筒型の固体酸化物形燃料電池
【課題】平板型固体酸化物形燃料電池は、発電に伴う発熱で電極間の温度差に起因する熱応力が不均一であり、円筒型固体酸化物形燃料電池及び角筒型固体酸化物形燃料電池は面積当たりの出力が平板型電池セルに劣るので、熱応力に優れ、単位体積当たりの発電量に優れた筒型の固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】空気極層、電解質層及び燃料極層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を連結してなる固体酸化物形燃料電池において、中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合された複数本の側部筒型電池セルとからなり、かつ前記各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されてなる構成の筒型の固体酸化物形燃料電池による。
【解決手段】空気極層、電解質層及び燃料極層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を連結してなる固体酸化物形燃料電池において、中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合された複数本の側部筒型電池セルとからなり、かつ前記各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されてなる構成の筒型の固体酸化物形燃料電池による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池に係り、冷態時からの急速起動が可能で、かつ耐久性に優れ、比出力の高いコンパクトな筒型の固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を動力に変換する機構として、19世紀は固体燃料である石炭と蒸気機関、20世紀は液体燃料である石油と内燃機関に対し、21世紀は、気体燃料と燃料電池へと変化しつつある。
中でも固体酸化物形燃料電池(以後、SOFCと記述)は、燃料選択性がなく水素や一酸化炭素が同時に燃料として利用でき、貴金属の使用もなく、かつ排熱温度も高い等、他の燃料電池システムに比べて、多くのメリットがあり、その実用化に向けて開発が世界中で進められている。
SOFCは、気体を通さない電解質層とその両面に配置されたポーラス構造の燃料極層及び空気極層で構成(以後、両者を合わせて示す場合は両極層と記述)され、空気極層からの酸素は酸素イオンとして電解質中を移動し、燃料極層で燃料と反応し電気を発生する。
【0003】
電解質層内の酸素イオン導電率を大きくし、また、各極層での反応速度を高めるためにSOFCの作動温度は高く設定される。この高温に対応するため、電解質層を含め主構成要素にはセラミック材が使用される。
【0004】
燃料の酸化反応で生ずるエネルギーを100%電気に変換することは熱力学的にみて不可能であり、一定負荷運転状態でも、発電により燃料極層側で熱が発生する。 そして両極層周辺の熱容量、熱伝達率、質量等の不均一な分布が、電池セルに不均一な温度分布をもたらし、熱応力を生じさせる。
特に、急速起動、運転中の急激な負荷変動により両極層周辺の温度の不均一な分布はさらに大きくなり、定常運転時より高い熱応力が発生する。
一方、セラミック材の臨界応力係数が金属に比しほぼ1/100と小さく、セラミック部材にかかる熱応力と熱変形の低減がSOFC実現の大きな課題である。
【0005】
さらに、燃料極層及び空気極層が、気体を通過させるためのマクロなポーラス構造であるとすれば、酸素イオンを通過させるために格子内に空房をもつ電解質層は、分子レベルでのミクロなポーラス構造を有すると言える。
先に記述した臨界応力係数の低さと相まって、ミクロ及びマクロなポーラス構造への対応もセラミックで形成されるSOFC実用化への課題と言いうる。
【0006】
SOFCは、固体酸化物形電解質膜で空間を2分し、電解質膜のそれぞれの側に電極を設けて異なる気体を通流し発電するシステムと言える。
現在開発されている空間を2分する方式のSOFCとしては、大別して図9に示す板状電解質層の両面に、また図10に示す筒状の電解質層の内面、外面に、それぞれ電解質層を挟んで燃料極層と空気極層とを配置して発電する平板型SOFCと円筒型SOFCとがある。
【0007】
平板型SOFCセル100は、図9にその一例を示すように、
電解質層102と、該電解層102の両面にそれぞれ接触する燃料極、あるいは空気極を備え、かつ両極の周辺を外部からシールする2枚のインターコネクタ101と、前記電解層102とインターコネクタ101との間に挟設され両極周辺をシールする2枚のガスケット103とで構成されている。そして電池セルに設けられた4つの穴の対角線上にあるそれぞれ2つの穴で燃料又は空気の通路を形成し、それぞれの通路から供給される燃料と空気との反応により発電される。
【0008】
この平板型SOFCセル100は、構成部品が主に平面であるため、大きな製造上のメリットを有する。
【0009】
図10に筒型SOFCセルの一例としての円筒型SOFCセル150を示す。
円筒型SOFCセル150は、図10に示すように、円筒形の電解質層152の外周面に空気極層154を、内周面に燃料極層153を配設して電池セルが構成されてなり、かつ前記電解質層152及びその外周面に配設された空気極層154には軸線に沿ってスリットが穿設され、該スリットから前記電解質層の内周面に配設された燃料極層153に接続されたインターコネクタが電池セルから突出させて設けられている。
そして円筒型SOFC150の中空部に燃料を、外周部に空気通流させることによって発電を行っている。
【0010】
円筒型SOFCセル150は、前記平板型SOFCセル100と異なり、閉じた壁で構成されており、電池セルの燃料極層153と空気極層154との間で平板型SOFCセル100と同じ温度差が生じた場合でも、その熱応力は平板型SOFCセルより小さい。
さらに、円筒型SOFCセル150は、平板型SOFCセルに見られる大きなインターコネクタがなく、したがって、両端のガスシール部を除けば発電部の熱容量分布は全域でほぼ一定であり、特に暖気時の熱応力は平板型SOFCセルに比べて小さい。
【0011】
角筒型SOFCセルの例として特許文献1に開示の発明を示す。
特許文献1の段落〔0022〕には、ランタンマンガネート系のポーラスな角筒形状の空気極支持管211の外周面の3側面にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)の固体電解質212を積層形成し、さらにこの固体電解質212の外周面にニッケル又はニッケル合金とYSZとのサーメット製のポーラスな燃料極213を積層形成し、空気極支持管211の残る1側面にランタンクロマイト系酸化物(LaCrOn)のインタコネクタ214を積層形成した図11に示す構造の個体電解質燃料電池アセンブリが開示されている。
【0012】
そして、特許文献1の〔請求項1〕には、上記個体電解質燃料電池アセンブリの製造方法として、「空気極若しくは燃料極とその保形体とを兼用する角筒形状の電極支持管の複数体をセパレータ上に等間隔で配列し、次に前記複数体の電極支持管それぞれの開放外周面に固体電解質を積層形成し、続いて前記固体電解質の外周に前記電極支持管と反対の極性の電極層を積層形成することによって、前記セパレータ上に等間隔に複数体の角筒式固体電解質燃料電池が列設された固体電解質燃料電池アセンブリユニットを製造する」と記載されている。
【0013】
また、特許文献1の〔請求項2〕には、「請求項1の製造方法にて製造された固体電解質燃料電池アセンブリユニットの複数体を複数段に積層し、前記電極支持管それぞれの内部に酸化ガスと燃料ガスのいずれか一方を通流させ、前記角筒式固体電解質燃料電池の列間の間隙に酸化ガスと燃料ガスのいずれか他方を通流させる個体電解型燃料電池アセンブリ」と記載され、個体電解型質燃料電池への燃料ガス及び酸化ガスの供給方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3722927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、平板型SOFCセル100は、前述のように燃料極及び空気極周辺部のガスシールのためインターコネクタ101と電解質層102とはガスケット103を介して固定又は半固定されており、電解質層102周辺部の変形が制限された状態にある。したがって、発電に伴う発熱による燃料極と空気極間の温度差に起因する熱応力は拡大されることになる。
【0016】
また、平板型SOFCセルの電解質層102の周辺部は、熱容量の大きいインターコネクタとガスケットに接しており、そのため電解質層102の発電に係わる部分と周辺部との熱容量分布の不均一となり、特に暖気途中などの時間的な温度変化が大きい場合は、内部に大きな温度差を生じ、高い熱応力が発生する。
近年、定常運転では安定した出力が得られる平板SOFCセルの例は増加しているものの、まだ起動・停止の繰り返しで劣化が起きる例が見られる。この原因の一つにこの暖気途中の熱応力が考えられる。
【0017】
さらに、平板型SOFCセルのインターコネクタ101やガスケット103が燃料極及び空気極の周辺をシールしているため電池セルの周辺に発電に寄与しない領域が形成されており、今後さらに体積当たりの発電量の増加が求められると、この領域の存在が平板型電池セルの欠点になる可能性が高い。
【0018】
前記円筒型SOFCセル150は、円筒周囲の発電に係わる面積と円筒の体積の比は平板型SOFCセルより小さく、体積当たりの出力は平板型SOFCセルに劣る。
また、円筒型SOFCセル150の直列連結は、その構造上、平面を介して行える平板型SOFCセルに比べて複雑になる。
【0019】
また図11に示す構造の特許文献1に開示の個体電解質燃料電池アセンブリは、その明細書の段落「0029」「0030」に記載されているように、集電体をなすセパレータ221上にインタコネクタ214が同じ向きを向くようにして複数段、複数列のマトリクス配列に固体電解質燃料電池(以降角筒型SOFCセルと記述)200Aをスタックし、下側のセパレータ221と角筒型SOFCセル200Aとの間、上下の角筒型SOFCセル200A、200A相互間、角筒型SOFCセルAと上側のセパレータ221との間には燃料改質作用と導電作用を行うニッケル又はニッケル合金のフェルト222を介在させている。そして各角筒型SOFCセル200Aの長さ方向の端部には閉塞栓体(図示せず)を取り付け、外部から酸化ガスとしての空気を空気極支持管211内を通流させるように空気供給管をその閉塞栓体に接続し、また複数段にスタックされている角筒型SOFCセル200Aの列間の空隙223に燃料ガスを通流させて発電を行わせている。
したがって、上下に積み重ねられた角筒型SOFCセルの上面はインターコネクタ214によって上のセパレータ221または角筒型SOFCセルに接続されており、この面には燃料極がなく、発電に寄与しない面となる。
そのため、セパレータとそ上の固体電解質燃料電池とが一体化したインターコネクタレスの固体電解質アセンブリユニットが形成できる製造方法に見るべき点はあるが、発電面積と角筒の体積の比、体積当たりの出力は円筒型電池セルより劣るという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究の結果、次の手段によりこの課題を解決した。
(1)空気極層、電解質層及び燃料極層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を連結してなる固体酸化物形燃料電池において、
中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合され、かつ相互に交差することのない複数本の側部筒型電池セルとからなり、かつ前記各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されてなる構成のものであることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
