説明

筐体及び電子機器

【課題】基板上の部品配置の自由度を保ちつつ十分な放熱効果を得ることができる筐体を提供する。
【解決手段】発熱部品55を搭載する基板54を収容する筐体51、52、53であって、互いに対向する第1及び第2の筐体部材51及び52と、第1及び第2の筐体部材51及び52の間に配置される第3の筐体部材53とを含み、第3の筐体部材53は、基板54と対向するよう配置される第1の板材531を含み、基板54の発熱部品55が搭載された領域に対応する第1の板材531の領域に基板54方向に突出する凸部532が形成され凸部532の先端部が発熱部品55と接触することにより、基板54と第1の板材531との間に間隙を形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筐体及び電子機器に関し、特に発熱部品を搭載する基板を収容する筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の性能向上に伴う機器内部の発熱は増加傾向にあり、機器内部の発熱部品の温度上昇、またはエンクロージャ筐体表面の温度上昇の放熱対策は重要な課題である。
【0003】
図8は本発明に関連する電子機器の放熱構造を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は断面図、(c)はその部分拡大図である。図8には、エンクロージャ筐体(筐体21及び22)に収容される基板4上の発熱部品である回路デバイス5に剣山形状の金属製ヒートシンク6を接触させた放熱構造が示されている。
【0004】
また、図9は本発明に関連する電子機器の放熱構造の別の例を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は断面図、(c)はその部分拡大図である。なお、図9において図8と同等部分には同一符号が付されている。図9には、金属製の板状ヒートシンク7を回路デバイス5に接触させる放熱構造が示されている。
【0005】
しかし、図8及び図9に示した放熱構造では、ヒートシンク6及び7はエンクロージャ筐体(筐体21及び22)に囲まれた空間内にあり、外気に直接接するものではないので、回路デバイス5の発熱量の増大に対して十分な放熱を行うことができない。
【0006】
これに対して、特許文献1には、発熱温度が高温の素子を搭載する基板を保持する金属製のフレームを用いて十分な放熱効果を得るようにしたカード型パッケージが開示されている。特許文献1記載のカード型パッケージは、基板を保持する金属製フレームと、基板を表裏の両面側から挟むように金属製フレームに取付けられる一対の補強パネルとを備える。基板を保持する金属製フレームは、当該金属製フレームを構成する一対のサイドフレーム間を架け渡す内部梁を有する。この内部梁に設けられたへこみ部(接触面)が基板上の発熱素子と接触することにより、発熱素子からの熱が外気に接するフレームに伝導されて放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−334357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、十分な放熱効果を得るために金属製フレームの内部梁のへこみ部(接触面)と基板上の発熱素子とを接触させるので、内部梁に対応する基板の領域と内部梁との間の間隙は発熱素子の背の高さより小となる。したがって、当該間隙には発熱素子より背の高い他の部品を配置することができず、基板上の部品配置の自由度が低い。
【0009】
また、内部梁の面積を大きくとることができれば放熱効果をより向上させることができるが、上述したように基板上の部品配置の自由度が低下するので内部梁の面積を大きくすることは困難である。
【0010】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、基板上の部品配置の自由度を保ちつつ十分な放熱効果を得ることができる筐体及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による筐体は、発熱部品を搭載する基板を収容する筐体であって、互いに対向する第1及び第2の筐体部材と、前記第1及び第2の筐体部材の間に配置される第3の筐体部材とを含み、前記第3の筐体部材は、前記基板と対向するよう配置される第1の板材を含み、前記基板の前記発熱部品が搭載された領域に対応する前記第1の板材の領域に前記基板方向に突出する凸部が形成され前記凸部の先端部が前記発熱部品と接触することにより、前記基板と前記第1の板材との間に間隙を形成してなることを特徴とする。
【0012】
本発明による電子機器は、前記筐体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板上の部品配置の自由度を保ちつつ十分な放熱効果を得ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の原理を説明するための電子機器の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)はその部分拡大図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は正面図、左右側面図及び平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は図2(b)のA−A矢視線断面図、(b)はその部分拡大図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による電子機器の構成を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は断面図、 (b)はその部分拡大図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は断面図、(c)はその部分拡大図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は断面図、 (b)はその部分拡大図である。
