説明

等速ジョイント

【課題】 トリポードタイプの等速ジョイントにおいて、ジョイント角が大きい範囲における振動・騒音の発生や動力損失を抑制する。
【解決手段】 等速ジョイントは、内面に3本の案内溝15が形成された筒状体11よりなる外側継手部材10と、ボス部21から半径方向に延びる3本のトリポード軸22よりなる内側継手部材20と、内周面25bに各トリポード軸が摺動自在に挿入されて支持されると共に外周面25aが各案内溝内に長手方向に沿って転動可能に係合される3個のローラユニット25により構成されている。ローラユニットの外周面と内周面の各横断面形状は共通の中心Oを有する凸円弧状とし、トリポード軸は断面形状を楕円とする。ローラユニット25は、アウタローラ26とインナリング27の間にニードルローラ28介装したダブルローラタイプとするのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の動力伝達装置において差動装置のサイドギヤと車輪を駆動するドライブシャフトの間などに用いるのに適した等速ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の等速ジョイントには、例えば特許文献1に示すようなものがある。図5〜図7はこの特許文献1の技術と実質的に同じ等速ジョイントを示すものであり、内面に中心軸線方向と平行に延びる3本の案内溝2が等角度間隔で形成された筒状体1aを有する外側継手部材1と、先端部にそれぞれトリポード球面3cが形成されてボス部3aから等角度間隔で半径方向外向きに延びる3本のトリポード軸3bを有する内側継手部材3と、外側継手部材1と内側継手部材3を連結する3個のローラユニット6により構成されている。ローラユニット6は、案内溝2に対向して形成された1対の凹円弧状断面の案内面2aの間に実質的に隙間なく転動可能に当接される凸円弧状断面の外周面7aを有する環状のアウタローラ7と、ニードルローラ9を介してアウタローラ7の内周に相対回転自在に係合されると共に内側継手部材3のトリポード球面3cが揺動可能に挿入される内周面8aを有するインナリング8よりなるものである。
【特許文献1】特開2000−125175号公報(段落〔0016〕、段落〔0017〕、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この特許文献1の等速ジョイントは、トルク伝達状態では、内側継手部材3の中心軸線と直交する断面の要部である図6に示すように、駆動力を伝達する負荷側S1ではトリポード軸3bからの力Fe によりアウタローラ7の外周面7aが案内溝2の案内面2aに当接されて押圧され、これと反対側の非負荷側S2ではアウタローラ7の外周面7aが案内溝2の案内面2aから離れて多少の隙間があいている。この状態では、ローラユニット6は、負荷側S1におけるアウタローラ7の外周面7aの円弧状断面の中心Oaを通り内側継手部材3の中心軸線と平行な軸線(普通はローラユニット6の中心面Pa上にある)回り(以下単に中心Oa回りという)に回動可能である。一方、この種のトリポードタイプの等速ジョイントでは、両継手部材1,3の間にジョイント角が与えられた状態で回転されると、トリポード球面3cが形成されたトリポード軸3bは、等速ジョイントの回転に応じて、外側継手部材1の案内面2aにより半径方向位置決めがされたローラユニット6に対し半径方向に往復動するので、トリポード球面3cと内周面8aの当接点Qを通る力Fe の作用線と中心Oaとの間に変化するオフセットLtが生じ、この力Fe とオフセットLtにより図6に示す状態では、中心Oa回りにローラユニット6を回転させようとするモーメントが生じる。またインナリング8の内周面8aとこれに対し前述のように半径方向に移動されるトリポード球面3cとの当接点Qには、摩擦力μFe (μは内周面8aとトリポード球面3cの間の摩擦係数)が生じ、この摩擦力μFe の作用線と回動の中心Oaの間の距離はLk1であり、この摩擦力μFe と距離Lk1によっても中心Oa回りにローラユニット6を回転させようとするモーメントが生じる。
【0004】
