶の有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸エチル、塩化メチレン等)を反応中又は反応終了後に添加し、第4級アンモニウム塩を水不溶の有機溶剤に抽出してもよく、得られた抽出層を所望により水洗し、次いで有機溶剤を留出除去して抽出層を濃縮すれば残渣として、本発明の第4級アンモニウム塩が得られる。
【実施例】
【0018】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。なお、以下の応用例中、表面抵抗値は三菱化学株式会社製ヒレスタHT−210を用い、印加電圧500Vにて測定した。
【0019】
実施例1
81.3%トリオクチルメチルアンモニウム=クロリド水溶液49.6g(0.100モル)、塩化メチレン69.3g及びイオン交換水69.3gを混合した後、p−ドデシルベンゼンスルホン酸34.3g(0.105モル)を添加し、25℃で4時間撹拌した。反応終了後、得られた有機層を分液操作により分離し、イオン交換水69.3gで2回洗浄した。有機層を濃縮して塩化メチレンを除去後、残渣を減圧下で乾燥し、常温で液状のトリオクチルメチルアンモニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナート(以下、TOMA−DBSと略記する)を62.5gを得た(収率90.2%)。以下にTOMA−DBSのNMRデータを示す。
【0020】
H−NMR(CDCl) δ:0.79−1.65(m,70H)、3.25(S,3H)、3.34(t,6H)、7.09(d,2H)、7.80(d,2H)
【0021】
実施例2
N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム=ブロミド25.8g(0.100モル)、塩化メチレン50.4g及びイオン交換水50.4gを混合した後、p−ドデシルベンゼンスルホン酸34.3g(0.105モル)を添加し、25℃で4時間撹拌した。反応終了後、得られた有機層を分液操作により分離し、イオン交換水50.4gで2回洗浄した。有機層を濃縮して塩化メチレンを除去後、残渣を減圧下で乾燥し、常温で液状のN−ヘキシル−4−メチルピリジニウム=p−ドデシルベンゼンスルホナート(以下、HMP−DBSと略記する。)46.0gを得た(収率91.3%)。以下にHMP−DBSのNMRデータを示す。
【0022】
H−NMR(CDCl) δ:0.72−1.90(m,36H)、2.56(S,3H)、4.70(t,2H)、7.12(d,2H)、7.77(d,2H)、7.79(d,2H)、9.04(d,2H)
【0023】
応用例1及び2並びに参考例
ペレット状のポリオレフィン「ZEONOR1020R」(登録商標、日本ゼオン株式会社製)30gをシクロヘキサン/THF(80/20)の混合溶液270gに溶解させ、10重量%ZEONOR1020R溶液を調製した。ZEONOR溶液10gに表1に示す本発明の第4級アンモニウム塩を帯電防止剤として0.02g(樹脂に対して2重量%)添加し、室温で1時間混合した。得られた混合液を、バーコーター(#32)を用いて、アルミシート上にコートした後、120℃で1時間乾燥させ、厚さ約5μmのZEONOR1020Rの試験フィルムを作製した。試験フィルムを23℃、50%RHの雰囲気中に6時間保持した後、23℃、50%RHで試験フィルムの裏面と表面の表面抵抗値を測定した。その測定結果を表1に示す。また、帯電防止剤を添加しないものの表面抵抗値も表1に示す。
【0024】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、Qはトリオクチルメチルアンモニウムカチオン又はN−ヘキシル−4−メチルピリジニウムカチオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩。

【公開番号】特開2009−1524(P2009−1524A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164670(P2007−164670)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】