説明

筋萎縮性側索硬化症治療剤

【課題】難治性疾患であるALSの症状を緩和させたり、進行を遅延させたりすることができる、安全且つ有効な治療剤を提供すること。
【解決手段】本発明の筋萎縮性側索硬化症の治療剤は、ブロモクリプチン又はその薬理上許容し得る塩を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロモクリプチン又はその薬理上許容し得る塩を有効成分として含有する筋萎縮性側索硬化症治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は、上位運動ニューロン及び下位運動ニューロンがほぼ選択的に障害される進行性の神経変性疾患であり、脊髄及び大脳の運動神経細胞が変性、脱落するため、重篤な筋萎縮、痙縮等をきたし、最終的には呼吸筋の麻痺により発症から数年で死に至る難病である。
【0003】
しかしながら、ALSは、その病因がまだ十分には解明されておらず、有効な治療方法も確立されていない。また、現在、唯一承認されているALS治療剤のリルゾール(商品名:リルテック、ローヌ・プーラン・ローラー(株))は、その有効性を疑問視する声もあり、新たな治療剤の開発が切望されている。
【0004】
現在、世界中でALS治療剤の開発が進められている。その開発のアプローチのひとつとして、ALSの原因仮説に基づく探索が挙げられる。主な原因仮説としては、興奮性アミノ酸説、免疫異常説、酸化ストレス説、神経栄養因子欠乏説等がある。これまで、既存の承認薬や化合物について、これらの仮説に基づいた検討がなされているが、有効に治療剤として用いることができるものはほとんど見つかっていないのが現状である。例えば、酸化ストレス説に基づき、ビタミンE、クレアチンといった抗酸化剤の臨床治験が行われたが、いずれも不成功に終わっている。
【非特許文献1】三本 博、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療戦略」、BRAIN and NERVE、2007年4月、第59巻、第4号、p.383−391
【非特許文献2】Traynor BJ, Bruijn L, Conwit R, Beal F, O’Neill G, et al、Neuroprotective agents for clinical trials in ALS : a systematic assessment、Neurology、67、20−27、2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、難治性疾患であるALSの治療剤を提供することである。具体的には、ALSの症状を緩和させたり、進行を遅延させたりすることができる、安全且つ有効な治療剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ALSに効果的な薬剤を見出すべく鋭意研究を行ってきたところ、パーキンソン病の治療剤として承認されているメシル酸ブロモクリプチン(商品名:パーロデル、ノバルティス・ファーマ(株))に、ALSの症状進行遅延効果があることを見出した。
【0007】
以下に、本発明者らがメシル酸ブロモクリプチンにALSの症状改善効果を見出した経緯を述べる。
【0008】
上述のように、ALSの原因仮説のひとつとして酸化ストレス説がある。そこで、酸化ストレス性細胞死を選択的に抑制する低分子化合物を探索するために、その標的として神経細胞アポトーシス阻害蛋白質(NAIP)がかかわる細胞死抑制経路に注目した。NAIPは、下位運動ニューロンの変性、脱落を特徴とする脊髄性筋萎縮症(SMA)の重篤度にかかわる因子として同定されたものであり、低酸素や炎症、酸化ストレス等の刺激で活性化されることが明らかとなっている。そして、その機能としては、酸化ストレス性細胞死の選択的且つ特異的な抑制、パーキンソン病ラットモデルでのドーパミン作動性ニューロンの細胞死抑制等が報告されている。これらの知見により、NAIPは、活性酸素種による神経細胞死に対する生体内防御因子として機能していると推測される。本発明者らは、この点に着目し、内因性NAIPがかかわる細胞死抑制経路を標的とする活性化合物のスクリーニング法を開発し、既存の承認薬や化合物等の神経向性化合物群から酸化ストレス性細胞死抑制活性の強い化合物を選抜したところ、メシル酸ブロモクリプチンが得られた。
【0009】
そこで、東北大学の糸山博士らの研究グループにより作製された緩徐進行型ALS病態モデル動物(マウス)であるSOD1H46Rを用いて、メシル酸ブロモクリプチンの薬効を評価したところ、ALS病態モデルマウスの神経症候発現後の投与試験において有効性が認められた。本発明は、かかる事実に基づき完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明によれば、ブロモクリプチン又はその薬理上許容し得る塩を有効成分として含有するALSの治療剤が提供される。本発明の好ましい態様としては、ブロモクリプチンの塩はメシル酸塩である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の治療剤は、ALSの患者に投与することで、その症状を緩和させたり、進行を遅延させたりすることができる。また、本発明の治療剤が含有する有効成分は、既存の承認薬であるので、安全性にも問題がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療剤は、ブロモクリプチン又はその薬理上許容し得る塩を有効成分として含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の治療剤において、有効成分として用いられるブロモクリプチンは、フリーラジカルスカベンジャーの1種である。したがって、酸化ストレスに対する細胞死の抑制活性を有すると考えられる。
