説明

筐体の放熱構造、及び電子機器

【課題】発熱源を備える筐体において、放熱面積を拡大して放熱性能を向上する。
【解決手段】発熱源を備える筐体の放熱構造であって、筐体の周囲を覆い、且つ筐体に対し回転可能に結合されるグリップ部3を備え、筐体とグリップ部3とを熱伝導可能に接続する。具体的には、筐体に対しグリップ部3を回転可能に結合するヒンジ部7を備え、グリップ部3の熱伝導部材により形成されるグリップフレーム31にヒンジ部7を接続する。グリップ部3は、グリップフレーム31の周囲が被覆部材32で覆われている。発熱源は撮像素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱源を備える筐体の放熱構造と、その筐体の放熱構造を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラのような電子機器において、動作時に発生する熱を如何に下げるかが問題となっている。
例えば特許文献1において、リモコンが取り付けられる筐体の領域の一部に放熱部材を設けたり、リモコン及び表示部が取り付けられる筐体の領域の全部に放熱部材を設けたり、またはリモコンが取り付けられて表示部が閉じられる筐体の領域の全部に放熱部材を設ける放熱構造が提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−191270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放熱対策として、最も効果のある方法のひとつが、熱を拡散させるための放熱面積(外気に触れる面積)を拡げることである。
しかし、特許文献1の放熱構造では、リモコンを取り付けた状態では放熱部材がリモコンに隠れ十分に放熱できない問題がある。
また、小型のデジタルカメラにおいては、上記の問題に加え更に外気に触れる部分は人が持つ部分となることが多く、人が触れる部分に放熱対策を施すようなこともできないといった問題がある。
【0005】
本発明の課題は、発熱源を備える筐体において、人が触れる部分を確保しつつ放熱面積を拡大して放熱性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、発熱源を備える筐体の放熱構造であって、前記筐体の周囲を覆い、且つ前記筐体に対し回転可能に結合されるグリップ部を備え、前記筐体とグリップ部とを熱伝導可能に接続したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筐体の放熱構造であって、前記筐体に対しグリップ部を回転可能に結合するヒンジ部を備え、前記グリップ部の熱伝導部材により形成されるグリップフレームに前記ヒンジ部を接続したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の筐体の放熱構造であって、前記グリップ部は、前記グリップフレームの周囲が被覆部材で覆われていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体の放熱構造であって、前記発熱源は撮像素子であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の筐体の放熱構造を備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筐体の周囲を覆うグリップ部により放熱面積を拡大して放熱性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、カメラの斜視 図である。
【図2】図1のカメラの分解斜視図である。
【図3】図1のグリップ部を回転させた状態の図である。
【図4】図3のグリップ部及びレンズ筐体の詳細構成を示す図である。
【図5】図4のレンズ筐体のパネルへの撮像素子からの熱伝達構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成としてカメラを示すもので、1はレンズ筐体、2は表示筐体、3はグリップ部、4は撮影レンズ、5は表示部、6はシャッターボタンである。
【0014】
図示のように、カメラは、撮影レンズ4を有するレンズ筐体1と、液晶表示による表示部5及びその隣に並ぶシャッターボタン6を有する表示筐体2と、これら二つのレンズ筐体1及び表示筐体2の周囲を覆うコ字型のフレーム形状に形成したグリップ部3とから構成されている。
【0015】
そして、小さなレンズ筐体1に対し大きな表示筐体2とグリップ部3が二軸ヒンジ部を介してそれぞれ回転可能に結合されている。
すなわち、レンズ筐体1に対して、第1ヒンジ部を介して表示筐体2が回転可能に結合されるとともに、第2ヒンジ部7(図4参照)を介してグリップ部3が回転可能に結合されている。
【0016】
二軸ヒンジ部は、図1に示すように、レンズ筐体1に表示筐体2を結合する第1ヒンジ部の回転軸線L1と、レンズ筐体1にグリップ部3を結合する第2ヒンジ部7の回転軸線L2が互いに直交している。
【0017】
従って、レンズ筐体1に対し表示筐体2が第1ヒンジ部の回転軸線L1を中心に回転する。
また、図3に示すように、レンズ筐体1及び表示筐体2に対しグリップ部3が第2ヒンジ部7の回転軸線L2を中心に回転する。
【0018】
具体的には、グリップ部3は270度回転し、使用時にグリップ部3の角度を変えることで様々なスタイルで撮影ができる。
