説明

筋力トレーニング及び測定装置

【課題】被験者の体肢にロボットアームを装着する装着具及び該装着具が装着される被験者の体肢が負荷荷重をかけることによって変形することに起因するロボットアームの関節軸と被験者の関節とのずれの量をあらかじめ測定し、被験者が発生する力の方向によって被験者の上肢又は下肢の先端座標の算出方法を切り換えることにより、被験者の体肢の位置を高い精度で測定することができ、被験者の体肢の筋力トレーニング及び筋力測定を正確に、かつ、効果的に行うことができるようにする。
【解決手段】装着具及び被験者の上肢又は下肢が負荷荷重により変形することに起因するロボットアームの関節軸と被験者の関節とのずれの量をあらかじめ測定し、被験者が発生する力の方向により被験者の上肢又は下肢の先端座標の算出方法を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋力トレーニング及び測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二関節アーム装置のような二関節リンク機構を利用して、人間の脚を模した大腿(たい)部と下腿部に相当するリンクを有するロボットアームを、被験者の脚の大腿部と下腿部に沿わせて装着具で固定し、被験者の股(こ)関節と膝(ひざ)関節に同時に任意の負荷をかけることによって特定の筋の筋力トレーニングや筋力測定を実施する筋力トレーニング及び測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。なお、前記筋力トレーニング及び測定装置は、脚、すなわち、下肢だけでなく腕、すなわち、上肢の筋力トレーニングや筋力測定にも使用することができ、ロボットアームを脚に沿わせて装着具で固定し、被験者の肩関節と肘(ひじ)関節に同時に任意の負荷をかけることによって特定の筋の筋力トレーニングや筋力測定を実施する。
【0003】
ところで、前記筋力トレーニング及び測定装置では、脚のトレーニングの場合には股関節及び膝関節を、また、腕のトレーニングの場合には肩関節及び肘関節をロボットアームの回転軸に一致させる必要がある。そのため、図6に示されるような装着具によってロボットアームを脚又は腕に固定するようになっている。
【0004】
図6は従来の筋力トレーニング及び測定装置における装着具である。
【0005】
図において、52はロボットアームのアーム部材、53はアーム部材52に取り付けられた取付部、54は取付部53に取り付けられたベルト等から成る締結具、55a及び55bは第1及び第2の緩衝材である。そして、第1の緩衝材55a及び第2の緩衝材55bの間に脚又は腕を挿入した状態で前記締結具54によって締め付けることにより、前記アーム部材52に脚又は腕を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−29566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の筋力トレーニング及び測定装置においては、第1の緩衝材55a及び第2の緩衝材55bがトレーニング中に受ける荷重等によって変形するとともに、装着具によってロボットアームを固定した脚又は腕の部分、すなわち、被験者の上肢又は下肢の固定部位が、同様に、トレーニング中に受ける荷重等によって変形するので、被験者の各関節の位置とロボットアームの回転軸の位置とがずれてしまい、筋力トレーニング及び筋力測定を正確に行うことができなかった。
【0008】
本発明は、前記従来の筋力トレーニング及び測定装置の問題点を解決して、被験者の体肢にロボットアームを装着する装着具及び該装着具が装着される被験者の体肢が負荷荷重をかけることによって変形することに起因するロボットアームの関節軸と被験者の関節とのずれの量をあらかじめ測定し、被験者が発生する力の方向によって被験者の上肢又は下肢の先端座標の算出方法を切り換えることにより、被験者の体肢の位置を高い精度で測定することができ、被験者の体肢の筋力トレーニング及び筋力測定を正確に、かつ、効果的に行うことができる筋力トレーニング及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の筋力トレーニング及び測定装置においては、被験者の上肢又は下肢の長さに調整可能なロボットアームと、該ロボットアームを前記被験者の上肢又は下肢に沿って固定する装着具と、前記ロボットアームを制御する制御部と、