説明

筆巻き

【課題】 持ち運びや保管を行うときの毛筆の移動を規制して該毛筆を確実に保護することのできる筆巻きを提供する。
【解決手段】 本発明に係る筆巻きは、毛筆に一周以上巻き付け可能な巻付領域が設定され、且つ少なくとも巻付領域が通気性を有するシートで構成された筆巻本体と、毛筆に対する巻付領域の巻き付け方向と対応する横方向と直交する縦方向に延びるように形成されて可撓性を有し、筆巻本体の少なくとも巻付領域内に横方向に間隔をあけて平面的に配置された複数の帯状芯と、巻付領域の縦方向の一端に接続されて該巻付領域の縦方向の中央よりも一端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆尻被覆用片と、巻付領域の縦方向の他端に接続されて該巻付領域の縦方向の中央よりも他端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆穂被覆用片と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書道用や絵画用の毛筆を保護すべく毛筆に巻き付けて使用される筆巻きに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、毛筆を持ち運んだり保管したりする場合、毛筆(特に筆穂)を保護するために筆巻きが使用されている。
【0003】
かかる筆巻きは、一般的に、並列配置された複数本の竹籤が糸で連結されて簾状に形成された筆巻本体を備えている。この種の筆巻き(筆巻本体)は、竹籤間に竹籤同士を連結した可撓性のある糸が介在することで、竹籤の延びる方向と直交する方向で湾曲自在に構成されている。
【0004】
上記構成の筆巻きは、竹籤に沿うように筆巻本体上に配置した毛筆を中心にして筆巻本体が巻回された上で、該筆巻本体に延設された紐体や別途用意した紐体が巻回状態にある筆巻本体の周囲に巻き付けられる。これにより、該筆巻きは、筆巻本体が紐体による締め付け力の作用で毛筆に圧接しつつ該毛筆の周囲を包囲した状態になり、筆巻本体(複数の竹籤)が毛筆を保持しつつ外力や衝撃等から毛筆(筆穂や軸)を保護した状態となる。すなわち、上記構成の筆巻きは、毛筆を取り囲んだ状態を維持しつつ剛性のある筆巻本体(複数の竹籤)が毛筆を保護した状態になるように構成されている。
【0005】
ところで、上記構成の筆巻きは、紐体による締め付けが十分でなかったり紐体が弛んだりすると、筆巻本体が毛筆の周囲で弛むことになり、中心にある毛筆に対する筆巻本体の圧接(圧接力)が弱くなって毛筆を保持できなくなるとして、前記筆巻本体(複数の竹籤を簾状にしたもの)の一方の面に対して、毛筆の筆尻を挿入するためのポケットを形成した筆入れ袋を取り付けたもの(ポケット付き筆巻きという)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
前記筆入れ袋は、二重の布帛を縫い合わせたもので、その縫い目を境にして複数のポケットが形成され、各ポケットの開口が竹籤の一端側に向くように筆巻本体(竹籤)の他端側の領域に取り付けられる。これにより、ポケット付き筆巻きは、ポケットに対して毛筆(筆尻)を挿入することで、毛筆が竹籤に沿った姿勢で筆巻本体上に配置されるようになっている。
【0007】
そして、上記構成のポケット付き筆巻きは、ポケットに筆尻を差し込んだ毛筆を中心にして筆巻本体が筆入れ袋とともに巻回された上で、該筆巻本体の周囲に紐体が巻き付けられる。
【0008】
これにより、該ポケット付き筆巻きにおいても、従来の筆巻きと同様に、筆巻本体が紐体による締め付け力の作用で毛筆に圧接しつつ該毛筆の周囲を包囲した状態になり、筆巻本体(複数の竹籤)が毛筆を保持しつつ外力や衝撃等から毛筆(筆穂や軸)を保護した状態となる。
【0009】
また、ポケット付き筆巻きは、毛筆を保護するに当り、毛筆の筆尻が筆入れ袋(ポケット)に挿入されるため、紐体による締め付けが十分でなかったり紐体が弛んだりすることで、筆巻本体が毛筆の周囲で弛んだとしても、毛筆の筆尻がポケットに挿入された状態で維持することになる。これにより、該ポケット付き筆巻きは、筆巻本体の巻き付けが弛んでも毛筆の筆尻の移動が筆入れ袋(ポケット)によって規制され、毛筆が脱落したり筆穂が損傷したりすることを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3121402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記ポケット付き筆巻きは、毛筆の筆尻を挿入するポケットに挿入することで、毛筆が筆巻本体(竹籤)の他端側に向けて移動することは防止できるが、筆入れ袋(ポケット)が筆巻本体(竹籤)の一端側に向けて開口しているため、筆巻本体の巻き付けが弛んだときに、毛筆が筆穂を先頭にして筆巻本体(竹籤)の一端側に移動してしまう虞がある。そのため、上記構成のポケット付き筆巻きでは、毛筆が筆穂を先頭にして移動したときに、筆穂を構成する毛が筆巻本体に逆撫でされて筆穂を痛めたり、毛筆が脱落したりする虞がある。
【0012】
また、前記ポケット付き筆巻きは、複数の竹籤を簾状にした筆巻本体の一方の面に筆入れ袋が取り付けられているため、筆巻本体を毛筆の周囲に巻き付けたときに、筆入れ袋の存在する領域が密に巻かれることになり、筆巻本体の一端側が毛筆に圧接しにくくなってしまう。そのため、上記構成のポケット付き筆巻きは、毛筆を確実に保持できないだけでなく、場合によっては毛筆の筆穂側の揺れが許容されて筆穂が筆巻本体に対して断続的に接触し、該筆穂を痛める虞もある。
【0013】
そして、毛筆には筆尻側から筆穂側に向けて軸が太くなったもの(軸径が軸心方向に変化するもの)もあるが、上述の如く、筆巻本体が複数の竹籤で構成されると毛筆の軸に対して均一に巻き付けることができずに、安定して毛筆を保持できないといった問題もある。すなわち、筆巻本体を構成する竹籤は、剛性が高く、真っ直ぐに延びた状態で維持するため、筆巻本体を上述のように軸径が変化する毛筆の周囲に巻き付けたときに、該筆巻本体(竹籤)が毛筆の軸の最も太い部分を中心に圧接することになり、毛筆を確実に保持できなくなくなるといった問題もある。
【0014】
そこで、本発明は、持ち運びや保管を行うときの毛筆の移動を規制して該毛筆を確実に保護することのできる筆巻きを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る筆巻きは、対象となる毛筆の軸方向の全長に亘って少なくとも一周以上巻き付け可能な巻付領域が設定され、且つ少なくとも巻付領域が通気性を有するシートで構成された筆巻本体と、毛筆に対する巻付領域の巻き付け方向と対応する横方向と直交する縦方向に延びるように形成されるとともに前記横方向及び前記縦方向と直交する方向に可撓性を有し、前記筆巻本体の少なくとも巻付領域内に前記横方向に間隔をあけて平面的に配置された複数の帯状芯と、前記巻付領域の前記縦方向の一端に接続されて該巻付領域の前記縦方向の中央よりも一端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆尻被覆用片と、前記巻付領域の前記縦方向の他端に接続されて該巻付領域の前記縦方向の中央よりも他端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆穂被覆用片とを備えていることを特徴とする。
