説明

筆記具

【課題】軸筒の後端部に配した操作体を操作して前進させ、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出して維持し、筆記具を机上等へ置いた際の軸筒への衝撃により、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部に没入する筆記具を得る。
【解決手段】軸筒2内に、前側壁部材11と後側壁部材14とで構成した被挟持体収容室16を形成して被挟持体17を収容する。前側壁部材11の後方端面11bに設けた挟持棒部24が挿通する挟持棒部用孔25の部分に、被挟持体17が係合可能な被挟持体用凹部26を設ける。操作体5を操作することで、筆記体21の筆記先端部21bを軸筒2の先端開口部28から突出させるとともに、被挟持体17を被挟持体用凹部26に係合し、被挟持体17を挟持棒部24と後側壁部材14とで挟持することで、筆記先端部21bの突出状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒の後端部に配した操作体を前進させることにより、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出し、筆記具を机上へ載置した際の軸筒への衝撃等により筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部に没入させる自動復帰機構を設けた、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒に設けられたノック操作部に連接した筆記体を、ノック操作により筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出し、筆記具を横にすると自動的に筆記体の筆記先端部が軸筒の先端開口部に没入する自動復帰機構を設けた筆記具が、特開2007−15239号公報により提案されている。
【0003】
前記公報に記載された「ボールペン」は、(イ)自動復帰機構は、ノッカー4に係脱する係合部12を備えた作動軸10と、該作動軸10の後端に設けた曲折可能なジョイント部材6と、該ジョイント部材6に連結した錘部材8とを備え、(ロ)前記ノッカー4を押し下げて筆記体2の先端を筆記具本体1の先端から突出させるとき、該ノッカー4は作動軸10の係合部12に係合し、該作動軸10を押し下げるとともに、ノッカー4に形成された係止凸部15の上面がガイド筒9の底面に当接し、(ハ)筆記具本体1を傾けたときには、上記錘部材8が傾動して作動軸10を持ち上げ、該作動軸10の係合部12は上記係止凸部15の上面がガイド筒9の底面に当接したのを解除するものである。
【0004】
前記技術のノック操作により筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より出没させる出没機構は、隆起部を有したスライド片(ノッカー4)を各筆記体の後端に装着し、隆起部を軸筒後端部に形成した摺動溝より外方に突出させ、隆起部を軸筒の先端方向に前進操作することにより筆記体を前進させ、スライド片(ノッカー4)に形成した係止部を軸筒後端部に形成した被係止部に係止して筆記体の先端部を軸筒の先端開口部から突出させてなる「スライド式」と呼ばれているものである。それが故に、軸筒の後端に自動復帰機構を付設した構造となっている。軸筒の後端開口部より一部を外方に突出させた操作体を押圧または回動して前進させることにより筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出する出没機構では、採用が困難である。
【0005】
