説明

筐体の開閉構造

【課題】ハウジングに固定したカバーを開放するときに任意の位置で止められ、簡単な構成で美感に優れた電気機器の筐体の開閉構造を提供する。
【解決手段】ハウジング1およびカバー2の側壁に設けた取付穴にU字棒状体5を圧入固定するだけで、ヒンジが筐体の接合面に無いために筐体から突出せず、目立たない封止構造を得ることができる。また、ハウジングとカバーの取付ネジは、カバーがU字棒状体の取付部を支点として開閉するために、対向壁の半分だけに減らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成で操作性が良い電気機器のハウジングとカバーによる筐体の開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体の蝶番構造は、例えば高所に設置されるテレビ共聴用機器の例がある。この筐体の蝶番構造は、蝶番のボルトを締めても蓋が急激に開かず、且つボルトの締め具合に応じて蓋の開く位置を調整できるものである。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】実公昭59−036930号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の筐体の蝶番構造は、蓋体が開くときに回動軸棒取付部の外周面との摩擦で緩やかに止めるために、回動軸棒取付部が蓋体の集中荷重に耐えられるように大きくなり、美感上で好ましくなかった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、カバーを開放するときに任意の位置で止められ、簡単な構成で美感に優れた電気機器の筐体の開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の筐体の開閉構造は、有底筒状をなし、端面が開口しているハウジングと、ハウジングの側壁の内部に端面と平行に設けた第1の貫通孔と、端面を覆う蓋面を有するカバーと、カバーの内部に蓋面と平行に設けた第2の貫通孔と、第1の貫通孔と第2の貫通孔に圧入固定されるU字棒状体と、からなることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の筐体の開閉構造は、有底筒状をなし、端面が開口しているハウジングと、ハウジングの側壁の内部に端面と平行に設けた第1の貫通孔と、端面を覆う蓋面を有するカバーと、カバーの内部に蓋面と平行に設けた第2の貫通孔と、第1の貫通孔と第2の貫通孔に圧入固定される着脱自在の第1のU字棒状体と、ハウジングの側壁の対向壁の内部に第1の貫通孔と平行に設けた第3の貫通孔と、カバーの内部に第2の貫通孔と平行に設けた第4の貫通孔と、第3の貫通孔と第4の貫通孔に圧入固定される着脱自在の第2のU字棒状体と、からなることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の筐体の開閉構造は、U字棒状体が各貫通孔に圧入固定されるとき、連結部がハウジングおよびカバーの幅以下に収納されるために、ハウジングおよびカバーは切欠き部を設けたものである。
【0008】
さらに、本発明の筐体の開閉構造は、電気機器の回路基板がハウジングまたはカバーに固定された状態で収納されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の筐体の開閉構造は、ハウジングおよびカバーの側壁に設けた取付穴にU字棒状体を圧入固定するだけで、ヒンジが筐体の接合面に無いために筐体から突出せず、目立たない封止構造を得ることができる。また、ハウジングとカバーの取付ネジは、カバーがU字棒状体の取付部を支点として開閉するために、対向壁の半分だけに減らせる。さらに、ハウジングおよびカバーの両側壁に設けた取付穴にU字棒状体を圧入固定すれば、ハウジングとカバーの取付ネジが不要となるうえ、カバーはいずれか片方のU字棒状体を取り外すことにより開閉方向を変えられるようになり、施工性およびメンテナンス性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態における筐体30の一例である炎感知器40の外観図である。図2は、本発明の第1の実施形態における筐体30の一例である炎感知器40のU字金具5を圧入固定する状態の外観図である。図3は、本発明の第1の実施形態における筐体30の一例である炎感知器40のカバー2を開いた状態の外観図である。図4は、本発明の第1の実施形態における筐体30の背面図である。図5は、本発明の第1の実施形態における筐体30の側面図である。図6は、本発明の第1の実施形態における筐体30のカバー2が全開である状態を示す外観図である。
【0011】
炎感知器40は工場やプラント内の監視区域に設置され、火災による炎の炭酸ガス共鳴放射スペクトルを検出して火災判別する。図示しない検出素子および火災判別部が実装された回路基板10はハウジング1またはカバー2に固定されて、筐体30に収納されている。また、カバー2の開口部には、炭酸ガス共鳴放射スペクトルを透過させる光学フィルタ20が備えられている。
【0012】
