説明

筐体内冷却用熱交換器

【課題】小型化が進んだ筐体にも設置可能でありながら高い熱交換能力と内気側の高風量が両立した安価な熱交換器を提供すること。
【解決手段】発熱部品収納筐体2内の空気は、熱交換器ケース3の外側の面から、内気側ファン5によって、熱交換器ケースに設けられた内気側吸気口を通過して熱交換器ケース内に吸い込まれ上下二手に分かれて、内気側流路19に設けられた内気側フィン14の間を内気側フィンに熱を奪われながら流れ、上下の第1,第2の内気側排気口8,9から排気される。熱を奪われることにより空気の温度が下がり、第1,第2の内気側排気口から排気された空気は、発熱部品(図示せず)の表面を流れることで発熱部品から熱を奪い、発熱部品の温度を下げる。発熱部品収納筐体内を循環しながら、発熱部品から熱を奪うことによって温度が上昇した発熱部品収納筐体内の空気は、再び、内気側ファンによって筐体内冷却用熱交換器1内に戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内冷却用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工工場等においては、粉塵や切削液等による電子部品や電気配線部品の汚染や損傷を防ぐために、これらの電子部品や電気配線部品を密閉化した筐体内に収納して使用する場合が少なくない。電子部品の発熱量が大きい場合には、筐体の表面からの放熱だけでは、筐体内の空気温度が上昇し、発熱部品の温度も許容温度以上に上昇して、寿命が短くなったり、故障したりするという問題が発生する。その問題を回避するために筐体内部に直接外気を取り入れて換気することはできないので、その代わりに筐体内部の空気と筐体外部の空気との間で熱交換器を使用して熱交換を行う方法が用いられている。
【0003】
このような目的で使用される一般的な構成の熱交換器としては、図14のように、発熱部品収納筐体2内部の空気が流れる内気側流路19と発熱部品収納筐体2外部の空気が流れる外気側流路20をベース板の両面にフィンを設置した熱交換ヒートシンク12(図3参照)やコルゲートフィン18(図4参照)で仕切り、内気側ファン5で内気側流路19に発熱部品収納筐体2内部の空気を流し、外気側ファン6で外気側流路20に発熱部品収納筐体2外部の空気を流して、発熱部品収納筐体2内部の空気と発熱部品収納筐体2外部の空気の間で熱交換する構造が一般的である。構造はやや複雑になり、組立コストが上昇する。また、図15のように、内気側ファン5と外気側ファン6を熱伝導率が非常に高いヒートパイプ31で熱的に接続した構造もよく知られている。構造はやや複雑になり、組立コストが上昇する。
筐体内冷却用熱交換器に関して、特許文献1には、筐体内に後付けする冷却装置を筐体内の空気が流れる内気通路および筐体外の空気が流れる外気通路とからなる二重構造として、この二重構造部分で筐体内の空気と筐体外の空気とで熱交換し、筐体内で発生した熱を筐体外に放出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4403823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、技術の趨勢として、他の電子機器と同様に、発熱部品を内蔵する筐体も小型化が要求されている。筐体が小型になると、筐体表面からの放熱量が減少し、熱交換器による放熱量を増やす必要があるが、熱交換器が大型化しては意味がない。即ち、小型で熱交換能力の高い熱交換器が必要とされている。また、熱交換能力が高いと、筐体内の内気側空気の温度は低下するが、発熱部品の温度は低くなるとは限らない。発熱部品から内気側空気への熱伝達による放熱量は、発熱部品と内気側空気の温度差に比例すると同時に、発熱部品の表面を流れる空気の流速の平方根にほぼ比例するためである。筐体内の空気の流速を高くするためには攪拌ファンの使用も考えられるが、攪拌ファンを設置するスペースを確保するために、その分筐体が大型化することは免れない。攪拌ファンを使用しないで、筐体内の空気の流速を大きくするには、熱交換器の内気側排気口からの流量(風量)を大きくすれば良い。