また、前記したような、筆記具本体1を傾けたときに、錘部材8が傾動して作動軸10を持ち上げ、作動軸10の係合部12が、上記係止凸部15の上面がガイド筒9の底面に当接したのを解除する構造では、筆記時では筆記具本体を傾けて筆記するのが極普通であり、筆記時のときより傾けた際に作動軸10を持ち上げるようにするには、錘部材8をより傾動させたときに作動軸10を持ち上げる必要があり、錘部材8を収容する収容部7は大きな容積が必要となり、デザインに制約を受けるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−15239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、軸筒の後端部に配した操作体を操作して前進させ、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出してその突出状態を維持し、筆記具を机上等へ置いた際の軸筒への衝撃により筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部に没入させる、既存の筆記具と遜色のないデザインを採用することができる自動復帰機構を有した筆記具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「1.軸筒の後端部に操作体を前後に移動可能に配し、該操作体の前方の軸筒内に、軸筒内を移動することのないように設けた前側壁部と後側壁部とで区画した被挟持体収容室を形成して被挟持体を収容し、前側壁部の前方の軸筒内に、前後に移動可能にばねにより後方に付勢して筆記体を収容し、該筆記体の後端部に、前側壁部を貫通して被挟持体収容室内に突出し前側壁部に対して前後に移動可能な挟持棒部を有したホルダー部材を連接し、
操作体に、操作体の移動に連動して前後に移動可能に、かつ前側壁部および後側壁部を通過して先端がホルダー部材の後端面に当接または連接したホルダー押棒体を連接してまたは一体に設け、少なくとも前側壁部の被挟持体収容室に面した後方端面の挟持棒部が挿通する前側壁部に形成した挟持棒部用孔の部分に、軸筒の先端開口部を下側に向けて軸筒を把持した際に被挟持体が係合可能な被挟持体用凹部を設け、操作体を操作して該操作体を前進させることでホルダー押棒体が軸筒内を前進してホルダー部材を押圧し、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部から突出させるとともに、被挟持体をホルダー部材の挟持棒部と後側壁部とで挟持することで、筆記先端部の突出状態を維持してなる筆記具。
2.前記前側壁部の被挟持体収容室に面した後方端面に、前記被挟持体用凹部に向って軸径方向に延びた、被挟持体の移動に際し、該被挟持体を被挟持体用凹部に案内するガイド溝を設けてなる、前記1項に記載の筆記具。
3.前記挟持棒部を、ホルダー部材の後端面の軸筒の内壁面側の近傍に偏倚した位置に設けるとともに、少なくとも前側壁部の被挟持体収容室に面する後方端面を、軸筒の先端開口部を下側に向けて軸筒を把持した際に、被挟持体が被挟持体収容室内の挟持棒部を配した位置に移動するように、軸筒の軸径方向において傾斜して設けたことを特徴とする、前記1項または2項に記載の筆記具。」
である。
【0009】
本発明に係る筆記具は、操作体を操作して前進させることで、ホルダー押棒体が軸筒内を前進してホルダー部材を押圧し、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部から突出させるとともに、ホルダー部材に形成した挟持棒部の先端を被挟持体収容室内から前側壁部内に没入し、被挟持体を被挟持体収容室内の挟持棒部の先端に対向した位置側に移動させて、挟持棒部と被挟持体収容室を構成する後側壁部とで挟持して、前記筆記先端部の突出状態を維持するものである。挟持棒部が被挟持体を挟持するためには、一旦挟持棒部を前進させた後に後退させる必要があり、ホルダー部材が後方に移動しなければならない。それには、ホルダー押棒体を後退させる必要があり、ホルダー押棒体を後退させるには操作体を後退させなければならないが、操作体への操作を止めると自動的に操作体が後方に後退するような構造にすれば、操作性が良いものとなる。なお、操作体としては、押圧操作により前後動するノック体や、または回動操作により回動して前後動する構造のものがある。
【0010】
操作体への操作を止めると自動的に操作体が後方に後退するようにするには、操作体にばねを配して直接的に操作体を後方に付勢するか、筆記体を後方へ付勢する付勢力を利用して間接的に操作体を後方に付勢する方法がある。操作体を回動操作で前後動させるには、軸筒の後端部に螺旋溝を形成し、該螺旋溝に係合する係合突起部を操作体に設けて、前記係合突起部を螺旋溝に係合して操作体を配すれば良いが、操作体への押圧または回動操作を止めると、自動的に操作体が後方に後退するようにするには、前記螺旋溝における螺旋ピッチが長い螺旋溝とすることが必要となる。