この力Fe とオフセットLt及び摩擦力μFe と距離Lk1によるモーメントMzによりローラユニット6は中心Oa回りに回動され、図7に示すように非負荷側S2においてアウタローラ7の外周面7aが案内溝2の案内面2aと接触し、この接触に伴う摩擦抵抗のため外側継手部材1と内側継手部材3を軸線方向互いに逆向きに押すスラスト力が誘起される。この誘起スラスト力は、ジョイント角が与えられた状態で等速ジョイントが回動されると変動するので、場合によっては振動・騒音の発生や動力損失という問題を生じることがある。
【0005】
このモーメントMzのうち摩擦力μFe と距離Lk1によるものは、トリポード軸3bの往復動の向きに応じて符号は変化するが絶対値は一定であり、これによる誘起スラスト力も符号は変化するが絶対値は一定である。これに対しオフセットLtは両継手部材1,3の間のジョイント角に応じて2次関数的に増大するので、モーメントMzのうち力Fe とオフセットLtによるものは2次関数的に増大し、これによる変動する誘起スラスト力の最大値も2次関数的に大きくなり、ジョイント角が大きい範囲では振動・騒音の発生や動力損失が増大するおそれが高まる。
【0006】
なお以上は、ローラユニット6の外周面7aと案内溝2の案内面2aの断面が同一曲率半径の円弧であり、負荷側S1においてこの円弧状の両面7a,2aが相当な範囲にわたり接触しているものとして説明したが、ローラユニット6の外周面7aの断面が凸円弧状であれば、案内溝2の案内面2aの断面は必ずしも凹円弧状である必要はなく、ローラユニット6の外周面7aの凸円弧状断面がある程度以上離れた少なくとも2点において案内面2aの断面に接触していれば、ローラユニット6は、上述したような中心Oa回りに回動可能である。従って、上述と同様、ジョイント角が大きい範囲では振動・騒音の発生や動力損失が増大するおそれが高まるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、等速ジョイントのローラユニット及びこれに当接する部分を改良して、ジョイント角が大きい範囲における振動・騒音の発生や動力損失を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、請求項1に記載の発明による等速ジョイントは、
内面に中心軸線と平行に延びる3本の案内溝が等角度間隔で形成され案内溝は中心軸線から半径方向に延びる平面を挟んで互いに対向して平行に延びる1対の細長い案内面を有している筒状体よりなる外側継手部材と、
ボス部から等角度間隔で半径方向外向きに延びる3本のトリポード軸よりなる内側継手部材と、
互いに同軸的に形成された外周面と内周面を有し、外周面が各案内溝の案内面の間に長手方向に沿って転動可能に係合されると共にトリポード軸が内周面内に挿入されて同トリポード軸に軸線方向摺動及び揺動可能に支持される3個のローラユニットを備えてなる等速ジョイントにおいて、
ローラユニットの外周面と内周面の各横断面形状は共通の中心を有する凸円弧状とし、
トリポード軸の内側継手部材の中心軸線と直交する第1の方向における幅は一定として同方向における両側をローラユニットの内周面に当接させたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項1に記載の等速ジョイントにおいて、トリポード軸の第1の方向と直交する第2の方における幅はインナリングの内周面との間に隙間が形成される幅とすることが好ましい。
【0010】
前2項に記載の等速ジョイントにおいて、ローラユニットの外周面はローラユニットの回転軸線と直交する中心面の両側に位置する各1箇所において案内溝の案内面に当接されていることが好ましい。
【0011】
前各項に記載の等速ジョイントにおいて、各ローラユニットは、外周面を有するアウタローラと、内周面を有しアウタローラの内周に転動体を介して相対回転自在にかつ軸線方向の相対移動が拘束されて係合されたインナリングよりなるものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