しかし、小型の熱交換器の熱交換能力を高くしようとすると、熱交換器内の内気側流路に設ける吸熱フィンの表面積を広く確保するためにフィンのピッチが細かくなり、その結果、狭いフィン間を流れることによって発生する圧力損失が大きくなり、内気側流路に空気を流す内気側ファンの圧力―流量特性(P−Q特性)に従って、図13に示したように、流量が減少しがちであるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に開示される技術では、1個のモータで内気ファンを回すという特殊構造であること、複数の熱交換器を設置していること、冷却器(熱交換器)のケースが凹凸のある構造を有していること、仕切り板の形状が複雑であることから、部品コストと組立てコストが高く、高静圧を得やすい遠心ファンは高流量が得にくい問題がある。軸流ファンを使用しても、軸流ファンの軸流方向の吸い込み側あるいは吹き出し側に完全な遮蔽障害物である仕切り板が近接して対向しており、軸流ファンを使用しても高風量が得られる構造にはなっていない。
小型筐体用の熱交換器はコスト面でも低価格であることが要求されることが多く、部品点数の増加、高価な部品の使用、組立コストの増加は極力抑えることが必要であり、シンプルな構造で上記の課題を解決する必要がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記点に鑑み、小型化が進んだ筐体にも設置可能でありながら高い熱交換能力と内気側の高風量が両立した安価な熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、発熱部品を収納した筐体の壁面に設置され、前記筐体内の空気を流入するための内気側吸気口と流入した前記筐体内の空気を流出するための内気側排気口を設けた熱交換器ケースと、前記熱交換器ケース内を前記筐体内の空気が流れる内気側流路と前記筐体外の空気が流れる外気側流路に仕切る第1の隔壁部材の前記内気側流路側の面に内気側フィンと前記外気側流路側の面に外気側フィンを設けた熱交換ヒートシンクと、前記筐体内の空気を前記内気側吸気口から吸気し、前記内気側フィンが設けられた前記内気側流路を通して前記内気側排気口から排気する内気側ファンと、前記筐体外の空気を前記筐体外の空気が前記熱交換ケースに流入するための外気側吸気口から吸気し、前記外気側フィンが設けられた前記外気側流路を通して、流入した前記筐体外の空気が流出する外気側排気口から排気する外気側ファンを備え、前記熱交換ヒートシンクは、前記第1の隔壁部材と前記内気側フィンに垂直な断面に垂直な方向に長さを有する単一の熱交換ヒートシンクであり、前記内気側排気口は、前記熱交換ヒートシンクの長さ方向の一方の端部付近に少なくとも1個設けられた第1の内気側排気口と、前記熱交換ヒートシンクの長さ方向の他方の端部付近に少なくとも1個設けられた第2の内気側排気口から構成され、前記内気側吸気口は、前記第1の内気側排気口と前記第2の内気側排気口の間に設けられ、前記内気側ファンは、軸流ファンであり、前記内気側フィンの先端部に対向して配置され、前記内気側ファンによって、前記筐体内の空気が、前記内気側吸気口から前記内気側流路を通って、前記第1の内気側排気口と前記第2の内気側排気口の両方から排気されることを特徴とする筐体内冷却用熱交換器である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記第1の内気側排気口からの排気温度と前記第2の内気側排気口からの排気温度が略等しくなる位置に前記内気側吸気口と前記内気側ファンを設置したことを特徴とする請求項1記載の筐体内冷却用熱交換器である。
請求項3に係る発明は、前記熱交換器ケースの外形が前記筐体内冷却用熱交換器を前記筐体に取付けるためのフランジ部と、前記内気側吸気口と前記内気側排気口のための開口部を除いて概略直方体であり、板金を加工して製造されていることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体内冷却用熱交換器である。
請求項4に係る発明は、前記熱交換ヒートシンクが金型からの押出し成形により製作されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる成形物であり、前記熱交換ヒートシンクの前記長さ方向に前記成形物を所定の長さに切断する以外の切削加工が施されていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかひとつに記載の筐体内冷却用熱交換器である。
請求項5に係る発明は、前記内気側吸気口と前記第1の内気側排気口の間の前記内気側フィンの先端部と前記熱交換器ケースの内面の間に第1の充填用部材、前記内気側吸気口と前記第2の内気側排気口の間の前記内気側フィンの先端部と前記熱交換器ケースの内面の間に第2の充填用部材を設置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の筐体内冷却用熱交換器である。
