説明

筆記具用軸筒の搬送構造

【課題】
筆記具用の軸筒を懸吊して直進フィーダーにて搬送する際に、部材同士や部材と直進フィーダーのガイド部材との衝突により発生する傷等を防止する。
【解決手段】
筆記具用軸筒101は、直進フィーダー1の板状ガイド6に懸吊され搬送される。筆記具用軸筒101には環状突起108が形成されるとともに、板状ガイドの対抗する角部(対向面角部)にはR面取りが施される。筆記具用軸筒101は、環状突起108と板状ガイドの角部(対向面角部)との当接により懸吊される。当該当接部分は点又は線接触となるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具の自動組立機械における筆記具用軸筒の搬送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具の自動組立機械においては、ガイドレール間に筆記具を懸吊して直進フィーダー等の振動により搬送し、部品を供給する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−158884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の筆記具用部品の搬送構造においては、軸筒に設けられた環状の突起(段部3)と、ガイドレールとの接触が平面同士で接触している。よって、振動の発生により部品を搬送する直進フィーダーを用いた場合には、平面同士の接触により摩擦抵抗が生じ、より強い振動を付与して搬送することとなる。すると、円筒状の比較的長い部品となる筆記具用の軸筒においては、特に送り方向に振り子運動状に揺れが発生し、部品同士が衝突するなどして、傷等の発生が起こり易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、略円筒状に形成された筆記具用軸筒と、前記筆記具用軸筒の端部近傍外周に設けられ、断面円弧状に形成された環状突起と、前記筆記具用軸筒を搬送する直進フィーダーと、前記直進フィーダーに設けられ、板状に形成されるとともに、所定の間隔をもって対向して設けられた板状ガイドと、前記筆記具用軸筒は、前記板状ガイドの対向面により形成された所定の間隔の間に、前記環状突起をR面取りされた前記板状ガイドの対向面角部と当接させて懸吊することにより搬送されることを特徴とする筆記具用軸筒の搬送構造、である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自動組立機械における筆記具用の軸筒の搬送について、筆記具用軸筒とガイドレールとなる板状ガイドとの接触を、板状ガイドのR面取りされた対向面角部と軸筒の断面円弧状の突起により形成することができる。ゆえに、接触部分は線状又は点状に形成される。よって、従来の面接触に比べて、接触部分の摩擦による抵抗が少なく、直進フィーダーの振動発生を小さくすることができるので、筆記具用軸筒の搬送時における接触による傷等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】自動組立機械における直進フィーダーの全体図を示す。
【図2】筆記具の組立完成状態を示す図であり、(a)が側面図で、(b)が縦断面図である。
【図3】直進フィーダーの被搬送物品である筆記具用軸筒の正面図である。
【図4】本発明の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。なお、以下の説明において、筆記用具についての説明における前方向は、ペン先側の方向を指す。
【実施例1】
【0009】
図1に自動組立機械における筆記具用軸筒101の直進フィーダー1の全体図を示す。直進フィーダー1は、自動組立機械の一部を構成し、図示しないパーツフィーダーからシュート等を介して(符号S)供給される筆記具用軸筒101を、ハンドリング手段50が筆記具用軸筒101をクランプするクランプ位置50aまで搬送する。ハンドリング手段50は、フィンガー50bのクランプ・アンクランプ動作により、クランプ位置50aにて筆記具用軸筒101をクランプし、順次組立工程に搬出する。
【0010】
直進フィーダー1は、架台2上に、ベースプレート3及び防振装置3aを介して固定されている。なお、架台2には、自動組立機械における他の装置(ハンドリング手段50等)も共通して固定されている。ベースプレート3には、振動発生源となるリニア駆動装置4が設けられている。リニア駆動装置4の上部には、板状部4aが固定されている。そして、この板状部4a上には、支柱5が2本一組に対向して複数立設する。本実施例においては三組(6本)が立設している。そして、隣り合う支柱5に渡って、板状に形成された板状ガイド6が対向して設けられている(6a,6b)。板状ガイド6(6a,6b)は、筆記具用軸筒101を懸吊可能な程度の間隔に設定されている。高さ方向も、適宜筆記具用軸筒101が搬送可能な程度の高さに設定されている。
