等速ジョイント及びその製造方法
【課題】ローラ部材に対する保持部材の組み付け作業性を向上させることにある。
【解決手段】片側端部にフランジ部42が形成されたローラ部材30の内径部40内に、例えば、治具等を用いて全数の転動体28が装填された後、前記内径部40内の転動体28に対して、例えば、ワックス等の潤滑剤Wを供給し、前記潤滑剤Wの粘性作用によって保持部材46が簡便に係止される。
【解決手段】片側端部にフランジ部42が形成されたローラ部材30の内径部40内に、例えば、治具等を用いて全数の転動体28が装填された後、前記内径部40内の転動体28に対して、例えば、ワックス等の潤滑剤Wを供給し、前記潤滑剤Wの粘性作用によって保持部材46が簡便に係止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の駆動力伝達部において、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結させる等速ジョイント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の駆動力伝達部では、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結し回転力を各車軸へと伝達する等速ジョイントが用いられている。
【0003】
この種の従来技術に係る等速ジョイントとして、特許文献1には、ローラ1の円筒内周面2の軸方向両端部に、転動体3(コロ、ニードル等)の抜けを防止する一組の鍔部を形成し、この内周面の一組の鍔部間に、全数よりも1個少ない複数の転動体3を一連に並べ、この一連の転動体3の両端の2個の間にできた隙間の最小間隔d2と転動体3aの直径d1との関係をd2<d1となるように設定すると共に、その差(d1−d2)を数μm〜数十μmの締め代(圧入代)とし、前記隙間に最後の1個の転動体3aをローラ1の円筒内周面2の半径外方向から圧入して、ローラ1の円筒内周面2に沿って複数の転動体3を一連に装着する技術的思想が開示されている(図21参照)。
【0004】
このようにしてローラ1の円筒内周面2に沿って複数の転動体3を一連に並べる方法は、キーストン法と呼ばれ、ローラ1と転動体3とがばらけない組立体として一体化して同時に図示しない脚軸に組み付けることができるとしている。
【0005】
ところで、前記特許文献1に開示された転動体3の組み付け方法では、キーストン効果を発生させるために隙間内に圧入する最後の1本の転動体3aの圧入代を確保しなければならず、前記圧入代の確保のためには、ローラ1の内周側の内径公差と転動体3、3aの外径公差とを、それぞれできるだけ小さく設定する必要がある。
【0006】
仮に、前記公差(内径公差及び外径公差)を大きく設定した場合、圧入代が零となって圧入とはならない場合や、またこれとは反対に圧入代が大きくなりすぎて圧入できない場合、あるいは圧入できたとしても転動体3、3aが変形する場合等がある。また、前記公差を小さく設定しようとすると、ローラ1の円筒内周面2等における加工の困難さを伴い、製造コストが高騰するという問題がある。さらに、前記隙間に対して最後の1本の転動体3aを圧入するために、ローラユニットの組立の困難性を伴い、組立コストが増大するという問題がある。
【0007】
そこで、本出願人は、転動体の抜けを防止する片方の鍔部を有するローラ部材の内径面に対して軸線方向から環状に配置された複数の転動体を一括して挿入し、又は、1本を除いた複数の転動体を内径面に装填し前記除かれた1本の転動体を転動体間の間隙内に軸線方向から挿入した後、続いて、前記鍔部の反対側のローラ部材の内壁に、例えば、サークリップ等の保持部材を装着して転動体を保持する方案を提案している(特願2003−388029及び特願2003−388058参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−184717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の提案に関連してなされたものであり、ローラ部材に対する保持部材の組み付け作業性を向上させて製造コストをより一層低減することが可能な等速ジョイント及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられたアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に設けられ前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、前記案内溝に接触し前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部に設けられる片側鍔部と、前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った他方の端部に設けられ前記転動体を保持する保持部材とを備えるトリポート型の等速ジョイントの製造方法において、
前記ローラ部材の内径部に沿って全数の転動体が装填される工程と、
前記内径部内に潤滑剤を供給し、前記潤滑剤の粘性作用下に内径部に沿って導入された保持部材が係止される工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
この場合、全数の転動体は、環状に並べられ、ローラ部材の内径部の壁面と転動体の外周面との間で径方向のクリアランスが設けられた状態で、片側鍔部と反対側の端部から内径部の軸線方向に沿って前記内径部内に一括して挿入されるとよい。なお、前記径方向のクリアランスは、数μm〜数十μmに設定されると好適である。
【0012】
環状に並べられた状態で全数の転動体をローラ部材の内径部に対して軸線方向から一括して挿入しているため、前記転動体の外径公差及びローラ部材の内径部の内径公差に影響されることがなく、ローラ部材に対する転動体の組立作業性を向上させ、製造コストをより一層低減することができる。
【0013】
換言すると、特許文献1に示される従来技術ではキーストン効果を発生させるために、隙間に対して最後の1個の転動体をローラの円筒内周面の半径外方向(横方向)から圧入するために、公差(内径公差及び外径公差)をできるだけ小さく設定しなければならないのに対し、本発明では、全数の転動体をローラ部材の内径部の軸線方向(縦方向)から一括して挿入することにより全数の転動体がローラ部材の内径部内でキーストン状態に保持されてキーストン効果を発生させているため、最後の1本の転動体を圧入することが不要となる。
【0014】
なお、「キーストン状態」とは、転動体がキーストン効果によってローラ部材の内径部から分離・離脱することを好適に阻止された状態、すなわち、キーストン効果が発生することが可能な状態でローラ部材の内径部内に組み込まれている状態をいう。
【0015】
換言すると、ローラ部材の内径部内に転動体が挿入された後、キーストン効果が発生するように、転動体の外径とローラ部材の内径部の内径とが、予め、所定値に設定されており、ローラ部材の内径部内に全数の転動体が挿入された後、各々の転動体が隣接する他の転動体と接触していなくてもキーストン状態にあるといえる。
【0016】
また、1本を除いた全数の転動体がローラ部材の内径部に沿って環状に並べられ、続いて、最後の1本の転動体と隣接する転動体との周方向に沿った間で所定のクリアランスが設けられた状態で、前記最後の1本が片側鍔部と反対側の端部から内径部の軸線方向に沿って前記環状に並べられた転動体の間隙に挿入されることにより、ローラ部材の内径部内に全数の転動体が装填されるとよい。
【0017】
さらに、前記保持部材には、トラニオンを囲繞する内周側に、断面円弧状の円弧面が形成されるとよい。
【0018】
さらに本発明は、所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられ一方の伝達軸に連結される筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に挿入されて他方の伝達軸に連結されるインナ部材とを有するトリポート型の等速ジョイントにおいて、
