説明

筐体

【課題】容易に電子部品の仕様を識別することができ、汎用性に優れた筐体を提供する。
【解決手段】スイッチを収容する筐体1は、スイッチの仕様と対応する複数種の標識22a,22bが設けられた前壁21を備えた。そして、前壁21の形状を、スイッチの定格電圧に応じて変更可能に構成した。識別部には、前記複数種の標識のいずれか1つが設けられた複数の識別片24が形成され、前記各識別片24は、前記識別部から分離可能に形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収容する筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるスイッチ装置(例えば、特許文献1参照)等では、定格電圧等の仕様が異なる複数種が製品として製造されている。ところで、こうした仕様が異なるスイッチ装置は、通常、略同一形状の筐体内に各種仕様のスイッチを収容することで製造される。そのため、これらのスイッチ装置は、その外観形状が略同一になることから、仕様の違いを目視で識別することが困難になる。そこで、従来では、筐体に対して仕様の違いを示す文字や記号等(例えば、定格電圧の値を示す「12」や「24」)を印刷することで、スイッチ装置の仕様を識別するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−39548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、仕様が異なるスイッチ装置の種類に対応して、必要な筐体の種類(品番数)が増加する。すなわち、スイッチ装置の仕様に応じて異なる文字等が印刷された複数種の筐体が必要になる。その結果、筐体の管理が煩雑になることで、コストの増大を招いており、この点においてなお改善の余地があった。
【0005】
なお、このような問題は、スイッチ装置に限らず、略同一形状の筐体内に仕様の異なる電子部品を収容することで複数種の仕様のものを製造する場合にも、同様に生じ得る。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、容易に電子部品の仕様を識別することができ、汎用性に優れた筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、電子部品を収容する筐体であって、前記電子部品の仕様と対応する複数種の標識が設けられた識別部を備え、前記識別部は、その形状が変更可能に構成されたことを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、収容する電子部品の仕様に応じて識別部の形状を変更させることにより、同電子部品の仕様を目視で容易に識別することが可能になる。そのため、一種類の筐体でも、複数の電子部品の仕様を識別することができ、その汎用性を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筐体において、前記識別部には、前記複数種の標識のいずれか1つが設けられた複数の識別片が形成され、前記各識別片は、前記識別部から分離可能に形成されたことを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、識別片を分離することで識別部の形状が変更されるため、例えば識別片を曲折することで識別部の形状が変更される場合と異なり、収容される電子部品と異なる仕様を示す標識が筐体に残ったままとならないため、その仕様を誤って認識することを確実に防止できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の筐体において、前記各識別片には、機械的強度を低下させた脆弱部が形成されたことを要旨とする。
上記構成によれば、各識別片には、周囲に比べて機械的強度を低下させた脆弱部が形成されるため、同脆弱部を境にして容易に識別片を筐体から分離させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易に電子部品の仕様を識別することができ、汎用性に優れた筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の筐体を示す斜視図。
【図2】スイッチの定格電圧が「12V」であるスイッチ装置の正面図。
【図3】スイッチの定格電圧が「24V」であるスイッチ装置の正面図。
【図4】スイッチを組み付ける際に筐体を支持するための治具の斜視図。
【図5】(a)筐体を治具によって支持する前の状態を示す模式図、(b)筐体を治具によって支持した状態を示す模式図。
【図6】別の筐体における識別部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をハザードランプ等の車載機器を操作するスイッチ装置の筐体に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、筐体1は、樹脂材料により構成されるとともに、その下部が開口した略直方体状に形成されている。また、筐体1の上壁2には、複数(本実施形態では、3つ)の貫通孔2aが形成されている。そして、図2又は図3に示すように、筐体1に、電子部品としての複数(本実施形態では、3つ)のスイッチ11が収容されることで、スイッチ装置12が構成されるようになっている。なお、各スイッチ11は、筐体1の貫通孔2aから外部に露出した状態で配置されるノブ13、同ノブ13のプッシュ操作を検出するスイッチ接点部品や回路基板等(いずれも図示略)が設けられた本体部14、及び外部に接続されるコネクタ15等から構成されている。
