説明

筋肉由来前駆体組成物を利用する骨の増大およびその処理

本発明は、体組織の中への移植の後で長期生存を示し、非軟部組織(たとえば骨)の部位の中への(たとえば注射、移植、または移入を介する)導入の後で非軟部組織を増大させることができる筋肉由来前駆細胞を提供する。筋肉由来前駆細胞を単離する方法、および遺伝子移入療法のための細胞を遺伝子改変する方法もまた提供される。本発明は、骨粗鬆症、パジェット病、骨形成不全症、骨折、骨軟化症、骨梁の強度の減少、骨皮質強度の減少、および老齢に伴う骨密度の減少を含む、様々な機能的状態の治療において、ヒトを含む哺乳動物の骨組織の増大および増量のために、筋肉由来前駆細胞を含む組成物を使用する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権益
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって与えられた助成番号DK055387下の政府の支援を受けて成された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、筋肉由来前駆細胞(MDC)、およびMDCの組成物、および体組織、特に骨の増大におけるその使用に関する。特に、本発明は、骨の中への導入の後で長期生存を示す筋肉由来前駆細胞、MDCを単離する方法、およびヒトまたは動物の骨の増大のためにMDC含有組成物を使用する方法に関する。本発明はまた、骨粗鬆症、パジェット病、骨形成不全症、骨折、骨軟化症、骨梁の強度の減少、骨皮質強度の減少、および老齢に伴う骨密度の減少などの美容的または機能的状態の治療のための筋肉由来前駆細胞の新規な使用に関する。本発明はまた、平均を超える骨量を必要とする運動選手または他の生物における骨量の増加のための、MDCの新規な使用に関する。
【背景技術】
【0003】
筋芽細胞という筋繊維の前駆体は、融合して有糸分裂後多核筋管を形成する単核筋細胞であり、これらは、生理活性タンパク質の長期発現および送達をもたらすことができる(T.A.PartridgeおよびK.E.Davies、1995年、Brit.Med.Bulletin 51:123 137頁;J.Dhawanら、1992年、Science 254: 1509 12頁;A.D.Grinnell、1994年、Myology Ed 2、A.G.EngelおよびC.F.Armstrong、McGraw−Hill, Inc.、303 304頁;S.JiaoおよびJ.A.Wolff、1992年、Brain Research 575:143 7頁;H.Vandenburgh、1996年、Human Gene Therapy 7:2195 2200頁)。
【0004】
培養筋芽細胞は、幹細胞の自己再生特性のうちのいくつかを示す細胞の亜集団を含有する(A.Baroffioら、1996年、Differentiation 60:47 57頁)。そのような細胞は、別々に培養されない限り、融合して筋管を形成せず、分裂しない(A.Baroffioら、前掲)。筋芽細胞移植の研究(下記を参照されたい)は、大多数の移植細胞が、速く死滅するが、少数は、生存し、新しい筋肉形成を媒介することを示した(J.R.Beuchampら、1999年、J.Cell Biol.144:1113 1122頁)。この少数の細胞は、組織培養における低増殖および移植の後での急増殖を含む特有な挙動を示し、これらの細胞が、筋芽幹細胞に相当する可能性があることを示唆する(J.R.Beuchampら、前掲)。
【0005】
筋芽細胞は、様々な筋肉関連障害および非筋肉関連障害の治療における遺伝子療法のために媒体として使用されてきた。たとえば、遺伝子改変筋芽細胞または非遺伝子改変筋芽細胞の移植は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療のために使用されてきた(E.Gussoniら、1992年、Nature, 356:435 8頁;J.Huardら、1992年、Muscle & Nerve, 15:550 60頁;G.Karpatiら、1993年、Ann.Neurol., 34:8 17頁;J.P.Tremblayら、1993年、Cell Transplantation, 2:99 112頁;P.A.Moissetら、1998年、Biochem.Biophys.Res.Commun.247:94 9頁;P.A.Moissetら、1998年、Gene Ther.5:1340 46頁)。さらに、筋芽細胞は、1型糖尿病の治療のためのプロインスリン(L.Grosら、1999年、Hum.Gen.Ther.10:1207 17頁);血友病Bの治療のための第IX因子(M.Romanら、1992年、Somat.Cell.Mol.Genet.18:247 58頁;S.N.Yaoら、1994年、Gen.Ther, 1:99 107頁;J.M.Wangら、1997年、Blood 90:1075 82頁;G.Hortelanoら、1999年、Hum.Gene Ther.10:1281 8頁);アデノシンデアミナーゼ欠損症候群の治療のためのアデノシンデアミナーゼ(C.M.Lynchら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 89:1138 42頁);慢性貧血の治療のためのエリスロポエチン(E.Regulierら、1998年、Gene Ther.5:1014 22頁;B.Dalleら、1999年、Gene Ther.6:157 61頁)、および成長遅延の治療のためのヒト成長ホルモン(K.Anwerら、1998年、Hum.Gen.Ther.9:659 70頁)を産生するように遺伝子操作されてきた。
【0006】
筋芽細胞はまた、Lawらに対する特許文献1、Blauらに対する特許文献2、およびChancellorらによって1999年4月30日に提出された米国特許出願第09/302,896号において開示されるように、筋組織損傷または筋組織疾患を治療するためにも使用されてきた。さらに、筋芽細胞移植は、心筋機能不全の回復のために用いられてきた(C.E.Murryら、1996年、J.Clin.Invest, 98:2512 23頁;B.Z.Atkinsら、1999年、Ann.Thorac.Surg.67:124 129頁;B.Z.Atkinsら、1999年、J.Heart Lung Transplant.18;1173 80頁)。
【0007】
上記にもかかわらず、ほとんどの場合において、最初の筋芽細胞由来の治療は、移動および/または食作用による、移植の後での、細胞の低生存率と関連してきた。この問題を回避するために、Atalaに対する特許文献3は、アルギン酸などの液状ポリマー中に懸濁された筋芽細胞の使用を開示する。このポリマー溶液は、注射の後に筋芽細胞が移動するおよび/または食作用を受けるのを予防するためのマトリックスとして作用する。しかしながら、このポリマー溶液は、上記に論じられるバイオポリマーと同じ問題を起こす。さらに、Atala特許は、筋組織のみにおける筋芽細胞の使用に限定され、他の組織における使用はない。
【0008】
したがって、持続性であり、広範囲の宿主組織と適合し、移入部位を取り囲む組織の最小限の炎症、瘢痕、および/または硬化しか引き起こさない、他の、異なる組織増大材料の必要性がある。したがって、本発明の筋肉由来前駆細胞(MDC)含有組成物は、骨を増大させるための、改善された、新規な材料として提供される。移植の後で長期生存を示す筋肉由来前駆細胞組成物を産生する方法ならびにたとえば、骨粗鬆症、パジェット病、骨形成不全症、骨折、骨軟化症、骨梁の強度の減少、骨皮質強度の減少、および老齢に伴う骨密度の減少を含む、様々な美的および/または機能的異常を治療するために、MDCおよびMDCを含有する組成物を利用する方法がさらに提供される。平均を超える骨量を必要とする運動選手または他の生物における骨量の増加のために、MDCおよびMDCを含有する組成物を使用する方法もまた提供される。
【0009】
筋芽細胞を非筋組織増大のために使用するための先の試みが成功しなかったことは、注目に値する(Atalaに対する特許文献3)。そのため、本明細書において開示される発見は、本発明による筋肉由来前駆細胞が、骨組織を含む非筋組織の中へうまく移植され、長期生存を示すことができることを示すので、予想外である。その結果として、MDCおよびMDCを含む組成物は、骨産生のための一般的な増大材料として使用することができる。そのうえ、本発明の筋肉由来前駆細胞および組成物は、自己の供給源に由来することができるので、それらは、増大材料の再吸収ならびに移入部位を取り囲む組織の炎症および/または瘢痕を含む、宿主における免疫学的合併症の危険性の低下をもたらす。
【0010】
間葉系幹細胞は、筋肉、骨、軟骨などを含む体の様々な結合組織において見つけることができるが(H.E.Youngら、1993年、In vitro Cell Dev.Biol.29A:723 736頁;H.E.Young,ら、1995年、Dev.Dynam.202:137 144頁)、間葉系といった用語は、筋肉からではなく、骨髄から精製された幹細胞の種類に言及するように歴史的に使用されてきた。したがって、間葉系幹細胞は、本発明の筋肉由来前駆細胞と区別される。そのうえ、間葉系細胞は、CD34細胞マーカーを発現せず(M.F.Pittengerら、1999年、Science 284:143 147頁)、これは、本明細書において記載される筋肉由来前駆細胞によって発現される。
【0011】
知られている組成物および方法と関連する不利益および問題の本明細書における記載は、本明細書に記載される実施形態の範囲をそれらの排除まで限定するようには決して意図されず、実際に、ある種の実施形態は、そのように注目される不利益または問題を被ることなく、1つまたは複数の知られている組成物、化合物、または方法を含んでいてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,130,141号明細書
【特許文献2】米国特許第5,538,722号明細書
【特許文献3】米国特許第5,667,778号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、移植の後で長期生存を示す新規な筋肉由来前駆細胞(MDC)およびMDC組成物を提供することを目的とする。本発明のMDCおよびMDCを含有する組成物は、初期前駆筋細胞、つまりデスミン、M−カドヘリン、MyoD、ミオゲニン、CD34、およびBcl−2などの前駆細胞マーカーを発現する筋肉由来幹細胞を含む。さらに、これらの初期前駆筋細胞は、Flk−1、Sca−1、MNF、およびc−metの細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kitの細胞マーカーを発現しない。
【0014】
本発明は、出発筋細胞集団から筋肉由来前駆細胞を単離し、かつ濃縮する方法を提供することを他の目的とする。これらの方法は、軟部組織の部位の中への移植または導入の後に長期生存性を有するMDCの濃縮をもたらす。本発明によるMDC集団は、デスミン、M−カドヘリン、MyoD、ミオゲニン、CD34、およびBcl−2などの前駆細胞マーカーを発現する細胞で特に濃縮される。このMDC集団はまた、Flk−1、Sca−1、MNF、およびc−metの細胞マーカーをも発現するが、CD45またはc−Kitの細胞マーカーを発現しない。
【0015】
本発明は、移植のためのポリマー担体または特殊な培地を必要とすることなく、骨を含む非筋組織の増大のために、MDCおよびMDCを含む組成物を使用する方法を提供することを他の目的とする。そのような方法は、骨の中への導入による、たとえば、組織の中へのもしくはその表面上への直接的な注射によるまたは組成物の全身性の分布によるMDC組成物の投与を含む。
【0016】
本発明は、裂隙、開口部、くぼみ、創傷などをもたらす傷害、負傷、外科手術、外傷、非外傷、または他の手術の後で、骨を増大させる方法を提供することを他の目的とする。
【0017】
本発明は、化学物質、増殖培地、および/または遺伝子操作の使用を通して改変されるMDCおよびMDCを含む組成物を提供することをさらなる目的とする。そのようなMDCおよびその組成物は、生物学的化合物の産生および送達ならびに様々な疾患、状態、傷害、または病気の治療のために有用な化学的改変細胞または遺伝子改変細胞を含む。
【0018】
本発明は、化学物質、増殖培地、および/または遺伝子操作の使用を通して改変されるMDCおよびMDCを含む組成物を提供することをさらなる目的とする。そのようなMDCおよびその組成物は、生物学的化合物の産生および送達ならびに様々な疾患、状態、傷害、または病気の治療のために有用な化学的改変細胞または遺伝子改変細胞を含む。
【0019】
MDCおよびMDCを含む組成物を含む医薬組成物を提供することを本発明の他の実施形態とする。これらの医薬組成物は、単離MDCを含む。これらのMDCは、次に、単離の後に細胞培養によって増やしてもよい。本実施形態の一態様において、これらのMDCは、医薬組成物を必要とする対象への送達に先立って凍結される。
【0020】
本発明はまた、組成物および単一平板培養技術を使用するMDCの単離を含む方法をも提供する。MDCは、骨格筋の生検材料から単離される。一実施形態において、生検材料からの骨格筋は、1〜6日間、保存してもよい。本実施形態の一態様において、生検材料からの骨格筋は、4℃で保存する。細胞を切り刻み、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、他の酵素、または酵素の組み合わせを使用して消化する。細胞から酵素を洗い流した後に、細胞は、約30から約120分間、培地中で、フラスコ中で培養する。この期間の間に、「速やかに接着する細胞」は、フラスコまたは容器の壁に固着するが、「徐々に接着する細胞」またはMDCは、浮遊したままである。「徐々に接着する細胞」は、第2のフラスコまたは容器に移し、1〜3日の期間の間、そこで培養する。この第2の期間の間に、「徐々に接着する細胞」またはMDCは、第2のフラスコまたは容器の壁に固着する。