前述のように、ローラユニットの外周面の断面が凸円弧状であり、ローラユニットの外周面の凸円弧状断面がある程度以上離れた少なくとも2点において負荷側となる案内溝の案内面の断面に接触していれば、ローラユニットは、上述したような中心を通る軸線回りに回動可能である。またローラユニットを中心を通る軸線回りに回動させようとするモーメントは、前述のように、トリポード軸と内周面の間の当接点を介してトリポード軸からローラユニットに伝達される力とこれと直交する摩擦力である。そして請求項1に記載の等速ジョイントの発明によれば、ローラユニットの外周面と内周面の各横断面形状は共通の中心を有する凸円弧状とし、トリポード軸の内側継手部材の中心軸線と直交する第1の方向における幅は一定として同方向における両側をローラユニットの内周面に当接させたので、ジョイント角の有無にかかわらずトルク伝達の際にトリポード軸と内周面の間の当接点を介してトリポード軸からローラユニットに伝達される力の作用線は常に前述した中心を通る、従ってこの中心を通る軸線回りにローラユニットを回動させようとするモーメントは生ぜず、ローラユニットをその外周面の中心回りに回動させようとするモーメントは、摩擦力によるモーメントだけになる。このように請求項1の発明によれば、トリポード軸からローラユニットに伝達される力により生じるジョイント角に応じて2次関数的に増大するモーメントはなくなり、摩擦力による一定のモーメントだけが残り、中心を通る軸線回りにローラユニットを回動させようとするモーメントの値は一定となるので、アウタローラの外周面と案内溝案内面との接触にに伴う摩擦抵抗のため生じる誘起スラスト力の最大値は一定となる。従って、ジョイント角が大きい範囲における振動・騒音の発生や動力損失を抑制することができる。
【0013】
トリポード軸の第1の方向と直交する第2の方における幅はインナリングの内周面との間に隙間が形成される幅とした請求項2の発明によれば、極めて簡単な構造により内周面内にトリポード軸を軸線方向摺動及び揺動可能に係合することができるので、等速ジョイントの製造コストを低下させることができる。
【0014】
ローラユニットの外周面はローラユニットの回転軸線と直交する中心面の両側に位置する各1箇所において案内溝の案内面に当接されるようにした請求項3の発明によれば、転動に伴うローラユニットの外周面と案内溝の案内面の間のころがり抵抗が減少し、これにより外側継手部材と内側継手部材を軸線方向互いに逆向きに押す誘起スラスト力が減少するので、等速ジョイントに生じる振動・騒音の発生や動力損失を一層減少させることができる。
【0015】
各ローラユニットは、外周面を有するアウタローラと、内周面を有しアウタローラの内周に転動体を介して相対回転自在にかつ軸線方向の相対移動が拘束されて係合されたインナリングよりなるものとした請求項4の発明によれば、ジョイント角が与えられた状態で等速ジョイントが回転された場合にローラユニットが案内溝の長手方向に沿って転動する際の摩擦抵抗はアウタローラとインナリングの間に介装された転動体により減少し、これにより外側継手部材と内側継手部材を軸線方向互いに逆向きに押す誘起スラスト力が減少するので、等速ジョイントに生じる振動・騒音の発生や動力損失を一層減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図1〜図3により、本発明による等速ジョイントの最良の形態の説明をする。この実施形態の等速ジョイントは、外側継手部材10と、内側継手部材20と、ローラユニット25により構成されている。
【0017】
図1〜図3に示すように、外側継手部材10は、中心軸線ax1を有する筒状体11とその軸線方向一端側を閉じる底部12よりなり、底部12の外側には筒状体11と同軸的に第1回転軸13が設けられたもので、この各部分11〜13は、鍛造などにより一体的に形成されている。筒状体11の内面には全長にわたり中心軸線ax1と平行に延びる3本の案内溝15が円周方向に120度間隔で形成され、各案内溝15の底部12と反対側となる一端は外部に開放されている。各案内溝15は一定断面形状で、主として図2に示すように、外側継手部材10の中心軸線ax1から半径方向に延びる1つの平面Gを挟んで互いに平行に対向して中心軸線ax1と平行に延びる1対の細長い案内面16と、平面Gと直交して案内面16の先端縁を連結する底面17よりなるものである。各案内面16は、その幅方向中心付近を通る平面(後述するローラユニット25の中心面Pと一致)を対称面としてV形に配置された1対の凹円弧面16a,16bにより構成されている。この凹円弧面16a,16bの断面の曲率半径は、後述するアウタローラ26の外周面25aの断面の曲率半径よりも大である。
【0018】
図1〜図3に示すように、内側継手部材20は、中心軸線ax2を有するボス部21とそれから120度間隔で半径方向外向きに延びる3本の一定横断面形状のトリポード軸22により構成されている。この実施形態では、各トリポード軸22の横断面形状は、内側継手部材20の中心軸線ax2と立体的に直交する第1の方向(図2及び図3において左右方向)を長軸とし、これと直交する第2の方向を短軸とする楕円である。