【0014】
ブロモクリプチンのメシル酸塩であるメシル酸ブロモクリプチンは、医薬品として、パーキンソン症候群、末端肥大症、下垂体性巨人症、高プロラクチン血性下垂体腺腫、高プロラクチン血性排卵障害、産褥性乳汁分泌抑制、及び乳汁漏出症に対する効果が知られている。
【0015】
本発明では、ブロモクリプチンは、米国特許第3752814号明細書、米国特許第3752888号明細書等に記載された方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができるし、市販品であるメシル酸ブロモクリプチン(商品名:パーロデル、ノバルティス・ファーマ(株))を用いることもできる。
【0016】
本発明の治療剤において、有効成分として用いられるブロモクリプチンは、遊離の形態の他、薬理上許容し得るその塩を用いることができる。本発明において、薬理上許容し得る塩とは、ブロモクリプチンの生物学的有効性及び性質を保持し、且つ適当な非毒性有機酸又は無機酸から形成される、通常の塩を意味する。酸付加塩には、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素、リン酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、硝酸等の無機酸由来のものや、メシル酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸等の有機酸由来のものが挙げられる。中でも、メシル酸が上述のように市販品を入手できる点において好ましい。
【0017】
本発明で用いられるブロモクリプチン及びその薬理上許容し得る塩には、全ての異性体が含まれる。例えば、不斉炭素の存在等による異性体(R体、S体、α配置、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D体、L体、d体、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、全て本発明に含まれる。
【0018】
本発明の治療剤の投与経路は、特に限定されず、経口的又は非経口的(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内等への注射、あるいは吸入等)に投与することができる。
【0019】
経口投与に適する製剤の例としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する製剤としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の治療剤としては、有効成分であるブロモクリプチン又はその塩をそのまま患者に投与してもよいが、好ましくは、有効成分と薬理上及び製剤上許容しうる添加物とを含む医薬組成物の形態の製剤として投与すべきである。有効成分と薬理上及び製剤上許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤(コーティング剤)、色素、希釈剤、基剤、溶解剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、粘着剤等を用いることができる。
【0021】
賦形剤としては、例えば、ブドウ糖、乳糖、結晶セルロース、D−マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0022】
崩壊剤としては、例えば、前記賦形剤と同様の化合物又はクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。
【0023】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン又は前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。
【0024】
滑沢剤(コーティング剤)としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン、白糖、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0025】
溶解剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等を挙げることができる。
【0026】
等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等を挙げることができる。
【0027】
安定化剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;ソルビン酸等を挙げることができる。
【0028】
本発明の治療剤は、ALSを罹患するヒトを含む任意の動物に投与することができるが、好ましくはヒトに投与される。
【0029】
本発明の治療剤は、他の薬剤と組み合わせて用いてもよい。他の薬剤との組み合わせは、配合剤のように同一の医薬組成物中に含むものであってもよいし、別々の医薬組成物中に含むものであってもよい。
【0030】
本明細書でいう治療とは、進行を遅延することを目的とした治療、あるいは症状の緩和・軽減を目的とした治療の全てを含む広い意味を有する。