【0021】
本発明の他の実施形態において、これらのMDCは、任意の数の細胞まで増やされる。本実施形態の好ましい態様において、細胞は、約10から20日の間、新しい培地中で増やされる。より好ましくは、細胞は、17日間増やされる。
【0022】
MDCは、増やされるまたは増やされないにかかわらず、輸送するために貯蔵してもよく、または使用の前の期間、保存してもよい。一実施形態において、MDCは、凍結される。好ましくは、MDCは、約−20から−90℃の間で、凍結される。より好ましくは、MDCは、約−80℃で凍結される。これらの凍結されたMDCは、医薬組成物として使用される。
【0023】
MDCは、医薬組成物として凍結されるもしくは貯蔵されるまたは新鮮な状態で使用されるにかかわらず、多くの骨変性疾患、骨変性異常、および骨変性病態を治療するために使用してもよい。これらの状態は、骨粗鬆症、パジェット病、骨形成不全症、骨折、骨軟化症、骨梁の強度の減少、骨皮質強度の減少、および老齢に伴う骨密度の減少を含む。MDCはまた、医薬組成物として凍結されるもしくは貯蔵されるまたは新鮮な状態で使用されるにかかわらず、平均を超える骨量を必要とする運動選手または他の生物における骨量の増加のために使用してもよい。
【0024】
さらに、本発明は、その必要のある哺乳動物対象において、骨の疾患、異常、もしくは病態を治療し、または骨量もしくは骨密度を増大させる方法を提供する。その方法は、哺乳動物から骨格筋細胞を単離するステップと、10℃よりも低い温度まで細胞を冷却し、細胞を1〜7日間保存するステップと、30〜120分間、第1の細胞培養容器中で哺乳動物骨格筋細胞を懸濁するステップと、第1の細胞培養容器から第2の細胞培養容器に培地をデカントするステップと、培地中の残存細胞を、第2の細胞培養容器の壁に付着させるステップ、第2の細胞培養容器の壁から、筋肉由来前駆細胞(MDC)である細胞を単離するステップと、細胞を培養してその数を拡大するステップと、−30℃未満の温度までMDCを凍結するステップと、MDCを解凍し、哺乳動物対象の骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨にMDCを投与するステップとを含み、それによって、その必要のある哺乳動物対象において、骨の異常、骨疾患、または骨病態を治療する。
【0025】
本発明はまた、その必要のある哺乳動物対象において、骨の疾患、異常、または病態と関連する少なくとも1つの症状を改善する方法をも提供する。その方法は、哺乳動物から骨格筋細胞を単離するステップと、30〜120分間、第1の細胞培養容器中で哺乳動物骨格筋細胞を懸濁するステップと、第1の細胞培養容器から第2の細胞培養容器に培地をデカントするステップと、培地中の残存細胞を、第2の細胞培養容器の壁に付着させるステップと、第2の細胞培養容器の壁から、MDCである細胞を単離するステップと、哺乳動物対象の骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨にMDCを投与するステップとを含み、それによって、その必要のある哺乳動物対象において、骨の疾患、異常、または病態と関連する少なくとも1つの症状を改善する。
【0026】
本発明はまた、その必要のある哺乳動物対象において、骨の異常、疾患、もしくは病態を治療し、または骨の疾患、異常、もしくは病態と関連する少なくとも1つの症状を改善する方法をも提供する。その方法は、骨格筋細胞懸濁液の線維芽細胞が接着する第1の容器中で、ヒト骨格筋組織の骨格筋細胞の懸濁液を平板培養するステップと、15〜20%の細胞が第1の容器に接着した後に行う第2の容器中でステップ(a)の非接着細胞を再度平板培養するステップと、(c)ステップ(b)を少なくとも1回繰り返すステップと、(d)骨格筋由来MDCを単離し、哺乳動物対象の骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨にMDCを投与するステップとを含み、それによって、その必要のある哺乳動物対象において尿路疾患を治療する。
【0027】
本発明はまた、その必要のある哺乳動物対象において骨の異常、疾患、または病態を治療する方法をも提供する。その方法は、哺乳動物対象の骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨に、筋肉由来細胞(MDC)を含有する細胞集団を投与するステップを含む。MDCを含有する細胞集団は、第1の細胞培養容器中で、哺乳動物骨格筋から単離された細胞を、第1の細胞集団を容器に接着させ、第2の細胞集団を非接着の状態で容器中の培地中に残すのに十分な期間懸濁するステップと、第1の細胞培養容器から第2の細胞培養容器に培地および第2の細胞集団を移すステップと、第2の細胞集団の細胞を第2の細胞培養容器に付着させるステップと、第2の細胞培養容器に付着した細胞を単離して、MDCを含有する前記細胞集団を得るステップとを含む工程によって得られる。
【0028】
本発明によって与えられる、さらなる目的および利点は、下記の詳細な説明および例示から明らかとなる。
【0029】
特許書類または特許出願書類は、カラーで仕上げられた少なくとも1枚の写真の複写を含む。カラーの写真の(1枚または複数枚の)複写を有するこの特許または特許出願のコピーは、申請および必要な料金の支払いに際して、米国特許商標庁によって規定されるであろう。
【0030】
添付される図面の図は、本発明をさらに説明するためにおよびその様々な態様の説明を通してその理解を助けるために提示される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1−1】図1A〜1Iは、マウス筋細胞およびマウス血管内皮細胞中での、デスミン染色とのCD34染色またはBcl−2染色の細胞内共存を示す図である。図1Aは、抗CD34抗体を用いて染色され、蛍光顕微鏡によって視覚化された正常マウス筋細胞(矢印を参照されたい)および血管内皮細胞(矢じりを参照されたい)を示す。図1Bは、デスミンおよびコラーゲンIV型抗体を用いて共染色された同じ細胞を示す。図1Cは、核を示すためにヘキストを用いて共染色された同じ細胞を示す。図1Dは、CD34、デスミン、コラーゲンIV型、およびヘキストについて共染色された細胞の複合物を示す。図1Eは、抗Bcl−2抗体を用いて染色され、蛍光顕微鏡によって視覚化された正常マウス筋細胞(矢印を参照されたい)を示す。図1Fは、デスミンおよびコラーゲンIV型抗体を用いて共染色された同じ細胞を示す。図1Gは、核を示すためにヘキストを用いて共染色された同じ細胞を示す。図1Hは、CD34、デスミン、コラーゲンIV型、およびヘキストについて共染色された細胞の複合物を示す。図1Iは、抗M−カドヘリン抗体を用いて染色された衛星細胞を示す(矢印を参照されたい)。細胞は、40×倍率で観察された。図1A〜1Dは、CD34およびデスミンの共存を実証するが、図1E〜1Hは、Bcl−2およびデスミンの共存を実証する。
【図1−2】図1A〜1Iは、マウス筋細胞およびマウス血管内皮細胞中での、デスミン染色とのCD34染色またはBcl−2染色の細胞内共存を示す図である。図1Aは、抗CD34抗体を用いて染色され、蛍光顕微鏡によって視覚化された正常マウス筋細胞(矢印を参照されたい)および血管内皮細胞(矢じりを参照されたい)を示す。図1Bは、デスミンおよびコラーゲンIV型抗体を用いて共染色された同じ細胞を示す。図1Cは、核を示すためにヘキストを用いて共染色された同じ細胞を示す。図1Dは、CD34、デスミン、コラーゲンIV型、およびヘキストについて共染色された細胞の複合物を示す。図1Eは、抗Bcl−2抗体を用いて染色され、蛍光顕微鏡によって視覚化された正常マウス筋細胞(矢印を参照されたい)を示す。図1Fは、デスミンおよびコラーゲンIV型抗体を用いて共染色された同じ細胞を示す。図1Gは、核を示すためにヘキストを用いて共染色された同じ細胞を示す。図1Hは、CD34、デスミン、コラーゲンIV型、およびヘキストについて共染色された細胞の複合物を示す。図1Iは、抗M−カドヘリン抗体を用いて染色された衛星細胞を示す(矢印を参照されたい)。細胞は、40×倍率で観察された。図1A〜1Dは、CD34およびデスミンの共存を実証するが、図1E〜1Hは、Bcl−2およびデスミンの共存を実証する。
【図2】図2A〜2Eは、rhBMP−2へのmc13細胞の曝露に起因する、形態学的変化およびオステオカルシンの発現を示す図である。mc13細胞は、6日間、rhBMP−2を有するまたは有していない増殖培地中でインキュベートされた。図2Aは、rhBMP−2の不在下において>50%の細胞培養密度まで増殖させた細胞を示す。図2Bは、200ng/ml rhBMP−2の存在下において>50%の細胞培養密度まで増殖させた細胞を示す。図2Cは、rhBMP−2の不在下において>90%の細胞培養密度まで増殖させた細胞を示す。図2Dは、200ng/ml rhBMP−2の存在下において>90%の培養密度まで増殖させた細胞を示す。図2Eは、オステオカルシン発現(骨芽細胞細胞マーカー;矢印を参照されたい)について染色された細胞を示す。細胞は、10×倍率で観察された。図2A〜2Eは、mc13細胞が、rhBMP−2への曝露に際して骨芽細胞に分化することができることを実証する。
【図3−1】図3A〜3Dは、rhBMP−2処理に応じてデスミンおよびアルカリホスファターゼを発現するmc13細胞の百分率に対する効果を示す図である。図3Aは、新しく単離されたmc13クローンのデスミン染色を示す。図3Bは、同じ細胞の位相差顕微鏡観察を示す。図3Cは、200ng/ml rhBMP−2を有するまたは有していない増殖培地中での6日間のインキュベーションの後での、mc13細胞中のデスミン染色のレベルを示す。図3Dは、200ng/ml rhBMP−2を有するまたは有していない増殖培地中での6日間のインキュベーションの後での、PP1 4細胞およびmc13細胞のアルカリリン酸染色のレベルを示す。*は、統計的に有意な結果を示す(スチューデントのt検定)。図3Cは、rhBMP−2の存在下においてデスミンを発現するmc13細胞の数が減少することを実証するが、図3Dは、rhBMP−2の存在下においてアルカリホスファターゼを発現するmc13細胞の数が増加することを実証し、rhBMP−2の存在下において、細胞の筋原性の特徴を減少させ、骨原性の特徴を増加させることを示唆する。
【図3−2】図3A〜3Dは、rhBMP−2処理に応じてデスミンおよびアルカリホスファターゼを発現するmc13細胞の百分率に対する効果を示す図である。図3Aは、新しく単離されたmc13クローンのデスミン染色を示す。図3Bは、同じ細胞の位相差顕微鏡観察を示す。図3Cは、200ng/ml rhBMP−2を有するまたは有していない増殖培地中での6日間のインキュベーションの後での、mc13細胞中のデスミン染色のレベルを示す。図3Dは、200ng/ml rhBMP−2を有するまたは有していない増殖培地中での6日間のインキュベーションの後での、PP1 4細胞およびmc13細胞のアルカリリン酸染色のレベルを示す。*は、統計的に有意な結果を示す(スチューデントのt検定)。図3Cは、rhBMP−2の存在下においてデスミンを発現するmc13細胞の数が減少することを実証するが、図3Dは、rhBMP−2の存在下においてアルカリホスファターゼを発現するmc13細胞の数が増加することを実証し、rhBMP−2の存在下において、細胞の筋原性の特徴を減少させ、骨原性の特徴を増加させることを示唆する。
【図4】図4A〜4Gは、筋原性系統および骨原性系統へのmc13細胞のin vivo分化を示す図である。mc13細胞は、LacZおよびジストロフィン遺伝子を含有する構築物を用いて安定して形質移入され、筋肉内注射または静脈内注射によってmdxマウスの後肢に導入された。15日後に、動物は、屠殺し、後肢筋系は、組織学的検査のために切り離された。図4Aは、LacZについて染色された筋肉内注射部位のmc13細胞を示す。図4Bは、ジストロフィンについて共染色された同じ細胞を示す。図4Cは、LacZについて染色された静脈内注射の領域におけるmc13細胞を示す。図4Dは、ジストロフィンについて共染色された同じ細胞を示す。個別の実験において、mc13細胞は、adBMP−2を用いて形質導入され、0.5 1.0×10細胞は、SCIDマウスの後肢に注射された。14日後に、動物は屠殺し、後肢筋組織は、分析された。図4Eは、骨形成を決定するための、後肢の放射線分析を示す。図4Fは、LacZについて染色された後肢に由来する細胞を示す。図4Gは、ジストロフィンについて染色された細胞を示す。図4A〜4Dは、mc13細胞が、筋肉内送達または静脈内送達を介してジストロフィン発現を取り戻すことができることを実証する。図4A〜4Gは、mc13細胞が、異所性骨形成に関連することを実証する。細胞は、以下の倍率で観察された:40×(図4A〜4D);10×(図4A〜4G)。
【図5】図5A〜5Eは、rhBMP−2産生初代筋細胞による骨治癒の増強を示す図である。5mmの頭蓋異常は、歯科用バーを使用して、雌SCIDマウスにおいて作り出され、異常部は、adBMP−2を有するまたは有していないmc13細胞が接種されたコラーゲンスポンジを用いて埋められた。動物は、14日目に屠殺し、視察され、骨治癒の徴候について顕微鏡で分析された。図5Aは、adBMP−2を有していないmc13細胞を用いて治療された頭蓋を示す。図5Bは、adBMP−2を用いて形質導入されたmc13細胞を用いて治療された頭蓋を示す。図5Cは、フォン コッサ染色によって分析された、adBMP−2を有していないmc13細胞を用いて治療された頭蓋の組織学的サンプルを示す。図5Dは、フォン コッサ染色によって分析された、adBMP−2を用いて形質導入されたmc13細胞を用いて治療された頭蓋の組織学的サンプルを示す。図5Eは、注射された細胞(矢印によって示される緑色蛍光)を同定するためにY染色体特異的プローブとのハイブリダイゼーションによって分析され、核(赤色蛍光によって示される)を同定するために臭化エチジウムを用いて染色された、adBMP−2を用いて形質導入されたmc13細胞を用いて治療された頭蓋の組織学的サンプルを示す。図5A〜5Eは、rhBMP−2を発現するmc13細胞が、骨異常の治癒に寄与し得ることを実証する。