【0011】
本発明における被挟持体については、形状、大きさ、材質等についての制約はなく、被挟持体収容室内を移動可能な形状であれば、例えば球体、立方体、直方体、円柱体や異形体でも良い。ただし、被挟持体が挟持棒部と後側壁部とで挟持され、かつ筆記先端部が軸筒の先端開口部より突出するような状態で挟持されるような形状や大きさにすることが重要である。好ましい形状は、円球や略球状となる多面体である。ただ重さについては、被挟持体が挟持棒部と後側壁部とで挟持された状態において、その挟持力との関係があるが、少なくとも被挟持体が自重により挟持棒部と後側壁部との挟持から離脱しないような重さとすることが重要である。
【0012】
本発明における挟持棒部は、ホルダー部材と一体に形成して設けても良いし、別部材で形成しホルダー部材に固着して設けても良い。挟持棒部の形状や大きさについては特に制約はなく、断面が多角形状または円形状の棒状体であっても良いしパイプ状であっても良いが、重要なのは、挟持棒部が前記被挟持体を後側壁部に押圧することで挟持棒部と後側壁部とで確実に挟持でき、軸筒への衝撃により被挟持体が前記挟持から離脱可能に設ける必要がある。
【0013】
本発明におけるホルダー押棒体は、形状や大きさについての制約は特にないが、被挟持体収容室に収容された被挟持体の軸径方向への移動の妨げとならないような位置に配置することや大きさとすることが重要である。
【0014】
本発明における前側壁部の軸心方向の長さは、操作体への操作により操作体が前進して筆記体の筆記先端部が軸筒の先端開口部から突出した際に、ホルダー部材も筆記体に連動して前進し挟持棒部も連動して移動するので、該挟持棒部の後端が前側壁部より抜け出さない程度の長さが必要である。
【0015】
本発明における被挟持体が係合する被挟持体用凹部の形状、大きさは、筆記先端部を下側に向けて筆記具を把持した際にがたつくことなく被挟持体が係合するように、被挟持体の形状に合わせて適宜設定する。
【0016】
本発明におけるガイド溝については、形状や大きさについての制約は特になく、確実に被挟持体が前側壁部に形成した挟持棒部用孔に対向した位置に移動するように設けてあれば良い。被挟持体が直方体や異形体の場合には、被挟持体が被挟持体収容室内を自由自在に移動可能であると、被挟持体が常に同じ向き同じ状態でガイド溝に当接するとは限らないので、被挟持体がガイド溝から離間しないように前側壁部と後側壁部の離間距離を設定すると良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明は前記したような構造なので、軸筒の後端部に配した操作体を操作して、被挟持体をホルダー部材の挟持棒部と被挟持体収容室を構成する後側壁部とで挟持することで筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出した突出状態を維持し、筆記具を机上等へ置いた際の軸筒への衝撃により被挟持体が前記挟持より離脱することで筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部に没入させるという自動復帰機構を有し、かつデザイン性を損なうことなく既存の筆記具と同等のシルエットとした筆記具を得ることができた。
【0018】
本発明においては、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出させる際に、被挟持体を挟持棒部と後側壁部とで挟持する必要があるが、被挟持体は被挟持体用凹部にがたつくことなく係合して挟持棒部に対向するので、確実に被挟持体を挟持棒部と後側壁部とで挟持でき、操作性が良い。
【0019】
また、本発明の筆記具においては、後側壁部とで挟持して保持するための挟持棒部の被挟持体への押圧力、すなわち筆記体を後方へ付勢しているばねの付勢力と被挟持体の重量を調整することにより、筆記具を水平に傾けたときには、被挟持体の重量が挟持棒部の押圧力より勝り、被挟持体が挟持棒部と後側壁部との挟持から離脱し、自動的に、筆記先端部の軸筒の先端開口部からの突出状態を解除して、筆記先端部を軸筒の先端開口部に没入できる筆記具とすることもできる。