【0016】
上記構成の筆巻きによれば、対象となる毛筆の筆尻を筆巻本体と筆尻被覆用片との間に介装するとともに、該毛筆の筆穂を筆巻本体と筆穂被覆用片との間に介装した後、筆巻本体の巻付領域を毛筆回りに巻き付けると、筆巻本体(巻付領域)及び帯状芯が毛筆(主として軸)の外形に概ね沿った状態で毛筆(筆穂や軸)を取り囲んだ状態になる。
【0017】
そして、該筆巻きは、毛筆に巻き付けた筆巻本体の外周に該筆巻本体に接続した延出体や別途用意した紐体等を巻き付ける(締め付ける)ことで、筆巻本体(巻付領域)が毛筆回りに巻き付いた状態で維持することになる。このように、上記構成の筆巻きは、筆巻本体(巻付領域)を毛筆の周囲に巻き付けることで、筆巻本体とともに複数の帯状芯が毛筆回りに配置された状態になるため、筆巻本体及び帯状芯が毛筆を保持しつつ外力や衝撃等から毛筆(筆穂や軸)を保護した状態となる。
【0018】
そして、上述の如く、筆巻本体を毛筆の周囲に巻き付けると、複数の帯状芯も毛筆回りに配置されることになるが、各帯状芯が互いに間隔をあけて配置されているため、帯状芯間(筆巻本体)の通気性により、毛筆(主として筆穂)に含まれる水分を逃がすことができ、毛筆を適正な状態で保管や運搬を行うことができる。
【0019】
そして、上記構成の筆巻きは、筆巻本体(巻付領域)及び帯状芯が可撓性を有するため、筆巻本体の巻付領域を毛筆回りに巻き付けると、上述の如く、筆巻本体(巻付領域)及び帯状芯が毛筆(主として軸)の外形に概ね沿った状態になることから、筆巻本体の外周に巻き付けた紐体等が弛んで筆巻本体の巻き付けが弛んでも、毛筆に対する筆巻本体の接触面積を確保することができる。これにより、上記構成の筆巻きは、毛筆の移動を規制して毛筆を保持した状態で維持することができる。
【0020】
また、上記構成の筆巻きは、筆尻被覆用片及び筆穂被覆用片を備えているため、仮に外部から大きな力や衝撃が加わって毛筆が軸方向に移動しようとしても、筆尻被覆用片及び筆穂被覆用片の存在によって毛筆の移動が規制されることになり、筆巻本体との擦れ(逆撫で)による筆穂の損傷や、毛筆の脱落を確実に防止することができる。
【0021】
従って、上記構成の筆巻きは、持ち運びや保管を行うときの毛筆の移動を規制して該毛筆を確実に保護することができるといった優れた効果を奏し得る。
【0022】
本発明の一態様として、毛筆に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体の端部から延出し、毛筆に巻き付けた筆巻本体に対して巻き付け可能な長さに設定された延出体を更に備えていることが好ましい。このようにすれば、毛筆に巻き付けた筆巻本体に延出体を巻き付けて該延出体の先端側を種々方法で固定することで、筆巻本体を毛筆の周囲に巻き付けた状態で維持させることができる。
【0023】
この場合、前記延出体は、毛筆に巻き付けたときに内側に向く面に雄雌何れか一方の面ファスナーが取り付けられたファスナーテープで構成され、前記筆巻本体における延出体の基端近傍における外面上に雄雌何れか他方の面ファスナーが取り付けられていることが好ましい。このようにすれば、毛筆に巻き付けた筆巻本体に延出体を巻き付けた上で該延出体を他方の面ファスナーに重ねることで、雄雌一対の面ファスナーが係合して延出体が筆巻本体上で固定される。従って、簡単な作業で筆巻本体を毛筆の周囲に巻き付けた状態で維持させることができる。
【0024】
本発明の他態様として、前記筆巻本体は、前記横方向の何れか一端側の半分又は略半分の領域に前記巻付領域が設定されるとともに、前記横方向の何れか他端側の半分又は略半分の領域に前記巻付領域上に巻き付けられる被覆領域が設定され、前記巻付領域のみに複数の帯状芯が配置されてもよい。このようにすれば、対象となる毛筆の周囲を覆う必要最小限の領域(巻付領域)に剛性が付与されることになり、毛筆に筆巻本体を巻き付けたときに巻付領域が毛筆を包囲した上で、該巻付領域を柔軟性のある被覆領域が覆うことになり、外観良好な状態で毛筆を覆うことができる。
【0025】
この場合、前記筆巻本体は、前記巻付領域が互いに重ね合わされた二重の不織布で構成される一方、前記被覆領域が一重の不織布で構成され、前記複数の帯状芯は、巻付領域を構成する二重の不織布間に介装され、該二重の不織布の帯状芯間が縫い合わされることで定位置に固定されていることが好ましい。このようにすれば、筆巻本体(不織布)の通気性を阻害することなく複数の帯状芯を定位置に固定することができる。すなわち、接着剤を用いて帯状芯を筆巻本体に固定すると、接着剤が筆巻本体の微孔を埋めてしまい、通気性が低下することになるが、上述の如く、二重の不織布を縫い合わせても不織布の微孔が潰れてしまうことがなく、通気性を確保することができる。
【0026】
また、本発明のさらに別の態様として、毛筆に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体の端部に沿って配置された帯状の補強芯を更に備えていることが好ましい。このようにすれば、筆巻本体の巻き終わりの端部に剛性が付与されるため、筆巻本体を毛筆に巻き付けた状態で巻き終わりの端部が毛筆の軸方向に沿った体裁の良い状態になり、見栄えのよいものとなる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明に係る筆巻きによれば、持ち運びや保管を行うときの毛筆の移動を規制して該毛筆を確実に保護することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る筆巻きの平面図であって、(a)は、筆巻本体の内面側の平面図を示し、(b)は、筆巻本体の外面側の平面図を示す。
【図2】同実施形態に係る筆巻きの部分拡大断面図を含む縦断面図であって、図1のI−I断面図及びI−I断面における部分拡大断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る筆巻きの使用方法及び作用を説明するための説明図であって、(a)は、筆尻被覆用片及び筆穂被覆用片を捲って筆巻本体上に毛筆(太筆及び細筆)を配置した状態を示し、(b)は、筆巻本体上に配置した毛筆(太筆及び細筆)の筆尻を筆尻被覆用片で覆うとともに筆穂を筆穂被覆用片で覆った状態を示し、(c)は、筆巻本体を毛筆回りに巻き付け、該筆巻本体に延出体を巻き付けた状態を示す。