【0014】
ここで、筐体1には、スイッチ装置12が搭載される車種に応じて、仕様が異なる二種類のスイッチ11が収容される。これにより、仕様が異なる二種類のスイッチ装置12が製造されるようになっている。なお、本実施形態では、定格電圧が「12V」又は「24V」のいずれかのスイッチ11が収容される。そして、筐体1は、こうしたスイッチ装置12(スイッチ11)の仕様(定格電圧)を識別可能に構成されている。
【0015】
詳述すると、図1に示すように、筐体1の前壁21には、スイッチ11の仕様と対応する複数種(本実施形態では、二種類)の標識22a,22bが設けられている。すなわち、本実施形態では、前壁21が識別部に相当する。そして、前壁21は、その形状が変更可能に形成されている。
【0016】
具体的には、前壁21には、その下端から上方に向かって延びる4本のスリット23が形成されることにより、同前壁21から分離可能な2つの識別片24が形成されている。各識別片24の前壁21との連結部25には、筐体1の幅方向(図2又は図3における左右方向)に延びる破断溝25aが形成されている。これにより、連結部25の肉厚は、その上下方向両側部分よりも薄く形成されており、機械的強度が低くなっている。すなわち、本実施形態では、破断溝25aが脆弱部に相当する。そして、各識別片24には、標識22a,22bのいずれか1つが設けられている。
【0017】
各標識22a,22bは、それぞれ識別片24と一体形成された凸部27a,27bにより構成されている。具体的には、凸部27a(標識22a)は、スイッチ11の定格電圧の1つである「12」の数字を描くように形成されている。一方、凸部27b(標識22b)は、スイッチ11の定格電圧の1つである「24」の数字を描くように形成されている。
【0018】
このように構成された筐体1では、収容するスイッチ11の定格電圧に応じて各識別片24のいずれか一方を前壁21から切り離すことで、スイッチ装置12(収容されるスイッチ11)の定格電圧を識別可能になる。詳しくは、図2に示すように、定格電圧が「12V」のスイッチ11を収容する場合には、標識22bが設けられた識別片24を前壁21から切り離すことで、筐体1に「12」と表示された標識22aが残り、スイッチ装置12の定格電圧が「12V」であると識別可能となる。一方、図3に示すように、定格電圧が「24V」のスイッチ11を収容する場合には、標識22aが設けられた識別片24を前壁21から切り離すことで、筐体1に「24」と表示された標識22bが残り、スイッチ装置12の定格電圧が「24V」であると識別可能となる。
【0019】
次に、スイッチ装置12の製造について説明する。
スイッチ装置12の製造に際しては、図4に示すような治具31を用いて筐体1を固定した状態で、スイッチ11が組み付けられる。
【0020】
治具31は、筐体1を支持する略直方体状の支持部32と、識別片24のいずれか一方を前壁21から分離するための複数(本実施形態では2つ)の分離部33とを備えている。各分離部33は、板状に形成されるとともに、その上端面33aは、下方に向かうにつれて支持部32から離間するように傾斜して形成されている。また、分離部33の下端には、略L字状に形成された受け部34が形成されている。そして、各分離部33は、支持部32において、標識22aが設けられた識別片24と対応する位置に固定されている。なお、図4に示す治具31は、定格電圧が「24V」のスイッチ装置12を製造する際に用いるものであり、定格電圧が「12V」のスイッチ装置12を製造する際に用いる治具では、分離部33を支持部32における標識22bが設けられた識別片24と対応する位置に固定する。
【0021】
このように構成された治具31に、筐体1を固定しようとすると、図5(a)に示すように、識別片24の下端が分離部33の上端に当接する。この状態から筐体1を治具31に押し付けることで、識別片24が分離部33の上端面33aに倣って折り曲げられ、図5(b)に示すように、破断溝25aを境にして識別片24が前壁21から分離するようになっている。なお、このとき、分離した識別片24は、受け部34に収容されることで、散乱することが防止される。そして、スイッチ11を治具31に支持された状態の筐体1に組み付けることで、スイッチ装置12が製造される。
【0022】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)仕様が異なる複数種のスイッチ11のいずれか一種を収容する筐体1は、スイッチ11の仕様と対応する複数種の標識22a,22bが設けられた前壁21を備えた。そして、前壁21の形状を、スイッチ11の定格電圧に応じて変更可能に構成した。そのため、異なる定格電圧のスイッチ11を収容することで複数種のスイッチ装置12を製造する場合において、一種類の筐体1でも、二種類のスイッチ11の定格電圧を識別することができ、その汎用性を向上させることができる。これにより、スイッチ装置12のコストの低減を図ることができる。
【0023】
(2)前壁21に、各標識22a,22bのいずれか1つが設けられた複数の識別片24を形成し、これら各識別片24を、前壁21から分離可能に形成した。上記構成によれば、識別片24を分離することで前壁21の形状が変更されるため、例えば識別片24を曲折することで前壁21の形状が変更される場合と異なり、収容されるスイッチ11と異なる仕様を示す標識が筐体1に残ったままとならないため、その仕様を誤って認識することを確実に防止できる。
【0024】
(3)各識別片24における連結部25に破断溝25aを形成することで、その機械的強度を低下させため、同連結部25を境にして容易に識別片24を前壁21から分離させることができる。
