説明

筐体

【課題】特殊部品を用いることなく、当該部品の取り付けに要する作業工程を増加させずに、いたずらを防止することができる筐体を提供する。
【解決手段】筐体8は、下部筐体8Bと、下部筐体8Bに設けられ、円筒状の雄ネジ部又は雌ネジ部を有する取付部品1の雄ネジ部又は雌ネジ部が差し込まれる取付孔80と、取付部品1の雄ネジ部又は雌ネジ部に対応する取付ナット5によって取付部品1が下部筐体8Bに取り付けられた状態で、取付部品1が下部筐体8Bに対して回転するのを防止する回転防止部7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは非専門家による部品の操作を防止することができる筺体に関し、特に、筺体に取り付けた防水機能を有するコードブッシングの取り外しを防止する機能を備えた筺体に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体にケーブルを固定する際であって防水機能が要求される場合には、一般的に、コードブッシングと呼ばれる部品が用いられる。
【0003】
この部品の一部が筐体外に露出している場合、専門知識のない者又は当該部品の操作に未熟な者(以下、「非専門家」という。)によってコードブッシングのネジが緩められることがあり、コードブッシングの本来の機能が低下、又は最悪の場合にはコードブッシングの取り外しがなされるという問題が生じている(以下、「いたずら」という。)。
【0004】
この問題を解決する手段として、一般的な工具には対応しない特殊な形状のネジを採用した部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に記載された部品は、無線機本体に取り付けられるアンテナの取り外しを防止する部品を固定する部品であって、一般の工具を使用しても取り外せない特殊な形状の頭部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−168619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この特許文献1に記載された部品は、一般の工具では取り外せないためいたずらは防止できるが、一般の部品に比べて製造コストが増加し、また、特殊な工具を要するため作業工程が増加するという問題がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、特殊部品を用いることなく、当該部品の取り付けに要する作業工程を増加させずに、いたずらを防止することができる筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の筐体を提供する。
【0010】
[1]筐体本体と、
前記筐体本体に設けられ、円筒状の雄ネジ部又は雌ネジ部を有する取付部品の前記雄ネジ部又は雌ネジ部が差し込まれる取付孔と、
前記取付部品の前記雄ネジ部又は雌ネジ部に対応するネジ部品によって前記取付部品が前記筐体本体に取り付けられた状態で、前記取付部品が前記筐体本体に対して回転するのを防止する回転防止部とを有する筐体。
【0011】
[2]前記回転防止部は、前記筐体本体の表面上に設けられた凸部であり、前記凸部の高さにおいて前記取付部品の外形のうち前記取付部品の回転中心から最小の距離より遠ざかった位置であって最大の距離より近づいた位置に設けられる前記[1]に記載の筐体。
【0012】
[3]前記回転防止部は、前記筐体本体に設けられた凹部の側壁であり、前記凹部の側壁の底からの高さにおいて前記取付部品の外形のうち前記取付部品の回転中心から最小の距離より遠ざかった位置であって最大の距離より近づいた位置に設けられる[1]に記載の筐体。
【0013】
[4]前記取付部品は、一端に前記雄ネジ部又は前記雌ネジ部を有する第1の部品と、前記第1の部品の他端に取り付けられる第2の部品とを有し、
前記回転防止部は、前記取付部品が筐体本体に取り付けられた状態で、前記取付部品の少なくとも前記第2の部品が前記筐体本体に対して回転するのを防止する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の筐体。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、4に係る発明によれば、特殊部品を用いることなく、当該部品の取り付けに要する作業工程を増加させずに、いたずらを防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、凸部により回転防止部を形成することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、凹部により回転防止部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る筐体の構成の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る筐体の構成の一例を示す概略側面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る筐体の構成の一例を示す上面一部断面図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、本発明の実施の形態に係る筐体に対して取付部品を取り付ける手順を説明するための概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(筐体の構成)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る筐体の構成の一例を示す概略斜視図である。
【0020】
筐体8は、蓋状の上部筐体8Aと深さを有する長方形状の下部筐体8Bとから構成される。下部筐体8Bの対向する側面には、筒状の取付部品1(コードブッシング)が貫通して取り付けられる取付孔(図3参照)80と、取付部品1のうち少なくとも筐体8の外部に露出している部分が回転しないよう設けられる回転防止部7とが設けられる。
【0021】
回転防止部7は、取付部品1の側面部の少なくとも一部に接触するように筐体8本体から突出している。取付部品1は内部に防水ゴム(図3参照)2を備えてコード6の外被に密着して取り付けられている。
【0022】