【図4】本発明の他実施形態に係る筆巻きの平面図であって、(a)は、筆尻被覆用片の縦方向の一端及び横方向の両端(筆尻被覆用片の外郭を画定する四辺のうちの連続する三辺)が筆巻本体に接続され、筆穂被覆用片の縦方向の一端(筆穂被覆用片の外郭を画定する四辺のうちの一辺)が筆巻本体に接続された筆巻きの平面図を示し、(b)は、筆尻被覆用片及び筆穂被覆用片のそれぞれの縦方向の一端及び横方向の一端(筆尻被覆用片及び筆穂被覆用片のそれぞれの外郭を画定する四辺のうちの連続する二辺)が筆巻本体に接続された筆巻きの平面図を示す。
【図5】本発明の別の実施形態に係る筆巻きの平面図であって、(a)は、筆尻被覆用片の縦方向の一端及び横方向の両端(筆尻被覆用片の外郭を画定する四辺のうちの連続する三辺)が筆巻本体に接続され、筆穂被覆用片の縦方向の一端及び横方向の一端(筆穂被覆用片の外郭を画定する四辺のうちの連続する二辺)が筆巻本体に接続された筆巻きの平面図を示し、(b)は、筆尻被覆用片及び筆穂被覆用片のそれぞれの縦方向の一端及び横方向の両端(筆尻被覆用片及び筆穂被覆用片のそれぞれの外郭を画定する四辺のうちの連続する三辺)が筆巻本体に接続され、筆尻被覆用片及び筆穂被覆用片のそれぞれの横方向中央部に縦方向に延びる切り込みが入れられた筆巻きの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係る筆巻きについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0030】
本実施形態に係る筆巻きは、図1(a)、図1(b)、及び図2に示す如く、対象となる毛筆の軸方向の全長に亘って少なくとも一周以上巻き付け可能な巻付領域100が設定され、且つ少なくとも巻付領域100が通気性を有するシートで構成された筆巻本体10と、毛筆に対する巻付領域100の巻き付け方向と対応する横方向と直交する縦方向に延びるように形成されるとともに前記横方向及び前記縦方向と直交する方向に可撓性を有し、前記筆巻本体10の少なくとも巻付領域100内に前記横方向に間隔をあけて平面的に配置された複数の帯状芯11…と、前記巻付領域100の前記縦方向の一端に接続されて該巻付領域100の前記縦方向の中央よりも一端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆尻被覆用片12と、前記巻付領域100の前記縦方向の他端に接続されて該巻付領域100の前記縦方向の中央よりも他端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆穂被覆用片13と、を備えている。
【0031】
そして、本実施形態に係る筆巻き1は、上記構成に加え、毛筆に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体10の端部から延出し、毛筆に巻き付けた筆巻本体10に対して巻き付け可能な長さに設定された延出体14を更に備えている。また、本実施形態に係る筆巻き1は、毛筆に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体10(後述する被覆領域101)の端部に沿って配置された帯状の補強芯15を更に備えている。
【0032】
本実施形態に係る筆巻本体10は、前記横方向の一端側の半分又は略半分の領域に前記巻付領域100が設定されるとともに、前記横方向の他端側の半分又は略半分の領域に前記巻付領域100上に巻き付けられる被覆領域101が設定され、前記巻付領域100のみに複数の帯状芯11…が配置されている。
【0033】
前記巻付領域100は、縦方向の長さが毛筆の全長以上の長さに設定される。本実施形態に係る巻付領域100は、全長が200mm〜250mmの毛筆を対象に、縦方向の長さが280mm〜300mmに設定される。また、前記巻付領域100は、横方向の長さが毛筆に対して一周以上巻き付け可能な長さに設定される。本実施形態に係る筆巻き1は、二本以上の毛筆に巻付領域100を巻き付けることができる(二本以上の毛筆を一緒に保護できる)ようになっている。本実施形態に係る巻付領域100は、標準的な太筆(軸部が全長に亘って略同径の太筆)及び標準的な細筆(軸部が全長に亘って略同径の細筆)を対象に、隣り合わせにした太筆及び細筆を中心に一周以上巻き付けることのできる長さに設定されている。なお、標準的な太筆は、一般的に軸部の外径が10mm〜15mmに設定され、標準的な細筆は、一般的に軸部の外径が6mm〜8mmに設定されているが、本実施形態においては、標準的な太筆として、軸部の外径が12.6mmのものを基準とし、また、標準的な細筆として、軸部の外径が7.6mmのものを基準としている。
【0034】
前記被覆領域101は、縦方向の長さが巻付領域100の縦方向の長さと同一又はそれよりも短く設定される。本実施形態に係る筆巻本体10は、四角形状に裁断された一枚の不織布(以下、原不織布という)を縫製して形成されており、これに伴って、被覆領域101の縦方向の長さが巻付領域100の縦方向の長さと同一又は略同一に設定されている。また、前記被覆領域101は、毛筆に巻き付けた巻付領域100に対して一周以上巻き付け可能に形成される。本実施形態に係る被覆領域101は、標準的な太筆(軸部が全長に亘って略同径の太筆)に一周半乃至二周巻き付けた巻付領域100に対して一周半乃至二周巻き付けることができるようになっている。
【0035】
本実施形態に係る筆巻本体10は、図2に示す如く、前記巻付領域100が互いに重ね合わされた二重の不織布C,Cで構成される一方、前記被覆領域101が一重の不織布Cで構成されている。より具体的に説明すると、本実施形態に係る筆巻本体10は、四角形状に裁断された原不織布を縫製して作製されており、該原不織布の一端側を折り返して縫い合わせることで二重の不織布C,Cで構成された巻付領域100が形成され、前記原不織布の他端側の領域で一重の不織布Cで構成された被覆領域101が構成されている。
【0036】
すなわち、該筆巻本体10は、前記原不織布を一方向で三つの領域に区画し、該原不織布の一端側の領域を中央の領域に重ねるように折返して縫い合わせることで二重の不織布C,Cで構成された巻付領域100が形成され、前記原不織布の他端側の領域で、一重の不織布Cで構成された被覆領域101が形成されている。従って、本実施形態に係る筆巻本体1は、巻付領域100と被覆領域101とが連続して隣り合った状態になっており、全体として平面視四角形状をなしている。
【0037】
前記複数の帯状芯11…のそれぞれは、上述の如く、横方向及び縦方向と直交する方向(面直交方向)に可撓性を有するものであればよく、種々材料を採用することができるが、耐久性等を考慮すると、樹脂製のものを採用することが好ましい。本実施形態においては、各帯状芯11…は、可撓性及び耐久性を考慮し、PP(ポリプロピレン)製の帯板で構成されている。
【0038】