(2)前記筒型電池セルが、多角筒形のものであることを特徴とする前項(1)記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(3)前記筒型電池セルが、円筒形のものであることを特徴とする前項(1)記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(4)前記複数本の側部筒型電池セルが、中央部筒型電池セルの側面に等間隔で放射状に配設され、前記中央部筒型電池セル及び複数本の側部筒型電池セルのいずれもの内壁面が燃料極層、外壁面が空気極層、又は外壁面が燃料極層、内壁面が空気極層でなり、かつ前記各筒型電池セルの外壁面を構成する空気極層又は燃料極層が連続した一つの面で形成されてなることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(5)前記筒型電池セルが、その内壁面内側の中空部を内通路とし、外壁面外側の空間を外通路とし、それぞれの通路に、同通路の壁面を構成する燃料極層又は空気極層に対応する燃料又は空気が供給されてなることを特徴とする前項(1)〜(4)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【0021】
(6)前項(1)〜(5)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池の複数個を上下に積み重ねて電池セルスタックを構成してなり、各々の上部電池セルの燃料極層と下部電池セルの空気極層、あるいは上部電池セルの空気極層と下部電池セルの燃料極層とを各々導電とガスシールの機能を持つインターコネクタで直列接続してなることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
(7)前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が電解質の場合は、それぞれ外壁面では上端部側壁面に、内壁面では下端部側壁面にそれぞれの極層が設けられていない環状のブランク部を設けてなることを特徴とする前項(6)に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(8)前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合は、積層壁体の内側壁面として基体部となる極層を配設し、その外側面に電解質層を積層し、さらに前記電解質層を基体部となる極層の下端面と内壁面下端部に微小高さの折り返し部として構成されるように連続延伸させ、そして電解質層の外壁面に、前記基体部とし用いられたのとは別の極層となる空気極層又は燃料極層を設け、かつ前記電解質層外側面上部に当該極層が設けられていない環状のブランク部を設けてなることを特徴とする前項(6)に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(9)前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、各内通路内に同内通路の形状に相似した柱形状スペーサを備えて内通路空間を狭め、燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを通流させられるよう構成されてなることを特徴とする前項(6)〜(8)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(10)前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、同電池セルスタックの一端に燃料を供給するチャンバーと、各内通路内に同内通路の形状に相似した筒形状スペーサを備え、
前記チャンバーから供給された燃料が、前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流した後、同筒形状スペーサの他端部で反転し、反転された燃料がこの筒形状スペーサ外周面と前記構成電池セルの内壁面との間の狭められた空間に燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを流通させた後に排出されるよう構成されてなることを特徴とする前項(6)〜(8)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【0022】
(11)前項(6)〜(10)のいずれか1項に記載の電池セルスタックが複数個同一平面に並置され、それぞれが並列接続、又は直列接続され、あるいは直並列の組み合わせで接続されて電池セルモジュールを形成してなることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
(12)前記電池セルモジュールが、前記電池セルスタック複数個を同一平面に平行格子状、又は千鳥格子状に並置してなることを特徴とする前項(10)に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(13)前記電池セルモジュール複数個が、同一平面に並置され、又は上下に積み重ねられて電気的に接続され、あるいは同一平面に並置されて電気的に接続されたものをさらに複数個上下に積み重ねて電気的に接続してなることを特徴とする前項(11)又は(12)に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、次のような効果が発揮される。
1.本発明の請求項1の発明によれば、
空気極層、燃料極層及び電解質層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を連結してなる固体酸化物形燃料電池において、
中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合された複数本の側部筒型電池セルとからなり、かつ前記各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されてなる構成なので、
前記筒型の固体酸化物形燃料電池を構成する中央部筒型電池セル及び側部筒型電池セルは、その構造上、上下の端面を除きシール機能を必要としないこと、及び
中央部筒型電池セルと複数本の側部筒型電池セルとが線接触状態で一箇所のみ接合されていることから、内外両側面のほぼ全面を燃料極及び空気極とすることができ、かつ前記内外両側面のほぼ全面が燃料又は空気と接触可能なため、発電面積は他の形態の電池セルに比して大きくでき、したがって、体積当たりの発電量の増大が見込める。
【0024】
各電池セルを構造的に剛性の高い筒型形状としたので、電解質層を挟んで対向配置した燃料極層及び空気極層間の発電に伴う発熱に起因する電池セルの変形を大幅に低減できる。
また膜構成電池セルを筒型にしたことによって平板型SOFCセルに見られたようなインターコネクタやガスケットといった部材が不要となり、この部材と電解質層との間に生じる不均一な温度分布による熱応力発生を大幅に低減できる。
このため起動に伴う急速な暖気途中、あるいは負荷変動中の筒型の固体酸化物形燃料電池の温度は均一に保たれ、熱応力による変形を大幅に低減でき、したがって高温動作が可能なことから、高出力密度と高い発電効率が得られる。
【0025】
前記中央部筒型電池セルと複数本の側部筒型電池セルとが中央部筒型電子セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみ接合されているので、
互いに他の筒型電池セルの熱応力を受けにくく、このため起動に伴う急速な暖気途中、あるいは負荷変動中の各電池セル筒体温度が均一に保て、熱応力による変形をさらに低減することができる。
【0026】
本発明の固体酸化物形燃料電池が、中央部筒型電池セルとその周辺に配置された複数本の側部筒型電池セルとで構成されているので、前記固体酸化物形燃料電池を積層構造とする際の支持スパンを、従来のシングル筒型電池セルに比べ、大きく取れ、安定した高積層構造の固体酸化物形燃料電池が得られる。
【0027】
同一形状、同一構造の筒型電池セル複数個で固体酸化物形燃料電池セルを構成できるので、燃料極層、電解質層、あるいは空気極層の生成をスプレーコート法又はスラリーコート法等によって行え、しかも筒形状であるため外壁面への外部からのアクセスも容易で量産に適しており、かつ各層を生成するための製造機器も同一のものが使用でき、製造機器の低コスト化にも寄与する。
【0028】
2.本発明の請求項2の発明によれば、
前記請求項1の効果に加えて、
前記筒型電池セルが多角形であるため、他の装置に組み込む燃料電池として、その収納許容スペースに応じて電池セルの形状が選択でき、装置としての設計自由度が広がり、かつ集積密度を高めることができる。
【0029】
3.本発明の請求項3の発明によれば、
前記請求項1の効果に加えて、
前記筒型電池セルが、円筒形であるため、同一形状で、かつ同一構造の円筒筒体で電池セルを構成できるので、製造がきわめて容易であり、コンパクト、低コストでありながら高出力の電池セルを実現できる。さらに発電中の発熱反応による変形を大幅に低減できる。
【0030】
4.本発明の請求項4の発明によれば、
前記請求項1〜3の効果に加えて、
前記複数本の側部筒型電池セルが、中央部筒型電池セルの側面に等間隔で放射状に配設され、前記中央部筒型電池セル及び複数本の側部筒型電池セルのいずれもの内壁面が燃料極層、外壁面が空気極層、又は外壁面が燃料極層、内壁面が空気極層であるため、
同一形状で、かつ同一構造の筒型電池セルがシンメトリーに配設されるので、特に発電中の発熱反応による電池セルの電解質層を挟んで対向配置した燃料極層及び空気極層間の温度差で発生する熱応力による変形が各筒型電池セルに均等に発生するため、熱応力による電池セルの変形・破損を防止できる。
【0031】
また、前記各筒体の外壁面を構成する空気極層又は燃料極層が連続した一つの面で形成されているので、各筒型電池セルの外側面を接続する電極間接続構造物が不要で、コンパクト、低コストでありながら高出力の電池セルを実現できる。
【0032】
5.本発明の請求項5の発明によれば、
前記請求項1〜4の効果に加えて、
前記筒型電池セルが、その内壁面内側の中空部を内通路とし、外壁面外側の空間を外通路とし、それぞれの通路に、その通路の壁面を構成している燃料極層又は空気極層に対応する燃料又は空気が供給できるので、
前記同一形状、同一構造の各筒型電池セルが、シンメトリーに配設されていることと相まって、燃料又は空気の供給通路が単純化され、そのため燃料又は空気の分配・供給装置もシンメトリーな構成で作ることができ、分配・供給装置を含めて、燃料極層及び空気極層間の温度差で発生する熱応力による変形が筒構造体、分配・供給装置に均等に発生するため、熱応力による変形・破損を防止できる。
【0033】
6.本発明の請求項6の発明によれば、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池セルの複数個を上下に積み重ね、各々の上部電池セルの燃料極層と下部電池セルの空気極層、あるいは上部電池セルの空気極層と下部電池セルの燃料極層とを各々導電とガスシールの機能を持つインターコネクタで直列接続して電池セルスタック構成しいるので、
前記請求項1〜5の効果に加えて、
前記筒型の固体酸化物形燃料電池セルを複数段直列接続して積み重ねることによって必要とする電源電圧に容易に対応でき、したがって高温動作による内部抵抗の低減と高電圧動作による電流損失の低減によって高効率な電池セルスタックを実現できる。
【0034】
7.本発明の請求項7の発明によれば、
前記請求項6の効果に加えて、
前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が電解質の場合は、それぞれ外壁面では上端部側壁面に、内壁面では下端部側壁面にそれぞれの極層が設けられていないブランク部を設けているので、