【0020】
請求項2に係る発明とすることで、被挟持体がガイド溝に案内されてスムーズに被挟持体用凹部に係合することができるので、さらに操作性の向上を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る発明とすることで、軸筒の先端開口部を下側に向けて、操作体を操作して被挟持体を被挟持体収容室内で挟持棒と後側壁部とで挟持する際に、被挟持体が被挟持体収容室内の挟持棒部を配した位置に重力で自動的に移動するので、容易に被挟持体を挟持棒部と後側壁部とで挟持でき、操作性をさらに向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る筆記具の第1の実施例を示す、筆記具の縦断面図である。
【図2】図1における前側壁部材を示し、(a)は前側壁部材の拡大側面図であり、(b)は前側壁部材の後方端面を示す拡大図である。
【図3】図1における前側壁部材を示す、拡大斜視図である。
【図4】図1における後側壁部材を示し、(a)は後側壁部材の前方端面を示す拡大図であり、(b)は後側壁部材の拡大側面図である。
【図5】第1の実施例の筆記具において、操作体を押圧して前進させ、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出し、挟持棒部も前進して先端部を前側壁部材内に没入した状態を示す、筆記具の縦断面図である。
【図6】図5において、被挟持体を被挟持体収容室内の挟持棒部を配した位置に移動し、前側壁部材に形成した被挟持体用凹部に係合した状態を示す、筆記具の縦断面図である。
【図7】図6の状態において、操作体への押圧力を若干緩めて操作体を若干後退させ、挟持棒部と被挟持体収容室を構成する後側壁部とで被挟持体を挟持した状態を示す、筆記具の縦断面図である。
【図8】第1の実施例の筆記具における、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出して維持した状態を示す、筆記具の縦断面図である。
【図9】本発明の筆記具の第2の実施例を示す、筆記具の縦断面図である。
【図10】図9における前側壁部材の拡大斜視図である。
【図11】図9における後側壁部材の拡大斜視図である。
【図12】第2の実施例の筆記具において、操作体を押圧・回動して前進させ、ホルダー押棒体の先端がホルダー部材の後端面に当接した初期の状態を示す、筆記具の縦断面図である。
【図13】図12において、操作体をさらに押圧・回動して前進させ、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出し、挟持棒部も前進して先端を前側壁部材内に没入した状態を示す、要部の部分を断面した筆記具の縦断面図である。
【図14】図13において、被挟持体を、被挟持体収容室の挟持棒部を配した位置に移動し、前側壁部材に形成した被挟持体用凹部に係合した状態を示す、筆記具の縦断面図である。
【図15】図14の状態において、操作体への押圧力を若干緩めて操作体を若干後退させ、挟持棒部と被挟持体収容室を構成する後側壁部とで被挟持体を挟持した状態を示す、要部の部分を断面した筆記具の縦断面図である。
【図16】第2の実施例の筆記具における、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部より突出して維持した状態を示す、筆記具の縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の筆記具は、操作体と筆記体との間に被挟持体を介在することにより、筆記体を被挟持体が挟持される部分の軸心方向の長さ分だけ前進させて、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部から突出させ、かつその状態を維持し、軸筒への衝撃等により被挟持体を操作体と筆記体との間から離脱させることで、筆記先端部を軸筒の先端開口部に没入させる構造とするものである。
【実施例1】
【0024】
本発明の筆記具の実施例を図面を用いて説明する。本実施例ではクリップを図示していないが、便宜上省略したものであり、本発明がクリップを有していない構造の筆記具に限定されるものではない。