前記帯状芯11…は、それぞれ長手方向の長さが筆巻本体10(巻付領域100)の縦方向の長さ以下に設定され、長手方向と直交する幅方向の長さ(幅)が標準的な太筆の軸の外径よりも狭く且つ標準的な細筆の外径よりも広く設定される。なお、帯状芯11…の厚みは、可撓性が得られるように採用される材質によって適宜設定される。
【0039】
本実施形態において、複数の帯状芯11…は、巻付領域100を構成する二重の不織布C,C間に介装され、巻付領域100となる二重の不織布C,Cの帯状芯11…間が縫い合わされることで定位置に固定されている。すなわち、上述の如く、二重の不織布C,Cで構成される巻付領域100を形成するに当り、予め原不織布の中央の領域又は一端側の領域の何れか一方に複数の帯状芯11…を横方向に間隔をあけて配置した上で、原不織布の中央の領域又は一端側の領域の何れか他方を折返し、該帯状芯11…が配置された領域の周囲、及び帯状芯11…間を縫い合わせることで、各帯状芯11…が定位置に固定されている。
【0040】
これにより、本実施形態に係る筆巻き1は、筆巻本体10(巻付領域100)を毛筆(標準的な太筆B1)に巻き付けたときに、筆巻本体10が帯状芯11,11間にある不織布C同士の縫い合わせ部分で折れ曲がるようになっている。なお、本実施形態において、帯状芯11…間の縫い合わせ部分の間隔(巻き付け方向と対応する横方向での間隔)は、標準的な太筆の軸の外径と同一又は略同一に設定されており、一本の標準的な太筆に筆巻本体10を巻き付けたときに、縫い合わせ部分で区画された連続する四つの領域(隣り合う四つの帯状芯11…)が四角筒状をなして太筆の軸を取り囲み、一本の標準的な細筆に筆巻本体10を巻き付けたときに、縫い合わせ部分で区画された連続する三つの領域(隣り合う三つの帯状芯11…)が三角筒状をなして細筆の軸を取り囲むようになっている。
【0041】
図1(a)及び図1(b)に戻り、前記筆尻被覆用片12は、上述の如く、前記巻付領域100の前記縦方向の一端に接続されている。本実施形態に係る筆尻被覆用片12は、平面視四角形状に裁断されたシートで構成されており、横方向の長さが巻付領域100の横方向の長さと略同一に設定されている。そして、該筆尻被覆用片12は、縦方向の長さが巻付領域100の縦方向の長さの半分以下(好ましくは、1/4〜1/3)に設定され、巻付領域100上に毛筆を配置したときに該毛筆の少なくとも筆尻上に重なるように長さが設定されている。本実施形態において、全長が200mm〜250mmの毛筆を対象にして巻付領域100の縦方向の長さが280mm〜300mmに設定されているため、筆尻被覆用片12の縦方向の長さは70mm〜100mmに設定される。
【0042】
本実施形態に係る筆尻被覆用片12は、前記縦方向の一端及び前記横方向の一端が筆巻本体10(巻付領域100)の縦方向の一端及び横方向の一端に接続されている。すなわち、本実施形態に係る筆尻被覆用片12は、外郭を構成する四辺のうちの隣り合う二辺(隣り合って略直角をなす二辺)が筆巻本体10(巻付領域100)の外郭を画定する二辺に接続されている。これにより、本実施形態に係る筆巻き1は、毛筆を筆巻本体10上に配置する際に、該毛筆の筆尻を横方向の他端側(筆巻本体10の中央側)及び縦方向の他端側の二方向から毛筆の筆尻を筆巻本体10と筆尻被覆用片12との間に挿入できるようになっている。
【0043】
また、本実施形態に係る筆巻き1は、上述の如く、筆尻被覆用片12の直角をなす二辺が筆巻本体10に接続されることで、内側にある筆尻被覆用片12の横方向の他端側の角部を持って、該筆尻被覆用片12の横方向の他端側(被覆領域101側)を捲る或いは折り返すことが可能になっている。従って、該筆巻き1は、筆尻被覆用片12を捲る或いは折り返すことで毛筆の筆尻を筆巻本体10(筆巻本体10の縦方向の中央よりも一端側の領域)上に配置できるようになっている。
【0044】
そして、本実施形態に係る筆尻被覆用片12は、筆巻本体10と同様に不織布Cで構成されている。これに伴い、本実施形態においては、上述の如く、原不織布を縫製する(巻付領域100を形成する)に当たって、筆尻被覆用片12を構成する不織布Cも合わせて縫い付けることで、筆尻被覆用片12を筆巻本体10(巻付領域100)に接続するようにしている。
【0045】
前記筆穂被覆用片13は、上述の如く、前記巻付領域100の前記縦方向の他端に接続されている。本実施形態に係る筆穂被覆用片13は、平面視四角形状に裁断されたシートで構成されており、横方向の長さが巻付領域100の横方向の長さと略同一に設定されている。そして、該筆穂被覆用片13は、縦方向の長さが巻付領域100の縦方向の長さの半分以下(好ましくは、1/4〜1/3)に設定され、巻付領域100上に毛筆を配置したときに該毛筆の少なくとも筆穂上に重なるように長さが設定されている。本実施形態において、全長が200mm〜250mmの毛筆を対象にして巻付領域100の縦方向の長さが280mm〜300mmに設定されているため、筆穂被覆用片13の縦方向の長さは70mm〜100mmに設定されている。
【0046】
本実施形態に係る筆穂被覆用片13は、前記縦方向の一端が筆巻本体10(巻付領域100)の縦方向の他端に接続されている。すなわち、本実施形態に係る筆穂被覆用片13は、外郭を構成する四辺のうちの一辺が筆巻本体10(巻付領域100)の外郭を画定する一辺に接続されている。これにより、本実施形態に係る筆穂被覆用片13は、前記横方向の両端が開放状態になっており、巻付領域100の縦方向の一端側(中央側)にある端部を持って全体を捲る或いは折り返すことが可能になっている。従って、該筆巻き1は、筆穂被覆用片12を捲る或いは折り返すことで毛筆の筆穂を筆巻本体10(筆巻本体10の縦方向の中央よりも他端側の領域)上に配置できるようになっている。
【0047】
そして、本実施形態に係る筆穂被覆用片13は、筆巻本体10と同様に不織布Cで構成されている。これに伴い、本実施形態においては、上述の如く、原不織布を縫製する(巻付領域100を形成する)に当たって、筆穂被覆用片13を構成する不織布Cも合わせて縫い付けることで、筆穂被覆用片13を筆巻本体10(巻付領域100)に接続するようにしている。
【0048】
前記延出体14は、毛筆に巻き付けた筆巻本体10回りに一周以上巻き付けることのできる長さに設定される。本実施形態に係る延出体14は、帯状に形成されている。より具体的には、本実施形態に係る延出体14は、筆巻本体10を毛筆に巻き付けるときに内側に向く面に雄雌何れか一方の面ファスナー(本実施形態においては雄側の面ファスナー)140が取り付けられたファスナーテープで構成されている。
【0049】
これに伴い、本実施形態に係る筆巻き1は、前記筆巻本体10における延出体14の基端近傍における外面上に雄雌何れか他方の面ファスナー(本実施形態においては雌側の面ファスナー)141が取り付けられている。これにより、本実施形態に係る筆巻き1は、毛筆に巻き付けた筆巻本体10回りに延出体14を巻き付けて他方の面ファスナー(雌側の面ファスナー)141に重ねるだけで延出体14が筆巻本体10上で固定されるようになっている。
