説明

筋力訓練装置

【課題】
ベルトの張り具合の調整作業を一人の作業者によって簡易に行える筋力訓練装置を提供すること。
【解決手段】
索体32を介して負荷機構部8に配置される重錘6と連結された可動部材を、被訓練者の肢体の少なくとも一部位で所定方向へ移動させることによって重錘6を昇降させ所望の筋群を鍛える筋力訓練装置であって、重錘6の上方に導入された索体32端部と重錘6とをネジ部材45を介して連結し、ネジ部材45は重錘6上方に形成されるネジ孔49に螺進退可能に螺嵌されており、ネジ部材45をネジ孔49に対して螺進退操作することにより索体32の張り具合を調整することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷機構部に配置される重錘を上下方向に昇降させ所望の筋群を鍛える筋力訓練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の重錘負荷式の筋力訓練装置として、例えば、非特許文献1に開示される装置が知られている。
【0003】
従来の筋力訓練装置においてベルトの張り具合を調整するには、重錘上方でベルト一端部を挾持固定している固定具を緩めた後、或作業者がベルトを引張った状態に維持し、別の作業者が工具を使用して固定具を締結しベルトを固定するという手数が必要であり、ベルトの張り具合の調整作業が煩雑であり、一人で簡易にベルトの調整作業が行えないといった問題点を有していた。
【0004】
【非特許文献1】酒井医療株式会社、トレーニング機器カタログ、2004年7月(4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこの問題を解決すべくなされたものであって、ベルトの張り具合の調整作業を一人の作業者によって簡易に行える筋力訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現する為、本発明は、索体を介して負荷機構部に配置される重錘と連結された可動部材を、被訓練者の肢体の少なくとも一部位で所定方向へ移動させることによって前記重錘を昇降させ所望の筋群を鍛える筋力訓練装置において、前記重錘の上方に導入された前記索体端部と前記重錘とをネジ部材を介して連結し、該ネジ部材は重錘上方に形成されるネジ孔に螺進退可能に螺嵌されており、前記ネジ部材を前記ネジ孔に対して螺進退操作することにより索体の張り具合を調整することを特徴とする。
【0007】
ネジ部材の上部及び下部にそれぞれ螺着された締付部材により前記ネジ部材が索体端部の取付金具及び重錘に締結されており、前記両締付部材を緩めることで前記ネジ部材が螺進退可能となることを特徴とする。
【0008】
ネジ部材にはその軸線と直交する方向に挿通孔が形成されていることを特徴とする。
【0009】
ネジ部材の一部分に略平行状の二つの平面を削成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、重錘の上方に導入された索体端部と前記重錘とがネジ部材を介して連結され、該ネジ部材は前記重錘上方に形成されるネジ孔に螺進退可能に螺嵌されているので、ネジ孔に螺嵌されるネジ部材を螺進退させるという簡易な操作で索体の張り具合の調整が行え、索体の調整に係る手数を簡略化できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ネジ部材はその上部及び下部に螺着された締付部材によって取付金具及び重錘に締結されているので、ネジ部材を締結する二個の締付部材を工具にて緩めるという簡易な操作を行うのみでネジ部材の螺進退を可能にできる。又、ネジ部材の螺進退操作によって索体が捩れるといった不都合も生じず極めて簡易に索体の張り具合の調整が行える。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、ネジ部材にはその軸線と直交する方向に挿通孔が形成されるので、例えば、挿通孔に六角棒スパナ(L形レンチ)等の工具を挿通することで簡易にネジ部材を螺進退操作することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、ネジ部材の一部分に略平行状の二つの平面が削成されるので、スパナ等の工具を用いて簡易にネジ部材を螺進退操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ベルトの張り具合の調整作業を一人の作業者によって簡易