【0025】
図1〜図4に示す第1の実施例の筆記具1は、軸筒2が円筒状の軸部3と先窄み状の口先部4とで構成されている。軸部3の後端部3a(図1において右側方向)には、小径な外径の前部5aと該前部5aの外径より大径な外径を有する後部5bとで構成した操作体5を、後部5bの一部を軸部3の後端開口部3bより外方に突出させて配してある。
【0026】
軸部3の後端部3aの内壁面には、操作体5の前部5aが遊嵌可能な内方に突出したリング状の内方突出部6を設けてあり、操作体5の前部5aの先端を遊嵌してある。操作体5の先端(図1において左側方向)には、円筒状の固定部7aと前方(図1において左側方向)に突出した押棒部7bとで構成したホルダー押棒体7を、前記内方突出部6の前方(図1において左側方向)に配置し、操作体5の前部5aの先端に形成した雄ねじ部8に固定部7aに形成した雌ねじ部9をねじ嵌合し接着剤により固定して、操作体5に連接して配してある。ホルダー押棒体7は、操作体5に連動して前後に移動可能としてある。操作体5は、ホルダー押棒体7の固定部7aが内方突出部6に当接することで軸部3の後端開口部3bより抜け出さないようにしてある。本実施例においては、軸部3の内方突出部6と操作体5の後部5bとの間にばね10を張架して操作体5を後方に付勢してある。
【0027】
ホルダー押棒体7の固定部7aの前方(図1において左側方向)の軸部3の内部には、図2に示すような円筒状の前側壁部材11を、軸部3内を移動することのないように、軸部3に打ち込んだピン12を、前側壁部材11の側部11aに設けた貫通孔13に挿入することで軸部3に固定して設けてある。また、前記前側壁部材11の後方(図1において右側方向)でホルダー押棒体7の固定部7aの前方の位置の軸部3の内部には、図3に示すような円筒状の後側壁部材14を、軸部3内を移動することのないように、前記前側壁部材11と同様に、軸部3に打ち込んだピン12を、後側壁部材14の側部14aに設けた貫通孔15に挿入することで軸部3に固定して設けてある。
【0028】
前記前側壁部材11と後側壁部材14とで区画した被挟持体収容室16には、球状の被挟持体17を収容してあり、被挟持体収容室16を構成する前側壁部材11の後方端面11bと後側壁部材14の前方端面14bを、図1において、上側が軸筒2の口先部4側に約5度寄った状態に傾斜させて設けてある。
【0029】
また、前側壁部材11と後側壁部材14の、後方端面11bと前方端面14bが傾いた操作体5側に近い各々の下端部11c、14c(図1においては軸部3の下側の内壁側)には、図2または図3に示すように凹溝18、19を設けてあり、操作体5に連接したホルダー押棒体7の押棒部7bを遊嵌させてある。
【0030】
前側壁部材11の前方の軸筒2内には、前後に移動可能にかつばね20により後方に付勢して筆記体21が収容してあり、該筆記体21の後端部21aにはホルダー部材22が、該ホルダー部材22に設けた嵌合溝23に筆記体21の後端部21aを嵌合して挿着してある。
【0031】
前記ホルダー部材22の後端面22aには、後方(図1において右側方向)に向って突出した挟持棒部24を、前側壁部材11に形成した凹溝18と反対側に位置する上端部(図1において上側の壁面側の端部)の近傍に偏倚した位置に設けてある。前側壁部材11には、図3に示すように、前記挟持棒部24に対向した位置で、凹溝18を形成した下端部11cと反対側の上端部(図2において上側端部)に、貫通した挟持棒部用孔25を形成してあり、挟持棒部24は挟持棒部用孔25を通って被挟持体収容室16内に突出している。
【0032】
前記前側壁部材の後方端面11bには、図2およおび図3に示すように、挟持棒部24が挿通する挟持棒部用孔25の位置に、挟持棒部用孔25が内在するように、被挟持体17ががたつくことなく係合可能な被挟持体用凹部26を設けてある。また、該被挟持体用凹部26に連通する軸径方向に延びた、軸筒2の先端開口部28を下側に向けて筆記具1を把持した際に、被挟持体17が当接して該被挟持体17の移動を案内する、断面形状が略半円状のガイド溝27を設けてある。
【0033】
