説明

筐体固定構造

【課題】 カバーと筐体の前後、左右、上下方向のガタツキを抑制する。
【解決手段】 筐体の側面部の一部として、側面部と同一平面になるように直立して配備された略L字形状をした第1のフック構造と、筐体の上面を覆うカバーの側面部の第1のフック構造と対向する位置に、側面部に対して直角になるように取付けられた略L字形状をした第2のフック構造と、筐体の正面上部に、正面上部の厚みが段差となるように配備された第1の段曲げ構造部と、カバーに、カバーの厚みが段差となるように、第1の段曲げ構造部と互い違いとなる位置に配備された第2の段曲げ構造部とを備え、筐体にかぶせたカバーの水平移動により、第1のフック構造と第2のフック構造が係合し、第1の段曲げ構造部がカバーに嵌め込まれ、第2の段曲げ構造部が筐体に嵌め込まれて、カバーを筐体に固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体固定構造に関し、特に、内部に通信装置を収容する筐体の筐体固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置を収容する筐体は、電気部品や電子部品から構成される通信装置を外部環境の変化から保護することを目的とする。温度や湿度が最適に調整された通信機械室に設置される通信装置もあれば、風雨、塵埃、太陽光などの自然環境にさらされる屋外に設置される通信装置もある。従って、収容する通信装置の種類や設置場所に応じて、通信装置を収容する筐体に求められる条件は、さまざまである。しかし、最低限に必要とされる条件は、外力が加わっても簡単には破損、変形しない強固な構造と、電気部品や電子部品から発生する電磁放射ノイズを遮蔽する構造である。
【0003】
そのため、通信装置の筐体は、一般的に、金属板を立方体または直方体の箱型形状に加工して作られた金属ケースになっており、電磁放射ノイズをその金属ケースで遮蔽してグランドに流すことができる構造となっている。そして、金属ケースを構成するカバーやその他の部位の固定構造として、外力に対するガタツキを抑制し、強度やEMC(Electro Magnetic Compatibility、電磁両立性)を配慮して、隙間を極力少なくするためにネジを用いた固定が多く採用されている。
【0004】
特許文献1は、実装基板を収容する筐体と、その上面を覆うカバーとを密着させてカバーを筐体に強固に固定することができる、嵌め込みによる固定構造を開示している。特許文献1が開示する固定構造は、筐体の縁に開口部が設けられ、その開口部を挿通して筐体の縁の裏面に引っ掛かる突起部を先端に有した弾力性のある鉤形状の爪部をカバーに備える構造になっている。爪部を筐体の開口部に挿通させながらカバーを筐体の上面からかぶせ、カバーをスライドさせてこの爪部を筐体の縁に沿って押し込むと、爪部の突起部とカバーの縁とで筐体の縁を挟み込むので、カバーと筐体とが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-009512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する固定構造は、カバーと筐体のみを嵌め込みにより固定する構造である。その固定は、カバーをスライドさせた方向、例えば前後方向、に対するガタツキを抑制することはできる。しかし、それと直交する方向、例えば左右方向や上下方向、に対するガタツキを抑えることはできない。そのため、特許文献1が開示する固定構造は、カバーを筐体に固定させた後に、開口している筐体の正面全体を覆うためのフロントカバーを、多数のネジを用いてネジ止めする必要がある。
【0007】
ネジ止めによる固定は、固定手段としては確実ではあるが、工具を使用した作業になるため、固定箇所が多くなると、これに比例して作業工数が増大するという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決して、前後方向のみならず左右方向および上下方向の外力に対してもガタツキを抑制して、カバーと筐体を嵌め込みにより固定する筐体固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を実現するために、本発明の一形態である筐体固定構造は、上面部が開口している立方体または直方体の箱型形状をした筐体の、左右側面部の一部として、前記左右側面部と同一平面になるように直立して配備された略L字形状をした第1のフック構造と、前記筐体の上面を覆い、上平面に対して直角下方に折れまがった左右側面部と背面部を有するカバーの前記左右側面部に配備され、前記筐体に前記カバーをかぶせたときに前記第1のフック構造と対向する位置に、前記左右側面部に対して内側に直角になるように取付けられた略L字形状をした第2のフック構造と、前記筐体の前記正面部側の上面部の一部を覆う正面上部に、当該正面上部の厚みが段差となるように、突出して配備された第1の段曲げ構造部と、前記筐体の前記正面部に対向する側の前記カバーに、当該カバーの厚みが段差となるように、前記第1の段曲げ構造部と互い違いとなる位置に突出して配備された第2の段曲げ構造部とを備え、前記筐体にかぶせた前記カバーの、前記筐体の前記正面部方向への水平移動により、対向した前記第1のフック構造と前記第2のフック構造が係合し、前記第1の段曲げ構造部が前記カバーの裏面部に嵌め込まれ、前記第2の段曲げ構造部が前記筐体の前記正面上部の裏面部に嵌め込まれて、前記カバーを前記筐体に固着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、カバーと筐体を嵌め込みにより固定する筐体固定構造において、前後方向のみならず左右方向および上下方向の外力に対してもガタツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の基本実施形態の筐体固定構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の筐体固定構造を示す分解斜視図である。
【図3】筐体フック構造とカバーフック構造を説明する図である。
【図4】筐体段曲げ構造とカバー段曲げ構造を説明する斜視図である。
【図5】筐体段曲げ構造とカバー段曲げ構造を嵌め込む動作を説明する斜視図である。