前記ロボットアームの関節軸の角度及び前記被験者の関節の角度を測定する角度測定部と、前記被験者に対して情報を表示する表示部とを有し、前記ロボットアームから、前記被験者の上肢又は下肢に対して負荷荷重をかけることによって前記被験者の上肢又は下肢の筋力をトレーニングするとともに、前記負荷荷重を測定することによって前記被験者の上肢又は下肢の筋力を測定する筋力トレーニング及び測定装置であって、前記装着具及び前記被験者の上肢又は下肢が負荷荷重により変形することに起因する前記ロボットアームの関節軸と前記被験者の関節とのずれの量をあらかじめ測定し、前記被験者が発生する力の方向により前記被験者の上肢又は下肢の先端座標の算出方法を切り換える。
【0010】
本発明の他の筋力トレーニング及び測定装置においては、さらに、前記装着具は、前記被験者の上肢又は下肢を両側から挟み込んで固定する固定部と、該固定部に取り付けられた緩衝材とを備え、該緩衝材が負荷荷重により変形する。
【0011】
本発明の更に他の筋力トレーニング及び測定装置においては、被験者の上肢又は下肢の長さに調整可能なロボットアームと、該ロボットアームを前記被験者の上肢又は下肢に沿って固定する装着具と、前記ロボットアームを制御する制御部と、前記ロボットアームの関節軸の角度及び前記被験者の関節の角度を測定する角度測定部と、前記被験者に対して情報を表示する表示部とを有し、前記ロボットアームから、前記被験者の上肢又は下肢に対して負荷荷重をかけることによって前記被験者の上肢又は下肢の筋力をトレーニングするとともに、前記負荷荷重を測定することによって前記被験者の上肢又は下肢の筋力を測定する筋力トレーニング及び測定装置であって、前記装着具及び前記被験者の上肢又は下肢が負荷荷重により変形することに起因する前記ロボットアームの関節軸と前記被験者の関節とのずれの量をあらかじめ測定し、前記被験者が発生する力の方向により前記被験者に対して教示する上肢又は下肢の先端の位置を切り換える。
【0012】
本発明の更に他の筋力トレーニング及び測定装置においては、さらに、前記表示部が前記上肢又は下肢の先端の位置を表示することによって、前記被験者に対して前記上肢又は下肢の先端の位置を教示する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筋力トレーニング及び測定装置は、被験者の体肢にロボットアームを装着する装着具及び前記装着具が装着される被験者の体肢が負荷荷重をかけることにより変形することに起因するロボットアームの関節軸と被験者の関節とのずれの量をあらかじめ測定し、被験者が発生する力の方向によって被験者の上肢又は下肢の先端座標の算出方法を切り換えるようになっている。これにより、被験者の体肢の位置を高い精度で測定することができ、被験者の体肢の筋力トレーニング及び筋力測定を正確に、かつ、効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームを取り付けた被験者の下肢を示す第1の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームを被験者に取り付けた状態を示す全体図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームの装着具を説明する断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームを取り付けた被験者の下肢を示す第2の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームの座標を説明する図である。
【図6】従来の筋力トレーニング及び測定装置における装着具である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームを取り付けた被験者の下肢を示す第1の側面図、図2は本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームを被験者に取り付けた状態を示す全体図、図3は本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームの装着具を説明する断面図である。なお、図2において、(a)は側面を示す図であり、(b)は正面を示す図である。
【0017】