【図6】図6Aおよび6Bは、OSM中の、ヒト男性MDCおよびヒト女性MDCを含む骨原性ペレット中で長い間にわたって増加する骨容量(図6A)および骨密度(図6B)を示す棒グラフである。7日目に対して*P<0.05、14日目に対して#P<0.05、および21日目に対して+P<0.05。
【図7】図7Aおよび7Bは、OSM中でペレットとして培養されたhMDCのオステオカルシン(Ocn)(図7A)およびコラーゲンI型(ColI)(図7B)の遺伝子発現を示す棒グラフである。0日目に対して*P<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、ヒトMDCならびに損傷した骨を回復させるためにまたは骨容量および/もしくは骨密度を野生型レベル以上まで増加させるために、骨組織を生成するようにそのような細胞を使用する方法を提供する。本発明は、失調症、骨粗鬆症、パジェット病、骨形成不全症、骨折、骨軟化症、骨梁の強度の減少、骨皮質強度の減少、および老齢に伴う骨密度の減少を含む骨障害を治療する方法をさらに提供する。成人組織からのヒト筋肉由来細胞(MDC)の単離により、これらの細胞を投与されたヒト対象内の骨密度および骨容量の増加を達成することができる。
【0033】
筋肉由来細胞および組成物
本発明は、体組織、好ましくは骨への移植の後で長期生存率を示す初期前駆細胞(本明細書において、筋肉由来前駆細胞または筋肉由来幹細胞とも称される)からなるMDCを提供する。本発明のMDCを得るために、筋肉外植片、好ましくは骨格筋は、動物ドナーから、好ましくは、ヒトを含む哺乳動物から得られる。この外植片は、筋肉前駆体細胞の「遺残」を含む、構造的および機能的シンシチウムとして役割を果たす(T.A.Partridgeら、1978年、Nature 73:306 8頁;B.H.Liptonら、1979年、Science 205:12924頁)。
【0034】
初代筋組織から単離される細胞は、線維芽細胞、筋芽細胞、脂肪細胞、造血前駆細胞、および筋肉由来前駆細胞の混合物を含有する。筋肉由来集団の前駆細胞は、Chancellorらの米国特許第6,866,842号に記載されるものなど、コラーゲンコーティング組織フラスコ上で、初代筋細胞の特異な接着性の特徴を使用して濃縮することができる。接着するのが遅い細胞は、形態学的に球形の傾向があり、高レベルのデスミンを発現し、融合し、多核筋管に分化するための能力を有する。Chancellorらの米国特許第6,866,842号)。これらの細胞の亜集団は、レベルが増加したアルカリホスファターゼ、副甲状腺ホルモン依存性3’,5’−cAMP、ならびに骨原性系統および筋原性系統を発現することによって、in vitroにおいて、組み換えヒト骨形態形成タンパク質2(rhBMP−2)に応答することが示された(Chancellorらの米国特許第6,866,842号;T.Katagiriら、1994年、J.Cell Biol., 127:1755 1766頁)。
【0035】
本発明の一実施形態において、前平板培養手順は、徐々に接着する細胞(MDC)から速やかに接着する細胞を識別するために使用してもよい。本発明に従って、速やかに接着するMDC(PP1−4)の集団および徐々に接着する、球形のMDC(PP6)は、単離され、骨格筋外植片から濃縮し、徐々に接着する細胞の中の多能性細胞の存在を決定するために、免疫組織化学的検査を使用して、様々なマーカーの発現について試験された(実施例1;Chancellorらの米国特許出願第09/302,896号)。本明細書における表2および実施例3において示されるように、PP6細胞は、デスミン、MyoD、およびミオゲニンを含む筋原性のマーカーを発現した。PP6細胞はまた、c−metおよびMNF、筋形成の初期段階で発現される2つの遺伝子をも発現した(J.B.Millerら、1999年、Curr.Top.Dev.Biol.43:191 219頁;表3を参照されたい)。PP6は、M−カドヘリン、衛星細胞特異的マーカーを発現する細胞のより低い百分率を示したが(A.Irintchevら、1994年、Development Dynamics 199:326 337頁)、Bcl−2、筋形成の初期段階の細胞に限られるマーカーを発現する細胞のより高い百分率を示した(J.A.Dominovら、1998年、J.Cell Biol.142:537 544頁)。PP6細胞はまた、CD34、骨髄中のヒト造血前駆細胞およびヒト間質細胞前駆体で同定されるマーカーをも発現した(R.G.Andrewsら、1986年、Blood 67:842 845頁;C.I.Civinら、1984年、J.Immunol.133:157 165頁;L.Finaら、1990年、Blood 75:2417 2426頁;P.J.Simmonsら、1991年、Blood 78:2848 2853頁;表3を参照されたい)。PP6細胞はまた、Flk−1、幹細胞様の特徴を有する造血細胞のマーカーとして最近、同定された、ヒトKDR遺伝子のマウス相同体をも発現した(B.L.Zieglerら、1999年、Science 285:1553 1558頁;表3を参照されたい)。同様に、PP6細胞は、Sca−1、幹細胞様の特徴を有する造血細胞中に存在するマーカーを発現した(M.van de Rijnら、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4634 8頁;M.Osawaら、1996年、J.Immunol.156:3207 14頁;表3を参照されたい)。しかしながら、PP6細胞は、CD45またはc−Kitの造血幹細胞マーカーを発現しなかった(L K.Ashman、1999年、Int.J.Biochem.Cell.Biol.31:1037 51頁;G.A.Koretzky、1993年、FASEB J.7:420 426頁において考察される;表3を参照されたい)。
【0036】
本発明の一実施形態において、本明細書において記載される特徴を有する筋肉由来前駆細胞のPP6集団がある。これらの筋肉由来前駆細胞は、デスミン、CD34、およびBcl−2の細胞マーカーを発現する。本発明に従って、PP6細胞は、移植の後で長期生存性を有する筋肉由来前駆細胞の集団を得るために、本明細書において記載される技術によって単離される(実施例1)。PP6筋肉由来前駆細胞集団は、デスミン、CD34、およびBcl−2などの前駆細胞マーカーを発現する、有意な百分率の細胞を含む。さらに、PP6細胞は、Flk−1およびSca−1の細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kitのマーカーを発現しない。好ましくは、95%を超えるPP6細胞は、デスミン、Sca−1、およびFlk−1マーカーを発現するが、CD45またはc−Kitのマーカーを発現しない。PP6細胞は、最後の平板培養の後の約1日または約24時間以内に利用されることが好ましい。
【0037】
好ましい実施形態において、速やかに接着する細胞および徐々に接着する細胞(MDC)は、単一平板培養技術を使用して互いに分離される。1つのそのような技術は、実施例2において記載される。第1に、細胞は、骨格筋生検材料から提供される。生検材料は、ただ、約100mgの細胞を含有する必要がある。約50mg〜約500mgのサイズの範囲の生検材料は、本発明の前平板培養方法および単一平板培養方法の両方によって使用される。50、100、110、120、130、140、150、200、250、300、400、および500mgのさらなる生検材料は、本発明の前平板培養方法および単一平板培養方法の両方によって使用される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、生検材料からの組織は、次いで、1〜7日間、保存される。この保存は、約室温〜約4℃の温度で行う。この待機期間は、生検骨格筋組織にストレスを受けさせる。このストレスは、この単一平板技術を使用する、MDCの単離に必要ではないが、待ち期間の使用は、MDCのより大きな収量をもたらすように思われる。
【0039】
好ましい実施形態によれば、生検材料からの組織は、切り刻み、遠心分離する。ペレットを再懸濁し、消化酵素を使用して消化する。使用してもよい酵素は、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、またはこれらの酵素の組み合わせを含む。消化の後に、酵素は、細胞から洗い流される。細胞は、速やかに接着する細胞の単離のために培地中に、フラスコに移される。多くの培地を使用してもよい。特に好ましい培地は、Cambrex内皮増殖培地を含む、内皮細胞の培養のために設計される培地を含む。この培地は、ウシ胎児血清、IGF−1、bFGF、VEGF、EGF、ヒドロコルチゾン、ヘパリン、および/またはアスコルビン酸を含む他の構成成分を補充してもよい。単一平板培養技術において使用してもよい他の培地は、InCell M310F培地を含む。この培地は、上記に記載されるように補充してもよく、または補充せずに使用してもよい。
【0040】
速やかに接着する細胞の単離のためのステップは、約30〜約120分の期間のフラスコ中での培養を必要とし得る。速やかに接着する細胞は、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120分で、フラスコに接着する。それらが接着した後に、徐々に接着する細胞は、速やかに接着する細胞が付着するフラスコから培地を取り出すことによって、速やかに接着する細胞から分離される。
【0041】
次いで、このフラスコから取り出された培地は、第2のフラスコに移される。細胞は、第2のフラスコに移される前に、遠心分離され、培地中に再懸濁してもよい。細胞は、1から3日の間、この第2のフラスコ中で培養される。好ましくは、細胞は、2日間、培養される。この期間の間に、徐々に接着する細胞(MDC)は、フラスコに接着する。MDCが接着した後に、培地は、取り出され、新しい培地は、MDCの数を増やすことができるように、追加される。MDCの数は、約10〜約20日間、それらを培養することによって、増やしてもよい。MDCの数は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間、それらを培養することによって増やしてもよい。好ましくは、MDCは、17日間、増大培養にかけられる。
【0042】
前平板培養方法および単一平板培養方法の代わりとして、本発明のMDCは、MDCによって発現される、1つまたは複数の細胞表面マーカーに対する標識抗体を使用して、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析によって単離することができる(C.Websterら、1988年、Exp.Cell.Res.174:252 65頁;J.R.Blantonら、1999年、Muscle Nerve 22:43 50頁)。たとえば、FACS分析は、宿主組織の中に導入された場合に、長期生存性を示すPP6様細胞の集団を選択するために、CD34、Flk−1、Sca−1、および/または本明細書において記載される他の細胞表面マーカーに特異的に結合する標識抗体を使用して実行することができる。異なる細胞マーカータンパク質の抗体検出のための1つまたは複数の蛍光検出ラベル、たとえばフルオレセインまたはローダミンの使用もまた本発明によって包含される。
【0043】
上記に記載されるMDC単離方法のいずれかを使用して、輸送されることになっているまたはある期間、使用されない予定であるMDCは、当技術分野において知られている方法を使用して貯蔵してもよい。より具体的に、単離MDCは、約−25〜約−90℃の範囲の温度で凍結してもよい。好ましくは、MDCは、使用の延期または輸送のためにドライアイス上で約−80℃で凍結される。凍結は、当技術分野において知られている任意の凍結保存培地を用いて行われてもよい。
【0044】
筋肉由来細胞ベースの治療
本発明の一実施形態において、MDCは、骨格筋供給源から単離され、対象とする筋肉もしくは非筋軟部組織部位または骨構造の中に導入または移植される。有利には、本発明のMDCは、単離され、移植の後で長期生存を示す多数の前駆細胞を含有するように濃縮される。さらに、本発明の筋肉由来前駆細胞は、デスミン、CD34、およびBcl−2などの多くの特徴的な細胞マーカーを発現する。さらに、本発明の筋肉由来前駆細胞は、Sca−1およびFlk−1の細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kitの細胞マーカーを発現しない(実施例1を参照されたい)。
【0045】
本発明のMDCおよびMDCを含む組成物は、骨の増大を通して、様々な美的または機能的状態(たとえば異常)を回復させる、治療する、または寛解させるために使用することができる。特に、そのような組成物は、骨障害の治療のために使用することができる。MDCの複数回のおよび連続的な投与もまた本発明によって包含される。
【0046】
MDCベースの治療については、骨格筋外植片は、自己または異種性のヒトまたは動物の供給源から好ましくは得られる。自己の動物またはヒトの供給源がより好ましい。次いで、本明細書において記載されるように、MDC組成物を調製および単離する。ヒトまたは動物のレシピエントに、本発明によるMDCおよび/またはMDCを含む組成物を導入または移植するために、単核筋細胞の懸濁液を調製する。そのような懸濁液は、生理学的に許容できる担体、賦形剤、または希釈剤中に、ある濃度の本発明の筋肉由来前駆細胞を含有する。たとえば、対象に投与するためのMDCの懸濁液は、ウシ胎児血清の代わりとして対象の血清を含有するように改変された完全培地の滅菌溶液中に10〜10細胞/mlを含むことができる。その代わりに、MDC懸濁液は、凍結保存溶液などの、血清なしの滅菌溶液中のものとすることができる(Celox Laboratories、St.Paul、Minn.)。次いで、MDC懸濁液は、たとえば注射を介して、ドナー組織の1つまたは複数の部位の中に導入することができる。