【0031】
本発明の治療剤の投与量は、疾患の進行状況又は症状の程度、患者の年齢や体重等の諸条件に応じて適宜選択可能である。例えば、成人に対して1日当たり1.25〜22.5mg程度を1回又は数回に分けて投与することが好ましい。
【0032】
なお、本発明の治療剤の有効成分であるメシル酸ブロモクリプチンは、他の用途(上述のパーキンソン症候群等)において既に臨床に供されており、その毒性については特に問題はない。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0034】
本実施例では、酸化ストレスにより誘起される細胞死に対するブロモクリプチンの抑制活性を細胞生存率試験により検討し、ブロモクリプチンの薬効をALS−SOD1H46Rトランスジェニックマウスを用いて検討した。
【0035】
本実施例では、ブロモクリプチンは、式(1)で表されるメシル酸ブロモクリプチン(TOCRIS Cookson Ltd.,Cat.No:0427)を用いた。
【化1】

【0036】
細胞:
HeLa細胞(American Type Culture Collection,ATCC CCL2株)
ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞(ATCC、CRL2266株)
培地:
HeLa細胞の培養;10% 牛胎児血清(FBS)、4mM グルタミン、100μg/ml ストレプトマイシン、100U/ml ペニシリンGを含むDMEM(SIGMA社)
ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞の培地;10% 牛胎児血清(FBS)、100μg/ml ストレプトマイシン、100U/ml ペニシリンGを含むDMEM培地(SIGMA社)
試薬:
ジメチルスルホキシド(DMSO:SIGMA社)
メナジオン(SIGMA社)
アラマーブルー(AlamarBlue:Biosource international社)
全トランス型レチノイン酸(和光純薬工業株式会社)
カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム、CMC−Na)(丸石製薬株式会社)
機器:
蛍光プレートリーダー(CYTOFLUOR(登録商標)Multi−Well Plate Reader Series 4000:PerSpective Biosystems社)
【0037】
[実施例1]
<細胞生存率試験1:非神経細胞での酸化ストレス性細胞死に対する解析>
(方法)
HeLa細胞を75cmフラスコに1.0×10cells播種し、5% CO存在下、37℃で16時間培養後、最終濃度が2.5、5、10μMになるようにメシル酸ブロモクリプチンと、10μM メシル酸ブロモクリプチン作製時添加量と同量のDMSOとを添加し、さらに24時間培養した(メシル酸ブロモクリプチン処理)。なお、DMSOのみを加えたものをコントロールとした。メシル酸ブロモクリプチン処理したHeLa細胞に、最終濃度が0、20、40、60、80μMになるようにメナジオンを添加し、5% CO存在下、37℃で培養を継続した(酸化ストレス処理)。メナジオンの代わりに0.1% Triton X−100/DMEM/10% FBS溶液で処理したものをブランクとした。4時間の酸化ストレス処理後、10% アラマーブルーを含む培地に置換し、5% CO存在下、37℃でさらに培養した。16時間の培養後、蛍光プレートリーダーを用い、励起波長530nm/検出波長580nmにおける蛍光量を測定することで、生細胞数を判定した。
【0038】
酸化ストレス剤であるメナジオンに対するメシル酸ブロモクリプチンの細胞死抑制効果の結果を図1に示す。グラフの横軸は、メナジオン濃度、縦軸は、細胞生存率を示す。各条件下での縦軸の数値は、コントロールにおけるメナジオン未処理(0μM)条件下での細胞の生存率を100%とした時の相対値として示している。
【0039】
(結果)
図1に示すように、メシル酸ブロモクリプチンで前処理したHeLa細胞の生存率は、メナジオンによる酸化ストレス処理したコントロールの細胞生存率との比較から、メシル酸ブロモクリプチンの濃度に依存して増加を示した。このことから、メシル酸ブロモクリプチンが、酸化ストレスにより誘導される細胞死に対して抑制効果を有することがわかった。
【0040】
[実施例2]
<細胞生存率試験2:分化誘導した神経細胞での酸化ストレス性細胞死に対する解析>
(方法)
DMEM/10% FBS培地に懸濁したSH−SY5Y細胞を、1.0×10 cells/wellになるように96well マイクロプレートに播種し、5% CO存在下、37℃で24時間培養した。その後、10μM 全トランス型レチノイン酸(RA)を含むDMEM/10% FBS(DMEM/FBS/RA)培地に置換し、5日目に最終濃度が5、10、20、40μMになるようにメシル酸ブロモクリプチンと、40μM メシル酸ブロモクリプチン作製時添加量と同量のDMSOとを添加し、さらに24時間培養した(メシル酸ブロモクリプチン処理)。なお、本実験ではDMSOのみを加えたものをコントロールとした。DMSO及びメシル酸ブロモクリプチン処理したSH−SY5Y細胞に、最終濃度が0、20、30、40、50μMになるようにメナジオンを添加し、5% CO存在下、37℃で培養を継続した(酸化ストレス処理)。メナジオンの代わりに0.1% Triton X−100/DMEM/10% FBS溶液で処理したものをブランクとした。4時間の酸化ストレス処理後、10% アラマーブルーを含む培地に置換し、5% CO存在下、37℃でさらに培養した。16時間の培養後、蛍光プレートリーダーを用い、励起波長530nm/検出波長580nmの蛍光量を測定することで、生細胞数を判定した。