【図8】本発明に関連する電子機器の放熱構造を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は断面図、(c)はその部分拡大図である。
【図9】本発明に関連する電子機器の放熱構造の別の例を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は断面図、(c)はその部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について説明する前に、本発明の理解を助けるために、本発明の原理について図面を参照して説明する。図1は本発明の原理を説明するための電子機器の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)はその部分拡大図である。
【0016】
図1に示した電子機器の筐体は、発熱部品55を搭載する基板54を収容する筐体(51〜53)であって、互いに対向する第1及び第2の筐体部材51及び52と、第1及び第2の筐体部材51及び52の間に配置される第3の筐体部材53とを含み、第3の筐体部材53は、基板54と対向するよう配置される第1の板材531を含み、基板54の発熱部品55が搭載された領域に対応する第1の板材531の領域に基板54方向に突出する凸部532が形成され凸部532の先端部が発熱部品55と接触することにより、基板54と第1の板材531との間に間隙を形成してなる。
【0017】
このように、第1及び第2の筐体部材51及び52の間に配置される第3の筐体部材53が備える板材531は基板54方向に突出する凸部532を有し、凸部532の先端部が発熱部品55の上面と接触して、基板54と板材531との間に間隙を形成している。このため、基板54と板材531との間の間隙に発熱部品55より背の高い他の部品を配置することが可能であり、板材531の面積を大きくとることも可能となる。したがって、基板54上の部品配置の自由度を保ちつつ十分な放熱効果を得ることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図2は本発明の第1の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は正面図、左右側面図及び平面図である。また、図3は本発明の第1の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は図2(b)のA−A矢視線断面図、(b)はその部分拡大図である。なお、図2及び図3において図8及び図9と同等部分には同一符号が付されている。
【0020】
図2及び図3に示すように本発明の第1の実施の形態による電子機器では、エンクロージャ筐体(筐体1と筐体2)の間に中間筐体3が配置され、筐体1と中間筐体3とが結合され、また筐体2と中間筐体3とが結合されている。電気機能を有する回路基板4は、筐体1及び2の互いに対向する面と対向するよう配置される。中間筐体3は、基板4と対向する面(板材)31を有する。
【0021】
基板4には発熱部品である回路デバイス5が搭載されている。基板4の回路デバイス5が搭載された領域に対応する中間筐体3の面31の領域に基板4方向に突出する凸部32が形成され、凸部32の先端部が回路デバイス5と接触している。したがって、回路デバイス5の発熱は中間筐体3に伝導されて放熱される。筐体2と中間筐体3の面31との間の間隙yは空気層により構成されている。
【0022】
以上説明したように本発明の第1の実施の形態では、筐体1及び2の間に配置される中間筐体3の面31は基板4方向に突出する凸部32を有し、凸部32の先端部が回路デバイス5の上面と接触している。これにより形成される基板4と中間筐体3の面31との間の間隙に回路デバイス5より背の高い他の部品を配置することが可能であるので、基板4上の部品配置の自由度を保ちつつ十分な放熱効果を得ることができる。
【0023】
また、上述したように基板4上の部品配置の自由度を保つことができるので、本発明の第1の実施の形態では、中間筐体3の面31は筐体1及び2の互いに対向する面と略同一の面積を有しており、このように面積を大きくとることにより放熱効果の向上が図られている。なお、中間筐体3の面31の面積はこれに限定されるものではなく、例えば基板4と略同一の面積であってもよい。
【0024】
また、筐体2と中間筐体3の面31との間の間隙yの空気層によって筐体2の表面温度上昇を抑制することができる。
【0025】
なお、本発明の第1の実施の形態において、筐体1及び2だけでなく中間筐体3も樹脂で形成するようにしてもよい。中間筐体3も樹脂で形成することにより、筐体に金属要素がなく、周辺回路のノイズによるVCCI特性や無線特性への影響を抑制することができ、また形状の自由度もあり多種のデザインに適合可能である。なお、筐体は樹脂製に限定されるものではなく、非金属製であれば樹脂製以外でも同様である。
【0026】
図4は本発明の第2の実施の形態による電子機器の構成を示す分解斜視図であり、図2及び図3と同等部分には同一符号が付されている。本発明の第2の実施の形態による電子機器の基本的な構成は図2及び図3に示した本発明の第1の実施の形態の構成と同じであるが、凸部32に工夫がなされている。
【0027】
図4に示すように、回路デバイス5と接触される中間筐体3の面31の凸部32の内面に凹凸8を具備させている。これにより表面積が増大し、回路デバイス5の発熱の放熱効果が向上される。また、上述した凹凸8と同様に、凹凸形状を面31を含む中間筐体3の他平面に造形して、更なる放熱効果の向上を図るようにしてもよい。
【0028】
図5は本発明の第3の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)はその部分拡大図である。なお、図5において図2及び図3と同等部分には同一符号が付されている。本発明の第3の実施の形態による電子機器の基本的な構成は図2及び図3に示した本発明の第1の実施の形態の構成と同じであるが、中間筐体3と同様の放熱構造を有する中間筐体3’を基板4裏面に備える点で本発明の第1の実施の形態と相違する。