【図6】筐体段曲げ構造とカバー段曲げ構造を嵌め込んだ状態を説明する断面図である。
【図7】カバーを筐体に嵌め込む動作を説明する斜視図である。
【図8】カバーを筐体に嵌め込んだ状態を正面方向から見た斜視図とその透視図である。
【図9】カバーを筐体に嵌め込んだ状態を背面方向から見た斜視図とその嵌め込み状態を示す拡大斜視図である。
【図10】カバーを筐体に嵌め込んだ状態を正面方向から見た斜視図とその嵌め込み状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の基本実施形態の筐体固定構造を示す分解斜視図である。
【0014】
尚、以降に説明する実施の形態は例示であり、開示の構造はそれらの実施の形態には限定されない。
【0015】
本実施形態における筐体固定構造は、図1に示すように筐体1にカバー2を固着させる構成となっている。
【0016】
基本実施形態を説明する。
【0017】
筐体1は、上面部が開口している立方体または直方体の箱型形状を成している。なお、図1において、図面の左下方向の面(手前に見える面)を正面とし、右上方向の面を背面としている。これは、後述する図2、4、5、7、8、10においても同様である。
【0018】
筐体1は、左右側面部の一部として、左右側面部と同一平面になるように直立して配備された略L字形状をした第1のフック構造1−1を有する(部分拡大図参照)。
【0019】
また、この筐体1を覆うカバー2は、上平面に対して直角下方に折れまがった左右側面部と背面部を有する。そして、略L字形状をした第2のフック構造2−1が、カバー2の左右側面部に配備されている。この第2のフック構造2−1は、筐体1にカバー2をかぶせたときに第1のフック構造1−1と対向する位置であって、カバー2の左右側面部に対して内側に直角になるように取付けられている(部分拡大図参照)。
【0020】
また、筐体1の正面部側の上面部の一部を覆う正面上部の一部の位置に、当該正面上部の厚みが段差となるように、第1の段曲げ構造部1−2が突出して配備されている。
【0021】
そして、カバー2には、筐体1の正面部に対向する側の位置に、当該カバーの厚みが段差となるように、第2の段曲げ構造部2−2を備える。この第2の段曲げ構造部2−2は、第1の段曲げ構造部1−2と互い違いとなる位置に突出して配備されている。
【0022】
筐体1にカバー2をかぶせ、その後、カバー2を筐体1の正面部方向に水平移動させてカバー2を筐体2に固着させる。つまり、カバー2の筐体1の正面部方向への水平移動により、筐体1にカバー2をかぶせた段階で対向していた第1のフック構造1−1と第2のフック構造2−1とが係合する。同時に、第1の段曲げ構造部1−2がカバー2の裏面部に嵌め込まれ、第2の段曲げ構造部2−2が筐体1の正面上部の裏面部に嵌め込まれる。これにより、カバー2が筐体1に固着する。
【0023】
この基本実施形態において、略L字形状をした第1のフック構造1−1と略L字形状をした第2のフック構造2−1とが、それぞれ90度の角度を持って係合する。このことは、それぞれの「L」字の縦長辺部に相当する箇所が90度の角度で係合するので、それぞれの縦長辺部に相当する箇所の作用により、左右方向および上下方向のガタツキが抑えられる。
【0024】
また、第1の段曲げ構造部1−2がカバー2の裏面部に嵌め込まれ、第2の段曲げ構造部2−2が筐体1の正面上部の裏面部に嵌め込まれるので、それぞれの段曲げ構造部と筐体1の正面上部の裏面部、カバー2の裏面部が面接触した状態になる。そのため、面接触による摩擦により前後方向のガタツキが抑えられる。
【0025】
さらに、係合した第1のフック構造1−1と第2のフック構造2−1、および接触した段曲げ構造部と筐体1の正面上部の裏面部、カバー2の裏面部により、筐体1とカバー2は電気的な導通を得ることができ、同電位とすることができる。そのため、筐体1が収容する通信機器からの電磁放射ノイズを遮蔽して、グランドに流す構造の筐体を形成することができる。
【0026】
図2を参照して実施形態を詳細に説明する。
【0027】
図2は、本発明の実施形態の筐体固定構造を示す分解斜視図である。
【0028】
筐体1は、一般的に金属板をプレス加工して打ち抜いて成形したものが用いられる。そのため、筐体1は、どの部位においても電気的な導通があり、同電位となる。なお、正面部は、正面部の近傍の上面部を覆う、正面上部を備えている。
【0029】
カバー2は、正面が開口した、箱の蓋様の形状を成している。そして、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、筐体1の左右側面部とカバー2の左右側面部が、そして筐体1の背面部とカバー2の背面部が、それぞれ隙間が生じないで重なり合う構造になっている。また、カバー2も一般的に金属板をプレス加工して打ち抜いて成形したものが用いられ、どの部位においても電気的な導通があり、同電位となる。
【0030】
なお、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、筐体1とカバー2の各側面部と各背面部が、それぞれ隙間が生じないで重なり合う構造の筐体とは、次のいずれの構造であっても良い。第1の構造は、カバー2の各面の内側が、筐体1の対応する各面の外側に接して重なり合う構造になっている。第2の構造は、筐体1の各側面部と各背面部の内側に縁部(みみ)を形成し、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、カバー2の各面の内側が筐体1の対応する各面に形成された縁部の外側に接して重なり合う構造になっている。
【0031】
第1の構造は、カバー2を形成する金属板の厚みが、筐体1を形成する金属板の厚みよりも薄い場合に適している。また、第2の構造は、筐体1もカバー2も同じ厚さの金属板を使用し、カバー2の各面外側と筐体1の各面外側とに段差を生じることなく、カバー2を筐体1に嵌め込むことができる筐体を作る場合に適している。本実施形態を説明する図は、第2の構造を例として示しているが、以降の説明においては、第1の構造も第2の構造も区別せず、上述した縁部も側面部として説明する。
【0032】
また、以降の説明では、第1のフック構造1−1を筐体フック構造11、第2のフック構造2−1をカバーフック構造21、第1の段曲げ構造1−2を筐体段曲げ構造12、第2の段曲げ構造2−2をカバー段曲げ構造22と称して説明する。