【0019】
この実施形態のローラユニット25はダブルローラタイプのもので、図1〜図3に示すように、環状のアウタローラ26とその内周にニードルローラ(転動体)28を介して同軸的に相対回転自在に係合された環状のインナリング27よりなり、アウタローラ26に対するインナリング27及びニードルローラ28の軸線方向移動は、アウタローラ26の内周の両端部に係止された止め輪29により拘束されている。アウタローラ26の外周面25aとインナリング27の内周面25bの各横断面形状は、互いに係合された状態において共通の中心Oを有する凸円弧状である。各断面におけるこの中心Oを結ぶ平面が、ローラユニット25の回転軸線と直交する中心面Pである。
【0020】
インナリング27の内周面25bの内径はトリポード軸22の横断面の長軸方向の長さとほゞ同一であるので、トリポード軸22をインナリング27の内周面25bに挿入すれば、トリポード軸22は第1の方向における両側の先端縁がインナリング27の内周面25bに当接され、第2の方向における両側との間に隙間が形成される。従ってローラユニット25は、トリポード軸22に軸線方向摺動可能で第1の方向を中心とする揺動可能に支持される。またアウタローラ26は、対向する1対の案内面16の間に長手方向に沿って転動可能に係合される。この係合状態で等速ジョイントに駆動トルクを加えて図2に示すようにアウタローラ26を平面Gと直交する直径方向の一側(負荷側S1)に押し付ければ、そちら側では外周面25aは中心面Pの両側に位置しアウタローラ26の回転中心からの距離が等しい各1箇所R1,R2において案内面16の各凹円弧面16a,16bに当接されて係合されるので、ローラユニット25は外周面25aの円弧状断面の中心Oを通り内側継手部材20の中心軸線ax2と平行な軸線回り(以下単に中心O回りという)に回動可能である。また直径方向反対側(非負荷側S2)では、アウタローラ26の外周面25aと案内面16の凹円弧面16a,16bの間に僅かな隙間が形成される。
【0021】
この実施形態の等速ジョイントは、例えば自動車の動力伝達装置の差動装置のサイドギヤに第1回転軸13を取り付け、車輪を駆動するドライブシャフトに第2回転軸24を連結して使用される。図1の二点鎖線20A,24A,25Aに示すように外側継手部材10の中心軸線ax1と内側継手部材20の中心軸線ax2の間にジョイント角が与えられて回転されれば、図5〜図7で説明した従来技術の場合と同様、トリポード軸22は、外側継手部材10の案内溝15の案内面16に外周面25aが係合されて中心軸線ax1からの半径方向位置決めがされたローラユニット6に対し半径方向に往復動する。しかしながらこの実施形態では、インナリング27の内周面25bの断面形状の円弧の中心Oは、ローラユニット25の回動の中心Oと一致しており、またトリポード軸22は一定断面形状の楕円であるので、ジョイント角が与えられた等速ジョイントの回転に伴うトリポード軸22の半径方向の移動にかかわらず、トリポード軸22と内周面25bの間の当接点Qは常にローラユニット25の中心面P上に位置して移動しない。従って、トルク伝達の際にこの当接点Qを介してトリポード軸22からローラユニット25に伝達される力Fe の作用線は中心Oを通るので、この中心O回りにローラユニット25を回動させようとするモーメントは生じない。一方、インナリング27の内周面25bとこれに対し半径方向に移動されるトリポード軸22との当接点Qには、前述した従来技術の場合と同様、摩擦力μFe が生じ、この摩擦力μFe の作用線と回動の中心Oaの間の距離はLkである。この摩擦力μFe による中心O回りのモーメントMzは
摩擦力μFe ×距離Lk
となり、トリポード軸22のローラユニット25に対する半径方向の移動の向きに応じて符号は変化するが絶対値は一定となる。
【0022】
上述した実施形態では、このように、中心O回りにローラユニット25を回動させようとするモーメントは摩擦力μFe による絶対値が一定のモーメントだけとなり、図5〜図7に示す従来技術で述べたようなジョイント角に応じて2次関数的に増大する力Fe とオフセットLtによるモーメントはなくなるので、アウタローラ26の外周面25aと案内溝15の案内面16との接触に伴う摩擦抵抗により生じる誘起スラスト力の最大値は、ジョイント角に拘わらず一定となる。従って、ジョイント角が大きい範囲における振動・騒音の発生や動力損失を抑制することができる。