本実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置は、図に示されるように、被験者としての使用者20が着座するサドル11と、使用者20の体肢に沿って装着されるロボットアーム12と、該ロボットアーム12を制御する図示されない制御部としての制御装置と、使用者20が筋力トレーニング及び筋力測定のために必要事項を入力する図示されない入力操作装置とを有する。なお、ここでは説明の都合上、下肢の例についてのみ説明するが、上肢についても同様である。
【0018】
そして、前記ロボットアーム12は、使用者20の大腿部21aに対応する第1リンク14aと、使用者20の下腿部21bに対応する第2リンク14bとの2つのリンクから成る2自由度のロボットアームである。また、第1リンク14a及び第2リンク14bは、リンク長を調節することができるスライド機構を備え、筋力測定及び筋力トレーニングを行うときには、それぞれ、使用者20の大腿部21a及び下腿部21bの長さと同じになるように調整され、第1装着具15a及び第2装着具15bによって大腿部21a及び下腿部21bに固定される。なお、第1リンク14a及び第2リンク14b並びに第1装着具15a及び第2装着具15bを統合的に説明する場合には、各々、リンク14及び装着具15として説明する。
【0019】
また、前記ロボットアーム12は、使用者20がサドル11に着座した状態で、使用者20に装着されるが、このとき、ロボットアーム12の回転軸としての第1関節軸16aを使用者20の股関節に一致させ、ロボットアーム12の回転軸としての第2関節軸16bを使用者20の膝関節軸に一致させる。また、前記第1関節軸16a及び第2関節軸16bには、第1サーボモータ17a及び第2サーボモータ17bが連結されている。なお、前記第1関節軸16a及び第2関節軸16b並びに第1サーボモータ17a及び第2サーボモータ17bを統合的に説明する場合には、各々、関節軸16及びサーボモータ17として説明する。
【0020】
ここで、該サーボモータ17は、関節駆動源及び角度測定部として機能し、関節軸16を回転させるための軸トルクとしてのトルクを発生するとともに、関節軸16の角度、使用者20の関節の角度等を測定する。そして、サーボモータ17が発生するトルク及び角度測定の動作は、前記制御装置によって制御される。また、該制御装置が有する記憶装置によって、ロボットアーム12の関節軸16が発生しているトルク及び測定した角度を記憶することができる。
【0021】
さらに、前記制御装置には、図示されないCRT、液晶ディスプレイ等を備える表示装置、プリンタ等の印刷装置等の出力手段が接続されている。該出力手段は、ロボットアーム12が発揮している力の大きさや方向を表示又は印刷したり、使用者20に対して発揮すべき力の方向、姿勢変化量等の教示内容の表示を行う表示部として機能する。
【0022】
また、各関節軸16には軸トルクを測定するトルク測定装置としてのトルクセンサが装備されている。そして、制御装置がサーボモータ17を制御することによって、関節角度及び関節軸16が発生するトルクを制御することができる。なお、関節角度の制御とトルクの制御とは、適宜切り換えて行われる。また、制御装置に内蔵された又は接続されたハードディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置によって、ロボットアーム12の関節軸16が発生するトルク及び関節角度を記憶することができる。
【0023】
さらに、前記制御装置は、後述されるように、関節角度等に基づいて、使用者20の下肢の先端の位置を示す先端座標を演算する。
【0024】
本実施の形態において、装着具15は、図3に示されるように、ロボットアーム12のリンク14に固定された取付ブラケット34と、該取付ブラケット34に取り付けられた図3において上下方向に延在する棒状部材から成る支柱部31と、該支柱部31に図3において上下方向に移動可能に取り付けられるとともに、図示されないねじ等の固定手段によって移動不能に固定される規制手段としての第1板部材32a及び第2板部材32bとを有する。前記第1板部材32a及び第2板部材32bは、上下両側から使用者20の大腿部21a又は下腿部21bを挟み込んで固定する固定部として機能する部材であり、大腿部21a又は下腿部21bに当接する面には、使用者20に苦痛を与えないように、第1緩衝材33a及び第2緩衝材33bが取り付けられている。なお、前記第1板部材32a及び第2板部材32b並びに第1緩衝材33a及び第2緩衝材33bを統合的に説明する場合には、各々、板部材32及び緩衝材33として説明する。