また、筐体8は、上部筐体8A及び下部筐体8Bによって囲まれる閉じた内部空間を有し、当該空間に、例えば、コード6と電気的に接続される部品やコード6の外被を覆う部品等を格納する。なお、筐体8の内部空間に外部から水が侵入しないように、上部筐体8Aと下部筐体8Bとの接触部に図示しない防水用のシーリング等を有する。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係る筐体の構成の一例を示す概略側面図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係る筐体の構成の一例を示す上面一部断面図である。
【0024】
取付部品1は、六角ナット形状を有したキャップ1aと、円筒形状を有してその一端にキャップ1aに対応したネジ部と他端に取付ナット5に対応したネジ部と中央に六角の頭部(11a、11b)を備えた本体1bと、本体1bの内周とコード6の外被との密着性を保持する防水ゴム2と、本体1bと下部筐体8B表面との密着性を保持するパッキン4と、本体1bを下部筐体8Bに取り付けて固定する取付ナット5とから構成される。
【0025】
取付部品1のキャップ1aは、その外形としてキャップ1aの回転中心から最も遠い側面部10aと、キャップ1aの回転中心から最も近い側面部11aとを有する。また、キャップ1aの内周に本体1bの一端のネジ部に対応したネジ部を有する。
【0026】
また、同様に、本体1bの頭部は、その外形として本体1bの回転中心から最も遠い側面部10bと、回転中心から最も近い側面部11bとを有する。
【0027】
下部筐体8Bの回転防止部7は、一例として、キャップ1aを挟みこむように対向して設けられ、回転防止部7の接触面7a、7b間の距離は、少なくともキャップ1aの対向する側面部10a間の距離より小さく、対向する側面部11a間の距離より大きく設定される。
【0028】
なお、回転防止部7は、少なくとも1つ設けられていればよい。最も好ましくは、回転防止部7の側面部11a及び11bの周りに沿って囲むような形状で設けられるとよい。また、回転防止部7の形状は、板状に限らず、棒状であってもよい。
【0029】
また、筐体8Bの回転防止部7は、本体1bの頭部を挟みこむように対向して設けられ、回転防止部7の接触面7a、7b間の距離は、少なくとも側面部10b間の距離より小さく、対向する側面部11b間の距離より大きく設定されていてもよい。
【0030】
図4は、本発明の実施の形態に係る筐体8に対して取付部品1を取り付ける手順を説明するための概略斜視図である。
【0031】
まず、その内周にネジが切られているキャップ1a、その一端及び他端の外周にそれぞれネジが切られている本体1b、キャップ1aと本体1bとの間に配置された防水ゴム2及び本体1bの他端側に配置されたパッキン4のそれぞれにコード6が挿入される。
【0032】
次に、本体1bの一端とキャップ1aとが絞めつけられることで防水ゴム2は内径方向に突出するように変形し、防水ゴム2がコード6の外被に密着して固定される。
【0033】
また、本体1bの他端は、コード6とともに下部筐体8Bの取付孔80に挿入され、下部筐体8Bの内部側から取付ナット5で絞めつけられる。これにより、本体1bはパッキン4により下部筐体8Bに密着して固定される。
【0034】
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、取付部品1のキャップ1aが回転しないように回転防止部7をキャップ1aの回転半径の最小値より遠くかつ最大値より近くに設けたため、取付部品1を筐体8に取り付けた後は、キャップ1a及び本体1bが意図せず緩ませられる等のいたずらを防止することができる。
【0035】
また、回転防止部7は、筐体8に設けられるため、取付部品1として一般市販部品を用いることができる。
【0036】
また、取付部品1は一般市販品であり、構成部品に特殊な形状を採用していないため、取り付けの際に一般的な工具を用いることができる。
【0037】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。例えば、回転防止部7を下部筐体8Bから突出するように設けたが、下部筐体8Bの側面に対して凹部を形成して凹部の底面に取付孔80を形成することで凹部の側面を回転防止部7としてもよい。
【0038】
また、取付部品1は、キャップ1a、防水ゴム2、本体1bを一体としたものであってもよい。さらに、コードブッシングは一例であり、ボルト頭部を筐体8の外側に露出するものであれば他の形状を有する部品であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 取付部品
1a キャップ
1b 本体
2 防水ゴム
4 パッキン
5 取付ナット
6 コード
7 回転防止部
7a、7b 接触面
8 筐体
8A 上部筐体
8B 下部筐体
10a、10b、11a、11b 側面部
80 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体本体と、
前記筐体本体に設けられ、一端に雄ネジ部又は雌ネジ部を有する円筒状の取付部品の前記雄ネジ部又は雌ネジ部が差し込まれる取付孔と、
前記取付部品の前記雄ネジ部又は雌ネジ部に対応するネジ部品によって前記取付部品が前記筐体本体に取り付けられた状態で、前記取付部品が前記筐体本体に対して回転するのを防止する回転防止部とを有する筐体。
【請求項2】
前記回転防止部は、前記筐体本体の表面上に設けられた凸部であり、前記凸部の高さにおいて前記取付部品の外形のうち前記取付部品の回転中心から最小の距離より遠ざかった位置であって最大の距離より近づいた位置に設けられる請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記回転防止部は、前記筐体本体に設けられた凹部の側壁であり、前記凹部の側壁の底からの高さにおいて前記取付部品の外形のうち前記取付部品の回転中心から最小の距離より遠ざかった位置であって最大の距離より近づいた位置に設けられる請求項1に記載の筐体。
【請求項4】
前記取付部品は、一端に前記雄ネジ部又は前記雌ネジ部を有する第1の部品と、前記第1の部品の他端に取り付けられる第2の部品とを有し、
前記回転防止部は、前記取付部品が筐体本体に取り付けられた状態で、前記取付部品の少なくとも前記第2の部品が前記筐体本体に対して回転するのを防止する請求項1〜3のいずれかに記載の筐体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−8916(P2013−8916A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141852(P2011−141852)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(591004146)平河ヒューテック株式会社 (18)
【Fターム(参考)】