【0025】
(4)各標識22a,22bを、識別片24に一体形成された凸部27a,27bにより構成したため、例えば識別片24に印刷された文字により標識22a,22bを構成する場合に比べ、標識22a,22b印刷工程を省くことができ、容易に筐体1を製造することができる。
【0026】
(5)治具31に分離部33を設け、筐体1を治具31に固定する際に識別片24が前壁21から分離するようにしたため、例えば作業者が手で識別片24を分離する場合に比べ、作業工程の簡素化を図ることができる。
【0027】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、筐体1を樹脂材料により構成したが、これに限らず、前壁21の形状を変更可能であれば、例えば金属材料により筐体1を構成してもよい。
【0028】
・上記実施形態では、識別片24を前壁21から分離することで、識別部としての前壁21の形状を変更するようにしたが、これに限らず、前壁21の形状を変更できれば、識別片24が分離しない構成としてもよい。具体的には、例えば図6に示すように、識別片24を曲折することで前壁21の形状を変更するようにしてもよい。また、前壁21の形状を、スイッチ11の仕様に応じて変更できれば、同前壁21に識別片24を形成せずともよい。
【0029】
・上記実施形態では、識別片24の連結部25に破断溝25aを形成することにより、同連結部25の強度を低下させたが、これに限らず、例えば連結部25に幅方向に沿って複数の貫通孔(ミシン目)を形成することで、その強度を低下させるようにしてもよい。また、識別片24を前壁21から分離させることができれば、連結部25の強度を低下させなくともよい。
【0030】
・上記実施形態では、筐体1を支持する治具31に分離部33を設け、筐体1を治具に固定する際に、識別片24が前壁21から分離するようにしたが、これに限らず、治具31に分離部33を設けず、例えば作業者が手で識別片24を切り離すようにしてもよい。
【0031】
・上記実施形態では、標識22a,22bを各識別片24と一体形成された凸部27a,27bにより構成したが、各識別片24と一体形成された凹部により標識22a,22bを構成してもよい。また、各識別片24と一体形成する場合に限らず、標識22a,22bは印刷された文字や記号等により構成してもよい。なお、こうした印刷の方法としては、柔軟性を有するパッドに凹版上のインクを一旦転写し、そのパッドを筐体1に押し付けてインクを同筐体1へ付着させるタンポ印刷を採用することができる。
【0032】
・上記実施形態では、標識22a,22b(凸部27a,27b)がスイッチ11の仕様(定格電圧)を直接的に示すようにしたが、これに限らず、収容されるスイッチ11の仕様を識別できれば、例えば「1」と「2」等、スイッチの仕様とは関係のない文字等にしてもよい。
【0033】
・上記実施形態では、筐体1に2つの識別片24を形成し、二種類の仕様のスイッチ11を識別するようにしたが、これに限らず、筐体1に3つ以上の識別片を形成し、三種類以上の仕様の異なるスイッチ11を識別するようにしてもよい。
【0034】
・上記実施形態では、筐体1に定格電圧が異なるスイッチ11を収容するようにしたが、これに限らず、例えば定格電流等、他の仕様が異なるスイッチ11を収容するようにしてもよい。
【0035】
・上記実施形態では、本発明を電子部品としてのスイッチ11を収容するスイッチ装置12の筐体1に適用したが、他の電子部品を収容する筐体に適用してもよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0036】
(イ)請求項1〜3のいずれか一項に記載の筐体において、前記各標識は、前記識別部に一体形成された凸部又は凹部により構成されることを特徴とする筐体。上記構成によれば、例えば識別部に印刷された文字により標識を構成する場合に比べ、標識の印刷工程を省くことができ、容易に筐体を製造することができる。
【0037】
(ロ)請求項1〜3、上記(イ)のいずれか一項に記載の筐体において、前記電子部品は、車載機器を操作するためのスイッチであることを特徴とする筐体。上記構成によれば、仕様が異なる複数種のスイッチ装置を製造する場合において、コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…筐体、11…電子部品としてのスイッチ、12…スイッチ装置、21…識別部としての前壁、22a,22b…標識、24…識別片、25…脆弱部としての連結部、27a、27b…凸部、31…治具、32…支持部、33…分離部、33a…上端面、34…受け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容する筐体であって、
前記電子部品の仕様と対応する複数種の標識が設けられた識別部を備え、
前記識別部は、その形状が変更可能に構成されたことを特徴とする筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の筐体において、
前記識別部には、前記複数種の標識のいずれか1つが設けられた複数の識別片が形成され、
前記各識別片は、前記識別部から分離可能に形成されたことを特徴とする筐体。
【請求項3】
請求項2に記載の筐体において、
前記各識別片には、機械的強度を低下させた脆弱部が形成されたことを特徴とする筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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