【0025】
次に、前記構成の筋力トレーニング及び測定装置の動作について説明する。
【0026】
図4は本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームを取り付けた被験者の下肢を示す第2の側面図、図5は本発明の第1の実施の形態における筋力トレーニング及び測定装置のロボットアームの座標を説明する図である。
【0027】
ここでは、使用者20の下肢の先端座標を補正するために、装着具15の変形及び前記装着具15が装着される下肢の固定部位の変形に起因する使用者20の関節とロボットアーム12の関節軸16とのずれ量をあらかじめ測定する動作についてのみ説明する。また、使用者20の下肢の先端はロボットアーム12の第2リンク14bの先端と一致する、すなわち、使用者20の下肢の先端座標は、第2リンク14bの先端座標に等しいものとして説明する。
【0028】
まず、入力操作装置に必要事項を入力してロボットアーム12を作動させると、制御装置がロボットアーム12の動作を制御し、図1に示されるように、使用者20の股関節に対応するロボットアーム12の第1関節軸16aの回転角がθ11となり、使用者20の膝関節に対応するロボットアーム12の第2関節軸16bの回転角がθ21となるような姿勢にする。
【0029】
次に、使用者20は、サドル11に着座し、自身の股関節及び膝関節の位置をロボットアーム12の第1関節軸16a及び第2関節軸16bの位置と合わせるために、第1リンク14a及び第2リンク14bの長さ、サドル11の高さ等の調整を行う。
【0030】
次に、使用者20は、自身の大腿部21a及び下腿部21bに第1装着具15a及び第2装着具15bを固定する。
【0031】
この場合、まず、大腿部21a及び下腿部21bを第1装着具15a及び第2装着具15bの第2板部材32bに強く押し付けるようにして、使用者20自身の股関節及び膝関節の位置とロボットアーム12の第1関節軸16a及び第2関節軸16bの位置とが一致するように第2板部材32bの位置を調整した後、第2板部材32bを支柱部31に対して固定する。
【0032】
続いて、前記第1板部材32aと第2板部材32bとで上下両側から使用者20の大腿部21a又は下腿部21bを挟み込むようにして、第1板部材32a及び第2板部材32bの位置を調整した後、第1板部材32a及び第2板部材32bを支柱部31に対して固定する。この場合、使用者20が苦痛を感じない程度の力で大腿部21a又は下腿部21bを挟み込むように、第1板部材32a及び第2板部材32bの位置を調整する。
【0033】
続いて、制御装置は、出力手段である表示装置にメッセージ、画像等を表示することによって、使用者20に対して、第1装着具15a及び第2装着具15bの第1板部材32aを自身の下肢で強く押さえつけるように教示する。つまり、上向きの力を下肢に入れるように使用者20に対して教示する。
【0034】
これにより、使用者20の下肢は、図4に示されるような姿勢となる。すなわち、ロボットアーム12の第1関節軸16aに対応する使用者20の股関節の回転角がθ12となり、ロボットアーム12の第2関節軸16bに対応する使用者20の膝関節の回転角がθ22となるような姿勢となる。そして、制御装置は、前記回転角θ12及びθ22を測定する。
【0035】
続いて、制御装置は、出力手段である表示装置にメッセージ、画像等を表示することによって、使用者20に対して、第1装着具15a及び第2装着具15bの第2板部材32bを自身の下肢で強く押さえつけるように教示する。つまり、下向きの力を下肢に入れるように使用者20に対して教示する。
【0036】
ここでは、下向きの力を下肢に入れると、その姿勢が、図1に示されるような姿勢となるものとして説明する。すなわち、ロボットアーム12の第1関節軸16aに対応する使用者20の股関節の回転角がθ11となり、ロボットアーム12の第2関節軸16bに対応する使用者20の膝関節の回転角がθ21となるような姿勢となるものとする。そして、制御装置は、前記回転角θ11及びθ21を測定する。
【0037】
ここで、図5に示すように座標をとり、ロボットアーム12の第1リンク14aの長さをL1 とし、第2リンク14bの長さをL2 とし、第1関節軸16aの回転角をθ1 とし、第2関節軸16bの回転角をθ2 とすると、ロボットアーム12の先端座標(Lx、Ly)は、次の式(1)で表される。