【0047】
記載される細胞は、生理学的に許容できる担体、賦形剤、または希釈剤を含有する薬学的にまたは生理学的に許容できる調製物または組成物として投与することができ、ヒトおよび非ヒト動物を含む対象とするレシピエント生物の組織に投与することができる。MDC含有組成物は、滅菌生理食塩水または他の生理学的に許容できる注射可能な水性液体などの適している液体または溶液中に細胞を再懸濁することによって調製することができる。そのような組成物中で使用される構成成分の量は、当業者らによってルーチン的に決定することができる。
【0048】
MDCまたはその組成物は、吸収性材料または接着性材料、つまりコラーゲンスポンジマトリックス上へのMDC懸濁液の配合および対象とする部位の中へのまたはその部位上へのMDC含有材料の挿入によって投与することができる。その代わりに、MDCは、皮下、静脈内、筋肉内、および胸骨内を含む、注射の非経口経路によって投与することができる。投与の他のモードは、鼻内、鞘内、皮内、腸内、経皮、および舌下を含むが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、MDCの投与は、内視鏡手術によって実現することができる。
【0049】
注射可能な投与については、組成物は、滅菌溶液または懸濁液中のものとし、薬学的におよび生理学的に許容できる水性媒体または油性媒体中に再懸濁することができ、これは、防腐剤、安定剤、および溶液または懸濁液をレシピエントの体液(つまり血液)と等張にするための材料を含有していてもよい。使用に適している賦形剤の非限定的な例は、水、リン酸緩衝食塩水、pH 7.4、0.15M水性塩化ナトリウム溶液、デキストロース、グリセロール、希エタノールなどならびにその混合物を含む。例証となる安定剤は、ポリエチレングリコール、タンパク質、糖類、アミノ酸、無機酸、および有機酸であり、これらは、単独でまたは混合剤として使用してもよい。使用される量または分量および投与の経路は、個体に基づいて決定され、当業者らに知られている類似したタイプの適用または適応において使用される量に相当する。
【0050】
移植手術結果を最適化するために、ドナーおよびレシピエントの間の可能な限り近い免疫学的適合が所望される。自己の供給源が入手可能ではない場合、ドナーおよびレシピエントのクラス1およびクラスII組織適合抗原は、入手可能な最も近い適合を決定するために分析することができる。これは、免疫拒絶を最小限にしまたはなくし、免疫抑制療法または免疫調整療法の必要性を低下させる。必要とされる場合、免疫抑制療法または免疫調整療法は、移植手術手順の前に、その間に、および/またはその後に始めることができる。たとえば、シクロスポリンAまたは他の免疫抑制剤は、移植手術レシピエントに投与することができる。免疫寛容もまた、当技術分野において知られている代替方法によって、移植に先立って誘発してもよい(D.J.Wattら、1984年、Clin.Exp.Immunol.55:419頁;D.Faustmanら、1991年、Science 252:1701頁)。
【0051】
本発明と一致して、MDCは、骨を含む体組織に投与することができる。MDC懸濁液中の細胞の数および投与のモードは、治療されている部位および状態に依存して変化してもよい。約1.0×10〜約1×10 MDCは、本発明に従って投与してもよい。非限定的な例として、本発明に従って、約0.5〜1.0×10 MDCを、約5mmの領域の頭蓋異常の治療のためにコラーゲンスポンジマトリックスを介して投与する(実施例3を参照されたい)。さらなるMDCは、ペレット当たり約100,000から500,000 MDCを有するペレットベースの培養系を介して投与してもよい。好ましい実施形態において、それぞれのペレットは、約250,000 MDCを含有する。任意の数のペレットが患者に投与してもよい。好ましくは、20 2から10のペレットが投与される。本明細書において開示される実施例と一致して、当業者は、それぞれの症例について決定される必要条件、制限、および/または最適化に従って、MDCベースの治療の量および方法を調整することができる。
【0052】
骨障害の骨増大または治療のために、MDCは、上記に記載されるように調製され、骨密度および/または骨容量の追加をもたらすために、たとえば注射を介して、骨組織上に、その中に、またはそのまわりに投与される。当業者によって十分に理解されるように、導入されるMDCの数は、求められるまたは必要とされるように、骨密度および/または骨容量の量の変化をもたらすために調整される。たとえば、約0.5〜1.5×10 MDCは、骨の増大のために注射する(実施例3を参照されたい)。したがって、本発明はまた、骨障害を治療するまたは骨密度および/もしくは骨容量を増強する際の、本発明のMDCの使用を包含する。骨障害には、骨粗鬆症、パジェット病、骨形成不全症、骨折、骨軟化症、骨梁の強度の減少、骨皮質強度の減少、および老齢に伴う骨密度の減少が含まれる。本発明はまた、平均を超える骨量を必要とする運動選手または他の生物における骨量の増加のための、MDCの新規な使用に関する。
【0053】
遺伝子操作された筋肉由来細胞
本発明の他の態様において、本発明のMDCは、1つまたは複数の活性生体分子をコードする(1つまたは複数の)核酸配列を含有し、かつタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ホルモン、代謝物質、薬剤、酵素などを含むこれらの生体分子を発現するように遺伝子操作することができる。そのようなMDCは、ヒトを含むレシピエントに対して組織適合性であってもよく(自己)または非組織適合性であってもよい(同種異系)。これらの細胞は、種々様々な治療のための、たとえば、骨粗鬆症、パジェット病、骨形成不全症、骨折、骨軟化症、骨梁の強度の減少、骨皮質強度の減少、および老齢に伴う骨密度の減少を含むが、これらに限定されない骨疾患および骨病態の治療のための長期局所的送達系として役割を果たすことができる。
【0054】
レシピエントに対して外来のものとして認識されないであろう自己の筋肉由来前駆細胞は、本発明において好ましい。この点に関して、細胞媒介遺伝子移入または細胞媒介遺伝子送達に使用されるMDCは、主要組織適合遺伝子座(ヒトにおけるMHCまたはHLA)に関して所望のように適合するであろう。そのようなMHC適合細胞またはHLA適合細胞は、自己のものであってもよい。その代わりに、細胞は、同じまたは類似したMHC抗原プロファイルまたはHLA抗原プロファイルを有する人からのものであってもよい。患者はまた、同種異系のMHC抗原に対して寛容化してもよい。本発明はまた、参照によって本明細書において組み込まれる米国特許第5,538,722号に記載されるものなど、MHCクラスI抗原および/またはMHCクラスII抗原を欠く細胞の使用を包含する。
【0055】
MDCは、当業者らに知られている、種々様々な分子的技術および分子的方法、たとえば形質移入、感染、または形質導入によって遺伝子操作してもよい。本明細書において一般に使用されるような形質導入は、細胞の中へのウイルスベクターまたは非ウイルスベクターの導入を介して外来遺伝子または異種遺伝子を含有するように遺伝子操作される細胞に言及する。形質移入は、プラスミドまたは非ウイルスベクター中に含まれる外来遺伝子を含有するように遺伝子操作された細胞に、より一般に言及する。MDCは、異なるベクターによって形質移入するまたは形質導入することができ、したがって、筋肉の中に発現産物を移入するための遺伝子送達媒体として役割を果たすことができる。
【0056】
ウイルスベクターは好ましいが、当業者らは、所望のタンパク質またはポリペプチド、サイトカインなどをコードする核酸配列を含有するための、細胞の遺伝子操作は、たとえば、融合、形質移入、リポソームの使用によって媒介されるリポフェクション、エレクトロポレーション、DEAE−デキストランまたはリン酸カルシウムを用いる沈殿、核酸コーティング粒子(たとえば金の粒子)を用いる粒子衝撃(微粒子銃)、マイクロインジェクションなどを含む、米国特許第5,538,722号において記載されるような、当技術分野において知られている方法によって実行してもよいことを十分に理解するであろう。
【0057】
生理活性産物の発現のために筋細胞の中に異種(つまり外来)核酸(DNAまたはRNA)を導入するためのベクターは、当技術分野においてよく知られている。そのようなベクターは、プロモーター配列、好ましくは、細胞特異的で、発現される配列の上流に配置されるプロモーターを有する。ベクターはまた、任意選択で、ベクター中に含有される核酸配列の形質移入および発現の成功の指標としての、発現のための1つまたは複数の発現可能なマーカー遺伝子を含有していてもよい。
【0058】
本発明の筋肉由来細胞の形質移入または感染のための媒体またはベクター構築物の例証となる例は、アデノウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクターなどの複製不完全ウイルスベクター、DNAウイルスベクター、またはRNAウイルス(レトロウイルス)ベクターを含む。アデノ随伴ウイルスベクターは、一本鎖であり、細胞の核への、核酸の複数のコピーの効率的な送達を可能にする。アデノウイルスベクターが好ましい。ベクターは、通常、あらゆる原核生物DNAが実質的にないであろう、また多くの異なる機能的核酸配列を含んでいてもよい。そのような機能的配列の例は、ポリヌクレオチド、たとえばDNAまたはRNA、筋細胞中で活性であるプロモーター(たとえば強力なプロモーター、誘発性のプロモーターなど)ならびにエンハンサーを含む転写ならびに翻訳の開始調節配列ならびに終了調節配列を含む配列を含む。
【0059】
対象とするタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ポリヌクレオチド配列)もまた、機能的配列の一部として含まれ、フランキング配列もまた、部位特異的統合のために含まれていてもよい。いくつかの状況において、5’フランキング配列は、相同組み換えを可能にし、したがって、例として、転写のレベルを増加させるまたは減少させるために、誘発性のまたは非誘発性の転写をもたらすように、転写開始領域の性質を変化させるであろう。
【0060】
一般に、筋肉由来前駆細胞によって発現される所望の核酸配列は、たとえば、筋肉由来前駆細胞に対して異種性であり、所望のタンパク質産物またはポリペプチド産物をコードする構造遺伝子またはその遺伝子の機能的断片、セグメント、もしくは部分の核酸配列である。コードされ、発現される産物は、細胞内にあってもよい、つまり、細胞の細胞質、核、もしくは細胞小器官中に保持してもよく、または細胞によって分泌してもよい。分泌については、構造遺伝子中に存在する天然のシグナル配列が保持してもよく、または構造遺伝子中に天然に存在しないシグナル配列が使用してもよい。ポリペプチドまたはペプチドが、より大きなタンパク質の断片である場合、シグナル配列は、分泌およびプロセシング部位でのプロセシングに際して、所望のタンパク質が天然の配列を有するように提供してもよい。本発明に従う使用のための対象とする遺伝子の例は、細胞成長因子、細胞分化因子、細胞シグナル伝達因子、およびプログラム細胞死因子をコードする遺伝子を含む。特定の例は、BMP−2(rhBMP−2)、IL−1Ra、第IX因子、およびコネキシン43をコードする遺伝子を含むが、これらに限定されない。
【0061】
上記に述べられるように、マーカーは、ベクター構築物を含有する細胞の選択のために存在してもよい。マーカーは、誘発性遺伝子または非誘発性遺伝子であってもよく、一般に、誘発下のまたは誘発を伴わない正の選択をそれぞれ可能にするであろう。一般に使用されるマーカー遺伝子の例は、ネオマイシン、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、グルタミンシンテターゼなどを含む。
【0062】
用いられるベクターはまた、一般に、複製開始点および当業者らによってルーチン的に用いられるような、宿主細胞中での複製に必要な他の遺伝子をも含むであろう。例として、複製開始点および特定のウイルスによってコードされる、複製と関連する任意のタンパク質を含む複製系は、構築物の一部として含まれていてもよい。複製系は、複製に必要な産物をコードする遺伝子が、最終的に、筋肉由来細胞を形質転換しないように選択されなければならない。そのような複製系は、たとえばG.Acsadiら、1994年、Hum.Mol.Genet 3:579 584頁によって記載されるように構築される複製不完全アデノウイルスおよびエプスタインバーウイルスに代表される。複製不完全なベクター、特に、複製不完全なレトロウイルスベクターの例は、Priceら、1987年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 84:156頁およびSanesら、1986年、EMBO J., 5:3133頁によって記載されるBAGである。最終遺伝子構築物は、対象とする1つまたは複数の遺伝子、たとえば生理活性代謝分子をコードする遺伝子を含有してもよいことが理解されるであろう。さらに、cDNA、合成的産生DNA、または染色体DNAは、当業者らによって知られており、実施される方法およびプロトコルを利用して、用いられてもよい。
【0063】