請求項6に係る発明は、前記熱交換ヒートシンクを構成する前記第1の隔壁部材と概略同じ幅の表面にフィンが形成されていない第2の隔壁部材を前記第1の隔壁部材の前記長さ方向の少なくとも一端に接続して、隔壁部材の全長を伸ばしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載の筐体内冷却用熱交換器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、小型化が進んだ筐体にも設置可能でありながら高い熱交換能力と内気側の高風量が両立した安価な熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1の筐体内冷却用熱交換器の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1の筐体内冷却用熱交換器の構造を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態1の筐体内冷却用熱交換器に用いられる熱交換ヒートシンクの外観斜視図である。
【図4】本発明の実施形態1の筐体内冷却用熱交換器に用いられるコルゲートフィンの外観斜視図である。
【図5】実施形態1の変形例を示す筐体内冷却用熱交換器の外観斜視図である。
【図6】実施形態1の変形例を示す筐体内冷却用熱交換器の概略断面図である。
【図7】実施形態1のその他の変形例を示す筐体内冷却用熱交換器の概略断面図である。
【図8】本発明の実施形態2による筐体内冷却用熱交換器の構造を示す概略断面図である。
【図9】本発明の実施形態3による筐体内冷却用熱交換器の構造を示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態4による筐体内冷却用熱交換器の構造を示す概略断面図であり、外気側ファンを取付けたパネルを筐体に取付けた状態(a)と、筐体から取外した状態(b)を示す図である。
【図11】本発明の実施形態5による筐体内冷却用熱交換器の構造を示す概略断面図(a)と内気側ファンを外した状態で内気ファン取付け面側から見た熱交換器の外観図(b)である。
【図12】本発明の実施形態6による筐体内冷却用熱交換器の構造を示す概略断面図である。
【図13】軸流ファンと遠心ファンの圧力−流量特性(P−Q特性)を模式的に示す図である。
【図14】従来の技術に係る筐体内冷却用熱交換器の構造を示す断面模式図である。
【図15】ヒートパイプを使用した従来の技術に係る筐体内冷却用熱交換器の構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<実施形態1>
図1,図2,図3,図4は、本発明の実施形態1を示しており、図1は、実施形態1の熱交換器を筐体内部側から見た斜視図であり、図2は、筐体の内側に取付けた状態のこの熱交換器の構造を示す断面模式図であり、白抜きの矢印は空気の流れを示している。図3は、この熱交換器に使用している熱交換ヒートシンクの斜視図である。図4は、本発明の実施形態1の筐体内冷却用熱交換器に用いられるコルゲートフィンの外観斜視図である。
【0013】
図2に示されるように、発熱部品収納筐体2内の空気は、熱交換器ケース3の外側の面から、内気側吸気口7に接続して内気側フィン14の内気側フィンの先端部15(図3参照)に対向して配置された内気側ファン5によって、熱交換器ケース3に設けられた内気側吸気口7を通過して熱交換器ケース3内に吸い込まれて内気側流路19に流れ込み、上下二手に分かれて、内気側流路19,19に設けられた内気側フィン14の間を内気側フィン14に熱を奪われながら流れ、上下の第1,第2の内気側排気口8,9から排気される。
熱を奪われることにより空気の温度が下がり、第1,第2の内気側排気口8,9から排気された空気は、発熱部品(図示せず)の表面を流れることで発熱部品から熱を奪い、発熱部品の温度を下げる。発熱部品収納筐体2内を循環しながら発熱部品から熱を奪うことによって温度が上昇した発熱部品収納筐体2内の空気は、再び、内気側ファン5によって筐体内冷却用熱交換器1内に戻される。発熱部品の温度を低く保つには、発熱部品と発熱部品収納筐体2内の空気の温度差が大きいことと、第1,第2の内気側排気口8,9からの空気の流量(風量)が大きく、発熱部品表面の空気の流速(風速)が大きいことが要求される。