【0033】
本実施形態の筐体固定構造として、筐体1の左側面部および右側面部には筐体フック構造11が、正面部の正面上部には筐体段曲げ構造12が配備されている。また、カバー2の左側面部および右側面部にはカバーフック構造12が、正面の開口部にはカバー段曲げ構造22が配備されている。なお、図2では、筐体フック構造11およびカバーフック構造12を、向かって右側の側面部においてのみ参照符号を付して示しているが、左側の側面部の対応する位置にもそれぞれのフック構造が配備されている。
【0034】
筐体フック構造11は、筐体1の左右の各側面部において、任意の位置に、任意の数だけ配備される。一般的には、正面と背面に近い位置にそれぞれ1箇所と、それらの中間の位置に1箇所の合計3箇所に配備すると良い。また、側面部が長い筐体の場合は、100mmから150mmを目安とした間隔で中間の複数個所の位置に配備しても良い。逆に、筐体の側面部が短い場合には正面と背面に近い位置にそれぞれ1箇所の合計2箇所でも良い。更に側面部が短い筐体の場合には、背面に近い位置に1箇所だけ配備しても良い。従って、筐体フック構造11が配備される最小構成は、筐体1の左右の各側面部において、1箇所に配備される構造となる。
【0035】
カバーフック構造21は、カバー2の左右の各側面部において、筐体フック構造11と対応する位置に配備される。従って、筐体1の左右の各側面部の正面に近い位置、背面に近い位置、それらの中間の位置に筐体フック構造11が配備されている場合は、カバー2の左右の各側面部のそれらの位置と対応する箇所にカバーフック構造21が配備されている。また、筐体フック構造11と同様に、カバーフック構造21が配備される最小構成は、カバー2の左右の各側面部において、1箇所に配備される構造となる。カバーフック構造21は、後述する操作を行うことにより筐体フック構造11と係合し、筐体フック構造11とカバーフック構造21との作用により、筐体1とカバー2を固着する。
【0036】
図2は、正面と背面に近い位置にそれぞれ1箇所と、それらの中間の位置に1箇所の合計3箇所に筐体フック構造11とカバーフック構造21を配備した例を示している。また、正面に近い位置に配備した筐体フック構造11とカバーフック構造21の拡大図を示している。
【0037】
筐体段曲げ構造12は、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、筐体1の正面部の正面上部において、カバー段曲げ構造22と互い違いとなる位置に配備される。筐体段曲げ構造12は、筐体1の正面上部の厚みが段差となるようにして、筐体1の内側方向に突出して配備された舌状の金属板である。筐体段曲げ構造12は、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、その突出して配備された舌状部分がカバー2の裏面側に潜り込む構造となっている。
【0038】
カバー段曲げ構造22は、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、カバー2の正面において、筐体段曲げ構造12と互い違いとなる位置に配備される。カバー段曲げ構造22は、カバー2の正面側に、カバー2の厚みが段差となるようにして正面方向に突出して配備された舌状の金属板である。カバー段曲げ構造22は、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、その突出して配備された舌状部分が筐体1の正面上部の裏面側に潜り込む構造となっている。
【0039】
図2において、筐体段曲げ構造12およびカバー段曲げ構造22の形状を、長方形で示しているが、これに限られることはない。正方形状、半円形状、半長楕円形状、台形状等の任意の形状でかまわない。
【0040】
図2では、カバー段曲げ構造22を、カバー2の正面において、左右側面に近い位置にそれぞれ1箇所と、それらの中間の位置に1箇所の合計3箇所に配備している。そして、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、筐体1の正面部において、カバー段曲げ構造22が配備されていない位置に対応する2箇所に、筐体段曲げ構造12を配備している。
【0041】
筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22は、筐体の正面部の長さに応じて任意の数だけ配備して良い。例えば、筐体の正面部が図1に示す例より長い場合には、カバー段曲げ構造22を、左右側面に近い位置にそれぞれ1箇所と、それらの中間の位置の複数箇所に配備する。そして、カバー段曲げ構造22が配備されていない位置に対応する筐体1の正面部に、筐体段曲げ構造12を配備すればよい。また逆に、筐体の正面部が短い場合には、カバー段曲げ構造22を、カバー2の左右側面に近い位置にそれぞれ1箇所だけ配備し、筐体段曲げ構造12を、筐体1の正面部中央の1箇所に配備した構造でも良い。
【0042】
更に筐体の正面部が短い場合には、筐体1とカバー2にそれぞれ1箇所の筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22を配備した構造でもかまわない。しかし、カバー2の側面側への反りを考慮した場合、カバー2の左右側面に近い位置にそれぞれ1箇所のカバー段曲げ構造22を配備することが好ましい。そのため、筐体の正面部が短い場合には、段曲げ構造の長手方向の寸法を小さくして、カバー2には少なくとも2箇所、筐体1には少なくとも1箇所に、それぞれの段曲げ構造を配備することができるようにするのが望ましい。
【0043】
筐体フック構造11とカバーフック構造21について詳細に説明する。
【0044】
図3は、筐体フック構造11とカバーフック構造21を説明する図である。図3(1)は筐体フック構造11を示し、図3(2)はカバーフック構造21を示す。また、(a)は各フック構造の斜視図、(b)は各フック構造の部位を説明する図、(c)は各フック構造の部位の寸法を説明する図である。
【0045】
まず、図3(1)の(a)、(b)、(c)を参照して、筐体フック構造11を説明する。
【0046】
筐体フック構造11は、筐体1の左右側面部に形成された略L字形状のフック構造である。