次に、動作について図5〜図8を用いて説明すると、先ず、操作体5を押圧して前進させると、図5に示すように、操作体5および操作体5に連接したホルダー押棒体7も前進し、ホルダー押棒体7の押棒部7bの先端がホルダー部材22の後端面22aに当接してホルダー部材22を押圧し、ホルダー部材22も前進する。その結果、ホルダー部材22の挟持棒部24の先端は前側壁部材11に設けた挟持棒部用孔25内に没入し、筆記体21の筆記先端部21bは軸筒2の先端開口部28より突出する。
【0034】
このときに、軸筒2の先端開口部28が下側に向くように軸筒2を立てると、図6(便宜上、軸筒2を水平状態に描いてある。)に示すように、前側壁部材11の後方端面11bと後側壁部材14の前方端面14bとが傾斜しているので、被挟持体17はガイド溝27に沿って被挟持体収容室16内を挟持棒部24が配された位置側に移動し被挟持体用凹部26にがたつくことなく係合し、被挟持体17は挟持棒部24に対向する。
【0035】
この状態時に、操作体5への押圧力を若干緩めると、図7に示すように、ばね10の付勢力により操作体5は若干後退し、筆記体21とホルダー部材22も後退し、挟持棒部24の先端は被挟持体収容室16内に突出し、被挟持体17を挟持棒部24で後側壁部材14の前方端面14bに押しつけることで、被挟持体17は被挟持体用凹部26への係合から抜け出て挟持棒部24と後側壁部材14とで挟持される。
【0036】
操作体5への押圧を止めると、図8に示すように、操作体5はばね10の付勢力により元の位置に復帰するが、挟持棒部24は筆記体21を後方に付勢するばね20により筆記体21を介してホルダー部材22が後方に押圧されているので、被挟持体17は挟持棒部24と後側壁部材14とで挟持され続け、筆記体21の筆記先端部21bの軸筒2の先端開口部28からの突出状態は維持される。
【0037】
筆記体21を後方へ付勢するばね20による挟持棒部24の被挟持体17への押圧力を12gfとし、挟持棒部24の先端が被挟持体17に当接する部分を被挟持体17の中心より僅かにずらしてあるので(前後方向で約0.05mmずれた位置)、本実施例の筆記具1を机上等に載置したときの僅かな衝撃により、被挟持体17が挟持棒部24と後側壁部材14との挟持から離脱し、筆記体21の筆記先端部21bは、軸筒2の先端開口部28に没入する。
【実施例2】
【0038】
図9〜図11に示す請求項1に係る発明の第2の実施例の筆記具51は、第1の実施例の筆記具1と同様に、本実施例ではクリップを図示していないが、便宜上省略したものである。なお、第1の実施例の筆記具1と同じ部材、同じ箇所を示す場合は、同じ符号を付してある。
【0039】
第2の実施例の筆記具51は、第1の実施例の筆記具1と同様に軸筒2を、円筒状の軸部3と先窄み状の口先部4とで構成してある。軸部3の後方(図9において右側方向)の内壁面には、螺旋溝52を形成してある。螺旋溝52の前方の軸部3の内部には、第1の実施例の筆記具1と同様な内方に突出したリング状の内方突出部6を設けてあり、前記内方突出部6より後方の軸部3の内部には、内方突出部6の内径より若干小径で挿入可能な外径の前部53aと該前部53aの外径より大径な後部53bとで構成し、該後部53bに螺旋溝52に係合する係合突起54を有した操作体53を、前記係合突起54を螺旋溝52に係合し、螺旋溝52沿って回動しながら前後に移動可能に、後部53bの一部を軸部3の後端開口部3bより外方に突出させて配してある。
【0040】
前記内方突出部6には、操作体53の前部53aの先端部(図9において左側方向)を遊嵌してあり、操作体53の先端には、第1の実施例の筆記具1と同様の円筒状の固定部7aと前方(図9において左側方向)に突出した押棒部7bとで構成したホルダー押棒体7を、前記内方突出部6の前方(図9において左側方向)に配置し、操作体53の前部53aの先端に形成した雄ねじ部55に固定部7aに形成した雌ねじ部9をねじ嵌合し接着剤により固定して、操作体53に連接して配してある。ホルダー押棒体7は、操作体53に連動して前後に移動可能としてある。操作体53は、ホルダー押棒体7の固定部7aが内方突出部6に当接することで軸部3の後端開口部3aより抜け出さないようにしてある。本実施例においては、軸部3の内方突出部6と操作体53の後部53bとの間にばね10を張架して操作体53を後方に付勢してあり、操作体53の係合突起54が螺旋溝52に沿って後方へ移動し、操作体53への非操作時は操作体53が常時螺旋溝53の後方に位置するように、螺旋溝53を螺旋ピッチが長くなるような螺旋状に形成してある。