【0050】
前記補強芯15は、前記帯状芯11…と同様に、横方向及び縦方向と直交する方向(面直交方向)に可撓性を有するものであればよく、種々材料を採用することができるが、耐久性等を考慮すると、樹脂製のものを採用することが好ましい。本実施形態に係る補強芯15は、帯状芯11…と同様のものが採用されている。すなわち、補強芯15は、可撓性及び耐久性を考慮し、PP(ポリプロピレン)製の帯板で構成されている。
【0051】
また、該補強芯15は、長手方向の長さが筆巻本体10(被覆領域101)の縦方向の長さ以下に設定されている。なお、補強芯15の厚みは、可撓性が得られるように採用される材質によって適宜設定される。そして、本実施形態に補強芯15は、帯状芯11…と同様に、原不織布を縫製することで筆巻本体10に固定されている。すなわち、補強芯15は、原不織布の端部(巻き終わりになる被覆領域101の端部になる領域)に配置された後、原不織布の端部を折り返して当該補強芯15の周囲が縫い合わされることで、筆巻本体10(被覆領域101)に固定されている。
【0052】
本実施形態に係る筆巻き1は、以上の通りであり、続いて、該筆巻き1の使用方法に合わせて該筆巻き1の作用について説明する。
【0053】
上記構成の筆巻き1を用いて毛筆を保護するにあたり、まず、図3(a)及び図3(b)に示す如く、対象となる毛筆B1,B2の筆尻B1b,B2bを筆巻本体10と筆尻被覆用片12との間に介装するとともに、該毛筆B1,B2の筆穂B1a,B2aを筆巻本体10と筆穂被覆用片13との間に介装する。すなわち、図3(a)に示す如く、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13を捲って筆巻本体10の内面(筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13が重なる面)上に毛筆B1,B2を配置した上で、図3(b)に示す如く、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13を元に戻し、毛筆B1,B2の筆穂B1a,B2a上に筆穂被覆用片13を重ねるとともに、毛筆B1,B2の筆尻B1b,B2b上に筆尻被覆用片12を重ねる。
【0054】
なお、二本以上の毛筆B1,B2を保護する場合、それぞれの毛筆B1,B2の筆尻B1b,B2bを筆巻本体10と筆尻被覆用片12との間に介装するとともに筆穂B1a,B2aを筆巻本体10と筆穂被覆用片13との間に介装する。このようにすることで、各毛筆B1,B2の筆穂B1a,B2a上に筆穂被覆用片13が重なるとともに、各毛筆B1,B2の筆尻B1b,B2b上に筆尻被覆用片12が重なることになる。
【0055】
しかる後、図3(c)に示す如く、筆巻本体10の巻付領域100を毛筆B1,B2回りに巻き付ける。そうすると、筆巻本体10(巻付領域100)及び帯状芯11…が毛筆B1,B2(主として軸)の外形に概ね沿った状態で筆巻本体10及び帯状芯11…が毛筆B1,B2(筆穂B1a,B2aや軸)を取り囲んだ状態になる。本実施形態においては、上述の如く、筆巻本体10が巻付領域100と被覆領域101とを備えているため、毛筆B1,B2に巻付領域100を巻き付けた上で引き続き該巻付領域100上に被覆領域101を巻き付ける。
【0056】
そして、毛筆B1,B2に筆巻本体10(巻付領域100及び被覆領域101)の全体を巻き付けた後に、該筆巻本体10の外周に延出体14を巻き付け、筆巻本体10上にある他方の面ファスナー141(雌側の面ファスナー)に延出体14を重ねて雄雌一対の面ファスナー140,141を係合させ、延出体14の先端側を筆巻本体10上に固定する。
【0057】
このように筆巻本体10の外周に延出体14を巻き付けて筆巻本体10上に固定することで、筆巻本体10(巻付領域100)が毛筆B1,B2回りに巻き付いた状態で維持し、筆巻本体10とともに複数の帯状芯11…が毛筆B1,B2回りに配置された状態になる。これにより、筆巻本体10及び帯状芯11…が毛筆B1,B2を保持しつつ外力や衝撃等から毛筆B1,B2(筆穂B1a,B2aや軸)を保護した状態となる。
【0058】
そして、上述の如く、筆巻本体10を毛筆B1,B2の周囲に巻き付けると、複数の帯状芯11…も毛筆B1,B2回りに配置されることになるが、各帯状芯11…が互いに間隔をあけて配置されているため、帯状芯11…間(筆巻本体10を構成する不織布C)の通気性により、毛筆B1,B2(主として筆穂B1a,B2a)に含まれる水分を逃がすことができ、毛筆B1,B2を適正な状態で保管や運搬を行うことができる。
【0059】
そして、上記構成の筆巻き1は、筆巻本体10(巻付領域100)及び帯状芯11…が可撓性を有するため、筆巻本体10の巻付領域100を毛筆B1,B2回りに巻き付けると、上述の如く、筆巻本体10(巻付領域100)及び帯状芯11…が毛筆B1,B2(主として軸)の外形に概ね沿った状態になることから、筆巻本体10の外周に巻き付けた前記延出体14や紐体等が弛んで筆巻本体10の巻き付けが弛んでも、毛筆B1,B2に対する接触面積が確保される。これにより、本実施形態に係る筆巻き1は、毛筆B1,B2の移動が規制され、毛筆B1,B2を保持した状態で維持することができる。
【0060】
また、上記構成の筆巻き1は、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13を備えているため、仮に外部から大きな力や衝撃が加わって毛筆B1,B2が軸方向に移動しようとしても、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13の存在によって毛筆B1,B2の移動が規制されることになり、筆巻本体10との擦れ(逆撫で)による筆穂B1a,B2aの損傷や、毛筆B1,B2の脱落が確実に防止されることになる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る筆巻き1は、対象となる毛筆B1,B2の軸方向の全長に亘って少なくとも一周以上巻き付け可能な巻付領域100が設定され、且つ少なくとも巻付領域100が通気性を有するシートで構成された筆巻本体10と、毛筆B1,B2に対する巻付領域100の巻き付け方向と対応する横方向と直交する縦方向に延びるように形成されるとともに前記横方向及び前記縦方向と直交する方向に可撓性を有し、前記筆巻本体10の少なくとも巻付領域100内に前記横方向に間隔をあけて平面的に配置された複数の帯状芯11…と、前記巻付領域100の前記縦方向の一端に接続されて該巻付領域100の前記縦方向の中央よりも一端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆尻被覆用片12と、前記巻付領域100の前記縦方向の他端に接続されて該巻付領域100の前記縦方向の中央よりも他端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆穂被覆用片13とを備えているため、通気性を確保しつつ筆穂B1a,B2aを確実に保護でき、持ち運びや保管を行うときの毛筆B1,B2の脱落を確実に防止することができるといった優れた効果を奏し得る。