前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部に設けられる片側鍔部と、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った他方の端部に設けられ、前記片側鍔部との間で前記転動体を保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、リング体からなり前記ローラ部材の内径部内に供給された潤滑剤の粘性作用によって係止されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、ローラ部材の内径部内に複数の転動体及び保持部材を組み付けてローラ組立体を構成する際、全数の転動体が内径部内に装填された後、前記内径部内に潤滑剤を供給し、前記潤滑剤の粘性によって保持部材を係止している。従って、内径部内に保持部材を係止するための環状溝等の加工作業が不要となり、加工コスト及び組立コストが低減される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
すなわち、潤滑剤によって保持部材が係止されることにより、加工コスト及び組立コストを低減させて全体の製造コストを削減することができる。この結果、ローラ部材に対する保持部材の組み付け作業性を向上させて製造コストをより一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る等速ジョイントの製造方法について、この製造方法が適用された等速ジョイントとの関連において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0023】
図1において参照符号10は、本発明の実施の形態に係る等速ジョイントの製造方法によって製造されたトリポート型の等速ジョイントを示し、この等速ジョイント10は、図示しない第1軸の一端部に一体的に連結されて開口部を有する筒状のアウタカップ(アウタ部材)12と、第2軸14の一端部に固着されてアウタカップ12の孔部内に収納されるインナ部材16とから基本的に構成される。
【0024】
前記アウタカップ12の内壁面には、図1に示されるように、軸線方向に沿って延在し、軸心の回りにそれぞれ120度の間隔をおいて3本の案内溝18a〜18cが形成される(但し、案内溝18b、18cは図示するのを省略している)。前記案内溝18a〜18cは、断面が曲線状に形成された天井部20と、前記天井部20の両側に相互に対向し断面円弧状に形成された摺動部22a、22bとから構成される。
【0025】
第2軸14にはリング状のスパイダ24が外嵌され、前記スパイダ24の外周面には、それぞれ案内溝18a〜18cに向かって膨出し軸心の回りに120度の間隔をおいて3本のトラニオン26a〜26cが一体的に形成される(但し、トラニオン26b、26cは、図示するのを省略している)。
【0026】
前記トラニオン26a(26b、26c)の外周部には、複数本の転動体28を介してリング状のローラ部材30が外嵌される。なお、転動体28は、例えば、ニードル、ころ等を含む転がり軸受けであればよい。
【0027】
前記ローラ部材30の外周面は、図2に示されるように、摺動部22a、22bに面接触するように前記摺動部22a、22bの断面形状に対応して形成された円弧状面部32と、前記円弧状面部32から第1面34に連続する第1環状傾斜面部36aと、前記円弧状面部32から第2面38に連続する第2環状傾斜面部36bとから構成される。
【0028】
また、ローラ部材30の内周には、一定の直径からなり、転動体28の転動面として機能する内径部40が形成され、前記内径部40の上部(一方の端部)には、半径内方向に所定長だけ突出して形成された環状のフランジ部(片側鍔部)42が一体的に設けられる。一方、前記フランジ部42と反対側の内径部40の下部(他方の端部)は、中心に向かって何ら突出することがなく内径部40の直径と同径の環状面に形成される。
【0029】
なお、前記環状のフランジ部42は、図2に示されるように、ローラ部材30の内面に一体的に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、ローラ部材30の内周面に形成された環状溝を介して装着される図示しないサークリップ、ワッシャ等の片側鍔部として機能するものによって代替してもよい。
【0030】
ローラ部材30の内径部40とフランジ部42との境界部分には、図2に示されるように、前記内径部40に対して後述する潤滑剤Wが塗布されたときに、油溜まり部として機能する環状溝部52が形成される。
【0031】
前記ローラ部材30の内径部40には、複数本の転動体28が周方向に沿って略平行に並設され、前記転動体28は、後述するように、内径部40の端部に半径内方向に向かって突出するフランジ部42によって該内径部40から分離・脱落しないように保持される。なお、ローラ部材30の内径部40に沿って装着される複数の転動体28は、それぞれ略同一の直径を有し、略同一形状に形成されているものとする。トラニオン26a(26b、26c)は、外径が一定の円柱状に形成される。
【0032】
本実施の形態に係る等速ジョイントの製造方法によって製造された等速ジョイント10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0033】
先ず、等速ジョイント10の第1の組立方法(ローラ部材30に対する複数の転動体28及び保持部材46の組み付け方法)について説明する。
【0034】
図3に示されるように、治具60(図4参照)を用いてローラ部材30の内径部40の軸線方向(フランジ部42の反対側の方向)から全数(所定数)の転動体28を該ローラ部材30の内径部40内に一括して挿入する。なお、ローラ部材30の内径部40の壁面には、予め、潤滑剤(グリース、ワックス等)を塗っておく。
【0035】
この場合、ローラ部材30の内径部40内に一括して挿入された全数の転動体28を前記潤滑剤によって保持してもよいし、あるいは、図示しない他の機械的又は物理的な保持手段によって保持してもよい。例えば、ローラ部材30の内径部40に挿入された全数の転動体28を図示しない磁石の磁力によって保持する等の方法がある。
【0036】
前記治具60は、図4及び図5に示されるように、円柱体62と、前記円柱体62の軸線方向に沿った一端部の外周面を囲繞するリング体64とを備える。前記リング体64と円柱体62との間には、全数の転動体28が収納可能な空間部からなり、全数の転動体28を周方向に沿って整列させる環状段部68が形成される。この場合、前記円柱体62をローラ部材30側に向かって上昇させることにより全数の転動体28を一括して押し出すことができる。
【0037】
換言すると、環状段部68内に装填された複数の転動体28は、円柱体62の外周面62aとリング体64の内周面64aとの間の空間部によって拘束され、且つ環状段部68の壁面68aによって支持される(図5参照)。
【0038】
図4に示されるように、前記治具60に形成された前記環状段部68に沿って複数の転動体28を環状に並べて装填する。全数(図4中では15本を示しているがこれに限定されるものではない)の転動体28が環状段部68内に装填されたとき、前記全数の転動体28は、キーストン効果を発生させることが可能なキーストン状態に保持されていなくてもよいが、より好ましくは、キーストン効果を発生させることが可能なキーストン状態に保持された状態にあるとよく、最も好ましくは、キーストン効果が発生した状態で保持されているとよい。
【0039】
なお、本実施の形態において、「キーストン状態」とは、転動体28がキーストン効果によってローラ部材30の内径部40から分離・離脱することを好適に阻止された状態、すなわち、キーストン効果が発生することが可能な状態でローラ部材30の内径部40内に組み込まれている状態をいう。
【0040】
換言すると、ローラ部材30の内径部40内に全数の転動体28が一括して挿入された後、キーストン効果が発生するように、転動体28の外径とローラ部材30の内径部40の内径とが、予め、所定値に設定されており、ローラ部材30の内径部40内に全数の転動体28が挿入された後、各々の転動体28が隣接する他の転動体28と接触していなくてもキーストン状態にあるといえる。
【0041】
図9は、全数の転動体28が隣接する他の転動体28とクリアランスCを介して非接触状態にあり、且つローラ部材30の内径部40の壁面に接触した前記キーストン状態を示したものであるが、前記転動体28がローラ部材30の内径部40の壁面に必ずしも接触している必要はない。
【0042】
続いて、図5に示されるように、フランジ部42の反対側であるローラ部材30の第1面34とリング体64の上面とを当接させ、リング体64を固定した状態で円柱体62を軸線方向に沿って上昇させることにより、全数の転動体28がローラ部材30の内径部40内に押し出され、ローラ部材30の内径部40内に一括して挿入される。
【0043】
前記円柱体62が上昇することにより、図6に示されるように、全数の転動体28がローラ部材30の内径部40の軸線方向に沿って一括して変位し、前記転動体28がローラ部材30の内径部40内に対して挿入される。