【0011】
板状ガイド6(6a,6b)の搬送方向(送り方向FD)出口側(ハンドリング手段50側)には、ゲート手段7が設けられている。ゲート手段7は、定常状態ではゲート部7aが閉じている。そして、ハンドリング手段50により筆記具用軸筒101が板状ガイド6(6a,6b)からクランプされ引き抜かれる際には、筆記具用軸筒101と当接することによりゲート部7aが開かれる構造となっている。これにより、リニア駆動装置4が振動を発生している場合においても、ハンドリング手段50によりクランプされ引き抜かれるまで、脱落させることなく筆記具用軸筒101を1本ずつ排出することができる。
【0012】
なお、板状ガイド6(6a,6b)の送り方向FDの上流側は、図示しないパーツフィーダー等とシュート等を介して接続され(符号S)、筆記具用軸筒101が随時供給されている。筆記具用軸筒101の径方向の向きは、後述する筆記具のクリップ102(図2参照)が送り方向FDに対して送り方向又は送り方向と反対方向に向くように供給され、環状突起108(図2参照)が板状ガイド6(6a,6b)との係合により懸吊される。
【0013】
さらに、板状部4aのハンドリング手段50側(換言すれば、送り方向FDの出口側)には、筆記具用軸筒101の送り方向FDと平行して所定長さのプレート4bが設けられている。プレート4bは、上流側の端部で筆記具用軸筒101の懸吊時の下端部と当接するよう設定されている。これにより、プレート4b上では、筆記具用軸筒101は、ゲート手段7近傍で筆記具用軸筒101の上端側を出口側に傾斜させて搬送される。さらに、プレート4bの終端は、ゲート手段7の位置で筆記具用軸筒101の傾斜が解除され、次排出される筆記具用軸筒101だけが懸吊による直立状態に戻るように設定されている。これにより、次位置の筆記具用軸筒101(101a)の傾斜により空間50cが確保されているので、クランプ位置50aでハンドリング手段50のフィンガー50bが筆記具用軸筒101をクランプする際、フィンガー50bと次位置の筆記具用軸筒101(101a)が干渉することを防止することができる。
【0014】
図2に、自動組立機械により組み立てられた筆記具100の例としてのボールペンの全体図を示す。図2(a)に筆記具100の全体の正面図を示し、図2(b)に筆記具100の縦断面図を示す。概略を説明すると、筆記具100の筆記具用軸筒101には、後方にクリップ102が一体的に形成され、把持部分にグリップ103が設けられている。グリップ103は筆記具用軸筒101と2色成形により一体的に形成されている。また、筆記具用軸筒101の先端部には、先口104が螺合により接続され固定されている。
【0015】
また、筆記具用軸筒101には、ボールペンリフィール105が内蔵され、付勢部材106と回転子、中駒等とにより構成されるノック機構107とにより、ボールペンリフィール105を先口104の先端開口部より出没可能に形成されている。
【0016】
筆記具用軸筒101には、後端部付近外周に、環状突起108が設けられている。環状突起108の断面(図2(b)参照)は、円弧状に形成されている。なお、環状突起108は、筆記具用軸筒101周りに、クリップ102を回避して形成されている。
【0017】
図3は、筆記具用軸筒101を、クリップ102側から見た正面図である。筆記具用軸筒101は、全体を略円筒状に形成されている。筆記具用軸筒101の前端部は、先口104との螺合接続を実現する雄螺子部109が形成されている。筆記具用軸筒101の後端部は、端面を軸心周りに波形形状110に形成されている。
【0018】
図4は、本発明の要旨となる板状ガイド6(6a,6b)と筆記具用軸筒101の要部拡大図である。板状ガイド6(6a,6b)は、それぞれの板状ガイド6a,6bが向かい合う対向面6a1,6b1の環状突起108と当接している角部(対向面角部)6a2,6b2がR面取りされている。一方、環状突起108は、前述の通り断面円弧状に形成されている。ゆえに、角部(対向面角部)6a2,6b2と環状突起108の当接部分は点接触状になる。よって、角部(対向面角部)6a2,6b2と環状突起108の当接部分における両者の摩擦抵抗は面接触の場合に比べて大幅に低減されるので、直進フィーダー1の振動(振幅の設定)を小さくしても筆記具用軸筒101をスムーズに送ることができる。さらに、直進フィーダー1の振動が小さいので、搬送中に筆記具用軸筒101の送り方向FDに沿った振り子運動が生じ難くなり、筆記具用軸筒101の部材間の衝突を防止することができる。ゆえに、筆記具用軸筒101の直進フィーダー1の搬送中の傷等を防止することができる。本発明により、外装部品として高度な品質が要求される筆記具用軸筒101にとって、不良発生率を低減できる。