【0041】
ホルダー押棒体7の固定部7aの前方(図9において左側)の軸部3の内部には、第1の実施例の筆記具1と同様に、前側壁部材56を、軸部3内を移動することのないように、軸部3に打ち込んだピン12を、前側壁部材56の側部56aに設けた貫通孔57(図10を参照)に挿入することで軸部3に固定して設けてある。前側壁部材56には、図10に示すように、下方の周面の約半周部分に前側壁部材56の軸径が小径となる切欠部58を設け、該切欠部58に前記押棒部7bが遊嵌して回動および前後に移動可能にしてある。また、前記前側壁部材56の後方(図9において右側方向)でホルダー押棒体7の固定部7aより前方の位置の軸部3の内部には、第1の実施例の筆記具1と同様に、後側壁部材59を、軸部3内を移動することのないように、軸部3に打ち込んだピン12を、後側壁部材59の側部59aに設けた貫通孔60(図11を参照)に挿入することで軸部3に固定して設けてある。後側壁部材59には、前側壁部材56と同様に、図11に示すように、下方の周面の約半周部分に後側壁部材59の軸径が小径となる切欠部61を設け、該切欠部61に前記押棒部7bが遊嵌して回動および前後に移動可能にしてある。
【0042】
第1の実施例の筆記具1と同様に、前記前側壁部材56と後側壁部材59とで区画した被挟持体収容室16には、黄銅で製造した直径が6.4mmの円球状の被挟持体17を収容してあり、被挟持体収容室17構成する前側壁部材56の後方端面56bと後側壁部材59の前方端面59bを、図9において、上側が軸筒2の口先部4側に約5度寄った状態に傾斜させて設けてある。
【0043】
前側壁部材56の前方の軸筒2内には、第1の実施例の筆記具1と同様に、筆記体21とホルダー部材22を配してあり、前記ホルダー部材22の後端面22aには、挟持棒部24を設けてあり、前側壁部材56に形成した挟持棒部用孔62を通って被挟持体収容室16内に突出している。
【0044】
前記前側壁部材56の後方端面56bには、図10に示すように、第1の実施例と同様の挟持棒部24が挿通する挟持棒部用孔62の位置に、挟持棒部用孔62が内在するように、被挟持体17ががたつくことなく係合可能な被挟持体用凹部63を設けてある。また、該被挟持体用凹部63に連通する軸径方向に延びた、軸筒2の先端開口部28を下側に向けて筆記具1を把持した際に、被挟持体17が当接して該被挟持体17の移動を案内する、断面形状が略半円状のガイド溝64を設けてある。
【0045】
次に、第2の実施例の筆記具51における動作について図12〜図16を用いて説明すると、先ず、操作体53を押圧すると、図12に示すように、係合突起54が軸部3に形成した螺旋溝52に沿って前進するので操作体53は回動しながら前進し、操作体53に連接したホルダー押棒体7の押棒部7bも回動しながら前進する。押棒部7bの先端はホルダー部材22の後端面22aに当接してホルダー部材22を押圧する。ホルダー部材22に連動して筆記体21も前進し、筆記先端部21bは軸筒2の先端開口部28より突出し始める。
【0046】
さらに操作体53を押圧すると、操作体53はさらに回動しながら前進し、ホルダー部材22もホルダー押棒体7の押棒部7bにさらに押圧されて前進する。その結果、図13に示すように、挟持棒部24の先端は前側壁部材56に設けた挟持棒部用孔62内に没入し、筆記体21の筆記先端部21bは軸筒2の先端開口部28よりさらに突出する。
【0047】
このときに、軸筒2の先端開口部28が下側に向くように軸筒2を立てると、図14(便宜上、軸筒2を水平状態に描いてある。)に示すように、前側壁部材56の後方端面56bと後側壁部材59の前方端面59bとが傾斜しているので、被挟持体17はガイド溝64に沿って被挟持体収容室16内を挟持棒部24が配された位置側に移動し被挟持体用凹部63にがたつくことなく係合し、被挟持体17は挟持棒部24に対向する。
【0048】