【0062】
また、本実施形態に係る筆巻き1は、毛筆B1,B2に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体10の端部から延出し、毛筆B1,B2に巻き付けた筆巻本体10に対して巻き付け可能な長さに設定された延出体14をさらに備えているため、筆巻本体10を毛筆B1,B2の周囲に巻き付けた状態で維持させることができる。
【0063】
特に、本実施形態において、前記延出体14は、毛筆B1,B2に巻き付けたときに内側に向く面に雄雌何れか一方の面ファスナー140が取り付けられたファスナーテープで構成され、前記筆巻本体10における延出体14の基端近傍における外面上に雄雌何れか他方の面ファスナー141が取り付けられているため、巻付領域100を覆った被覆領域101上に延出体14を巻き付けた上で該延出体14を他方の面ファスナー141に重ねるだけで、雄雌一対の面ファスナーが係合して延出体14が筆巻本体10上で固定される。従って、本実施形態に係る筆巻き1は、簡単な作業で筆巻本体10を毛筆B1,B2の周囲に巻き付けた状態で維持させることができる。
【0064】
そして、本実施形態において、前記筆巻本体10は、前記横方向の何れか一端側の半分又は略半分の領域に前記巻付領域100が設定されるとともに、前記横方向の何れか他端側の半分又は略半分の領域に前記巻付領域100上に巻き付けられる被覆領域101が設定され、前記巻付領域100のみに複数の帯状芯11…が配置されているため、対象となる毛筆B1,B2の周囲を覆う必要最小限の領域(巻付領域100)に剛性が付与されることになり、毛筆B1,B2に筆巻本体10を巻き付けたときに巻付領域100が毛筆B1,B2を包囲した上で、該巻付領域100を柔軟性のある被覆領域101が覆うことになり、外観良好な状態で毛筆B1,B2を覆うことができる。
【0065】
特に、本実施形態に係る筆巻本体10は、前記巻付領域100が互いに重ね合わされた二重の不織布C,Cで構成される一方、前記被覆領域101が一重の不織布Cで構成され、前記複数の帯状芯11…は、巻付領域100を構成する二重の不織布C,C間に介装され、該二重の不織布C,Cの帯状芯11…間が縫い合わされることで定位置に固定されているため、筆巻本体10(不織布C)の通気性を阻害することなく複数の帯状芯11…を定位置に固定することができる。すなわち、接着剤を用いて帯状芯11…を筆巻本体10に固定すると、接着剤が筆巻本体10の微孔を埋めてしまい、通気性が低下することになるが、上述の如く、二重の不織布C,Cを縫い合わせても不織布Cの微孔が潰れてしまうことがなく、通気性を確保することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る筆巻き1は、毛筆B1,B2に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体10の端部に沿って配置された帯状の補強芯15を更に備えているため、筆巻本体10の巻き終わりの端部に剛性が付与され、筆巻本体10を毛筆B1,B2に巻き付けた状態で巻き終わりの端部が毛筆B1,B2の軸方向に沿った体裁の良い状態になり、見栄えのよいものとなる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加え得ることは勿論のことである。
【0068】
上記実施形態に係る筆巻き1は、筆尻被覆用片12の外郭を構成する隣り合う二辺が巻付領域100の外郭を構成する隣り合う二辺(前記縦方向の一端及び横方向の一端)に接続されることで、筆尻被覆用片12の一部(横方向の他端側)のみが折返し可能に構成される一方、筆穂被覆用片12の外郭を構成する一辺が巻付領域100の外郭を構成する一辺(前記縦方向の他端)に接続され、筆穂被覆用片13全体が折返し可能に構成されたが、これに限定されるものではなく、筆巻本体10に対する筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13の接続対象は種々変更可能である。
【0069】
すなわち、筆尻被覆用片12が巻付領域100の前記縦方向の一端に接続されて該巻付領域100の前記縦方向の中央よりも一端側の領域に重合状態で配置され、筆穂被覆用片13が巻付領域100の前記縦方向の他端に接続されて該巻付領域100の前記縦方向の中央よりも他端側の領域に重合状態で配置されていれば、図4及び図5に示す如く、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13の形態やこれらの筆巻本体10に対する接続位置は種々変更可能である。
【0070】
具体的には、筆巻き1は、図4(a)に示す如く、筆尻被覆用片12の縦方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の縦方向の一端に接続されるとともに、筆尻被覆用片12の横方向の両端が筆巻本体10に接続されることで、筆尻被覆用片12と筆巻本体10とが共同して筆穂被覆用片13側から筆尻B1b,B2bを挿入可能に開口したポケットを形成する一方、筆穂被覆用片13の縦方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の縦方向の他端に接続され、筆穂被覆用片13全体が捲れるようにしたものであってもよい。
【0071】
このようにすれば、縦方向の他端側から筆尻被覆用片12と筆巻本体10との間に筆尻B1b,B2bを挿入することで、毛筆B1,B2の筆尻B1b,B2bを筆尻被覆用片12で覆った状態にすることができる。また、筆穂被覆用片13を捲ることで毛筆B1,B2(筆穂B1a,B2a)を筆巻本体10上に配置することができ、捲った筆穂被覆用片13を元に戻すことで、筆穂被覆用片13で筆穂B1a,B2aを覆った状態にすることができる。
【0072】
従って、上記実施形態と同様に、筆巻本体10を毛筆B1,B2回りに巻き付けたときに内部の毛筆B1,B2が軸方向に移動しようとしても、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13が毛筆B1,B2の移動を規制して該毛筆B1,B2の脱落が確実に防止することができる。
【0073】