【0044】
この場合、全数の転動体28は、加圧力によって押圧される圧入ではなく、単にローラ部材30の内径部40に沿って進入し該内径部40内に挿入されるだけである。内径部40内に挿入された前記転動体28の端部がローラ部材30のフランジ部42に当接することにより、その変位が規制される。
【0045】
ローラ部材30の内径部40内に装填された全数の転動体28は、キーストン状態に保持されてキーストン効果が発生することによって内径部40からの分離・脱落が阻止される。図8は、キーストン効果によって全数の転動体28が保持された状態を示したものであり、図8中における一点鎖線は、キーストン効果によって隣接する転動体28同士が接触する複数の接触点を結んだ仮想円Bを示す。
【0046】
なお、図7に示されるように、ローラ部材30の内径部40の壁面と転動体28との間で径方向のクリアランスAを設けることにより、治具60による転動体28の挿入がより一層容易となる。前記径方向のクリアランスAは、例えば、数μm〜数十μmに設定されるとよい。
【0047】
全数の転動体28がローラ部材30の内径部40内に装填された後、図10に示されるように、下部がフランジ部42によって抜け止めされた複数の転動体28に対して、例えば、グリース、ワックス(PASTE WAX)又はロウ(SOLID WAX)等の潤滑剤Wを供給(塗布)し、続いて、平板リング状の保持部材46を前記フランジ部42と反対側のローラ部材30の内径部40内に対して軸線方向から挿入することにより、前記保持部材46が潤滑剤Wと密着しその粘性によってローラ部材30に係止(仮止め)される(図11参照)。その際、全数の転動体28は前記保持部材46とフランジ部42との間で好適に保持される。なお、前記ローラ部材30の内径部40に装着された保持部材46の外面は、該ローラ部材30の第1面34と略面一であるか、あるいは突出しないように設定されるとよい。
【0048】
転動体28に対して供給される潤滑剤Wは、保持部材46が装着される転動体28の端面上に所定の厚さで略均一に塗布されるとよい。また、前記潤滑剤Wは、図12及び図13に示されるように、隣接する転動体28間のクリアランスC及び転動体28とローラ部材30との間の径方向のクリアランスAに充填されるようにしてもよい。
【0049】
前記保持部材46は、その直径がローラ部材30の内径部40の直径よりも小さく設定され、保持部材46の外径とローラ部材30の内径部40との間のクリアランスに前記潤滑剤Wが介在するように構成されるとよい。一方、前記とは反対に前記保持部材46の直径をローラ部材30の内径部40の直径よりも僅かに大きく設定し、該保持部材46をローラ部材30の内径部40内に圧入(軽圧入)してもよい。
【0050】
さらに、前記保持部材46としては、断面矩形状の平ワッシャ等に限定されるものではなく、例えば、図14に示されるように、トラニオン26a(26b、26c)を囲繞する内周側に断面円弧状の円弧面48が形成され、転動体28の端面及び内径部40の壁面と略平行な第1環状面50a及び第2環状面50bを有する他の保持部材46aを用いてもよい。
【0051】
例えば、トリポート型の等速ジョイントでは、トラニオン26a(26b、26c)とローラ部材30との間で、該トラニオンの26a(26b、26c)軸線方向に沿って相対的なスライド動作が発生するため、該ローラ部材30の内径部40の端部に、転動体28の軸線方向に沿った変位を規制する、例えば、サークリップ等の保持部材46、46aを設ける必要がある。なお、前記相対的なスライド動作とは、ローラ部材30に対してトラニオン26a(26b、26c)がその軸線方向に沿ってスライド動作し、又はトラニオン26a(26b、26c)に対してローラ部材30がその軸線方向に沿ってスライド動作することをいう。
【0052】
このようにローラ部材30の内径部40内に複数の転動体28が保持されたローラ組立体をスパイダ24のトラニオン26a(26b、26c)にそれぞれ装着し、ローラ部材30が案内溝18a〜18cに係合するようにアウタカップ12内に挿入することにより等速ジョイント10が構築される。
【0053】
本実施の形態では、ローラ部材30の内径部40に対して、保持部材46を装着するための環状溝等を形成する必要がなく前記環状溝を形成するための加工作業が不要となり、転動体28に対して供給されるワックス等の潤滑剤Wによって保持部材46を簡便に仮止めすることができる。従って、加工コスト及び組立コストを低減させて全体の製造コストを低減させることができる。
【0054】
また、特許文献1に開示された従来技術に係る転動体3の組立方法では、隙間に最後の1個の転動体3aをローラ1の円筒内周面2の半径外方向から圧入して、ローラ1の円筒内周面2に沿って複数の転動体3を一連に装着する方法が採用されている。従って、キーストン効果を発生させるためには、隙間内に圧入する最後の1本の転動体3aの圧入代を確保するために、ローラ1の内周側の内径公差と転動体3の外径公差とを、それぞれできるだけ小さく設定する必要がある。
【0055】
これに対して、本実施の形態では、予め治具60に並設された全数の転動体28をローラ部材30の内径部40に対して軸線方向から一括して挿入した後、ワックス等の潤滑剤Wによって保持部材46を係止しているため、前記転動体28の外径公差及びローラ部材30の内径公差に影響されることがなく、ローラ部材30に対する転動体28の組立作業性を向上させ、製造コストをより一層低減することができる。
【0056】
換言すると、従来技術ではキーストン効果を発生させるために、隙間に対して最後の1個の転動体3aをローラ1の円筒内周面2の半径外方向から圧入するために、公差(内径公差及び外径公差)をできるだけ小さく設定しなければならないのに対し、本実施の形態では、全数の転動体28をローラ部材30の内径部40の軸線方向から一括して挿入することによりキーストン効果を発生させることが可能なキーストン状態としているため、最後の1本の転動体28を圧入することが不要となるからである。
【0057】
さらに、本実施の形態では、転動体28の外径公差及びローラ部材30の内径部40の内径公差の管理が従来技術と比較して緩やかになり、加工作業が容易となると共に、その転動体28の組立作業(ローラ部材30の内径部40内への挿入)も容易となる。
【0058】
なお、図15及び図16に示されるように、環状空間70部内に装填された転動体28を下側から支持する落下防止用のシャッタプレート72が設けられた治具74を用い、図3とは反対方向であるローラ部材30の上方から全数の転動体28を一括して該ローラ部材30の内径部40内に挿入するようにしてもよい。
【0059】
次に、等速ジョイント10の第2の組立方法(ローラ部材30に対する複数の転動体28及び保持部材46の組み付け方法)について説明する。
【0060】
図17に示されるような治具60を用い、ローラ部材30の内径部40の軸線方向(フランジ部42の反対側の方向)から1本を除いた全数(所定数)の転動体28を該ローラ部材30の内径部40内に一括して装填する。なお、ローラ部材30の内径部40の壁面には、予め、潤滑剤(グリース等)を塗っておく。
【0061】
図17に示されるように、前記治具60に形成された前記環状段部68に沿って1本を除いた全数の転動体28を環状に並べて装填し、最後の1本の転動体28aが挿入される間隙69が発生する。1本を除いた全数(図17中では14本装填されているがこれに限定されるものではない)の転動体28が環状段部68内に装填されたとき、前記1本を除いた全数の転動体28は、キーストン効果を発生させることが可能なキーストン状態に保持されていない。
【0062】
続いて、図5に示されるように、フランジ部42の反対側であるローラ部材30の第1面34とリング体64の上面とを当接させ、リング体64を固定した状態で円柱体62を軸線方向に沿って上昇させることにより、1本を除いた全数の転動体28がローラ部材30の内径部40内に押し出され、ローラ部材30の内径部40内に一括して挿入される。
【0063】
続いて、図18に示されるように、最後の1本の転動体28aは、ローラ部材30の内径部40に沿って並べられた転動体28の間隙69内に、前記ローラ部材30の内径部40の軸線方向(縦方向)から挿入される。
【0064】
この場合、最後の1本の転動体28aは、加圧力によって押圧される圧入ではなく、単にローラ部材30の内径部40に沿って並べられた転動体28の間隙69内に進入し該間隙69内に挿入されるだけである。前記間隙69に沿って挿入された最後の1本の転動体28aの端部がローラ部材30のフランジ部42に当接することにより、その変位が規制される。
【0065】