電池セルを導電性接着剤の利用により複数段積層する場合も、電極同士の接触は無く、容易に漏電を防止でき、またガスケット等の他の部材を必要とせず単純な構成のため低コストの電池セルスタックを生産することができる。
8.本発明の請求項8の発明によれば、
前記請求項6の効果に加えて、
前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合は、積層壁体の内側壁面として基体部となる極層を配設し、その外側面に電解質層を積層し、さらに前記電解質層を基体部となる極層の下端面と内壁面下端部に微小高さの折り返し部として構成されるように連続延伸させ、そして電解質層の外壁面に、前記基体部とし用いられたのとは別の極層となる空気極層又は燃料極層を設け、かつ前記電解質層外側面上部に当該極層が設けられていない環状のブランク部を設けているので、
電池セルを導電性接着剤の利用により複数段積層する場合も、電極同士の接触は無く、容易に漏電を防止でき、またガスケット等の他の部材を必要とせず単純な構成のため低コストの電池セルスタックを生産することができる。
【0035】
9.本発明の請求項9の発明によれば、
前記請求項6及び7の効果に加えて、
前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、各内通路内に同内通路の形状に相似した柱形状スペーサを備えて内通路空間を狭め、燃料極層との反応に寄与する量の燃料のみを通流させられるよう構成されているので、
筒型電池セルの形状が大きくなりその内通路が拡大することによって増加する燃料極層と接触することなく内通路の中心部を通流する無駄な燃料は前記柱形状スペーサによって無くなり、燃料効率のよい燃料電池が構成できる。
【0036】
10.本発明の請求項10の発明によれば、
前記請求項6及び7の効果に加えて、
前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、同電池セルスタックの一端に燃料を供給するチャンバーと、各内通路内に同内通路の形状に相似した筒形状スペーサを備え、
前記チャンバーから供給された燃料が、前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流した後、同筒形状スペーサの他端部で反転し、反転された燃料がこの筒形状スペーサ外周面と前記構成電池セルの内壁面との間の狭められた空間に燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを流通させた後に排出されるよう構成されているので、
筒型電池セルの形状が大きくなりその内通路が拡大することによって増加する燃料極層と接触することなく内通路の中心部を通流する燃料を、まず前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流させた後に同筒形状スペーサの他端部で反転させ、前記筒形状スペーサの外周面と前記構成電池セルの内壁面との間狭められた空間に通流させることによって内通路に供給した燃料が無駄なく燃料極層に接触し、燃料効率のよい燃料電池が構成できる。
【0037】
また、前記燃料を供給するチャンバーを前記電池セルスタックの下部に配設すれば、同チャンバーから供給された燃料が、前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流した後、同筒形状スペーサの他端部で反転し、反転された燃料はこの筒形状スペーサ外周面と前記複数の電池セル筒体内壁面間に狭められた内通路空間を流通した後排出されるので、軽い水素等の燃料滞留時間を延ばし、2酸化炭素等の重い反応ガスの排出を早められ、燃料効率のさらなる向上を図ることができる。
【0038】
11.本発明の請求項11の発明によれば、
請求項6〜10のいずれか1項に記載の電池セルスタックが複数個同一平面に並置され、それぞれが並列接続、又は直列接続され、あるいは直並列の組み合わせで接続されて電池セルモジュールを形成しているので、
前記請求項6〜10の効果に加えて、
電池セルスタックの並列接続で大電流容量対応型の電池セルモジュールが、、直列接続で高電圧対応型の電池せるモジュールが、また両者の組み合わせで大電流容量・高電圧対応型の電池セルモジュールが容易に形成できる。
【0039】
12.本発明の請求項12の発明によれば、
前記請求項11の効果に加えて、
前記電池セルモジュールが、前記電池セルスタック複数個を同一平面に平行格子状、又は千鳥格子状に並置されているので、
燃料通路、空気通路を形成しやすく、特に千鳥格子状に電池セルスタックを並置すると各構成筒型電池セルの外壁面で囲まれて形成される各外通路空間はほぼ均一な断面積とすることができ、したがって外通路を通流する燃料又は空気は各構成筒型電池セルに均等に供給されることとなり、かつ燃料又は空気は各筒型電気セルの各極層に均一に接触し、高効率で安定した発電が行われる。
【0040】
13.本発明の請求項13の発明によれば、
前記請求項11及び12の効果に加えて、
前記電池セルモジュールは、複数個同一平面に並置され、又は上下に積み重ねられて電気的に接続され、あるいは同一平面に並置されて電気的に接続されたものをさらに複数個上下に積み重ねて電気的に接続しているので、
前記したように、電池セルを複数段積層することで必要とする電源電圧に容易に対応することができ、したがって高温動作による内部抵抗の低減化と高電圧動作による電流損失の低減化によって高効率電池セルスタック複数個を電池セルモジュール化し、電池セルモジュールの並列接続で大電流容量対応型、直列接続で高電圧対応型、あるいはその組み合わせで接続した大電流容量で高電圧対応型SOFCを容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明実施例の筒型の固体酸化物形燃料電池の積層壁体の基体部となる層が電解質層の場合の電池セル斜視図。
【図2】本発明実施例の筒型の固体酸化物形燃料電池のの積層壁体の基体部となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合の電池セルの斜視図。
【図3】同発明実施例の筒型の固体酸化物形燃料電池の電池セルスタックの斜視図。
【図4】同発明実施例の電池セルスタックを構成する各電池セルを直列接続するためのインターコネクタ斜視図。
【図5】同発明実施例の電池セルスタックの電池セル筒体内に配設された筒形スペーサの説明図。
【図6】同発明実施例の平行格子状配置の電池セルモジュールの斜視図。
【図7】同発明実施例の千鳥格子状配置の電池セルモジュールの斜視図。
【図8】同発明実施例の燃料電池として最小限必要な機能を持つ電池モジュールシステムの斜視図。
【図9】従来例の平板型SOFCセルの構造図。
【図10】従来例の円筒型SOFCセルの構造図。
【図11】従来例の角筒型SOFCセルの構造図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の筒型の個体酸化物形燃料電池は、空気極層、電解質層及び燃料極層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を一体化して一つのSOFC電池セルを形成したものであり、特に中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同中央部筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合され、かつ相互に交差することのない複数本の側部筒型電池セルとで形成され、各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されて構成されたものである。
なお、各筒型電池セルを構成する積層壁は、電解質層を基体部とし、この基体部となる電解質層を挟んで燃料極層と空気極層を対向配置したもの、あるいは燃料極層(又は空気極層)を基体部とし、その外側面に電解質層及び空気極層(又は燃料極層)を順次配置したもののいずれかが選択使用される。
【0043】
さらに、前記複数本の側部筒型電池セルは、中央部筒型電池セルの側面に等間隔で放射状に配設され、前記中央部筒型電池セル及び複数の側部筒型電池セルのいずれもの内壁面が燃料極層、外壁面が空気極層、又は外壁面が燃料極層、内壁面が空気極層でなり、かつ前記各筒型電池セルの外壁面を構成する空気極層又は燃料極層が連続した一つの面で形成されている。
【0044】
また、前記各筒型電池セルの内壁面内側の中空部を内通路とし、外壁面外側の空間を外通路とし、それぞれの通路に、同通路の壁面を構成する燃料極層又は空気極層に対応する燃料又は空気が供給される。
【実施例1】
【0045】
本発明を実施するための形態を図に基づいて詳細に説明する。
本発明の筒型のSOFC電池セル1を構成する各筒型電池セルは、正方形、長方形、菱形、多角形、円形、又は楕円形のいずれでもよいが、代表的な正4角形の断面形状の筒型電池セル5個で形成された筒型のSOFCについて実施例の図に基づいて説明する。
【0046】
図1に示すように、電解質層4aの基体部を挟んで燃料極層2と空気極層3を対向配置した積層壁、あるいは、図2に示すように、燃料極層(又は空気極層)3を基体部としその外側面に電解質層4a及び空気極層(又は燃料極層)2を順次配置した積層壁で形成された筒型電池セルを、中央部に配置された中央部筒型電池セル5と、同中央部筒型電池セル5の縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合された、中央部筒型体5と同一形状、同一寸法で、かつ同一構造の4個の側部筒型電池セル6とを一体化して一つの電池セルを形成している。以降この構造の電池セルを筒型SOFC電池セル1と記述する。
【0047】
前記筒型のSOFC電池セル1の側部筒型電池セル6は、中央部筒型体5の側面に等間隔で放射状に上下、左右共にシンメトリーに配設され、前記筒型SOFC電池セル1を構成する。
1個の中央部筒型電池セル5及び4個の側部筒型電池セル6のいずれも、その内壁面が燃料極層2、外壁面が空気極層3であり、かつ前記各筒型電池セルの外壁面を構成する空気極層3は連続した一つの面で形成されている。
【0048】
また、前記筒形SOFC電池セル1は、各筒型電池セルの内壁面内側の中空部を内通路7とし、外壁面外側の空間を外通路8とし、それぞれの内通路7には燃料を、外通路8には空気が通流される。
【0049】
前記筒型のSOFC電池セル1を上下に直列接続する場合を考慮し、上下に重なる筒型のSOFC電池セル1の燃料極層2同士、及び空気極層3同士が接触するのを防止するため、図1に示した各筒型電池セルの積層壁体の基体部となる層が電解質層4aの場合は、各筒型電池セルの外側壁面では上端部に、内側壁面では下端部にそれぞれの極層が設けられていないブランク部9を設けている。
また図2に示した各筒型電池セルの積層壁体の基体部となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合は、積層壁体の内側壁面として基体部となる極層(図2では燃料極層2)を配設し、その外側面に電解質層4aを積層し、さらに前記電解質層4を基体部となる極層2の下端面4cと内壁面下端部に微小高さの折り返し部4bとして構成されるように連続延伸させ、そして電解質層4aの外壁面に、前記基体部とし用いられたのとは別の極層(図2では空気極層3)を設け、かつ前記電解質層外側面上部に当該極層が設けられていない環状のブランク部9を設けている。
【0050】
本発明の筒型のSOFC電池セル1の発電量と、平板型SOFCセルの発電量を同一体積の電池セルの燃料極の発電面積で比較する。
本実施例の筒型のSOFC電池セル1の正方形の筒体の内辺を6mm、高さを10mm、積層壁厚を0.5mmとし、その内壁面を燃料極層とすれば、発電面積は、
(6mm×10mm×4面)×5個=1200mm2
となる。