【0047】
筐体フック構造11は、筐体1の側面部と同一の平面上に形成されており、筐体フック基部11a、筐体フック指部11b、カバーフック基部挿通部11cおよびカバーフック構造係合溝11dで構成される。
【0048】
つまり、「L」字の横短辺部に相当する箇所が筐体フック基部11a、縦長辺部に相当する箇所が筐体フック指部11bである。それぞれ平板状に形成されている。そして、横短辺部に相当する箇所を筐体1の側面部に90度の角度で取付けたときに、その側面部の縁と縦長辺部に相当する箇所との間に形成される空間がカバーフック構造係合溝11dである。
【0049】
カバーフック基部挿通部11cとカバーフック構造係合溝11dは、筐体1の側面部を打ち抜いて形成された空間である。
【0050】
筐体フック基部11aは、筐体1の側面部と一体化された部位であり、カバーフック構造係合溝11dの深端部から、後述するカバーフック指部21bの長さ(d3)に相当する箇所を指す。筐体フック指部11bは、筐体フック基部11aと一体化された部位であり、筐体1の側面部からカバーフック基部挿通部11cとカバーフック構造係合溝11dを打ち抜いた残りの箇所である。つまり、筐体フック指部11bは、カバーフック構造係合溝11dの溝幅だけ筐体フック基部11aより狭い部位が、カバーフック基部挿通部11cの方向に突き出ている。筐体フック指部11bの長さは、後述するカバーフック指部21bの長さと同じである。
【0051】
カバーフック基部挿通部11cは、カバー2を筐体1に嵌め込む際に、後述するカバーフック基部21aが縦方向に挿通する部位である。そのため、カバーフック基部21aが引っ掛かることなく挿通するように、カバーフック基部21aの長さ(d1)よりも2mmから5mm程度の長い幅を持った空間となっている。
【0052】
カバーフック構造係合溝11dは、カバー2を筐体1に嵌め込む際に、カバーフック基部挿通部11cを挿通したカバーフック基部21aを、当該溝の深端部方向に水平にスライドさせる溝である。カバーフック構造係合溝11dは、スライドさせてその深端部に達したカバーフック基部21aを、筐体フック指部11bとその対向部とにより、ガタツキなく挟み込む作用を持つ。この場合の対向部は、筐体1の筐体フック基部11aを取付けた側面部の縁である。そのため、カバーフック構造係合溝11dの溝幅(d4)は、カバーフック基部21aを形成する金属板の厚みと略同じ寸法か、若干(例えば、0.1mm程度)大きめの寸法を有する。
【0053】
なお、筐体フック構造11の高さ(d5)は任意に決められる。例えば、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、筐体1の正面部を構成する上面部とカバー2とが段差無く一体化されるように、筐体フック構造11の高さ(d5)を決めても良い。
【0054】
続いて、図3(2)の(a)、(b)、(c)を参照して、カバーフック構造21を説明する。
【0055】
カバーフック構造21は、カバー2の左右側面部に形成された略L字形状のフック構造である。
【0056】
カバーフック構造21は、カバー2の側面部と直交する平面上に形成されており、カバーフック基部21a、カバーフック指部21bおよび筐体フック構造係合溝21cで構成される。
【0057】
つまり、「L」字の横短辺部に相当する箇所がカバーフック基部21a、縦長辺部に相当する箇所がカバーフック指部21bである。それぞれ平板状に形成されている。そして、横短辺部に相当する箇所をカバー2の側面部に90度の角度で取付けたときに、その側面部の面と縦長辺部に相当する箇所との間に形成される空間が筐体フック構造係合溝21cである。
【0058】
カバーフック基部21aは、カバー2の側面部と連接する部位である。例えば、カバーフック構造21は、カバー2の側面部を、連接部を除いてカバーフック構造21の形状に打ち抜き、打ち抜いた部分をカバー2の内側に90度折り曲げて形成しても良い。また、カバーフック構造21は、略L字形状のカバーフック構造21を個別に作成し、カバーフック基部21aをカバー2の側面部に接着して形成しても良い。
【0059】
カバーフック指部21bは、カバーフック基部21aと一体化された部位であり、筐体フック構造係合溝21cの溝幅だけ筐体フック基部11aより狭い部位が、カバー2の側面部と並行する方向に突き出ている。カバーフック指部21bの長さ(d3)は、筐体フック指部11bの長さと同じである。
【0060】
筐体フック構造係合溝21cは、筐体フック基部11aを、当該溝の深端部方向に水平にスライドさせる溝である。つまり、カバー2を筐体1に嵌め込む際に、カバーフック基部挿通部11cを挿通したカバーフック基部21aを、カバーフック構造係合溝11dを水平にスライドさせる。このとき、同時に、筐体フック基部11aが筐体フック構造係合溝21cを水平に逆方向にスライドする。筐体フック構造係合溝21cは、スライドさせてその深端部に達した筐体フック基部11aを、カバーフック指部21bとその対向部とにより、ガタツキなく挟み込む作用を持つ。この場合の対向部は、カバー2の側面の内側の面である。
【0061】
なお、カバーフック基部21aを、筐体フック構造11のカバーフック基部挿通部11cを挿通させる際、同時に、筐体フック構造11の直立している筐体フック指部11bも筐体フック構造係合溝21cを挿通する。そこで、筐体フック指部11bが筐体フック構造係合溝21cをスムースに挿通できるようにするため、筐体フック構造係合溝21cの溝幅(d2)を、筐体フック指部11bを形成する金属板の厚みよりも若干大きくする。筐体フック構造係合溝21cの溝幅(d2)を、筐体フック指部11bを形成する金属板の厚みよりも、例えば、0.2mm程度大きくする。
【0062】
以上に説明した筐体フック構造11とカバーフック構造21の嵌め込み動作と作用を整理すると次のようになる。
【0063】