に行える筋力訓練装置を提供するという目的を、索体を介して負荷機構部に配置される重錘と連結された可動部材を、運動者の肢体の少なくとも一部位で所定方向へ移動させることによって前記重錘を昇降させ所望の筋群を鍛える筋力訓練装置において、前記重錘の上方に導入された前記索体端部と前記重錘とをネジ部材を介して連結し、該ネジ部材を重錘上方に形成されるネジ孔に螺進退可能に螺嵌し、前記ネジ部材を前記ネジ孔に対して螺進退操作することにより索体の張り具合を調整する構成により実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例1を図1乃至5を参照して説明する。図1は筋力訓練装置1の斜視図、図2は筋力訓練装置1の平面図、図3は筋力訓練装置1の正面図、図4は索体32と重錘6の連結部の構成を示す部分斜視図、図5は索体32と重錘6の連結部の構成を示す部分断面図である。
【0016】
実施例1に係る筋力訓練装置1は、大腿四頭筋、大臀筋等の下肢筋群を鍛えるレッグプレスと呼称される装置である。図1に示すように筋力訓練装置1は、基フレーム部2と、基フレーム部2の一方側(前側)に取着され被訓練者が足裏を押し当てる足押し板3と、基フレーム部2の他方側(後側)から一方側方向へ延在して設けられる座席支持フレーム部4に支持され被訓練者が着座する座席部5(可動部材)と、基フレーム部2の一側方に連結され重錘6群を上下昇降可能に支持する重錘支持フレーム7を有する負荷機構部8とを主たる構成要素としている。
【0017】
基フレーム部2は、並列する二本の角パイプ状のフレーム10・10が該フレーム間に空隙を有するように連結材を介在して連結構成される。各フレーム10は水平部10aと、水平部10a一方側において斜め上方に湾曲形成される湾曲部10bと、水平部10a他方側において上方に起曲形成される起曲部10cとから形成されている。
【0018】
水平部10a中途位置から起立部10c上方にかけて座席部5を前後方向に滑動自在に支持する座席支持フレーム部4が設けられる。図1、図2及び図3に示すように、座席支持フレーム部4は水平部10aの前側寄り位置であって両フレーム10の外側に立設される二本の支柱11と両起立部10cによって支持される。
【0019】
座席支持フレーム部4は支柱11間に水平に架け渡される前フレーム部19(図3参照)と、両起立部10c上端面に水平部10aと直交する方向に水平に延在する後フレーム部20と、前・後フレーム部19・20間であって後フレーム部20の両端位置から水平部10aと同方向に平行に延在する二本の棒状フレーム部21・21を有している。
【0020】
そして、棒状フレーム21・21内方において前・後フレーム部19・20間には座席部5を前後方向に滑動自在に支持する二本の棒状の支持体22・22が平行に設けられている。一方の支持体22の後フレーム部20寄り位置には座席部5の後方への滑動を規制するストッパー26が取着されている(図2参照)。
【0021】
座席部5は座面取付フレーム12に座面部材13が取着される座部14と、背凭れ取付フレーム18に背凭れ部材15が取着される背凭れ部16とから構成される。座席部5は座面取付フレーム12下方に固着され内部にベアリングを有するリニアハウジング23を介して支持体22上を前後方向に滑動自在となされている。
【0022】
背凭れ部16の背面には、ロッド部17a一端が座面取付フレーム12から斜め下後方に延出するブラケット24に軸着されるとともにシリンダ部17b一端が背凭れ取付フレーム18に軸着されるガススプリング17が介装されており、ガススプリング17を伸縮動作させることによって座部14に対する背凭れ部16の角度を調整可能にしている。
【0023】
背凭れ取付フレーム18下方の左右側位置には訓練時等に被訓練者が把持するグリップ25・25が固着されている。
【0024】
両フレーム10の湾曲部10b端部には被訓練者が足裏を押し当てる足押し板3が斜め前方向に傾斜して軸着されている。足裏の押し当て面の背面側には、一端が湾曲部10bに軸着されるロッド部27aと一端が足押し板3背面に軸着されるピストン部27bを有するガススプリング27が介装されており、ガススプリング27のロッド部27aを伸縮動作させることによって湾曲部10bに対する足押し板3の角度を調整可能としている。
【0025】