また、筆巻き1は、図4(b)に示す如く、筆尻被覆用片12の縦方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の縦方向の一端に接続されるとともに、筆尻被覆用片12の横方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の横方向の一端に接続され、筆尻被覆用片12の横方向の他端側が捲れるように構成され、筆穂被覆用片13の縦方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の縦方向の他端に接続されるとともに、筆穂被覆用片13の横方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の横方向の一端に接続され、筆穂被覆用片13の横方向の他端側を捲れるように構成されたものであってもよい。
【0074】
このようにすれば、筆尻被覆用片12の横方向の他端側を捲ることで毛筆B1,B2(筆尻B1b,B2b)を筆巻本体10上に配置することができ、捲った筆尻被覆用片12を元に戻すことで、筆尻被覆用片12で筆尻B1b,B2bを覆った状態にすることができる。また、筆穂被覆用片13の横方向の他端側を捲ることで毛筆B1,B2(筆穂B1a,B2a)を筆巻本体10上に配置することができ、捲った筆穂被覆用片13を元に戻すことで、筆穂被覆用片13で筆穂B1a,B2aを覆った状態にすることができる。
【0075】
従って、上記実施形態と同様に、筆巻本体10を毛筆B1,B2回りに巻き付けたときに内部の毛筆B1,B2が軸方向に移動しようとしても、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13が毛筆B1,B2の移動を規制して該毛筆B1,B2の脱落が確実に防止することができる。なお、この場合において、筆尻被覆用片12を捲らなくても筆巻き1の横方向の他端側及び筆穂被覆用片13側の二方向から筆尻B1b,B2bを筆尻被覆用片12と筆巻本体10との間に挿入することもでき、また、筆穂被覆用片13を捲らなくても筆巻き1の横方向の他端側及び筆尻被覆用片12側の二方向から筆穂B1a,B2aを筆穂被覆用片13と筆巻本体10との間に挿入することもできる。
【0076】
また、筆巻き1は、図5(a)に示す如く、筆尻被覆用片12の縦方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の縦方向の一端に接続されるとともに、筆尻被覆用片12の横方向の両端が巻付領域100(筆巻本体10)の横方向の両端に接続されることで、筆尻被覆用片12と筆巻本体10とが共同して筆穂被覆用片13側から筆尻B1b,B2bを挿入可能に開口したポケットを形成する一方、筆穂被覆用片13の縦方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の縦方向の他端に接続されるとともに、筆穂被覆用片13の横方向の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の横方向の一端に接続され、筆穂被覆用片13の横方向の他端側を捲れるようにしたものであってもよい。
【0077】
このようにすれば、縦方向の他端側から筆尻被覆用片12と筆巻本体10との間に筆尻B1b,B2bを挿入することで、毛筆B1,B2の筆尻B1b,B2bを筆尻被覆用片12で覆った状態にすることができる。また、筆穂被覆用片13の横方向の他端側を捲ることで毛筆B1,B2(筆穂B1a,B2a)を筆巻本体10上に配置することができ、捲った筆穂被覆用片13を元に戻すことで、筆穂被覆用片13で筆穂B1a,B2aを覆った状態にすることができる。
【0078】
従って、上記実施形態と同様に、筆巻本体10を毛筆B1,B2回りに巻き付けたときに内部の毛筆B1,B2が軸方向に移動しようとしても、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13が毛筆B1,B2の移動を規制して該毛筆B1,B2の脱落を確実に防止することができる。なお、この場合において、筆穂被覆用片13を捲らなくても筆巻き1の横方向の他端側及び筆尻被覆用片12側の二方向から筆穂B1a,B2aを筆穂被覆用片13と筆巻本体10との間に挿入することもできる。
【0079】
さらに、筆巻き1は、図5(b)に示す如く、横方向中央部に縦方向に延びる切り込み120が入れられた筆尻被覆用片12の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の縦方向の一端に接続されるとともに、該筆尻被覆用片12の横方向の両端が巻付領域100(筆巻本体10)の横方向の両端に接続され、横方向中央部に縦方向に延びる切り込み130が入れられた筆穂被覆用片13の一端が巻付領域100(筆巻本体10)の縦方向の他端に接続されるとともに、該筆穂被覆用片13の横方向の両端が巻付領域100(筆巻本体10)の横方向の両端に接続されたものであってもよい。
【0080】
このようにすれば、筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13のそれぞれが切り込み120,130の両側を捲ることができる状態になるため、該切り込み120,130から毛筆B1,B2(筆穂B1a,B2aや筆尻B1b,B2b)を筆巻本体10上に配置することができ、捲った筆尻被覆用片12及び筆穂被覆用片13を元に戻すことで、上記実施形態と同様に、筆尻被覆用片12で筆尻B1b,B2bを覆いつつ筆穂被覆用片13で筆穂B1a,B2aを覆った状態にすることができる。なお、この場合、必ずしも切り込み120,130から毛筆B1,B2を挿入する必要はなく、縦方向の他端側から筆尻被覆用片12と筆巻本体10との間に筆尻B1b,B2bを挿入してもよいし、縦方向の一端側から筆穂被覆用片13と筆巻本体10との間に筆穂B1a,B2aを挿入してもよい。
【0081】
上記実施形態において、筆巻本体10に巻付領域100と被覆領域101とを設定し、巻付領域100を二重の不織布C,Cで構成する一方、被覆領域101を一重の不織布Cで構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、筆巻本体10全体を巻付領域100に設定し、該巻付領域100に複数の帯状芯11…を配置してもよい。
【0082】
上記実施形態において、巻付領域100を二重の不織布C,Cで構成し、該二重の不織布C,Cを縫い合わせることで不織布C間にある補強心を固定するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、補強心を巻付領域100の何れか一方の面(内側又は外側の面)上に配置し、接着剤や金具(例えば、鳩目等)で巻付領域100(筆巻本体10)に固定してもよい。また、このように帯状芯11…を巻付領域100に対して接着剤等で固定する場合、巻付領域100を一重の不織布Cで構成してもよい。
【0083】