カバー2を筐体1にかぶせ、水平に寝ている、カバーフック構造21のカバーフック基部21aを、筐体フック構造11のカバーフック基部挿通部11cを上から挿通させる。このとき、直立している、筐体フック構造11の筐体フック指部11bも筐体フック構造係合溝21cを挿通する。この状態で、カバーフック構造21のカバーフック基部21aは、水平状態で、筐体フック構造11のカバーフック構造係合溝11dの入り口に位置している。また、筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、直立状態で、カバーフック構造21の筐体フック構造係合溝21cの入り口に位置している。つまり、カバーフック基部21aと筐体フック基部11aは、それぞれ90度の角度をもって位置している。同様に、カバーフック指部21bと筐体フック指部11bも、それぞれ90度の角度をもって位置している。このように、筐体フック構造11とカバーフック構造21とが、それぞれ90度の角度をもって合い向き合った、対向している状態になっている。
【0064】
この状態からカバー2を筐体1の正面部方向に水平にスライドさせる。このスライド動作により、カバーフック構造21のカバーフック基部21aは、筐体フック構造11のカバーフック構造係合溝11dの中に、水平状態のままスライド移動する。相対的に、筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、カバーフック構造21の筐体フック構造係合溝21cの中に、直立状態のままスライド移動する。
【0065】
カバーフック構造21のカバーフック基部21aは、筐体フック構造11のカバーフック構造係合溝11dの深端部に達してスライド動作が停止する。また、筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、カバーフック構造21の筐体フック構造係合溝21cの深端部に達してスライド動作が停止する。
【0066】
スライド動作が停止するとカバー2が筐体1に嵌め込まれた状態になる。この状態では、カバーフック構造21のカバーフック基部21aは、筐体フック構造11のカバーフック構造係合溝11dの中に入り込み、筐体フック指部11bとその対向部で挟み込まれた状態になっている。筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、カバーフック構造21の筐体フック構造係合溝21cの中に入り込み、カバーフック指部21bとその対向部であるカバー2の側面の内側で挟み込まれた状態になっている。
【0067】
従って、筐体フック構造11は、直立している平板状の筐体フック指部11bとその対向部で、カバーフック構造21の水平になっているカバーフック基部21aを挟み込むので、カバー2の上下方向のガタツキを抑えることができる。また、カバーフック構造21は、水平になっている平板状のカバーフック指部21bとカバー2の側面の内側で、筐体フック構造11の直立している筐体フック基部11aを挟み込むので、左右方向のガタツキを抑えることができる。
【0068】
また、カバーフック構造21のカバーフック基部21aと筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、各フック構造係合溝の深端部で、90度の角度をもって接触している。そのため、筐体1とカバー2は、筐体フック基部11aとカバーフック基部21aとの接触点で電気的な導通を得ることができる。
【0069】
このように、カバー2を筐体1に嵌め込むと、筐体フック構造11とカバーフック構造21とが係合し、カバー2の上下方向および左右方向のガタツキを抑えた筐体を形成することができる。
【0070】
次に、筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22について詳細に説明する。
【0071】
図4は、筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22を説明する斜視図である。
【0072】
図4において、筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22のそれぞれの拡大斜視図が示されている。図4の拡大斜視図に示されているように、筐体段曲げ構造12は、筐体段曲げ構造舌部12aと筐体段曲げ構造突起部12bで構成される。また、カバー段曲げ構造22は、カバー段曲げ構造舌部22aとカバー段曲げ構造突起部22bで構成される。
【0073】
筐体段曲げ構造舌部12aは、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、筐体1の正面部において、カバー段曲げ構造舌部22aと互い違いとなる位置に配備される。筐体段曲げ構造舌部12aは、筐体1の正面上部に、正面上部の厚みが段差となるようにして筐体1の内側方向に突出して配備される。
【0074】
例えば、筐体段曲げ構造舌部12aは、正面上部の縁に沿った方向を長手方向として、正面上部の裏面に取付けられている。つまり、筐体段曲げ構造舌部12aの上面は正面上部の裏面に接着している。このことは、正面上部を構成する金属板の厚みに相当する段差をもって筐体段曲げ構造舌部12aが取付けられていることを意味する。従って、筐体段曲げ構造舌部12aと正面上部とを、正面上部を構成する金属板の厚みに相当する段差をつけて一体成形してもよい。
【0075】
筐体段曲げ構造舌部12aは、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、カバー2の裏面側に潜り込む構造となっている。
【0076】
筐体段曲げ構造突起部12bは、筐体段曲げ構造舌部12aに形成された半球状の突起構造である。この筐体段曲げ構造突起部12bの作用については後述する。
【0077】
カバー段曲げ構造舌部22aは、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、カバー2の正面において、筐体段曲げ構造舌部12aと互い違いとなる位置に配備される。カバー段曲げ構造舌部22aは、カバー2の正面側に、カバー2の厚みが段差となるようにして正面方向に突出して配備される。
【0078】
例えば、カバー段曲げ構造舌部22aは、カバー2の正面側の縁に沿った方向を長手方向として、カバー2の正面側の裏面に取付けられている。つまり、カバー段曲げ構造舌部22aの上面はカバー2の正面側の裏面に接着している。このことは、カバー段曲げ構造舌部22aは、カバー2を構成する金属板の厚みに相当する段差をもって取付けられている。従って、カバー段曲げ構造舌部22aとカバー2とを、カバー2を構成する金属板の厚みに相当する段差をつけて一体成形してもよい。