【0019】
また、角部(対向面角部)6a2,6b2をR面取りとしたことで、C面取りに比して筆記具用軸筒101に傷を付ける虞のある角部が表れないので、仮に筆記具用軸筒101と板状ガイド6(6a,6b)とが衝突したとしても、傷等の無いより高品質の筆記具100の生産に貢献することができる。
【0020】
さらに、本実施例においては、環状突起108における断面円弧状の半径108rを角部(対向面角部)6a2,6b2における半径6Rの2倍に設定した。これにより、図4に示すとおり、板状ガイド6a,6bと筆記具用軸筒101に所定の隙間Wを保ちつつ、環状突起108の下面108aが板状ガイド6a,6bの上面6a3,6b3よりも僅かに下がった状態(ギャップG)で筆記具用軸筒101は懸吊されることとなる。これにより、筆記具用軸筒101は左右前後の横振れなく安定的に搬送されることなる。ゆえに、隙間Wが搬送中においても保たれるので、筆記具用軸筒101が板状ガイド6a,6bと衝突することによる傷の発生を防止することができる。
【0021】
板状ガイド6a,6bについては、その材質を樹脂材料に比べて金属材料(鉄鋼材料)により形成することが好ましい。角部6a2,6b2と環状突起108の当接部分が点接触となるため、当接部分の面圧が上昇し、板状ガイド6a,6bの磨耗が発生するためである。さらに好ましくは、板状ガイド6a,6bを表面硬化処理することが好ましい。より硬質な板状ガイド6a,6bとすることで、環状突起108との当接部分の磨耗を低減することができる。表面硬化処理としては、例えば窒化処理、塩浴軟窒化処理、ガス窒化処理、複合電解メッキ処理等種々の表面硬化処理を適用することができる。
【0022】
なお、筆記具用軸筒101の形状が四角筒状等の場合には、その外周に沿って環状突起108を形成することができる。この場合には、環状突起108が直線的に連続して形成される部分が存在する。ゆえに、角部(対向面角部)6a2,6b2と環状突起108の当接部分は線接触となるが、面接触と比して摩擦抵抗は低減することができる。
【0023】
以上、本発明の実施例を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。例えば、直進フィーダーはリニア駆動としたが、電磁コイルと板バネの組合わせによる方式としてもよい。また、環状突起108の断面円弧状は、角部6a2,6b2との当接部分のみ円弧状に形成しても良い。
【符号の説明】
【0024】
1 直進フィーダー
2 架台
3 ベースプレート
3a 防振装置
4 リニア駆動装置
4a 板状部
4b プレート
5 支柱
6 板状ガイド
6a,6b 板状ガイド
6a1,6b1 対向面
6a2,6b2 角部(対向面角部)
6a3,6b3 上面
6R 半径
7 ゲート手段
7a ゲート部
50 ハンドリング手段
50a クランプ位置
50b フィンガー
100 筆記具
101 筆記具用軸筒
102 クリップ
103 グリップ
104 先口
105 ボールペンリフィール
106 付勢部材
107 ノック機構
108 環状突起
108a 下面
108r 半径
109 雄螺子部
110 波形形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状に形成された筆記具用軸筒と、
前記筆記具用軸筒の端部近傍外周に設けられ、断面円弧状に形成された環状突起と、
前記筆記具用軸筒を搬送する直進フィーダーと、
前記直進フィーダーに設けられ、板状に形成されるとともに、所定の間隔をもって対向して設けられた板状ガイドと、
前記筆記具用軸筒は、前記板状ガイドの対向面により形成された所定の間隔の間に、前記環状突起をR面取りされた前記板状ガイドの対向面角部と当接させて懸吊することにより搬送されることを特徴とする筆記具用軸筒の搬送構造。
【請求項2】
断面円弧状に形成される前記環状突起の断面半径は、前記板状ガイドの対向面角部のR面取り半径の2倍の半径により形成されていることを特徴とする請求項1記載の筆記具用軸筒の搬送構造。
【請求項3】
前記板状ガイドは、表面硬化処理されていることを特徴とする請求項1又は2記載の搬送構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194839(P2011−194839A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66928(P2010−66928)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000108328)ゼブラ株式会社 (172)
【Fターム(参考)】