被訓練者が筋力訓練装置1へ容易に乗降できるように、足押し板3と座席部5との間には空間が設けられており、座席支持フレーム部4前方の水平部10a上面には被訓練者が座席部5への移乗時に踏み込み可能な踏み込み部28が設けられている。踏み込み部28は水平部10a上に被覆される踏板29であり、踏板29の左右側は水平部10a側方に張り出している。尚、図1中、9は、筋力訓練装置1を床面に載置する設置脚9である。
【0026】
次に、被訓練者へ負荷を与える負荷機構部8について説明する。負荷機構部
8は、基フレーム部2の一側方において、フレーム10の水平部10aの略中央位置から水平延出する連結フレーム30、一方支柱11の上部及び一方棒状フレーム部21の中途位置からそれぞれ水平延出する連結パイプ55・55を介して基フレーム部2及び座席支持フレーム部4と連結される略口字状の重錘支持フレーム7と、重錘支持フレーム7に重層載置されるとともに重錘支持フレーム7内に立設される二本のガイドロッド31・31に沿って昇降自在とされる重錘6群とを主たる構成要素としている。
【0027】
図4及び図5に示すように、最上部の重錘6上方には被訓練者への重錘による負荷を調節する重錘調節部35が設けられている。重錘調節部35はコ字形状の部材36と、部材36上面に固着される円筒状部材37と、一端が円筒状部材37内部に螺着され重錘6群の中央部を貫通する重錘調節芯棒38とを有している。各重錘6短辺方向には透孔39が形成され、該透孔39に対応する重錘調節芯棒38の各位置にも孔が形成されている。透孔39に調節ピン40を挿通することにより、調節ピン40が挿通される重錘6の質量とその上方に載置される重錘6の質量との合計質量が負荷質量として設定される。
【0028】
座席部5と重錘調節部35とはベルト或いはワイヤーからなる索体32と連結されている。索体32は、一端部が座面取付フレーム12下面に延出固着される略L字形状のブラケット33(図1参照)に止着され、中途位置がフレーム10及び重錘支持フレーム7に固着される複数個の滑車34に沿わされ、他端部が後述する索体調整機構41を介して重錘調節部35と連結されている。
【0029】
次に、図4及び図5を用いて、索体32の張り具合を調整する索体調整機構41の構成について説明する。索体32他端部は、略コ字形状の取付金具42の両側面部42aに亘って架け渡される索体固定ピン43に巻張され、曲折した索体32端部は二枚の平板状の索体固定具44で挟み込まれて固定される。
【0030】
取付金具42の底面部42bには重錘調節部35方向に延出するようにネジ部材45(調整ボルト46)が設けられており、ネジ部材45は締付部材47(ナット48)にて取付金具42に締結されている。ネジ部材45の下部は重錘調節部35の円筒状部材37上面から軸心線方向に刻設されるネジ孔49に螺進退可能に螺嵌されている。
【0031】
ネジ部材45と円筒状部材37とは二枚の座金50を介して締付部材51(ナット52)にて締結されている。ネジ部材45の上部寄り位置にネジ部材45の軸線と直交する方向に挿通孔53が形成され、挿通孔53はネジ部材45を螺進退操作する際に六角棒スパナ等の工具を挿通する為の孔である。
【0032】
次に、筋力訓練装置1の使用方法について説明する。被訓練者は筋力訓練装置1の左右側方のいずれか一方側から踏板29上に搭乗し座席部5へ着座する。ガススプリング17を適宜伸縮操作し被訓練者に最適な背凭れ部16の角度に設定する。又、ガススプリング27を適宜伸縮操作し被訓練者に最適な足押し板3の角度に設定する。尚、詳細な説明は省略するが筋力訓練装置1には被訓練者が座席部5へ着座し足押し板3に足裏を押し当てた際に下肢が好適な屈曲状態となるように、座席部5の初期位置を調整する位置調整機構が備えられており、この位置調整機構を操作することで座席部5の初期位置が変更可能である。
【0033】
索体32の張り具合が適正でない場合は、索体調整機構41を操作し索体32の張り具合を調整すればよい。まず、ネジ部材45の上下部をそれぞれ締結している締付部材47・51を工具にて緩める。ネジ部材45に形成される挿通孔53に六角棒スパナ等の工具を挿通し、ネジ部材45をネジ孔49に対して所望の方向へ螺進退操作する。
【0034】
ネジ部材45を重錘調節部35方向へ操作すれば索体32を張ることができ、逆にネジ部材45を索体32方向へ操作すれば索体32の張りを緩和することができる。ネジ部材45を適宜な方向へ螺進退させた後、二個の締付部材47・51を工具にて締め付け、ネジ部材45を取付金具42及び円筒状部材37に対して締結する。
【0035】