【0014】
実施形態1では、第1,第2の内気側排気口8,9が上下2ヶ所に設けられ、内気側ファン5と内気側吸気口7がその第1,第2の内気側排気口8,9の間に設置されているので、フィンピッチを細かくして(すなわちフィン枚数を多くして)、全長も長くして、高い熱交換能力を得るための必須条件であるフィン表面積の大きい熱交換ヒートシンク12(図3参照)を使用できる。そして、内気側吸気口7から第1,第2の内気側排気口8,9までの距離が短く、上下方向に流れる流路の断面積が大きくなるので、内気側吸気口7から第1,第2の内気側排気口8,9までの圧力損失が小さく、第1,第2の内気側排気口8,9からの風量を大きくできる。内気側ファン5と内気側吸気口7の位置は、第1の内気側排気口8からの排気温度と第2の内気側排気口9からの排気温度が略等しくなる位置にすることが、第1の内気側排気口8または第2の内気側排気口9のいずれか一方から放熱量が少なく高温のままの空気が発熱部品収納筐体2内に還流されるというような内気側フィン14の一部しか活用していない状態となることによる熱交換能力の低下を防ぐことができるので望ましい。
【0015】
熱交換器ケース3は、発熱部品収納筐体2の壁面に取付けるための熱交換器ケース3のフランジ4(図5参照)と、内気側吸気口7と内気側排気口8,9のための開口部の部分を除いて、概略直方体であり、板金を加工して容易に製造することができるので低コストで製造できる。
【0016】
図3に示される熱交換ヒートシンク12は、長さ方向に垂直な断面形状が一定であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金の金型からの押出し成形により製作できる成形物であり、熱交換ヒートシンク12を所定の長さに切断する以外の切削加工が施されていないので、低コストで製作できる。熱交換ヒートシンク12は、金型からの押出し成形により製作されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる成形物を所定の長さに切断するだけで製作すると最も低コストで製作できる。複数の内気側排気口8,9を設けながら、単一の熱交換ヒートシンク2しか使用しないことと相まって、熱交換ヒートシンク12に要する部品コストも組立コストも少なくできる。
【0017】
熱交換器ケース3を削り出しや型に流し込んで作ると製作費が高くなったり、ケースの厚さが厚くなって小型化が難しくなったりするが、熱交換器ケース3は単純な直方体にすることによって、板金の切断、折り曲げ、貼り合わせだけで簡単に製作できるので、薄く軽量な熱交換器ケースを低コストで得ることができる。
【0018】
一般に、フィンの表面積を広げるために、熱交換ヒートシンク12の幅を広げたり、フィンの高さを高くしたりすると、押出し金型が大型になり高価になる。しかし、実施形態1では、図3に示した熱交換ヒートシンク12の形状から分かるように、第1の隔壁部材13と内気側フィン14と外気側フィン16に垂直な断面に垂直な方向の熱交換ヒートシンク12の長さ方向と押出し方向は一致しているので、熱交換ヒートシンク12の長さを長くしてフィン表面積を広げても押出し金型を大型化する必要がない。このように、幅よりも長さ方向が大きい熱交換ヒートシンク12を使用した場合に、内気側吸気口7を第1の内気側排気口8と第2の内気側排気口9の間に設けた構造は、内気側流量の増加に特に顕著な効果をもたらす。なお、実施形態1では、図3の熱交換ヒートシンク12を図4のコルゲートフィンで置き換えることも可能である。
【0019】
第1,第2の内気側排気口8,9の配置について説明すると、上下の第1,第2の内気側排気口8,9の一方あるいは両方を、熱交換器ケース3の内気側ファン5を取付けた側面でなく、図5,図6のように、その側面に直交する熱交換器ケース3の上面に設けてもよい。あるいは、第1,第2の内気側排気口8,9を熱交換器ケース3の下面に設けてもよいし、側面と上面や下面の両方に設けてもよい。
【0020】