【0029】
図5に示すように、本発明の第3の実施の形態は、基板4の中間筐体3面31と対向する面と反対の面に対向する板材(面)を備える中間筐体3’を含む。中間筐体3’は、中間筐体3と共に筐体1と筐体2の間に配置されており、中間筐体3と一体に形成されてもよい。
【0030】
中間筐体3’の上記板材(面)は、中間筐体3の面31と同様の構成を有する板材であり、すなわち基板4の回路デバイス5が搭載された領域に対応する中間筐体3’の板材の領域に基板4方向に突出する凸部32’が形成され、凸部32’の先端部が基板4と接触している。中間筐体3’の板材は筐体1及び2の互いに対向する面と略同一の面積を有している。また、筐体1と中間筐体3’の板材との間の間隙は間隙yに相当し、空気層により構成されている。
【0031】
このように、本発明の第3の実施の形態では、中間筐体3と同様の放熱構造を有する中間筐体3’を基板4裏面に備えているので、基板4両面方向から回路デバイス5の熱を拡散させることができ、更なる放熱効果の向上が図られている。
【0032】
図6は本発明の第4の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は断面図、(c)はその部分拡大図である。なお、図6において図2及び図3と同等部分には同一符号が付されている。本発明の第4の実施の形態による電子機器の基本的な構成は図2及び図3に示した本発明の第1の実施の形態の構成と同じであるが、凸部32と回路デバイス5との接触面に熱伝導シート9が挟み込まれている点で本発明の第1の実施の形態と相違する。
【0033】
図6に示すように、本発明の第4の実施の形態は、熱伝導シート9を備え、凸部32の先端部は熱伝導シート9を介して回路デバイス5と熱的に接触している。このように、凸部32と回路デバイス5との接触に熱伝導シート9などの熱伝導部材を介在させることにより、回路デバイス5の発熱を効率良く中間筐体3に伝導させることができる。
【0034】
図7は本発明の第5の実施の形態による電子機器の構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)はその部分拡大図である。なお、図7において図2及び図3と同等部分には同一符号が付されている。本発明の第5の実施の形態による電子機器の基本的な構成は図2及び図3に示した本発明の第1の実施の形態の構成と同じであるが、間隙yに熱伝導性材料10が充填される点で本発明の第1の実施の形態と相違する。
【0035】
本発明の第1の実施の形態では、筐体2と中間筐体3の面31との間の間隙yは空気層により構成されていたが、本発明の第5の実施の形態では、図7に示すように、間隙yに熱伝導性を有する固体樹脂またはゲル状の樹脂、あるいは密閉構造による液体が充填されている。
【0036】
このように、本発明の第5の実施の形態では、間隙yに熱伝導性材料10が充填されるので、回路デバイス5の発熱をより広い範囲に拡散させることができ、更なる放熱効果の向上が図られている。
【符号の説明】
【0037】
1,2,21,22 筐体
3,3’ 中間筐体
4,54 基板
5 回路デバイス
6,7 ヒートシンク
8 凹凸形状
9 熱伝導シート
10 熱伝導性材料
31 面
32,532 凸部
51 第1の筐体部材
52 第2の筐体部材
53 第3の筐体部材
55 発熱部品
531 板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を搭載する基板を収容する筐体であって、
互いに対向する第1及び第2の筐体部材と、前記第1及び第2の筐体部材の間に配置される第3の筐体部材とを含み、
前記第3の筐体部材は、前記基板と対向するよう配置される第1の板材を含み、
前記基板の前記発熱部品が搭載された領域に対応する前記第1の板材の領域に前記基板方向に突出する凸部が形成され前記凸部の先端部が前記発熱部品と接触することにより、前記基板と前記第1の板材との間に間隙を形成してなることを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記基板は前記第1及び第2の筐体部材の互いに対向する面と対向するよう配置され、
前記第1及び第2の筐体部材のうち前記第1の板材の前記基板と対向する面と反対の面と向き合う筐体部材と前記第1の板材との間の間隙は空気層により構成されることを特徴とする請求項1記載の筐体。
【請求項3】
前記基板は前記第1及び第2の筐体部材の互いに対向する面と対向するよう配置され、
前記第1及び第2の筐体部材のうち前記第1の板材の前記基板と対向する面と反対の面と向き合う筐体部材と前記第1の板材との間の間隙に熱伝導性材料が充填されることを特徴とする請求項1記載の筐体。
【請求項4】
前記第1の板材は前記第1及び第2の筐体部材の互いに対向する面と略同一の面積を有することを特徴とする請求項2または3記載の筐体。
【請求項5】
前記凸部の内面に凹凸形状が形成されることを特徴とする請求項1〜4記載の筐体。
【請求項6】
前記凸部と前記発熱部品は熱伝導部材を介して接触されることを特徴とする請求項1〜5記載の筐体。
【請求項7】
前記第3の筐体部材は、前記基板の前記第1の板材と対向する面と反対の面に対向するよう配置される第2の板材を更に含み、
前記基板の前記発熱部品が搭載された領域に対応する前記第2の板材の領域に前記基板方向に突出する凸部が形成されこの凸部の先端部が前記基板と接触することを特徴とする請求項1〜6記載の筐体。
【請求項8】
前記第3の筐体部材は樹脂で形成されることを特徴とする請求項1〜7記載の筐体。
【請求項9】
請求項1〜8記載の筐体を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−155089(P2011−155089A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14931(P2010−14931)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】