全数の転動体28がローラ部材30の内径部40内に装填された後、例えば、ワックス等の潤滑剤Wを環状に配置された転動体28に対して供給(塗布)し、平板リング状の保持部材46をフランジ部42と反対側のローラ部材30の内径部40内に装着することにより、前記保持部材46がワックスの粘性によって係止される(図10及び図11参照)。その際、全数の転動体28は前記保持部材46とフランジ部42との間で好適に保持される。
【0066】
この場合、ローラ部材30の内径部40内に装填された全数の転動体28は、キーストン状態に保持されてキーストン効果が発生することによって内径部40からの分離・脱落が阻止される。
【0067】
図19に示されるように、最後の1本の転動体28aが挿入されるために、間隙69を間にして隣接する転動体28同士の周方向に沿った接触点間クリアランスD1及び接触点間クリアランスD2と、ローラ部材30の内径部40の壁面と転動体28との間で径方向のクリアランスEとを設けることにより、最後の1本の転動体28aの挿入がより一層容易となる。隣接する転動体28同士間の周方向に沿ったクリアランスDは、例えば、数μm〜数十μmに設定され、このクリアランスDは、前記接触点間クリアランスD1と接触点間クリアランスD2とが合算されたものからなる。
【0068】
また、最後の1本を除いた全数の転動体28を一括して装填することがなく、図20に示されるように、最後の1本を除いた全数の転動体28が、前記ローラ部材30の内径部40の軸線方向(縦方向)から順次装填されるようにしてもよい。
【0069】
なお、ローラ部材30の内径部40内に対して全数よりも1個又は複数個だけ少ない複数の転動体28を一連に並べた後、除かれた1個又は複数個の転動体28を径方向から圧入して組み付けた後、供給されたワックス等の潤滑剤Wの粘性作用によって保持部材46をローラ部材30に仮止めするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態に係る等速ジョイントの製造方法によって製造されたトリポート型の等速ジョイントの軸線と直交する方向に沿った部分拡大縦断面図である。
【図2】図1に示す等速ジョイントを構成するローラ部材の縦断面図である。
【図3】ローラ部材の内径部に対して下方向から全数の転動体を一括して挿入する状態を示す斜視図である。
【図4】治具の環状段部内に全数の転動体が装填された状態を示す斜視図である。
【図5】前記治具がローラ部材に当接し、転動体が前記ローラ部材の内径部内に挿入される前の状態を示す縦断面図である。
【図6】治具を構成する円柱体が上昇して、ローラ部材の内径部内に全数の転動体が一括して挿入された状態を示す縦断面図である。
【図7】ローラ部材の内径部の壁面と転動体との径方向のクリアランスを示す平面図である。
【図8】ローラ部材の内径部内に挿入された全数の転動体がキーストン効果によって保持された状態を示す一部省略平面図である。
【図9】ローラ部材の内径部内に挿入された全数の転動体が隣接する他の転動体と接触することがなくキーストン状態に保持された部分拡大平面図である。
【図10】ローラ部材の内径部内に全数の転動体が挿入された後、転動体に対してワックス等の潤滑剤が供給された状態を示す縦断面図である。
【図11】ローラ部材の内径部内に挿入された保持部材が前記ワックス等の潤滑剤によって仮止めされた状態を示す縦断面図である。
【図12】ローラ部材の内径部の壁面と転動体との径方向のクリアランスに対して前記潤滑剤が充填された状態を示す平面図である。
【図13】隣接する転動体間の周方向のクリアランスに対して前記潤滑剤が充填された状態を示す部分拡大平面図である。
【図14】内周側に断面円弧状の円弧面を有する保持部材が装着されたローラ組立体の部分拡大縦断面図である。
【図15】ローラ部材の内径部に対して上方向から全数の転動体を一括して挿入する状態を示す斜視図である。
【図16】シャッタプレートを有する治具がローラ部材に当接し、転動体が前記ローラ部材の内径部内に挿入される前の状態を示す縦断面図である。
【図17】治具の環状段部内に最後の1本を除いた全数の転動体が装填された状態を示す斜視図である。
【図18】ローラ部材の内径部に対して最後の1本を除いた全数の転動体が環状に並べられた後、最後の1本の転動体を下方向から間隙内に挿入する状態を示す斜視図である。
【図19】最後に挿入される1本の転動体と隣接する転動体同士の周方向に沿った接触点間クリアランスD1及び接触点間クリアランスD2と、ローラ部材の内径部の壁面と転動体の径方向のクリアランスEとを示す部分拡大平面図である。
【図20】ローラ部材の内径部に対して最後の1本を除いた全数の転動体を下方向から順次装填する状態を示す斜視図である。
【図21】従来技術に係る等速ジョイントにおいて、ローラの円筒内周面への転動体の圧入方法を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10…等速ジョイント 16…インナ部材
18a〜18c…案内溝 26a〜26c…トラニオン
28、28a…転動体 30…ローラ部材
40…内径部 42…フランジ部
46、46a…保持部材 60、74…治具
62…円柱体 64…リング体
68…環状段部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の駆動力伝達部において、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結させる等速ジョイント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の駆動力伝達部では、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結し回転力を各車軸へと伝達する等速ジョイントが用いられている。
【0003】
この種の従来技術に係る等速ジョイントとして、特許文献1には、ローラ1の円筒内周面2の軸方向両端部に、転動体3(コロ、ニードル等)の抜けを防止する一組の鍔部を形成し、この内周面の一組の鍔部間に、全数よりも1個少ない複数の転動体3を一連に並べ、この一連の転動体3の両端の2個の間にできた隙間の最小間隔d2と転動体3aの直径d1との関係をd2<d1となるように設定すると共に、その差(d1−d2)を数μm〜数十μmの締め代(圧入代)とし、前記隙間に最後の1個の転動体3aをローラ1の円筒内周面2の半径外方向から圧入して、ローラ1の円筒内周面2に沿って複数の転動体3を一連に装着する技術的思想が開示されている(図21参照)。
【0004】
このようにしてローラ1の円筒内周面2に沿って複数の転動体3を一連に並べる方法は、キーストン法と呼ばれ、ローラ1と転動体3とがばらけない組立体として一体化して同時に図示しない脚軸に組み付けることができるとしている。
【0005】
ところで、前記特許文献1に開示された転動体3の組み付け方法では、キーストン効果を発生させるために隙間内に圧入する最後の1本の転動体3aの圧入代を確保しなければならず、前記圧入代の確保のためには、ローラ1の内周側の内径公差と転動体3、3aの外径公差とを、それぞれできるだけ小さく設定する必要がある。
【0006】
仮に、前記公差(内径公差及び外径公差)を大きく設定した場合、圧入代が零となって圧入とはならない場合や、またこれとは反対に圧入代が大きくなりすぎて圧入できない場合、あるいは圧入できたとしても転動体3、3aが変形する場合等がある。また、前記公差を小さく設定しようとすると、ローラ1の円筒内周面2等における加工の困難さを伴い、製造コストが高騰するという問題がある。さらに、前記隙間に対して最後の1本の転動体3aを圧入するために、ローラユニットの組立の困難性を伴い、組立コストが増大するという問題がある。
【0007】
そこで、本出願人は、転動体の抜けを防止する片方の鍔部を有するローラ部材の内径面に対して軸線方向から環状に配置された複数の転動体を一括して挿入し、又は、1本を除いた複数の転動体を内径面に装填し前記除かれた1本の転動体を転動体間の間隙内に軸線方向から挿入した後、続いて、前記鍔部の反対側のローラ部材の内壁に、例えば、サークリップ等の保持部材を装着して転動体を保持する方案を提案している(特願2003−388029及び特願2003−388058参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−184717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の提案に関連してなされたものであり、ローラ部材に対する保持部材の組み付け作業性を向上させて製造コストをより一層低減することが可能な等速ジョイント及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられたアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に設けられ前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、前記案内溝に接触し前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部に設けられる片側鍔部と、前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った他方の端部に設けられ前記転動体を保持する保持部材とを備えるトリポート型の等速ジョイントの製造方法において、