このような第1,第2の内気側排気口8,9の配置によって、熱交換ヒートシンク12を構成する第1の隔壁部材13と内気側フィン14と熱交換器ケース3で形成される第1のコーナー部25,25に空気が移動しにくい風溜まりが発生することが防止でき、熱交換ヒートシンク12の長さ方向の端部まで内気側フィン14間を空気がスムーズに通過する。これによって、内気側フィン14の表面を熱交換するために有効に利用できるようになり、高い熱交換能力を得ることができる。但し、第1,第2の内気側排気口8,9を熱交換器ケース3の上面や下面に設けると、第1、第2の内気側排気口8,9からの温度の下がった空気が発熱部品の方に流れにくくなる懸念があり、第1,第2の内気側排気口8,9に風向きを変えるための風向偏向板27(図6参照)を設置してもよい。
【0021】
同様に、特に発熱量の大きい発熱部品の温度上昇を抑えるために、第1,第2の内気側排気口8,9にその部品の方向に選択的に排気口からの風を向けるための風向偏向板(図示せず)を設置してもよい。
【0022】
一方、発熱部品収納筐体2の外部の空気は、発熱部品収納筐体2の壁面に設けられた外気側吸気口10の発熱部品収納筐体2内側に、外気側フィン16の外気側フィンの先端部17に対向して設置された外気側ファン(軸流ファン)6によって、外気側吸気口10から吸い込まれて、外気側ファン6を通過後、外気側流路20に流れ込み、外気側流路20に設けられた外気側フィン16の間を外気側フィン16から熱を奪いながら流れ、外気側排気口11から排気される。なお、実施形態1では、外気側吸気口11から外気側ファン6よって外気側流路20に流れ込んだ発熱部品収納筐体2外の空気が外気側フィン16間を経由せずに外気側排気口11に流れることを抑制する導風板28を備えている。
【0023】
なお、図1,図2,図3,図4の実施形態1では、外気側ファン6を熱交換ヒートシンク12の長さ方向の下側の一端付近に設置しているが、上下逆転して、外気側ファン6を熱交換ヒートシンク12の長さ方向の上側の一端付近に設置しているもよい。
あるいは、図7に示したように、外気側ファン6を、内気側ファン5と同じように、外気側排気口11,11を上下に設けて、その間に設置しても良い。更には、熱交換ヒートシンク12を横に90°傾倒して、第1の内気側排気口8と第2の内気側排気口9を上下ではなく、左右になるように配置しても良い。また、安全のため、外気側ファン6の外側にファンガードを取付けても良く、外気側排気口11は異物混入防止等のためにスリットパンチングとしても良い。
【0024】
上述したように実施形態1は、空気の流れ方向の長さが長い単一の熱交換ヒートシンクと高風量を得るのに有利な軸流ファンを使用しながら、同様の熱交換ヒートシンク12の一端から他端まで空気を流す従来の構造に比べて、内気側ファン5の表面積は同じでほぼ同等の熱交換能力を有しながら、内気側吸気口7から第1,第2の内気側排気口8,9までにフィン間を流れる距離は約1/2になり、フィン間を流れる内気側流路19の流路断面積は約2倍になるので、内気側フィン間を空気が流れることによる圧力損失は大幅に減少し、内気側ファンのP−Q特性に従って、第1の内気側排気口と第2の内気側排気口の内気側排気流量は大幅に向上するので、攪拌ファンを用いることなく、筐体内の空気の温度も発熱部品の温度も低く保つことが可能になる。
【0025】
また、上記のように、圧力損失が低下するので、圧力損失が高いピッチの細かいフィンが使用できるので、内気側フィンの表面積を確保しながら、熱交換ヒートシンク12の体積を小さくできるので熱交換器全体を小型化することができ、小型化が進む筐体にも適用することができる。また、圧力損失が低下するので、比較的小型のファンでも、必要な風量を得ることができることも熱交換器全体の小型化に有利である。
【0026】
また、内気側吸気口7と第1の内気側排気口8までの間における内気側空気の単位流量当りの放熱量と内気側吸気口7と第2の内気側排気口9までの間における内気側空気の単位流量当りの放熱量がほぼ同じになる位置に内気側吸気口7と内気側ファン5を設置して、第1の内気側排気口8からの排気温度と第2の内気側排気口9からの排気温度が略等しくなるようにすることによって、一方の内気側排気口から放熱量が少なく高温のままの空気が筐体内に還流されるというような内気側フィンの一部しか活用していない状態となることによる熱交換能力の低下を防ぐことができ、最も高い熱交換能力を得ることができる。
【0027】
また、構造的には、内気側吸気口7と内気側ファン5の位置を変え、第1,第2の内気側排気口8,9のための熱交換器ケース3の開口部を増やしているだけで、新たな部品の追加や、高価な部品との置換え、組立工数の増加等が無く、コストが上昇する要因は殆どなく、安価に製作できる。
【0028】