所望の場合、感染複製不完全ウイルスベクターは、細胞のin vivo注射に先立って、細胞を遺伝子操作するために使用してもよい。この点に関して、ベクターは、広宿主性パッケージングのレトロウイルスプロデューサー細胞の中に導入してもよい。隣接領域の中への筋肉由来前駆細胞の天然の増大は、対象とする(1つまたは複数の)部位の中へのまたはその部位での多数の注射を不要にする。
【0064】
他の態様において、本発明は、所望の遺伝子産物をコードする異種遺伝子を含有するように操作されたアデノウイルスベクターを使用してウイルスで形質導入されたMDC、たとえば初期前駆筋細胞の使用を通しての、ヒトを含むレシピエント哺乳動物宿主の細胞および組織へのex vivo遺伝子送達を提供する。そのようなex vivoアプローチは、直接的な遺伝子移入アプローチに対して優れている、効率的なウイルス遺伝子移入の利点を提供する。ex vivo手順は、筋組織の単離細胞からの筋肉由来前駆細胞の使用を含む。筋肉由来前駆細胞の供給源として役割を果たす筋生検材料は、傷害部位または臨床外科医からより容易に得ることができる他の領域から得ることができる。
【0065】
本発明に従って、クローン単離物は、当技術分野において知られている様々な手順、たとえば組織培地中での限界希釈平板培養を使用する筋肉由来前駆細胞(つまり、PP6細胞または単一平板手順を使用する「徐々に接着する」細胞)の集団に由来し得ることが十分に理解されるであろう。クローン単離物は、単一の孤立細胞から生じる、遺伝的に同一の細胞を含む。さらに、クローン単離物は、クローン的に単離された細胞株を確立するために、ウェル当たりの単一の細胞を達成するように、上記に記載されるようなFACS分析、その後に続く限界希釈を使用して誘導することができる。PP6細胞集団に由来するクローン単離物の例は、mc13であり、これは、実施例1において記載される。好ましくは、MDCクローン単離物は、本方法においてだけでなく、1つもしくは複数の生理活性分子を発現させる遺伝子操作のために、または遺伝子置換療法において利用される。
【0066】
MDCは、第1に、所望の遺伝子産物をコードする少なくとも1つの異種遺伝子を含有する操作されたウイルスベクターに感染させ、食塩水またはリン酸緩衝食塩水などの生理学的に許容できる担体または賦形剤中に懸濁し、次いで、宿主における適切な部位に投与される。本発明と一致して、MDCは、上記に記載されるように、骨を含む体組織に投与することができる。所望の遺伝子産物は、注射された細胞によって発現され、これは、したがって、宿主の中に遺伝子産物を導入する。導入され、発現される遺伝子産物は、それによって、宿主において長期生存を有し、本発明のMDCによって長い期間、それらが発現されることにより、傷害、機能不全、または疾患を治療する、回復させる、または寛解させるために利用することができる。
【0067】
筋芽細胞媒介遺伝子療法の動物モデル研究において、100mg筋肉当たり10筋芽細胞の移入が、筋酵素異常の部分的な補正に必要とされた(J.E.Morganら、1988年、J.Neural.Sci.86:137頁;T.A.Partridgeら、1989年、Nature 337:176頁を参照されたい)。このデータから推測すると、生理学的に適合する培地中に懸濁した約1012MDCが、70kgヒトの遺伝子療法のために筋組織の中に移入することができる。本発明のMDCのこの数は、ヒト源からの単一100mg骨格筋生検材料から産生することができる(下記を参照されたい)。特定の傷害部位の治療のために、傷害の所与の組織または部位の中への遺伝子操作されたMDCの注射は、溶液または懸濁液中に、細胞の治療有効量、好ましくは生理学的に許容できる培地中に、治療される組織cm当たり約10〜10細胞を含む。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
前平板培養方法による、MDCの濃縮、単離、および分析
MDCは、記載されるように調製した(Chancellorらの米国特許第6,866,842号)。筋肉外植片は、多数の供給源の、すなわち、3週齢mdx(ジストロフィー)マウス(C57BL/10ScSn mdx/mdx、Jackson Laboratories)、4〜6週齢正常雌SD(Sprague Dawley)ラット、またはSCID(重症複合免疫不全)マウスの後肢から得た。各動物供給源の筋組織を、骨を取り出すために解剖し、切り刻んでスラリーにした。次いで、スラリーは、37℃で、0.2%XI型コラゲナーゼ、ディスパーゼ(等級II、240ユニット)、および0.1%トリプシンと共に、1時間の連続インキュベーションによって消化した。結果として生じる細胞懸濁液は18、20、および22ゲージ針を通過させ、5分間3000rpmで遠心分離した。次に、細胞は、増殖培地(10%ウシ胎児血清、10%ウマ血清、0.5%ニワトリ胚抽出物、および2%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM)中に懸濁した。次いで、細胞は、コラーゲンコーティングフラスコ中で前平板培養した(Chancellorらの米国特許第6,866,842号)。約1時間後に、上清は、フラスコから取り出し、新鮮なコラーゲンコーティングフラスコの中に再度平板培養した。この1時間のインキュベーション内に速やかに接着した細胞は、ほとんど、線維芽細胞であった(Z.Quら、前掲;Chancellorらの米国特許第6,866,842号)。上清を取り出し、30〜40%の細胞がそれぞれのフラスコに接着した後に再度平板培養した。約5〜6回の連続平板培養の後に、培養物は、PP6細胞と命名される、小さく、球形の細胞で濃縮し、これらは、出発細胞集団から単離し、さらなる研究において使用した。初期平板培養において単離した接着細胞は、共にプールし、PP1−4細胞と命名した。
【0069】
mdx PP1−4細胞集団、mdx PP6細胞集団、正常PP6細胞集団、および線維芽細胞集団は、細胞マーカーの発現について免疫組織化学分析によって検査した。この分析の結果は表1に示す。
【0070】
【表1】

mdx PP1−4細胞、mdx PP6細胞、正常PP6細胞、および線維芽細胞は、前平板培養技術によって誘導し、免疫組織化学分析によって検査した。「−」は、2%未満の細胞が発現を示したことを示す;「(−)」;「−/+」は、5〜50%の細胞が発現を示したことを示す;「+/−」は、40〜80%の細胞が発現を示したことを示す;「+」は、>95%の細胞が発現を示したことを示す;「nor」は正常細胞を示す;「na」は、免疫組織化学データが入手可能ではないことを示す。
【0071】
mdxおよび正常マウスの両方は、このアッセイにおいて試験したすべての細胞マーカーの同一の分布を示したことが注目される。したがって、mdx突然変異の存在は、単離PP6筋細胞由来集団の細胞マーカー発現に影響を及ぼさない。
【0072】
MDCは、10%FBS(ウシ胎児血清)、10%HS(ウマ血清)、0.5%ニワトリ胚抽出物、および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)を含有する増殖培地または2%ウシ胎児血清および1%抗生物質溶液を補充したDMEMを含有する融合培地中で増殖させた。培地供給品はすべて、Gibco Laboratories(Grand Island、N.Y.)を通して購入した。
【0073】
(実施例2)
単一平板法による、MDCの濃縮、単離、および分析
速やかにおよび徐々に接着するMDCの集団は、哺乳動物対象の骨格筋から単離した。対象は、ヒト、ラット、イヌ、または他の哺乳動物であってもよい。生検材料サイズは、42〜247mgの範囲であった。
【0074】
骨格筋生検材料組織は、硫酸ゲンタマイシン(100ng/ml、Roche)を補充した冷たい低温培地(HYPOTHERMOSOL(登録商標)(BioLife)中に直ちに配置し、4℃で保存した。3〜7日後に、生検材料組織は、保存場所から取り出し、産生を開始した。あらゆる結合組織または非筋組織を生検材料サンプルから解剖して取り出す。単離に使用される残存筋組織を計量する。組織は、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で切り刻み、コニカルチューブに移入し、遠心分離する(2,500xg、5分間)。次いで、ペレットは、消化酵素溶液(Liberase Blendzyme 4(0.4〜1.0U/ml、Roche))中に再懸濁する。2mlの消化酵素溶液は、100mgの生検材料組織当たりに使用し、回転板上で37℃で30分間インキュベートする。次いで、サンプルは、遠心分離する(2,500xg、5分間)。ペレットは、培地中に再懸濁し、70μm細胞ストレーナを通過させる。本実施例において記載される手順に使用される培地は、以下の構成成分を補充したCambrex内皮増殖培地EGM−2基本培地とした:i.10%(容量/容量)ウシ胎児血清およびii.Cambrex EGM−2 SingleQuotキット、これは、インスリン成長因子−1(IGF−1)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、ヒドロコルチゾン、ヘパリン、およびアスコルビン酸を含有する。次いで、ろ過した細胞溶液は、T25培養フラスコに移し、5%CO中で37℃で30〜120分間インキュベートした。このフラスコに付着する細胞は、「速やかに接着する細胞」とする。
【0075】
インキュベーションの後に、細胞培養上清は、T25フラスコから取り出し、15mlコニカルチューブの中に入れる。T25培養フラスコは、2mlの温めた培地を用いてすすぎ、前述の15mlのコニカルチューブに移す。15mlのコニカルチューブを遠心分離する(2,500xg、5分間)。ペレットは、培地中に再懸濁し、新しいT25培養フラスコに移入する。フラスコは、5%CO中で37℃で約2日間培養する(このフラスコに付着する細胞は「徐々に接着する細胞」とする)。インキュベーションの後に、細胞培養上清は、吸引し、新しい培地をフラスコに追加する。次いで、フラスコは、増大のためにインキュベーターに戻す。標準的な培養継代は、培養フラスコ中の細胞培養密度を50%未満に維持するためにここから先、実行する。トリプシン−EDTA(0.25%、Invitrogen)は、継代の間にフラスコから接着細胞を剥離させるために使用する。「徐々に接着する細胞」の典型的な増大は、3700万の細胞の平均全生細胞数を達成するのに平均17日かかる(産生を開始する日から始めて)。
【0076】
一旦、所望の細胞数が達成されれば、細胞は、トリプシン−EDTAを使用して、フラスコから採取し、遠心分離する(2,500xg、5分間)。ペレットは、BSS−P溶液(ヒト血清アルブミン(2%容量/容量、Sera Care Life)を補充したHBSS)中に再懸濁し、数えた。次いで、細胞溶液は、再び遠心分離し(2,500xg、5分間)、凍結保存培地(ヒト血清アルブミン(2%容量/容量、Sera Care Life Sciences)を補充したCryoStor(Biolife))を用いて所望の細胞濃度まで再懸濁し、低温保存場所のために適切なバイアル中でパッケージにする。凍結バイアルは凍結容器の中に入れ、−80℃フリーザー中に入れる。細胞は、等容量の生理的食塩水を用いて室温で凍結細胞懸濁液を解凍することによって投与し、直接注射する(追加の操作を伴わない)。徐々に接着する細胞集団の系統特徴づけは、筋原性(87.4%CD56+、89.2%デスミン+)、内皮(0.0%CD31+)、造血(0.3%CD45+)、および線維芽細胞(6.8%CD90+/CD56−)を示す。
【0077】
骨格筋生検材料組織を切り離した後で、細胞の2つの画分は、培養フラスコへのそれらの速やかなまたは遅い接着に基づいて収集した。次いで、細胞は、増殖培地を用いて培養において増やし、次いで、1.5mlエッペンドルフチューブ中の凍結保存培地(15μl中、3×10細胞)中で凍結した。コントロール群については、15μlの凍結保存培地のみをチューブの中に入れた。これらのチューブは、注射まで−80℃で保存した。注射の直前に、チューブは、保存場所から取り出し、室温で解凍し、15μlの0.9%塩化ナトリウム溶液を用いて再懸濁した。次いで、結果として生じる30μl溶液は、30ゲージ針を有する0.5ccインスリン注射器の中に吸い込んだ。外科手術および注射を実行する調査者は、チューブの内容物を知らされていなかった。
【0078】
細胞数および生存率は、GuavaフローサイトメーターおよびViacountアッセイキット(Guava)を使用して測定した。CD56は、PE抱合抗CD56抗体(1:50、BD Pharmingen)およびPE抱合アイソタイプコントロールモノクローナル抗体(1:50、BD Pharmingen)を使用してフローサイトメトリー(Guava)によって測定した。デスミンは、モノクローナルデスミン抗体(1:100、Dako)およびアイソタイプコントロールモノクローナル抗体(1:200、BD Pharmingen)を使用して、パラホルムアルデヒド固定細胞(BD Pharmingen)上でフローサイトメトリー(Guava)によって測定した。蛍光ラベル化はCy3抱合抗マウスIgG抗体(1:250、Sigma)を使用して実行した。ステップの中間に、細胞は、透過処理緩衝液(BD Pharmingen)を用いて洗浄した。クレアチンキナーゼ(CK)アッセイについては、1×10細胞は、分化誘発培地中で、12ウェルプレートの中に、ウェル当たりで平板培養した。4〜6日後に、細胞は、トリプシン処理することによって採取し、遠心分離してペレットにした。細胞溶解上清は、CK Liqui−UVキット(Stanbio)を使用して、CK活性についてアッセイした。
【0079】
(実施例3)
骨異常のマウス遺伝子改変MDC治療
筋肉由来細胞の単離:
MDCは、実施例1において記載されるようにmdxマウスから得た。
【0080】
PP6筋肉由来前駆細胞のクローン単離:
PP6細胞集団からクローンを単離するために、PP6細胞は、LacZ遺伝子、ミニジストロフィン遺伝子、およびネオマイシン抵抗性遺伝子を含有するプラスミドを用いて形質移入した。手短に言えば、pPGK−NEOからのネオマイシン抵抗性遺伝子を含有するSmaI/Sa/I断片は、LacZ遺伝子を含有するpIEPlacZプラスミド中のSmaI/Sa/I部位の中に挿入し、pNEOlacZプラスミドを作り出した。短いバージョンのジストロフィン遺伝子を含有するDysM3からのXhoI/Sa/I断片(K.Yuasaら、1998年、FEBS Left.425:329 336頁;Dr.Takeda、Japanからの寄贈)は、pNEOlacZ中のSa/I 部位の中に挿入し、ミニジストロフィン遺伝子、LacZ遺伝子、およびネオマイシン抵抗性遺伝子を含有するプラスミドを生成した。プラスミドは、形質移入に先立って、Sa/I消化によって直線化した。
【0081】
PP6細胞は、メーカーの指示に従って、LIPOFECTAMINE(商標)試薬(Gibco BRL)を使用して、ミニジストロフィン遺伝子、LacZ遺伝子、およびネオマイシン抵抗性遺伝子を含有する10μgの線状プラスミドを用いて形質移入した。形質移入の72時間後に、細胞は、分離コロニーが現われるまで、10日間、3000μg/mlのG418(Gibco BRL)を用いて選択した。次いで、コロニーは、単離し、大量の形質移入細胞を得るために増やし、次いで、LacZの発現について試験した。これらのPP6由来クローンの1つ、mc13は、さらなる研究に使用した。
【0082】
免疫組織化学的検査:
PP6、mc13、およびマウス線維芽細胞は、6ウェル培養皿中で平板培養し、1分間、冷メタノールを用いて固定した。次いで、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて洗浄し、1時間、室温で、5%ウマ血清を用いてブロックした。一次抗体は、PBS中で以下のように希釈した:抗デスミン(1:100、Sigma)、ビオチン化抗マウスCD34(1:200、Pharmingen)、ウサギ抗マウスBcl−2(1:500、Pharmingen)、ウサギ抗マウスM−カドヘリン(1:50、Dr.A.Wernigからの寄贈)、マウス抗マウスMyoD(1:100、Pharmingen)、マウス抗ラットミオゲニン(1:100、Pharmingen)、ウサギ抗マウスFlk−1(1:50、Research Diagnostics)、およびビオチン化Sca−1(1:100、Pharmingen)。細胞は、一晩、室温で、一次抗体を用いてインキュベートした。次いで、細胞は、洗浄し、室温で、1時間、適切なビオチン化二次抗体と共にインキュベートした。次に、細胞は、PBSを用いてすすぎ、次いで、1時間、Cy3蛍光色素と抱合した1/300ストレプトアビジンと共に室温でインキュベートした。次いで、細胞は、蛍光顕微鏡によって分析した。それぞれのマーカーについて、染色された細胞の百分率は、細胞の10のランダムに選んだ領域について計算した。
【0083】
4週齢正常マウス(C−57 BL/6J、Jackson Laboratories)の筋肉サンプルの凍結切片は、2分間、冷アセトンを用いて固定し、1時間、PB中で希釈した5%ウマ血清中でプレインキュベートした。CD34、Bcl−2、およびコラーゲンIV型については、以下の一次抗体を使用した:ビオチン抗マウスCD34(PBS中1:200、Pharmingen)、ウサギ抗マウスBcl−2(1:1000、Pharmingen)、およびウサギ抗マウスコラーゲンIV型(PBS中1:100、Chemicon)。ジストロフィン染色については、ヒツジ抗ヒトDY10抗体(PBS中、1:250希釈)は、一次抗体として使用し、シグナルは、抗ヒツジビオチン(PBS中、1:250希釈)およびストレプトアビジン−FITC(PBS中、1:250希釈)を使用して増幅した。
【0084】
rhBMP−2を用いる刺激、オステオカルシン染色、およびアルカリホスファターゼアッセイ:
細胞は、12ウェルコラーゲンコーティングフラスコ中でウェル当たり1〜2×10細胞の密度で3回平板培養した。細胞は、増殖培地への、200ng/ml組み換えヒトBMP−2(rhBMP−2)の追加によって刺激した。増殖培地は、初期平板培養の後の1、3、および5日目に交換した。細胞のコントロール群は、追加のrhBMP−2なしで並行して増殖させた。rhBMP−2刺激なしまたはありの6日後に、細胞は、マイクロサイトメーターを使用して数え、オステオカルシンおよびアルカリホスファターゼの発現について分析した。オステオカルシン染色については、細胞は、ヤギ抗マウスオステオカルシン抗体(PBS中、1:100、Chemicon)と共にインキュベートし、その後、Cy3蛍光色素と抱合した抗ヤギ抗体とのインキュベーションを続けた。アルカリホスファターゼ活性を測定するために、細胞溶解物は、調製し、p−ニトロフェニルリン酸からの無機リン酸の加水分解による、試薬における色の変化を利用する、市販で入手可能なキットを使用して分析した(Sigma)。結果として生じる色の変化は、分光光度計上で測定し、データは、106細胞に対して標準化した、リットル当たりの国際単位ALP活性として表わした。統計的有意差は、スチューデントのt検定(p<0.05)を使用して分析した。
【0085】
筋原性系統および骨原性系統におけるmc13細胞のin vivo分化−−筋原性:
mc13細胞(5×10細胞)は、mdxマウスの後肢筋肉中に筋肉内注射した。動物は、注射15日後に屠殺し、注射した筋組織は、凍結し、凍結切片を作り、ジストロフィン(上記を参照されたい)およびLacZの発現についてアッセイした。LacZ発現について試験するために、筋肉切片は、1%グルタルアルデヒドを用いて固定し、次いで、1〜3時間、X−gal基質(リン酸緩衝食塩水中、0.4mg/ml 5−ブロモクロロ−3インドリル−β−D−ガラクトシド(Boehringer−Mannheim)、1mM MgCl、5mM KFe(CN)、および5mM KFe(CN))と共にインキュベートした。切片は、分析に先立ってエオシンを用いて対比染色した。並行実験において、mc13細胞(5×10細胞)は、mdxマウスの尾静脈中に静脈内注射した。動物は、注射7日後に屠殺し、後肢は、記載されるように、切り離し、ジストロフィンおよびβ−ガラクトシダーゼの存在についてアッセイした。
【0086】
骨原性:
アデノウイルスBMP−2プラスミド(adBMP−2)を構築するために、rhBMP−2コード配列は、BMP−2−125プラスミド(Genetics Institute、Cambridge、Mass.)から切り取り、HuCMVプロモーターを含有する複製不完全(E1遺伝子およびE3遺伝子欠失)アデノウイルスベクターの中にサブクローニングした。手短に言えば、BMP−2−125プラスミドは、Sa/Iを用いて消化し、rhBMP−2 cDNAを含有する1237塩基対断片がもたらされた。次いで、rhBMP−2 cDNAは、pAd.loxプラスミドのSa/I部位の中に挿入し、これにより、この遺伝子を、HuCMVプロモーターのコントロール下に配置した。組み換えアデノウイルスは、CREW細胞の中への、psi−5ウイルスDNAとのpAd.loxの同時形質移入によって得た。結果として生じるadBMP−2プラスミドは、さらなる使用まで−80℃で保存した。
【0087】
mc13細胞は、トリプシン処理し、感染に先立って、マイクロサイトメーターを使用して数えた。細胞は、数回、HBSS(GibcoBRL)を使用して洗浄し、50感染効率ユニットに等価なアデノウイルス粒子は、HBSSの中にあらかじめ混合し、次いで、細胞上に層にした。細胞は、4時間、37℃でインキュベーションし、次いで、等容量の増殖培地と共にインキュベートした。0.5〜1.0×10細胞の注射は、SCIDマウス(Jackson Laboratories)の露出した下腿三頭筋の中にガスタイトシリンジの30ゲージ針を使用して実行した。14〜15日目に、動物は、メトキシフルランを用いて麻酔をかけ、頚椎脱臼によって屠殺した。後肢は、放射線写真撮影によって分析した。次に、下腿三頭筋は、切り離し、リン酸緩衝食塩水中で緩衝した2−メチルブタン中で急速冷凍し、液体窒素中であらかじめ冷却した。凍結サンプルは、クリオスタット(Microm、HM 505 E、Fisher Scientific)を使用して、5〜10μm切片に切り、さらなる分析のために−20℃で保存した。
【0088】
RT−PCR分析:全RNAは、TRIZOL(登録商標)試薬(Life Technologies)を使用して単離した。逆転写は、メーカーの指示に従って、SUPERSCRIPT(登録商標) Preamplification System for First Strand cDNA Synthesis(Life Technologies)に使用して実行した。手短に言えば、100ngランダム六量体を、10分間、70℃で、1μg全RNAにアニールし、次いで、氷上で冷やした。逆転写は、2μl 10×PCR緩衝液、2μl 25mM MgCl、1μl 10mM dNTPミックス、2μl 0.1M DTT、および200U superscriptII逆転写酵素を用いて実行した。反応混合物は、42℃で、50分間、インキュベートした。
【0089】
標的のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅は、2μlの逆転写酵素反応産物、100μl(5U)Taq DNAポリメラーゼ(Life Technologies)、および1.5mM MgClを含有する50μl反応混合物中で実行した。CD34 PCRプライマーは、Oligoソフトウェアを使用して設計し、以下の配列を有した。
【0090】
【化1】

他のプライマーは、以前の研究に従って設計し(J.Rohwedelら、1995年、Exp.Cell Res.220:92 100頁;D.D.Comelisonら、1997年、Dev.Biol.191:270 283頁)、以下の配列を有した。
【0091】
【化2】

以下のPCRパラメーターを使用した:1)94℃、45秒間;2)50℃、60秒間(CD34)または60℃、60秒間(ミオゲニンおよびc−metについて);ならびに3)72℃、90秒間、40サイクル。PCR産物は、アガロース−TBE−臭化エチジウムゲルによって確認した。予想されるPCR産物のサイズは、CD34について147bp、ミオゲニンについて86bp、およびc−metについて370bpである。ゲノムDNAコンタミネーションの可能性を排除するために、2つのコントロール反応を済ませた:1)逆転写酵素の不在下における並行する逆転写および2)イントロンをまたぐプライマーセット(Clonetech)を使用するβ−アクチンの増幅。
【0092】
頭蓋異常アッセイ:
3匹の6〜8週齢の雌SCIDマウス(Jackson Laboratories)を、コントロール群および実験群において使用した。動物は、メトキシフルランを用いて麻酔をかけ、手術台上に腹臥で配置した。10号刃を使用して、頭皮を解剖して、頭蓋を露出し、骨膜を取り除いた。約5mmの全層円形頭蓋異常は、硬膜の貫通を最小限にして、歯科用バーを使用して作り出した。コラーゲンスポンジマトリックス(HELISTAT(商標)、Colla−T c、Inc.)に、adBMP−2形質導入ありのまたはなしの0.5〜1.0×10MDCを接種し、頭蓋異常の中に配置した。頭皮は、4−0ナイロン縫合糸を使用して閉じ、動物は、えさを与え、活動させた。14日後に、動物は、屠殺し、頭蓋標本は、顕微鏡で観察し、次いで、分析した。フォン コッサ染色のために、頭蓋標本は、4%ホルムアルデヒド中で固定し、次いで、15分間、0.1M AgNO溶液中に浸漬した。標本は、少なくとも15分間、光に曝露し、PBSを用いて洗浄し、次いで、観察のために、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色した。
【0093】
Yプローブを使用する蛍光in situハイブリダイゼーション:
凍結切片は、3:1メタノール/氷酢酸(容量:容量)中で10分間固定し、風乾した。次いで、切片は、2分間、70℃で、2×SSC(0.3M NaCl、0.03Mクエン酸Na)pH7.0中で70%ホルムアミド中で変性させた。次に、スライドは、それぞれの濃度で、2分間、一連のエタノール洗浄剤(70%、80%、および95%)を用いて脱水した。Y染色体特異的プローブ(Y.Fanら、1996年、Muscle Nerve 19:853 860頁)は、メーカーの指示に従って、BioNickキット(Gibco BRL)を使用してビオチン化した。次いで、ビオチン化プローブは、G−50 Quick Spin Column(Boehringer−Mannheim)を使用して精製し、精製プローブは、5ng/mlの超音波処理ニシン精子DNAと共に凍結乾燥した。ハイブリダイゼーションに先立って、プローブは、50%ホルムアミド、1×SSC、および10%硫酸デキストランを含有する溶液中に再懸濁した。10分間、75℃での変性の後に、プローブは、変性切片上に配置し、37℃で一晩ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションの後に、切片は、5分間、72℃で、2×SSC溶液pH7.0を用いてすすいだ。次いで、切片は、BMS溶液(0.1M NaHCO、0.5M NaCl、0.5% NP−40、pH8.0)中ですすいだ。ハイブリダイズプローブは、フルオレセインラベルアビジン(ONCOR, Inc)を用いて検出した。核は、VECTASHIELD(登録商標)封入剤(Vector, Inc)中で10ng/ml臭化エチジウムを用いて対比染色した。
【0094】
mc13細胞のマーカー分析:
mc13細胞、PP6細胞、および線維芽細胞によって発現される生化学的マーカーは、RT−PCRおよび免疫組織化学的検査を使用して分析した。表2(下記)は、mc13細胞が、Flk−1、幹細胞様の特徴を有する造血細胞のマーカーとして最近、同定された、ヒトKDR遺伝子のマウス相同体を発現したが(B.L.Zieglerら、前掲)、CD34またはCD45を発現しなかったことを示す。しかしながら、本発明のPP6 MDCに由来する他のクローン単離物は、CD34および他のPP6細胞マーカーを発現した。本明細書において記載される手順は、PP6筋肉由来前駆細胞集団をクローニングするためにおよび筋肉由来前駆細胞に特徴的な細胞マーカーを発現するクローン単離物を得るために使用することができることが当業者らによって十分に理解されるであろう。そのようなクローン単離物は、本発明の方法に従って使用することができる。たとえば、クローン単離物は、デスミン、CD34、およびBcl−2を含む前駆細胞マーカーを発現する。好ましくは、クローン単離物はまた、Sca−1およびFlk−1の細胞マーカーをも発現するが、CD45またはc−Kitの細胞マーカーを発現しない。
【0095】
【表2】

細胞は、上記に記載されるように単離し、免疫組織化学分析によって検査した。「−」は、0%の細胞が発現を示したことを示す;「+」は、>98%の細胞が発現を示したことを示す;「+/−は」、40〜80%の細胞が発現を示したことを示す;「−/+」は、5〜30%の細胞が発現を示したことを示す;および「na」は、データが入手可能ではないことを示す。
【0096】
CD34細胞およびBcl−2細胞のin vivo局在:
CD34細胞およびBcl−2細胞の場所をin vivoで同定するために正常マウスの下腿三頭筋からの筋組織切片は、抗CD34抗体および抗Bcl−2抗体を使用して染色した。CD34陽性細胞はまた、デスミン(図1B)についても陽性であった、小さな集団の筋肉由来細胞(図1A)を構成した。抗コラーゲンIV型抗体を用いるCD34+デスミン+細胞の共染色により、基底膜内に、それらの場所を突き止めた(図1Bおよび1D)。図1A〜Dにおける矢じりによって示されるように、微小血管もまたCD34およびコラーゲンIV型について陽性であったが、核染色と共存しなかった。血管内皮細胞によるCD34の発現は、以前の研究において示された(L.Finaら、前掲)。Bcl−2+デスミン+細胞は、同様に同定し(図1E〜1H)、基底膜内に場所を突き止めた(図1Fおよび1H)。切片はまた、衛星細胞の場所を同定するためにM−カドヘリンについても染色した(図1I)。衛星細胞は、CD34+デスミン+細胞またはBcl−2+デスミン+細胞と類似した場所で同定した(矢印、図1I)。しかしながら、M−カドヘリンとCD34またはBcl−2を共存させるための複数の試みは、成功せず、M−カドヘリンを発現する細胞は、Bcl−2またはCD34のいずれかを同時発現しないことを示唆する。これは、本明細書において開示されるように、高レベルのCD34およびBcl−2を発現するが、最小限のレベルのM−カドヘリンしか発現しないPP6細胞と一致している。
【0097】
骨原性系統へのクローン筋肉前駆細胞のin vitro分化:
mc13細胞は、rhBMP−2を用いる刺激による骨原性分化能について評価した。細胞は、6ウェル培養皿上で平板培養し、200ng/ml rhBMP−2の存在下または不在下においてある培養密度まで増殖させた。34日以内に、rhBMP−2に曝露したmc13細胞は、rhBMP−2なしの細胞と比較して、劇的な形態形成変化を示した。rhBMP−2の不在下において、mc13細胞は、融合し始め、多核筋管になった(図2A)。しかしながら、200ng/ml rhBMP−2に曝露した場合、細胞は、単核のままで、融合しなかった(図2B)。細胞密度が、>90%培養密度に達した場合、未処理培養物は、融合して、複数の筋管を形成したが(図2C)、処理細胞は、円形肥大型になった(図2D)。免疫組織化学的検査を使用して、これらの肥大型細胞は、オステオカルシンの発現について分析した。オステオカルシンは、骨芽細胞によって特異的に発現され、骨上に蓄積されるマトリックスタンパク質である。未処理群とは対照的に、rhBMP−2処理肥大型の細胞は、オステオカルシンの有意な発現を示し(図2E)、したがって、mc13細胞が、rhBMP−2への曝露に際して骨芽細胞に分化することができることを示唆した。
【0098】
次いで、mc13細胞は、rhBMP−2刺激の後でデスミンの発現について分析した。新しく単離したmc13細胞は、一様なデスミン染色(図3Aおよび3B)を示した。rhBMP−2への曝露の6日内に、30〜40%のmc13細胞のみがデスミン染色を示した。rhBMP−2刺激の不在下において、mc13細胞の約90〜100%がデスミン染色(図3C)を示した。この結果は、rhBMP−2を用いるmc13細胞の刺激がこれらの細胞についての筋原能の損失をもたらすことを示唆する。
【0099】
さらに、mc13細胞は、rhBMP−2刺激の後でアルカリホスファターゼの発現について分析した。アルカリホスファターゼは、骨芽細胞分化の生化学的マーカーとして使用されてきた(T.Katagiriら、1994年、J.Cell Biol.127:1755 1766頁)。図3Dにおいて示されるように、mc13細胞のアルカリホスファターゼ発現は、rhBMP−2に応じて、600倍を超えて増加した。コントロールとして使用したPP1 4細胞は、rhBMP−2に応じての、アルカリホスファターゼ活性の増加を示さなかった(図3D)。まとめると、これらのデータは、PP6クローン単離物の細胞、たとえばmc13細胞が、in vitroでのrhBMP−2曝露に応じて、それらの筋原性マーカーを失い、骨原性系統を通して分化することを実証する。
【0100】
筋原性系統および骨原性系統へのmc13細胞のin vivo分化:
mc13細胞が、筋原性系統を通してin vivoで分化することができるかどうかを決定するために、細胞は、mdxマウスの後肢筋組織に注射した。動物は、注射の15日後に屠殺し、それらの後肢は、組織学的分析および免疫組織化学分析のために採取した。いくつかの筋線維は、注射部位を取り囲む領域において、LacZ染色およびジストロフィン染色を示し(図4Aおよび4B)、mc13細胞は、in vivoで、筋原性系統を通して分化することができ、筋肉再生を増強することができ、ジストロフィー筋においてジストロフィンを回復させることができることを示した。
【0101】
並行実験において、mc13細胞は、mdxマウスの尾静脈に静脈内注射した。動物は、注射7日後に屠殺し、後肢筋肉は、組織学的分析および免疫組織化学分析のために採取した。いくつかの後肢筋細胞は、LacZ染色およびジストロフィン染色を示し(図4Cおよび4D;「」もまた参照されたい)、ジストロフィン発現を取り戻すために標的組織にmc13細胞を全身的に送達することができることを示唆した。
【0102】
mc13細胞の多能性の特徴をin vivoで試験するために、細胞は、rhBMP−2(adBMP−2)をコードするアデノウイルスベクターを用いて形質導入した。次いで、adBMP−2を有するmc13細胞は、SCIDマウスの後肢に注射した。動物は、注射14日後に屠殺し、後肢は、組織化学的分析および免疫化学的分析のために取り出した。adBMP−2を用いて形質導入したmc13細胞の酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)分析は、感染細胞がrhBMP−2を産生することができることを示した。注射したSCIDマウスの後肢の放射線分析は、注射の14日以内に強い異所性骨形成を示した(図4E)。異所性の骨のLacZ染色を使用する組織学的分析は、LacZ陽性mc13細胞が、骨芽細胞および骨細胞が見つけられる典型的な場所である石灰化マトリックスまたは骨小腔内に一様に位置することを示す(図4F)。
【0103】
異所性の骨の形成におけるmc13の役割をさらに確認するために、筋肉切片はまた、ジストロフィンの存在についても染色した。図4Gにおいて示されるように、異所性の骨は、ジストロフィンについて高度に陽性の細胞を含有し、mc13細胞が骨形成において密接に関係していることを示唆した。コントロールとして、類似した実験を、線維芽細胞を用いて実行した。線維芽細胞は強い異所性骨形成を支持することが分かったが、注射した細胞は、骨の外側に一様に見つけられ、どれも、石灰化マトリックス内に位置し得なかった。これは、線維芽細胞が、異所性の骨を形成するために、rhBMP−2を送達することができるが、骨芽細胞に分化することができないことを示唆する。この場合、異所性の骨の石灰化に関係する細胞は、宿主組織に由来する可能性が高い。したがって、これらの結果は、mc13細胞が、in vivoおよびin vitroの両方で骨芽細胞に分化することができることを実証する。
【0104】
遺伝子操作された筋肉由来細胞による骨治癒の増強:
頭蓋異常(約5mm)は、上記に記載されるように、歯科用バーを使用して、骨格成熟(6〜8週齢)雌SCIDマウスにおいて作り出した。以前の実験は、5mmの頭蓋異常が「非治癒性である」ことを実証した(P.H.Krebsbachら、1998年、Transplantation 66:1272〜1278頁)。頭蓋異常は、adBMP−2を用いて形質導入したまたは形質導入していないmc13細胞を接種したコラーゲンスポンジマトリックスを用いて埋めた。これらのマウスは、14日目に屠殺し、頭蓋異常の治癒を分析した。図5Aにおいて示されるように、rhBMP−2を有していないmc13細胞を用いて治療したコントロール群は、異常の治癒の証拠を示さなかった。対照的に、rhBMP−2を発現するように形質導入したmc13細胞を用いて治療した実験群は、2週目に頭蓋異常の十分な閉鎖をほぼ示した(図5B)。石灰化骨を目立たせるフォン コッサ染色は、rhBMP−2を発現するように形質導入したmc13細胞を用いて治療した群における強い骨形成を示した(図5D)が、最小限の骨形成が、コントロール群において観察された(図5C)。
【0105】
実験群における新しい骨のエリアは、移植細胞を同定するためのY染色体特異的プローブを用いて、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって分析した。図5Eにおいて示されるように、Y染色体陽性細胞は、新しく形成された骨内に同定され、rhBMP−2の影響下での骨形成における移植細胞の能動的な関係を示した。Y染色体陰性細胞もまた、新しく形成された頭蓋内に同定され、したがって、同様に宿主由来細胞の能動的な関係を示した。これらの結果は、mc13細胞が、rhBMP−2を用いる刺激に際して、「非治癒性の」骨異常の治癒を媒介することができることを実証し、本発明のMDCが、骨の異常、傷害、または外傷の治療において使用することができることを示す。
【0106】
(実施例4)
MDCの投与を通しての、ヒト組織における骨密度および骨容量の増加
本研究において、軟骨形成を受けるように前駆細胞を誘発するために一般に使用される細胞ペレットを含む三次元(3D)培養系(Yooら、JBJS、1998年、80(12):1745〜1757頁)は、hMDCが石灰化を受ける能力を評価するために使用した。マイクロコンピューター断層撮影(μCT)分析を使用すると、発明者らは、長い間にわたって同じペレットを観察することができ、試験したそれぞれの細胞集団について石灰化の速度を決定することができた。下記のデータは、本研究におけるすべてのhMDCが、石灰化することができ、ほぼ、培養の7日目までに石灰化することができたことを示す。さらに、hMDCは、コラーゲンI型(ColI)のそれらの発現を増加し、主なコラーゲンは骨中に見つかり、骨原性の分化を示唆した。マウス筋細胞とは異なり、hMDCは、石灰化を受けるためにBMP刺激を必要とせず、骨原性の刺激に先立って、アルカリホスファターゼについて陽性であった。細胞は、ドナーの間で、CD56発現において変化した(CD56+の範囲、4匹の雌集団=42%〜82%および4匹の雄集団=55%〜90%)。そのうえ、この骨原性アッセイは、CD56発現が低いhMDCが、より高いレベルを発現するhMDCほど速く石灰化しなかったことを示し、CD56が、hMDCの骨原能についてのマーカーである可能性があることを示した。
【0107】
4人のヒト女性(年齢22、24、24、25)および4人のヒト男性(年齢20、26、28、30)から採取した小さな骨格筋生検材料において、筋肉由来細胞(MDC)集団(「徐々に接着する細胞」)は、実施例2において記載される単一平板法に従って、後期の前平板培養物から収集した。刺激に先立って、細胞は、実施例2において記載されるように培養した。次いで、細胞は、28日間、骨原性培地(OSM)(10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、10−7Mデキサメタゾン、50μg/mLアスコルビン酸−2−リン酸、および10−2M β−グリセロリン酸を補充したDMEM)(集団当たりn=6ペレット)中でペレット(250,000細胞/ペレット)として誘発した。ペレットの骨容量および骨密度は、骨容量(BV)および骨密度(BD)について7、14、21、および28日目にμCT分析によって測定した。コラーゲンI型(ColI)についての遺伝子発現は、ペレットを作製した日(0日目)およびOSM中での28日後(28日目)に単離したRNAについての定量RT−PCRによって決定した。統計分析は、それぞれの性別内で、0から28日目の間で、BVおよびBDについては二元配置ANOVAならびに遺伝子発現についてはt検定を使用して実行した。P値<0.05は有意であると見なした。このデータは、平均±SEM(n=6集団/性別)を示す図6A、6B、7A、および7Bにおいて示す。
【0108】