【0041】
酸化ストレス剤であるメナジオンに対するメシル酸ブロモクリプチンの細胞死抑制効果の結果を図2に示す。グラフの横軸は、メナジオン濃度、縦軸は、細胞生存率を示す。各条件下での縦軸の数値は、コントロールにおけるメナジオン未処理(0μM)条件下での細胞の生存率を100%とした時の相対値として示している。
【0042】
(結果)
図2に示すように、メシル酸ブロモクリプチンで前処理したSH−SY5Y細胞の生存率は、メナジオンによる酸化ストレス処理したコントロールの細胞生存率との比較から、メシル酸ブロモクリプチンの濃度に依存して増加を示した。このことから、メシル酸ブロモクリプチンは、分化誘導SH−SY5Y細胞においても、酸化ストレスにより誘導される細胞死に対して抑制効果を有することがわかった。
【0043】
[実施例3]
<in vivoでの薬効試験>
(方法)
本試験では、ALS1病変型SOD1遺伝子(SOD1H46R)を導入・発現するALS−SOD1H46Rトランスジェニックマウスを使用した。マウスは昼夜12時間サイクル、23℃の条件下で飼育した。メシル酸ブロモクリプチンは0.5% カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)に懸濁した。メシル酸ブロモクリプチンは、ALS−SOD1H46Rトランスジェニックマウスのバランスビームテストでの神経症候が確認された時点(発症)から投与を開始した。メシル酸ブロモクリプチンの各個体の体重当たり投与量は、10mg、1mg/kgとし、個体が死亡するまで1日1回腹腔内投与により行った(メシル酸ブロモクリプチン投与群)。0.5% CMC−Na(5ml/kg)のみを投与したマウスをコントロール群(メシル酸ブロモクリプチン非投与群)とした。神経症候の発現評価法には、バランスビームテスト(ステンレス製棒使用;50cm長、0.9cm幅)を用いた。評価基準として5段階のグレードを設定した。なお、グレード3を発症と定めた。以下に評価基準を示す。
【0044】
<評価基準>
グレード5:棒上を後肢の滑りがなく正常に渡る
グレード4:時々後肢を滑らせるが、棒上を渡る
グレード3:頻繁に後肢を滑らすが、棒上を何とか渡る
グレード2:棒上を歩こうとすると落下する
グレード1:棒上に乗れない
【0045】
メシル酸ブロモクリプチン投与群及び非投与群の運動機能は、垂直昇降試験(ステンレス製棒使用;50cm長、0.9cm幅)により評価した。被検マウスが17週齢に達した時点から垂直昇降試験を開始した。垂直昇降試験の実施頻度は週1回とし、各マウスにつき5回行い、5回の試験の中の最高値を運動機能値とした。統計解析にはSPSS 16.0を使用した。
【0046】
(結果)
垂直昇降試験によるALS−SOD1H46Rトランスジェニックマウスの運動機能の保持能力は、投与開始時点(17週齢)ではメシル酸ブロモクリプチン投与群(10mg/kg)(n=5)及び非投与群(n=4)間で差は認められなかった(図3参照)。一方、21週齢時点には、メシル酸ブロモクリプチン投与群では運動機能が保持されていたが、非投与群では顕著な運動機能の低下が確認された(図3参照)。このことから、メシル酸ブロモクリプチン投与により生活の質(QOL)が向上されることが明らかとなった。
発症後(発症日:125.9±2.8日)の生存期間については、非投与群では27.8±2.1日(n=4)であったが、メシル酸ブロモクリプチン投与群では35.3±6.0日(n=4)(1mg/kg)、38.0±2.9日(n=5)(10mg/kg)であり、メシル酸ブロモクリプチン投与群で有意な投与量依存的な延命効果が認められた(図4参照)。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】HeLa細胞におけるメシル酸ブロモクリプチンの酸化ストレス性細胞死抑制効果を示す図である。
【図2】分化誘導SH−SY5Y細胞におけるメシル酸ブロモクリプチンの酸化ストレス性細胞死抑制効果を示す図である。
【図3】垂直昇降試験によるメシル酸ブロモクリプチン投与ALS−SOD1H46Rマウスの運動機能評価を示す図(箱ひげ図)である。
【図4】発症後ALS−SOD1H46Rマウスへのメシル酸ブロモクリプチン投与における発症後生存期間(Kaplan−Meier曲線)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロモクリプチン又はその薬理上許容し得る塩を有効成分として含有する筋萎縮性側索硬化症治療剤。
【請求項2】
前記ブロモクリプチンの塩が、メシル酸塩である請求項1に記載の筋萎縮性側索硬化症治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−13425(P2010−13425A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177279(P2008−177279)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度及び平成20年度、独立行政法人 医薬基盤研究所基礎研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(506227839)株式会社ニュージェン・ファーマ (2)
【Fターム(参考)】