なお、内気側ファン5も外気側ファン6も、ファンによる風向きが反対方向になるように取付け、第1,第2の内気側排気口8,9、外気側排気口11をそれぞれ内気側吸気口、外気側吸気口と読み替え、内気側吸気口7、外気側吸気口10をそれぞれ内気側排気口、外気側排気口と読み替える構造も、当然考えられるが、軸流ファンでは、吹き出し側に障害物(本構造ではフィンが障害物になる)があっても影響は少ないが、吸込み側に障害物があると流量がP−Q特性からずれて大幅に低下する。内気側の流量が低下することは本発明の目的に反し、外気側の流量が低下することも望ましいことではない。一方、ファンの吸込み側と障害物の距離を流量への影響がない距離に広げようとすると熱交換器の大型化は避けられない。従って、本発明に対して、ファンをファンによる風向きが反対方向になるようにすることは、構造としては可能だが、本発明の目的を実現する上では望ましい構造ではない。
【0029】
<実施形態2>
図8は、本発明における筐体内冷却用熱交換器の実施形態2を示したものである。実施形態1では、外気側ファン6を発熱部品収納筐体2の内側に取付けていたが、実施形態2では、外気側ファン6を発熱部品収納筐体2の外側に取付けている。これにより、発熱部品収納筐体2の外側に外気側ファン6が突起物として張り出している。美観上、あるいは、発熱部品収納筐体2の設置場所の制約がない場合には、外気側吸気口10から外気側ファン6よって外気側流路20に流れ込んだ発熱部品収納筐体2の外の空気が外気側フィン16間を経由せずに外気側排気口11に流れることを抑制する導風板28が不要となって部品点数の減少、部品コストの低下、組立コストの低下等が図れると共に、導風板28の設置していたスペースが不要になるため、筐体内冷却用熱交換器1の小型化(この場合は、筐体内冷却用熱交換器1の厚さ(熱交換器の奥行き)の減少)が可能になる。
【0030】
<実施形態3>
図9は、本発明における筐体内冷却用熱交換器1の実施形態3を示したものである。実施例形態1では、外気側ファン6は外気側フィンの先端部17に対向して設置していたが、実施形態3では外気側ファン6は熱交換ヒートシンク12を長さ方向に延長した位置に設置されており、熱交換ヒートシンク12を構成する第1の隔壁部材13に接続した第3の隔壁部材24によって、外気側吸気口10から外気側ファン6よって外気側流路20に吸い込まれた発熱部品収納筐体2の外の空気が発熱部品収納筐体2内の空気と混ざることなく、外気側フィン16の間を流れて外気側排気口11から排気できるようにしている。これにより、筐体内冷却用熱交換1の上下方向の長さ(熱交換器の高さ)は大きくなるが、筐体内冷却用熱交換器1の厚さ(熱交換器の奥行き)は、外気側ファン6による発熱部品収納筐体2の外側への突起物を設けることなく、減少させることができる。そのため、高さには余裕があるが奥行きに余裕が無い小型筐体に適用可能になる。
【0031】
<実施形態4>
図10は、本発明における筐体内冷却用熱交換器1の実施形態4を示したものである。実施形態1では、外気用吸気口10や外気用排気口11を発熱部品収納筐体2の壁面に設けており、外気側ファン6も発熱部品収納筐体2の壁面に外気側吸気口10に接続するように発熱部品収納筐体2の内側から取付けていたが、実施形態4では、発熱部品収納筐体2の壁面に外気用吸気口10や外気用排気口11より大きな開口部を設け、この開口部を筐体の外側から覆うパネル29に外気用吸気口10や外気用排気口11を設け、外気側ファン6もこのパネル29に外気用吸気口10に接続するように発熱部品収納筐体2の内側方向から取付けている。これにより、発熱部品収納筐体2の外側からパネル29を外すことによって、外気側フィン16を簡単に露出させることができ、発熱部品収納筐体2の外から吸い込んだ粉塵や切削液によって汚染あるいは目詰まりした外気側フィン16の清掃や、外気側ファン6の清掃や交換等のメンテナンスが容易にできるようになり、発熱部品収納筐体2の扉を開く必要がないので、扉を開くことによって発熱部品収納筐体2の内部を汚染することも回避できる。
【0032】
<実施形態5>