上記実施形態において、四角形状の原不織布を縫製して筆巻本体10を作製することを前提に、被覆領域101の縦方向の長さを巻付領域100の縦方向の長さを同一又は略同一に設定して該被覆領域101を四角形状の領域にし、展開した筆巻本体10が四角形状をなすようにしたが、被覆領域101は四角形状に限定されるものではなく、例えば、被覆領域101は、巻付領域100側の端部から反対側の端部に向けて縦方向の長さが変化するような形状(例えば、台形状や三角形状等)に形成してもよい。
【0084】
上記実施形態の筆巻き1は、縦方向に延びるように被覆領域101の前記横方向の他端部に配置された帯状の補強芯15を備えたが、これに限定されるものではなく、例えば、被覆領域101の端部に補強芯15を設けることなく該端部を変形自在な状態にしてもよい。
【0085】
上記実施形態の筆巻き1は、毛筆B1,B2に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体10の端部から延出し、毛筆B1,B2に巻き付けた筆巻本体10に対して巻き付け可能な長さに設定された延出体14を備え、該延出体14が筆巻本体10の巻き付け時に内側に向く面に雄雌何れか一方の面ファスナー140の取り付けられたファスナーテープで構成され、前記筆巻本体10における延出体14の基端近傍における外面上に雄雌何れか他方の面ファスナー141が取り付けられたが、これに限定されるものではなく、例えば、延出体14は、単なる帯体や紐体で構成してもよい。
【0086】
このようにしても、延出体14を毛筆B1,B2に巻き付けた筆巻本体10に対して巻き付けた上で、該延出体14の先端側を筆巻本体10と該筆巻本体10上に巻き付けられた延出体14(基端側)との間に挟み込む等することで、筆巻本体10を毛筆B1,B2回りに巻き付けた状態で維持させることができる。なお、この場合には、従来の筆巻き1のように延出体14の先端にコハゼを取り付けておくことが好ましい。
【0087】
上記実施形態の筆巻き1は、筆巻本体10に延出体14を延設し、これらが一体的にされたが、これに限定されるものではなく、例えば、筆巻き1を少なくとも筆巻本体10、帯状芯11…、筆穂被覆用片13、及び筆尻被覆用片12で構成し、延出体14を別体にしても勿論よい。この場合、延出体14は、紐体の他に、一端部の一方の面に雄雌何れか一方の面ファスナー140が取り付けられる一方で、他方の面に雄雌何れか他方の面ファスナー141が取り付けられた伸縮自在なゴムベルトや、バックルの取り付けられた非伸縮性のベルト等、種々のものを採用することができる。
【0088】
上記実施形態において、筆穂被覆用片13及び筆尻被覆用片12を筆巻本体10と同素材(不織布C)で構成したが、これに限定されるものではなく、筆穂被覆用片13及び筆尻被覆用片12は、筆巻本体10と素材を異にしてもよい。
【0089】
上記実施形態において、筆巻本体10を不織布Cで構成したが、これに限定されるものではなく、筆巻本体10は、通気性及び可撓性を有するシートで構成すればよく、例えば、不織布C以外に、網材や通気性を有する樹脂シートで構成されてもよい。また、筆穂被覆用片13及び筆尻被覆用片12も同様である。
【0090】
また、上記実施形態において、筆巻本体10の巻付領域100及び被覆領域101を連続する不織布(一枚の不織布)で構成したが、これに限定されるものではなく、巻付領域100及び被覆領域101のそれぞれを独立したシート(同種又は異種のシート)で構成し、これらのシートをつなぎ合わせて筆巻本体10を形成してもよい。この場合、筆穂B1a,B2aに含まれる水分を逃がすべく、少なくとも巻付領域100を通気性のあるシートで構成すればよい。
【符号の説明】
【0091】
1…筆巻き、10…筆巻本体、11…帯状芯、12…筆尻被覆用片、13…筆穂被覆用片、14…延出体、15…補強芯、100…巻付領域、101…被覆領域、120,130…切り込み、140,141…面ファスナー、B1…太筆(毛筆)、B2…細筆(毛筆)、B1a,B2a…筆穂、B1b,B2b…筆尻、C…不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる毛筆の軸方向の全長に亘って少なくとも一周以上巻き付け可能な巻付領域が設定され、且つ少なくとも巻付領域が通気性を有するシートで構成された筆巻本体と、毛筆に対する巻付領域の巻き付け方向と対応する横方向と直交する縦方向に延びるように形成されるとともに前記横方向及び前記縦方向と直交する方向に可撓性を有し、前記筆巻本体の少なくとも巻付領域内に前記横方向に間隔をあけて平面的に配置された複数の帯状芯と、前記巻付領域の前記縦方向の一端に接続されて該巻付領域の前記縦方向の中央よりも一端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆尻被覆用片と、前記巻付領域の前記縦方向の他端に接続されて該巻付領域の前記縦方向の中央よりも他端側の領域に重合状態で配置されたシート状の筆穂被覆用片とを備えていることを特徴とする筆巻き。
【請求項2】
毛筆に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体の端部から延出し、毛筆に巻き付けた筆巻本体に対して巻き付け可能な長さに設定された延出体を更に備えている請求項1に記載の筆巻き。
【請求項3】
前記延出体は、毛筆に巻き付けたときに内側に向く面に雄雌何れか一方の面ファスナーが取り付けられたファスナーテープで構成され、前記筆巻本体における延出体の基端近傍における外面上に雄雌何れか他方の面ファスナーが取り付けられている請求項2に記載の筆巻き。
【請求項4】
前記筆巻本体は、前記横方向の何れか一端側の半分又は略半分の領域に前記巻付領域が設定されるとともに、前記横方向の何れか他端側の半分又は略半分の領域に前記巻付領域上に巻き付けられる被覆領域が設定され、前記巻付領域のみに複数の帯状芯が配置されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の筆巻き。
【請求項5】
前記筆巻本体は、前記巻付領域が互いに重ね合わされた二重の不織布で構成される一方、前記被覆領域が一重の不織布で構成され、前記複数の帯状芯は、巻付領域を構成する二重の不織布間に介装され、該二重の不織布の帯状芯間が縫い合わされることで定位置に固定されている請求項4に記載の筆巻き。
【請求項6】
毛筆に巻き付けたときの巻き終わりとなる筆巻本体の端部に沿って配置された帯状の補強芯を更に備えている請求項1乃至5の何れか1項に記載の筆巻き。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−13441(P2013−13441A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146323(P2011−146323)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000142920)株式会社呉竹 (24)
【Fターム(参考)】