一方、筒型電池セル5個で作る本発明の筒形SOFC電池セル1全体の一辺の長さは積層壁厚を含めて20mmであり、一辺が20mmの正方形の平板型SOFCセルの厚みを3.3mmとし、周辺シール幅を合計6mmとすれば、一枚の平板型SOFCセルの発電面積は(20mm−6mm)2、本実施例の筒型SOFC電池セル1の高さ10mmは、平板型SOFCセル3枚の厚みに相当することから、
(20mm−6mm)2×3枚=588mm2
となる。したがって、本発明の筒形SOFC電池セル1の発電面積は、平板型SOFCセルの2倍強となる。
【0051】
前記5個の筒型電池セルで構成された筒形SOFC電池セル1を12個上下に積み重ねた電池セルスタック10の実施例の斜視図を図3に示す。
図3に見られるように、上下に積み重ねられた12個の電池セル1の間にはそれぞれインターコネクタ11が配設され、このインターコネクタ11により上部の電池セル1の燃料極層2と下部の電池セル1の空気極層3がそれぞれ電気的に接続される〔図5(b)参照〕。
【0052】
また、電池セルスタック10の最上段の電池セル1及び最下段の電池セル1には電力を取り出すための集電プレート12、12が設けられ、さらに、電池セルスタック10の下端部には電池セルスタック10の5つの内通路に燃料を分配するチャンバー14が、また上端部には、後述の筒形状スペーサ18を備えた電池セルスタック10において前記筒型スペーサ18内側の気体通路を上昇してきた燃料を、電池セルスタックを構成する各筒形SOFC電池セル1の燃料極層に接触させ発電に寄与するよう反転させる機能を持つスタック・アッパー13が配設されている。
【0053】
図4に示すインターコネクタ11は、コネクタ折り曲げ部16a及び16bを有し、これにより、構成電池セル1の外側面が空気極層3、内側面が燃料極層2場合、上部の筒形SOFC電池セル1の空気極層3と下部筒形SOFC電池セル1の燃料極層2を連結し、上下の各電池セルが電気的に直列接続される。
上下の各電池セル1の電気導通性と、各筒形SOFC電池セル1とインターコネクター11との接合面でのガスシール性を確保するために、インターコネクター11の全面に導電性接着剤を、その必要に応じて電池セルスタック10の作成前に塗布する。
この場合、電池セルスタック10の作成時、未凝固の導電性接着剤の接着部からのはみ出しによる、各電池セル1のインターコネクター11との接合部での漏電は、図1及び図2のブランク部9及び図2の電解質層4c、4bにより完全に防止される。
【0054】
また、インターコネクタ11には、上下に積み重ねられた筒形SOFC電池セル1の中央部筒型体5及び側部筒型体6の各内通路7を連通させ、気体を通流させるための通風口17が5箇所に設けられている。
【0055】
電池セルスタック10の各内通路7内に配設された筒形状スペーサ18の作用を、図5に示す実施例の外観図(a)とXーX’断面図(b)(c)に基づいて説明する。
電池セルスタック10の内通路7には、同内通路7の形状に相似した筒形状スペーサ18が、また、電池セルスタック10の上端部には最上段の筒形SOFC電池セル1の内通路7を覆うスタック・アッパー13が配設されていている。
【0056】
電池セルスタック10の下部に備えたチャンバー14から供給された矢印表示の燃料は、筒形状スペーサ18の気体通路19を通りスタック・アッパー13に到達し、ここで反転され、電池セルスタック10を構成する各筒形SOFC電池セル1の中央部筒型体5及び4個の側部筒型体6の内壁面と筒形状スペーサ18の外周面間に狭められた内通路部分7を通流して燃料極層2と無駄なく反応しながら再び電池セルスタック10の下方に到達し排出される。
【0057】
ここで、前記筒形状スペーサ18に代えて、図5(c)に示すように内通路の形状に相似した柱形状スペーサ18’を設けて内通路空間を狭め、チャンバー14から供給された燃料を電池セルスタック10を構成する各筒形SOFC電池セル1の燃料極2と無駄なく反応させ、電池セルスタック10の上端に配設されたスタック・アッパー13’の開口部13aから排出するようにしてもよい。
【0058】
図6又は図7に示すように、前記電池セルスタック10を複数個同一平面に並置し、それぞれを並列接続、又は直列接続し、あるいは直並列の組み合わせ接続によって電池セルモジュール20を形成することができる。
【0059】
前記筒形SOFC電池セル1の各筒型電池セルは、正方形、長方形、菱形、円形、又は楕円形のいずれか一つの断面形状を選択でき、かつ前記電池セルスタック10を複数個同一平面に平行格子状に配設(図6)、又は千鳥格子状に配設(図7)して電池セルモジュール20を形成できるので、設計自由度が高く、燃料電池が組み込まれる装置の燃料電池に許容されるスペースに合わせて筒形電池セルの形状を選択し、集積密度を高めることができる。
【0060】
また、本例では正方形筒体SOFC5個で電池セル1を構成したが、これに限定されることなく5角形で6個構成の電池セル、又は6角形で7個構成等多角形筒型の電池セルとしてもよい。
また、上記説明において、筒体の内壁面が燃料極層2、外壁面が空気極層3としたが、これに代えて内壁面を空気極層3、外壁面を燃料極層2としてもよい。
【0061】
図8に、燃料電池の一例としての電池セルモジュールシステム21の外観図を示した。
この電池セルモジュールシステム21は、アウターハウジング22内に電池セルモジュール20を収容してなり、最下部の燃料入口23より供給された燃料は、前記電池セルモジュール20のチャンバー14を介して、筒型スペーサ18の気体通路19を通り、電池セルスタック10の燃料極層2の上部に供給され、スタック・アッパー13で反転され、燃料極層2において発電反応をしながら下降し、燃料出口24から酸化物として排出される。
【0062】
一方、空気極層に反応する空気は、アウターハウジング22の上部に設けた空気入口25に供給され、電池セルモジュール20を構成する各電池セルスタック10の外通路8を通流して燃料と反応した後、アウターハウジング22下部に開放された空気出口26から排出される。
【符号の説明】
【0063】
1:筒形SOFC電池セル
2:燃料極層
3:空気極層
4:電解質層
4a:電解質1
4b:電解質2
4c:電解質3
5:中央部筒型電池セル
6:側部筒型電池セル
7:内通路
8:外通路
9:環状のブランク部
10:電池セルスタック
11:インターコネクタ
12:集電プレート
13、13’:スタック・アッパー
13a:開口部
14:チャンバー
16a、16b:折曲部
17:通風口
18:筒形状スペーサ
18’:柱形状スペーサ
19:気体通路
20:電池セルモジュール
21:電池セルモジュールシステム
22:アウターカバー
23:燃料入口
24:燃料出口
25:空気入口
26:空気出口
100:平板型SOFCセル
101:インターコネクタ
102:電解質
103:ガスケット
150:円筒型SOFCセル
151:インターコネクタ
152:電解質層
153:燃料極層
154:空気極層
200A:角筒型SOFCセル
211:空気極支持管
212:固体電解質
213:燃料極
214:インターコネクタ
221:セパレータ
222:フェルト
223:空隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池に係り、冷態時からの急速起動が可能で、かつ耐久性に優れ、比出力の高いコンパクトな筒型の固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を動力に変換する機構として、19世紀は固体燃料である石炭と蒸気機関、20世紀は液体燃料である石油と内燃機関に対し、21世紀は、気体燃料と燃料電池へと変化しつつある。
中でも固体酸化物形燃料電池(以後、SOFCと記述)は、燃料選択性がなく水素や一酸化炭素が同時に燃料として利用でき、貴金属の使用もなく、かつ排熱温度も高い等、他の燃料電池システムに比べて、多くのメリットがあり、その実用化に向けて開発が世界中で進められている。
SOFCは、気体を通さない電解質層とその両面に配置されたポーラス構造の燃料極層及び空気極層で構成(以後、両者を合わせて示す場合は両極層と記述)され、空気極層からの酸素は酸素イオンとして電解質中を移動し、燃料極層で燃料と反応し電気を発生する。
【0003】
電解質層内の酸素イオン導電率を大きくし、また、各極層での反応速度を高めるためにSOFCの作動温度は高く設定される。この高温に対応するため、電解質層を含め主構成要素にはセラミック材が使用される。
【0004】
燃料の酸化反応で生ずるエネルギーを100%電気に変換することは熱力学的にみて不可能であり、一定負荷運転状態でも、発電により燃料極層側で熱が発生する。 そして両極層周辺の熱容量、熱伝達率、質量等の不均一な分布が、電池セルに不均一な温度分布をもたらし、熱応力を生じさせる。
特に、急速起動、運転中の急激な負荷変動により両極層周辺の温度の不均一な分布はさらに大きくなり、定常運転時より高い熱応力が発生する。
一方、セラミック材の臨界応力係数が金属に比しほぼ1/100と小さく、セラミック部材にかかる熱応力と熱変形の低減がSOFC実現の大きな課題である。
【0005】
さらに、燃料極層及び空気極層が、気体を通過させるためのマクロなポーラス構造であるとすれば、酸素イオンを通過させるために格子内に空房をもつ電解質層は、分子レベルでのミクロなポーラス構造を有すると言える。
先に記述した臨界応力係数の低さと相まって、ミクロ及びマクロなポーラス構造への対応もセラミックで形成されるSOFC実用化への課題と言いうる。
【0006】
SOFCは、固体酸化物形電解質膜で空間を2分し、電解質膜のそれぞれの側に電極を設けて異なる気体を通流し発電するシステムと言える。
現在開発されている空間を2分する方式のSOFCとしては、大別して図9に示す板状電解質層の両面に、また図10に示す筒状の電解質層の内面、外面に、それぞれ電解質層を挟んで燃料極層と空気極層とを配置して発電する平板型SOFCと円筒型SOFCとがある。
【0007】
平板型SOFCセル100は、図9にその一例を示すように、
電解質層102と、該電解層102の両面にそれぞれ接触する燃料極、あるいは空気極を備え、かつ両極の周辺を外部からシールする2枚のインターコネクタ101と、前記電解層102とインターコネクタ101との間に挟設され両極周辺をシールする2枚のガスケット103とで構成されている。そして電池セルに設けられた4つの穴の対角線上にあるそれぞれ2つの穴で燃料又は空気の通路を形成し、それぞれの通路から供給される燃料と空気との反応により発電される。
【0008】
この平板型SOFCセル100は、構成部品が主に平面であるため、大きな製造上のメリットを有する。
【0009】
図10に筒型SOFCセルの一例としての円筒型SOFCセル150を示す。
円筒型SOFCセル150は、図10に示すように、円筒形の電解質層152の外周面に空気極層154を、内周面に燃料極層153を配設して電池セルが構成されてなり、かつ前記電解質層152及びその外周面に配設された空気極層154には軸線に沿ってスリットが穿設され、該スリットから前記電解質層の内周面に配設された燃料極層153に接続されたインターコネクタが電池セルから突出させて設けられている。
そして円筒型SOFC150の中空部に燃料を、外周部に空気通流させることによって発電を行っている。
【0010】
円筒型SOFCセル150は、前記平板型SOFCセル100と異なり、閉じた壁で構成されており、電池セルの燃料極層153と空気極層154との間で平板型SOFCセル100と同じ温度差が生じた場合でも、その熱応力は平板型SOFCセルより小さい。
さらに、円筒型SOFCセル150は、平板型SOFCセルに見られる大きなインターコネクタがなく、したがって、両端のガスシール部を除けば発電部の熱容量分布は全域でほぼ一定であり、特に暖気時の熱応力は平板型SOFCセルに比べて小さい。
【0011】
角筒型SOFCセルの例として特許文献1に開示の発明を示す。