前記ローラ部材の内径部に沿って全数の転動体が装填される工程と、
前記内径部内に潤滑剤を供給し、前記潤滑剤の粘性作用下に内径部に沿って導入された保持部材が係止される工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
この場合、全数の転動体は、環状に並べられ、ローラ部材の内径部の壁面と転動体の外周面との間で径方向のクリアランスが設けられた状態で、片側鍔部と反対側の端部から内径部の軸線方向に沿って前記内径部内に一括して挿入されるとよい。なお、前記径方向のクリアランスは、数μm〜数十μmに設定されると好適である。
【0012】
環状に並べられた状態で全数の転動体をローラ部材の内径部に対して軸線方向から一括して挿入しているため、前記転動体の外径公差及びローラ部材の内径部の内径公差に影響されることがなく、ローラ部材に対する転動体の組立作業性を向上させ、製造コストをより一層低減することができる。
【0013】
換言すると、特許文献1に示される従来技術ではキーストン効果を発生させるために、隙間に対して最後の1個の転動体をローラの円筒内周面の半径外方向(横方向)から圧入するために、公差(内径公差及び外径公差)をできるだけ小さく設定しなければならないのに対し、本発明では、全数の転動体をローラ部材の内径部の軸線方向(縦方向)から一括して挿入することにより全数の転動体がローラ部材の内径部内でキーストン状態に保持されてキーストン効果を発生させているため、最後の1本の転動体を圧入することが不要となる。
【0014】
なお、「キーストン状態」とは、転動体がキーストン効果によってローラ部材の内径部から分離・離脱することを好適に阻止された状態、すなわち、キーストン効果が発生することが可能な状態でローラ部材の内径部内に組み込まれている状態をいう。
【0015】
換言すると、ローラ部材の内径部内に転動体が挿入された後、キーストン効果が発生するように、転動体の外径とローラ部材の内径部の内径とが、予め、所定値に設定されており、ローラ部材の内径部内に全数の転動体が挿入された後、各々の転動体が隣接する他の転動体と接触していなくてもキーストン状態にあるといえる。
【0016】
また、1本を除いた全数の転動体がローラ部材の内径部に沿って環状に並べられ、続いて、最後の1本の転動体と隣接する転動体との周方向に沿った間で所定のクリアランスが設けられた状態で、前記最後の1本が片側鍔部と反対側の端部から内径部の軸線方向に沿って前記環状に並べられた転動体の間隙に挿入されることにより、ローラ部材の内径部内に全数の転動体が装填されるとよい。
【0017】
さらに、前記保持部材には、トラニオンを囲繞する内周側に、断面円弧状の円弧面が形成されるとよい。
【0018】
さらに本発明は、所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられ一方の伝達軸に連結される筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に挿入されて他方の伝達軸に連結されるインナ部材とを有するトリポート型の等速ジョイントにおいて、
前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部に設けられる片側鍔部と、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った他方の端部に設けられ、前記片側鍔部との間で前記転動体を保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、リング体からなり前記ローラ部材の内径部内に供給された潤滑剤の粘性作用によって係止されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、ローラ部材の内径部内に複数の転動体及び保持部材を組み付けてローラ組立体を構成する際、全数の転動体が内径部内に装填された後、前記内径部内に潤滑剤を供給し、前記潤滑剤の粘性によって保持部材を係止している。従って、内径部内に保持部材を係止するための環状溝等の加工作業が不要となり、加工コスト及び組立コストが低減される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
すなわち、潤滑剤によって保持部材が係止されることにより、加工コスト及び組立コストを低減させて全体の製造コストを削減することができる。この結果、ローラ部材に対する保持部材の組み付け作業性を向上させて製造コストをより一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る等速ジョイントの製造方法について、この製造方法が適用された等速ジョイントとの関連において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0023】
図1において参照符号10は、本発明の実施の形態に係る等速ジョイントの製造方法によって製造されたトリポート型の等速ジョイントを示し、この等速ジョイント10は、図示しない第1軸の一端部に一体的に連結されて開口部を有する筒状のアウタカップ(アウタ部材)12と、第2軸14の一端部に固着されてアウタカップ12の孔部内に収納されるインナ部材16とから基本的に構成される。
【0024】
前記アウタカップ12の内壁面には、図1に示されるように、軸線方向に沿って延在し、軸心の回りにそれぞれ120度の間隔をおいて3本の案内溝18a〜18cが形成される(但し、案内溝18b、18cは図示するのを省略している)。前記案内溝18a〜18cは、断面が曲線状に形成された天井部20と、前記天井部20の両側に相互に対向し断面円弧状に形成された摺動部22a、22bとから構成される。
【0025】
第2軸14にはリング状のスパイダ24が外嵌され、前記スパイダ24の外周面には、それぞれ案内溝18a〜18cに向かって膨出し軸心の回りに120度の間隔をおいて3本のトラニオン26a〜26cが一体的に形成される(但し、トラニオン26b、26cは、図示するのを省略している)。
【0026】
前記トラニオン26a(26b、26c)の外周部には、複数本の転動体28を介してリング状のローラ部材30が外嵌される。なお、転動体28は、例えば、ニードル、ころ等を含む転がり軸受けであればよい。
【0027】
前記ローラ部材30の外周面は、図2に示されるように、摺動部22a、22bに面接触するように前記摺動部22a、22bの断面形状に対応して形成された円弧状面部32と、前記円弧状面部32から第1面34に連続する第1環状傾斜面部36aと、前記円弧状面部32から第2面38に連続する第2環状傾斜面部36bとから構成される。
【0028】
また、ローラ部材30の内周には、一定の直径からなり、転動体28の転動面として機能する内径部40が形成され、前記内径部40の上部(一方の端部)には、半径内方向に所定長だけ突出して形成された環状のフランジ部(片側鍔部)42が一体的に設けられる。一方、前記フランジ部42と反対側の内径部40の下部(他方の端部)は、中心に向かって何ら突出することがなく内径部40の直径と同径の環状面に形成される。
【0029】
なお、前記環状のフランジ部42は、図2に示されるように、ローラ部材30の内面に一体的に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、ローラ部材30の内周面に形成された環状溝を介して装着される図示しないサークリップ、ワッシャ等の片側鍔部として機能するものによって代替してもよい。
【0030】
ローラ部材30の内径部40とフランジ部42との境界部分には、図2に示されるように、前記内径部40に対して後述する潤滑剤Wが塗布されたときに、油溜まり部として機能する環状溝部52が形成される。
【0031】