【0079】
カバー段曲げ構造舌部22aは、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、筐体1の正面部を構成する正面上部の裏面に潜り込む構造となっている。
【0080】
カバー段曲げ構造突起部22bは、カバー段曲げ構造舌部22aに形成された半球状の突起部である。このカバー段曲げ構造突起部22bの作用については後述する。
【0081】
以上の説明からわかるように、筐体1の正面上部の金属板の厚みと、カバー2の金属板の厚みが同じであれば、カバー2を筐体1に嵌め込んだときに、筐体1の正面上部とカバー2は段差無く嵌め込まれることになる。また、それぞれの厚みが異なっていたとしても、正面上部と筐体段曲げ構造舌部12aの段差およびカバー2とカバー段曲げ構造舌部22aの段差を適宜調整すれば、筐体1の正面上部とカバー2を段差無く嵌め込むことができる。
【0082】
次に、図5を参照して、筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22を嵌め込む動作を説明する。図5は、筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22を嵌め込む動作を説明する斜視図である。なお、実際に筐体1にカバー2を嵌め込むためには、前述した筐体フック構造11とカバーフック構造21を嵌め込みながら、筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22を嵌め込む動作が行われる。しかし、ここでは筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22を嵌め込む動作にのみ着眼して説明する。
【0083】
まず、カバー2を筐体1に嵌め込むために、筐体フック構造11の位置にカバーフック構造21の位置が対応するように、カバー2を筐体1の上で位置決めする。
【0084】
そして、前述したように筐体フック構造11のカバーフック基部挿通部11cに、カバーフック構造21のカバーフック基部21aを縦方向に挿通する。図5の下向き縦方向の矢印がこの動作を示す。つまり、筐体1の筐体フック構造11の位置でカバー2をかぶせる。
【0085】
この段階で、カバー2と筐体1の正面上部とは同一レベルになっており、筐体段曲げ構造12はカバー2の裏面側に、そして、カバー段曲げ構造22は、筐体1の正面上部の裏面側に潜り込む一歩手前の状態になっている。
【0086】
カバー2を、筐体1の正面部方向にスライド移動させる。この動作により、筐体段曲げ構造12はカバー2の裏面側に、そして、カバー段曲げ構造22は、筐体1の正面上部の裏面側に潜り込む。
【0087】
図5を参照すると、筐体段曲げ構造12−1は、カバー段曲げ構造22−1とカバー段曲げ構造22−2の間のカバー2の裏面側に潜り込む。そして、筐体段曲げ構造12−2は、カバー段曲げ構造22−2とカバー段曲げ構造22−3の間のカバー2の裏面側に潜り込む。相対的に、カバー段曲げ構造22−1は、右側面部と筐体段曲げ構造12−1の間の正面上部の裏面側に潜り込む。カバー段曲げ構造22−2は、筐体段曲げ構造12−1と筐体段曲げ構造12−2の間の正面上部の裏面側に潜り込む。そして、カバー段曲げ構造22−3は、筐体段曲げ構造12−2と左側面部の間の正面上部の裏面側に潜り込む。
【0088】
以上のようにして、カバー2を筐体1に嵌め込む。
【0089】
このようにして筐体1にカバー2が嵌め込まれると、筐体段曲げ構造突起部12bとカバー段曲げ構造突起部22bが、それぞれ接触している相手の金属板とのガタツキを抑える。しかも筐体1とカバー2との電気的な導通を確実にする。
【0090】
図6は、筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22を嵌め込んだ状態を説明する断面図である。
【0091】
図6において、左側が筐体1の正面部で、その正面上部に配備された筐体段曲げ構造12と、右側上部のカバー2に配備されたカバー段曲げ構造22とが嵌め込まれた様子を、その拡大図とともに示している。つまり、筐体1の正面上部に配備された筐体段曲げ構造舌部12aが、カバー2の裏面側に潜り込み、カバー2に配備されたカバー段曲げ構造舌部22aが、筐体1の正面上部の裏面側に潜り込んでいる。
【0092】
このとき、筐体段曲げ構造舌部12aに形成された突起構造である筐体段曲げ構造突起部12bは、カバー2を裏面側から押し上げ、筐体段曲げ構造舌部12aとカバー2に相互に弾性力が働き、カバー2のガタツキを抑える。同様に、カバー段曲げ構造舌部22aに形成された突起構造であるカバー段曲げ構造突起部22bは、筐体1の正面上部を裏面側から押し上げ、カバー段曲げ構造舌部22aと筐体1の正面上部に相互に弾性力が働き、これもカバー2のガタツキを抑える。
【0093】
図6に例示するように、筐体段曲げ構造突起部12bは、筐体段曲げ構造舌部12aの上面から0.2mm突出した半球状の突起構造である。筐体段曲げ構造突起部12bは、筐体段曲げ構造舌部12aのほぼ中央部に形成されている。同様に、カバー段曲げ構造突起部22bは、カバー段曲げ構造舌部22aの上面から0.2mm突出した半球状の突起構造である。カバー段曲げ構造突起部22bは、カバー段曲げ構造舌部22aのほぼ中央部に形成されている。
【0094】
なお、筐体段曲げ構造突起部12bやカバー段曲げ構造突起部22bの形状、大きさ、形成される位置は、これらに限られない。突起構造は、半球状でなくピラミッド状や円錐状であっても良い。各舌部の先端に近い位置に形成され、0.5mm突出したもので良い。各舌部の根元に近い位置に形成され、0.1mm突出したものでも良い。また、その数も1個ではなく複数であってもよい。筐体の大きさ、筐体を構成する金属板の厚さや材質に応じて任意に決めてよい。さらに、この突起構造は、必ずしも筐体段曲げ構造12とカバー段曲げ構造22の両方の段曲げ構造に形成しなくてもかまわない。少なくともいずれか片方の段曲げ構造に形成されているだけでもよい。
【0095】
次に、筐体1にカバー2を嵌め込んで筐体を固定する動作を説明する。図7は、カバーを筐体に嵌め込む動作を説明する斜視図である。
【0096】