特許文献1の段落〔0022〕には、ランタンマンガネート系のポーラスな角筒形状の空気極支持管211の外周面の3側面にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)の固体電解質212を積層形成し、さらにこの固体電解質212の外周面にニッケル又はニッケル合金とYSZとのサーメット製のポーラスな燃料極213を積層形成し、空気極支持管211の残る1側面にランタンクロマイト系酸化物(LaCrOn)のインタコネクタ214を積層形成した図11に示す構造の個体電解質燃料電池アセンブリが開示されている。
【0012】
そして、特許文献1の〔請求項1〕には、上記個体電解質燃料電池アセンブリの製造方法として、「空気極若しくは燃料極とその保形体とを兼用する角筒形状の電極支持管の複数体をセパレータ上に等間隔で配列し、次に前記複数体の電極支持管それぞれの開放外周面に固体電解質を積層形成し、続いて前記固体電解質の外周に前記電極支持管と反対の極性の電極層を積層形成することによって、前記セパレータ上に等間隔に複数体の角筒式固体電解質燃料電池が列設された固体電解質燃料電池アセンブリユニットを製造する」と記載されている。
【0013】
また、特許文献1の〔請求項2〕には、「請求項1の製造方法にて製造された固体電解質燃料電池アセンブリユニットの複数体を複数段に積層し、前記電極支持管それぞれの内部に酸化ガスと燃料ガスのいずれか一方を通流させ、前記角筒式固体電解質燃料電池の列間の間隙に酸化ガスと燃料ガスのいずれか他方を通流させる個体電解型燃料電池アセンブリ」と記載され、個体電解型質燃料電池への燃料ガス及び酸化ガスの供給方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3722927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、平板型SOFCセル100は、前述のように燃料極及び空気極周辺部のガスシールのためインターコネクタ101と電解質層102とはガスケット103を介して固定又は半固定されており、電解質層102周辺部の変形が制限された状態にある。したがって、発電に伴う発熱による燃料極と空気極間の温度差に起因する熱応力は拡大されることになる。
【0016】
また、平板型SOFCセルの電解質層102の周辺部は、熱容量の大きいインターコネクタとガスケットに接しており、そのため電解質層102の発電に係わる部分と周辺部との熱容量分布の不均一となり、特に暖気途中などの時間的な温度変化が大きい場合は、内部に大きな温度差を生じ、高い熱応力が発生する。
近年、定常運転では安定した出力が得られる平板SOFCセルの例は増加しているものの、まだ起動・停止の繰り返しで劣化が起きる例が見られる。この原因の一つにこの暖気途中の熱応力が考えられる。
【0017】
さらに、平板型SOFCセルのインターコネクタ101やガスケット103が燃料極及び空気極の周辺をシールしているため電池セルの周辺に発電に寄与しない領域が形成されており、今後さらに体積当たりの発電量の増加が求められると、この領域の存在が平板型電池セルの欠点になる可能性が高い。
【0018】
前記円筒型SOFCセル150は、円筒周囲の発電に係わる面積と円筒の体積の比は平板型SOFCセルより小さく、体積当たりの出力は平板型SOFCセルに劣る。
また、円筒型SOFCセル150の直列連結は、その構造上、平面を介して行える平板型SOFCセルに比べて複雑になる。
【0019】
また図11に示す構造の特許文献1に開示の個体電解質燃料電池アセンブリは、その明細書の段落「0029」「0030」に記載されているように、集電体をなすセパレータ221上にインタコネクタ214が同じ向きを向くようにして複数段、複数列のマトリクス配列に固体電解質燃料電池(以降角筒型SOFCセルと記述)200Aをスタックし、下側のセパレータ221と角筒型SOFCセル200Aとの間、上下の角筒型SOFCセル200A、200A相互間、角筒型SOFCセルAと上側のセパレータ221との間には燃料改質作用と導電作用を行うニッケル又はニッケル合金のフェルト222を介在させている。そして各角筒型SOFCセル200Aの長さ方向の端部には閉塞栓体(図示せず)を取り付け、外部から酸化ガスとしての空気を空気極支持管211内を通流させるように空気供給管をその閉塞栓体に接続し、また複数段にスタックされている角筒型SOFCセル200Aの列間の空隙223に燃料ガスを通流させて発電を行わせている。
したがって、上下に積み重ねられた角筒型SOFCセルの上面はインターコネクタ214によって上のセパレータ221または角筒型SOFCセルに接続されており、この面には燃料極がなく、発電に寄与しない面となる。
そのため、セパレータとそ上の固体電解質燃料電池とが一体化したインターコネクタレスの固体電解質アセンブリユニットが形成できる製造方法に見るべき点はあるが、発電面積と角筒の体積の比、体積当たりの出力は円筒型電池セルより劣るという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究の結果、次の手段によりこの課題を解決した。
(1)空気極層、電解質層及び燃料極層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を連結してなる固体酸化物形燃料電池において、
中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合され、かつ相互に交差することのない複数本の側部筒型電池セルとからなり、かつ前記各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されてなる構成のものであることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
(2)前記筒型電池セルが、多角筒形のものであることを特徴とする前項(1)記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(3)前記筒型電池セルが、円筒形のものであることを特徴とする前項(1)記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(4)前記複数本の側部筒型電池セルが、中央部筒型電池セルの側面に等間隔で放射状に配設され、前記中央部筒型電池セル及び複数本の側部筒型電池セルのいずれもの内壁面が燃料極層、外壁面が空気極層、又は外壁面が燃料極層、内壁面が空気極層でなり、かつ前記各筒型電池セルの外壁面を構成する空気極層又は燃料極層が連続した一つの面で形成されてなることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(5)前記筒型電池セルが、その内壁面内側の中空部を内通路とし、外壁面外側の空間を外通路とし、それぞれの通路に、同通路の壁面を構成する燃料極層又は空気極層に対応する燃料又は空気が供給されてなることを特徴とする前項(1)〜(4)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【0021】
(6)前項(1)〜(5)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池の複数個を上下に積み重ねて電池セルスタックを構成してなり、各々の上部電池セルの燃料極層と下部電池セルの空気極層、あるいは上部電池セルの空気極層と下部電池セルの燃料極層とを各々導電とガスシールの機能を持つインターコネクタで直列接続してなることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
(7)前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が電解質の場合は、それぞれ外壁面では上端部側壁面に、内壁面では下端部側壁面にそれぞれの極層が設けられていない環状のブランク部を設けてなることを特徴とする前項(6)に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(8)前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合は、積層壁体の内側壁面として基体部となる極層を配設し、その外側面に電解質層を積層し、さらに前記電解質層を基体部となる極層の下端面と内壁面下端部に微小高さの折り返し部として構成されるように連続延伸させ、そして電解質層の外壁面に、前記基体部とし用いられたのとは別の極層となる空気極層又は燃料極層を設け、かつ前記電解質層外側面上部に当該極層が設けられていない環状のブランク部を設けてなることを特徴とする前項(6)に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(9)前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、各内通路内に同内通路の形状に相似した柱形状スペーサを備えて内通路空間を狭め、燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを通流させられるよう構成されてなることを特徴とする前項(6)〜(8)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(10)前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、同電池セルスタックの一端に燃料を供給するチャンバーと、各内通路内に同内通路の形状に相似した筒形状スペーサを備え、
前記チャンバーから供給された燃料が、前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流した後、同筒形状スペーサの他端部で反転し、反転された燃料がこの筒形状スペーサ外周面と前記構成電池セルの内壁面との間の狭められた空間に燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを流通させた後に排出されるよう構成されてなることを特徴とする前項(6)〜(8)のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【0022】
(11)前項(6)〜(10)のいずれか1項に記載の電池セルスタックが複数個同一平面に並置され、それぞれが並列接続、又は直列接続され、あるいは直並列の組み合わせで接続されて電池セルモジュールを形成してなることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
(12)前記電池セルモジュールが、前記電池セルスタック複数個を同一平面に平行格子状、又は千鳥格子状に並置してなることを特徴とする前項(10)に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
(13)前記電池セルモジュール複数個が、同一平面に並置され、又は上下に積み重ねられて電気的に接続され、あるいは同一平面に並置されて電気的に接続されたものをさらに複数個上下に積み重ねて電気的に接続してなることを特徴とする前項(11)又は(12)に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、次のような効果が発揮される。
1.本発明の請求項1の発明によれば、
空気極層、燃料極層及び電解質層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を連結してなる固体酸化物形燃料電池において、
中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合された複数本の側部筒型電池セルとからなり、かつ前記各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されてなる構成なので、
前記筒型の固体酸化物形燃料電池を構成する中央部筒型電池セル及び側部筒型電池セルは、その構造上、上下の端面を除きシール機能を必要としないこと、及び