前記ローラ部材30の内径部40には、複数本の転動体28が周方向に沿って略平行に並設され、前記転動体28は、後述するように、内径部40の端部に半径内方向に向かって突出するフランジ部42によって該内径部40から分離・脱落しないように保持される。なお、ローラ部材30の内径部40に沿って装着される複数の転動体28は、それぞれ略同一の直径を有し、略同一形状に形成されているものとする。トラニオン26a(26b、26c)は、外径が一定の円柱状に形成される。
【0032】
本実施の形態に係る等速ジョイントの製造方法によって製造された等速ジョイント10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0033】
先ず、等速ジョイント10の第1の組立方法(ローラ部材30に対する複数の転動体28及び保持部材46の組み付け方法)について説明する。
【0034】
図3に示されるように、治具60(図4参照)を用いてローラ部材30の内径部40の軸線方向(フランジ部42の反対側の方向)から全数(所定数)の転動体28を該ローラ部材30の内径部40内に一括して挿入する。なお、ローラ部材30の内径部40の壁面には、予め、潤滑剤(グリース、ワックス等)を塗っておく。
【0035】
この場合、ローラ部材30の内径部40内に一括して挿入された全数の転動体28を前記潤滑剤によって保持してもよいし、あるいは、図示しない他の機械的又は物理的な保持手段によって保持してもよい。例えば、ローラ部材30の内径部40に挿入された全数の転動体28を図示しない磁石の磁力によって保持する等の方法がある。
【0036】
前記治具60は、図4及び図5に示されるように、円柱体62と、前記円柱体62の軸線方向に沿った一端部の外周面を囲繞するリング体64とを備える。前記リング体64と円柱体62との間には、全数の転動体28が収納可能な空間部からなり、全数の転動体28を周方向に沿って整列させる環状段部68が形成される。この場合、前記円柱体62をローラ部材30側に向かって上昇させることにより全数の転動体28を一括して押し出すことができる。
【0037】
換言すると、環状段部68内に装填された複数の転動体28は、円柱体62の外周面62aとリング体64の内周面64aとの間の空間部によって拘束され、且つ環状段部68の壁面68aによって支持される(図5参照)。
【0038】
図4に示されるように、前記治具60に形成された前記環状段部68に沿って複数の転動体28を環状に並べて装填する。全数(図4中では15本を示しているがこれに限定されるものではない)の転動体28が環状段部68内に装填されたとき、前記全数の転動体28は、キーストン効果を発生させることが可能なキーストン状態に保持されていなくてもよいが、より好ましくは、キーストン効果を発生させることが可能なキーストン状態に保持された状態にあるとよく、最も好ましくは、キーストン効果が発生した状態で保持されているとよい。
【0039】
なお、本実施の形態において、「キーストン状態」とは、転動体28がキーストン効果によってローラ部材30の内径部40から分離・離脱することを好適に阻止された状態、すなわち、キーストン効果が発生することが可能な状態でローラ部材30の内径部40内に組み込まれている状態をいう。
【0040】
換言すると、ローラ部材30の内径部40内に全数の転動体28が一括して挿入された後、キーストン効果が発生するように、転動体28の外径とローラ部材30の内径部40の内径とが、予め、所定値に設定されており、ローラ部材30の内径部40内に全数の転動体28が挿入された後、各々の転動体28が隣接する他の転動体28と接触していなくてもキーストン状態にあるといえる。
【0041】
図9は、全数の転動体28が隣接する他の転動体28とクリアランスCを介して非接触状態にあり、且つローラ部材30の内径部40の壁面に接触した前記キーストン状態を示したものであるが、前記転動体28がローラ部材30の内径部40の壁面に必ずしも接触している必要はない。
【0042】
続いて、図5に示されるように、フランジ部42の反対側であるローラ部材30の第1面34とリング体64の上面とを当接させ、リング体64を固定した状態で円柱体62を軸線方向に沿って上昇させることにより、全数の転動体28がローラ部材30の内径部40内に押し出され、ローラ部材30の内径部40内に一括して挿入される。
【0043】
前記円柱体62が上昇することにより、図6に示されるように、全数の転動体28がローラ部材30の内径部40の軸線方向に沿って一括して変位し、前記転動体28がローラ部材30の内径部40内に対して挿入される。
【0044】
この場合、全数の転動体28は、加圧力によって押圧される圧入ではなく、単にローラ部材30の内径部40に沿って進入し該内径部40内に挿入されるだけである。内径部40内に挿入された前記転動体28の端部がローラ部材30のフランジ部42に当接することにより、その変位が規制される。
【0045】
ローラ部材30の内径部40内に装填された全数の転動体28は、キーストン状態に保持されてキーストン効果が発生することによって内径部40からの分離・脱落が阻止される。図8は、キーストン効果によって全数の転動体28が保持された状態を示したものであり、図8中における一点鎖線は、キーストン効果によって隣接する転動体28同士が接触する複数の接触点を結んだ仮想円Bを示す。
【0046】
なお、図7に示されるように、ローラ部材30の内径部40の壁面と転動体28との間で径方向のクリアランスAを設けることにより、治具60による転動体28の挿入がより一層容易となる。前記径方向のクリアランスAは、例えば、数μm〜数十μmに設定されるとよい。
【0047】
全数の転動体28がローラ部材30の内径部40内に装填された後、図10に示されるように、下部がフランジ部42によって抜け止めされた複数の転動体28に対して、例えば、グリース、ワックス(PASTE WAX)又はロウ(SOLID WAX)等の潤滑剤Wを供給(塗布)し、続いて、平板リング状の保持部材46を前記フランジ部42と反対側のローラ部材30の内径部40内に対して軸線方向から挿入することにより、前記保持部材46が潤滑剤Wと密着しその粘性によってローラ部材30に係止(仮止め)される(図11参照)。その際、全数の転動体28は前記保持部材46とフランジ部42との間で好適に保持される。なお、前記ローラ部材30の内径部40に装着された保持部材46の外面は、該ローラ部材30の第1面34と略面一であるか、あるいは突出しないように設定されるとよい。
【0048】
転動体28に対して供給される潤滑剤Wは、保持部材46が装着される転動体28の端面上に所定の厚さで略均一に塗布されるとよい。また、前記潤滑剤Wは、図12及び図13に示されるように、隣接する転動体28間のクリアランスC及び転動体28とローラ部材30との間の径方向のクリアランスAに充填されるようにしてもよい。
【0049】
前記保持部材46は、その直径がローラ部材30の内径部40の直径よりも小さく設定され、保持部材46の外径とローラ部材30の内径部40との間のクリアランスに前記潤滑剤Wが介在するように構成されるとよい。一方、前記とは反対に前記保持部材46の直径をローラ部材30の内径部40の直径よりも僅かに大きく設定し、該保持部材46をローラ部材30の内径部40内に圧入(軽圧入)してもよい。
【0050】
さらに、前記保持部材46としては、断面矩形状の平ワッシャ等に限定されるものではなく、例えば、図14に示されるように、トラニオン26a(26b、26c)を囲繞する内周側に断面円弧状の円弧面48が形成され、転動体28の端面及び内径部40の壁面と略平行な第1環状面50a及び第2環状面50bを有する他の保持部材46aを用いてもよい。
【0051】
例えば、トリポート型の等速ジョイントでは、トラニオン26a(26b、26c)とローラ部材30との間で、該トラニオンの26a(26b、26c)軸線方向に沿って相対的なスライド動作が発生するため、該ローラ部材30の内径部40の端部に、転動体28の軸線方向に沿った変位を規制する、例えば、サークリップ等の保持部材46、46aを設ける必要がある。なお、前記相対的なスライド動作とは、ローラ部材30に対してトラニオン26a(26b、26c)がその軸線方向に沿ってスライド動作し、又はトラニオン26a(26b、26c)に対してローラ部材30がその軸線方向に沿ってスライド動作することをいう。
【0052】
このようにローラ部材30の内径部40内に複数の転動体28が保持されたローラ組立体をスパイダ24のトラニオン26a(26b、26c)にそれぞれ装着し、ローラ部材30が案内溝18a〜18cに係合するようにアウタカップ12内に挿入することにより等速ジョイント10が構築される。
【0053】