まず、カバー2を筐体1に嵌め込むために、筐体フック構造11の位置にカバーフック構造21の位置が対応するように、カバー2を筐体1の上で位置決めする。
【0097】
そして、筐体フック構造11のカバーフック基部挿通部11cに、カバーフック構造21の水平状態のカバーフック基部21aを縦方向に挿通する。図7の拡大図におけるAb方向の下向き矢印がこの動作を示す。
【0098】
この状態で、カバーフック構造21のカバーフック基部21aは、筐体フック構造11のカバーフック構造係合溝11dの入り口に水平状態で位置している。また、筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、カバーフック構造21の筐体フック構造係合溝21cの入り口に直立状態で位置している。つまり、カバーフック基部21aと筐体フック基部11aは、それぞれ90度の角度をもって位置している。同様に、カバーフック指部21bと筐体フック指部11bも、それぞれ90度の角度をもって位置している。つまり、筐体フック構造11とカバーフック構造21とが、それぞれ90度の角度をもって合い向き合った、対向している状態になっている。
【0099】
同時に、カバー2と筐体1の正面上部とは同一レベルになっており、筐体段曲げ構造12はカバー2の裏面側に、そして、カバー段曲げ構造22は、筐体1の正面上部の裏面側に潜り込む一歩手前の状態になっている。
【0100】
このとき、筐体1の左右の側面部とカバー2の左右の側面部とは、それぞれ隙間が生じないで重なり合った状態となっている。
【0101】
この状態からカバー2を筐体1の正面部方向に水平にスライドさせる。このスライド動作により、カバーフック構造21のカバーフック基部21aは、筐体フック構造11のカバーフック構造係合溝11dの中に水平状態でスライド移動する。相対的に、筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、カバーフック構造21の筐体フック構造係合溝21cの中に直立状態でスライド移動する。そして、カバーフック構造21のカバーフック基部21aは、筐体フック構造11のカバーフック構造係合溝11dの深端部に達してスライド動作が停止する。また、筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、カバーフック構造21の筐体フック構造係合溝21cの深端部に達してスライド動作が停止する。
【0102】
同時に、筐体段曲げ構造12はカバー2の裏面側に、そして、カバー段曲げ構造22は、筐体1の正面上部の裏面側に潜り込む。このとき、カバー2の正面方向の断面部は、筐体1の正面上部の内側方向の断面部と密着する。
【0103】
また、このとき、筐体1の背面部とカバー2の背面部は、隙間が生じないで重なり合った状態となる。
【0104】
以上の動作で、カバー2が筐体1に嵌め込まれた状態になる。
【0105】
この状態で、カバーフック構造21のカバーフック基部21aは、筐体フック構造11のカバーフック構造係合溝11dの中に入り込み、平板状の筐体フック指部11bとその対向部で挟み込まれた状態になっている。筐体フック構造11の筐体フック基部11aは、カバーフック構造21の筐体フック構造係合溝21cの中に入り込み、平板状のカバーフック指部21bとその対向部であるカバー2の側面の内側で挟み込まれた状態になっている。
【0106】
そして、筐体1の正面上部に配備された筐体段曲げ構造舌部12aが、カバー2の裏面側に潜り込み、筐体段曲げ構造突起部12bがカバー2を裏面側から押し上げている。また、同時に、カバー2に配備されたカバー段曲げ構造舌部22aが、筐体1の正面上部の裏面側に潜り込み、カバー段曲げ構造突起部22bが、筐体1の正面上部を裏面側から押し上げている。
【0107】
このようにして、筐体フック構造11とカバーフック構造21とが係合し、カバー2の上下方向および左右方向のガタツキを抑える。また、筐体段曲げ構造12はカバー2に、カバー段曲げ構造22は筐体1にそれぞれ嵌め込まれ、カバー2の前後方向のガタツキを抑える。
【0108】
図8は、カバー2を筐体1に嵌め込んだ状態を正面方向から見た斜視図とその透視図である。
【0109】
上記のようにカバー2を筐体1に嵌め込むことにより、図8(a)に示すように、筐体1とカバー2の各側面部と各背面部が、それぞれ隙間が生じないで重なり合う。そして、カバー2の固着を、より確実なものにするために、図8(b)に示すように、背面において、少なくとも1本のネジでカバー2を筐体1に固定する、ネジ固定構造を設けてもよい。
【0110】
図9は、カバー2を筐体1に嵌め込んだ状態を背面方向から見た斜視図とその嵌め込み状態を示す拡大斜視図である。
【0111】
図9から明らかなように、本実施形態の筐体固定構造は、カバー2をネジ1本で筐体1に固定すれば、その固着をより強固にすることができる。また、背面部、側面部ともに隙間が生じないで重なり合った状態となる。
【0112】
図10は、カバー2を筐体1に嵌め込んだ状態を正面方向から見た斜視図とその嵌め込み状態を示す拡大斜視図である。正面部、側面部ともに隙間が生じないで重なり合った状態となる。
【0113】
以上に説明したように、本発明の実施形態は、略L字形状をした筐体フック構造11と略L字形状をしたカバーフック構造21とが、それぞれ90度の角度を持って係合する。そのため、「L」字の縦長辺部に相当する箇所である筐体フック指部11bとその対向部で、「L」字の横短辺部に相当する箇所であるカバーフック基部21aを挟み込む。これにより、筐体1とカバー2の上下方向のガタツキを抑えることができる。同時に、「L」字の縦長辺部に相当する箇所であるカバーフック指部21bとその対向部であるカバー2の側面の内側で、「L」字の横短辺部に相当する箇所である筐体フック基部11aを挟み込む。これにより、筐体1とカバー2の左右方向のガタツキを抑えることができる。
【0114】
また、筐体段曲げ構造12はカバー2に、カバー段曲げ構造22は筐体1にそれぞれ嵌め込まれ、筐体1に嵌め込まれたカバー2の前後方向のガタツキを抑える。更に、それぞれの段曲げ構造の舌部には、突起部が形成されている。そして、この突起部により、それぞれの段曲げ構造の舌部とカバー2または筐体1の正面上部との間で相互に弾性力が働き、ガタツキを抑える。