中央部筒型電池セルと複数本の側部筒型電池セルとが線接触状態で一箇所のみ接合されていることから、内外両側面のほぼ全面を燃料極及び空気極とすることができ、かつ前記内外両側面のほぼ全面が燃料又は空気と接触可能なため、発電面積は他の形態の電池セルに比して大きくでき、したがって、体積当たりの発電量の増大が見込める。
【0024】
各電池セルを構造的に剛性の高い筒型形状としたので、電解質層を挟んで対向配置した燃料極層及び空気極層間の発電に伴う発熱に起因する電池セルの変形を大幅に低減できる。
また膜構成電池セルを筒型にしたことによって平板型SOFCセルに見られたようなインターコネクタやガスケットといった部材が不要となり、この部材と電解質層との間に生じる不均一な温度分布による熱応力発生を大幅に低減できる。
このため起動に伴う急速な暖気途中、あるいは負荷変動中の筒型の固体酸化物形燃料電池の温度は均一に保たれ、熱応力による変形を大幅に低減でき、したがって高温動作が可能なことから、高出力密度と高い発電効率が得られる。
【0025】
前記中央部筒型電池セルと複数本の側部筒型電池セルとが中央部筒型電子セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみ接合されているので、
互いに他の筒型電池セルの熱応力を受けにくく、このため起動に伴う急速な暖気途中、あるいは負荷変動中の各電池セル筒体温度が均一に保て、熱応力による変形をさらに低減することができる。
【0026】
本発明の固体酸化物形燃料電池が、中央部筒型電池セルとその周辺に配置された複数本の側部筒型電池セルとで構成されているので、前記固体酸化物形燃料電池を積層構造とする際の支持スパンを、従来のシングル筒型電池セルに比べ、大きく取れ、安定した高積層構造の固体酸化物形燃料電池が得られる。
【0027】
同一形状、同一構造の筒型電池セル複数個で固体酸化物形燃料電池セルを構成できるので、燃料極層、電解質層、あるいは空気極層の生成をスプレーコート法又はスラリーコート法等によって行え、しかも筒形状であるため外壁面への外部からのアクセスも容易で量産に適しており、かつ各層を生成するための製造機器も同一のものが使用でき、製造機器の低コスト化にも寄与する。
【0028】
2.本発明の請求項2の発明によれば、
前記請求項1の効果に加えて、
前記筒型電池セルが多角形であるため、他の装置に組み込む燃料電池として、その収納許容スペースに応じて電池セルの形状が選択でき、装置としての設計自由度が広がり、かつ集積密度を高めることができる。
【0029】
3.本発明の請求項3の発明によれば、
前記請求項1の効果に加えて、
前記筒型電池セルが、円筒形であるため、同一形状で、かつ同一構造の円筒筒体で電池セルを構成できるので、製造がきわめて容易であり、コンパクト、低コストでありながら高出力の電池セルを実現できる。さらに発電中の発熱反応による変形を大幅に低減できる。
【0030】
4.本発明の請求項4の発明によれば、
前記請求項1〜3の効果に加えて、
前記複数本の側部筒型電池セルが、中央部筒型電池セルの側面に等間隔で放射状に配設され、前記中央部筒型電池セル及び複数本の側部筒型電池セルのいずれもの内壁面が燃料極層、外壁面が空気極層、又は外壁面が燃料極層、内壁面が空気極層であるため、
同一形状で、かつ同一構造の筒型電池セルがシンメトリーに配設されるので、特に発電中の発熱反応による電池セルの電解質層を挟んで対向配置した燃料極層及び空気極層間の温度差で発生する熱応力による変形が各筒型電池セルに均等に発生するため、熱応力による電池セルの変形・破損を防止できる。
【0031】
また、前記各筒体の外壁面を構成する空気極層又は燃料極層が連続した一つの面で形成されているので、各筒型電池セルの外側面を接続する電極間接続構造物が不要で、コンパクト、低コストでありながら高出力の電池セルを実現できる。
【0032】
5.本発明の請求項5の発明によれば、
前記請求項1〜4の効果に加えて、
前記筒型電池セルが、その内壁面内側の中空部を内通路とし、外壁面外側の空間を外通路とし、それぞれの通路に、その通路の壁面を構成している燃料極層又は空気極層に対応する燃料又は空気が供給できるので、
前記同一形状、同一構造の各筒型電池セルが、シンメトリーに配設されていることと相まって、燃料又は空気の供給通路が単純化され、そのため燃料又は空気の分配・供給装置もシンメトリーな構成で作ることができ、分配・供給装置を含めて、燃料極層及び空気極層間の温度差で発生する熱応力による変形が筒構造体、分配・供給装置に均等に発生するため、熱応力による変形・破損を防止できる。
【0033】
6.本発明の請求項6の発明によれば、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池セルの複数個を上下に積み重ね、各々の上部電池セルの燃料極層と下部電池セルの空気極層、あるいは上部電池セルの空気極層と下部電池セルの燃料極層とを各々導電とガスシールの機能を持つインターコネクタで直列接続して電池セルスタック構成しいるので、
前記請求項1〜5の効果に加えて、
前記筒型の固体酸化物形燃料電池セルを複数段直列接続して積み重ねることによって必要とする電源電圧に容易に対応でき、したがって高温動作による内部抵抗の低減と高電圧動作による電流損失の低減によって高効率な電池セルスタックを実現できる。
【0034】
7.本発明の請求項7の発明によれば、
前記請求項6の効果に加えて、
前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が電解質の場合は、それぞれ外壁面では上端部側壁面に、内壁面では下端部側壁面にそれぞれの極層が設けられていないブランク部を設けているので、
電池セルを導電性接着剤の利用により複数段積層する場合も、電極同士の接触は無く、容易に漏電を防止でき、またガスケット等の他の部材を必要とせず単純な構成のため低コストの電池セルスタックを生産することができる。
8.本発明の請求項8の発明によれば、
前記請求項6の効果に加えて、
前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合は、積層壁体の内側壁面として基体部となる極層を配設し、その外側面に電解質層を積層し、さらに前記電解質層を基体部となる極層の下端面と内壁面下端部に微小高さの折り返し部として構成されるように連続延伸させ、そして電解質層の外壁面に、前記基体部とし用いられたのとは別の極層となる空気極層又は燃料極層を設け、かつ前記電解質層外側面上部に当該極層が設けられていない環状のブランク部を設けているので、
電池セルを導電性接着剤の利用により複数段積層する場合も、電極同士の接触は無く、容易に漏電を防止でき、またガスケット等の他の部材を必要とせず単純な構成のため低コストの電池セルスタックを生産することができる。
【0035】
9.本発明の請求項9の発明によれば、
前記請求項6及び7の効果に加えて、
前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、各内通路内に同内通路の形状に相似した柱形状スペーサを備えて内通路空間を狭め、燃料極層との反応に寄与する量の燃料のみを通流させられるよう構成されているので、
筒型電池セルの形状が大きくなりその内通路が拡大することによって増加する燃料極層と接触することなく内通路の中心部を通流する無駄な燃料は前記柱形状スペーサによって無くなり、燃料効率のよい燃料電池が構成できる。
【0036】
10.本発明の請求項10の発明によれば、
前記請求項6及び7の効果に加えて、
前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、同電池セルスタックの一端に燃料を供給するチャンバーと、各内通路内に同内通路の形状に相似した筒形状スペーサを備え、
前記チャンバーから供給された燃料が、前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流した後、同筒形状スペーサの他端部で反転し、反転された燃料がこの筒形状スペーサ外周面と前記構成電池セルの内壁面との間の狭められた空間に燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを流通させた後に排出されるよう構成されているので、
筒型電池セルの形状が大きくなりその内通路が拡大することによって増加する燃料極層と接触することなく内通路の中心部を通流する燃料を、まず前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流させた後に同筒形状スペーサの他端部で反転させ、前記筒形状スペーサの外周面と前記構成電池セルの内壁面との間狭められた空間に通流させることによって内通路に供給した燃料が無駄なく燃料極層に接触し、燃料効率のよい燃料電池が構成できる。
【0037】
また、前記燃料を供給するチャンバーを前記電池セルスタックの下部に配設すれば、同チャンバーから供給された燃料が、前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流した後、同筒形状スペーサの他端部で反転し、反転された燃料はこの筒形状スペーサ外周面と前記複数の電池セル筒体内壁面間に狭められた内通路空間を流通した後排出されるので、軽い水素等の燃料滞留時間を延ばし、2酸化炭素等の重い反応ガスの排出を早められ、燃料効率のさらなる向上を図ることができる。
【0038】
11.本発明の請求項11の発明によれば、
請求項6〜10のいずれか1項に記載の電池セルスタックが複数個同一平面に並置され、それぞれが並列接続、又は直列接続され、あるいは直並列の組み合わせで接続されて電池セルモジュールを形成しているので、
前記請求項6〜10の効果に加えて、
電池セルスタックの並列接続で大電流容量対応型の電池セルモジュールが、、直列接続で高電圧対応型の電池せるモジュールが、また両者の組み合わせで大電流容量・高電圧対応型の電池セルモジュールが容易に形成できる。
【0039】
12.本発明の請求項12の発明によれば、
前記請求項11の効果に加えて、
前記電池セルモジュールが、前記電池セルスタック複数個を同一平面に平行格子状、又は千鳥格子状に並置されているので、
燃料通路、空気通路を形成しやすく、特に千鳥格子状に電池セルスタックを並置すると各構成筒型電池セルの外壁面で囲まれて形成される各外通路空間はほぼ均一な断面積とすることができ、したがって外通路を通流する燃料又は空気は各構成筒型電池セルに均等に供給されることとなり、かつ燃料又は空気は各筒型電気セルの各極層に均一に接触し、高効率で安定した発電が行われる。
【0040】
13.本発明の請求項13の発明によれば、
前記請求項11及び12の効果に加えて、
前記電池セルモジュールは、複数個同一平面に並置され、又は上下に積み重ねられて電気的に接続され、あるいは同一平面に並置されて電気的に接続されたものをさらに複数個上下に積み重ねて電気的に接続しているので、
前記したように、電池セルを複数段積層することで必要とする電源電圧に容易に対応することができ、したがって高温動作による内部抵抗の低減化と高電圧動作による電流損失の低減化によって高効率電池セルスタック複数個を電池セルモジュール化し、電池セルモジュールの並列接続で大電流容量対応型、直列接続で高電圧対応型、あるいはその組み合わせで接続した大電流容量で高電圧対応型SOFCを容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明実施例の筒型の固体酸化物形燃料電池の積層壁体の基体部となる層が電解質層の場合の電池セル斜視図。
【図2】本発明実施例の筒型の固体酸化物形燃料電池のの積層壁体の基体部となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合の電池セルの斜視図。
【図3】同発明実施例の筒型の固体酸化物形燃料電池の電池セルスタックの斜視図。
【図4】同発明実施例の電池セルスタックを構成する各電池セルを直列接続するためのインターコネクタ斜視図。
【図5】同発明実施例の電池セルスタックの電池セル筒体内に配設された筒形スペーサの説明図。