例えば、グリップ部3を開いて三脚スタンドのように立てて撮影したり、グリップ部3のコ字型フレーム形状を活かして壁面などのフックに掛けて撮影したり、グリップ部3をグリップしてカムコーダーのような持ち方でも撮影ができる(図3参照)。
【0019】
また、グリップ部3には、弾性を有する樹脂で形成されストラップを通すためのストラップ通し部材8が備えられている(図4参照)。
このストラップ通し部材8は、上記三脚スタンドのようにカメラを立てた場合に滑り止めの機能を果たす。
【0020】
なお、グリップ部3でレンズ筐体1及び表示筐体2の周囲を覆った状態では通常のカメラスタイルで撮影ができる(図1参照)。
【0021】
図4はグリップ部3及びレンズ筐体1の詳細構成を示すものである。
図示のように、グリップ部3は、ステンレスなどの熱伝導率の高い部材によりコ字型形状に形成されるグリップフレーム31の内面を除く周囲を、ポリカーボネート樹脂などの熱伝導率の低い被覆部材により形成されるグリップケース32で覆った構成となっている。
【0022】
レンズ筐体1は、アルミニュームなどの金属製のパネル11で形成され、このパネル11の上下面に第2ヒンジ部7を介して、グリップ部3のグリップフレーム31の開放上下端部がそれぞれ回転可能に結合される。
すなわち、第2ヒンジ部7は、金属製のヒンジ軸71に対しヒンジ金具72が回転可能に組み付けられたもので、ヒンジ軸71をパネル11にねじ止め固定して、ヒンジ金具72をグリップフレーム31にねじ止め固定する。
【0023】
図5はレンズ筐体1のパネル11への撮像素子9からの熱伝達構造を示すものである。
図示のように、発熱源である撮像素子9を搭載した基板12が伝熱シート13でパネル11の内側に貼り付けられている。
【0024】
以上、実施形態のカメラは、撮影時、特に動画撮影時に撮像素子9が大きく発熱し、その熱の多くは、図5に示すように、基板12、伝熱シート13と伝わっていき、パネル11に伝達される。
そして、パネル11に伝わった熱は、図4に示すように、ヒンジ軸71及びヒンジ金具72を介してグリップフレーム31へと伝達される。
【0025】
従って、図3に示したように、レンズ筐体1及び表示筐体2に対しグリップ部3を第2ヒンジ部7で回転させて開いた状態において、グリップケース32で外側を覆われたグリップフレーム31の内周面から外気に放熱される。
【0026】
このように、レンズ筐体1及び表示筐体2の周囲を覆うグリップ部3のコ字型フレーム形状のグリップフレーム31を利用して空気と接触する放熱面積を拡大することにより、放熱性能を向上することができる。
従って、撮像素子9の画質などの性能を維持できて、熱による故障・破壊を防止できる。
【0027】
また、グリップフレーム31の外側をグリップケース32で覆ったことで、手で握る部分を断熱して安全性も確保できる。
【0028】
なお、グリップケース32とグリップフレーム31の接する面は、面接触ではなく、数点の点接触や線接触として、両者間に空気層を設けることで、グリップフレーム31からグリップケース32への熱の伝導を防ぐことができる。
また、グリップフレーム31の外気に接する内周面は、平面ではなく、微小凹凸やリブなど付けてラジエター効果を持たせることも可能である。
【0029】
(変形例)
以上の実施形態においては、カメラとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラを備える携帯電話などの電子機器であってもよい。
また、実施形態では、撮像素子としたが、他の発熱源であってもよい。
さらに、筐体及びグリップ部の形状や材料等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 レンズ筐体
11 パネル
12 基板
13 伝熱シート
2 表示筐体
3 グリップ部
31 グリップフレーム
32 被覆部材
4 撮影レンズ
5 表示部
6 シャッターボタン
7 ヒンジ部
71 ヒンジ軸
72 ヒンジ金具
9 発熱源(撮像素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源を備える筐体の放熱構造であって、
前記筐体の周囲を覆い、且つ前記筐体に対し回転可能に結合されるグリップ部を備え、
前記筐体とグリップ部とを熱伝導可能に接続したことを特徴とする筐体の放熱構造。
【請求項2】
前記筐体に対しグリップ部を回転可能に結合するヒンジ部を備え、
前記グリップ部の熱伝導部材により形成されるグリップフレームに前記ヒンジ部を接続したことを特徴とする請求項1に記載の筐体の放熱構造。
【請求項3】
前記グリップ部は、前記グリップフレームの周囲が被覆部材で覆われていることを特徴とする請求項2に記載の筐体の放熱構造。
【請求項4】
前記発熱源は撮像素子であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体の放熱構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の筐体の放熱構造を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−137585(P2012−137585A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289317(P2010−289317)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】