ハウジング1およびカバー2は、それぞれ平面視として略方形に形成されている。ハウジング1の端面12に平行に設けた第1の貫通孔3と、カバー2の蓋面13に平行に設けた第2の貫通孔4とは、所定間隔だけ離れている。1対のU字金具5は、ハウジング1に設けた第1の貫通孔3とカバー2に設けた第2の貫通孔4の両脇から棒状部51を挿入して圧入固定される。これにより、U字金具5を圧入固定する第1の貫通孔3または第2の貫通孔4を支点としてハウジング1とカバー2を開閉できるため、全開状態の180°まで任意の角度で静止できる。また、第1の貫通孔3または第2の貫通孔4と、U字金具5との間に開閉時に発生する摩擦抵抗は、各貫通孔の側壁の一部を切り欠いたり、U字金具5の棒状部51の外径と第1の貫通孔3または第2の貫通孔4の内径の差を広げることで調整できる。なお、U字金具5(U字棒状体)は鉄鋼以外の材料でもよい。
【0013】
ハウジング1とカバー2を固定する図示しない取付ネジは、少なくともU字金具取付部6の反対側だけに設ければよい。また、U字金具5を挿入後に棒状部先端に抜止め用の金具等を固定してもよい。この第1の実施形態の場合は、一対のU字金具5が必要となるが、各貫通孔に圧入固定する棒状部51が短くなるために、小さい力で取付できる長所がある。さらに、略方形状のハウジング1およびカバー2の四隅の角部は切欠き部11を設けたことにより、U字金具5の連結部52が第1の貫通孔3または第2の貫通孔4に入らなくても、筐体30の幅から突出することがないために美感を損ねない。
【0014】
次に、本発明の第1の実施形態における炎感知器40の施工およびメンテナンス手順について説明する。まず、作業者は炎感知器40のハウジング1に設けられた図示しない基板部をボルト等で取付面に設置する。次に、取付ネジ用溝7から図示しない取付ネジを外すことにより、U字金具5を圧入固定したハウジング1の第1の貫通孔3またはカバー2の第2の貫通孔4を支点としてカバー2を開く。なお、図示しない取付ネジを取り外してもカバー2の回転発生力に対して、第1の貫通孔3または第2の貫通孔4とU字金具の棒状部51は十分な摩擦抵抗があるためにカバー2が急激に動き出すことは無い。そして、図示しない受信部からの電線と炎感知器40の配線を接続したり、部品のオーバーホールや修理などの作業終了後、カバー2を再び全閉状態の位置まで戻してから図示しない取付ネジによりハウジング1と固定する。
【0015】
筐体30が防水または防滴仕様が要求されるときは、ハウジング1の端面12とカバー2の蓋面13の接合面に図示しないパッキンを挟んでもよい。または、ハウジング1とカバー2のいずれかに凹凸部を設け、嵌合するようにしてもよい。また、ハウジング1に蓋面13を設け、カバー2に端面12を設けてもよい。
【0016】
図7は、本発明の第2の実施形態における筐体30の背面図である。第1の実施形態と異なる点は、ハウジング1に設けた第1の貫通孔3とカバー2に設けた第2の貫通孔4の両脇から1対の短いU字金具5を圧入固定する代わりに、第1の貫通孔3と第2の貫通孔4のいずれか片側から1本の長いU字金具14を圧入固定する。その結果、第1の実施形態と同じ効果が得られるうえに、長いU字金具14が1本だけでよいことによる美感の向上と、組立工数の削減が可能である。
【0017】
図8は、本発明の第3の実施形態における筐体30の平面図である。図9は、本発明の第3の実施形態における筐体30の側面図である。図10は、本発明の第3の実施形態における筐体30の一方のU字金具5を各貫通孔から取り外し、残り一方のU字金具取付部6を支点としてカバー2を開いた状態を示す外観図である。
【0018】
第3の実施形態は、第1の実施形態におけるU字金具取付部6の対向壁にも同様に、第3の貫通孔8と第4の貫通孔9とからなるU字金具取付部6を設けるものである。そして、双方のU字金具取付部6にU字金具5を圧入固定した状態において、ハウジング1とカバー2は全閉状態となる。よって、第1の実施形態のようにハウジング1とカバー2の固定に図示しない取付ネジは使用しなくてもよいので、組立工数をさらに短縮できる。また、カバー2を開閉する際は、いずれか一方のU字金具5を取り外すことにより、残り一方のU字金具取付部6の各貫通孔が支点となり、作業者が設置現場の状況に応じてカバー2の開閉する方向を決めることができる。
【0019】
第2の実施形態と同様にして、1対の短いU字金具5の代わりに1本の長いU字金具14を使用してもよい。
【0020】
次に、本発明の第3の実施形態における炎感知器40の施工およびメンテナンス手順について説明する。作業者は、ハウジング1およびカバー2の両側壁に設けられた第1の貫通孔3および第2の貫通孔4に圧入固定されたU字金具5または第3の貫通孔8および第4の貫通孔9に圧入固定されたU字金具5のうち、いずれか一方を取り外すことによって、残り一方のU字金具取付部6を支点としてカバー2を開く。なお、片側のU字金具5を取り外しても、カバー2の回転発生力に対して各貫通孔とU字金具5の棒状部51十分な摩擦抵抗があるためにカバー2が急激に動き出すことは無い。この時、炎感知器40の周囲にカバー2を開放することを妨げる障害物があるかを確認しながら、カバー2の開閉方向と角度を選択できる。そして、図示しない受信部からの電線と炎感知器40の配線を接続したり、部品のオーバーホールや修理などの作業終了後、カバー2を再び全閉状態の位置まで戻して、取り外したU字金具5を各貫通孔に圧入固定してロック状態とする。