【0023】
またこの実施形態では、トリポード軸22とインナリング27は何れも単純な形状の部品であり、余分な部材を介することなく軸線方向摺動及び揺動可能に直接当接して力Fe を伝達しているので、等速ジョイントの製造コストを低下させることができる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、別の部材を介してトリポード軸22とインナリング27を連結して力Fe を伝達するようにしてもよい。
【0024】
またこの実施形態では、案内溝15の各案内面16をV形に配置された1対の曲率半径が大きい凹円弧面16a,16bよりなるものとして、アウタローラ26の外周面25aはローラユニット25の回転軸線と直交する中心面Pの両側に位置しアウタローラ26の回転中心からの距離が等しい各1箇所R1,R2において案内面16に当接されるようにしており、このようにすれば転動に伴うアウタローラ26の外周面25aと案内溝15の案内面16の間のころがり抵抗が減少し、これにより外側継手部材10と内側継手部材20を軸線方向互いに逆向きに押す誘起スラスト力が減少するので、等速ジョイントに生じる振動・騒音の発生や動力損失を一層減少させることができる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、案内溝15の案内面16の断面形状をアウタローラ26の外周面25aの断面形状と実質的に同じ曲率半径の1つの円弧状として、アウタローラ26の外周面25aと案内溝15の案内面16が円弧状断面の相当な範囲にわたり当接するようにしてもよい。そのようにすればアウタローラ26の外周面25aと案内溝15の案内面16の間の接触面圧が減少するので、耐久性を向上させることができる。あるいはまた、案内溝15の各案内面16は、V形に配置された1対の曲率半径が大きい凹円弧面16a,16bよりなるものとする代わりに、V形に配置された1対の帯状の平面とすることも可能である。
【0025】
また上述した実施形態では、各ローラユニット25は、円弧状の外周面25aを有するアウタローラ26と、中心Oが外周面25aと共通な内周面25bを有しアウタローラ26の内周にニードルローラ28を介して相対回転自在にかつ軸線方向の相対移動が拘束されて係合されたインナリング27よりなるダブルローラタイプのものを使用しており、このようにすれば、ジョイント角が与えられた状態で等速ジョイントが回転された場合にローラユニット25が案内溝15の長手方向に沿って転動する際の摩擦抵抗はアウタローラ26とインナリング27の間に介装されたニードルローラ28により減少し、これにより外側継手部材10と内側継手部材20を軸線方向互いに逆向きに押す誘起スラスト力が減少するので、等速ジョイントに生じる振動・騒音の発生や動力損失を一層減少させることができる。
【0026】
図4(a) 及び図4(b) はローラユニット25の変形例を示すものである。前述した実施形態のローラユニット25では、インナリング27の内周面25bとアウタローラ26の外周面25aは曲率半径が同一であるが、1個の止め輪29によりアウタローラ26に対するインナリング27及びニードルローラ28の軸線方向移動を拘束するために、インナリング27の両側を平面に切削している。これに対し図4(a) に示すローラユニット25Aは、環状のアウタローラ26Aとその内周にニードルローラ28Aを介して同軸的に相対回転自在に係合された環状のインナリング27Aよりなるものであるが、アウタローラ26Aの外周面25Aaとインナリング27Aの内周面25Abを何れも略半円弧状とし、ニードルローラ28Aの両端に環状ワッシャ25Acを当接し、アウタローラ26Aとインナリング27Aにそれぞれ係止させた止め輪29Aa,29Abにより、アウタローラ26Aとインナリング27Aとニードルローラ28Aの軸線方向相対移動を拘束したものである。アウタローラ26Aの外周面25Aaとインナリング27Aの内周面25Abの各横断面形状は、互いに係合された状態において共通の中心Oを有する凸円弧状である。
【0027】