【0038】
【数1】

【0039】
そして、使用者20が下向きに下肢に力を入れたときには、図1に示されるような姿勢となるのであるから、そのときのロボットアーム12の先端座標(Lx、Ly)は、前記式(1)におけるθ1 及びθ2 にθ11及びθ21を各々代入して、すなわち、θ1 =θ11及びθ2 =θ21として、次の式(2)で表される。
【0040】
【数2】

【0041】
また、使用者20が上向きに下肢に力を入れたときには、図4に示されるような姿勢となるのであるから、そのときのロボットアーム12の先端座標(Lx、Ly)は、前記式(1)におけるθ1 及びθ2 にθ12及びθ22を各々代入して、すなわち、θ1 =θ12及びθ2 =θ22として、次の式(3)で表される。
【0042】
【数3】

【0043】
そして、制御装置は、使用者20が下向きに下肢に力を入れている場合には、前記式(2)によって使用者20の下肢の先端座標に等しいロボットアーム12の先端座標(Lx、Ly)を求めるとともに、前記式(2)によって、使用者20に対する教示内容として、下肢の先端の位置を表示装置に表示する。
【0044】
また、制御装置は、使用者20が上向きに下肢に力を入れている場合には、前記式(3)によって使用者20の下肢の先端座標に等しいロボットアーム12の先端座標(Lx、Ly)を求めるとともに、前記式(2)によって、使用者20に対する教示内容として、下肢の先端の位置を表示装置に表示する。
【0045】
これにより、使用者20の下肢の先端の位置を表示装置に正確に表示することができる。そのため、使用者20に対する教示内容が明確で理解しやすいものになる。
【0046】
このように、本実施の形態においては、装着具15の緩衝材33及び使用者20の下肢における装着具15が装着された部位が荷重によって変形することに起因する使用者20の関節とロボットアーム12の関節軸16とのずれの量をあらかじめ測定するようになっている。すなわち、使用者20が下向きに下肢に力を入れた場合と上向きに下肢に力を入れた場合とについて使用者20の関節の回転角をあらかじめ測定し、使用者20が下向きに下肢に力を入れた場合と上向きに下肢に力を入れた場合とで、下肢の先端座標の算出方法を切り換えるようになっている。これにより、使用者20の下肢の先端の位置を高い精度で測定することができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0048】
前記第1の実施の形態においては、使用者20が下向きに下肢に力を入れた場合と上向きに下肢に力を入れた場合とで、下肢の先端座標の算出方法を切り換えるが、表示装置に表示する教示内容としての下肢の先端の位置については、算出方法を切り換えないようになっている。
【0049】
これに対し、本実施の形態においては、使用者20に対して教示する場合、使用者20の関節とロボットアーム12の関節軸16とのずれの量を見込んで下肢の先端座標を算出し、使用者20が下肢に入れる力の向きに応じて、表示装置に表示する教示内容としての下肢の先端の位置について、算出方法を切り換えるようになっている。
【0050】
具体的には、第1関節軸16aの回転角のずれ量をΔθ1 =θ12−θ11とし、第2関節軸16bの回転角のずれ量をΔθ2 =θ22−θ21とすると、ずれ量を見込んだ教示内容としてのロボットアーム12の先端座標(Lx、Ly)は、次の式(4)で表される。
【0051】
【数4】

【0052】
そして、制御装置は、使用者20が下向きに下肢に力を入れている場合には、前記式(2)によって使用者20の下肢の先端座標に等しいロボットアーム12の先端座標(Lx、Ly)を求めるとともに、前記式(2)によって、使用者20に対する教示内容として、下肢の先端の位置を表示装置に表示する。
【0053】
また、制御装置は、使用者20が上向きに下肢に力を入れている場合には、前記式(2)によって使用者20の下肢の先端座標に等しいロボットアーム12の先端座標(Lx、Ly)を求めるとともに、前記式(4)によって、使用者20に対する教示内容として、下肢の先端の位置を表示装置に表示する。
【0054】
これにより、使用者20の下肢の先端の位置を表示装置に正確に表示することができる。そのため、使用者20に対する教示内容が明確で理解しやすいものになる。
【0055】