本実施の形態では、ローラ部材30の内径部40に対して、保持部材46を装着するための環状溝等を形成する必要がなく前記環状溝を形成するための加工作業が不要となり、転動体28に対して供給されるワックス等の潤滑剤Wによって保持部材46を簡便に仮止めすることができる。従って、加工コスト及び組立コストを低減させて全体の製造コストを低減させることができる。
【0054】
また、特許文献1に開示された従来技術に係る転動体3の組立方法では、隙間に最後の1個の転動体3aをローラ1の円筒内周面2の半径外方向から圧入して、ローラ1の円筒内周面2に沿って複数の転動体3を一連に装着する方法が採用されている。従って、キーストン効果を発生させるためには、隙間内に圧入する最後の1本の転動体3aの圧入代を確保するために、ローラ1の内周側の内径公差と転動体3の外径公差とを、それぞれできるだけ小さく設定する必要がある。
【0055】
これに対して、本実施の形態では、予め治具60に並設された全数の転動体28をローラ部材30の内径部40に対して軸線方向から一括して挿入した後、ワックス等の潤滑剤Wによって保持部材46を係止しているため、前記転動体28の外径公差及びローラ部材30の内径公差に影響されることがなく、ローラ部材30に対する転動体28の組立作業性を向上させ、製造コストをより一層低減することができる。
【0056】
換言すると、従来技術ではキーストン効果を発生させるために、隙間に対して最後の1個の転動体3aをローラ1の円筒内周面2の半径外方向から圧入するために、公差(内径公差及び外径公差)をできるだけ小さく設定しなければならないのに対し、本実施の形態では、全数の転動体28をローラ部材30の内径部40の軸線方向から一括して挿入することによりキーストン効果を発生させることが可能なキーストン状態としているため、最後の1本の転動体28を圧入することが不要となるからである。
【0057】
さらに、本実施の形態では、転動体28の外径公差及びローラ部材30の内径部40の内径公差の管理が従来技術と比較して緩やかになり、加工作業が容易となると共に、その転動体28の組立作業(ローラ部材30の内径部40内への挿入)も容易となる。
【0058】
なお、図15及び図16に示されるように、環状空間70部内に装填された転動体28を下側から支持する落下防止用のシャッタプレート72が設けられた治具74を用い、図3とは反対方向であるローラ部材30の上方から全数の転動体28を一括して該ローラ部材30の内径部40内に挿入するようにしてもよい。
【0059】
次に、等速ジョイント10の第2の組立方法(ローラ部材30に対する複数の転動体28及び保持部材46の組み付け方法)について説明する。
【0060】
図17に示されるような治具60を用い、ローラ部材30の内径部40の軸線方向(フランジ部42の反対側の方向)から1本を除いた全数(所定数)の転動体28を該ローラ部材30の内径部40内に一括して装填する。なお、ローラ部材30の内径部40の壁面には、予め、潤滑剤(グリース等)を塗っておく。
【0061】
図17に示されるように、前記治具60に形成された前記環状段部68に沿って1本を除いた全数の転動体28を環状に並べて装填し、最後の1本の転動体28aが挿入される間隙69が発生する。1本を除いた全数(図17中では14本装填されているがこれに限定されるものではない)の転動体28が環状段部68内に装填されたとき、前記1本を除いた全数の転動体28は、キーストン効果を発生させることが可能なキーストン状態に保持されていない。
【0062】
続いて、図5に示されるように、フランジ部42の反対側であるローラ部材30の第1面34とリング体64の上面とを当接させ、リング体64を固定した状態で円柱体62を軸線方向に沿って上昇させることにより、1本を除いた全数の転動体28がローラ部材30の内径部40内に押し出され、ローラ部材30の内径部40内に一括して挿入される。
【0063】
続いて、図18に示されるように、最後の1本の転動体28aは、ローラ部材30の内径部40に沿って並べられた転動体28の間隙69内に、前記ローラ部材30の内径部40の軸線方向(縦方向)から挿入される。
【0064】
この場合、最後の1本の転動体28aは、加圧力によって押圧される圧入ではなく、単にローラ部材30の内径部40に沿って並べられた転動体28の間隙69内に進入し該間隙69内に挿入されるだけである。前記間隙69に沿って挿入された最後の1本の転動体28aの端部がローラ部材30のフランジ部42に当接することにより、その変位が規制される。
【0065】
全数の転動体28がローラ部材30の内径部40内に装填された後、例えば、ワックス等の潤滑剤Wを環状に配置された転動体28に対して供給(塗布)し、平板リング状の保持部材46をフランジ部42と反対側のローラ部材30の内径部40内に装着することにより、前記保持部材46がワックスの粘性によって係止される(図10及び図11参照)。その際、全数の転動体28は前記保持部材46とフランジ部42との間で好適に保持される。
【0066】
この場合、ローラ部材30の内径部40内に装填された全数の転動体28は、キーストン状態に保持されてキーストン効果が発生することによって内径部40からの分離・脱落が阻止される。
【0067】
図19に示されるように、最後の1本の転動体28aが挿入されるために、間隙69を間にして隣接する転動体28同士の周方向に沿った接触点間クリアランスD1及び接触点間クリアランスD2と、ローラ部材30の内径部40の壁面と転動体28との間で径方向のクリアランスEとを設けることにより、最後の1本の転動体28aの挿入がより一層容易となる。隣接する転動体28同士間の周方向に沿ったクリアランスDは、例えば、数μm〜数十μmに設定され、このクリアランスDは、前記接触点間クリアランスD1と接触点間クリアランスD2とが合算されたものからなる。
【0068】
また、最後の1本を除いた全数の転動体28を一括して装填することがなく、図20に示されるように、最後の1本を除いた全数の転動体28が、前記ローラ部材30の内径部40の軸線方向(縦方向)から順次装填されるようにしてもよい。
【0069】
なお、ローラ部材30の内径部40内に対して全数よりも1個又は複数個だけ少ない複数の転動体28を一連に並べた後、除かれた1個又は複数個の転動体28を径方向から圧入して組み付けた後、供給されたワックス等の潤滑剤Wの粘性作用によって保持部材46をローラ部材30に仮止めするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態に係る等速ジョイントの製造方法によって製造されたトリポート型の等速ジョイントの軸線と直交する方向に沿った部分拡大縦断面図である。
【図2】図1に示す等速ジョイントを構成するローラ部材の縦断面図である。
【図3】ローラ部材の内径部に対して下方向から全数の転動体を一括して挿入する状態を示す斜視図である。
【図4】治具の環状段部内に全数の転動体が装填された状態を示す斜視図である。
【図5】前記治具がローラ部材に当接し、転動体が前記ローラ部材の内径部内に挿入される前の状態を示す縦断面図である。
【図6】治具を構成する円柱体が上昇して、ローラ部材の内径部内に全数の転動体が一括して挿入された状態を示す縦断面図である。
【図7】ローラ部材の内径部の壁面と転動体との径方向のクリアランスを示す平面図である。
【図8】ローラ部材の内径部内に挿入された全数の転動体がキーストン効果によって保持された状態を示す一部省略平面図である。
【図9】ローラ部材の内径部内に挿入された全数の転動体が隣接する他の転動体と接触することがなくキーストン状態に保持された部分拡大平面図である。
【図10】ローラ部材の内径部内に全数の転動体が挿入された後、転動体に対してワックス等の潤滑剤が供給された状態を示す縦断面図である。
【図11】ローラ部材の内径部内に挿入された保持部材が前記ワックス等の潤滑剤によって仮止めされた状態を示す縦断面図である。
【図12】ローラ部材の内径部の壁面と転動体との径方向のクリアランスに対して前記潤滑剤が充填された状態を示す平面図である。
【図13】隣接する転動体間の周方向のクリアランスに対して前記潤滑剤が充填された状態を示す部分拡大平面図である。
【図14】内周側に断面円弧状の円弧面を有する保持部材が装着されたローラ組立体の部分拡大縦断面図である。
【図15】ローラ部材の内径部に対して上方向から全数の転動体を一括して挿入する状態を示す斜視図である。
【図16】シャッタプレートを有する治具がローラ部材に当接し、転動体が前記ローラ部材の内径部内に挿入される前の状態を示す縦断面図である。
【図17】治具の環状段部内に最後の1本を除いた全数の転動体が装填された状態を示す斜視図である。
【図18】ローラ部材の内径部に対して最後の1本を除いた全数の転動体が環状に並べられた後、最後の1本の転動体を下方向から間隙内に挿入する状態を示す斜視図である。