【0115】
さらに、筐体フック構造11とカバーフック構造21との係合、および突起部の作用による弾性力で相互に押し付けられたそれぞれの段曲げ構造とカバー2または筐体1との接触により、筐体1とカバー2は電気的な導通を得ることができる。そのため、筐体1が収容する通信機器からの電磁放射ノイズを遮蔽して、グランドに流すことができる構造の筐体を形成することができる。
【0116】
さらに、上述した筐体1とカバー2の嵌め込みによる固着を、より強固にするためにネジで固定するネジ固定構造を設けてもよい。このネジ固定構造は、少なくとも1箇所のネジ固定で確実に筐体1とカバー2とを固着できる。そのため、ネジ固定構造を設けたとしても作業効率は良い。
【符号の説明】
【0117】
1 筐体
2 カバー
1−1 第1のフック構造
1−2 第1の段曲げ構造
2−1 第2のフック構造
2−2 第2の段曲げ構造
11 筐体フック構造
12 筐体段曲げ構造
21 カバーフック構造
22 カバー段曲げ構造
11a 筐体フック基部
11b 筐体フック指部
11c カバーフック基部挿通部
11d カバーフック構造係合溝
21a カバーフック基部
21b カバーフック指部
21c 筐体フック構造係合溝
12a 筐体段曲げ構造舌部
12b 筐体段曲げ構造突起部
22a カバー段曲げ構造舌部
22b カバー段曲げ構造突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部が開口している立方体または直方体の箱型形状をした筐体の、左右側面部の一部として、前記左右側面部と同一平面になるように直立して配備された略L字形状をした第1のフック構造と、
前記筐体の上面を覆い、上平面に対して直角下方に折れまがった左右側面部と背面部を有するカバーの前記左右側面部に配備され、前記筐体に前記カバーをかぶせたときに前記第1のフック構造と対向する位置に、前記左右側面部に対して内側に直角になるように取付けられた略L字形状をした第2のフック構造と、
前記筐体の前記正面部側の上面部の一部を覆う正面上部に、当該正面上部の厚みが段差となるように、突出して配備された第1の段曲げ構造部と、
前記筐体の前記正面部に対向する側の前記カバーに、当該カバーの厚みが段差となるように、前記第1の段曲げ構造部と互い違いとなる位置に突出して配備された第2の段曲げ構造部と
を備え、
前記筐体にかぶせた前記カバーの、前記筐体の前記正面部方向への水平移動により、対向した前記第1のフック構造と前記第2のフック構造が係合し、前記第1の段曲げ構造部が前記カバーの裏面部に嵌め込まれ、前記第2の段曲げ構造部が前記筐体の前記正面上部の裏面部に嵌め込まれて、前記カバーを前記筐体に固着することを特徴とする筐体固定構造。
【請求項2】
前記第2のフック構造は、前記略L字の横短辺部に相当する第2のフック基部と、前記略L字の縦長辺部に相当する第2のフック指部と、前記第2のフック構造が前記カバーの前記左右側面部と直角になるように、前記第2のフック基部を前記左右側面部に取付けたときに、前記第2のフック指部と前記カバーの前記左右側面部とで形成される空間である第1のフック構造係合溝とを有し、
前記第1のフック構造は、前記略L字の横短辺部に相当する第1のフック基部と、前記略L字の縦長辺部に相当する第1のフック指部と、前記第1のフック構造が前記筐体の前記左右側面部と同一の平面上に形成されるように、前記第1のフック基部を前記左右側面部に取付けたときに、前記第1のフック指部と前記筐体の前記左右側面部とで形成される空間である第2のフック構造係合溝と、前記カバーを前記筐体にかぶせるときに、前記第2のフック基部が挿通する空間である第2のフック基部挿通部とを有し、
前記カバーを前記筐体にかぶせると、水平状態の前記第2のフック基部が前記第2のフック基部挿通部を、直立状態の前記第1のフック指部が前記第1のフック構造係合溝を、それぞれ挿通して、前記第1のフック構造と前記第2のフック構造が、それぞれ90度の角度をもって対向し、
前記筐体にかぶせた前記カバーを前記筐体の前記正面部方向に水平移動すると、直立状態の前記第1のフック基部が前記第1のフック構造係合溝の中を移動し、水平状態の前記第2のフック基部が前記第2のフック構造係合溝の中を移動して、前記第1のフック構造と前記第2のフック構造が係合する
ことを特徴とする請求項1に記載の筐体固定構造。
【請求項3】
前記第1の段曲げ構造と前記第2の段曲げ構造の、少なくともいずれか片方の段曲げ構造に、対向して接する前記カバーまたは前記筐体の前記正面上部の裏面部に圧接する突起構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の筐体固定構造。
【請求項4】
前記第1のフック構造は、前記筐体の左右側面部に、少なくともそれぞれ1箇所に配備され、前記第2のフック構造は、前記カバーの左右側面部に、少なくともそれぞれ1箇所に配備されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの請求項に記載の筐体固定構造。
【請求項5】
前記第1の段曲げ構造は、少なくとも前記筐体の前記正面上部の略中央付近の1箇所に配備され、前記第2の段曲げ構造は、少なくとも前記カバーにおいて左右側面部に近い付近のそれぞれ1箇所に配備されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの請求項に記載の筐体固定構造。
【請求項6】
前記筐体と前記カバーを、背面から少なくとも1本のネジで固定するネジ固定構造を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの請求項に記載の筐体固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−256805(P2012−256805A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130322(P2011−130322)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(390001074)NECネットワークプロダクツ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】