【図6】同発明実施例の平行格子状配置の電池セルモジュールの斜視図。
【図7】同発明実施例の千鳥格子状配置の電池セルモジュールの斜視図。
【図8】同発明実施例の燃料電池として最小限必要な機能を持つ電池モジュールシステムの斜視図。
【図9】従来例の平板型SOFCセルの構造図。
【図10】従来例の円筒型SOFCセルの構造図。
【図11】従来例の角筒型SOFCセルの構造図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の筒型の個体酸化物形燃料電池は、空気極層、電解質層及び燃料極層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を一体化して一つのSOFC電池セルを形成したものであり、特に中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同中央部筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合され、かつ相互に交差することのない複数本の側部筒型電池セルとで形成され、各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されて構成されたものである。
なお、各筒型電池セルを構成する積層壁は、電解質層を基体部とし、この基体部となる電解質層を挟んで燃料極層と空気極層を対向配置したもの、あるいは燃料極層(又は空気極層)を基体部とし、その外側面に電解質層及び空気極層(又は燃料極層)を順次配置したもののいずれかが選択使用される。
【0043】
さらに、前記複数本の側部筒型電池セルは、中央部筒型電池セルの側面に等間隔で放射状に配設され、前記中央部筒型電池セル及び複数の側部筒型電池セルのいずれもの内壁面が燃料極層、外壁面が空気極層、又は外壁面が燃料極層、内壁面が空気極層でなり、かつ前記各筒型電池セルの外壁面を構成する空気極層又は燃料極層が連続した一つの面で形成されている。
【0044】
また、前記各筒型電池セルの内壁面内側の中空部を内通路とし、外壁面外側の空間を外通路とし、それぞれの通路に、同通路の壁面を構成する燃料極層又は空気極層に対応する燃料又は空気が供給される。
【実施例1】
【0045】
本発明を実施するための形態を図に基づいて詳細に説明する。
本発明の筒型のSOFC電池セル1を構成する各筒型電池セルは、正方形、長方形、菱形、多角形、円形、又は楕円形のいずれでもよいが、代表的な正4角形の断面形状の筒型電池セル5個で形成された筒型のSOFCについて実施例の図に基づいて説明する。
【0046】
図1に示すように、電解質層4aの基体部を挟んで燃料極層2と空気極層3を対向配置した積層壁、あるいは、図2に示すように、燃料極層(又は空気極層)3を基体部としその外側面に電解質層4a及び空気極層(又は燃料極層)2を順次配置した積層壁で形成された筒型電池セルを、中央部に配置された中央部筒型電池セル5と、同中央部筒型電池セル5の縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合された、中央部筒型体5と同一形状、同一寸法で、かつ同一構造の4個の側部筒型電池セル6とを一体化して一つの電池セルを形成している。以降この構造の電池セルを筒型SOFC電池セル1と記述する。
【0047】
前記筒型のSOFC電池セル1の側部筒型電池セル6は、中央部筒型体5の側面に等間隔で放射状に上下、左右共にシンメトリーに配設され、前記筒型SOFC電池セル1を構成する。
1個の中央部筒型電池セル5及び4個の側部筒型電池セル6のいずれも、その内壁面が燃料極層2、外壁面が空気極層3であり、かつ前記各筒型電池セルの外壁面を構成する空気極層3は連続した一つの面で形成されている。
【0048】
また、前記筒形SOFC電池セル1は、各筒型電池セルの内壁面内側の中空部を内通路7とし、外壁面外側の空間を外通路8とし、それぞれの内通路7には燃料を、外通路8には空気が通流される。
【0049】
前記筒型のSOFC電池セル1を上下に直列接続する場合を考慮し、上下に重なる筒型のSOFC電池セル1の燃料極層2同士、及び空気極層3同士が接触するのを防止するため、図1に示した各筒型電池セルの積層壁体の基体部となる層が電解質層4aの場合は、各筒型電池セルの外側壁面では上端部に、内側壁面では下端部にそれぞれの極層が設けられていないブランク部9を設けている。
また図2に示した各筒型電池セルの積層壁体の基体部となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合は、積層壁体の内側壁面として基体部となる極層(図2では燃料極層2)を配設し、その外側面に電解質層4aを積層し、さらに前記電解質層4を基体部となる極層2の下端面4cと内壁面下端部に微小高さの折り返し部4bとして構成されるように連続延伸させ、そして電解質層4aの外壁面に、前記基体部とし用いられたのとは別の極層(図2では空気極層3)を設け、かつ前記電解質層外側面上部に当該極層が設けられていない環状のブランク部9を設けている。
【0050】
本発明の筒型のSOFC電池セル1の発電量と、平板型SOFCセルの発電量を同一体積の電池セルの燃料極の発電面積で比較する。
本実施例の筒型のSOFC電池セル1の正方形の筒体の内辺を6mm、高さを10mm、積層壁厚を0.5mmとし、その内壁面を燃料極層とすれば、発電面積は、
(6mm×10mm×4面)×5個=1200mm2
となる。
一方、筒型電池セル5個で作る本発明の筒形SOFC電池セル1全体の一辺の長さは積層壁厚を含めて20mmであり、一辺が20mmの正方形の平板型SOFCセルの厚みを3.3mmとし、周辺シール幅を合計6mmとすれば、一枚の平板型SOFCセルの発電面積は(20mm−6mm)2、本実施例の筒型SOFC電池セル1の高さ10mmは、平板型SOFCセル3枚の厚みに相当することから、
(20mm−6mm)2×3枚=588mm2
となる。したがって、本発明の筒形SOFC電池セル1の発電面積は、平板型SOFCセルの2倍強となる。
【0051】
前記5個の筒型電池セルで構成された筒形SOFC電池セル1を12個上下に積み重ねた電池セルスタック10の実施例の斜視図を図3に示す。
図3に見られるように、上下に積み重ねられた12個の電池セル1の間にはそれぞれインターコネクタ11が配設され、このインターコネクタ11により上部の電池セル1の燃料極層2と下部の電池セル1の空気極層3がそれぞれ電気的に接続される〔図5(b)参照〕。
【0052】
また、電池セルスタック10の最上段の電池セル1及び最下段の電池セル1には電力を取り出すための集電プレート12、12が設けられ、さらに、電池セルスタック10の下端部には電池セルスタック10の5つの内通路に燃料を分配するチャンバー14が、また上端部には、後述の筒形状スペーサ18を備えた電池セルスタック10において前記筒型スペーサ18内側の気体通路を上昇してきた燃料を、電池セルスタックを構成する各筒形SOFC電池セル1の燃料極層に接触させ発電に寄与するよう反転させる機能を持つスタック・アッパー13が配設されている。
【0053】
図4に示すインターコネクタ11は、コネクタ折り曲げ部16a及び16bを有し、これにより、構成電池セル1の外側面が空気極層3、内側面が燃料極層2場合、上部の筒形SOFC電池セル1の空気極層3と下部筒形SOFC電池セル1の燃料極層2を連結し、上下の各電池セルが電気的に直列接続される。
上下の各電池セル1の電気導通性と、各筒形SOFC電池セル1とインターコネクター11との接合面でのガスシール性を確保するために、インターコネクター11の全面に導電性接着剤を、その必要に応じて電池セルスタック10の作成前に塗布する。
この場合、電池セルスタック10の作成時、未凝固の導電性接着剤の接着部からのはみ出しによる、各電池セル1のインターコネクター11との接合部での漏電は、図1及び図2のブランク部9及び図2の電解質層4c、4bにより完全に防止される。
【0054】
また、インターコネクタ11には、上下に積み重ねられた筒形SOFC電池セル1の中央部筒型体5及び側部筒型体6の各内通路7を連通させ、気体を通流させるための通風口17が5箇所に設けられている。
【0055】
電池セルスタック10の各内通路7内に配設された筒形状スペーサ18の作用を、図5に示す実施例の外観図(a)とXーX’断面図(b)(c)に基づいて説明する。
電池セルスタック10の内通路7には、同内通路7の形状に相似した筒形状スペーサ18が、また、電池セルスタック10の上端部には最上段の筒形SOFC電池セル1の内通路7を覆うスタック・アッパー13が配設されていている。
【0056】
電池セルスタック10の下部に備えたチャンバー14から供給された矢印表示の燃料は、筒形状スペーサ18の気体通路19を通りスタック・アッパー13に到達し、ここで反転され、電池セルスタック10を構成する各筒形SOFC電池セル1の中央部筒型体5及び4個の側部筒型体6の内壁面と筒形状スペーサ18の外周面間に狭められた内通路部分7を通流して燃料極層2と無駄なく反応しながら再び電池セルスタック10の下方に到達し排出される。
【0057】
ここで、前記筒形状スペーサ18に代えて、図5(c)に示すように内通路の形状に相似した柱形状スペーサ18’を設けて内通路空間を狭め、チャンバー14から供給された燃料を電池セルスタック10を構成する各筒形SOFC電池セル1の燃料極2と無駄なく反応させ、電池セルスタック10の上端に配設されたスタック・アッパー13’の開口部13aから排出するようにしてもよい。
【0058】
図6又は図7に示すように、前記電池セルスタック10を複数個同一平面に並置し、それぞれを並列接続、又は直列接続し、あるいは直並列の組み合わせ接続によって電池セルモジュール20を形成することができる。
【0059】
前記筒形SOFC電池セル1の各筒型電池セルは、正方形、長方形、菱形、円形、又は楕円形のいずれか一つの断面形状を選択でき、かつ前記電池セルスタック10を複数個同一平面に平行格子状に配設(図6)、又は千鳥格子状に配設(図7)して電池セルモジュール20を形成できるので、設計自由度が高く、燃料電池が組み込まれる装置の燃料電池に許容されるスペースに合わせて筒形電池セルの形状を選択し、集積密度を高めることができる。
【0060】
また、本例では正方形筒体SOFC5個で電池セル1を構成したが、これに限定されることなく5角形で6個構成の電池セル、又は6角形で7個構成等多角形筒型の電池セルとしてもよい。
また、上記説明において、筒体の内壁面が燃料極層2、外壁面が空気極層3としたが、これに代えて内壁面を空気極層3、外壁面を燃料極層2としてもよい。
【0061】
図8に、燃料電池の一例としての電池セルモジュールシステム21の外観図を示した。
この電池セルモジュールシステム21は、アウターハウジング22内に電池セルモジュール20を収容してなり、最下部の燃料入口23より供給された燃料は、前記電池セルモジュール20のチャンバー14を介して、筒型スペーサ18の気体通路19を通り、電池セルスタック10の燃料極層2の上部に供給され、スタック・アッパー13で反転され、燃料極層2において発電反応をしながら下降し、燃料出口24から酸化物として排出される。
【0062】
一方、空気極層に反応する空気は、アウターハウジング22の上部に設けた空気入口25に供給され、電池セルモジュール20を構成する各電池セルスタック10の外通路8を通流して燃料と反応した後、アウターハウジング22下部に開放された空気出口26から排出される。
【符号の説明】
【0063】
1:筒形SOFC電池セル
2:燃料極層
3:空気極層
4:電解質層
4a:電解質1
4b:電解質2
4c:電解質3
5:中央部筒型電池セル
6:側部筒型電池セル
7:内通路
8:外通路
9:環状のブランク部
10:電池セルスタック
11:インターコネクタ
12:集電プレート
13、13’:スタック・アッパー
13a:開口部
14:チャンバー
16a、16b:折曲部
17:通風口
18:筒形状スペーサ
18’:柱形状スペーサ
19:気体通路