被訓練者の能力に応じた負荷重量を決定し、該当する重錘6の透孔39に調節ピン40を挿入する。被訓練者は、グリップ25・25を把持し足裏で足押し板3を押圧し、座席部5を後方向に滑動させる。この滑動によって索体32を介して重錘6がガイドロッド31・31に沿って上昇し、被訓練者に負荷を与える。座席部5の後方向への滑動は被訓練者の膝関節が伸展する位置又は、関節可動域の限界位置にて停止する。
【0036】
足押し板3の押圧動作を止めると、重錘6が下降するとともに座席部5が前方向へ滑動する。座席部5の前後方向への滑動を所定回数繰り返すことで、大腿四頭筋、大臀筋等の下肢筋群の訓練が行える。
【0037】
上述した筋力訓練装置1の索体調節機構41を利用すれば、ネジ孔49に螺嵌されるネジ部材45を螺進退させるという簡易な操作で索体32の張り具合の調整が行え、本発明は索体32の調整を一人で簡易に行えるという優れた効果を奏する。
【実施例2】
【0038】
図6に実施例2に係るネジ部材45の断面図を示す。実施例2は、実施例1のネジ部材45に形成される挿通孔53の替わりに、ネジ部材45の一部分に略平行状の二つの平面54・54を削成し、スパナ等の工具を用いて簡易にネジ部材45の螺進退操作を行えるようにしたものである。
【0039】
上述の実施例1及び実施例2では筋力訓練装置1をレッグプレスとした実施態様を説明したが、本発明はこの実施態様に限定されるものではなく、例えば、基フレームに鉛直方向に回転可能に軸着された操作アーム(可動部材)を手で把持し、該操作アームを所定方向に回転移動させ広背筋、菱形筋、脊柱起立筋等の筋群を訓練する既知の重錘負荷式の筋力訓練装置(ローイング)等にも適用できるものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、負荷機構部に配置される重錘を上下方向に昇降させ所望の筋群を鍛える筋力訓練装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1に係る筋力訓練装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る筋力訓練装置を示す平面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る筋力訓練装置を示す正面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る索体と重錘の連結部の構成を示す部分斜視図である。
【図5】本発明の実施例1に係る索体と重錘の連結部の構成を示す部分断面図である。
【図6】本発明の実施例2に係るネジ部材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 筋力訓練装置
6 重錘
42 取付金具
45 ネジ部材
47 締付部材
49 ネジ孔
51 締付部材
53 挿通孔
54 平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
索体を介して負荷機構部に配置される重錘と連結された可動部材を、被訓練者の肢体の少なくとも一部位で所定方向へ移動させることによって前記重錘を昇降させ所望の筋群を鍛える筋力訓練装置であって、前記重錘の上方に導入された前記索体端部と前記重錘とをネジ部材を介して連結し、該ネジ部材は重錘上方に形成されるネジ孔に螺進退可能に螺嵌されており、前記ネジ部材を前記ネジ孔に対して螺進退操作することにより索体の張り具合を調整することを特徴とする筋力訓練装置。
【請求項2】
ネジ部材の上部及び下部にそれぞれ螺着された締付部材により前記ネジ部材が索体端部の取付金具及び重錘に締結されており、前記両締付部材を緩めることで前記ネジ部材が螺進退可能となることを特徴とする請求項1記載の筋力訓練装置。
【請求項3】
ネジ部材にはその軸線と直交する方向に挿通孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の筋力訓練装置。
【請求項4】
ネジ部材の一部分に略平行状の二つの平面を削成したことを特徴とする請求項1又は2記載の筋力訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−44425(P2007−44425A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234629(P2005−234629)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)