hMDCはすべて、ペレットを形成し、石灰化は、早くも7日目にほとんどの集団において明らかであった。CD56の最低の百分率を有する女性および男性の細胞集団は、培養の14日後にようやく石灰化組織を示し始めた。試験したすべての細胞集団における長い間にわたる平均のBVおよびBDは、それぞれ、図6Aおよび6Bにおいて示す。BVの有意な増加は、男性hMDCにおいて7から28日の間に観察された。女性hMDCの場合において、ペレットのBVは、14から21日の間に有意に増加した。女性および男性のhMDC集団におけるBDは、7日ごとに増加した。21および28日目にスキャンしたペレットは、7および14日目にスキャンしたペレットよりも密な石灰化を有した。性別に関する差異は、BVおよびBDの両方について試験したすべての時点で観察されなかった(図6Aおよび6B)。これらの発見は、hMDCが石灰化骨組織を産生することができることを示唆する。
【0109】
骨芽細胞遺伝子マーカーであり、骨中に見つけられるコラーゲンであるコラーゲンI型(ColI)は、骨原性ペレット培養系を使用する場合にhMDCが骨芽細胞に分化するかどうかを決定するために測定した。ColI遺伝子発現は、OSM中での28日間の培養の後に男性および女性のhMDCの両方において有意に増加した(図7)。したがって、このデータは、骨芽細胞に分化した可能性のあるMDCと一致している遺伝子発現を示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】

【図1I】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図3−1A】

【図3−1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする哺乳動物対象において骨の疾患、異常、または病態を治療する方法であって、
(a)哺乳動物から骨格筋細胞を単離するステップと、
(b)10℃よりも低い温度まで該細胞を冷却し、該細胞を1〜7日間保存するステップと、
(c)30〜120分間、第1の細胞培養容器中で該哺乳動物骨格筋細胞を懸濁するステップと、
(d)該第1の細胞培養容器から第2の細胞培養容器に培地をデカントするステップと、
(e)該培地中の残存細胞を、該第2の細胞培養容器の壁に付着させるステップと、
(f)該第2の細胞培養容器の該壁から、筋肉由来前駆細胞(MDC)である細胞を単離するステップと、
(g)該細胞を培養してその数を拡大するステップと、
(h)−30℃未満の温度まで該MDCを凍結するステップと、
(i)該MDCを解凍し、該哺乳動物対象の該骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨に該MDCを投与するステップと
を含み、
それによって、治療を必要とする該哺乳動物対象において、骨の異常、疾患、または病態を治療する方法。
【請求項2】
前記哺乳動物対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨の異常、疾患、または病態が前記ヒト対象において始まる前に、前記ヒト骨格筋細胞が該ヒト対象から単離される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記骨の異常、疾患、または病態が前記ヒト対象において始まった後に、前記ヒト骨格筋細胞が該ヒト対象から単離される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記MDCが、前記骨の表面上に注射することによって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記MDCが、前記骨の内部に注射される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記骨の異常、疾患、または病態が骨異常である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記骨異常が、外傷によって引き起こされる骨折である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物対象における骨量または骨密度を増大させる方法であって、
(a)哺乳動物から骨格筋細胞を単離するステップと、
(b)10℃よりも低い温度まで該細胞を冷却し、該細胞を1〜7日間保存するステップと、
(c)30〜120分間、第1の細胞培養容器中で該哺乳動物骨格筋細胞を懸濁するステップと、
(d)該第1の細胞培養容器から第2の細胞培養容器に培地をデカントするステップと、
(e)該培地中の該残存細胞を、該第2の細胞培養容器の壁に付着させるステップと、
(f)該第2の細胞培養容器の該壁から、筋肉由来前駆細胞(MDC)である細胞を単離するステップと、
(g)該細胞を培養してその数を拡大するステップと、
(h)−30℃未満の温度まで該MDCを凍結するステップと、
(i)該MDCを解凍し、該哺乳動物対象において増大される骨に該MDCを投与するステップと
を含み、
それによって、該哺乳動物対象における骨量または骨密度を増大させる方法。
【請求項10】
前記哺乳動物対象がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト骨格筋細胞が前記ヒト対象から単離される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記MDCが、前記骨の表面上に注射することによって投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記MDCが、前記骨の内部に注射される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記骨増大が、骨量または骨密度を、前記対象の平均骨量または骨密度を超える量または密度まで増加させる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
改善を必要とする哺乳動物対象において、骨の疾患、異常、または病態と関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、
(a)哺乳動物から骨格筋細胞を単離するステップと、
(b)30〜120分間、第1の細胞培養容器中で該哺乳動物骨格筋細胞を懸濁するステップと、
(c)該第1の細胞培養容器から第2の細胞培養容器に培地をデカントするステップと、
(d)該培地中の残存細胞を、該第2の細胞培養容器の壁に付着させるステップと、
(e)該第2の細胞培養容器の該壁から、MDCである細胞を単離するステップと、
(f)該哺乳動物対象の該骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨に該MDCを投与するステップと
を含み、
それによって、改善を必要とする哺乳動物対象において、骨の疾患、異常、または病態と関連する少なくとも1つの症状を改善する方法。
【請求項16】
前記症状が、骨密度の減少および骨量の減少からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記MDCが、前記骨の表面上に注射することによって投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記MDCが、前記骨の内部に注射される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記哺乳動物がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記哺乳動物対象の前記骨の異常、疾患、または病態に罹患している前記骨に投与する前に、前記MDCを培養してその数を拡大する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
治療を必要とする哺乳動物対象において骨の疾患、骨異常、または病態を治療する方法であって、
(a)骨格筋細胞懸濁液の線維芽細胞が接着する第1の容器中で、哺乳動物骨格筋組織由来の該骨格筋細胞の懸濁液を平板培養するステップと、
(b)15〜20%の細胞が該第1の容器に接着した後で、第2の容器中でステップ(a)の非接着細胞を再度平板培養するステップと、
(c)ステップ(b)を少なくとも1回繰り返すステップと、
(d)該骨格筋由来MDCを単離し、該哺乳動物対象の該骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨に該MDCを投与するステップと
を含み、
それによって、治療を必要とする哺乳動物対象において尿路疾患を治療する方法。
【請求項22】
前記哺乳動物対象がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記骨の疾患、異常、または病態が前記ヒト対象において始まる前に、前記骨格筋細胞が該ヒト対象から単離される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記骨の疾患、異常、または病態が前記ヒト対象において始まった後に、前記骨格筋細胞が該ヒト対象から単離される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記MDCが、前記骨の表面上に注射することによって投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記MDCが、前記骨の内部に注射される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記骨の異常、疾患、または病態が骨異常である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記骨異常が、外傷によって引き起こされる骨折である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
改善を必要とする哺乳動物対象において、骨の疾患、異常、または病態と関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、
(a)骨格筋細胞懸濁液の線維芽細胞が接着する第1の容器中で、骨格筋組織由来の該骨格筋細胞の懸濁液を平板培養するステップと、
(b)15〜20%の細胞が該第1の容器に接着した後で、第2の容器中でステップ(a)の非接着細胞を再度平板培養するステップと、
(c)ステップ(b)を少なくとも1回繰り返すステップと、
(d)該骨格筋由来MDCを単離し、該哺乳動物対象の、該骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨に該MDCを投与するステップと
を含み、
それによって、改善を必要とする該哺乳動物対象において、骨の疾患、異常、または病態と関連する少なくとも1つの症状を改善する方法。
【請求項30】
前記症状が、骨密度の減少および骨量の減少からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記MDCが、前記骨の表面上に注射することによって投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記MDCが、前記骨の内部に注射される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳動物がヒトである、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物対象の前記骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨に投与する前に、前記MDCを培養してその数を拡大する、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
治療を必要とする哺乳動物対象において骨の異常、疾患、または病態を治療する方法であって、該哺乳動物対象の、該骨の異常、疾患、または病態に罹患している骨に、筋肉由来細胞(MDC)を含有する細胞集団を投与するステップを含み、MDCを含有する該細胞集団が、
(a)第1の細胞培養容器中で、哺乳動物骨格筋から単離された細胞を、第1の細胞集団を該容器に接着させ、第2の細胞集団を非接着の状態で該容器中の培地中に残すのに十分な期間懸濁するステップと、
(b)該第1の細胞培養容器から第2の細胞培養容器に該培地および該第2の細胞集団を移すステップと、
(c)該第2の細胞集団の細胞を該第2の細胞培養容器に付着させるステップと、
(d)該第2の細胞培養容器に付着した該細胞を単離して、MDCを含有する該細胞集団を得るステップと
を含むプロセスによって得られたものである、方法。
【請求項36】
哺乳動物対象における骨の異常、疾患、または病態を治療するための投与に有用な、筋肉由来細胞(MDC)を含有する細胞集団を調製するための方法であって、
(a)第1の細胞培養容器中で、哺乳動物骨格筋から単離された細胞を、第1の細胞集団を該容器に接着させ、第2の細胞集団を非接着の状態で該容器中の培地中に残すのに十分な期間懸濁するステップと、
(b)該第1の細胞培養容器から第2の細胞培養容器に該培地および該第2の細胞集団を移すステップと、
(c)該第2の細胞集団の細胞を該第2の細胞培養容器に付着させるステップと、
(d)該第2の細胞培養容器に付着した該細胞を単離して、MDCを含有する該細胞集団を得るステップと
を含む、方法。

【図3−2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−529017(P2010−529017A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510329(P2010−510329)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/006781
【国際公開番号】WO2008/153813
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(504279968)ユニバーシティー オブ ピッツバーグ − オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケーション (24)
【Fターム(参考)】