また図4(b) に示すローラユニット25Bは、図1〜図3に示す実施形態のローラユニット25とほゞ同一構造であり、アウタローラ26Bの外周面25Baの円弧とインナリング27Bの内周面25Bbの円弧は共通の中心Oを有してはいるが、前者の円弧の曲率半径を後者の曲率半径よりも大とし、アウタローラ26Bの両側の先端部も平面に切削したものである。
【0028】
なお上述した実施形態では、各トリポード軸22の横断面形状は、長軸方向の長さがローラユニット25のインナリング27の内周面25bの径とほゞ同一で、短軸方向の長さがそれより小さい一定断面形状の楕円形としたが、楕円形には限られるものではなく両端の半円形の間を直線で結んだ小判形など、長軸に対応する第1の方向では内周面25bと当接されると共に、第1の方向と直交する第2の方向では内周面25bとの間に隙間が形成される形状であれば任意である。またトリポード軸22は一定断面形状に限らず、第1の方向における長さがローラユニット25のインナリング27の内周面25bの径とほゞ同一の一定値であり、これと直交する第2の方向における長さをそれよりも小さくしてローラユニット25が第1の方向を中心として揺動可能であれば、断面形状が一定である必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による等速ジョイントの一実施形態の全体構造を示す縦断面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】図2の3−3断面図である。
【図4】図1に示すローラユニットの変形例を示す図
【図5】従来技術による等速ジョイントの一例の全体構造を示す縦断面図である。
【図6】図5の6−6断面図である。
【図7】図5に示す実施形態の作動を説明する図である。
【符号の説明】
【0030】
10…外側継手部材、11…筒状体、15…案内溝、16…案内面、20…内側継手部材、21…ボス部、22…トリポード軸、25…ローラユニット、25a…外周面、25b…内周面、26…アウタローラ、27…インナリング、28…転動体(ニードルローラ)、G…平面、O…中心、P…中心面、ax1…中心軸線、ax2…中心軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に中心軸線と平行に延びる3本の案内溝が等角度間隔で形成され前記案内溝は前記中心軸線から半径方向に延びる平面を挟んで互いに対向して平行に延びる1対の細長い案内面を有している筒状体よりなる外側継手部材と、
ボス部から等角度間隔で半径方向外向きに延びる3本のトリポード軸よりなる内側継手部材と、
互いに同軸的に形成された外周面と内周面を有し、前記外周面が前記各案内溝の案内面の間に長手方向に沿って転動可能に係合されると共に前記トリポード軸が前記内周面内に挿入されて同トリポード軸に軸線方向摺動及び揺動可能に支持される3個のローラユニットを備えてなる等速ジョイントにおいて、
前記ローラユニットの外周面と内周面の各横断面形状は共通の中心を有する凸円弧状とし、
前記トリポード軸の前記内側継手部材の中心軸線と直交する第1の方向における幅は一定として同方向における両側を前記ローラユニットの内周面に当接させたことを特徴とする
等速ジョイント。
【請求項2】
請求項1に記載の等速ジョイントにおいて、前記トリポード軸の前記第1の方向と直交する第2の方における幅は前記インナリングの内周面との間に隙間が形成される幅としたことを特徴とする等速ジョイント。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の等速ジョイントにおいて、前記ローラユニットの外周面は前記ローラユニットの回転軸線と直交する中心面の両側に位置する各1箇所において前記案内溝の案内面に当接されていることを特徴とする等速ジョイント。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の等速ジョイントにおいて、前記各ローラユニットは、前記外周面を有するアウタローラと、前記内周面を有し前記アウタローラの内周に転動体を介して相対回転自在にかつ軸線方向の相対移動が拘束されて係合されたインナリングよりなることを特徴とする等速ジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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