この状態で、操作体53への押圧力を若干緩めて操作体53を若干後退させると、図15に示すように、筆記体21とホルダー部材22も後退し、挟持棒部24の先端は被挟持体収容室16内に突出し、被挟持体17を挟持棒部24で後側壁部材59の前方端面59bに押しつけることで、被挟持体17は被挟持体用凹部63への係合から抜け出て挟持棒部24と後側壁部材59とで挟持される。
【0049】
操作体53への押圧を止めると、図16に示すように、操作体53はばね10の付勢力により回動しながら後退して元の位置に復帰するが、挟持棒部24は筆記体21を後方に付勢するばね20で筆記体21を介してホルダー部材22の挟持棒部24により後方に押圧されているので、被挟持体17は挟持棒部24と後側壁部材59とで挟持され続け、筆記体21の筆記先端部21bの軸筒2の先端開口部28からの突出状態は維持される。
【0050】
第2の実施例の筆記具51も、筆記体21を後方へ付勢するばね20による挟持棒部24の被挟持体17への押圧力と、挟持棒部24の先端が被挟持体17に当接する部分を第1の実施例の筆記具1と同様にしてあるので、筆記具51を机上等に載置したときの僅かな衝撃により、被挟持体17が挟持棒部24と後側壁部材59との挟持から離脱し、筆記体21の筆記先端部21bは、軸筒2の先端開口部28に没入する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、軸筒の先端開口部より突出した筆記体の筆記先端部を、操作体を操作することなく筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部に没入させる自動復帰機構を有した筆記具に適用するものである。
【符号の説明】
【0052】
1、51 筆記具
2 軸筒
5、53 操作体
7 ホルダー押棒体
10 ばね
11、56 前側壁部材
14、59 後側壁部材
16 被挟持体収容室
17 被挟持体
20 ばね
21 筆記体
22 ホルダー部材
24 挟持棒部
26、63 被挟持体用凹部
27、64 ガイド溝
28 先端開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の後端部に操作体を前後に移動可能に配し、該操作体の前方の軸筒内に、軸筒内を移動することのないように設けた前側壁部と後側壁部とで区画した被挟持体収容室を形成して被挟持体を収容し、前側壁部の前方の軸筒内に、前後に移動可能にばねにより後方に付勢して筆記体を収容し、該筆記体の後端部に、前側壁部を貫通して被挟持体収容室内に突出し前側壁部に対して前後に移動可能な挟持棒部を有したホルダー部材を連接し、操作体に、操作体の移動に連動して前後に移動可能に、かつ前側壁部および後側壁部を通過して先端がホルダー部材の後端面に当接または連接したホルダー押棒体を連接してまたは一体に設け、少なくとも前側壁部の被挟持体収容室に面した後方端面の挟持棒部が挿通する前側壁部に形成した挟持棒部用孔の部分に、軸筒の先端開口部を下側に向けて軸筒を把持した際に被挟持体が係合可能な被挟持体用凹部を設け、操作体を操作して該操作体を前進させることでホルダー押棒体が軸筒内を前進してホルダー部材を押圧し、筆記体の筆記先端部を軸筒の先端開口部から突出させるとともに、被挟持体をホルダー部材の挟持棒部と後側壁部とで挟持することで、筆記先端部の突出状態を維持してなる筆記具。
【請求項2】
前記前側壁部の被挟持体収容室に面した後方端面に、前記被挟持体用凹部に向って軸径方向に延びた、被挟持体の移動に際し、該被挟持体を被挟持体用凹部に案内するガイド溝を設けてなる、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記挟持棒部を、ホルダー部材の後端面の軸筒の内壁面側の近傍に偏倚した位置に設けるとともに、少なくとも前側壁部の被挟持体収容室に面する後方端面を、軸筒の先端開口部を下側に向けて軸筒を把持した際に、被挟持体が被挟持体収容室内の挟持棒部を配した位置に移動するように、軸筒の軸径方向において傾斜して設けたことを特徴とする、請求項1または2に記載の筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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