【0021】
本発明は炎感知器40の例を説明したが、煙感知器や熱感知器に用いもよい。また、各種の電気機器のハウジング1とカバー2に用いてもよい。さらに、作業者以外が誤ってU字金具5を取り外せないように、いたずら防止ネジ等を用いてもよい。
【0022】
本発明の第1の実施形態においては、U字金具5は第1の貫通孔3および第2の貫通孔4に圧入固定しているため、ハウジング1とカバー2を固定する図示しない取付ネジは、従来の半分の数量だけ取付すれば良く、組立工数が削減できる。また、U字金具5は筐体30の切欠き部11に収納されるため、目立たずに美感上の点で優れている。
【0023】
本発明の第3の実施形態においては、ハウジング1とカバー2の図示しない取付ネジは不要であるため、第1の実施形態よりもさらに組立工数が削減できる。また、着脱するU字金具5を選択することで、カバー2の開閉する方向を変えられる。


【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態における筐体30の一例である炎感知器40の外観図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における筐体30の一例である炎感知器40のU字金具5を圧入固定する状態の外観図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における筐体30の一例である炎感知器40のカバー2を開いた状態の外観図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における筐体30の背面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における筐体30の側面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における筐体30のカバー2が全開である状態を示す外観図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における筐体30の背面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における筐体30の平面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における筐体30の側面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態における筐体30の一方のU字金具5を各貫通孔から取り外し、残り一方のU字金具取付部6を支点としてカバー2を開いた状態を示す外観図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ハウジング
2 カバー
3 第1の貫通孔
4 第2の貫通孔
5 U字金具(U字棒状体)
6 U字金具取付部
7 取付ネジ用溝
8 第3の貫通孔
9 第4の貫通孔
10 回路基板
11 切欠き部
12 端面
13 蓋面
14 長いU字金具
20 光学フィルタ
30 筐体
40 炎感知器
51 棒状部
52 連結部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状をなし、端面が開口しているハウジングと、前記ハウジングの側壁の内部に前記端面と平行に設けた第1の貫通孔と、前記端面を覆う蓋面を有するカバーと、前記カバーの内部に前記蓋面と平行に設けた第2の貫通孔と、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔に圧入固定されるU字棒状体と、からなることを特徴とする筐体の開閉構造。
【請求項2】
有底筒状をなし、端面が開口しているハウジングと、前記ハウジングの側壁の内部に前記端面と平行に設けた第1の貫通孔と、前記端面を覆う蓋面を有するカバーと、前記カバーの内部に前記蓋面と平行に設けた第2の貫通孔と、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔に圧入固定される着脱自在の第1のU字棒状体と、前記ハウジングの側壁の対向壁の内部に前記第1の貫通孔と平行に設けた第3の貫通孔と、前記カバーの内部に前記第2の貫通孔と平行に設けた第4の貫通孔と、前記第3の貫通孔と前記第4の貫通孔に圧入固定される着脱自在の第2のU字棒状体と、からなることを特徴とする筐体の開閉構造。
【請求項3】
前記U字棒状体が各貫通孔に圧入固定されるとき、連結部が前記ハウジングおよび前記カバーの幅以下に収納されるために、前記ハウジングおよび前記カバーは切欠き部を設けた請求項1乃至2記載の筐体の開閉構造。
【請求項4】
電気機器の回路基板がハウジングまたはカバーに固定された状態で収納される請求項1乃至3記載の筐体の開閉構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−266145(P2007−266145A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86679(P2006−86679)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】