【図19】最後に挿入される1本の転動体と隣接する転動体同士の周方向に沿った接触点間クリアランスD1及び接触点間クリアランスD2と、ローラ部材の内径部の壁面と転動体の径方向のクリアランスEとを示す部分拡大平面図である。
【図20】ローラ部材の内径部に対して最後の1本を除いた全数の転動体を下方向から順次装填する状態を示す斜視図である。
【図21】従来技術に係る等速ジョイントにおいて、ローラの円筒内周面への転動体の圧入方法を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10…等速ジョイント 16…インナ部材
18a〜18c…案内溝 26a〜26c…トラニオン
28、28a…転動体 30…ローラ部材
40…内径部 42…フランジ部
46、46a…保持部材 60、74…治具
62…円柱体 64…リング体
68…環状段部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられたアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に設けられ前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、前記案内溝に接触し前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部に設けられる片側鍔部と、前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った他方の端部に設けられ前記転動体を保持する保持部材とを備えるトリポート型の等速ジョイントの製造方法において、
前記ローラ部材の内径部に沿って全数の転動体が装填される工程と、
前記内径部内に潤滑剤を供給し、前記潤滑剤の粘性作用下に内径部に沿って導入された保持部材が係止される工程と、
を有することを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
全数の転動体は、環状に並べられ、ローラ部材の内径部の壁面と転動体の外周面との間で径方向のクリアランスが設けられた状態で、片側鍔部と反対側の端部から内径部の軸線方向に沿って前記内径部内に一括して挿入されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
1本を除いた全数の転動体がローラ部材の内径部に沿って環状に並べられ、続いて、最後の1本の転動体と隣接する転動体との周方向に沿った間で所定のクリアランスが設けられた状態で、前記最後の1本が片側鍔部と反対側の端部から内径部の軸線方向に沿って前記環状に並べられた転動体の間隙に挿入されることにより、ローラ部材の内径部内に全数の転動体が装填されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の方法において、
前記ローラ部材の内径部内に挿入された後の全数の転動体は、該ローラ部材の内径部内でキーストン状態に保持されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法において、
前記径方向のクリアランスは、数μm〜数十μmに設定されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、
前記保持部材には、トラニオンを囲繞する内周側に、断面円弧状の円弧面が形成されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項7】
所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられ一方の伝達軸に連結される筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に挿入されて他方の伝達軸に連結されるインナ部材とを有するトリポート型の等速ジョイントにおいて、
前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部に設けられる片側鍔部と、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った他方の端部に設けられ、前記片側鍔部との間で前記転動体を保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、リング体からなり前記ローラ部材の内径部内に供給された潤滑剤の粘性作用によって係止されることを特徴とする等速ジョイント。
【請求項1】
所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられたアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に設けられ前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、前記案内溝に接触し前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部に設けられる片側鍔部と、前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った他方の端部に設けられ前記転動体を保持する保持部材とを備えるトリポート型の等速ジョイントの製造方法において、
前記ローラ部材の内径部に沿って全数の転動体が装填される工程と、
前記内径部内に潤滑剤を供給し、前記潤滑剤の粘性作用下に内径部に沿って導入された保持部材が係止される工程と、
を有することを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
全数の転動体は、環状に並べられ、ローラ部材の内径部の壁面と転動体の外周面との間で径方向のクリアランスが設けられた状態で、片側鍔部と反対側の端部から内径部の軸線方向に沿って前記内径部内に一括して挿入されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
1本を除いた全数の転動体がローラ部材の内径部に沿って環状に並べられ、続いて、最後の1本の転動体と隣接する転動体との周方向に沿った間で所定のクリアランスが設けられた状態で、前記最後の1本が片側鍔部と反対側の端部から内径部の軸線方向に沿って前記環状に並べられた転動体の間隙に挿入されることにより、ローラ部材の内径部内に全数の転動体が装填されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の方法において、
前記ローラ部材の内径部内に挿入された後の全数の転動体は、該ローラ部材の内径部内でキーストン状態に保持されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法において、
前記径方向のクリアランスは、数μm〜数十μmに設定されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、
前記保持部材には、トラニオンを囲繞する内周側に、断面円弧状の円弧面が形成されることを特徴とする等速ジョイントの製造方法。
【請求項7】
所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられ一方の伝達軸に連結される筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に挿入されて他方の伝達軸に連結されるインナ部材とを有するトリポート型の等速ジョイントにおいて、
前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部に設けられる片側鍔部と、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った他方の端部に設けられ、前記片側鍔部との間で前記転動体を保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、リング体からなり前記ローラ部材の内径部内に供給された潤滑剤の粘性作用によって係止されることを特徴とする等速ジョイント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−10039(P2006−10039A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191535(P2004−191535)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
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