このように、本実施の形態においては、装着具15の緩衝材33及び使用者20の下肢における装着具15が装着された部位が荷重によって変形することに起因する使用者20の関節とロボットアーム12の関節軸16とのずれの量をあらかじめ測定するようになっている。すなわち、使用者20が下向きに下肢に力を入れた場合と上向きに下肢に力を入れた場合とについて使用者20の関節の回転角をあらかじめ測定し、使用者20が下向きに下肢に力を入れた場合と上向きに下肢に力を入れた場合とで、表示装置に表示する教示内容としての下肢の先端の位置を切り換えるようになっている。これにより、使用者20の下肢の先端の位置を高い精度で測定することができる。
【0056】
なお、前記第1及び第2の実施の形態においては、使用者20の体肢が下肢である場合についてのみ説明したが、本発明は、使用者20の体肢が上肢である場合にも同様に適用することができる。
【0057】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、筋力トレーニング装置及び筋力測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
12 ロボットアーム
15 装着具
15a 第1装着具
15b 第2装着具
16a 第1関節軸
16b 第2関節軸
17a 第1サーボモータ
17b 第2サーボモータ
20 使用者
32a 第1板部材
32b 第2板部材
33a 第1緩衝材
33b 第2緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被験者の上肢又は下肢の長さに調整可能なロボットアームと、
(b)該ロボットアームを前記被験者の上肢又は下肢に沿って固定する装着具と、
(c)前記ロボットアームを制御する制御部と、
(d)前記ロボットアームの関節軸の角度及び前記被験者の関節の角度を測定する角度測定部と、
(e)前記被験者に対して情報を表示する表示部とを有し、
(f)前記ロボットアームから、前記被験者の上肢又は下肢に対して負荷荷重をかけることによって前記被験者の上肢又は下肢の筋力をトレーニングするとともに、前記負荷荷重を測定することによって前記被験者の上肢又は下肢の筋力を測定する筋力トレーニング及び測定装置であって、
(g)前記装着具及び前記被験者の上肢又は下肢が負荷荷重により変形することに起因する前記ロボットアームの関節軸と前記被験者の関節とのずれの量をあらかじめ測定し、前記被験者が発生する力の方向により前記被験者の上肢又は下肢の先端座標の算出方法を切り換えることを特徴とする筋力トレーニング及び測定装置。
【請求項2】
前記装着具は、前記被験者の上肢又は下肢を両側から挟み込んで固定する固定部と、該固定部に取り付けられた緩衝材とを備え、該緩衝材が負荷荷重により変形する請求項1に記載の筋力トレーニング及び測定装置。
【請求項3】
(a)被験者の上肢又は下肢の長さに調整可能なロボットアームと、
(b)該ロボットアームを前記被験者の上肢又は下肢に沿って固定する装着具と、
(c)前記ロボットアームを制御する制御部と、
(d)前記ロボットアームの関節軸の角度及び前記被験者の関節の角度を測定する角度測定部と、
(e)前記被験者に対して情報を表示する表示部とを有し、
(f)前記ロボットアームから、前記被験者の上肢又は下肢に対して負荷荷重をかけることによって前記被験者の上肢又は下肢の筋力をトレーニングするとともに、前記負荷荷重を測定することによって前記被験者の上肢又は下肢の筋力を測定する筋力トレーニング及び測定装置であって、
(g)前記装着具及び前記被験者の上肢又は下肢が負荷荷重により変形することに起因する前記ロボットアームの関節軸と前記被験者の関節とのずれの量をあらかじめ測定し、前記被験者が発生する力の方向により前記被験者に対して教示する上肢又は下肢の先端の位置を切り換えることを特徴とする筋力トレーニング及び測定装置。
【請求項4】
前記表示部が前記上肢又は下肢の先端の位置を表示することによって、前記被験者に対して前記上肢又は下肢の先端の位置を教示する請求項3に記載の筋力トレーニング及び測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−187718(P2010−187718A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32128(P2009−32128)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】