図11は、本発明における筐体内冷却用熱交換器の実施形態5を示したものである。実施形態1では、内気側ファン5と内気側フィンの先端部15とのギャップは筐体内冷却用熱交換器1のケースを構成している薄い板金の厚さしかないが、実施形態5では、内気側吸気口7と第1の内気側排気口8の間の内気側フィンの先端部15と筐体内冷却用熱交換器1のケースの内面の間に第1の充填用部材21、内気側吸気口7と第2の内気側排気口9の間の内気側フィンの先端部15と筐体内冷却用熱交換器1のケースの内面の間に、第1の充填用部材21と同じ厚さの第2の充填用部材22を設置して、内気側ファン5の周辺の筐体内冷却用熱交換器1のケースの内面と内気側フィン14の先端との間に隙間を形成している。これにより、熱交換ヒートシンク12の幅が内気側ファン5の直径より大きい場合でも、内気側ファン5からはみ出した熱交換ヒートシンク12の部分のフィン間に内気側ファン5からの風が流れ込まないという問題が解決できて小形の内気側ファン5も使用できる。充填板(第1の充填用部材21,第2の充填用部材22)の厚さは必要以上に厚くしても意味がなく、筐体内冷却用熱交換器1の小型化を阻害するだけであり、充填板の厚さは数mm〜十数mmの範囲に保つことが望ましい。
【0033】
<実施形態6>
図12は、本発明における筐体内冷却用熱交換器1の実施形態6を示したものである。
実施形態1では、熱交換ヒートシンク12の長さ方向の端部は筐体内冷却用熱交換器のケースに接しているが、実施形態6では、熱交換ヒートシンク12を構成する第1の隔壁部材13と概略同じ幅の表面にフィンが形成されていない第2の隔壁部材23,23を第1の隔壁部材の長さ方向の両端部に接続して、熱交換ヒートシンク12の長さ方向の端部を筐体内冷却用熱交換器1のケースから離している。なお、寸法の関係で、第2の隔壁部材23は、熱交換ヒートシンク12の第1の隔壁部材13の一端部に設ける場合もある。
【0034】
これにより、熱交換ヒートシンク12を構成する第1の隔壁部材13と内気側フィン14と筐体内冷却用熱交換器1のケースで形成される第1のコーナー部25や、熱交換ヒートシンク12を構成する第1の隔壁部材13と外気側フィン16と筐体内冷却用熱交換器1のケースで形成される第2のコーナー部26に空気が移動しにくい風溜まりが発生することが防止でき、熱交換ヒートシンク12の長さ方向の端部まで内気側フィン14間あるいは外気側フィン16間を空気がスムーズに通過するので、筐体内冷却用熱交換器1の高さは少し高くなるが、内気側フィン14あるいは外気側フィン16の表面を熱交換により有効に利用できるようになるので、高い熱交換能力を得ることができる。
【0035】
熱交換ヒートシンク12の両端のフィンを切削加工により除去することにより、同様の構造は実現できるが、押出し成形した熱交換ヒートシンク12に切削追加工を行うとコストがかなり上昇するため望ましい方法ではない。また、内気側だけについて言えば、図5あるいは図6のように、筐体内冷却用熱交換器1のケースの上面や下面に第1,第2の内気側排気口8,9を設けると、上記の風溜まりの発生は防げるが、第1,第2の内気側排気口8,9からの冷風が発熱部品の方に向かい難いという問題は残り、外気側については、熱交換器ケース3の上面や下面に外気側排気口11を設けることができないという問題がある。
【0036】
しかし、必要以上に熱交換ヒートシンク12の長さ方向の端部と筐体内冷却用熱交換器1のケースの内面の間隔を大きくしても熱交換能力は余り向上しないので、熱交換ヒートシンク12の長さ方向の端部と筐体内冷却用熱交換器1のケースの内面との間隔は数mm〜十数mmとすることが好ましい。
【0037】
以上のように本発明により、内部の発熱部品の発熱量が多い小型筐体に適用することができる小型ながら熱交換能力が高くて内気側の風量の多い安価な筐体内冷却用熱交換器1を実現することができる。なお、ここで、熱交換能力とは、筐体内の空気温度と筐体外の外気温度の差を△T(K)とすると、熱交換能力(W/K)=(筐体内部の発熱量 −筐体表面からの放熱量)/△Tの意味で使用している。筐体表面からの放熱量は△Tの関数で△Tが大きくなるに従ってほぼ一次関数的に増加する。
【符号の説明】
【0038】
1 筐体内冷却用熱交換器
2 (発熱部品収納)筐体
3 熱交換器ケース
4 熱交換器ケースのフランジ
5 内気側ファン
6 外気側ファン
7 内気側吸気口
8 第1の内気側排気口
9 第2の内気側排気口
10 外気側吸気口
11 外気側排気口
12 熱交換ヒートシンク
13 第1の隔壁部材
14 内気側フィン
15 内気側フィンの先端部
16 外気側フィン
17 外気側フィンの先端部
18 コルゲートフィン
19 内気側流路
20 外気側流路
21 第1の充填用部材
22 第2の充填用部材
23 第2の隔壁部材
24 第3の隔壁部材
25 第1のコーナー部
26 第2のコーナー部
27 風向偏向板
28 導風板