20:電池セルモジュール
21:電池セルモジュールシステム
22:アウターカバー
23:燃料入口
24:燃料出口
25:空気入口
26:空気出口
100:平板型SOFCセル
101:インターコネクタ
102:電解質
103:ガスケット
150:円筒型SOFCセル
151:インターコネクタ
152:電解質層
153:燃料極層
154:空気極層
200A:角筒型SOFCセル
211:空気極支持管
212:固体電解質
213:燃料極
214:インターコネクタ
221:セパレータ
222:フェルト
223:空隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極層、電解質層及び燃料極層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を連結してなる固体酸化物形燃料電池において、
中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合され、かつ相互に交差することのない複数本の側部筒型電池セルとからなり、かつ前記各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されてなる構成のものであることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記筒型電池セルが、多角筒形のものであることを特徴とする請求項1記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記筒型電池セルが、円筒形のものであることを特徴とする請求項1記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記複数本の側部筒型電池セルが、中央部筒型電池セルの側面に等間隔で放射状に配設され、前記中央部筒型電池セル及び複数本の側部筒型電池セルのいずれもの内壁面が燃料極層、外壁面が空気極層、又は外壁面が燃料極層、内壁面が空気極層でなり、かつ前記各筒型電池セルの外壁面を構成する空気極層又は燃料極層が連続した一つの面で形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記筒型電池セルが、その内壁面内側の中空部を内通路とし、外壁面外側の空間を外通路とし、それぞれの通路に、同通路の壁面を構成する燃料極層又は空気極層に対応する燃料又は空気が供給されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池の複数個を上下に積み重ねて電池セルスタックを構成してなり、各々の上部電池セルの燃料極層と下部電池セルの空気極層、あるいは上部電池セルの空気極層と下部電池セルの燃料極層とを各々導電とガスシールの機能を持つインターコネクタで直列接続してなることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が電解質の場合は、それぞれ外壁面では上端部側壁面に、内壁面では下端部側壁面にそれぞれの極層が設けられていない環状のブランク部を設けてなることを特徴とする請求項6に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合は、積層壁体の内側壁面として基体部となる極層を配設し、その外側面に電解質層を積層し、さらに前記電解質層を基体部となる極層の下端面と内壁面下端部に微小高さの折り返し部として構成されるように連続延伸させ、そして電解質層の外壁面に、前記基体部とし用いられたのとは別の極層となる空気極層又は燃料極層を設け、かつ前記電解質層外側面上部に当該極層が設けられていない環状のブランク部を設けてなることを特徴とする請求項6に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、各内通路内に同内通路の形状に相似した柱形状スペーサを備えて内通路空間を狭め、燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを通流させられるよう構成されてなることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項10】
前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、同電池セルスタックの一端に燃料を供給するチャンバーと、各内通路内に同内通路の形状に相似した筒形状スペーサを備え、
前記チャンバーから供給された燃料が、前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流した後、同筒形状スペーサの他端部で反転し、反転された燃料がこの筒形状スペーサ外周面と前記構成電池セルの内壁面との間の狭められた空間に燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを流通させた後に排出されるよう構成されてなることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の電池セルスタックが複数個同一平面に並置され、それぞれが並列接続、又は直列接続され、あるいは直並列の組み合わせで接続されて電池セルモジュールを形成してなることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項12】
前記電池セルモジュールが、前記電池セルスタック複数個を同一平面に平行格子状、又は千鳥格子状に並置してなることを特徴とする請求項11に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項13】
前記電池セルモジュール複数個が、同一平面に並置され、又は上下に積み重ねられて電気的に接続され、あるいは同一平面に並置されて電気的に接続されたものをさらに複数個上下に積み重ねて電気的に接続してなることを特徴とする請求項11又は12に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項1】
空気極層、電解質層及び燃料極層を順次積層してなる積層壁体で形成された筒型電池セルの多数個を連結してなる固体酸化物形燃料電池において、
中央部に配置された中央部筒型電池セルと、同筒型電池セルの縦側面に沿って平行に接合され、かつ相互に交差することのない複数本の側部筒型電池セルとからなり、かつ前記各側部筒型電池セルは前記中央部筒型電池セルの縦側面に線接触状態で一箇所のみが接合されてなる構成のものであることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記筒型電池セルが、多角筒形のものであることを特徴とする請求項1記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記筒型電池セルが、円筒形のものであることを特徴とする請求項1記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記複数本の側部筒型電池セルが、中央部筒型電池セルの側面に等間隔で放射状に配設され、前記中央部筒型電池セル及び複数本の側部筒型電池セルのいずれもの内壁面が燃料極層、外壁面が空気極層、又は外壁面が燃料極層、内壁面が空気極層でなり、かつ前記各筒型電池セルの外壁面を構成する空気極層又は燃料極層が連続した一つの面で形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記筒型電池セルが、その内壁面内側の中空部を内通路とし、外壁面外側の空間を外通路とし、それぞれの通路に、同通路の壁面を構成する燃料極層又は空気極層に対応する燃料又は空気が供給されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池の複数個を上下に積み重ねて電池セルスタックを構成してなり、各々の上部電池セルの燃料極層と下部電池セルの空気極層、あるいは上部電池セルの空気極層と下部電池セルの燃料極層とを各々導電とガスシールの機能を持つインターコネクタで直列接続してなることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が電解質の場合は、それぞれ外壁面では上端部側壁面に、内壁面では下端部側壁面にそれぞれの極層が設けられていない環状のブランク部を設けてなることを特徴とする請求項6に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
前記電池セルスタックにおいて、直列接続された上下の電池セルの燃料極層同士、空気極層同士が接触するのを防止するために、各電池セルの積層壁体の基体部(構造体)となる層が燃料極層あるいは空気極層の場合は、積層壁体の内側壁面として基体部となる極層を配設し、その外側面に電解質層を積層し、さらに前記電解質層を基体部となる極層の下端面と内壁面下端部に微小高さの折り返し部として構成されるように連続延伸させ、そして電解質層の外壁面に、前記基体部とし用いられたのとは別の極層となる空気極層又は燃料極層を設け、かつ前記電解質層外側面上部に当該極層が設けられていない環状のブランク部を設けてなることを特徴とする請求項6に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、各内通路内に同内通路の形状に相似した柱形状スペーサを備えて内通路空間を狭め、燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを通流させられるよう構成されてなることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項10】
前記電池セルスタックが、その構成電池セルの内壁面が燃料極の場合、同電池セルスタックの一端に燃料を供給するチャンバーと、各内通路内に同内通路の形状に相似した筒形状スペーサを備え、
前記チャンバーから供給された燃料が、前記筒形状スペーサの筒内気体通路を通流した後、同筒形状スペーサの他端部で反転し、反転された燃料がこの筒形状スペーサ外周面と前記構成電池セルの内壁面との間の狭められた空間に燃料極との反応に寄与する量の燃料のみを流通させた後に排出されるよう構成されてなることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の電池セルスタックが複数個同一平面に並置され、それぞれが並列接続、又は直列接続され、あるいは直並列の組み合わせで接続されて電池セルモジュールを形成してなることを特徴とする筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項12】
前記電池セルモジュールが、前記電池セルスタック複数個を同一平面に平行格子状、又は千鳥格子状に並置してなることを特徴とする請求項11に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【請求項13】
前記電池セルモジュール複数個が、同一平面に並置され、又は上下に積み重ねられて電気的に接続され、あるいは同一平面に並置されて電気的に接続されたものをさらに複数個上下に積み重ねて電気的に接続してなることを特徴とする請求項11又は12に記載の筒型の固体酸化物形燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−14858(P2012−14858A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147417(P2010−147417)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(509310060)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(509310060)
【Fターム(参考)】
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