29 パネル
30 内気側排気口
31 ヒートパイプ
32 熱交換ヒートシンクの長さ
33 熱交換ヒートシンクの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を収納した筐体の壁面に設置され、前記筐体内の空気を流入するための内気側吸気口と流入した前記筐体内の空気を流出するための内気側排気口を設けた熱交換器ケースと、
前記熱交換器ケース内を前記筐体内の空気が流れる内気側流路と前記筐体外の空気が流れる外気側流路に仕切る第1の隔壁部材の前記内気側流路側の面に内気側フィンと前記外気側流路側の面に外気側フィンを設けた熱交換ヒートシンクと、
前記筐体内の空気を前記内気側吸気口から吸気し、前記内気側フィンが設けられた前記内気側流路を通して前記内気側排気口から排気する内気側ファンと、
前記筐体外の空気を前記筐体外の空気が前記熱交換ケースに流入するための外気側吸気口から吸気し、前記外気側フィンが設けられた前記外気側流路を通して、流入した前記筐体外の空気が流出する外気側排気口から排気する外気側ファンを備え、
前記熱交換ヒートシンクは、前記第1の隔壁部材と前記内気側フィンに垂直な断面に垂直な方向に長さを有する単一の熱交換ヒートシンクであり、前記内気側排気口は、前記熱交換ヒートシンクの長さ方向の一方の端部付近に少なくとも1個設けられた第1の内気側排気口と、前記熱交換ヒートシンクの長さ方向の他方の端部付近に少なくとも1個設けられた第2の内気側排気口から構成され、
前記内気側吸気口は、前記第1の内気側排気口と前記第2の内気側排気口の間に設けられ、
前記内気側ファンは、軸流ファンであり、前記内気側フィンの先端部に対向して配置され、
前記内気側ファンによって、前記筐体内の空気が、前記内気側吸気口から前記内気側流路を通って、前記第1の内気側排気口と前記第2の内気側排気口の両方から排気されることを特徴とする筐体内冷却用熱交換器。
【請求項2】
前記第1の内気側排気口からの排気温度と前記第2の内気側排気口からの排気温度が略等しくなる位置に前記内気側吸気口と前記内気側ファンを設置したことを特徴とする請求項1記載の筐体内冷却用熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換器ケースの外形が前記筐体内冷却用熱交換器を前記筐体に取付けるためのフランジ部と、前記内気側吸気口と前記内気側排気口のための開口部を除いて概略直方体であり、板金を加工して製造されていることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体内冷却用熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換ヒートシンクが金型からの押出し成形により製作されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる成形物であり、前記熱交換ヒートシンクの前記長さ方向に前記成形物を所定の長さに切断する以外の切削加工が施されていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかひとつに記載の筐体内冷却用熱交換器。
【請求項5】
前記内気側吸気口と前記第1の内気側排気口の間の前記内気側フィンの先端部と前記熱交換器ケースの内面の間に第1の充填用部材、前記内気側吸気口と前記第2の内気側排気口の間の前記内気側フィンの先端部と前記熱交換器ケースの内面の間に第2の充填用部材を設置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の筐体内冷却用熱交換器。
【請求項6】
前記熱交換ヒートシンクを構成する前記第1の隔壁部材と概略同じ幅の表面にフィンが形成されていない第2の隔壁部材を前記第1の隔壁部材の前記長さ方向の少なくとも一端に接続して、隔壁部材の全長を伸ばしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載の筐体内冷却用熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−199412(P2012−199412A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62991(P2011−62991)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】